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特開2023-27815酸性ガス回収装置及び酸性ガス回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027815
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】酸性ガス回収装置及び酸性ガス回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20230224BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20230224BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230224BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20230224BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20230224BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133103
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100118474
【弁理士】
【氏名又は名称】寺脇 秀▲徳▼
(74)【代理人】
【識別番号】100141911
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 譲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】森垣 勇人
(72)【発明者】
【氏名】村松 武彦
(72)【発明者】
【氏名】半田 優介
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AB01
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA12
4D002BA13
4D002BA16
4D002BA20
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA08
4D002EA13
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC06
4D020CB08
4D020CC09
4D020CC10
4D020CC30
4D020CD01
4D020CD04
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC28
4G146JC37
(57)【要約】
【課題】高温や減圧を必要とせずに吸収液から不純物含有物を除去する酸性ガス回収装置及び酸性ガス回収方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の酸性ガス回収装置は、酸性ガスを含む被処理ガス中の少なくとも一部の前記酸性ガスを、アミン系化合物を含む吸収液に吸収させ、前記被処理ガスを酸性ガス除去ガスとして排出する酸性ガス吸収部と、前記酸性ガス吸収部で前記酸性ガスを吸収した吸収液から前記酸性ガスを放出させる再生部と、吸収液の少なくとも一部と、外部から供給される有機溶媒とを混合した混合液を生成し、前記混合液から不純物含有物を分離する分離部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスを含む被処理ガス中の少なくとも一部の前記酸性ガスを、アミン系化合物を含む吸収液に吸収させ、前記被処理ガスを酸性ガス除去ガスとして排出する酸性ガス吸収部と、
前記酸性ガス吸収部で前記酸性ガスを吸収した吸収液から前記酸性ガスを放出させる再生部と、
吸収液の少なくとも一部と、外部から供給される有機溶媒とを混合した混合液を生成し、前記混合液から不純物含有物を分離する分離部と、
を有する酸性ガス回収装置。
【請求項2】
前記不純物含有物が分離された前記混合液から、前記有機溶媒を蒸留する第1蒸留部をさらに有する請求項1に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項3】
前記第1蒸留部にて蒸留した前記有機溶媒を前記分離部に供給する請求項2に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項4】
前記分離部に供給する前記吸収液から、水を蒸留する第2蒸留部をさらに有する請求項2または3に記載の酸性ガス回収装置。
【請求項5】
前記分離部は、前記再生部にて酸性ガスを吸収したリッチ吸収液から前記酸性ガスを放出させたリーン吸収液の少なくとも一部と、外部から供給される前記有機溶媒とを混合した混合液を生成し、前記混合液から不純物含有物を分離する、請求項1~4いずれか一つに記載の酸性ガス回収装置。
【請求項6】
前記有機溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールの少なくとも1つである、請求項1~5いずれか1つに記載の酸性ガス回収装置。
