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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027902
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】融接装置および融接装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133258
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS10
3C707DS01
3C707KS17
3C707KS20
3C707KS33
3C707KS34
3C707KV06
3C707KX07
3C707LU06
(57)【要約】
【課題】力覚センサを用いてワークに対する融接ハンドの位置および角度を制御する。
【解決手段】ロボットアーム(20)と、ロボットアーム(20)に取り付けられ、ワーク(W)から離間した状態でワーク(W)を溶融し、接合する融接ヘッド(32)を有する融接ハンド(30)と、融接ハンド(30)に設けられ、ワーク(W)と当接する支持体(40)と、支持体(40)を介してワークから受ける力およびモーメントを検出するための力覚センサ(35)と、力覚センサ(35)の出力信号から算出されたパラメータに基づいて、ロボットアーム(20)の動作を制御する制御部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームに取り付けられ、ワークから離間した状態で当該ワークを溶融し、接合する融接ヘッドを有する融接ハンドと、
前記融接ハンドに設けられ、前記ワークと当接する支持体と、
前記支持体を介してワークから受ける力およびモーメントを検出するための力覚センサと、
前記力覚センサの出力信号から算出されたパラメータに基づいて、前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
を備えていることを特徴とする融接装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記支持体を介して前記ワークから受ける垂直抗力を含み、
前記制御部は、前記垂直抗力の大きさが一定となるように、前記ロボットアームの動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の融接装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記支持体を介して前記ワークから受けるモーメントであって、前記融接ハンドの進行方向に対して直交する軸を回転軸とする第1回転モーメントを含み、
前記制御部は、前記第1回転モーメントが予め定められた範囲に入るように、前記ロボットアームの動作を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の融接装置。
【請求項4】
前記力覚センサは、前記支持体に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の融接装置。
【請求項5】
前記支持体は、それぞれが前記ワークと当接し、間に前記ワークの接合部が位置する第1柱体および第2柱体を有し、
前記力覚センサは、前記第1柱体および前記第2柱体のそれぞれに配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の融接装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記ワークと当接するローラを有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の融接装置。
【請求項7】
前記力覚センサは、前記ロボットアームと前記融接ハンドとの間に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の融接装置。
【請求項8】
ロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられ、ワークから離間した状態で当該ワークを溶融し、接合する融接ヘッドを有する融接ハンドと、前記融接ハンドに設けられ、前記ワークと当接する支持体と、前記支持体を介してワークから受ける力およびモーメントを検出するための力覚センサと、を備えた融接装置の制御方法であって、
前記力覚センサの出力信号から算出されたパラメータに基づいて、前記ロボットアームの動作を制御する、
ことを特徴とする融接装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサを備えた融接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを使用する溶接装置がある。例えば、特許文献1には、溶接ロボットと、溶接ロボットのアームに取り付けられた溶接ハンドとを備える溶接装置が開示されている。当該溶接装置は力覚センサを備えている。力覚センサは、溶接ロボットのアームの先端と、溶接ハンドとの間に配置されている。溶接ハンドに設けられる複数の電極チップがワークを両側から把持することにより、力覚センサが溶接ハンドに対するワークの撓みを検出する。力覚センサからの検出信号の入力値が設定範囲内となるように制御部がロボットアームを制御することにより、ワークに対する溶接ハンドの位置が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-219579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶接方法は、融接、圧接、およびろう接に分類される。ここで、融接は、ワークを溶融して接合する溶接方法のことを指す。融接は、融接ハンドがワークから離間した状態で実施される。このため、力覚センサを用いてワークから融接ハンドに作用する力を検出することができず、その結果、力覚センサを用いてワークに対する融接ハンドの位置の制御をすることができない。そのため、特許文献1のように力覚センサを用いて、ワークに対する融接ハンドの位置および角度を制御することができない。
【0005】
