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特開2023-27883レイアウトデータ表示システム及びレイアウトデータ表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027883
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】レイアウトデータ表示システム及びレイアウトデータ表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230224BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20230224BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20230224BHJP
【FI】
G06F30/13
G06F30/20
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133221
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 渉
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正康
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 貴大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 太地
【テーマコード(参考)】
5B050
5B146
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA09
5B050BA11
5B050BA12
5B050BA18
5B050BA20
5B050CA01
5B050DA01
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA12
5B050FA13
5B146AA04
5B146DG02
5B146DG04
5B146EC05
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】建築モデルの観測したい領域を視野に入れた画面を効率的に生成できなかった。
【解決手段】建築モデルのレイアウトデータ111を表示するレイアウトデータ表示システムであって、建築モデルのレイアウトデータ111を表示する際の視点位置を決定する視点位置決定部122を備え、視点位置決定部122は、レイアウトデータ111において設定される観測領域上の点400と視点位置の候補座標701,702とを結ぶ線分と、レイアウトデータ111に配置されたオブジェクトとの干渉回数に基づき、候補座標701,702の中から視点位置を選定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築モデルのレイアウトデータを表示するレイアウトデータ表示システムであって、
前記建築モデルのレイアウトデータを表示する際の視点位置を決定する視点位置決定部を備え、
前記視点位置決定部は、前記レイアウトデータにおいて設定される観測領域上の点と前記視点位置の候補座標とを結ぶ線分と、前記レイアウトデータに配置されたオブジェクトとの干渉回数に基づき、前記候補座標の中から前記視点位置を選定する
レイアウトデータ表示システム。
【請求項2】
前記視点位置決定部は、前記レイアウトデータから抽出した複数の可視化点からなる可視化点群を前記観測領域に含むように、入力された視野角と前記観測領域内の注視点とに基づいて、前記注視点から前記視点位置までの距離を決定する
請求項1に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項3】
前記視点位置決定部は、前記観測領域内の複数の前記可視化点と前記視点位置の前記候補座標とを結ぶ線分と、前記レイアウトデータ内の前記オブジェクトとの干渉回数を計算し、前記干渉回数がより少ない前記線分に対応する前記候補座標を前記視点位置に選定し、前記注視点と前記視点位置を結ぶ線分の水平方向及び鉛直方向の角度を表すカメラ角度を決定する
請求項2に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項4】
前記視点位置決定部は、前記カメラ角度を決定する際、鉛直方向の前記カメラ角度が0度又は90度に近いほど評価値が低くなる重み付き評価関数を用いる
請求項3に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項5】
前記視点位置決定部は、前記カメラ角度を決定する際、水平方向の前記カメラ角度が前記レイアウトデータの図面正方向に近いほど評価値が高くなる重み付き評価関数を用いる
請求項3に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項6】
決定された前記視点位置に基づいて前記レイアウトデータの前記観測領域を射影変換して表示画面を生成する画面生成部、を備える
請求項3に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項7】
前記画面生成部は、前記観測領域と前記視点位置とを結ぶ前記線分に干渉する前記オブジェクトがある場合、該当オブジェクトを半透明又は非表示にする
請求項6に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項8】
前記画面生成部は、前記観測領域と前記視点位置とを結ぶ前記線分と前記オブジェクトとの干渉回数に応じて、該当オブジェクトの透明度を変更する
請求項7に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項9】
前記レイアウトデータの前記観測領域を表示するために、前記レイアウトデータの切断面を表す切断面情報を生成する切断面生成部を備え、
前記画面生成部は、前記切断面情報に基づいて、前記レイアウトデータの前記切断面により構成される領域の内側にあるオブジェクトを前記観測領域として射影変換する
