(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027866
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】移動体の窓から見える景色と映像とを重ね合わせて見る目視方法、及び、景色と映像の重ね合わせ装置セット
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20230224BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230224BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20230224BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
G01C21/36
B60R11/02 C
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133196
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】510295239
【氏名又は名称】永倉 文洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永倉 文洋
【テーマコード(参考)】
2F129
3D020
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA11
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3D020BA04
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5H181FF10
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】移動体の搭乗者にとって娯楽性や臨場感を高める、移動体における目視方法と、該目視方法に使用する景色と映像の重ね合わせ装置セットとを提供すること。
【解決手段】移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって透明有機ELディスプレイ2を設置し、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かってカメラ3を設置し、該カメラ3で過去に撮影し保存した映像を該透明有機ELディスプレイ2に写し出すことによって、移動体Aに搭乗している人が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色Vと、該透明有機ELディスプレイに写し出された映像Pとを重ね合わせて見ることを特徴とする目視方法、該目視方法に使用する景色と映像の重ね合わせ装置セット、及び、該目視方法で撮影された移動体の窓からの映像の素材集。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって透明有機ELディスプレイを設置し、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かってカメラを設置し、該カメラで過去に撮影し保存した映像を該透明有機ELディスプレイに写し出すことによって、移動体Aに搭乗している人が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色と、該透明有機ELディスプレイに写し出された映像とを重ね合わせて見ることを特徴とする目視方法。
【請求項2】
前記移動体Aの窓と前記移動体Bの窓が、何れも、移動体における前面の窓、側面の窓、又は、後面の窓であり、同一面の窓である請求項1に記載の目視方法。
【請求項3】
前記移動体Aに搭乗している人が、「該移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色」と、「移動体Bの窓の近傍に設置されたカメラで、過去に同一場所を撮影し保存してある映像であって、前記透明有機ELディスプレイに写し出された映像」とを重ね合わせて見ることによって、過去と現在の同一場所の映像若しくは景色を重ね合わせて見る請求項1又は請求項2に記載の目視方法。
【請求項4】
移動体Aに搭乗している人が移動体Aを運転しておらず、移動体Aが停止している状態で、該「移動体Aに搭乗している人」が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色と、該透明有機ELディスプレイに写し出された映像とを重ね合わせて見る請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の目視方法。
