IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027816
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230224BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20230224BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G02B27/01
B60J1/02 M
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133107
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 充紀
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA18
2H199DA19
2H199DA20
2H199DA29
2H199DA43
3D344AA19
3D344AA21
3D344AA26
3D344AA27
3D344AC24
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】偏光サングラスを着用しても視認者が表示光を視認することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置1は、ヘッドアップディスプレイ装置1が出射した意匠を表す表示光2を反射部3で反射させ、反射部3で反射した表示光2を視認者4の前方に虚像Vとして視認させるヘッドアップディスプレイ装置1であって、ヘッドアップディスプレイ装置1は、光源40と、光源40からの光を反射部3の方へ屈折させる屈折部62と、屈折した光を透過する意匠を有する意匠部74と、意匠部74を透過した表示光2をP偏光として出射する偏光部80と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイ装置が出射した意匠を表す表示光を反射部で反射させ、前記反射部で反射した前記表示光を視認者の前方に虚像として視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、光源と、前記光源からの光を前記反射部の方へ屈折させる屈折部と、屈折した光を透過する前記意匠を有する意匠部と、前記意匠部を透過した前記表示光をP偏光として出射する偏光部と、を有することを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記屈折部は、透光性を有するシート基材の前記光源側に形成されることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記偏光部は、前記視認者と前記反射部とを結ぶ方向に沿って透過軸を有することを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記意匠部は、前記偏光部に印刷形成されることを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記屈折部は前記偏光部に形成されることを特徴とする請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記反射部は不透光性の遮光部を有し、前記表示光は前記遮光部で反射されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヘッドアップディスプレイ装置は、例えば、特許文献1に開示されるように、ヘッドアップディスプレイ装置から発せられる画像を表す表示光を凹面鏡で拡大し、この拡大した表示光をフロントガラス(ウインドシールド)に照射する。運転席に着座した視認者(運転者)は、フロントガラスに反射した表示光を受けることで、フロントガラスを通じて見える背景に、その表示光による虚像を重ねて視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-91489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、ヘッドアップディスプレイ装置として液晶表示素子を2枚の偏光板で挟みこんだ液晶ヘッドアップディスプレイ装置を備える。この液晶ヘッドアップディスプレイ装置からの表示光は、通常、偏光板によって直線偏光のS偏光成分として出射されるように設定される(S偏向成分は、P偏向成分よりもフロントガラスとの反射率が高いため)。一方、偏光サングラスは、その機能から一般的に、直線偏光のP偏光成分を視認し、S偏光成分はカットするように構成される。そのため、視認者が偏光サングラスを着用した場合には、ヘッドアップディスプレイ装置における表示光が偏光サングラスを透過せず、その表示光による虚像を視認することができなくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、偏光サングラスを着用しても視認者が表示光を視認することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のヘッドアップディスプレイ装置1は、ヘッドアップディスプレイ装置1が出射した意匠を表す表示光2を反射部3で反射させ、前記反射部3で反射した前記表示光2を視認者4の前方に虚像Vとして視認させるヘッドアップディスプレイ装置1であって、前記ヘッドアップディスプレイ装置1は、光源40と、前記光源40からの光を前記反射部3の方へ屈折させる屈折部62と、屈折した光を透過する前記意匠を有する意匠部74と、前記意匠部74を透過した前記表示光2をP偏光として出射する偏光部80と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示のヘッドアップディスプレイ装置の実施形態であって、車両に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置を示す説明図。
