(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027802
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ストーマ装具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/445 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A61F5/445
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133075
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】516032713
【氏名又は名称】サンシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】川口 安男
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC24
4C098CD01
4C098CE14
(57)【要約】
【課題】装着作業が容易で、尿漏れも生じにくいストーマ装具を提供すること。
【解決手段】一方の面を皮膚S3に接着させる面板10と、面板10の反対側の面を覆うキャップ40と、装具取付補助具80とを具備するストーマ装具1である。面板10にはストーマS2を露出するストーマ露出孔17を形成する。キャップ40には尿収納凹部45と尿収納凹部45に溜まる尿を外部に排出する排出部51とを形成する。面板10の外周とキャップ40の外周を連結部75によって折り曲げ自在に連結する。面板10とキャップ40の両者に、連結部75を折り曲げることで両者を重ね合わせた際に尿収納凹部45の周囲の部分を環状に且つ水密状に接続する接続部(第1,第2の環状凹部21,23、第1,第2の環状突起63,65)を形成する。装具取付補助具80は、面板10とキャップ40を重ね合わせた状態でその上から被せられ、吸盤部83を皮膚S3に吸着させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面を皮膚に接着させる面板と、
前記面板の皮膚に接着する反対側の面を覆うキャップとを具備し、
前記面板には、前記皮膚上のストーマを露出するストーマ露出孔を形成し、
前記キャップには、尿収納凹部と、当該尿収納凹部に溜まる尿を外部に排出する排出部とを形成し、
前記面板の外周と前記キャップの外周を、連結部によって連結し、
前記面板と前記キャップの両者に、前記連結部を折り曲げることで両者を重ね合わせた際に、前記キャップの尿収納凹部の周囲の部分を環状に且つ水密状に接続する接続部を形成したことを特徴とするストーマ装具。
【請求項2】
請求項1に記載のストーマ装具であって、
前記接続部は、前記キャップ又は前記面板の何れか一方に形成した環状突起と、前記キャップ又は前記面板の何れか他方に形成され前記環状突起に係合する環状凹部と、によって構成されていることを特徴とするストーマ装具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のストーマ装具であって、
前記面板の前記キャップを接合する側の面の前記ストーマ露出孔の周囲には、当該ストーマ露出孔を環状に囲んで突出して当該ストーマ露出孔への尿の浸入を防止する尿侵入防止部を設けたことを特徴とするストーマ装具。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載のストーマ装具であって、
前記ストーマ装具はさらに、当該ストーマ装具の面板の皮膚への接着による取り付けを補強する装具取付補助具を具備し、
当該装具取付補助具は、
前記キャップの前記面板を重ね合わせる反対側の面の前記尿収納凹部の周囲の面に当接する押圧部と、
当該押圧部の外周から外方に向けて張り出す位置に取り付けられ、前記面板と前記キャップを重ね合わせて前記押圧部で押圧した状態で前記皮膚に吸着させる吸盤部と、
を有することを特徴とするストーマ装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーマ装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術によって身体に人工的に作られた尿の出口(排泄口)であるストーマとして、人工膀胱である尿路ストーマ(ウロストミー)がある。また、ストーマには、これを作る目的によって、永久的なストーマと、後からストーマを閉じる一時的ストーマとがある。
【0003】
そしてこのストーマから排出される尿を受け止めるため、当該ストーマの部分にストーマ装具が取り付けられる。
【0004】
ストーマ装具は、例えば特許文献1の
図3,
