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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027801
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ウォームギア機構を備えた機械装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 16/02 20060101AFI20230224BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20230224BHJP
   B23Q 1/52 20060101ALI20230224BHJP
   B23Q 5/56 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B23Q16/02 Z
F16H1/16 Z
B23Q1/52
B23Q5/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133072
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽平
【テーマコード(参考)】
3C048
3J009
【Fターム(参考)】
3C048DD11
3C048EE08
3J009DA02
3J009EA06
3J009EA19
3J009EA23
3J009EA32
3J009EA43
3J009EC06
3J009ED13
3J009FA30
(57)【要約】
【課題】回転軸に取り付けられるウォームホイールと、ウォームホイールに噛合してフレームの収容孔内に設けられるウォーム軸と、ウォーム軸を回転可能に支持するホルダとを含み、ホルダを回転させることによってウォーム軸をその軸線方向に移動させてバックラッシの調整が行われるように構成されたウォームギア機構を備える機械装置において、バックラッシの調整後にホルダをフレームに対し、より確実に固定できるような構成を提供する。
【解決手段】本発明は、前記機械装置において、収容孔の一端側で収容孔に対し螺合されるホルダと、ネジ部の回転によるネジ作用によってホルダに対し軸線方向への力である軸力を作用させる軸力発生部と、フレームに設けられるベース部であってホルダに対し軸力を作用させることで軸力発生部に対し作用する反力を受けるベース部とから成る位置調整機構を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられるウォームホイールと、前記ウォームホイールに噛合するウォームを含むと共にフレームの収容孔内に設けられるウォーム軸とを含み、軸線方向への前記ウォーム軸の移動により前記ウォームと前記ウォームホイールとの間のバックラッシが調整されるように構成されたウォームギア機構を備えた機械装置において、
前記収容孔の一端側で前記収容孔に対し螺合されると共に前記ウォーム軸を回転可能に支持するホルダであって回転されることによって前記ウォーム軸に前記移動を行わせるホルダと、ネジ部を有すると共に前記ネジ部の回転によるネジ作用によって前記ホルダに対し前記軸線方向への力である軸力を作用させる軸力発生部と、前記フレームに設けられるベース部であって前記ホルダに対し前記軸力を作用させることで前記軸力発生部に対し作用する反力を受けるベース部とから成る位置調整機構を備える
ことを特徴とするウォームギア機構を備えた機械装置。
【請求項2】
前記位置調整機構は、前記軸力発生部における前記ネジ部の螺挿方向が前記軸線方向と一致するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のウォームギア機構を備えた機械装置。
【請求項3】
前記位置調整機構は、前記ホルダと前記軸力発生部とが前記ホルダを回転させる方向において任意の位置を取り得るかたちで係合するように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のウォームギア機構を備えた機械装置。
【請求項4】
前記軸力発生部は、前記ホルダに係合する係合面であって前記軸線方向と交差すると共に周方向に亘って存在する係合面を有するシリンダ部材と、前記ネジ作用により前記シリンダ部材を前記軸線方向に移動させるネジ部材とで構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のウォームギア機構を備えた機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に取り付けられるウォームホイールと、ウォームホイールに噛合するウォームを含むと共にフレームの収容孔に設けられるウォーム軸とを含み、軸線方向へのウォーム軸の移動によりウォームとウォームホイールとの間のバックラッシが調整されるように構成されたウォームギア機構を備えた機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記のようなウォームギア機構を備えた機械装置としては、例えば、特許文献1に開示された回転割出し装置がある。その回転割出し装置は、フレーム内で軸受を介して回転可能に支持されるインデックス軸(回転軸)と、その回転軸に取り付けられるウォームホイール、及びそのウォームホイールに噛合するウォームを含むウォーム軸から成るウォームギア機構とを備えている。なお、ウォーム軸は、フレーム内(より詳しくは、フレームの一部を成すウォームブラケット内)に形成された収容孔内に収容されている。また、ウォーム軸は、その収容孔の一端側において収容孔に嵌装されるかたちで設けられた受台(ホルダ)及びその受台に内装された軸受を介し、フレームに対し回転可能に支持されている。
【0003】
また、特許文献1には、その回転割出し装置において、ウォーム軸をその軸線方向に進退(スライド)可能とし、その進退によりウォームとウォームホイールとの間のバックラッシが調整されるようにウォームギア機構を構成することができる、ということが開示されている。さらに、特許文献1には、そのウォーム軸の軸線方向の進退が、ウォーム軸を支持するホルダをフレーム(ウォームブラケット)に対し螺進退させることによって成される、ということが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2-14921
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような特許文献1の回転割出し装置において、ホルダをフレームに対し螺進退させることができるような構成とする場合には、ホルダの外周面に雄ネジを形成すると共に、収容孔の前記一端側の内周面に雌ネジを形成し、ホルダが収容孔に対し螺合(螺嵌)された状態で設けられる、といった構成が採用されることとなる。そして、そのような構成とされることで、ホルダの回転によってホルダ自体がフレームに対し前記軸線方向に進退(螺進退)し、それによってウォーム軸が前記のように進退されることとなる。
【0006】