【請求項5】
前記移動体Aと前記移動体Bが同一の移動体である請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の目視方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の目視方法を行うに際して使用する景色映像重ね合わせ装置セットであって、
少なくとも、前記移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって設置されている透明有機ELディスプレイと、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かって設置されているカメラと、該カメラで撮影した映像を保存する保存装置と、を有することを特徴とする景色と映像の重ね合わせ装置セット。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の目視方法において撮影された映像の素材集であって、
移動体Bの窓の近傍に設置されたカメラで撮影された映像を、複数の移動体Bから集積し、映像素材として使用できる動画又は画像を選別して保存したものであることを特徴とする移動体の窓からの映像の素材集。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭乗している人が、該移動体の窓からリアルタイムで見える景色と、該窓に写し出された過去の映像とを重ね合わせて見る目視方法、及び、該目視方法を可能にする景色と映像の重ね合わせ装置セットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バス、トラック、船等の移動体の窓に、外部の障害物や注目すべき物、該移動体自身や塀・壁・樹木等の遮蔽物に隠れていて運転者からは見えない物等を映し出して、運転者に注意を喚起する技術は知られている。
このような技術は、移動体の外部にある物をリアルタイムで窓に写し出して、安全運転に資することを目的としている。従って、このような技術では、同一の移動体に外部に向かって設置されたカメラで上記物等をリアルタイムで撮影して窓に写し出す。
【0003】
例えば、特許文献1には、移動体の所定の方向を撮像する撮像手段によって撮像された画像を、運転者の視界に合わせて変形処理すると共に、該画像内に存在する物体の光の強度に応じて該物体の画像に所定の加工処理を行う画像処理手段と、該画像処理手段によって処理された画像を表示させる表示制御手段とを有し、表示される画像が、運転者が窓を通して見る視界と重なるようにした表示装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、移動体の運転者が、該移動体を安全に運転させるためのものであり、移動体の外部の画像をリアルタイムで窓(フロントガラス)に表示するものである。
特許文献1の上記「変形処理」と「加工処理」は、そのために行われる。例えば、外部の物体の画像が明るくなり過ぎたときは、該表示制御手段によって、表示画像(従って窓)が全面透明になって運転に支障がないようにしている。
【0005】
特許文献2には、自車両に取り付けられ、車両周辺を撮像する車載外部カメラと、運転者が視認できるモニターと、該カメラの映像に基づき該モニターへの表示映像を生成するモニター映像生成手段と、を備えた車両周辺画像表示システムが記載されている。
該システムは、該車載外部カメラから入力される実カメラ映像を、運転者の視点位置から見た仮想カメラ画像に視点変換する画像処理部と、運転者の視点から撮影された車室内映像を記憶しておく画像記憶部と、該車室内画像を半透明化することにより、該仮想カメラ画像に該半透明車室内画像を重ね合わせる画像合成により、該半透明車室内画像を透過して仮想カメラ画像を表現する合成画像を生成する画像合成回路とを有する車両周辺画像表示システムである。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、車室内の画像を半透明化した半透明車室内画像に、運転者の視点位置から見た仮想カメラ画像を重ね合わせるものであり、移動体の外部の画像を重ね合わせるものではなかった。
【0007】