請求項6に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項10】
前記視点位置と前記観測領域との間に、前記建築モデル内の混雑する範囲の情報を少なくとも持つオブジェクトデータである混雑範囲を含み、
前記可視化点は、前記混雑範囲の端点を少なくとも含む
請求項2又は3に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項11】
前記建築モデル内の前記混雑範囲を取得する混雑範囲取得部、を備え、
前記混雑範囲取得部は、前記建築モデル内の昇降機の交通計算から算出される当該昇降機の輸送能力と前記建築モデルの予測交通需要との差分から算出される予測待ち人数を計算し、予測待ち人数分の人の占有エリアに基づいて前記混雑範囲を推定する
請求項10に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項12】
前記建築モデル内の前記混雑範囲を取得する混雑範囲取得部、を備え、
前記混雑範囲取得部は、前記建築モデルの人流シミュレーションにより得られた待ち行列の範囲や人の密度が閾値を超えた領域を前記混雑範囲とする
請求項10に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項13】
前記建築モデル内の前記混雑範囲を取得する混雑範囲取得部、を備え、
前記混雑範囲取得部は、前記建築モデルに対応する実際の建築物に設置されたカメラの撮影データを解析することにより前記混雑範囲を取得する
請求項10に記載のレイアウトデータ表示システム。
【請求項14】
建築モデルのレイアウトデータを表示するレイアウトデータ表示システムによるレイアウトデータ表示方法であって、
前記レイアウトデータ表示システムは、前記建築モデルのレイアウトデータを表示する際の視点位置を決定する視点位置決定部を備え、
前記視点位置決定部は、前記レイアウトデータにおいて設定される観測領域上の点と前記視点位置の候補座標とを結ぶ線分と、前記レイアウトデータに配置されたオブジェクトとの干渉回数に基づき、前記候補座標の中から前記視点位置を選定する
レイアウトデータ表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルなどのレイアウトデータを表示するレイアウトデータ表示システム及びレイアウトデータ表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、BIM(Building Information Modeling)を始めとして、建築物のあらゆる情報を一つの3次元モデルに統合し、画面上に表示することでシステム利用者の意思決定を促進する技術が増えてきている。これらの技術では、建築物の構成要素としての各3次元モデルに属性データが埋め込まれている。その一例として特許文献1が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、「BIMシステムは、レイアウト画面上で、BIMモデル内外の環境に影響を及ぼす環境オブジェクトを変化させながら、統合BIMモデルの環境をシミュレーションする。ここで、BIMシステムは、シミュレーション結果に基づいて、昇降機の設置位置の周辺における採光環境及び照明環境を含むレイアウト画面を生成する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-123229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昇降機の設置計画においては、しばしばその待ちスペースの十分性が議論に挙がる。待ちスペースを議論するためには、建築物の3次元モデルの待ちスペース、すなわち混雑範囲を視野に入れた画面を生成することが望ましい。
【0006】
一般的に、そのような画面は建築物全体の3次元モデルから表示に不要なオブジェクトを半透明又は非表示にしたり、カメラの視点、距離、角度を手動で調整したりすることにより得ることができる。しかし、3次元モデルの構成要素の数が増えた場合や、複数の待ちスペースがある場合において、都度上記の調整を行うことは工数の面で望ましくない。従来技術にも、効率的に画面を生成する方法についてまでは言及されていない。
【0007】
上記の状況から、待ちスペースなど観測したい領域を視野に入れた画面を効率的に生成する手法が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様のレイアウトデータ表示システムは、建築モデルのレイアウトデータを表示するレイアウトデータ表示システムであって、建築モデルのレイアウトデータを表示する際の視点位置を決定する視点位置決定部を備える。上記視点位置決定部は、レイアウトデータにおいて設定される観測領域上の点と視点位置の候補座標とを結ぶ線分と、レイアウトデータに配置されたオブジェクトとの干渉回数に基づき、候補座標の中から視点位置を選定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一態様によれば、建築モデルのレイアウトデータから観測したい領域を視野に入れた画面を効率的に生成することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係るレイアウトデータ表示システムとしての画面生成装置の構成例を示したブロック図である。
図2】建築モデルデータと混雑範囲の一例を示した図である。
図3】カメラ情報を説明する図である。
図4】注視点の決定方法を説明する図である。
図5】カメラ距離の決定方法を説明する図である。
図6】カメラ角度を決定する処理の手順例を示したフローチャートである。
図7】カメラ角度を決定する際の干渉確認処理を説明する図である。
図8】視点選択画面の一例を示した図である。
図9】建築モデルデータに人オブジェクトを配置した表示画面の例を示した図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る画面生成装置の構成例を示したブロック図である。
図11】切断面情報を説明する図である。