ところで、バックラッシの調整は、前記のようにホルダを回転させ、その調整に応じた方向へウォーム軸を移動させることで行われる。また、その調整が完了した後は、調整されたバックラッシの量が変化しないように、ホルダをフレームに対し回転不能に固定する必要がある。
【0007】
なお、ホルダのように回転される回転体を回転不能に固定するための機構としては、ネジ部材を用いたネジ機構により円盤状のスペーサー(セットピース)を回転体の外周部に対し押し付けるように構成された固定機構が、一般的によく用いられている。そして、そのような固定機構によれば、ネジ機構による押圧力を受けたセットピースとそのセットピースが押し付けられる回転体の外周面の部分との間に作用する摩擦力により、回転体が回転不能に固定された状態となる。
【0008】
しかし、そのような固定機構の場合、回転体の回転を阻止するための力として回転体に作用する前記摩擦力については、回転体の外周面上におけるセットピースが当接する部分のみに、すなわち、回転体の外周面上の周方向における一部分のみに、その力が作用することとなる。そのため、そのような固定機構を前記した回転割出し装置に採用した場合、ホルダの回転を確実に阻止できない、という問題がある。
【0009】
より詳しくは、回転割出し装置は、ワークが載置されるように構成されており、そのワークの加工に用いられるが、ワークの加工時には、その加工に伴い大きな振動がワークを介して回転軸に作用する。また、そのように回転軸に対し振動が作用するのに伴い、その振動が、回転軸に取り付けられるウォームホイール及びウォームホイールに噛合するウォーム軸を介し、軸受を介してウォーム軸を支持するホルダに対しても作用する。そして、そのようにホルダに振動が作用すると、そのホルダにおいては、ホルダの回転方向の力(回転力)が発生し、その力がホルダに対し作用する状態となる。また、その力の大きさは、振動の大きさに応じたものとなる。
【0010】
その場合において、前記のような固定機構を採用した回転割出し装置では、その固定機構が前記のようにホルダの回転を阻止するための力である前記摩擦力をホルダの外周面上の周方向における一部分のみにしか作用させることができないものとなっているため、ワークの加工の際に生じるような大きな振動が作用すると、その振動により生じる前記回転力が前記摩擦力を上回る場合がある。そして、そのように前記回転力が前記摩擦力を上回ると、ホルダが回転してしまい、その結果として、ウォーム軸が前記軸線方向に移動し、調整したバックラッシの量が変化してしまうこととなる。
【0011】
このように、前記したセットピース及びネジ機構を用いた固定機構では、採用される機械装置によっては、その機械装置において生じる振動等によって前記回転力が前記摩擦力を上回ってしまう場合があり、調整したバックラッシの量が変化しないようにホルダの回転を阻止する機構としては不十分である場合がある。
【0012】
そこで、本発明は、ホルダの回転によってバックラッシが調整されるように構成されたウォームギア機構を備える機械装置において、バックラッシの調整後にホルダをフレームに対し、より確実に固定できるような構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、回転軸に取り付けられるウォームホイールと、ウォームホイールに噛合するウォームを含むと共にフレームの収容孔に設けられるウォーム軸とを含み、軸線方向へのウォーム軸の移動によりウォームとウォームホイールとの間のバックラッシが調整されるように構成されたウォームギア機構を備えた機械装置を前提とする。
【0014】
その上で、本発明は、前記のような前提とするウォームギア機構を備えた機械装置において、収容孔の一端側で収容孔に対し螺合されると共にウォーム軸を回転可能に支持するホルダであって回転されることによってウォーム軸に移動を行わせるホルダと、ネジ部を有すると共にネジ部の回転によるネジ作用によってホルダに対し軸線方向への力である軸力を作用させる軸力発生部と、フレームに設けられるベース部であってホルダに対し軸力を作用させることで軸力発生部に対し作用する反力を受けるベース部とから成る位置調整機構を備えることを特徴とする。
【0015】
また、そのような本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置において、位置調整機構は、軸力発生部におけるネジ部の螺挿方向が軸線方向と一致するように構成されていても良い。さらに、位置調整機構は、ホルダと軸力発生部とがホルダを回転させる方向において任意の位置を取り得るかたちで係合するように構成されていても良い。また、軸力発生部は、ホルダに係合する係合面であって軸線方向と交差すると共に周方向に亘って存在する係合面を有するシリンダ部材と、ネジ作用によりシリンダ部材を軸線方向に移動させるネジ部材とで構成されていても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置においては、位置調整機構が、フレームの収容孔に対し螺合された状態で設けられるホルダに対し軸力発生部による前記軸力が作用されると共に、軸力発生部に作用する前記軸力の反力をフレームに設けられるベース部で受けるように構成されている。その構成によれば、フレームにおける収容孔に螺合されたホルダに対し前記軸力が作用する結果として、ホルダとフレームとの間の螺合部分に軸線方向の力が作用し、その力によって両者間に生じる摩擦力がホルダの回転を阻止する力としてホルダに作用する。そして、その螺合においては、ホルダとフレームとがホルダの周方向において全周に亘って接触し、しかも、その接触する部分が軸線方向において複数存在しており、全体として大きな摩擦力が得られるため、ホルダがフレームに対しより確実に固定された状態とすることができる。
【0017】
また、そのような本発明の機械装置において、軸力発生部におけるネジ部の螺挿方向が軸線方向と一致するように位置調整機構を構成することにより、フレームに対するホルダの固定をより強固なものとすることができる。
【0018】
より詳しくは、軸力発生部の構成としては、前記ネジ作用によって生じる力がホルダに作用する方向、すなわち、ネジ部の螺挿方向が、例えば、前記軸線方向と直交する方向(ウォーム軸の半径方向)に一致するように構成されたものも考えられる。そして、その場合には、ホルダの端部に傾斜面を形成し、その傾斜面に対し軸力発生部が前記螺挿方向の力を作用させる構成となる。但し、その構成の場合には、ホルダに作用する軸力(前記軸線方向の力)は、軸力発生部における前記ネジ作用によって生じる力の分力となる。それに対し、位置調整機構における軸力発生部を、前記螺挿方向が軸線方向と一致するような構成とすることで、前記ネジ作用によって生じる力の全てが前記軸力としてホルダに対し作用することとなる。それにより、前記螺挿方向が前記半径方向と一致するように構成されたものと比べ、前記したフレームに対するホルダの固定をより一層強固なものとすることができる。
【0019】
さらに、前記のように前記螺挿方向が軸線方向と一致するように位置調整機構が構成される場合において、位置調整機構を、ホルダと軸力発生部とがホルダを回転させる方向(回転方向)において任意の位置を取り得るかたちで係合されるような構成とすることにより、前記回転方向においてホルダの位置が軸力発生部の位置に対し規制されないものとなるため、バックラッシをより細かく調整することができる。