【請求項7】
酸性ガスを含む被処理ガス中の少なくとも一部の前記酸性ガスを、アミン系化合物を含む吸収液に吸収させ、前記被処理ガスを酸性ガス除去ガスとして排出する酸性ガス吸収工程と、
前記酸性ガス吸収工程で前記酸性ガスを吸収した吸収液から前記酸性ガスを放出させる再生工程と、
吸収液の少なくとも一部と、外部から供給される有機溶媒とを混合した混合液を生成し、前記混合液から不純物含有物を分離する分離工程と、
を有する酸性ガス回収方法。
【請求項8】
前記不純物含有物が分離された前記混合液から、前記有機溶媒を蒸留する第1蒸留工程をさらに有する請求項7に記載の酸性ガス回収方法。
【請求項9】
前記第1蒸留工程にて蒸留した前記有機溶媒を前記分離工程に供給する請求項8に記載の酸性ガス回収方法。
【請求項10】
前記分離工程に供給する前記吸収液から、水を蒸留する第2蒸留工程をさらに有する請求項8または9に記載の酸性ガス回収方法。
【請求項11】
前記分離工程は、前記再生工程にて酸性ガスを吸収したリッチ吸収液から前記酸性ガスを放出させたリーン吸収液の少なくとも一部と、外部から供給される前記有機溶媒とを混合した混合液を生成し、前記混合液から不純物含有物を分離する、請求項7~10いずれか一つに記載の酸性ガス回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、酸性ガス回収装置及び酸性ガス回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の化石燃料を使用する火力発電所や製鉄所などでは、ボイラにおいて化石燃料を燃焼させることで発生する燃焼排ガス、石炭をガス化した石炭ガス化ガス(ガス化ガス)、天然ガスなどは、例えば、二酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、硫化水素(HS)などの酸性ガス成分を含んでいる。
【0003】
このような燃焼排ガスなどに含まれる酸性ガス成分が大気中に放出されることを抑制するために、主として、酸性ガス成分であるCOを回収するための装置として、吸収塔、再生塔から構成されるCarbon dioxide Capture and Storage(CCS)装置がある。このCCS装置では、酸性ガス成分を含むガスを吸収塔内でアミノ基含有化合物(アミン)を含む吸収液と気液接触させて、吸収液中に酸性ガス成分を吸収させることで、処理ガス中から酸性ガス成分を除去し、COを回収している。再生塔では、酸性ガス成分を吸収した吸収液を加熱することで、酸性ガス成分を除去し、吸収液を再利用可能に再生する。
【0004】
しかし、CCS装置の運転中に燃焼排ガス中のCOを吸収する際に、SOx、NOxの他に、硫化カルボニル、シアン化水素、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸などが吸収液中のアミンと反応して熱安定性塩(Heat Stable Salt、以下、HSSと称する)と呼ばれる不純物が生成される。また、吸収液を加熱して再生する際に熱またはガス中の酸素と反応してアミンが分解することによってもHSSが生成される。
【0005】
HSSは、CCS装置の再生塔で吸収液を再生する際の加熱では分解されず、吸収液から分離されないため、吸収液中に蓄積される。HSSが蓄積すると、吸収液の酸性ガス吸収効率が低下するのみならず、CCS装置の腐食の原因となることから、吸収液からのHSSの除去が望まれている。また、アミンはHSS以外の不純物も生成し、煤塵などの排ガス由来成分やプラント配管からの金属成分などの不純物も蓄積する。
【0006】
HSSなどの不純物を吸収液から除去する方法として、蒸留が知られている。蒸留は蒸発するアミンと、蒸発しないHSSやその他不純物を残渣として分離することができる。しかし蒸留では、アミンの沸点が高い場合は、高温が必要となり、アミンの熱劣化や蒸発しなかったアミンが残渣に残り損失となる。そのため、減圧下で温度を下げる減圧蒸留も実施されるが、減圧のためのポンプやエネルギーが必要となり、装置も複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-76810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高温や減圧を必要とせずに吸収液から不純物含有物を除去する酸性ガス回収装置及び酸性ガス回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、実施形態の酸性ガス回収装置は、酸性ガスを含む被処理ガス中の少なくとも一部の前記酸性ガスを、アミン系化合物を含む吸収液に吸収させ、前記被処理ガスを酸性ガス除去ガスとして排出する酸性ガス吸収部と、前記酸性ガス吸収部で前記酸性ガスを吸収した吸収液から前記酸性ガスを放出させる再生部と、吸収液の少なくとも一部と、外部から供給される有機溶媒とを混合した混合液を生成し、前記混合液から不純物含有物を分離する分離部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態による酸性ガス回収装置の構成例を示す概略図