図12】建築モデルデータを切断面により切断した表示画面の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る建築モデルのレイアウトデータ(建築モデルデータ)を表示するレイアウトデータ表示システム及びレイアウトデータ表示方法について説明する。
【0013】
[画面生成装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレイアウトデータ表示システムとしての画面生成装置の構成例を示したブロック図である。図示する画面生成装置100は、記憶部110、演算部120、入出力部130、及びバス140を備えている。記憶部110、演算部120、入出力部130、及びバス140は、計算機システム(コンピューターの一例)を構成する。
【0014】
記憶部110は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)などの主記憶装置や、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどの補助記憶装置により構成される。記憶部110は、建築モデルデータ111、混雑範囲112、及びカメラ情報113を保持する。これらのデータ及び情報の詳細は後述する。また、記憶部110には、本実施形態に係る画面生成装置100の各機能を実現するソフトウェアのプログラム(コンピュータープログラム)が格納されている。記憶部110は、コンピューターによって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0015】
演算部120は、主にCPU(Central Processing Unit)で構成され、内部で複数の処理を実行する。CPUが、記憶部110に格納されたプログラムを読み出して実行することで所定の処理が実現される。その処理を大別すると、混雑範囲取得部121、カメラ情報決定部122、及び画面生成部123に分けられる。なお、CPUに替えて、MPUなど他のプロセッサを用いてもよい。
【0016】
混雑範囲取得部121は、建築モデル内の混雑範囲(例えば、後述する図2の混雑範囲112)の情報を取得する処理を実行する。混雑範囲取得部121の詳細については後述する。本実施形態では、画面に表示する領域(観測領域)の例として混雑範囲を説明するが、観測領域はこの例に限らない。
【0017】
カメラ情報決定部122(視点位置決定部の一例)は、建築モデルのレイアウトデータ(建築モデルデータ111)の観測領域(例えば、図5の可視化球503)を表示する際の視点位置に関連する情報(以下「カメラ情報」と称する)を決定する処理を実行する。視点は、建築モデルデータ111の3次元空間を「どこから見て」「どこを見ている」のかという情報である。カメラ情報決定部122の機能は、主に注視点座標決定部122a、カメラ距離決定部122b、及びカメラ角度決定部122cに分けられる。カメラ情報決定部122のこれらの機能の詳細については後述する。
【0018】
画面生成部123は、決定された視点位置に基づいて建築モデルのレイアウトデータ(建築モデルデータ111)の観測領域を射影変換して、表示画面を生成する処理を実行する。なお、表示画面が表示する建築モデルデータ111の範囲(観測領域)は、必ずしも上述した可視化球503と一致しない。
【0019】
入出力部130は、入力部131と出力部132から構成される。入力部131は、ユーザーが操作を行うマウスやキーボードなどの入力装置で構成される。出力部132は、画面表示を行うディスプレイやプリンタなどの出力装置で構成される。また、入出力部130は、通信インターフェースとしての機能も備える。例えば、通信インターフェースには、NIC(Network Interface Card)等が用いられる。通信インターフェースは、端子が接続されたLANやインターネット等の通信ネットワーク又は専用線等を介して、外部装置との間で各種のデータを送受信することが可能に構成される。
【0020】
バス140は、画面生成装置100の機能ブロック間でデータ通信を行うための共通回路である。記憶部110、演算部120、及び入出力部130は、バス140を介して相互に通信可能に構成されている。
【0021】
なお、画面生成装置100を構成する計算機システムは、複数の計算機システムが通信を介して連結されたものであってもよい。例えば、記憶部110、演算部120、及び入出力部130をそれぞれ別の計算機システムで実現し、計算機システム間を接続する通信手段をバス140としてもよい。
【0022】
[データの説明]
次に、画面生成装置100で利用するデータについて説明する。まず、建築モデルデータ111(図1)について図2を用いて説明する。
【0023】
図2は、建築モデルデータ111と混雑範囲112の一例を示した図である。図2において、水平方向をX軸、鉛直方向をY軸、XY平面に直交する方向をZ軸とする。X軸は、乗場ドア203L,203Rの開閉方向と同じである。Z軸は、乗場ドア203L,203Rと正対(直交)する方向である。図2では、建築モデルデータ111の混雑範囲112を含む領域をある視点から見た画面の例が示されている。
【0024】
建築モデルデータ111は、建築モデル(建築物)の形状情報を少なくとも含むモデルデータのことをいう。代表的な建築モデルデータとして、BIM(Building Information Modeling)データが挙げられる。例えば、建築モデルデータ111には、床201、壁202、エレベーター(例えば、昇降路204、乗場ドア203L,203R)の他、階段、窓、柱、天井、エスカレーター、及び各種空間のオブジェクトデータなどが含まれる。乗場ドア203Lと203Rを区別しない場合には、乗場ドア203と記載する。
【0025】
混雑範囲112(図1)は、注視点301を含む観測領域と視点位置との間に、建築モデル内の混雑する範囲の情報を少なくとも持つオブジェクトデータのことをいう。「混雑する範囲」とは、具体的にはエレベーターやエスカレーターなどの昇降機に対する待ち行列の範囲のことをいう。図2では、エレベーターの乗場(エレベーターホール)に混雑範囲112が設定された例が示されている。混雑範囲112は、図2に破線で示すように3次元データであってもよいし、高さ方向の定義を省略した2次元データ(平面)としてもよい。また、混雑範囲112は、一属性として建築モデルデータ111の中に含まれていてもよい。混雑範囲112は、混雑が予想される範囲の大きさや位置を示す情報の他に、エレベーター、エスカレーターなどの混雑原因、予測待ち時間、混雑範囲内の想定人数などが含まれていてもよい。