【0020】
より詳しくは、位置調整機構の構成としては、例えば、ホルダと軸力発生部との係合が、その軸力発生部におけるネジ部をホルダに対し螺挿するかたちで行われるように構成されたものも考えられる。但し、その構成の場合には、前記回転方向において、ホルダの位置が軸力発生部におけるネジ部の位置によって規制されることとなる。それに対し、位置調整機構をホルダと軸力発生部とが前記回転方向において任意の位置を取り得るかたちで係合されるような構成とすれば、前記回転方向におけるホルダの位置は、軸力発生部におけるネジ部の位置に対し規制されることは無い。したがって、その構成によれば、バックラッシを調整する際、軸力発生部におけるネジ部の位置とは無関係に、ホルダの前記回転方向における位置を任意の位置とすることができるため、バックラッシをより細かく調整することができる。
【0021】
さらに、ホルダと軸力発生部とが前記のように任意の位置を取り得るかたちで係合されるように位置調整機構が構成される場合において、ホルダに係合すると共に周方向に亘って存在する係合面を有するシリンダ部材が前記ネジ作用によって前記軸線方向に移動するように軸力発生部を構成することで、軸力発生部とホルダとの係合状態をより強固なものとし、ホルダがフレームに対し固定された状態を確実に維持することができる。
【0022】
より詳しくは、例えば、フレーム(ベース部)の雌ネジ孔に螺挿された止めネジをホルダの端部に押し当てるように軸力発生部を構成した場合でも、ホルダと軸力発生部とが前記のように任意の位置を取り得るかたちで係合した状態となる。但し、その構成の場合、軸力発生部は、止めネジの先端面のみでホルダに当接(係合)することとなる。それに対し、前記のような係合面を有するシリンダ部材でホルダと係合するように軸力発生部を構成することで、その軸力発生部とホルダとは、周方向に亘る面によって当接(係合)した状態となる。したがって、その構成によれば、軸力発生部がホルダに対し前記軸力を作用させた際に軸力発生部(シリンダ部材)とホルダとの間に発生する摩擦力は、前記した止めネジの場合と比べ、非常に大きくなる。それにより、その大きな摩擦力によって軸力発生部とホルダとの係合状態をより強固なものとし、ホルダがフレームに対し固定された状態を確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の一実施形態を示す側面断面図。
図2図1におけるA-A線断面平面図。
図3図2における要部を示す一部断面平面図。
図4】本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の他の実施形態における要部を示す一部断面平面図。
図5】本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の他の実施形態における要部を示す一部断面平面図。
図6】本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の他の実施形態における要部を示す一部断面平面図。
図7】本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の他の実施形態における要部を示す一部断面平面図。
図8】本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の他の実施形態における要部を示す一部断面平面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、図1図3に基づき、本発明によるウォームギア機構を備えた機械装置の一実施形態(実施例)について説明する。なお、本実施例は、その機械装置を、ワークが載置されるテーブルの角度位置をそのテーブルを支持する回転軸の軸線周りに割り出す回転割出し装置(所謂回転テーブル装置)とした例である。
【0025】
図示のように、回転テーブル装置1は、回転軸2の軸線を鉛直方向に向けて設置される、所謂横置き型の回転テーブルである。その回転テーブル装置1は、その構成要素として、工作機械等に設置されるフレーム10と、フレーム10に対し回転可能に支持される回転軸2と、その回転軸2の一端側に取り付けられるテーブル3とを備えている。また、その回転テーブル装置1は、その回転軸2を回転駆動して設定された角度位置に割り出す駆動機構20と、その割り出された角度位置で回転軸2を保持(クランプ)するためのクランプ機構40とを備えている。
【0026】
フレーム10は、回転軸2及び駆動機構20における後述するウォームギア機構24を内部に配置すべく、その内部に挿通孔14が形成された構成となっている。なお、図示の例では、フレーム10は、そのフレーム10の主体的な部分であると共に貫通孔が形成された本体部11と、その貫通孔の貫通方向における一端側で端面に当接させるかたちで本体部11に固定されたカバー部13と、前記貫通方向における他端側で貫通孔に嵌装されるかたちで本体部11に固定された底部12とで構成されている。
【0027】
そして、フレーム10における挿通孔14は、本体部11における貫通孔と、カバー部13及び底部12に形成された貫通孔とで形成されている。また、その挿通孔14は、前記貫通方向における各部において、回転軸2を収容可能な内径を有している。その上で、回転軸2は、その挿通孔14内に配置されると共に、本体部11との間に介装された軸受4により、フレーム10に対し支持されている。また、その挿通孔14の一部を構成する本体部11における貫通孔は、その内径の一部が、ウォームギア機構24をも収容可能な大きさであるように形成されている。
【0028】
駆動機構20は、回転軸2を回転駆動するための駆動源としての駆動モータ21と、その駆動モータ21の出力軸の回転を回転軸2に対し伝達するウォームギア機構24とで構成されている。また、ウォームギア機構24は、回転軸2に対し相対回転不能に取り付けられたウォームホイール25と、そのウォームホイール25に噛合するウォーム26aを有するウォーム軸26とで構成されている。
【0029】
なお、ウォーム26aは、リードが歯面の左右でわずかに異なり、歯の厚さ寸法がウォーム軸26の軸線方向における一方側に向かって漸次大きくなる所謂複リード式のウォームとなっている。そして、そのような複リード式のウォーム26aを含むウォームギア機構24は、ウォーム軸26を前記軸線方向に移動させることで、ウォーム26aとウォームホイール25との間のバックラッシが調整されるようになっている。
【0030】
そして、ウォーム軸26は、フレーム10における本体部11において挿通孔14と連通するようにして形成された収容孔15内に収容されるかたちで、フレーム10内に設けられている。但し、その収容孔15は、その穿設方向が前記貫通方向と直交すると共に、本体部11の両側面に開口するように貫通するかたちで形成されている。
【0031】
また、駆動モータ21は、本体部11における前記両側面のうちの一方の側面に対し、その出力軸を収容孔15内に挿入させるかたちで取り付けられている。その上で、駆動モータ21は、その出力軸においてウォーム軸26に対しギア列22を介して連結されている。そして、回転テーブル装置1においては、その駆動モータ21が予め設定された数値制御プログラムに従ってその駆動を制御されることにより、回転軸2(テーブル3)がその数値制御プログラムに設定された角度位置に割り出される。