特許文献3には、基板上に表示画像を形成すべくマトリクス状に複数個配置された画素と、該表示画像を表示する面と反対の面に設けられ、対象物に取り外し容易に接着し得る弱粘着層とを備え、該基板の外周縁に、対象物に取り付けられる保持部材の凸部及び/又は凹部と嵌合し得る凹部及び/又は凸部が形成されている表示パネルが記載されている。
そして、該対象物として、自動車のフロントガラスが例示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3には、過去に撮影し保存した映像を表示パネルに写し出すことによって、移動体に搭乗している人が、窓からリアルタイムで見える景色を該映像に重ね合わせて見ることについては記載も示唆もされていない。
【0009】
上記した通り、公知技術では、移動体の外部に向かって設置されたカメラで過去に撮影し、一旦保存された映像を、移動体の窓からリアルタイムで見える景色に重ね合わせて見る技術はなかった。
すなわち、「過去に自車から見た景色や、過去に友人等の他人が他車から見た景色」を、「移動体の窓からリアルタイムで見える景色」に重ね合わせて見て楽しもうとする発想はなく、安全運転に注目するあまり、過去の風景を車窓から眺める等、娯楽性に注目した技術は殆どなかった。
【0010】
また、公知技術は、運転中の画像重ね合わせであり、移動体を止めて画像を重ね合わせて見るような技術は殆どなかった。
移動体を止めて画像を重ね合わせれば、単に娯楽性を上げるのみならず、交通事故の現場検証等、臨場感を出すことができ、正しい過去の現象の把握にも役立つが、そうした技術はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-122981号公報
【特許文献2】国際公開第2009/104675号
【特許文献3】特開2019-113817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、安全運転に資するような映像を運転中にリアルタイムで窓に写し出すのではなく、移動体の搭乗者にとって娯楽性や臨場感を高める、移動体における目視方法と、景色と映像の重ね合わせ装置セットとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、移動体の窓に透明有機ELディスプレイを設置し、移動体の外部に向かってカメラを設置し、該カメラで過去に撮影し保存した映像を該窓に写し出すことによって、該窓からリアルタイムで見える景色と、該窓に写し出された映像とを重ね合わせて見ることができて上記課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって透明有機ELディスプレイを設置し、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かってカメラを設置し、該カメラで過去に撮影し保存した映像を該透明有機ELディスプレイに写し出すことによって、移動体Aに搭乗している人が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色と、該透明有機ELディスプレイに写し出された映像とを重ね合わせて見ることを特徴とする目視方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、前記移動体Aに搭乗している人が、「該移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色」と、「移動体Bの窓の近傍に設置されたカメラで、過去に同一場所を撮影し保存してある映像であって、前記透明有機ELディスプレイに写し出された映像」とを重ね合わせて見ることによって、過去と現在の同一場所の映像若しくは景色を重ね合わせて見る前記の目視方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、移動体Aに搭乗している人が移動体Aを運転しておらず、移動体Aが停止している状態で、該「移動体Aに搭乗している人」が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色と、該透明有機ELディスプレイに写し出された映像とを重ね合わせて見る前記の目視方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記の目視方法を行うに際して使用する景色映像重ね合わせ装置セットであって、