図4に示すように、ストーマの周囲を囲むように直接皮膚に貼り付けられる面板1と、当該面板1に着脱自在に接続されストーマから排出される排泄物を受け止めて収納するストーマ袋(パウチ)6とを有して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のストーマ装具においては、面板1とストーマ袋6とが別部品であるため、面板1を身体に装着する作業と、面板1にストーマ袋6を装着する作業とを全く別工程として行わなければならず、装着作業が煩雑であり、装着時間もかかっていた。
【0007】
また、ストーマから排出された尿の一部が開口2から粘着層3側ににじみ出て、粘着層3による皮膚への粘着力を弱めてしまい、また当該皮膚を汚してしまう虞もあった。
【0008】
また、装着したストーマ袋6に尿が溜まり重くなると、当該ストーマ袋6への衝撃などにより、人の腹部に接着していた面板1の位置がずれてしまい、尿漏れを起こす虞もあった。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、装着作業が容易で、尿漏れも生じにくいストーマ装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、一方の面を皮膚に接着させる面板と、前記面板の皮膚に接着する反対側の面を覆うキャップとを具備し、前記面板には、前記皮膚上のストーマを露出するストーマ露出孔を形成し、前記キャップには、尿収納凹部と、当該尿収納凹部に溜まる尿を外部に排出する排出部とを形成し、前記面板の外周と前記キャップの外周を、連結部によって連結し、前記面板と前記キャップの両者に、前記連結部を折り曲げることで両者を重ね合わせた際に、前記キャップの尿収納凹部の周囲の部分を環状に且つ水密状に接続する接続部を形成したことを特徴としている。
本発明によれば、面板を皮膚に接着した後、連結部を折り曲げて面板とキャップとを重ね合わせて両者の環状の接続部を接続するだけで、容易に両者を一体化でき、且つ容易に尿を一時的に溜める尿収納室を有するストーマ装具を構成することができる。即ち、折り畳み式のため、一人で簡単に装着が行える。
また本発明に係るストーマ装具は、面板とキャップを連結部で接続する構成なので、例えばこれら面板とキャップと連結部を成形樹脂によって一体成型することができ、その製造を容易に行うことができる。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記接続部は、前記キャップ又は前記面板の何れか一方に形成した環状突起と、前記キャップ又は前記面板の何れか他方に形成され前記環状突起に係合する環状凹部と、によって構成されていることを特徴としている。
本発明によれば、環状突起と環状凹部を係合することで、面板とキャップとを重ね合わせて形成した尿収納室の周囲をより確実に密封することができ、尿漏れをより確実に防止することができる。
環状突起と環状凹部を2組以上リング状に形成することで、さらに高い尿漏れ防止効果を発揮させることができる。
【0012】
また本発明は、上記特徴に加え、前記面板の前記キャップを接合する側の面の前記ストーマ露出孔の周囲には、当該ストーマ露出孔を環状に囲んで突出して当該ストーマ露出孔への尿の浸入を防止する尿侵入防止部を設けたことを特徴としている。
本発明によれば、面板とキャップとを重ね合わせて形成した尿収納室の内壁面に付着した尿の内、面板側の内壁面に付着した尿が、ストーマ露出孔を介してその反対面側(皮膚への接着面側)に侵入するのを効果的に防止することができる。
【0013】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ストーマ装具はさらに、当該ストーマ装具の面板の皮膚への接着による取り付けを補強する装具取付補助具を具備し、当該装具取付補助具は、前記キャップの前記面板を重ね合わせる反対側の面の前記尿収納凹部の周囲の面に当接する押圧部と、当該押圧部の外周から外方に向けて張り出す位置に取り付けられ、前記面板と前記キャップを重ね合わせて前記押圧部で押圧した状態で前記皮膚に吸着させる吸盤部と、を有することを特徴としている。
本発明によれば、面板とキャップとを重ね合わせて面板の接着面を皮膚に接着した上で、さらにキャップ上に取り付けた装具取付補助具の吸盤部を皮膚に吸着するので、ストーマ装具の皮膚への取付強度を高めることができ、装着したストーマ装具の皮膚からのずれや脱落をより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ストーマ装具の装着作業が容易に行え、また尿漏れをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ストーマ装具1を別の角度から見た分解斜視図である。
【
図3】面板10とキャップ40を重ね合わせた状態でのストーマ装具1の分解斜視図である。