【0032】
クランプ機構40は、本実施例では、所謂ディスクタイプのクランプ機構となっている。より詳しくは、そのクランプ機構40は、回転軸2に固定されたクランプディスク42を、作動流体の圧力によってクランプピストン41とフレーム10(クランプ面16)とで挟持することで、回転軸2をクランプ状態とするものである。
【0033】
また、前記のようにフレーム10の収容孔15内に設けられるウォーム軸26は、前記軸線方向における中央部にウォーム26aを有するように構成されている。その上で、ウォーム軸26は、ウォーム26aに対する両側に設けられた軸受27、28によって、フレーム10に対し支持されている。但し、収容孔15の一端側(ウォーム軸26が駆動モータ21に連結される側とは反対側)においては、収容孔15内にホルダ32が設けられており、前記一端側の軸受27は、そのホルダ32に内装されるかたちで設けられている。
【0034】
なお、ホルダ32は、中空円筒状の部材であり、収容孔15に対し、その軸芯の方向を前記穿設方向に一致させた状態で設けられる。また、ウォーム軸26は、その軸線方向を前記穿設方向に一致させた状態で、収容孔15内に設けられる。したがって、ウォーム軸26が収容孔15内に設けられた状態では、これらの方向はいずれも同じ方向であるため、以下では、その方向については全て「(前記)軸線方向」と言う。
【0035】
そのホルダ32は、前記軸線方向に関し、中間部よりも一端側の部分の外径が他端側の部分の外径より大きくなるように形成され、外周面上の中間部に段部を有するように形成されている。すなわち、そのホルダ32は、中間部よりも一端側が外径の大きい部分である大径部32aとして形成され、他端側が外径の小さい部分である小径部32bとして形成された構成となっている。その上で、そのホルダ32における大径部32aには、その外周面に雄ネジ32cが形成されている。
【0036】
そして、ホルダ32は、前記した収容孔15の一端側において、小径部32bを収容孔15の中央側に向けると共に、大径部32aの外周面に形成された雄ネジ32cにおいてフレーム10の本体部11に螺合するかたちで設けられる。そこで、その本体部11に形成される収容孔15において、ホルダ32がその内部に設けられる際に大径部32aが配置されることが想定される部分(配置部分)15aは、その大径部32aの外径に応じた内径を有すると共に、その内周面に雌ネジ15bが形成されている。但し、その配置部分15aは、前記軸線方向に関しては、ホルダ32の大径部32aよりも大きくなるように形成されている。
【0037】
また、その収容孔15の一端側において、配置部分15aよりも中央側の部分は、その配置部分15aよりも内径が小さくなっており、その内径は、ホルダ32における小径部32bが嵌挿されるような大きさとなっている。それにより、ホルダ32は、収容孔15の一端側において、その大径部32aにおいて本体部11(配置部分15a)に螺合すると共に、小径部32bが収容孔15に嵌挿された状態とされる。なお、収容孔15における配置部分15aよりも外側(中央側とは反対の側)の部分(外側部分)15cは、その内径が配置部分15aより更に大きくなるように形成されている。
【0038】
また、ホルダ32は、その内径についても、大径部32aにおける内径が小径部32bにおける内径より大きくなるように形成されており、内周面上の中間部に段部を有するように形成されている。したがって、ホルダ32は、その内周面における大径部32aと小径部32bとの境界に、半径方向と平行な面であって大径部32a側を向く面である段部面32fを有している。
【0039】
そして、軸受27については、小径部32b内に位置するような配置で、2つがホルダ32に内装されている。但し、その小径部32bには、前記軸線方向における略中央部に、内周面から突出するようなかたちで設けられた環状の突出部32dが形成されている。そして、2つの軸受27のうちの一方は、前記軸線方向に関し、その突出部32dに対する大径部32a側で突出部32dに当接するように配置され、他方は、突出部32dに対するその反対側で突出部32dに当接するように配置されている。
【0040】
その上で、ウォーム軸26は、その軸部26bがそのホルダ32に内装された軸受27a、27bに対し嵌入されるかたちで、前記のように設けられたホルダ32に支持された状態とされる。なお、そのウォーム軸26において、ウォーム26aの両側の軸部のうちのホルダ32に支持される側の軸部26bは、軸受27に嵌入される部分よりもウォーム26a側の部分が、その軸受27に嵌入される部分よりも軸径が大きくなるように形成されている。すなわち、ウォーム軸26における軸部26bは、軸受27に嵌入される部分とそれよりもウォーム26a側の部分との間に軸径が拡大する部分(拡径部)を有するように形成されている。そして、前記のようにウォーム軸26が軸受27に対し嵌入された状態では、前記したウォーム26a側の前記他方の軸受27bは、その拡径部の端面に当接した状態とされる。
【0041】
その上で、ホルダ32(軸受27a、27b)とウォーム軸26との前記軸線方向における相対位置を固定するためのロックナット29が、ウォーム軸26の軸部26bにおける軸受27に嵌入される部分よりも端部側に螺装されている。より詳しくは、軸部26bには、その軸部26bにおける軸受27に嵌入される部分よりも端部側の部分において、その外周面に雄ネジが形成されている。その上で、その軸部26bにおける端部側の外周面に形成された雄ネジに対し、ロックナット29が螺装される。因みに、図示の例では、その軸部26bにおいて、螺装されたロックナット29と前記一方の軸受(ホルダ32における突出部32dの大径部32a側に当接する軸受)27aとの間には、ワッシャ等の環状部材が介装されている。
【0042】
そして、ロックナット29を締め付けると、そのロックナット29が、前記一方の軸受27aに対し、前記軸線方向におけるウォーム軸26の前記拡径部側へ力を作用させた状態となる。さらに、その力は、前記一方の軸受27a及びホルダ32の突出部32dを介して前記他方の軸受27bに作用し、前記拡径部の端面に受けられた状態となる。それにより、前記他方の軸受27bは、ウォーム軸26の前記拡径部とホルダ32の突出部32dとで挟持された状態となる。また、それに伴い、前記一方の軸受27aは、突出部32dとロックナット29(前記環状部材)とで挟持された状態となる。その結果として、ホルダ32とウォーム軸26とは、前記軸線方向における相対位置が固定された状態となる。但し、当然ながら、両者は相対回転可能となっている。
【0043】
なお、前述のように、ホルダ32は、フレーム10の本体部11(収容孔15)に対し螺合した状態で収容孔15内に設けられている。したがって、ホルダ32を回転させることで、ホルダ32は、収容孔15内において前記軸線方向に変位する。そして、ホルダ32とウォーム軸26とは前記のように前記軸線方向の相対位置が固定されていることから、ホルダ32が前記のように変位するのに伴い、ウォーム軸26も前記軸線方向に変位する。したがって、前述のようにウォーム軸26を前記軸線方向に変位させることで行われるバックラッシの調整については、その調整のためのウォーム軸26の前記軸線方向への変位が、ホルダ32を回転させることで行われることとなる。