【0026】
次に、カメラ情報113(図1)について図3を用いて説明する。
図3は、カメラ情報113を説明する図である。カメラ情報113は、3次元のオブジェクトを2次元の画面に射影するための情報のことをいう。具体的には、カメラ情報113は、少なくとも、注視点301、カメラ距離303、及びカメラ角度302の3つの情報を持つ。透視射影法により2次元の画面を生成する場合は、これらの情報に加えてカメラオブジェクト300の視野角の情報も保持してよい。カメラオブジェクト300は視点位置を決定するために作成した建築モデルデータ111上のオブジェクトである。
【0027】
図3では、建築モデルデータ111の昇降路204に設けられた乗場ドア203が見えるように、カメラオブジェクト300(視点位置)が設定されている。注視点301とカメラオブジェクト300との間には、前方壁202Fがある。また、昇降路204の背面には後方壁202Rがある。注視点301からカメラオブジェクト300(視点位置)までの距離が、カメラ距離303となる。
【0028】
注視点301とカメラオブジェクト300(視点位置)を結ぶ線分の水平方向及び鉛直方向の角度が、カメラ角度302となる。図3では平面的に表示しているため、カメラ角度302は一つの角度に見えるが、実際には、水平方向の角度を表すY軸周り(鉛直軸周り)カメラ角度と、鉛直方向の角度を表すX軸周り(水平軸周り)カメラ角度の2つの角度の情報を持つ。図3のカメラ角度302は、鉛直方向のカメラ角度を表している。これらの情報により3次元オブジェクトに対して射影処理を行うことで、2次元の画面が一意に生成される。
【0029】
[処理の説明]
次に、画面生成装置100の演算部120の各機能ブロックによって実施される処理について説明する。
【0030】
(混雑範囲取得部)
まず、混雑範囲取得部121の処理について説明する。
混雑範囲取得部121は、建築モデルデータ111により表される建築モデルの混雑範囲112を予測し、混雑範囲オブジェクトとして取得する。混雑範囲取得部121が建築モデルの混雑範囲112を取得する方法の一例として、昇降機(本実施形態ではエレベーター)の交通計算を用いる方法がある。まず、混雑範囲取得部121は、昇降機の交通計算により算出された所定時間(例えば5分間)の輸送能力と所定時間帯の予測される交通需要との差分から、昇降機の予測待ち人数を算出する。次に、予測待ち人数分の人の占有エリアを予め入力された整列先頭位置から並べていくことで、その占有エリアの外形を予測待ち人数が必要とする空間(混雑範囲112)として推定することができる。混雑範囲取得部121は、推定した混雑範囲112を記憶部110に記憶する。
【0031】
また、混雑範囲112の予測には、人流シミュレーションの結果を用いてもよい。この場合、混雑範囲取得部121は、人流シミュレータにより計算された待ち行列の範囲や人の密度が閾値を超えた領域を、混雑範囲112とすればよい。
【0032】
また、混雑範囲取得部121は、交通計算や人流シミュレーションから予測混雑範囲を得る代わりに、建築モデルに対応する実際の建築物に取り付けられた監視カメラの撮影データを解析することにより混雑範囲112を取得してもよい。この場合、混雑範囲112にリアルタイムの人流を反映することが可能である。混雑範囲取得部121の説明は以上である。
【0033】
上述したような昇降機の交通計算、人流シミュレーション、又は実際のカメラ映像の解析結果により、対象昇降機の混雑範囲112を取得して表示画面に反映することで、建築物のオーナー等に説明する際に効果的な画面を作成することができる。
【0034】
(カメラ情報決定部)
続いて、カメラ情報決定部122の処理について図4図6を用いて説明する。
カメラ情報決定部122は、3次元オブジェクトを画面に射影する際に利用する注視点301、カメラ距離303、及びカメラ角度302を決定する。
【0035】
-注視点座標の決定方法-
注視点座標決定部122aによる注視点座標の決定方法について図4を用いて説明する。
図4は、注視点座標の決定方法を説明する図である。まず、射影によって最終的に得られる画面において視野に含めたい点を可視化点400とし、これを決定する。可視化点400の種類は予め決めておいてもよいし、ユーザーにより選択可能としてもよい。例えば、エレベーター周りの混雑を視野に入れるような画面を生成したい場合は、図4に示すように、建築モデルデータ111における乗場ドア203(エレベータ)の位置や、エレベーターの混雑範囲112の端点を可視化点400とすればよい。例えば、混雑範囲112の端点は、混雑範囲112を表す領域(空間)を構成する線分の端点(例えば、頂点)である。本実施形態では、可視化点400は、混雑範囲112の端点を少なくとも含む。
【0036】
図4には、基準階(通常1階)と任意の階床(床201)とその上の階床(床211)をサービス階として急行運転するシャトルエレベーター、及び、上側の階床(床211)から上の各階をサービス階とするエレベーターの例が示されている。上側の階床(床211)は、スカイロビーなどと呼ばれる。右側のシャトルエレベーターでは、昇降路204-1が上側の階床(床211)で終わっている。また、左側のエレベーターでは、上側の階床(床211)から上方に昇降路204-2が延びている。図4では、下側の階床(床201)と上側の階床(床211)に対して、複数の可視化点400が設定されている。
【0037】
可視化点400を決定する際、エレベーターの出発階情報を用いることで、出発階におけるエレベーター(乗場ドア203)や混雑範囲112のみ可視化点400を抽出するようにしてもよい。これは、出発階に混雑が起きやすい出勤時間帯の混雑状況を画面に表示したいときに有効な処理となる。
【0038】