図2】第2の実施形態による酸性ガス回収装置の構成例を示す概略図
図3】第3の実施形態による酸性ガス回収装置の構成例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による酸性ガス回収装置の構成例を示す概略図である。本実施の形態では、酸性ガス回収装置として、酸性ガスとして二酸化炭素(CO)を回収するCCS装置を例に挙げて説明する。ただし、CCS装置に限定されるものではない。図1に示される酸性ガス回収装置では、COを含有する被処理ガス(排ガス)101中のCOを吸収する吸収液は、吸収器1と再生器2との間(以下、系統内という)を循環している。吸収器1から再生器2には、被処理ガス101中のCOを吸収させた吸収液(リッチ吸収液)111が送給される。再生器2から吸収器1にはリッチ吸収液111から再生器2で一部あるいはほぼ全てのCO(酸性ガス)が除去され再生された吸収液(リーン吸収液)110aが供給される。
【0013】
なお、吸収液は、アミノ基含有化合物(アミン)と水とを含むアミン系水溶液が好適である。好ましいアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのような第1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのような第2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのような第3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類などが挙げられ、これらを、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
吸収液は、これらのアミンを、通常、10~70重量%含む水溶液として使用される。また、吸収液には、必要に応じて、反応促進剤、COなど酸性ガスの吸収性能を向上させる含窒素化合物、プラント設備の腐食を防止するための防食剤、泡立ち防止のための消泡剤、吸収液の劣化防止のための酸化防止剤、PH調整剤など、その他の化合物を、吸収液の効果を損なわない範囲で任意の割合で適宜含有することができる。
【0015】
被処理ガス101の典型例は、COを含有する排気ガスであって、例えば、火力発電所などのボイラやガスタービンなどから排出される燃焼排ガス、製鉄所で発生するプロセス排ガスなどである。被処理ガス101は、好ましくは、送風機などにより昇圧され、冷却器で冷却された後、被処理ガス供給ラインL1を通り吸収器1の下部から器内に供給することができる。
【0016】
図1に示される吸収器1は、被処理ガス101中のCO(酸性ガス)を、ラインL14を介して吸収器1に供給されるリーン吸収液110aに吸収させる酸性ガス吸収部1aと、酸性ガス吸収部1aでCO(酸性ガス)が除去された被処理ガス101(酸性ガス除去ガス)を洗浄液121aで洗浄し、酸性ガス除去ガスに同伴する吸収液を回収するガス洗浄部3と、を有している。
【0017】
ここで、酸性ガス吸収部1aは、好ましくは充填材で形成され、気液接触効率を高めている。酸性ガス吸収部1aの上方には液分散器(図示せず)を設けることができ、吸収器1に供給されるリーン吸収液110aは、液分散器により酸性ガス吸収部1aに向けて分散落下する。吸収器1内に送給された被処理ガス101は、吸収器1の下部から塔頂(上部)側に向けて流れる。酸性ガス吸収部1aにおいて、吸収器内を上昇する被処理ガス101は、リーン吸収液110aと対向流接触すると、例えば、下記式(1)、(2)のような反応が起きて、熱分解性塩(RNHCO)および熱安定性塩(HSS、RNHX)が形成され、被処理ガス101中のCOが、リーン吸収液110aに吸収されて、被処理ガス101から除去される。
【0018】
リーン吸収液110aは、被処理ガス101中のCO(酸性ガス)を吸収して、リッチ吸収液111となり、下部に貯留され、このリッチ吸収液111には、被処理ガス101に含まれる酸素との反応により生じた有機酸、被処理ガス101に含まれるSOx、NOx、硫化カルボニル、シアン化水素、チオシアン酸、チオ硫酸、その他の無機酸などの吸収によって生じたHSSが蓄積される。ここで、Rは、水素、置換または非置換のアルキル基(ヘテロ環を形成している場合もある)を示す。

N+CO+HO → RNHCO ・・・(1)
N+HX → RNHX ・・・(2)
【0019】
酸性ガス吸収部1aを通過した酸性ガス除去ガスは、吸収器1の内部を上昇して、ガス洗浄部3に供給される。酸性ガス除去ガスは、ガス洗浄部3で浄化された後、処理後燃焼排ガス102として、吸収器1の上部に設けられる処理後燃焼排ガス排出ラインL2から外部に排出される。
【0020】