【0044】
また、前述のようにホルダ32が設けられるフレーム10の本体部11(収容孔15)において、その収容孔15の一端側には、その本体部11の両側面のうちの他方の側面(駆動モータ21が取り付けられる側とは反対の側)の開口する部分に、その開口を塞ぐ蓋状の部材(蓋部材)38が設けられている。そして、その蓋部材38は、収容孔15に嵌挿される部分である嵌挿部38aと、蓋部材38(嵌挿部38a)をフレーム10の本体部11に取り付けるための部分である取付部38bとで構成されている。
【0045】
その蓋部材38について、より詳しくは、嵌挿部38aは、中空円筒状であって、その外径が収容孔15における外側部分15cの内径と略同じであると共に、その内径がホルダ32における大径部32aの内径より大きくなるように形成されている。また、取付部38bは、円盤状を成すように形成された部分であって、その外径が嵌挿部38aの外径よりも大きくなるように形成されている。
【0046】
その上で、蓋部材38は、そのような嵌挿部38aと取付部38bとを一体的に形成した構成となっている。その構成について、具体的には、蓋部材38は、嵌挿部38aの軸線方向において嵌挿部38aの一端側の端縁に連続するように取付部38bが位置すると共に、嵌挿部38aの軸線方向に見て嵌挿部38aの軸芯と取付部38bの中心とが一致するようなかたちで、嵌挿部38aと取付部38bとが一体化された構成となっている。
【0047】
そして、蓋部材38は、収容孔15における外側部分15cに対し嵌挿部38aが嵌挿されると共に、取付部38bが本体部11における前記他方の側面に当接した状態で、本体部11に対し取り付けられている。また、その取り付けは、蓋部材38における取付部38bに対しその厚さ方向に挿入された複数のネジ部材を本体部11に対し螺挿するかたちで行われる。因みに、そのように蓋部材38が本体部11に対し取り付けられた状態においては、嵌挿部38aにおける外周面と収容孔15における外側部分15cの内周面との間には、Oリング等のシール部材38cが介装されている。
【0048】
また、収容孔15の一端側には、ホルダ32と蓋部材38との間において、シリンダ部材35が設けられている。そのシリンダ部材35は、有底の円筒状の部材であって、円筒状の部分である円筒部35aと、その円筒部35aの一端側で円筒部35aの開口を閉塞する基端部35cとから成っている。また、円筒部35aの外周面には、雄ネジ35bが形成されている。一方、ホルダ32における大径部32aには、その内周面に雌ネジ32eが形成されている。
【0049】
そして、シリンダ部材35は、その円筒部35aをホルダ32側に向けると共に、円筒部35aがその雄ネジ35bのフランク面によってホルダ32の大径部32a(雌ネジ32e)に螺合するかたちで係合した状態で設けられる。したがって、そのシリンダ部材35における雄ネジ35bのフランク面が、係合面に相当する。
【0050】
また、シリンダ部材35(円筒部35a)は、ホルダ32における大径部32aの内径との関係で、そのような螺合状態が成し得られるような外径を有している。そして、そのシリンダ部材35の外径は、前記した蓋部材38における嵌挿部38aの内径と略一致した(あるいは若干小さい)大きさとなっている。
【0051】
なお、そのシリンダ部材35の前記軸線方向における寸法は、円筒部35aがホルダ32の大径部32aに螺合した取付状態で、前記軸線方向において、基端部35cの位置が蓋部材38の嵌挿部38aの位置と少なくとも一部において重複するような大きさとなっている。そして、その前記取付状態におけるシリンダ部材35の前記軸線方向における位置は、基端部35cと蓋部材38の取付部38bとの間に間隙が存在する位置とされる。
【0052】
その上で、シリンダ部材35の前記軸線方向における寸法は、前記したバックラッシ調整のためのホルダ32の変位を許容する大きさ、すなわち、その変位においてホルダ32が最も外側(蓋部材38側)に位置する状態でも円筒部35aの先端とホルダ32における段部面32fとの間に間隙が存在するような大きさとなっている。さらに、そのホルダ32の変位の許容のために、シリンダ部材35における円筒部35aの前記軸線方向における寸法(基端部35cの厚さ寸法)は、そのホルダ32が最も外側に位置する状態、すなわち、ウォーム軸26の端面が最も外側に位置する状態で、そのウォーム軸26の端面と基端部35cとの間に間隙が生じるような大きさとなっている。
【0053】
なお、前記取付状態では、シリンダ部材35は、前記軸線方向において、その円筒部35aの位置が前記のようにウォーム軸26に螺嵌されたロックナット29の位置と重複する配置となっている。したがって、その円筒部35aは、ロックナット29がその内側に位置し得るように、内径がロックナット29の外径よりも大きく形成されたものとなっている。
【0054】
その上で、そのような前記取付状態のシリンダ部材35と蓋部材38との間には、ネジ作用によってシリンダ部材35を前記軸線方向に移動させるネジ部材36が設けられている。より詳しくは、蓋部材38は、その取付部38bにおいて、その厚さ方向に貫通するように形成されたネジ挿通孔38dであって、ネジ部材36が挿通可能な内径のネジ挿通孔38dを有している。また、そのネジ挿通孔38dは、取付部38bの厚さ方向に見て、取付部38bの中心に対し対称的な位置で2つ形成されている。但し、その2つのネジ挿通孔38d、38dは、前記軸線方向に見て、シリンダ部材35における基端部35cの存在範囲内に位置するように形成されている。
【0055】
一方、シリンダ部材35には、ネジ挿通孔38dに挿通された2本のネジ部材36、36がそれぞれ螺挿される2つの雌ネジ孔35d、35dが形成されている。また、その各雌ネジ孔35dは、シリンダ部材35の基端部35cにおいて、その厚さ方向に貫通するように形成されている。そして、その2つの雌ネジ孔35d、35dは、前記軸線方向に見て、蓋部材38(取付部38b)に形成された2つのネジ挿通孔38d、38dと位置を合せることができるような位置に形成されている。
【0056】
その上で、前記取付状態において、2本のネジ部材36、36が、蓋部材38(取付部38b)における各ネジ挿通孔38dに挿通されると共に、シリンダ部材35(基端部35c)における各雌ネジ孔35dに螺挿されるかたちで設けられる。なお、そのネジ部材36は、本実施例では、頭部を有するボルト等のネジ部材となっている。したがって、そのネジ部材36が、本発明で言うネジ部に相当する。また、そのネジ部材36の頭部と取付部38bとの間には、ワッシャ36aが介装されている。さらに、そのネジ部材36の長さ寸法(前記軸線方向における寸法)は、ネジ部材36が、その頭部をワッシャ36aを介して取付部38bに当接させた状態で、前記軸線方向に関し、基端部35cの雌ネジ孔35dの大部分に亘って螺挿されると共に、その先端が基端部35cから突出しないような大きさとなっている。因みに、ワッシャ36aは、ネジ挿通孔38dから内部の流体(本実施例では潤滑油)が漏洩することのないように、シール機能を有するシールワッシャ等のワッシャとなっている。
