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  • 特開-エッチング液の再生方法及び再生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027819
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】エッチング液の再生方法及び再生装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
H01L21/306 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133115
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108753
【氏名又は名称】タツモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡津 はるる
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA35
5F043BB23
5F043DD30
5F043EE33
5F043GG10
(57)【要約】
【課題】エッチング液中の珪素化合物を効率良く除去することが可能な再生技術を提供する。
【解決手段】再生方法は、燐酸を主成分とするエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後の状態から再生させる方法であり、第1温調工程と、第2温調工程と、除去工程と、を備える。第1温調工程では、エッチング液の温度を上昇させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸(Sin-1(OH)2n+2)内の化学結合の一部を切断し、それによって当該珪酸内の未結合手の数を増やす。第1温調工程の後、第2温調工程にてエッチング液の温度を低下させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸を、他の珪酸との間での未結合手どうしの結合によって成長させる。除去工程では、第2温調工程で成長させた珪酸をエッチング液から除去する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燐酸を主成分とするエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後の状態から再生させる方法であって、
前記エッチング液の温度を上昇させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸内の化学結合の一部を切断し、それによって当該珪酸内の未結合手の数を増やす第1温調工程と、
前記第1温調工程の後、前記エッチング液の温度を低下させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸を、他の珪酸との間での前記未結合手どうしの結合によって成長させる第2温調工程と、
前記第2温調工程で成長させた前記珪酸を前記エッチング液から除去する除去工程と、
を備える、エッチング液の再生方法。
【請求項2】
前記第1温調工程の前に、前記エッチング液に対して加水及び冷却の少なくとも何れか一方の処理を行う前処理工程
を更に備える、請求項1に記載のエッチング液の再生方法。
【請求項3】
前記第1温調工程では、前記エッチング液の温度を、50℃以上160℃以下の所定温度になるまで上昇させる、請求項1又は2に記載のエッチング液の再生方法。
【請求項4】
前記第2温調工程では、前記エッチング液の温度を、当該エッチング液を放冷した場合よりも速い速度で低下させる、請求項1~3の何れかに記載のエッチング液の再生方法。
【請求項5】
前記第2温調工程では、前記エッチング液の温度を、45℃以下の所定温度になるまで低下させる、請求項1~4の何れかに記載のエッチング液の再生方法。
【請求項6】
燐酸を主成分とするエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後の状態から再生させる装置であって、
前記エッチング液の温度を上昇させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸内の化学結合の一部を切断し、それによって当該珪酸内の未結合手の数を増やす第1温調部と、