図2図1のヘッドアップディスプレイ装置を説明するための断面図。
図3】(a)本開示の表示例を示す図。(b)本開示の文字板の意匠を示す図。
図4】本開示の第2の実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明するための断面図。
図5】本開示の第3の実施形態のヘッドアップディスプレイ装置を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のヘッドアップディスプレイ装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示のヘッドアップディスプレイ装置は、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に適用することができる。本実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置が搭載先としての自動車のインストルメントパネル内に配置される例を用いて説明する。
【0009】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「右」及び「左」は、図1乃至3における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」、「Bo.」、「R」、及び「L」に従う。
【0010】
(第1の実施形態)
ヘッドアップディスプレイ装置1は、所謂ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)であり、投影部材である車両のフロントガラス(反射部)3に搭載先のインストルメントパネル5内に配置されたヘッドアップディスプレイ装置1の意匠を表す表示光2を投影し、自動車の運転席に着座した運転者(視認者)4方向に反射させる。ヘッドアップディスプレイ装置1は、特に、フロントガラス3の周囲に形成される遮光部3aに表示光2を投影、反射し、虚像Vとして運転者4に視認させる。
【0011】
遮光部3aは、黒セラミックス等からなる黒色等の遮光色からなる不透光性の部分である。遮光部3aは、フロントガラス3を車両に固定する接着剤の太陽光による劣化の防止や、接着剤の隠蔽、意匠性の向上等を目的に形成される。
【0012】
図2に示すようにヘッドアップディスプレイ装置1は、上ケース10と、下ケース20と、回路基板30と、光源40と、中ケース50と、プリズム60と、文字板70と、偏光板(偏光部)80と、を有する。
【0013】
上ケース10は、透過性の例えばPMMA(アクリル)等の合成樹脂材料からなり、下方が開口した略箱状に形成される。上ケース10は、文字板70,偏光板80を視認することが可能にこれらの上方を覆う。上ケース10は、偏光板80の上方で偏光板80と離間して配置される。
【0014】
下ケース20は、黒色の遮光性の例えばABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン)等の合成樹脂材料からなり、上方が開口した略箱状に形成される。下ケース20は、上ケース10と嵌合し箱状の筐体を形成し、回路基板30,光源40,中ケース50,プリズム60,文字板70,偏光板80を内部に収容する。
【0015】
回路基板30は、平板状のガラスエポキシ系基材等の硬質プリント基板からなる。回路基板30は、光源40,制御チップ,抵抗,コンデンサ等の各種回路部品を実装し、各種回路部品を配線パターンにより接続して回路を構成する。
【0016】
光源40は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)からなり、回路基板30の上面に複数個が実装される。光源40は、制御チップから供給される制御信号に基づいて、発光回路(図示せず)により発光される。光源40は、非偏光光を発する。つまり、光源40から発せられる光は、横波成分(S偏向成分)と、横波成分と直交する縦波成分(P偏光成分)の混在した光を発する。光源40は、後述する中ケース50の照明室毎に配置される。
【0017】
中ケース50は、白色の例えばPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂からなり、直方体に形成される。中ケース50は、上方に積層配置されたプリズム60,文字板70,偏光板80が固定され、下方に回路基板30が固定される。中ケース50は、後述する文字板70の複数の意匠毎に各意匠を区画した照明室を有する。各照明室は、図2に示すように、内部に光源40を収容し、光源40の光をプリズム60に導くことができるように中空状に形成される。
【0018】
プリズム60は、文字板70の光源40側に配置され、基材61と、屈折部62と、からなる。基材61は、透光性の平板形状の例えばPC(ポリカーボネート)等の合成樹脂シートからなる。屈折部62は、基材61の光源40側に透光性の透明樹脂がポッティングなどにより凹凸形状に形成されたものからなる。屈折部62は、図2に示すように、断面が光源40側が細くなる三角形の連続した形状(ノコギリ歯状)に形成され、三角形は非対称形状により光学的な異方性を持つ。この異方性により光源40からの光をフロントガラス3の方へ屈折させ、所定の角度で文字板70側へ照射する。プリズム60は、ヘッドアップディスプレイ装置1から出射される表示光2の出射方向に応じて設計される。具体的には、表示光2が遮光部3aに向って出射されるよう、屈折部62の形状や光学特性等が決定される。
【0019】
文字板70は、プリズム60と偏光板80の間に配置され、基材71と、印刷層72と、糊印刷層73と、からなる。基材71は、透光性の平板形状の例えばPC等の樹脂シート基材からなる。印刷層72は、黒色の遮光性のインクを基材71の下面に印刷されて形成される。印刷層72は、黒色のインキが抜き印刷された意匠部74を有する。意匠部74は、プリズム60で屈折した光を透過する。意匠部74は、図3(b)に示すように、車両速度表示74aと、ギアポジショニング表示74bと、残燃料表示74cと、インジケータ表示74dと、を少なくとも有する。