【0057】
以上のように構成された回転テーブル装置1によれば、前記取付状態において、ネジ部材36をその頭部がワッシャ36aを介して蓋部材38の取付部38bと当接した状態から締め付ける方向に回転させると、その当接によってネジ部材36の前記軸線方向におけるシリンダ部材35側への移動が取付部38bによって規制されているため、ネジ部材36の回転によるネジ作用により、シリンダ部材35に対し蓋部材38(取付部38b)側への引張り力が作用する。それにより、シリンダ部材35は、円筒部35aの雄ネジ35bにおいてホルダ32の大径部32aにおける雌ネジ32eに螺合した状態となっているが、その雄ネジ35bと雌ネジ32eとの間の隙間(バックラッシ)分だけ移動する。
【0058】
そして、その移動により雄ネジ35bが雌ネジ32eに押し付けられた状態となる結果として、前記軸線方向における前記引張り力(軸力)がホルダ32に対し作用した状態となる。したがって、そのような軸力をホルダ32に作用させるネジ部材36とシリンダ部材35との組み合わせが、本発明で言う軸力発生部に相当する。また、そのようにホルダ32に前記軸力を作用させた状態では、その反力は、フレーム10(本体部11)に取り付けられると共にネジ部材36の頭部が当接する蓋部材38(取付部38b)に受けられることとなる。したがって、その蓋部材38が、本発明で言うベース部に相当する。そして、後述のようにバックラッシ調整のためにホルダ32が回転されてウォーム軸26の移動が行われることから、そのホルダ32と、前記した軸力発生部34及びベース部との組み合わせが本発明で言う位置調整機構となる。
【0059】
また、前記のようにホルダ32に対し前記軸力が作用すると、ホルダ32における大径部32aの雄ネジ32cが、その雄ネジ32cにおいて螺合するフレーム10の収容孔15(配置部分15a)の雌ネジ15bに対し前記軸力が作用する方向(引張り方向)に押し付けられた状態となる。その結果として、その雄ネジ32cと雌ネジ15bとの間には前記軸力に応じた摩擦力が生じ、その摩擦力がホルダ32の回転を阻止するための力としてホルダ32に対し作用した状態となる。
【0060】
なお、ホルダ32と収容孔15とは、前記のように雄ネジ32cと雌ネジ15bとで螺合しており、前記の押し付けられた状態は、ホルダ32周りの全周に亘って、且つ、前記軸線方向における複数箇所において、両者が接触した状態となっている。それにより、ホルダ32(雄ネジ32c)と収容孔15(雌ネジ15b)との間には、全体として大きな摩擦力が生じ、その大きな摩擦力がホルダ32に対し作用することとなる。そして、そのように大きな摩擦力が作用することにより、ホルダ32がフレーム10に対しより強固に固定された状態とされる。
【0061】
しかも、本実施例の軸力発生部34は、そのネジ部材36の螺挿方向が前記軸線方向と一致するように設けられた構成となっている。それにより、そのネジ部材36のネジ作用によってシリンダ部材35に作用する引張り力は、その作用する方向が前記軸線方向と一致する力となっている。したがって、その構成によれば、引張り力の全てが前記軸力としてホルダ32に対し作用することとなり、フレーム10に対するホルダ32の固定がより一層強固なものとなる。
【0062】
さらに、ホルダ32に対し前記軸力を作用させるべく前記軸線方向においてホルダ32と係合する軸力発生部34(シリンダ部材35)は、そのシリンダ部材35がホルダ32に対し螺合されるかたちで設けられている。それにより、軸力発生部34(シリンダ部材35)とホルダ32とは、ホルダ32を回転させる方向(回転方向)において相対的に任意の位置(位相)を取り得る状態となっている。したがって、その構成は、ホルダ32の位相が軸力発生部34の位相に規制されないため、バックラッシの調整がより細かく行われるものとなっている。
【0063】
また、ホルダ32とシリンダ部材35とが前記のように螺合するかたちで係合されていることにより、その係合した状態では、前述したホルダ32と収容孔15との関係と同様に、シリンダ部材35に対し大きな摩擦力が作用することとなる。したがって、そのように大きな摩擦力が作用することにより、シリンダ部材35とホルダ32との係合状態がより強固なものとなり、フレーム10に対しホルダ32を固定した状態が確実に維持されることとなる。
【0064】
そして、以上のように構成された回転テーブル装置1において前述したバックラッシの調整を行うにあたっては、先ずは、前記のようにフレーム10に対するホルダ32の固定状態を維持するために締め付けられたネジ部材36を緩め、そのネジ部材36のネジ作用による前記軸力(引張り力)がホルダ32に対し作用しない状態とする。それにより、フレーム10に対するホルダ32の固定状態が解除され、ホルダ32がフレーム10に対し回転可能な状態となる。その上で、ホルダ32を回転させてウォーム軸26を前記軸線方向に移動させることにより、バックラッシの調整が行われる。
【0065】
また、そのバックラッシの調整が完了した後は、前記のように緩められたネジ部材36を再び締め付けることで、前記のようにホルダ32がフレーム10に対し回転可能に固定された状態となる。そして、そのようにフレーム10に対するホルダ32の固定状態が維持されることで、調整されたバックラッシの量が変化しない(維持された)状態となる。
【0066】
以上では、本発明が適用されたウォームギア機構を備えた機械装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0067】
(1)軸力発生部について、前記実施例では、軸力発生部34は、ホルダ32に対し前記軸力を作用させる方向が蓋部材38側への前記引張り方向となるように構成されたものとなっている。しかし、本発明において、軸力発生部は、前記軸力を前記引張り方向に作用させるように構成されたものに限らず、ホルダ32をウォーム26a側へ押し付ける方向(押付け方向)に前記軸力を作用させるように構成されたものであっても良い。
【0068】
具体的には、例えば、図4に示す構成がその一例として考えられる。この図4の構成は、ホルダ32自体は前記実施例と同じであると共に、前記実施例のようにシリンダ部材がホルダ32に螺合されるかたちで設けられた構成において、ネジ部としてのネジ部材を、前記実施例のようなボルトではなく、止めネジとした例である。但し、この例では、シリンダ部材55は、基端部55cに前記実施例のような雌ネジ孔を有しておらず、また、蓋部材58は、その取付部58bに形成される孔が、前記実施例のような単なる孔ではなく、雌ネジ孔58dであるように構成されたものとなっている。
【0069】
そして、蓋部材58には、その雌ネジ孔58dが2つ形成されており、止めネジ56は、各雌ネジ孔58dに螺挿されると共に、取付部58bからシリンダ部材55側へ突出するようなかたちで設けられている。なお、その2本の止めネジ56、56は、基本的には、その先端がシリンダ部材55の基端部55cに当接するかたちで設けられる。
【0070】