また、可視化点400を決定する際に、複数のエレベーターバンクの混雑範囲112を同時に可視化点400としてもよい。これは最終的に、複数のエレベーターバンクをまとめて見渡すような視点を生成することにつながる。同時に表示するエレベーターバンクの組合せは事前に画面生成装置100に入力できるようにしてもよい。また、エレベーターのサービス階に共通部分があるバンク同士を同時に表示するように、バンクの組合せを画面生成装置100(例えば、注視点座標決定部122a)が自動で作成してもよい。
【0039】
注視点301の座標を決定する際は、例えば、注視点座標決定部122aが可視化点400の集合の重心座標を計算すればよい。ただし、注視点301は、画面生成装置100に対するユーザーの入力など、異なる手段で決定されてもよい。
【0040】
-カメラ距離の決定方法-
次に、カメラ距離決定部122bによるカメラ距離303の決定方法について、図5を用いて説明する。画面に表示したい建築モデルデータ111は、図3に示した複数の可視化点400を含むものとする。
【0041】
図5は、カメラ距離の決定方法を説明する図である。この方法において、カメラオブジェクト300の視野角504は予め決定されているものとする。まず、可視化点400の中で先に決定した注視点301から最も遠い可視化点501を探索し、注視点301と可視化点501との距離にマージン502(余裕部分)を足した値rを半径とする可視化球503(観測領域の例)を形成する。可視化球503は3次元である。
【0042】
そして、カメラ距離(図3のカメラ距離303)として、この可視化球503が視野角範囲506にちょうど接するような距離505を求めればよい。そのような距離505は、視野角504を“F”、可視化球503の半径を“r”としたとき、r/sin(F/2)で求めることができる。これにより、可視化点400を全て視野内に入れるようなカメラ距離を求めることができる。少なくとも可視化球503を含む領域が2次元の画面に表示される。
【0043】
-カメラ角度の決定方法-
次に、カメラ角度決定部122cによるカメラ角度302の決定方法について、図6を用いて説明する。
図6は、カメラ角度302を決定する処理の手順例を示したフローチャートである。
カメラ角度302を決定することは、建築モデルデータ111の視点位置を決定することにつながる。
【0044】
まず、カメラ角度決定部122cは、決定されたカメラ距離303の条件下で、カメラ角度を変えながら視点候補vを生成し、視点候補vごとに処理S602~S604の処理を繰り返し実施する(S601)。処理S601では、まずカメラ角度決定部122cは、Y軸周りのカメラ角度とX軸周りのカメラ角度とを設定した視点候補vを一つ生成する。ここで、視点とは、カメラオブジェクト300の位置のことをいい、注視点301、カメラ距離303、及びカメラ角度302が決まれば一意に決まるものである。
【0045】
Y軸周り及びX軸周りそれぞれのカメラ角度の変化幅は予め設定して記憶部110に記憶しておくか、ユーザーが入力できる方式とすればよい。例えば、変化幅に5度という値を用いてもよい。
【0046】
また、Y軸周り及びX軸周りそれぞれのカメラ角度に関して、最大値と最小値をユーザーが入力する方式としてもよい。特に、X軸周り(鉛直方向)のカメラ角度の最大値と最小値を適切に設定することで、急すぎるカメラ角度を持つ視点が生成されることを事前に防ぐことができる。
【0047】
例えば、X軸周りのカメラ角度の最小値は0度であり、最大値は絶対値90度である。X軸周りのカメラ角度が0度とは、注視点301を水平方向から見ている状態である。急すぎるカメラ角度では、注視点301を真上又はそれに近い視点から見るような状態となり、画面に表示される建築モデルデータ111が見づらいものとなる。なお、建築モデルデータ111に対する注視点301の真下は床であるから、通常は真下又は真下に近い位置からの視点が採用されることはない。このように、カメラ角度決定部122cは、カメラ角度302を決定する際、鉛直方向のカメラ角度が0度又は90度に近いほど評価値が低くなる重み付き評価関数を用いることが望ましい。
【0048】
逆に、Y軸周り(水平方向)のカメラ角度が最小値(0度)の場合は、注視点301を真横から見ることになり見づらいため、このカメラ角度は例えば10度以上が望ましい。このように、カメラ角度決定部122cは、カメラ角度302を決定する際、水平方向のカメラ角度が建築モデルデータ111の図面正方向に近いほど評価値が高くなる重み付き評価関数を用いることが望ましい。図面正方向は、2次元図面に対して設定され、属性情報として建築モデルデータ111に登録される。一般に、平面図の上方向が正方向に設定される。また、方位記号を用いて平面図の図面正方向と方位との関係を表すこともある。
【0049】
続いて、カメラ角度決定部122cは、処理S602を実施する。処理S602では、カメラ角度決定部122cは、設定された視点候補vにおいて、カメラ距離303を決定する際に生成した可視化点p(図5の可視化点400)の集合Pに対して、処理S603を可視化点pの個数分行う(S602)。
【0050】
処理S603では、カメラ角度決定部122cは、可視化点pの集合Pごとに、可視化点pと視点候補vとを結ぶ線分が他のオブジェクトと干渉した回数をカウントし、当該視点候補vの合計干渉回数に足し合わせる(S603)。
【0051】
図7は、カメラ角度302を決定する際の干渉確認処理を説明する図である。図7において、カメラ角度決定部122cは、可視化点400と視点候補のカメラオブジェクト703を直線で結び、その2点間の線分が建築モデルデータ111内の他のオブジェクトと干渉した回数nをカウントする。次に、カメラ角度決定部122cは、可視化点400と視点候補のカメラオブジェクト704を直線で結び、その2点間の線分が建築モデルデータ111内の他のオブジェクトと干渉した回数nをカウントする。図7の例では、可視化点400とカメラオブジェクト702を結ぶ線分が、干渉部分Inで前方壁202Fと干渉している。したがって、視点位置としてより上方にあるカメラオブジェクト701を選択することで、前方壁202Fによって可視化点400が遮られることを避けられる。
【0052】