本発明の一態様は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、力覚センサを用いてワークに対する融接ハンドの位置および角度を制御する融接装置および融接装置の制御方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る融接装置は、ロボットアームと、前記ロボットアームに取り付けられ、ワークから離間した状態で当該ワークを溶融し、接合する融接ヘッドを有する融接ハンドと、前記融接ハンドに設けられ、前記ワークと当接する支持体と、前記支持体を介してワークから受ける力およびモーメントを検出するための力覚センサと、前記力覚センサの出力信号から算出されたパラメータに基づいて、前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ワークに対する融接ハンドの位置を正確に制御する融接装置および融接装置の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る融接装置の全体構造を示す図である。
図2】本発明の実施形態1に係る融接装置の要部を示す図である。
図3図2に示す融接ハンドをX1方向から見た図である。
図4図1に示す融接装置に配置される力覚センサを示す図である。
図5】支持体に作用する力およびモーメントについて説明する図である。
図6】本発明の実施形態1に係る融接装置のハードウェア構成を示す図である。
図7】本発明の実施形態1に係る融接装置の制御方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態1に係る融接装置の維持工程を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態1に係る支持体の第1変形例を示す図である。
図10】本発明の実施形態2に係る融接装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施形態では、融接を行う融接装置の一例として、アーク溶接を行う場合について説明する。ここで、本願において融接とは、ワークから離間した状態でワークの接合部に向けてエネルギーを放出し、ワークの接合部を加熱または溶融させることによりワークを接合する溶接方法のことをいう。例えば、ガス溶接、アーク溶接、エレクトロスラグ溶接、電子ビーム溶接、レーザビーム溶接等が該当する。本願において、融接ヘッドから放出されてワークに伝達するもの(電気、光、熱)を総称して「エネルギー」と表現する。
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1~5を用いて詳細に説明する。図1は、実施形態1に係る融接装置1の全体構造を示す図である。図2は実施形態1に係る融接装置1の要部を示す図である。図3は、図2に示す融接ハンド30をX1方向から見た図である。図4は、図1に示す融接装置1に配置される力覚センサ35を示す図である。図5は、支持体40に作用する力およびモーメントについて説明する図である。融接装置1の各構成および位置関係などを説明するにあたって、説明の便宜上、図1などに示すようなX(X1-X2)方向、Y(Y1-Y2)方向、Z(Z1-Z2)方向という三方向の座標軸で規定する。
【0011】
図1に示すように、融接装置1は、融接稼動部5と、融接ロボット2と、制御装置50とを備える。
【0012】
融接稼動部5は、融接ハンド30に接続されている。融接稼動部5は、融接ヘッド32からエネルギーを放出するための機構である。融接稼動部5は、後述する制御装置50により制御され、融接ハンド30に電力を供給する。融接稼動部5は、融接ヘッド32およびワークWに電圧を印加する融接電源部を有している。融接稼動部5は、ワイヤなどの溶融材供給部を有していてもよいし、シールドガスまたは活性ガスを供給するガス供給部を有していてもよい。
【0013】
融接を行う対象となるワークWは、金属である。また、ワークWの継手は、ワークW同士を突き合せた突合せ継手による例を示している。しかし、ワークの継手はこれに限られるものではなく、T継手、角継手等であってもよい。また、融接対象となるワークには、継手上に溝を形成したいわゆる開先を形成したワークであっても良い。
【0014】
制御装置50は、融接装置1を制御する。
【0015】
融接ロボット2は、基台10と、ロボットアーム20と、融接ハンド30と、支持体40と、を備える。基台10は、床面に固定されている。
【0016】
ロボットアーム20は、基台10に設けられている。ロボットアーム20の基端が基台10に取り付けられる。ロボットアーム20は、基台10に対して回動可能に設けられている。ロボットアーム20は、複数のリンクを有している。ロボットアーム20のリンクは、隣接するリンクと接続する関節部において、回動可能に取り付けられている。ロボットアーム20の先端には、融接ハンド30が取り付けられている。
【0017】
融接ハンド30は、ワークWを融接するためのハンドである。融接ハンド30には取付部材33が設けられている。融接ハンド30は、取付部材33を介してロボットアーム20と接続する。
【0018】
融接ハンド30は、ハンド本体31と、融接ヘッド32とを有する。ハンド本体31の先端側に、融接ヘッド32が設けられている。融接ヘッド32は、ワークWから離間した状態でワークWの接合部Aに向けてエネルギーを放出する部分である。本実施形態において、融接ヘッド32は、電気エネルギーであるアークを発生させるための電極である。
【0019】
融接ハンド30には、支持体40が設けられている。支持体40は、ワークWと当接する部材である。支持体40は、融接ハンド30に対して所定の角度となるように固定されている。より詳細には、図示していない取付具により、支持体40がハンド本体31に取り付けられる。これにより、支持体40は融接ハンド30に対して固定される。
【0020】
図2および図3に示すように、支持体40は、第1柱体42と、第2柱体43と、接続部41とを有する。
【0021】