一方、吸収器1の下部に貯留されたリッチ吸収液111は、吸収器1の下部から排出され、リッチ吸収液供給ラインL3を通って、リッチ吸収液供給ラインL3に設けられたポンプ(図示せず)により昇圧され、熱交換器9において再生器2で再生されたリーン吸収液110aと熱交換された後、再生器2に供給される。熱交換器9では、リッチ吸収液111を、リーン吸収液110aと熱交換させることにより、リーン吸収液110aが熱源となって、リッチ吸収液111が加熱される。逆に、リッチ吸収液111が冷却源となって、リーン吸収液110aが冷却される。なお、熱交換器9としては、プレート熱交換器、シェル&チューブ熱交換器などの公知の熱交換器を用いることができる。
【0021】
再生器2は、リッチ吸収液111からCOを放出させて、リッチ吸収液111をリーン吸収液110aとして再生している。リッチ吸収液111は、再生器2内に供給され、リボイラ8で水蒸気(スチーム)により加熱されることにより、リッチ吸収液111に含まれるCOが脱離して、リッチ吸収液111中に含まれる一部ないしほぼ全てのCOが除去されたリーン吸収液110aとなる。
【0022】
この際、リーン吸収液110aは、水蒸気を発生すると共に、残留するCOがCOガスとして放出される。COガスは、リーン吸収液110aから同時に蒸発する水蒸気と共に、再生器2の上部からラインL5に排出される。COガスおよび水蒸気を含む再生器出口ガス118は、冷却器6で冷却水により冷却され、水蒸気が凝縮して水になる。そして、この凝縮水とCOガスを含む再生器出口ガス119は、気液分離器7に供給され、COガス103が凝縮水120aから分離され、COガス103はラインL6から外部に排出される。また、凝縮水120aは、気液分離器7の下部から抜き出され、ラインL7を通り再生器2の上部に供給される。
【0023】
再生器2の下部に貯留されるリーン吸収液110aは、再生器2の下部からリーン吸収液排出ラインL4から排出され、熱交換器9においてリッチ吸収液111と熱交換して冷却される。その後、リーン吸収液110aは、冷却器5で冷却された後、ラインL14を通り吸収器1に供給される。
【0024】
リーン吸収液排出ラインL4から分岐し、分離器4と連結した吸収液抜き出しラインL8が設けられ、リーン吸収液105として抜き出される。分離器4では、有機溶媒供給ラインL9から有機溶媒104が供給される。好ましい有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどの水に溶解し、吸収液に使用しているアミンより沸点が高くない溶媒が挙げられ、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
有機溶媒は極性が水より低いため、HSSをはじめ不純物の溶解性が異なる。そのため、分離器4内で有機溶媒104とリーン吸収液105の混合液が相分離し、HSSなどの不純物含有物107が沈殿する。不純物含有物107は固相ではなく液相となっても構わない。
【0026】
分離器4ではリーン吸収液105と有機溶媒104を均一に混合するため、撹拌機などの混合手段を設置しても構わない。分離器4へリーン吸収液105と有機溶媒104は連続的に供給しても間欠的に供給しても構わないが、不純物含有物107は混合後静置することでより分離されるため、間欠的に供給して静置する時間をとることが好ましい。また、フィルター(図示せず)を設け、このフィルターに有機溶媒104とリーン吸収液105の混合液を通すことで不純物含有物107を除去することも可能である。
【0027】
不純物含有物107が除去された混合液106は、ラインL11を通して第1蒸発器10へと送られる。第1蒸発器10では、蒸気や電気ヒーターなどにより、有機溶媒104の沸点以上に混合液106が加熱されることで、混合液106から有機溶媒104を含む蒸気108が除去され、リーン吸収液109が得られる。リーン吸収液109はラインL13を通してラインL14へ送られ、再生器2から排出されたリーン吸収液110aと合流し、吸収器1へ送られる。
【0028】
例えば有機溶媒104として用いることができるアセトニトリルは沸点が82℃であり、沸点以上に加熱することで効率よくアセトニトリルだけ除去可能となる。
【0029】
分離器4へのリーン吸収液105と有機溶媒104の混合率は任意に設定できるが、リーン吸収液105と有機溶媒104の混合率は好ましくは、1:1から1:5であり、有機溶媒104の混合量が大きいほど、第1蒸発器10にて蒸発させる有機溶媒104の量が多くなり、分離に必要なエネルギーが大きくなる。
【0030】
吸収液として用いるアミンの沸点は、例えば、第1級アミンであるモノエタノールアミンは170℃、第2級アミンであるジエタノールアミンは269℃、第3級アミンであるN-メチルジエタノールアミンは247℃といずれも高い。より低い沸点を持つ有機溶媒104と混合させることで、アミンの蒸留と比較して低い温度での蒸留が可能となる。
【0031】
吸収液や有機溶媒104は、例として記載したもの以外を用いても構わない。吸収液抜き出しラインL8は系統内のどこに設けられてもよく、例えば吸収器1からリッチ吸収液111を排出するラインL3に設けられても構わない。ラインL13によるリーン吸収液109は系統内のどこに送られても良く、例えば吸収器1からリッチ吸収液111を排出するラインL3へ送られても構わない。
【0032】