そして、その構成によれば、止めネジ56をシリンダ部材55(基端部55c)に当接した状態から締め付けることにより、止めネジ56が、反力を蓋部材58(取付部58b)との螺合部分で受けられつつ、シリンダ部材55に対し前記押付け方向への力(押付け力)を作用させた状態となる。そして、その押付け力が前記軸力としてホルダ32に作用する結果として、前記実施例と同様に、ホルダ32がフレーム10(収容孔15)との間に生じる摩擦力によってフレーム10に対し固定された状態となる。したがって、この例でも蓋部材58がベース部に相当し、また、止めネジ56とシリンダ部材55との組み合わせが軸力発生部に相当する。
【0071】
なお、この例の場合、ホルダ32に対し作用する前記軸力の方向は、前記実施例とは反対の方向となる。それにより、シリンダ部材55の雄ネジ55bは、前記実施例とは反対向きのフランク面において、ホルダ32の雌ネジ32eに対し押し付けられて係合した状態となる。したがって、この例では、シリンダ部材55における係合面は、雄ネジ55bにおける前記実施例とは反対向きのフランク面となる。
【0072】
(2)ホルダと軸力発生部との係合について、以上で説明した例では、軸力発生部がシリンダ部材を備え、ホルダ32に対しシリンダ部材が螺合されることで、シリンダ部材がホルダ32に対し前記軸力を作用させることができるように両者が係合する構成となっている。しかし、本発明において、軸力発生部がシリンダ部材を備える場合であっても、ホルダとシリンダ部材とを係合させるための構成は、前記のように両者が螺合するように構成されたものには限られない。
【0073】
具体的には、図5に示す構成がその一例として考えられる。この図5の構成は、蓋部材38及びネジ部材36は前記実施例と同じであると共に、前記実施例のようにネジ部材36のネジ作用によってシリンダ部材に対し前記引張り力を作用させる構成である。但し、この例では、シリンダ部材65は、その円筒部65aに雄ネジは形成されておらず、円筒部65aがその先端部(ホルダ62側の端部)に外径を拡大させるかたちで形成されたフランジ状の部分(拡径部)65eを有するように構成されたものとなっている。
【0074】
また、ホルダ62は、その大径部62aの内周面には雌ネジが形成されておらず、その大径部62aの端面に貫通孔を有する(ドーナツ状の)円盤状の部材(円盤部)62gが取り付けられたものとなっている。なお、その円盤部62gにおける貫通孔の内径は、シリンダ部材65における円筒部65aの外径よりも若干大きく、且つ、拡径部65eの外径よりも小さいものとなっている。
【0075】
その上で、そのホルダ62に対する前記軸線方向におけるシリンダ部材65の配置は、拡径部65eが円盤部62gよりもホルダ62の小径部62b側に位置するような配置となっている。それにより、シリンダ部材65の拡径部65eにおける円筒部65a側を向く端面65e1とホルダ62の円盤部62gにおける小径部62b側を向く端面62g1とは、前記軸線方向において対向した状態となっている。さらに、シリンダ部材65は、基本的には、前記軸線方向においてその端面65e1がホルダ62における端面62g1と当接するような位置に配置される。
【0076】
そして、その構成によれば、ネジ部材36のネジ作用によってシリンダ部材65に対し前記引張り力が作用すると、シリンダ部材65における端面65e1が前記のように当接するホルダ62における端面62g1に対し前記引張り方向の前記軸力を作用させた状態となる。したがって、この例では、その端面65e1が、シリンダ部材65における係合面となっている。そして、その構成においても、そのように前記軸力がホルダ62に作用する結果として、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0077】
なお、前記のようにホルダとシリンダ部材とを前記軸線方向に対向する端面で係合させる構成において、図5の例では、前記引張り方向に前記軸力が作用する構成となっているが、前記押付け方向に前記軸力が作用するように構成することも可能である。具体的には、図5の例のようにシリンダ部材が拡径部を有すると共にホルダが円盤部を有するように構成した上で、シリンダ部材を、その拡径部がホルダの円盤部よりも蓋部材側に位置すると共に、拡径部が円盤部に当接する位置に配置する。その上で、図4に示すような押しネジを用いた機構によりシリンダ部材に対し前記押付け力を作用させる構成とすることにより、前記押付け方向の前記軸力をホルダに対し作用させることができる構成となる。
【0078】
(3)軸力発生部について、以上で説明した例では、軸力発生部は、シリンダ部材を備え、そのシリンダ部材がホルダに対し前記軸力を作用させるように構成されたものとなっている。しかし、本発明における軸力発生部は、そのようなシリンダ部材を備えたものには限られない。
【0079】
具体的には、図6に示す構成が一例として考えられる。この図6の構成は、蓋部材38が前記実施例と同じであると共に、前記実施例のようにホルダ72が収容孔15に螺合して設けられた構成であるが、シリンダ部材は備えられておらず、蓋部材38に挿通されたネジ部としてのネジ部材36が直接的にホルダ72に螺挿される構成となっている。したがって、ホルダ72は、大径部72aの端面に開口すると共にネジ部材36が螺挿される2つの雌ネジ孔72g、72gを有するように形成されたものとなっており、軸力発生部は、その雌ネジ孔72g、72gに螺挿される2本のネジ部材36、36のみで構成されたものとなっている。そして、この構成においても、ネジ部材36を締め付けると、前記引張り方向の前記軸力がホルダ72に作用させた状態となり、その結果として、前記実施例と同様の効果が得られる。
【0080】
また、前記のようにシリンダ部材を備えない構成において、図6の例では、ホルダに対し前記引張り方向に前記軸力が作用するように軸力発生部を構成しているが、例えば図7に示すように、前記押付け方向に前記軸力が作用するように軸力発生部を構成することも可能である。この図7の例では、ホルダ82は、大径部82aにおけるウォーム26a側とは反対側の端部に、外径を拡大させるかたちで形成されたフランジ状の部分(フランジ部)82gを有するように形成されている。また、そのフランジ部82gの外径は、収容孔15における外側部分15cの内径と略同じ大きさとなっている。その上で、そのフランジ部82gには、その厚さ方向に貫通すると共に、ネジ部材36が挿通される2つのネジ挿通孔82h、82hが形成されている。そして、ホルダ82は、そのフランジ部82gが前記軸線方向に関し外側部分15c内に配置されて外側部分15cに遊嵌されるかたちで、収容孔15内に設けられている。
【0081】
それに対し、フレーム10における本体部11には、収容孔15の外側部分15cにおける外側を向く端面に開口すると共に、ネジ部材36が螺挿される2つの雌ネジ孔11a、11aが形成されている。その上で、2本のネジ部材36、36が、ホルダ82のフランジ部82gにおける各ネジ挿通孔82hに挿通されると共に、フレーム10(本体部11)における各雌ネジ孔11aに螺挿されている。
【0082】