前記第1温調部での温調の後、前記エッチング液の温度を低下させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸を、他の珪酸との間での前記未結合手どうしの結合によって成長させる第2温調部と、
前記第2温調部での温調で成長させた前記珪酸を前記エッチング液から除去する除去部と、
を備える、エッチング液の再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燐酸を主成分とするエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後の状態から再生させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燐酸を主成分とするエッチング液は、半導体デバイスの製造過程で半導体ウェハ上の窒化珪素膜を除去するためのエッチング処理に使用される。当該エッチング処理では、窒化珪素膜の除去によって生じた不揮発性の珪素化合物がエッチング液中に蓄積され、それによってエッチング液中の珪素濃度が増加する。そして、珪素濃度が増加したエッチング液をそのまま使用し続けると、窒化珪素膜に対するエッチングレートが低下するといった問題が生じてしまう。また、エッチング液中の珪素濃度が飽和濃度以上になると、エッチング液中の珪素化合物がゲル状になって析出し、それが原因となって、基板表面が汚染されるといった問題や、エッチング液の循環経路に設けられたフィルタに目詰まりが発生するといった問題が生じやすくなる。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するべく、エッチング処理に使用したエッチング液の一部又は全部を新しいもの(一般的には未使用のエッチング液)に交換することにより、エッチング液中の珪素濃度を所定濃度以下となるように調整するといった方法が、従来から用いられている。
【0004】
一方、上記のようにエッチング液を交換する方法では、新しいエッチング液が必要となり、また、交換によって多くの廃液が生じることになる。そこで、コストの削減や環境への配慮といった観点から、エッチング液を再生させる技術が提案されている。一例として、特許文献1では、エッチング液に対する加水(水の添加)や冷却によって当該エッチング液中に珪素化合物を析出させ、析出させた珪素化合物をフィルタで除去する技術が提案されている。他の例として、特許文献2では、エッチング液の徐冷によって当該エッチング液中に珪素化合物を成長させ、成長させた珪素化合物をフィルタで除去する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3788985号公報
【特許文献2】特許第5829444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1、2のように珪素化合物をフィルタで除去する場合、エッチング液中の珪素化合物を、フィルタで除去できる大きさまで成長させる必要がある。しかし、特許文献1のように加水や冷却を行ったからといって、必ずしも珪素化合物が成長するとは限らない。また、特許文献2のように徐冷を行った場合には、珪素化合物の成長が期待できるかもしれないが、フィルタで除去できる大きさまで成長させるためには長い時間を要することになり、あまり効率的でない。
【0007】
そこで本発明の目的は、エッチング液中の珪素化合物を効率良く除去することが可能な再生技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエッチング液の再生方法は、燐酸を主成分とするエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後の状態から再生させる方法であり、第1温調工程と、第2温調工程と、除去工程と、を備える。第1温調工程では、エッチング液の温度を上昇させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸(Sin-1(OH)2n+2)内の化学結合の一部を切断し、それによって当該珪酸内の未結合手の数を増やす。第1温調工程の後、第2温調工程にてエッチング液の温度を低下させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸を、他の珪酸との間での未結合手どうしの結合によって成長させる。除去工程では、第2温調工程で成長させた珪酸をエッチング液から除去する。
【0009】