【
図4】面板10とキャップ40を重ね合わせた状態での別の角度から見たストーマ装具1の分解斜視図である。
【
図5】面板10とキャップ40を重ね合わせる前の状態の断面図である。
【
図6】重ね合わせた状態の面板10及びキャップ40と装具取付補助具80の断面図である。
【
図7】重ね合わせた状態の面板10及びキャップ40に装具取付補助具80などを取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるストーマ装具1の分解斜視図、
図2は当該ストーマ装具1を別の角度から見た分解斜視図である。これらの図に示すように、ストーマ装具1は、面板(ベース)10と、キャップ40と、キャップ40の一方の面上に取り付けられる装具取付補助具80とを具備して構成されている。面板10とキャップ40は両者の外周部分が連結部75によって連結されている。なお以下の説明において、「上」とはこのストーマ装具1を人体に取り付けた際に人の頭側を向く方向(即ち
図1乃至
図8の紙面上方向)をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0017】
ここで
図3~
図7はストーマ装具1の組立方法説明図であり、
図3と
図4は面板10とキャップ40を重ね合わせた状態でのストーマ装具1の分解斜視図、
図5は面板10とキャップ40を重ね合わせる前の状態の断面図、
図6は重ね合わせた状態の面板10及びキャップ40と装具取付補助具80の断面図、
図7は重ね合わせた状態の面板10及びキャップ40に装具取付補助具80などを取り付けた状態を示す断面図である。
【0018】
図1,
図2,
図5に示すように、面板10は、面板本体11と吸水部材31と接着層35とを具備して構成されている。
【0019】
面板本体11は、柔軟性を有し半透明な合成樹脂を円板状であって、その中央の接着層35を設けた面とは反対面側に向けて円形に突出する突出部13を設け、当該突出部13の突出面15の中央に円形の貫通孔からなるストーマ露出孔17を形成して構成されている。突出部13によってその内側に形成される円形の凹部は、吸水部材収納部19となっている。面板本体11の前記突出部13を突出する側の面の当該突出部13の周囲を囲む平面上には、当該突出部13を二重に環状に囲むように、第1の環状凹部21と第2の環状凹部23が形成されている。第1の環状凹部21と第2の環状凹部23は何れも細溝状であり、下記するキャップ40に形成された第1の環状突起63と第2の環状突起65と合わせて第1の接続部と第2の接続部を構成する。ストーマ露出孔17の周囲を囲む位置には、全周にわたって、前記突出部13の突出方向に向けて突出する尿侵入防止部25が形成されている。尿侵入防止部25は、突出方向に向けてその径を大きくしていく形状に形成されている。
【0020】
吸水部材31は、吸水性のある部材を円形リング状に形成し、その中央に円形の開口部33を形成して構成されている。吸水部材31の外径寸法は前記吸水部材収納部19の内径寸法と略同一とし、吸水部材31の厚み寸法は前記吸水部材収納部19の深さ寸法と略同一とし、開口部33の内径寸法は前記ストーマ露出孔17の内径寸法と略同一としている。
【0021】
接着層35は、例えば両面テープを略円形に形成し、中央に開口部37を形成して構成されている。接着層35の外径寸法は前記面板本体11の外径寸法と略同一とし、開口部37の内径寸法は前記ストーマ露出孔17の内径寸法と略同一としている。この接着層35の一方の面(露出面)は、人の皮膚に接着されるが、当該接着が行われるまでは、当該一方の面には、図示しない剥離フィルムが貼り付けられている。
【0022】
次にキャップ40は、前記面板10の外形と略同一の外形(同一外径寸法)の円形の柔軟性を有し半透明な合成樹脂製の板体によって構成され、その中央には一方の面方向(前記面板10を重ねる面の反対面側方向)に向けて突出するように略ドーム形状の突状部41を設け、突状部41の周囲を囲む平面状部分を面板取付部43としている。突状部41の裏側(面板10を重ね合わせる面側)に形成される凹状部分を尿収納凹部45とする。
【0023】
突状部41の外周側面の前記連結部75側を向く部分には、排出管(排出部)51が連結部75方向を向くように接続されている。排出管51は円柱状であって、前記突状部41の外周側面に設けた円形の小孔からなる排出孔47に嵌合するように取り付けられている。突状部41の面には、並列に略直線状の複数本の凹凸部59が形成されている。凹凸部59は、尿収納凹部45の内面に付着した尿を排出管51方向に向かって誘導する。また凹凸部59によって、温度変化によるキャップ40の膨張収縮を吸収することができる。
【0024】