そして、その構成によれば、ネジ部材36をその頭部がホルダ82(フランジ部82g)に当接した状態から締め付けることにより、ホルダ82に対し前記押付け方向に前記軸力が作用し、その結果として、図4に示す例と同様の効果が得られることになる。なお、この構成の場合、ネジ部材36がホルダ82に対し前記軸力を作用させる際の反力が本体部11(雌ネジ孔11a)におけるネジ部材36との螺合部分で受けられることとなる。したがって、この例では、フレーム10の本体部11における各雌ネジ孔11aが形成されている部分が、ベース部に相当する。また、この例では、蓋部材88は、ホルダ82の端面に対しその開口を塞ぐようなかたちで取り付けられている。それにより、収容孔15の開口は、ホルダ82のフランジ部82gとその蓋部材88とで閉塞されている。
【0083】
但し、図6図7の例のようにシリンダ部材を備えない構成の場合、バックラッシ調整のためにホルダを回転させた際に変更される(位置決めされる)前記回転方向におけるホルダの位置(回転位置)は、ネジ部材(ネジ部)及びそのネジ部材が螺挿される雌ネジ孔の位置に制限されるものとなっている。すなわち、図6、7の例では、前記回転位置の変更は、180°の角度範囲毎となる。なお、雌ネジ孔もしくはネジ挿通孔の数を増やすことで、その制限される角度範囲を小さくすることはできるが、制限を受けることには変わりは無い。それに対し、前記実施例等のようにシリンダ部材を備える構成によれば、ホルダは、前記回転位置に制限を受けること無く任意の位置を取り得る。よって、バックラッシ調整をより細かく行う必要がある場合には、シリンダ部材を備える構成とする方が好ましい。
【0084】
(4)軸力発生部について、以上で説明した例では、軸力発生部は、ネジ部としてのネジ部材の螺挿方向が前記軸線方向と一致するように構成されたものとなっている。しかし、本発明において、軸力発生部は、そのように構成されたものに限らず、ネジ部の螺挿方向がホルダの半径方向と一致するように構成されたものであっても良い。
【0085】
具体的には、図8に示す構成が一例として考えられる。この図8の構成では、図6等の例と同様にシリンダ部材は備えられておらず、また、ホルダ92は、雄ネジが形成される大径部92aよりも蓋部材98側に、テーパー状に形成された傾斜部92iを有するように構成されている。さらに、収容孔17における配置部分は、雌ネジが形成される雌ネジ部17aよりも蓋部材98側が雌ネジ部17aよりも若干大径の外側配置部17bとして形成されている。そして、ホルダ92は、前記軸線方向に関し、傾斜部92iが収容孔17の配置部分における外側配置部17bと位置が重複するように配置されている。
【0086】
また、フレーム10の本体部11には、収容孔17における外側配置部17bの内周面に開口するように前記半径方向に向けて穿設された貫通孔17cが形成されている。なお、その貫通孔17cは、その内周面に雌ネジが形成された雌ネジ孔となっている。その上で、その雌ネジ孔17cには、ネジ部としての止めネジ96が螺挿されている。さらに、その止めネジ96とホルダ92(傾斜部92i)との間には、止めネジ96のネジ作用によって生じる前記半径方向への力をホルダ92に対し作用させるための押付け部材95fが介装されている。なお、その押付け部材95fは、円柱状の部材であって、ホルダ92側の端部が半球状を成すように形成されている。
【0087】
その構成によれば、止めネジ96を押付け部材95fがホルダ92における傾斜部92iに当接した状態から締め付けると、そのネジ作用により、止めネジ96とホルダ92との間に介装された押付け部材95fがホルダ92に対し前記半径方向の力を作用させる状態となる。そして、その半径方向の力がホルダ92における傾斜部92iによって受けられる結果として、その前記押付け方向の分力がホルダ92に対し作用した状態となり、その分力が前記押付け方向の前記軸力となる。なお、この構成の場合、押付け部材95fがホルダ92に対し前記軸力を作用させる際の反力は、止めネジ96が螺合する本体部11(雄ネジ孔17c)における螺合部分で受けられる。したがって、この例では、フレーム10の本体部11における雌ネジ孔17cが形成されている部分が、ベース部に相当する。
【0088】
(5)本発明が適用されるウォームギア機構を備える機械装置について、以上で説明した例では、回転軸の軸線を鉛直方向に向けて設置される所謂横置き型の回転テーブル装置に対し、本発明を適用する例となっている。しかし、本発明が適用される機械装置は、そのような回転テーブル装置に限られない。
【0089】
例えば、本発明が前提とするような、ウォーム軸をその軸線方向に移動させてバックラッシの調整が行われるように構成されたウォームギア機構を備えた機械装置であって、工作機械関連の機械装置としては、ワークが載置されるテーブルとそのテーブルを支持する一対のアーム部とで構成された傾斜テーブル(クレードル)を備え、そのアーム部(回転軸)の軸線とテーブルにおけるワークが載置される載置面とを離間させて構成された所謂クレードルタイプの傾斜テーブル装置がある。そこで、本発明は、そのような傾斜テーブル装置に適用することも可能である。
【0090】
また、本発明が適用される機械装置は、以上で説明した円テーブル装置や傾斜テーブル装置に限らず、前記のように構成されたウォームギア機構を備えるものであれば、他の工作機械関連の機械装置であっても良いし、さらには、工作機械関連の機械装置に限らず、他の機械装置であっても良い。
【0091】
また、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 回転テーブル装置(機械装置)
2 回転軸
3 テーブル
4 軸受
10 フレーム
11 本体部
12 底部
13 カバー部
14 挿通孔
15 収容孔
15a 配置部分
15b 雌ネジ
15c 外側部分
16 クランプ面
20 駆動機構
21 駆動モータ
22 ギア列
24 ウォームギア機構
25 ウォームホイール
26 ウォーム軸
26a ウォーム
26b 軸部
27 軸受
29 ロックナット
30 位置調整機構
32 ホルダ
32a 大径部
32b 小径部
32c 雄ネジ
32d 突出部
32e 雌ネジ
32f 段部面
34 軸力発生部
35 シリンダ部材
35a 円筒部
35b 雄ネジ
35c 基端部
35d 雌ネジ孔
36 ネジ部材(ネジ部)
36a ワッシャ
38 蓋部材(ベース部)
38a 嵌挿部
38b 取付部
38c シール部材
38d ネジ挿通孔
40 クランプ機構
41 クランプピストン
42 クランプディスク
55 シリンダ部材
55b 雄ネジ
55c 基端部
56 止めネジ(ネジ部材)
58 蓋部材(ベース部)
58b 取付部
58d 雌ネジ孔
62 ホルダ
62a 大径部
62b 小径部
62g 円盤部
62g1 小径部側を向く端面
65 シリンダ部材
65a 円筒部
65e 拡径部
65e1 円筒部側を向く端面(係合面)
72 ホルダ
72a 大径部
72g 雌ネジ孔
11a 雌ネジ孔
82 ホルダ
82a 大径部
82g フランジ部
82h ネジ挿通孔
88 蓋部材
17 収容孔
17a 雌ネジ部
17b 外側配置部
17c 雌ネジ孔
92 ホルダ
92a 大径部
92i 傾斜部
95f 押付部材
96 止めネジ(ネジ部材)
98 蓋部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8