本発明に係るエッチング液の再生装置は、燐酸を主成分とするエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後の状態から再生させる装置であり、第1温調部と、第2温調部と、除去部と、を備える。第1温調部は、エッチング液の温度を上昇させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸(Sin-1(OH)2n+2)内の化学結合の一部を切断し、それによって当該珪酸内の未結合手の数を増やす。第2温調部は、第1温調部での温調の後、エッチング液の温度を低下させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸を、他の珪酸との間での未結合手どうしの結合によって成長させる。除去部は、第2温調部での温調で成長させた珪酸をエッチング液から除去する。
【0010】
上記再生方法又は再生装置によれば、比較的に短い時間で温調の処理を行った場合でも、エッチング液の温度を上昇させることにより、珪酸を、未結合手を持った不安定な状態へ活性化させることでき、かつ、その後にエッチング液の温度を低下させることにより、活性化した珪酸どうしを未結合手の結合によって縮合させて更に成長させることができる。よって、エッチング液中の珪酸が、除去手段(フィルタなど)で除去できる大きさまで成長しやすくなる。このように、上述した再生技術によれば、エッチング液中の珪酸を、除去手段(フィルタなど)で除去できる大きさまで効率良く成長させることが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エッチング液中の珪素化合物を効率良く除去することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るエッチング液の再生方法を示したフローチャートである。
図2】再生方法を実施することが可能な再生装置の一例を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係るエッチング液の再生方法を示したフローチャートである。この図に示されるように、本実施形態の再生方法では、前処理工程と、第1温調工程と、第2温調工程と、除去工程と、が順に実行される。ここで、エッチング液は、燐酸(HPO)を主成分としたエッチング液である。そして、本実施形態の再生方法は、そのようなエッチング液を、窒化珪素を主成分とする対象への使用後(例えば、半導体ウェハ上の窒化珪素膜を除去するためのエッチング処理への使用後)の状態から再生させる方法である。具体的には、使用後のエッチング液は、その液中に珪素化合物(HSiPやSi(OH)など)が蓄積して珪素濃度が増加した状態になる。そこで、本実施形態の再生方法では、そのような状態から液中の珪素化合物を効率良く除去することによってエッチング液を再生させる。以下、本実施形態の再生方法で実行される各工程について、具体的に説明する。
【0014】
<前処理工程>
前処理工程では、使用後のエッチング液に対して加水(水(HO)の添加)を行うことにより、エッチング液中の珪素化合物における珪酸(Si(OH))の割合を高める。具体的には、エッチング液中に存在するHSiPを、水と反応させて珪酸に変化させることにより、エッチング液中に珪酸を析出させる(HSiP+3HO→Si(OH)+H)。一例として、エッチング液を、燐酸濃度が50重量%以上80重量%以下の所定濃度になるように水で希釈する。
【0015】
前処理工程では更に、エッチング液を冷却することにより、エッチング液中に存在する珪酸どうしを縮合させる(縮合反応)。具体的には、エッチング液の冷却により、エッチング液中に存在する珪酸を、他の珪酸との間での未結合手どうしの結合によって成長させる(nSi(OH)→Sin-1(OH)2n+2+(n-1)HO)。一例として、エッチング液を、20℃以上80℃以下の所定温度になるまで冷却する。
【0016】
尚、前処理工程は、エッチング液中に珪酸を析出させ、その珪酸を縮合反応によってある程度成長させることができるものであれば、エッチング液に対して加水及び冷却の何れの処理をも行う場合に限らず、何れか一方の処理だけを行うものに適宜変更されてもよい。また、エッチング液に対する加水は、以下に説明する第1温調工程の前に限らず、除去工程の前の何れかのタイミングで行ってもよい。
【0017】
ここで、後述するように除去工程にて珪酸をフィルタで除去する場合、エッチング液中の珪酸を、フィルタで除去できる大きさ(具体的には、フィルタで濾過できる大きさ)まで成長させる必要がある。しかし、上述した加水や冷却によれば、ある程度は珪酸を成長させることはできるものの、フィルタで除去できる大きさまで十分に成長させることができるとは限らない。その原因の1つとして、エッチング液中の珪酸が、大きく成長する前に、縮合反応が生じにくい安定した状態になってしまうからである、と本発明者らは考えている。また、本発明者らは、時間をかけて徐々に冷却した場合(即ち、徐冷を行った場合)には、珪素化合物の成長が期待できるかもしれないが、フィルタで除去できる大きさまで成長させるためには長い時間を要することになり、あまり効率的でないと考えている。