少なくとも、前記移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって設置されている透明有機ELディスプレイと、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かって設置されているカメラと、該カメラで撮影した映像を保存する保存装置と、を有することを特徴とする景色と映像の重ね合わせ装置セットを提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記の目視方法において撮影された映像の素材集であって、
移動体Bの窓の近傍に設置されたカメラで撮影された映像を、複数の移動体Bから集積し、映像素材として使用できる動画又は画像を選別して保存したものであることを特徴とする移動体の窓からの映像の素材集を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動体に搭乗している人が、該移動体の窓からリアルタイムで見える景色と、過去に撮影し保存してあった映像とを、該窓において重ね合わせて見ることによって、移動体に搭乗している人が移動体の中で楽しめる。
【0020】
具体的には、例えば、以下が挙げられる。
現在の景色と過去の映像とを重ね合わせて面白い効果を得る;例えば、津波、洪水等の災害時に撮影した水位の変化等を、災害が収まった後に、移動体Aから見ることで災害を実感できて、災害等の備えに対する啓発になる;
移動体Aの中から、窓に写し出された移動体Bからの映像と、窓からの景色とを重ねて見るので臨場感が高まる;例えば、移動体Bをラジコンカーとし、その搭載カメラから見るミクロワールドの光景を移動体Aの窓から見ることができる;
【0021】
過去の映像を映すことによってその場にいながら同一場所の過去に戻れる;例えば、グーグルストリートビュー等の映像と連携し、例えば10年前の想い出の街並みをドライブする光景を楽しむことができる;また例えば、過去の災害時の様子を、現在の同一場所の景色に重ね合わせて見れば、正確に該災害の程度を把握することができる。
友人等の他人の移動体の車窓からの景色を該他人と同様に楽しむ;例えば、ハワイ島等の観光地の旅行談義を、移動体Aの中にいながら該観光地の光景を観ながら楽しむことができる;
【0022】
交通事故の現場検証等において、過去の同一場所での事故を移動体Aの窓に写し出せば、該窓で(該窓からのように)見られるので、(別の部屋で検証するより)正確な情報が得られる;例えば、保険会社の車、交通事故鑑定人の車、パトカー等に、本発明の装置を設置しておけば(移動体Aを上記した車にすれば)、現場検証の正確度が高まると共に、かかる時間の短略化もできる。
別の季節の景色や映像を重ね合わせて見ることによって季節の移ろいを楽しめる(例えば、夏の車内から冬景色を楽しめる);また、例えば、これから行こうとするドライブを予習できる。
【0023】
本発明においては、過去に撮影し保存しておいた映像を窓に写し出すディスプレイとして透明有機ELディスプレイを使用するので、その透明性のために、窓からのリアルタイムの(実際の外部の)景色を、該映像と同時に重ねて見ることができる。
また、透明有機ELディスプレイは、大きいものがあるので、移動体の窓全面に貼り付けることができ、臨場感を妨げる映像周囲の物体を見ないですむことができる。
また、透明有機ELディスプレイは、フレキシブルのものがあるので、移動体の窓のカーブに沿って設置することができ、余計なものを見ないですむ。
【0024】
本発明においては、移動体の窓に、該移動体の内部に向かって透明有機ELディスプレイを設置するので、該移動体の搭乗者が運転席に座っている人であるならば、そこに写し出される映像が、自分の自動車等から実際に見えるもののように感じ、高い臨場感が得られる。
【0025】
本発明の目視方法は、移動体から見えた過去の映像を、移動体の窓からのリアルタイムの(実際の外部の)景色に重ねて見るのであって、移動体から見える若しくは見えているはずの移動体周辺の現在の映像を、透明有機ELディスプレイに(すなわち、移動体の窓に)写し出すのではない。
従って、該映像を実際の目視映像より見易くする必要もなく、該映像を加工する必要もないので、画像処理装置・映像加工装置が不要であり、装置の簡易化やコストダウンが図られている。
【0026】
すなわち、本発明の目視方法は、安全運転を目的とはしていないので、移動体の外部や周辺の物体(例えば、外部の障害物や注目すべき物等)を見易く画像処理をする必要がない。また、移動体自身や塀・壁・樹木等の遮蔽物に隠れていて、移動体(の運転者)からは見えない物等を映像加工して映し出して、運転者に注意を喚起するものでもない。
従って、特殊な画像処理を必要とせず娯楽性アップに注力できるので、簡易化とコストダウンが図れる。
【0027】