面板取付部43の外周の所定位置には、半円形状に突出する摘み部61が形成されている。摘み部61は重ね合わせたキャップ40を面板10から引き剥がす際に使用する。また面板取付部43の、前記面板10に設けた第1の環状凹部21と第2の環状凹部23に対向する位置には、それぞれ第1の環状突起63と第2の環状突起65が形成されている。第1の環状突起63は前記第1の環状凹部21に環状且つ水密状に係合し、第2の環状突起65は前記第2の環状凹部23に環状且つ水密状に係合するように形成されている。面板取付部43の第1の環状突起63の外側のリング状の表面には、リング状の接着層64が形成されている。接着層64は両面テープの一方の面を前記リング状の表面に貼り付けて構成されている。接着層64の他方の面(露出する側の面)には、図示はしないが剥離フィルムが貼り付けられている。面板取付部43の前記第1,第2の環状突起63,65を設けた反対側の面には、略等間隔に複数個(この例では3個)の係止突起67が突出している。これら係止突起67は円柱状の小突起67aの先端にその外径を少し大きくしてなる係止部67bを設けて構成されている。
【0025】
連結部75は、合成樹脂を平板状(帯状)に形成して構成されている。連結部75は可撓性を有し、180°折り曲げることができる。この連結部75と、この連結部75が連結する面板10とキャップ40(排出管51を除く)は、柔軟性のある半透明な合成樹脂を一体成形することによって製造される。
【0026】
装具取付補助具80は、合成樹脂を略リング状で平板状に形成してなる補助具本体81と、補助具本体81に取り付けられる複数個(この例では3個)の吸盤部83とを具備して構成されている。
【0027】
補助具本体81は、リング状となっている押圧部85と、押圧部85の外周から略等間隔に外方に突出する複数(この例では3つ)の吸盤取付部87と、押圧部85の外周から略180°間隔で外方に突出する複数(この例では2つ)のベルト取付部90とを具備して構成されている。補助具本体81は合成樹脂の一体成形によって形成されている。押圧部85の中央には円形の開口91が形成されている。開口91の内径は、前記キャップ40の面板取付部43の内径と略同一もしくはそれより少し大きい寸法に形成されている。また押圧部85の外径は、前記キャップ40の面板取付部43の外径と略同一寸法に形成されている。押圧部85の略等間隔の所定位置(前記キャップ40の各係止突起67に対向する位置)には複数(この例では3つ)の小孔からなる係止部93が形成されている。係止部93の内径寸法は前記係止突起67の小突起67aの外径寸法と略同一で、係止部67bの外径寸法よりも若干小さい寸法に形成されている。
【0028】
吸盤取付部87は略矩形状であり、その先端近傍の中央位置には、小孔からなる吸盤取付部89(
図6参照)が形成されている。ベルト取付部90は略矩形状であり、その中に細長形状のベルト挿通孔90Aを設けている。前記各吸盤取付部89には吸盤部83が取り付けられる。吸盤部83は、前記吸盤取付部89に取り付けられる吸盤基部83aと、吸盤基部83aの先端に設けられる略ドーム形状の吸盤83bとを、柔軟性のある合成樹脂によって一体成形して形成されている。吸盤83bの向きは、前記キャップ40側を向く向きである。
【0029】
次に、以上のような各構成部品を有するストーマ装具1の使用方法(人への装着方法)を説明する。なお前述のように、接着層35と接着層64の露出する側の面には、それぞれ上記図示しない剥離フィルムが貼り付けられているものとする。
【0030】
ストーマ装具1を人に装着するには、まず前記面板10の接着層35上の剥離フィルムを剥がし、当該面板10の接着層31を、
図5に示すように、人の腹部S1などに露出するストーマS2の上から、当該腹部S1の皮膚S3に貼り付ける。このときストーマS2が、面板10のストーマ露出孔17(その中心位置)に露出するようにする。
【0031】
次に、接着層64の表面に貼り付けられていた図示しない剥離フィルムを剥がした上で、
図5に示すように、連結部75の部分を折り曲げて行き、
図6に示すように、面板10の突出部13を突出した面側に、キャップ40を重ね合わせる。このときキャップ40の第1の環状突起63と第2の環状突起65を、それぞれ面板10の第1の環状凹部21と第2の環状凹部23に挿入・係合すると同時に、キャップ40の接着層64を面板10の外周近傍の面上に環状に接着する。第1の環状突起63と第1の環状凹部21の係合は環状で水密状に行われ、また第2の環状突起65と第2の環状凹部23の係合も環状で水密状に行われ、さらに接着層64によってそれらの外側の面同士も環状に接着されるので、3重の水密構造により、キャップ40の尿収納凹部45とこれに対向する面板10によって構成される尿収納室46内は水密状の空間(但し排出管51は外気に連通している)になる。
【0032】
次に、