【0020】
車両速度表示74aは、単位と複数のセグメントの意匠により自動車の速度値を表示する。ギアポジショニング表示74bは、PとRとNとDの意匠によりギアポジションを表示する。残燃料表示74cは、FとEと複数の矩形の目盛りの意匠とにより燃料残量を表示する。インジケータ表示74dは、ターン等の様々な意匠からなる作動灯や警告灯を表示する。
【0021】
意匠部74は、図3(b)に示すように、光源40の点灯により発光する意匠部74を実線で示し、光源40が非点灯の意匠部74を破線で示す。意匠部74は、光源40の点灯によりプリズム発光すると、フロントガラス3の遮光部3aで運転者4に虚像Vとして視認される。この時、虚像Vの背景は、遮光部3aの色である黒色となる。
【0022】
糊印刷層73は、無色透明の粘着物質が基材71の上面及び印刷層72の下面に印刷されて形成される。プリズム60と偏光板80は、糊印刷層73により文字板70に接着される。
【0023】
偏光板80は、偏光特性を有するPVA(ポリビニルアルコール)をTAC(トリアセチルセルロース)等で保護した周知の偏光フィルタ部材である。偏光板80は、一軸に延伸されたPVAフィルムに色素(ポリヨウ素、有機染料)等を吸着配向させ、黒色の偏光軸をもたせたものが使用される。色素は細長い分子形状をしており、分子長軸方向に振動する光は吸収し(吸収軸)、これと直交する方向の可視光は透過する性質を有する(透過軸)。この色素をPVAフィルムの延伸方向に吸着配向させて、一方向に均一に配向させることで偏光性能を発現させている。このように、偏光板80は、照明光の光を一定の方向だけに振動する光に整える。
【0024】
偏光板80の透過軸Zは、図3に示すように、自動車の前後方向(運転席に着座した運転者4とフロントガラス3とを結ぶ方向)に沿って配置される。偏光板80は、文字板70の意匠部74を透過した光のS偏光成分に相当する成分を吸収し、P偏光成分に相当する成分だけを透過し出射する。
【0025】
図1に示すように、運転者4は、偏光サングラスGを用いる場合がある。偏光サングラスGは、S偏光成分の直線偏光をカットし、P偏光成分の直線偏光を透過する。
【0026】
このように形成されることにより、偏光板80が表示光2のP偏光成分だけを透過するので、運転者4が偏光サングラスGを用いた場合の表示の視認性に優れる。また、光源40より出射された光の方向をプリズム60で変更し効率よく運転者の方向へ反射することで、フロントガラス3での反射に伴う表示光2の輝度の低下を低減することができるので、表示の視認性において優れる。
【0027】
また、プリズム60はフロントガラス3やインストルメントパネル5の設定に合わせて出射方向を任意に設定できるので、インストルメントパネル5内の配置箇所や姿勢の制限されない設計の自由度を向上することができる。また、偏光板80は、外観上、黒色に形成されるので、ヘッドアップディスプレイ装置1の非発光時に遮光部3aに映らないので、シークレット性(不要時の非視認性)が優れる。
【0028】
(第2の実施形態)
本開示に係る表示装置の第2の実施形態を図4に基づいて説明する。前述した第1の実施形態と同一部分、均等部箇所については同一符号を付して説明する。
【0029】
本実施形態では、文字板70を有さない。本実施形態では、意匠部74に相当する意匠部82は、印刷層81に形成される。印刷層81は、黒色の遮光性のインクを偏光板80の下面に印刷されて形成される。また、糊印刷層73に相当する糊印刷層83は、印刷層81の下面に印刷されて形成される。プリズム60は、糊印刷層83により偏光板80に接着される。
【0030】
このように形成されることで、文字板70を有する場合に比べ、回路基板30から偏光板80までの距離を薄くすることができるので、ヘッドアップディスプレイ装置1を薄型化することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
本開示に係る表示装置の第2の実施形態を図5に基づいて説明する。前述した第2の実施形態と同一部分、均等部箇所については同一符号を付して説明する。
【0032】
本実施形態では、プリズム60の基材71を有さない。本実施形態では、屈折部62は、偏光板80の印刷層81の光源40側に透光性の透明樹脂がポッティングなどにより凹凸形状に形成される。
【0033】
このように形成されることで、プリズム60の基材71を有する場合に比べ、回路基板30から偏光板80までの距離を薄くすることができるので、ヘッドアップディスプレイ装置1をより薄型化することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0035】
例えば、本開示のヘッドアップディスプレイ装置が、表示光2をフロントガラス3の遮光部3aに投影するヘッドアップディスプレイ装置1の例を説明したが、フロントガラス3の透明箇所に投影し、視認者に実像、虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ装置であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ヘッドアップディスプレイ装置
2 表示光
3 フロントガラス(反射部)
3a 遮光部
4 運転者(視認者)
5 インストルメントパネル
10 上ケース
20 下ケース
30 回路基板
40 光源
50 中ケース
60 プリズム
61 基材
62 屈折部
70 文字板
71 基材
72 印刷層
73 糊印刷層
74 意匠部
74a 車両速度表示
74b ギアポジショニング表示
74c 残燃料表示
74d インジケータ表示
80 偏光板(偏光部)
81 印刷層
82 意匠部
83 糊印刷層
V 虚像
図1
図2
図3
図4
図5