本発明の目視方法は、移動体を停止若しくは駐車させて、該移動体の内部から該移動体の外部を、窓を通して見ることが好ましい。移動体が移動しているときや、移動体を運転中に使用しなければ、交通事故につながる可能性がない。
【0028】
本発明の目視方法を使用すれば、自家用車の内部を、「外の景色をも見ることができるプライベートシアター」のようにすることができる。
【0029】
移動体の窓の近傍に設置されたカメラで撮影された映像を、複数の移動体から集積し、映像素材とすれば、該カメラは常に撮影しているので、本発明を実施している人から、非常に多くの動画・画像等の映像を集積できる。
従って、本発明を使用して得られた映像を選別して保存したものは、「移動体の窓からの映像の素材集」として優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】移動体Aの内部の図であって、透明有機ELディスプレイが該移動体Aのフロントガラス全面に設置してある態様を示す図である。
【
図2】移動体Bの斜視図であって、移動体Bからの映像を撮影し保存するカメラが移動体Bの窓の近傍に設置してある態様を示す図である。(a)移動体Bの前方を撮影するカメラが設置してある態様 (b)移動体Bの側方を撮影するカメラが設置してある態様 (c)移動体Bの後方を撮影するカメラが設置してある態様
【
図3】過去の同一場所での交通事故の映像を、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色に重ね合わせて現場検証をしている図である。(a)事故を起こした自動車とバイクが走っている様子と窓から見える景色との重ね合わせ (b)該自動車と該バイクが近付いてきている様子と窓から見える景色との重ね合わせ (c)該自動車が該バイクに衝突した様子と窓から見える景色の重ね合わせ
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の具体的な実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内で任意に変形して実施することができる。
【0032】
<目視方法>
本発明の目視方法は、移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって透明有機ELディスプレイ2を設置し、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かってカメラ3を設置し、該カメラ3で過去に撮影し保存した映像を該透明有機ELディスプレイに写し出すことによって、移動体Aに搭乗している人が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色Vと、該透明有機ELディスプレイに写し出された映像Pとを重ね合わせて見ることを特徴とする。
【0033】
本発明の目視方法では、例えば、
図1に示したように、移動体Aに搭乗している人が、「移動体Aの窓から見えるリアルタイムの景色V」と、「移動体Aの窓に設置された(例えば、貼り付けられた)透明有機ELディスプレイ2に写し出された過去の映像P」とを重ね合わせて見る。
【0034】
ここで、「移動体」とは、窓があって人が搭乗して移動するものであれば、特に限定はないが、自動車、バス、観光用車、遊園地の乗物、トラック等の陸上の移動体;遊覧船、ボート、観光船、屋形船、定期船等の船舶;飛行機、ヘリコプター等の空間の移動体;等が挙げられる。
【0035】
また、「窓1」としては、フロントウィンド(前面の窓1a)、サイドウィンド(側面の窓1b)、リアウィンド(後面の窓1c)等、何れでもよい。
特に限定はないが、本発明の目視方法の主体は、移動体Aの運転席に座っている人であることが、運転席からの過去の映像Pを重ね合わせて見ることの効果・意味・楽しみ・メリットが大きいために好ましい。従って、該窓としては、フロントウィンド(前面の窓1a)であることが上記点等から好ましい。
【0036】
上記透明有機ELディスプレイ2としては、映像が写し出されていない部分が透明であって、透けて移動体外部の景色Vがリアルに見える有機ELディスプレイであれば特に限定はない。
該透明有機ELディスプレイ2としては、速いものが映し出された方がよいので、反応が速いものが好ましい。また、「透明性」については、普段の運転時に支障がないよう、ディスプレイに映像を写さないときのために、無色透明が好ましく、透明性が高いことが好ましい。
窓に貼り付ける必要性から、曲面に対応したもの(曲がるもの)が好ましい。
該透明有機ELディスプレイ2としては、市販品や公知品が好適に使用できる。