図6に示すように、面板10上に重ね合わせたキャップ40の背面側(上側)から、装具取付補助具80を被せ、その際、装具取付補助具80の開口91にキャップ40の排出管51を通して、
図7に示すように、その面をキャップ40の面板取付部43の表面に当接する。このとき、キャップ40の各係止突起67を装具取付補助具80の各係止部93に挿入し、各係止突起67の係止部67bによって係止・固定する。そして装具取付補助具80の各吸盤部83を皮膚S3に吸着させることによって、ストーマ装具1の皮膚S3への取付強度を補強する。さらに必要に応じて、人の腹部S1に巻き回した図示しないベルトを、装具取付補助具80の一対のベルト取付部90のベルト挿通孔90Aに挿入して締め付け、これによってさらにストーマ装具1の取付強度を補強する。
【0033】
以上のようにして人に装着されたストーマ装具1には、
図8に示すように、その排出管51の先端に接続コネクタ69によって可撓性を有するリードパイプ(この例ではビニールパイプ)71を接続する。リードパイプ71の長さは10cm程度とする。次にリードパイプ71の先端に、リードパイプ71側から順番に逆止弁53と開閉バルブ55を取り付ける。逆止弁53は、排出管51のキャップ40に接続された側からの液体は通すが、排出管51のリードパイプ71側からの液体は通さない構造になっている。開閉バルブ55には、コック57が取り付けられており、コック57を回転することで開閉状態が操作される。なお、リードパイプ71、さらには逆止弁53や開閉バルブ55は、このストーマ装具1を人に取り付ける前に、予めストーマ装具1に取り付けておいても良い。
【0034】
そして開閉バルブ55の先端側に可撓性を有する尿排出用パイプ(この例ではビニールパイプ)73を接続コネクタ75によって接続し、その先端に図示しない蓄尿袋を接続する。畜尿袋は尿を溜めておく袋であり、例えば太もも部分などの人体の比較的目立たない場所に取り付けられる。これによってストーマ装具1の組み立て及び人への装着が完了する。
【0035】
そして
図8に矢印で示すように、ストーマS2から排出された尿は尿収納室46内に導入される。このとき開閉バルブ55が閉じられているとすると、尿は尿収納室46内に溜められる。尿収納室46は、前記3重の水密構造により、より確実に水密状の空間になっているので、尿がキャップ40と面板10の間から漏れることはない。また尿収納室46内に溜められた尿の一部が、面板10のストーマ露出孔17を介して皮膚S3側に侵入しようとすると、当該尿の一部は吸水部材31に吸水され、その侵入が防止される。さらに吸水部材31を乗り越えて皮膚S3側に尿が侵入しても、環状に皮膚S3に接着された接着層35によって外部への尿漏れはより確実に防止される。特にこの実施形態においては、装具取付補助具80によって面板10を皮膚S3に押し付けているので、より確実に前記尿漏れを防止できる。
【0036】
またストーマ装具1は、尿侵入防止部25を設けているので、尿収納室46の内壁面に付着した尿の内、面板10側の内壁面に付着した尿が、ストーマ露出孔17を介してその反対面側(皮膚S3側)に侵入するのを効果的に防止することができる。これによっても尿が接着層35に付着してその粘着性が阻害されることを防止できる。
【0037】
また上述のようにストーマ装具1は、面板10の接着層35を皮膚S3に接着した上で、面板10とキャップ40とを重ね合わせ、さらにキャップ40上に取り付けた装具取付補助具80の吸盤部83を皮膚S3に吸着するので、装着が容易で、ストーマ装具1の皮膚S3への取付強度が高く、装着したストーマ装具1の皮膚S3からのずれや脱落をより確実に防止することができる。
【0038】
そしてストーマ装具1内の尿を排出する場合は、前記開閉バルブ55を開く。これによってストーマ装具1内の尿は、リードパイプ71、逆止弁53、開閉バルブ55、尿排出用パイプ73を介して図示しない蓄尿袋に溜められる。ストーマ装具1の排出管51は、ストーマ装具1を取り付けた人からは見えにくい位置に位置するが、本実施形態では排出管51と開閉バルブ55の間に所定長さ(例えば10cm程度)の可撓性のあるリードパイプ71を取り付けたので、このリードパイプ71を屈曲させてその先端側を上向きにすることで、開閉バルブ55の操作が行い易くなっており、また開閉バルブ55先端への尿排出用パイプ73の接続作業も容易に行える。
【0039】
なお、ストーマ装具1を人体に装着したまま、例えばシャワーを浴びたり、入浴したりするような場合は、開閉バルブ55を閉じた状態で尿排出用パイプ73を取り外し、人に装着したストーマ装具1全体を覆う図示しない保護シールを腹部S1の皮膚S3に貼り付ければよい。
【0040】