【0018】
そこで、本発明者らは、以下に説明する第1温調工程及び第2温調工程を行うことにより、除去工程で除去できる大きさまでエッチング液中の珪酸を効率良く成長させることを可能にした。
【0019】
<第1温調工程>
第1温調工程では、エッチング液の温度を上昇させることにより、当該エッチング液中に存在する珪酸(Sin-1(OH)2n+2)内の化学結合の一部を切断し、それによって当該珪酸内の未結合手の数を増やす。具体的には、十分な大きさに成長する前に安定した状態になってしまった珪酸を、それに熱エネルギを与えて当該珪酸内の化学結合の一部を切断することにより、未結合手を持った不安定な状態(即ち、他の珪酸との間での未結合手どうしの結合によって更なる成長が可能な状態)へ活性化させる。一例として、第1温調工程では、エッチング液の温度を、50℃以上160℃以下の所定温度になるまで上昇させる。
【0020】
<第2温調工程>
第2温調工程では、第1温調工程で活性化した珪酸を成長させるべく、第1温調工程後のエッチング液を再び冷却することにより、エッチング液中に存在する珪酸どうしを縮合させる(縮合反応)。具体的には、第1温調工程後のエッチング液の温度を低下させることにより、第1温調工程で活性化した珪酸(未結合手を持った不安定な状態にある珪酸)を、第1温調工程で活性化した他の珪酸との間での未結合手どうしの結合によって更に成長させる。一例として、第2温調工程では、第1温調工程後のエッチング液の温度(例えば、50℃以上160℃以下)を、45℃以下の所定温度になるまで低下させる。
【0021】
第2温調工程では、前処理工程である程度成長した珪酸どうしを縮合させることができればよいため(逆に言うと徐々に成長させていく必要がないため)、徐冷のように時間をかけて徐々に冷却する必要がなく、第1温調工程後のエッチング液の温度を、当該エッチング液を放冷した場合よりも速い速度で低下させることができる。
【0022】
<除去工程>
除去工程では、第2温調工程で成長させた珪酸をエッチング液から除去する。具体的には、エッチング液をフィルタに通することにより、エッチング液中の珪酸をフィルタで濾過する。
【0023】
このような再生方法によれば、第1温調工程及び第2温調工程では、比較的に短い時間で温調の処理を行った場合でも、エッチング液の温度を上昇させることにより、珪酸を、未結合手を持った不安定な状態へ活性化させることでき、かつ、その後にエッチング液の温度を低下させることにより、活性化した珪酸どうしを未結合手の結合によって縮合させて更に成長させることができる。よって、エッチング液中の珪酸が、除去工程で除去できる大きさまで成長しやすくなる。このように、上述した再生方法によれば、エッチング液中の珪酸を、除去工程で除去できる大きさまで効率良く成長させることが可能になり、その結果として、エッチング液中の珪素化合物を効率良く除去することが可能になる。尚、第1温調工程及び第2温調工程は、それらを1回ずつ行う場合に限らず、エッチング液中に存在する珪酸が除去工程で除去できる大きさに成長するまで繰り返し行ってもよい。また、上述した再生方法において、前処理工程を行わずに第1温調工程及び第2温調工程を1回ずつ或いは繰り返し行ってもよい。
【0024】
図2は、上述した再生方法を実施することが可能な再生装置の一例を示した概念図である。この図に示された再生装置では、先ず、再生処理の対象である使用後のエッチング液が、給液部14から第1処理タンク1内に供給される。そして、再生装置は、給水部15から第1処理タンク1内に水を供給することにより、当該第1処理タンク1内のエッチング液に対して加水を行い、それによってエッチング液中に珪酸を析出させる(HSiP+3HO→Si(OH)+H)。一例として、再生装置は、第1処理タンク1内のエッチング液を、燐酸濃度が50重量%以上80重量%以下の濃度になるように水で希釈する。
【0025】
また、再生装置は、第1処理タンク1内のエッチング液を送液ポンプ13で熱交換器11に送り込んで冷却することにより、当該エッチング液の温度を低下させ、それによってエッチング液中に存在する珪酸どうしを縮合させる(nSi(OH)→Sin-1(OH)2n+2+(n-1)HO)。一例として、再生装置は、エッチング液を、20℃以上80℃以下の所定温度になるまで冷却する。このとき、再生装置は、エッチング液の温度が所定温度に低下するまで、第1処理タンク1から熱交換器11を通って当該第1処理タンク1に戻る経路でエッチング液を循環させてもよい。