干渉回数のカウントに関しては、線分とオブジェクトを構成するポリゴンとの干渉回数を全てカウントしてもよいし、1オブジェクトにつき1回までとしてもよい。
【0053】
カウントした値は、現在の視点候補vと紐づく合計干渉回数に足し合わせる。処理S602では、可視化点pの個数分の繰り返し処理を実施するため、この合計干渉回数は全可視化点pの分だけ足し合わされる。
【0054】
この際、合計干渉回数が予め設定した閾値を超えた場合は、合計干渉回数に予め設定した十分大きな値を加えて当該視点候補vでの干渉確認処理を終了してもよい。可視化点pとオブジェクトの数が多く、干渉確認に時間がかかる場合は、この方法により処理時間を短縮できることが期待される。
【0055】
また、干渉確認を行うオブジェクトは、予め建築モデルデータ111内で専用の属性を付与するか、建築モデルデータ111における特定の属性のオブジェクトのみを干渉確認するような処理を行ってもよい。このような処理を行うことで、例えば天井、ダクトなど、予め非表示にするようなオブジェクトまで干渉確認してしまうことを避けることができる。また、表示対象階でないオブジェクトの干渉確認も避けることができる。
【0056】
次いで、カメラ角度決定部122cは、集合Pにおいて可視化点pごとに実施していた処理が終了した場合、当該集合Pに対する繰り返し処理を終了する(S604)。
【0057】
次いで、カメラ角度決定部122cは、カメラ角度を変えて算出した全ての視点候補vに対する処理が終了した場合、繰り返し処理を終了する(S605)。
【0058】
次いで、カメラ角度決定部122cは、視点候補vごとに記録された合計干渉回数が多いほど評価値が低くなるような重み付き評価関数を用い、当該評価関数の値が最小となる視点候補vを探索、取得する(S606)。これにより、可視化点が他のオブジェクトに遮られることがより少ない視点を得ることができる。それゆえ、後述する画面生成部123は、昇降機の混雑範囲112を視野に入れた画面を円滑に作成できる。
【0059】
なお、重み付き評価関数には、合計干渉回数以外の評価項目を入れ込んでもよい。例えば、建築モデルデータ111における図面正方向の視点を得やすくなるように、視点から注視点301への視線方向が図面正方向から遠ざかるほど評価値が低くなるような項を追加してもよい。これにより、図面で議論を進めている人にも伝わりやすい画面を生成することができる。
【0060】
また、重み付き評価関数には、カメラ角度が急な視点が生成されることをなるべく避けるため、例えばX軸周り(鉛直方向)のカメラ角度が45度から遠ざかるほど評価値が低くなるような項を追加してもよい。
【0061】
また、重み付き評価関数を用いてカメラ角度を決定する際、重みの異なる複数の評価関数を用いて評価を行い、それぞれ評価関数で最適な視点候補を決定した後に、最終的な選択をユーザーにゆだねる方式としてもよい。その際は、例えば、図8に示すように視点選択画面により、ユーザーが最終的なカメラ角度を決定する方式とすればよい。
【0062】
図8は、視点選択画面の一例を示した図である。図示する視点選択画面800には、左右方向に二つの画面810,820が表示されている。左側の画面810の視点位置は、図2とほぼ同じである。画面820の視点位置は、Y軸周りのカメラ角度が大きい例である。視点選択画面800に「いずれかの視点を選択してください」というユーザーの選択を促すメッセージが表示される。ユーザーは、入力部131により画面810,820を選択した後、「OK」ボタンを押下することで表示する画面を確定する。「キャンセル」ボタンにより、一度選択した画面をキャンセルすることができる。図8では、太線で示されているように画面810が選択されている。
【0063】
決定した注視点301、カメラ距離303、及びカメラ角度302はまとめて、カメラ情報113として記憶部110に記録される。
以上がカメラ情報決定部122の処理の内容である。
【0064】
(画面生成部)
最後に、画面生成部123の処理について説明する。
画面生成部123は、カメラ情報113に基づいて建築モデルデータ111の射影変換を実行し、表示画面を生成して出力部132に出力する。例えば、射影処理は一般的な透視射影法を用いればよい。画面生成部123は、画面生成の際に、シミュレーションや実際の監視カメラの撮影データなどから得られる人の位置に、人オブジェクト910を建築モデルデータ111に配置した状態で表示画面を生成してもよい。図9に、建築モデルデータ111に人オブジェクト910を配置した表示画面の例を示す。画面900では、実際の建築物内の図示しない監視カメラの撮影データを利用して人オブジェクト910を表示している。画面900によれば、現在のエレベーターホールは計画時(例えば、図8の画面810,820)よりも人が混雑していることがわかる。
【0065】
なお、画面生成部123による画面生成の際、カメラ情報決定部122で決定した可視化点とカメラとを結ぶ線分との間に他のオブジェクトとの干渉がある場合は、干渉しているオブジェクトを半透明表示したり、非表示にしたりしてもよい。
【0066】
また、画面生成部123は、半透明表示の際の透明度を決定する際、干渉回数が多いほど透明度を上げるような処理を行ってもよい。このように、干渉回数に応じて透明度を調整することで、オブジェクトの干渉が多い部分と少ない部分とで、累積の透明度を同じように表示できる。例えば、オブジェクトの干渉が多い部分(視線方向)であっても、オブジェクトの向こう側に映っている人や任意の物体を干渉が少ない部分(視線方向)と同様の半透明(濃度)で表示することが可能となる。
【0067】
また、画面生成部123は画面生成の際に、予め建築モデルデータ111の各オブジェクトに登録しておいた属性情報を用いて、天井やダクトなど人の通行に関わらないオブジェクトを非表示とするような制御を行ってもよい。また、画面生成部123は、可視化点400を設置した表示対象階以外の階のオブジェクトを非表示とするような制御を行ってもよい。
【0068】