【0037】
該透明有機ELディスプレイ2は、移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって設置するが、移動体Aの窓の略全面に設置することが、周りに余計なものが見えずに臨場感が出るために好ましい。なお、フロントウィンド(前面の窓1a)の全面に設置した場合、サイドウィンド(側面の窓1b)やリアウィンド(後面の窓1c)には、設置しても設置しなくてもよい。
【0038】
「設置」の手段は特に限定はなく、市販品を使用するときは、該市販品に適した方法が望ましい。具体的には、例えば、窓への貼り付け等が挙げられる。なお、「窓に設置する」とは、窓自身が該透明有機ELディスプレイ自身でもよい。
移動体Aには、該透明有機ELディスプレイ2に接続して、映像を記録・記憶しておいて該透明有機ELディスプレイ2に送信するデッキ、プレイヤー、パソコン、ハードディスク、記憶・記録装置等が設置される。
【0039】
本発明の目視方法では、「カメラ3で過去に撮影し保存した映像P」を、透明有機ELディスプレイ2に写し出すことによって、「移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色V」に重ね合わせて見る。
本発明において、該映像は、「カメラ3で過去に撮影し保存した映像P」であって、窓から見え得る又は窓の外に存在するリアルタイムの映像ではない。該映像は、移動体Aの外部にリアルタイムにあって(存在していて)、移動体Aの移動に際して障害になるような映像(を強調したり見易くしたりしたもの)ではない。すなわち、本発明の目視方法は、リアルタイムの安全運転(安全な移動)を目的としたものではない。
【0040】
該映像は、「本発明の目視の主体である人が搭乗している移動体A」に設置したカメラ3で同じ場所を過去に撮影したものでもよいし、別の移動体Bに設置したカメラ3で同じ場所を過去に撮影したものでもよい。更には、該映像は、移動体Aに設置したカメラ3で同じ場所を同じ方向から過去に撮影したものでもよいし、別の移動体Bに設置したカメラ3で同じ場所を過去に同じ方向から撮影したものでもよい。
【0041】
移動体Bには、カメラ3が設置されている。該カメラ3は、例えば
図2(a)に示したように、移動体Bの前方を撮影するために移動体Bの前に設置されてもよく、例えば、
図2(b)に示したように、移動体Bの側方を撮影するために移動体Bの側に設置されてもよく、例えば、
図2(c)に示したように、移動体Bの後方を撮影するために移動体Bの後に設置されてもよい。
【0042】
また、該カメラ3に接続して、該カメラ3で撮影した映像を記録するデッキ、パソコン、ハードディスク、保存装置、記憶装置、クラウド上での保存のための送信装置等が設置される。「保存」は、カメラ3が搭載されている移動体Bの中でもよいし、移動体Bの外でもよい。
移動体Bのカメラ3で撮影された映像は、好ましくは選別されて、映像素材として使用できるように、保存装置、記憶装置等に保存・記憶される。該映像は、ネットを通じて配信できるようになっていることも好ましい。
【0043】
本発明の目視方法においては、前記移動体Aの窓と前記移動体Bの窓が、何れも、移動体における前面の窓1a、側面の窓1b、又は、後面の窓1cであり、同一面の窓であることが好ましい。
すなわち、移動体Bの前面の窓1aの近傍に設置されて前方を撮影するカメラ3が撮影した映像は、移動体Aのフロントウィンド(前面の窓1a)に写し出し、移動体Bの側面の窓1bの近傍に設置されて側方を撮影するカメラ3が撮影した映像は、移動体Aのサイドウィンド(側面の窓1b)に写し出し、移動体Bの後面の窓1cの近傍に設置されて後方を撮影するカメラ3が撮影した映像は、移動体Aのリアウィンド(後面の窓1c)に写し出すことが好ましい。
【0044】
例えば、側面又は後面の窓1cから撮影された映像を前面の窓1aに写し出すと言った態様を排除するものではないが、それでは、上記「移動体の外のリアルタイムの景色Vとの重ね合わせ効果」が全くなくなる又は減少する場合がある。
【0045】
本発明の目視方法は、移動体Aに搭乗している人が、「該移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色V」と、「移動体Bの窓の近傍に設置されたカメラ3で、過去に同一場所を撮影し保存してあった映像であって、透明有機ELディスプレイ2に写し出された映像P」とを重ね合わせて見ることによって、過去と現在の同一場所の映像若しくは景色を重ね合わせて見る目視方法が好ましい。
【0046】