【0026】
このように、図2に示された再生装置は、給水部15、熱交換器11、送液ポンプ13、循環経路などを、エッチング液に対して加水や冷却を行うための前処理部として備えている。
【0027】
次に、再生装置は、第1処理タンク1内のエッチング液(ここでは前処理後のエッチング液)を送液ポンプ13でヒータ12に送り込んで加熱することにより、当該エッチング液の温度を上昇させ、それによってエッチング液中に存在する珪酸(Sin-1(OH)2n+2)を活性化させる。一例として、再生装置は、エッチング液の温度を、50℃以上160℃以下の所定温度になるまで上昇させる。このとき、再生装置は、エッチング液の温度が所定温度に上昇するまで、第1処理タンク1からヒータ12を通って当該第1処理タンク1に戻る経路でエッチング液を循環させてもよい。
【0028】
このように、図2に示された再生装置は、ヒータ12、送液ポンプ13、循環経路などを、エッチング液の温度を上昇させるための第1温調部として備えている。
【0029】
その後、再生装置は、第1処理タンク1内のエッチング液(ここでは昇温後のエッチング液)を送液ポンプ13で熱交換器11に送り込んで再び冷却することにより、当該エッチング液の温度を低下させ、それによってエッチング液中に存在する珪酸(活性化した珪酸)どうしを縮合させる。一例として、再生装置は、昇温後のエッチング液の温度(例えば、50℃以上160℃以下)を、45℃以下の所定温度になるまで低下させる。このとき、再生装置は、エッチング液の温度が所定温度に低下するまで、第1処理タンク1から熱交換器11を通って当該第1処理タンク1に戻る経路でエッチング液を循環させてもよい。
【0030】
このように、図2に示された再生装置は、熱交換器11、送液ポンプ13、循環経路などを、エッチング液の温度を低下させるための第2温調部として備えている。
【0031】
これらの温調によって得られたエッチング液は、送液ポンプ13で第2処理タンク2に供給される。そして、再生装置は、第2処理タンク2内のエッチング液を送液ポンプ21でフィルタ22に通すことにより、エッチング液中の珪酸(上述した温調によって成長した珪酸)をフィルタ22で濾過する。このとき、再生装置は、第2処理タンク2からフィルタ22を通って当該第2処理タンク2に戻る経路でエッチング液を循環させてもよい。
【0032】
このように、図2に示された再生装置は、フィルタ22、送液ポンプ21、循環経路などを、エッチング液から珪酸を除去するための除去部として備えている。
【0033】
更に、フィルタ22に通されたエッチング液は、送液ポンプ21で第3処理タンク3に供給される。そして、再生装置は、第3処理タンク3内のエッチング液をヒータ31で加熱することにより、エッチング液から水を蒸発させ、それによってエッチング液を未使用のものと同等の燐酸濃度になるまで濃縮する。
【0034】
濃縮後のエッチング液は、送液ポンプ32で第4処理タンク4に供給される。このとき、再生装置は、エッチング液の珪素濃度を珪素濃度計33で測定することにより、エッチング液から珪素化合物が正常に除去されたか否かを確認することができる。
【0035】
その後、再生装置は、第4処理タンク4内のエッチング液を送液ポンプ42で熱交換器41に送り込んで冷却することにより、当該エッチング液の温度を低下させ、それによってエッチング液が所定の燐酸濃度以上に濃縮されてしまうことを防止する。このとき、再生装置は、第4処理タンク4内のエッチング液の燐酸濃度を燐酸濃度計43で測定する。そして、燐酸濃度計43による測定値が所定の燐酸濃度を超えた場合には、再生装置は、給水部44から第4処理タンク4内に水を供給することにより、当該第4処理タンク4内のエッチング液の燐酸濃度を調整する。
【0036】
次に、再生装置は、第4処理タンク4内のエッチング液(冷却後のエッチング液)を送液ポンプ42でフィルタ45に通すことにより、エッチング液中に存在する金属又は金属イオンをフィルタ45で濾過する。このとき、再生装置は、第4処理タンク4からフィルタ45を通って当該第4処理タンク4に戻る経路でエッチング液を循環させてもよい。
【0037】
これにより、再生装置によるエッチング液の再生処理が完了し、再生処理後のエッチング液は、排液部46から例えばエッチング処理装置などに供給される。
【0038】
上述した再生装置において、フィルタ22は、珪酸の濾過に繰り返し使用されると、目詰まりを生じてしまう。そこで、図2に示された再生装置は、フィルタ22の濾過性能を回復させるための以下のような手段を備えている。