本発明における第1の実施形態についての説明は以上である。上述したように、第1の実施形態に係るレイアウト表示システム(画面生成装置100)は、建築モデルのレイアウトデータ(建築モデルデータ111)を表示するレイアウトデータ表示システムであって、建築モデルのレイアウトデータを表示する際の視点位置(カメラオブジェクト300)を決定する視点位置決定部(カメラ情報決定部122)を備える。この視点位置決定部は、レイアウトデータにおいて設定される観測領域上の点(可視化点400)と視点位置の候補座標(視点候補v:カメラオブジェクト703,704)とを結ぶ線分と、レイアウトデータに配置されたオブジェクト(例えば、前方壁202F)との干渉回数に基づき、候補座標の中から視点位置を選定する。
【0069】
上記のように構成された第1の実施形態に係るレイアウト表示システムによれば、建築モデルのレイアウトデータにおいて設定される観測領域上の点と視点位置の候補座標とを結ぶ線分と、レイアウトデータに配置されたオブジェクトとの干渉回数に基づき、候補座標の中から視点位置を選定する。そのため、オブジェクトの干渉がより少ない視点位置を選定することが可能となる。したがって、建築モデルのレイアウトデータから観測領域を視野に含めた画面を効率的に自動生成することができる。それゆえ、ユーザーによる視点探索の工数を短縮できる。
【0070】
例えば、建築モデルに昇降機を設置する場合、観測領域として昇降機により生じる混雑範囲を視野に入れた画面を効率的に自動生成することができる。このため、建築モデルのレイアウトデータを用いた昇降機の設置計画や運用において、ユーザーが視点位置を手動で探索する工数を低減することができる。
【0071】
また、上述した第1の実施形態に係るレイアウト表示システム(画面生成装置100)では、視点位置決定部(カメラ情報決定部122)は、レイアウトデータ(建築モデルデータ111)から抽出した複数の可視化点(可視化点400)からなる可視化点群を観測領域(可視化球503)に含むように、入力された視野角(視野角504)と観測領域内の注視点(注視点301)とに基づいて、当該注視点から視点位置までの距離(カメラ距離303)を決定するように構成されている。
【0072】
また、上述した第1の実施形態に係るレイアウト表示システム(画面生成装置100)では、視点位置決定部(カメラ情報決定部122)は、観測領域内の複数の可視化点(可視化点400)と視点位置の候補座標(カメラオブジェクト703,704)とを結ぶ線分と、レイアウトデータ(建築モデルデータ111)内のオブジェクトとの干渉回数を計算し、干渉回数がより少ない線分に対応する候補座標を視点位置に選定し、注視点(注視点301)と視点位置を結ぶ線分の水平方向及び鉛直方向の角度を表すカメラ角度(カメラ角度302)を決定するように構成されている。
【0073】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、建築モデルデータ111から人の通行に関わらない部分を切断して非表示にした画面を自動生成する例である。第2の実施形態について、主に第1の実施形態との差分に重点を置いて説明する。
【0074】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る画面生成装置の構成例を示したブロック図である。図示する画面生成装置100Aは、記憶部110、演算部120、入出力部130、及びバス140を有する。このうち、入出力部130、及びバス140の内容は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0075】
記憶部110は、建築モデルデータ111、混雑範囲112、及びカメラ情報113に加え、切断面情報1001を保持する。
【0076】
演算部120により実行される処理を大別すると、混雑範囲取得部121、切断面生成部1002、カメラ情報決定部122、及び画面生成部123に分けられる。
【0077】
[データの説明]
次に、画面生成装置100Aで利用するデータについて説明する。ここでは第1の実施形態との差分のみ説明を行う。
【0078】
図11は、切断面情報1001を説明する図である。切断面情報1001は、図11に示すように、建築モデルデータ111を切断表示するための領域を表す情報であり、建築モデルデータ111を切断する断面の情報(位置、断面の方向、角度)を持つ。領域は閉じていてもよいし、一部が開放された半空間となっていてもよい。図11では、建築モデルデータ111(建築物)が、切断面情報1001に基づく切断領域1010によって切断される様子が表されている。切断領域1010は、建築モデルデータ111の最下階から最上階を横断的に切断する。切断領域1010には、各階のエレベーターホール1111と、エレベーターホール1111に続く通路1112のオブジェクトが含まれる。エレベーターホール1111は通路の一部である。
【0079】
[処理の説明]
次に、画面生成装置100Aの演算部120の各機能ブロックによって実施される処理について説明する。
【0080】
(混雑範囲取得部)
混雑範囲取得部121に関しては、第1の実施形態と同様の処理を行えばよい。
【0081】
(切断面生成部)
切断面生成部1002は、混雑範囲112の視認性を上げるために建築モデルデータ111を切断する切断面情報1001を生成する。切断面情報1001の生成は、最終的に表示データとして残す領域を決定することに相当する。その切断面情報1001の生成方法として、例えば、建築モデルデータ111内の空間オブジェクトの属性を参照し、通路属性を持つ領域の外形を取る方法がある。
【0082】
また、切断面情報1001の他の生成方法として、建築モデルデータ111上で人流シミュレーションを実施し、人の通行した領域を含むように領域を形成する手法がある。これは、例えば、人の通行領域の外形を取ることで実現する。人が通行した経路を記録し、その経路に人の占有エリアを並べることで、人の通行領域の外形を得ることができる。
あるいは、切断面情報1001は、可視化点400の集合の外形を取るという方法で生成されてもよい。
以上が切断面生成部1002の処理の説明である。
【0083】
(カメラ情報決定部)
カメラ情報決定部122は、第1の実施形態と同様に、画面を構成するのに必要な注視点301、カメラ距離303、及びカメラ角度302の決定を行う。このうち、注視点301、及びカメラ距離303の決定に関しては、第1の実施形態と同様の手法により行えばよい。
【0084】