以上説明したように、ストーマ装具1は、連結部75を折り曲げて面板10とキャップ40とを重ね合わせて両者の環状の接続部(第1,第2の接続部)を接続するだけで、容易に両者を一体化できて装着が容易であり、容易に尿を一時的に溜める尿収納室46を尿漏れがなく構成できる。また面板10とキャップ40を連結部75で接続する構成なので、本実施形態のように、これら面板10とキャップ40と連結部75を成形樹脂によって一体成型することができ、ストーマ装具1を容易に安価に製造できる。またストーマS2の手入れが容易に行える。またストーマ装具1を構成する面板10とキャップ40と連結部75を上記実施形態のように柔軟性を有する材料で構成すれば(さらに装具取付補助具80にも柔軟性を持たせれば)、このストーマ装具1を人体に装着した際、体の動きに柔軟に対応でき、このことからも尿漏れをより確実に防止できる。さらにストーマ装具1を構成する面板10とキャップ40と連結部75を上記実施形態のように半透明な材料で構成すれば(さらに装具取付補助具80も半透明な材料で構成すれば)、このストーマ装具1を人体に装着した際、ストーマ装具1内にどのくらい尿が溜まっているかを容易に確認することができる。なお半透明な材料の代わりに、透明な材料を用いても良い。
【0041】
またストーマ装具1を構成する面板10とキャップ40と連結部75を肌色に近い色彩で構成すれば(さらに装具取付補助具80も肌色に近い色彩で構成すれば)、人に装着したストーマ装具1を目立たなくすることができ、これを使用する人のストレスを緩和することができる。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、面板10とキャップ40と装具取付補助具80とによってストーマ装具1を構成したが、場合によっては、装具取付補助具80は省略し、面板10とキャップ40によってストーマ装具を構成しても良い。また上記実施形態では面板10の形状、キャップ40の形状を、何れも円形に形成したが、他の各種形状、例えば四角形、その他の多角形、長方形、楕円形など、他の各種形状で構成しても良い。上記実施形態では、連結部75を帯状の平板で構成したが、折り曲げ自在にできるものであればどのような形状でも良く、例えば複数本の細棒を並列にして各細棒それぞれの両端を面板とキャップに連結する構造であっても良いし、中央に折り曲げ用の肉薄部分を設けた構成であっても良いし、連結部を面板10やキャップ40とは別部材で構成してその両端を両者につなげても良い等、種々の変形が可能である。
【0043】
また接続部を構成する第1,第2の接続部(第1,第2の環状凹部21,23と第1,第2の環状突起63,65)は、何れか1組のみであっても良い。また面板10側に環状突部、キャップ40側に環状凹部を設けて接続部を構成しても良い。また装具取付補助具80に設ける吸盤部83の数も、3つ以外の各種個数であっても良い。また場合によってはベルト取付部90は設けなくても良いし、逆に吸盤部83を省略してベルト取付部90のみとしても良い。また上記例では、面板10とキャップ40を重ね合わせた後に装具取付補助具80を取り付けた組立方法を示したが、先にキャップ40に装具取付補助具80を取り付け、その後当該キャップ40を面板10に重ね合わせても良い。
【0044】
またキャップ40の突状部41の所定位置(上部が好ましい)に、貫通する小孔からなるリーク孔を設け、このリーク孔を粘着テープ(開閉手段)によってキャップ40の表面側から塞いでおくことが好ましい。前記開閉バルブ55を開いて尿を排出する際、その排出がスムーズに行えない場合は、当該粘着テープを剥がしてリーク孔を開き、大気圧を尿収納室46内に供給することで前記尿の排出をスムーズにさせることができる。尿収納室46内から尿を排出した後は、再びリーク孔を粘着テープで塞ぎ、尿収納室46内を密閉する。なお上記粘着テープとして、通気性はあるが液体は通さない布テープを用いれば、この粘着テープを剥がさなくても尿収納室46内を常に大気圧に保つことができて尿の排出をスムーズに行わせることができる。
【0045】
またストーマS2の大きさは人によってそれぞれ異なる。このため上記面板10に設けるストーマ露出孔17の大きさ(内径)の異なるものを複数種類そろえておくことが好ましい。このとき面板10の外径寸法は同一外径にしておくことが好ましい。例えば、ストーマ露出孔17の内径として、大(内径50mm)、中(内径40mm)、小(内径30mm)としたものをそろえておく。
【0046】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1 ストーマ装具
10 面板(ベース)
17 ストーマ露出孔
21 第1の環状凹部(接続部)
23 第2の環状凹部(接続部)
25 尿侵入防止部
35 接着層
40 キャップ
45 尿収納凹部
46 尿収納室
51 排出管(排出部)
63 第1の環状突起(接続部)
65 第2の環状突起(接続部)
75 連結部
80 装具取付補助具
83 吸盤部
85 押圧部
S1 腹部
S2 ストーマ
S3 皮膚