本発明における映像は、安全運転を目的としたリアルタイムの映像ではなく、「カメラ3で過去に撮影し保存した映像」であるので、「目視の主体である人が搭乗している移動体A」は、特に該目視の主体が運転者である場合は、該移動体Aは静止していることが好ましい。運転中に上記した「透明有機ELディスプレイ2に写し出された映像P」を見ると事故に繋がる場合がある。
【0047】
すなわち、本発明は、移動体Aに搭乗している人が移動体Aを運転しておらず、移動体Aが停止している状態で、該「移動体Aに搭乗している人」が、移動体Aの窓からリアルタイムで見える景色Vと、該透明有機ELディスプレイ2に写し出された映像Pとを重ね合わせて見る前記の目視方法であることが好ましい。
【0048】
本発明の目視方法の具体例を以下に挙げる。
移動体Bから撮影した昔の景色と、リアルタイムの景色Vとを移動体Aの窓で重ね合わせて楽しむことができる(
図1、
図3)。
大昔の景色を重ね合わせてもよいが、例えば半年前の景色であれば、四季の移ろいを移動体Aの窓で重ね合わせて楽しむことができる。また、夜(又は昼)に撮影された映像と、昼(夜の映像)のリアルタイムの移動体外部の景色Vとを移動体Aの窓で重ね合わせて楽しむことができる。
また、豪雪、洪水、地震等過去の災害時の、積雪量、洪水の水位、地震の地割れ等の災害の様子を、現在の景色に重ね合わせて見れば、よりリアルに正確に該災害を把握することができる。
【0049】
また、交通事故の現場に居合わせた自動車のドライブレコーダー(「カメラ」に該当)で撮影された事故の様子を、現場検証等のときに、該自動車から見えるリアルタイムの、十字路等の道路、又は、信号機や横断歩道等と重ね合わせて見ると、事故の責任の所在、過失責任の程度等に関し正しい判断ができる(
図3(a)(b)(c)参照)。
図3は、たまたま該事故に遭遇した他人の自動車のカメラで撮影された様子であるが、交通事故を起こした本人の自動車のドライブレコーダー(「カメラ」に該当)で撮影された事故の様子を、現場検証等のときに、該自動車から見えるリアルタイムの、十字路等の道路、又は、信号機や横断歩道等と重ね合わせて見ると、事故の責任の所在、過失責任の程度等に関し更に正しい判断ができる。
【0050】
なお、このときの移動体Aの搭乗者、すなわち、「重ね合わせて見る人」としては、移動体Aの運転者だった人(移動体Aからの事故の目撃者)、警察官、検察官、裁判官、保険会社の社員、事故を起こした本人等が挙げられる。
【0051】
「移動体Bの運転者又は所有者」が「移動体Aの所有者」の知人であって、該知人が移動体Bの側面の窓1bに設置されたカメラ3から撮影し保存しておいた「車窓からの流れる映像」を、移動体Aの後部座席に乗っている搭乗者が、移動体Aの側面の窓1bから、リアルタイムの景色Vに重ね合わせて楽しむことができる。
【0052】
また、移動体Aが、テーマパークや遊園地にある移動体である場合には、該移動体が実際に道路等を移動できないものであっても、前記したような本発明の効果を楽しむことができる。
【0053】
限定はされないが、本発明の目視方法においては、該移動体Aと該移動体Bが同一の移動体であることが特に好ましい。
すなわち、移動体A(=B)に搭乗している人が、同一の移動体B(=A)に設置したカメラ3から撮影された過去の映像を、該移動体A(=B)の窓からリアルタイムで見える景色Vと重ね合わせて見ることによって、より好適に重ね合わされて臨場感が増す、事故の現場検証がやり易い、過去と現在の映像を重ね合わせ易い(季節の移り変わりが楽しめる)、等の効果がある。
【0054】
<景色と映像の重ね合わせ装置セット>
本発明は、前記の目視方法を行うに際して使用する景色映像重ね合わせ装置セットであって、少なくとも、前記移動体Aの窓に該移動体Aの内部に向かって設置されている透明有機ELディスプレイ2と、移動体Bの窓の近傍に移動体Bの外部に向かって設置されているカメラ3と、該カメラ3で撮影した映像を保存する保存装置と、を有することを特徴とする景色と映像の重ね合わせ装置セットでもある。
【0055】
本発明の景色と映像の重ね合わせ装置セットに含まれる、透明有機ELディスプレイ2、カメラ3、保存装置等としては、前記したものが挙げられる。
【0056】
<移動体の窓からの映像の素材集>
本発明は、前記の目視方法において撮影された映像の素材集であって、移動体Bの窓の近傍に設置されたカメラ3で撮影された映像を、複数の移動体Bから集積し、映像素材として使用できる動画又は画像を選別して保存したものであることを特徴とする移動体の窓からの映像の素材集でもある。
【0057】