さらに、中和剤をリーン吸収液105に添加しても構わない。中和剤を添加することで、アミンが形成していたHSSが中和剤と反応してアミンが遊離する。これによりアミンの回収率を向上させることができる。中和剤としては水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、水溶液として使用してもよい。
【0033】
このように本実施形態によれば、リーン吸収液105に有機溶媒104を混合することで、高温や減圧状態とせずに、リーン吸収液105から不純物含有物107を分離させて除去できる。さらに、有機溶媒104の沸点程度で混合液106を蒸留することが可能となり、高温や減圧状態とせずに混合液106から有機溶媒104を除去し、リーン吸収液109とすることができる。
【0034】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態による酸性ガス回収装置の構成例を示す概略図である。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0035】
第2の実施形態では、第1蒸発器10から排出された有機溶媒104を含む蒸気108を、ラインL12を経由して冷却器12で冷却し有機溶媒104を含む液体として、ラインL9へ送られ、分離器4で有機溶媒104として使用する。これにより、有機溶媒104の使用量を低減することが可能となる。
【0036】
また、有機溶媒104を含む液体はタンクに一度保管し、分離器4の稼働に合わせて、分離器4へ送っても構わない。
【0037】
このように本実施形態によれば、リーン吸収液105に有機溶媒104を混合することで、高温や減圧状態とせずに、リーン吸収液105から不純物含有物107を分離させて除去できる。さらに、有機溶媒104の沸点程度で混合液106を蒸留することが可能となり、高温や減圧状態とせずに混合液106から有機溶媒104を除去し、リーン吸収液109とすることができる。また、第1蒸発器10から排出された有機溶媒104を含む蒸気108を冷やして液体とし、分離器4で有機溶媒104として使用することで、有機溶媒104の使用量を低減することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態による酸性ガス回収装置の構成例を示す概略図である。なお、第1、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
第3の実施形態では、リーン吸収液排出ラインL4から分岐し、分離器4と連結した吸収液抜き出しラインL8が設けられ、抜き出されたリーン吸収液105は第2蒸発器11へと供給される。第2蒸発器11では好ましくは100℃から140℃程度とすることで、リーン吸収液105から水112がラインL15を通り除去される。水112はラインを介して系統内の吸収液に送られても構わない。
【0040】
水112を除去したリーン吸収液113はラインL16を通り分離器4へ送られ、有機溶媒104と混合される。リーン吸収液113は水112が除去されているため、不純物含有物が溶解しにくくなっており、有機溶媒104の混合量が少なくても、分離器4内で有機溶媒104とリーン吸収液113の混合液が相分離しやすくなり好ましい。
【0041】
さらに不純物含有物107が除去された混合液106は、第1蒸発器10へと送られる。第1蒸発器10では、蒸気や電気ヒーターなどにより、有機溶媒104の沸点以上に混合液106が加熱されることで、混合液106から有機溶媒104を含む蒸気108が除去され、リーン吸収液109が得られる。
【0042】
このように本実施形態によれば、リーン吸収液105に有機溶媒104を混合することで、高温や減圧状態とせずに、リーン吸収液105から不純物含有物107を分離させて除去できる。さらに、有機溶媒104の沸点程度で混合液106を蒸留することが可能となり、高温や減圧状態とせずに混合液106から有機溶媒104を除去し、リーン吸収液109とすることができる。また、第1蒸発器10から排出された有機溶媒104を含む蒸気108を冷やして液体とし、分離器4で有機溶媒104として使用することで、有機溶媒104の使用量を低減することができる。そして、リーン吸収液105から水112を除去したリーン吸収液113を分離器4に供給することで、有機溶媒104の使用量を低減することができる。
【0043】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の酸性ガス回収装置及び酸性ガス回収方法によれば、吸収液の少なくとも一部と有機溶媒とを混合することで、高温や減圧状態とせずに不純物含有物を分離及び除去できる。さらに、不純物含有物を除去した混合液から有機溶媒を蒸留することにより、高温や減圧状態とせずに混合液から有機溶媒を除去し、吸収液を再利用可能とできる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1:吸収器
2:再生器
4:分離器
10:第1蒸発器
11:第2蒸発器
104:有機溶媒
106:混合液
107:不純物含有物
108:有機溶媒104を含む蒸気
図1
図2
図3