【0039】
再生装置は、洗浄液タンク5内に、給液部52から供給されるフッ化水素酸(例えば50重量%)と、給水部53から供給される水とを混ぜて、5重要%以上20重量%以下のフッ化水素酸溶液を生成する。そして、再生装置は、洗浄液タンク5内のフッ化水素酸溶液を送液ポンプ51で送り出してフィルタ22に通すことにより、フィルタ22で濾過された珪酸を溶解させ、これによってフィルタ22の濾過性能を回復させる。このとき、再生装置は、洗浄液タンク5からフィルタ22を通って当該洗浄液タンク5に戻る経路でフッ化水素酸溶液を循環させてもよい。そして、再生装置は、溶解した珪酸を含んだフッ化水素酸溶液を排液部54から排出する。
【0040】
その後、再生装置は、洗浄液タンク5に、給水部53から供給された水のみを貯め、洗浄液タンク5内の水を送液ポンプ51でフィルタ22に通すことにより、フィルタ22を洗浄する。このとき、再生装置は、洗浄液タンク5からフィルタ22を通って当該洗浄液タンク5に戻る経路で水を循環させてもよい。
【0041】
尚、再生装置は、フィルタ22を複数備えていてもよく、それらが切替え可能に並列に接続されていてもよい。そして、そのうちの1つフィルタ22が目詰まりした場合には、再生装置は、他のフィルタ22に切り替えて珪酸の濾過を行い、その間に、目詰まりを生じたフィルタ22を、上述した手段で洗浄してもよい。
【0042】
上述した再生装置は、図2に示されたものに限らず、上述した再生方法の各工程を実行できる別の装置(工程ごとに別々の装置であってもよい)に適宜変更されてもよい。
【実施例0043】
<実施例1>
実施例として、エッチング液である燐酸溶液(HPO=85重量%、HO=15重量%)を、エッチング処理装置で使用した後に、上述した再生装置にて再生させた。具体的には、珪素を40~60mg/kgの割合で含んだ使用後の燐酸溶液を、150~160℃に加熱してから再生装置に供給し、当該再生装置にて以下の処理条件で再生させた。
【0044】
(処理条件)
(1)前処理(希釈と冷却):20分間
(2)第1温調:20分間
(3)第2温調:60分間。
【0045】
そして、再生処理の前後で燐酸溶液をサンプリングし、ICP-AESにて燐酸溶液中の珪素濃度を分析した。その結果、実施例1では、処理前に52.1mg/kgであった珪素濃度が、再生処理により2.2mg/kgまで低下し、珪素の除去率が96%であった。表1は、この結果を示したものである。
【0046】
【表1】
【0047】
表1には、上述した再生技術(実施例1)の有効性を示すべく、他の条件で再生処理を行った場合の2つの例(比較例1、比較例2)の結果も示されている。以下、これらの比較例について説明する。
【0048】
<比較例1>
比較例1では、実施例1と同じ使用後の燐酸溶液を、以下の処理条件で再生させた。
【0049】
(処理条件)
(1)前処理(希釈のみ):20分間
(2)静置:20分間
(3)冷却:60分間。
【0050】
比較例1では、処理前に49.3mg/kgであった珪素濃度が、再生処理により13.6mg/kgにしか低下せず、珪素の除去率も72%と低かった。この比較例1と比べることにより、実施例1によれば、短時間で高い除去率を得ることができ、従って効率良く珪素を除去できることが分かる。
【0051】
<比較例2>
比較例2では、実施例1と同じ使用後の燐酸溶液を、以下の処理条件で再生させた。
【0052】
(処理条件)
(1)前処理(静置(放熱による徐冷)と希釈):20分間
(2)静置(放熱による徐冷):20分間
(3)徐冷:60分間。
【0053】
比較例2では、処理前に50.0mg/kgであった珪素濃度が、再生処理により9.4mg/kgにしか低下せず、珪素の除去率も81%と低かった。この比較例2と比べることにより、実施例1によれば、短時間で高い除去率を得ることができ、従って効率良く珪素を除去できることが分かる。
【0054】
上述の実施形態及び実施例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 第1処理タンク
2 第2処理タンク
3 第3処理タンク
4 第4処理タンク
5 洗浄液タンク
11 熱交換器
12 ヒータ
13 送液ポンプ
14 給液部
15 給水部
21 送液ポンプ
22 フィルタ
31 ヒータ
32 送液ポンプ
33 珪素濃度計
41 熱交換器
42 送液ポンプ
43 燐酸濃度計
44 給水部
45 フィルタ
46 排液部
51 送液ポンプ
52 給液部
53 給水部
54 排液部
図1
図2