該「移動体の窓からの映像の素材集」は、移動体Aに移行・送信させて移動体Aの透明有機ELに写し出してもよいし、ネットを通じて一般に発信してもよいし、記録媒体に入れて流通させることもできる。上記「複数の移動体B」の数は、数万以上にも及ぶことがあるので、中には、非常に良い映像(動画と画像)があり得る。動画から画像(静止画)を選んで、保存、集積、発信等してもよい。
【0058】
移動体Bのカメラ3で撮影された映像を複数の移動体Bから集積すれば、該映像は莫大な数に及ぶので、映像素材として使用できる動画又は画像を選別することも好ましい。
該選別は、移動体Bの所有者がしてもよいし、集積する機関がしてもよいし、AIが特定の基準で選別してもよい。該集積機能や該選別機能を有するAIは、移動体Bの中にあってもよいし、複数の(多くの)移動体Bの映像の集積地にあってもよい。
【0059】
(保存された)映像は、種々の記録媒体に搭載して流通させてもよく、ネット等で配信させてもよい。
移動体の窓からの映像(動画と画像)の素材集は、非常に多くの映像から選別されているので、単に見て楽しむだけではなく、種々の用途に映像素材として利用できる。
【実施例0060】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
実施例1
図2(a)に示したように、甲の移動体B(=A)である自家用車のフロントウィンドの前にカメラ3を設置し、秋に観光地Xのある地点xの景色を撮影する。
同じ移動体(自家用車)の運転席に搭乗した甲は、夏に観光地Xのある地点xに行き、同じ自家用車のフロントウィンドから、地点xの夏の景色Vを見ることができる。
【0062】
甲の同じ移動体A(=B)である自家用車に搭乗した甲は、フロントウィンドに貼られた透明有機ELディスプレイ2に写し出された地点xの秋の映像を、同じフロントウィンド越しに(前面の窓1a越しに)見える地点xのリアルタイムの夏の景色Vに重ね合わせて見ることができる。
甲は、自家用車を停止しているので、安全面については問題がない。
【0063】
実施例2
図2(b)に示したように、乙の移動体Bである自家用車のサイドウィンドの前にカメラ3を設置し、外国の観光地Yの景色の動画を撮影する。
日本の駐車場に止めてある移動体A(甲の自家用車)の後部座席に搭乗した甲は、該後部座席のサイドウィンド(側面の窓1b)に貼られた透明有機ELディスプレイ2で、あたかもサイドウィンド越しに(側面の窓1b越しに)外国の観光地Yの流れる景色を見ているように、該透明有機ELディスプレイ2に写し出された動画を見ることができる。
【0064】
移動体A(甲の自家用車)は駐車場に止まっていたが、外国の観光地Yを旅行している気分になる。駐車場の壁が無柄であっても、壁に静止画が描かれている場合であっても、リアルタイムの駐車場の壁と重ね合わせて見ることによって、外国の観光地Yを旅行している気分(臨場感)が味わえる。
【0065】
実施例3
図2(a)に示したように、乙の移動体B(=A)である自家用車のフロントウィンドの前にカメラ3を設置し、ある交差点zにさしかかる際に、「乗用車とバイクが衝突する交通事故」を目撃する。その際、該カメラ3によって、
図3(a)(b)(c)に示したような該交通事故の映像が撮影される。
該映像は、移動体Bに設置されている保存装置(レコーダー)に保存されるか、又は、瞬時にクラウド上にアップロードされるか、交通事故の捜査関係者に届く。
【0066】
後日、現場検証の際に、捜査関係者である丙は、交通事故の映像を撮影したのと同じ自家用車である移動体A(=B)の運転席に搭乗し、フロントウィンドに貼られた透明有機ELディスプレイ2に写し出された該交通事故の映像を、同じフロントウィンド越しに(前面の窓1a越しに)見える交差点zのリアルタイムの景色Vに重ね合わせて見る。
図3において、街路樹Y、信号Y、道路(交差点)、中央線(センターライン)、空等は、「移動体Aの窓からのリアルタイムの景色V」であり、乗用車PとバイクPは、「透明有機ELディスプレイ2に写し出された映像P」である。
【0067】
捜査関係者である丙は、あたかも、該交通事故が起こった時に、該交通事故が起こった場所において、その様子を、目撃者乙に代わって目撃しているようになり、該交通事故の正確な実態を把握することができる。
本発明の目視方法は、移動体の搭乗者に対して、透明有機ELディスプレイ2を利用して、娯楽性や臨場感を高めることができるので、有機ELディスプレイ等の家電製品の製造販売分野、自動車等の移動体の製造販売分野、遊園地等の娯楽施設の運営分野、交通事故の解析に関連する分野等に広く利用されるものである。