カメラ角度の決定に関しても、第1の実施形態で説明したように、可視化点400とカメラオブジェクトとを結ぶ線分と他のオブジェクトとの合計干渉回数を視点候補vごとに計算し、合計干渉回数が少ないときに評価値が高くなるような重み付き評価関数を用いる。ただし、干渉回数を計算する際、オブジェクト上の干渉点が切断面情報1001により切断される領域(図11の切断領域1010の外部)にある場合は、干渉回数にカウントする必要はない。また、干渉確認を行う前に、建築モデルデータ111を切断面情報1001により切断して新たな3次元データを構築してもよい。これにより、切断後の建築モデルデータ111の状態を考慮してカメラ角度を決定することができる。
以上がカメラ情報決定部122の説明である。
【0085】
(画面生成部)
画面生成部123は、建築モデルデータ111の各オブジェクトをカメラ情報113に基づき射影し、画面を生成及び出力する。各オブジェクトを射影する際、切断面情報1001により切断される領域(図11の切断領域1010の外部)に存在する部分を射影しないような処理を行ってもよい。この処理を行うことで、図12に示すような各オブジェクトを切断した画面1200を生成することができる。
【0086】
図12は、建築モデルデータ111を切断面により切断した表示画面の例を示した図である。図12に示す画面1200には、1階の通路属性を持つ床オブジェクト1201、2階の通路属性を持つ床オブジェクト1202、及び、3階の通路属性を持つ床オブジェクト1203が表示されている。各床オブジェクト1201~1203は、エレベーターホール1210と、エレベーターホール1210に続く通路1220から構成されている。1階のエレベーターホール1210には、乗場ドア203L,203Rと乗りかご205L,205Rが表示されており、二つの乗りかご205L,205Rが1階で停止している。また、2階のエレベーターホール1210には乗場ドア203L,203Rが、3階のエレベーターホール1210には乗場ドア203L,203Rが表示されている。建築モデルデータ111内のその他のオブジェクトは、切断面情報1001により表示されない。
【0087】
本発明における第2の実施形態についての説明は以上である。上述したように、第2の実施形態に係るレイアウト表示システム(画面生成装置100A)は、レイアウトデータ(建築モデルデータ111)の観測領域を表示するために、レイアウトデータの切断面を表す切断面情報(切断面情報1001)を生成する切断面生成部(切断面生成部1002)を備える。画面生成部(画面生成部123)は、切断面情報に基づいて、当該レイアウトデータの切断面により構成される領域(切断領域1010)の内側にあるオブジェクトを上記観測領域として射影変換する。
【0088】
上記のように構成された第2の実施形態に係るレイアウト表示システムによれば、建築モデルのレイアウトデータから人の通行に関わらない部分を切断して非表示にした画面を自動生成することができる。このため、ユーザーによるオブジェクトの表示設定、切断設定などの設定にかかる工数も削減することができる。そして、混雑範囲112を視認するのに妨げとなる領域を取り除くことで、混雑範囲112の視認性を向上することができる。
【0089】
上述した第1及び第2の実施形態では、昇降機としてエレベーターを例に説明したが、エスカレーター等の他の昇降機でもよい。
【0090】
さらに、本発明は上述した第1及び第2の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにレイアウトデータ表示システム(画面生成装置100,100A)の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成要素に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成要素を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成要素の追加又は置換、削除をすることも可能である。
【0091】
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。
【0092】
また、上述した第1及び第2の実施形態に係る画面生成装置100,100Aの各構成要素は、それぞれのハードウェアがネットワークを介して互いに情報を送受信できるならば、いずれのハードウェアに実装されてもよい。また、演算部内のある処理部により実施される処理が、1つのハードウェアにより実現されてもよいし、複数のハードウェアによる分散処理により実現されてもよい。
【0093】
また、本明細書においては、「平行」及び「直交」などの用語を使用する場合、各々の用語は、厳密な「平行」及び「直交」のみを意味する用語ではなく、厳格な意味での「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある「略平行」及び「略直交」の意味をも含むものである。
【符号の説明】
【0094】
100,100A…画面生成装置(レイアウト表示システム)、 110…記憶部、 111…建築モデルデータ、 112…混雑範囲、 113…カメラ情報、 120…演算部、 121…注視点座標決定部、 122…カメラ情報決定部、 122a…注視点座標決定部、 122c…カメラ角度決定部、 123…画面生成部、 130…入出力部、 300…カメラオブジェクト(視点)、 301…注視点、 302…カメラ角度、 303…カメラ距離、 400…可視化点、 501…可視化点、 502…マージン、 503…可視化球、 504…視野角、 505…距離、 506…視野角範囲、 701,702…カメラオブジェクト(視点候補)、 800…視点選択画面、 810,820…画面、 900…画面、 910…人オブジェクト、 1001…切断面情報、 1002…切断面生成部、 1010…切断領域、 1111…エレベーターホール、 1112…通路、 1200…画面、 1201~1203…床オブジェクト、 1210…エレベーターホール、 1220…通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12