第1柱体42および第2柱体43は、融接ハンド30側からワークW側(Z2方向)に向かって伸びる部材である。第1柱体42は、ハンド側第1柱体421と、ワーク側第1柱体422とを有する。ハンド側第1柱体421と、ワーク側第1柱体422との間に、後述する力覚センサ35が配置されている。第2柱体43は、ハンド側第2柱体431と、ワーク側第2柱体432とを有する。ハンド側第2柱体431と、ワーク側第2柱体432との間に、力覚センサ35が配置されている。なお、力覚センサ35は、接続部41と第1柱体42の融接ハンド30側の端部との間、および接続部41と第2柱体43の融接ハンド30側の端部との間に配置してもよい。
【0022】
第1柱体42および第2柱体43には、ワークWと当接するローラ44が設けられている。第1柱体42および第2柱体43にローラ44を設けることで、支持体40はワークW上をスムーズに走行することができる。また、ローラ44は、電気的に絶縁する絶縁部材により形成されている。ローラ44が絶縁部材により形成されているため、ワークWとローラ44との間で短絡することを防ぐことができる。なお、ローラ44は、第1柱体42および第2柱体43のいずれか一方に設けられているものであっても良い。
【0023】
接続部41は、第1柱体42および第2柱体43の融接ハンド30側の端部同士を接続する。より詳細には、接続部41は、ハンド側第1柱体421の融接ハンド30側の端部と、ハンド側第2柱体431の融接ハンド30側の端部とを接続する。接続部41は、取付具によりハンド本体31に取り付けられる部材である。
【0024】
支持体40は、ロボットアーム20の動作によって融接ハンド30が移動すると、支持体40も共にワークW上を走行する。支持体40は、融接された箇所Yを走行しないように設けられている。より詳細には、支持体40は、融接ハンド30の進行方向(X2方向)において、融接ハンド30よりも前方を走行するように設けられている。また、支持体40は、第1柱体42と第2柱体43との間に、ワークWの接合部Aが位置するように走行する。換言すれば、第1柱体42は突き合わされた一方のワークW上を走行し、第2柱体43は突き合わされた他方のワークW上を走行する。これにより、支持体40は安定した状態でワーク上を移動することができる。なお、支持体40は一方のワークW上を走行するものであってもよい。例えば、融接するワークWがT継手または角継手等である場合、支持体40は、ワークWの接合部Aに対して間隔を空けて、かつ接合部Aに沿って一方のワークW上を走行するように融接ハンドに設けてもよい。
【0025】
図4は、図1に示す融接装置1に配置される力覚センサ35を示す図である。力覚センサ35は、上述したように、支持体40に配置されている。これにより、力覚センサ35がワークWから支持体40に直接作用する力およびモーメントを検出することができるため、容易にロボットアーム20の動作プログラムを作成することができる。図4に示すように、力覚センサ35は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の荷重(Fx、Fy、Fz)を検出すると共に、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のモーメント(Mx、My、Mz)を同時に検出することができる6軸力覚センサである。力覚センサ35は、第1面36aを有する第1部材36と、第2面37aを有する第2部材37と、第1部材36及び第2部材37の間に配置された起歪体(図示しない)とを有する歪ゲージ式のセンサである。なお、力覚センサ35は歪ゲージ式のセンサに限らず、圧電式、光学式等の力覚センサを用いてもよい。
【0026】
力覚センサ35は、支持体40を介してワークWから受ける力およびモーメントを検出するためのセンサである。より詳細には、第1柱体に配置される力覚センサ35は、第1柱体42に作用する力およびモーメントを検出する。第2柱体に配置される力覚センサ35は、第2柱体43に作用する力およびモーメントを検出する。第1柱体42に配置される力覚センサ35は、第1部材36の第1面36aが融接ハンド30側となるように配置されている。第2柱体43に配置される力覚センサ35は、第2部材37の第2面37aがワークW側となるように配置される。
【0027】
図5を用いて、支持体40に作用する力およびモーメントについて説明する。融接ハンドはX2方向に進行するものとして説明する。図5に示すように、制御装置50は支持体40がワークWに当接するようにロボットアーム20の動作を制御する。
【0028】
支持体40がワークWに当接すると、ワークWから支持体40に力およびモーメントが作用する。力覚センサ35は、支持体40に作用する垂直抗力であるZ方向の力FZを検出する。力覚センサ35が検出したFZの値に基づいて、制御装置50は融接ハンド30をワークWに近づける方向またはワークWから遠ざける方向にロボットアーム20の動作を制御する。これにより、ワークWに対する融接ハンド30の位置が所定の位置に維持される。支持体40に作用する垂直抗力Fzを一定に維持することにより、ワークWに凹凸や曲面があったとしても、ワークWに対する融接ヘッド32の位置を一定にすることができる。
【0029】
融接ハンド30が進行方向(X2方向)において傾斜する傾斜面部分に差し掛かると、第1回転モーメントMYが支持体40に作用する。第1回転モーメントMYは、ワークWの支持体40と当接する面に対して水平であり、融接ハンド30の進行方向に対して直交する軸を回転軸とするモーメントである。換言すれば、第1回転モーメントMYは支持体40の進行方向に対して直交する軸を回転軸とするモーメントである。制御装置50は、力覚センサ35により検出される第1回転モーメントMYが予め定められた範囲内となるようにロボットアーム20のワークに対する傾きを制御する。これにより、ワークWに対する融接ヘッド32の角度が所定の条件となるように維持される。
【0030】
また、図示していないが、力覚センサ35は、融接ハンド30が進行方向(X2方向)と交差する方向(Y1‐Y2)において傾斜する傾斜面部分に差し掛かると、第2回転モーメントMXが支持体40に作用する。第2回転モーメントMXは、ワークWの支持体40と当接する面に対して水平であり、融接ハンド30の進行方向を回転軸とするモーメントである。換言すれば、第2回転モーメントMXは支持体40の進行方向を回転軸とするモーメントである。制御装置50は、力覚センサ35により検出される第2回転モーメントMXが予め定められた範囲内となるようにロボットアーム20のワークに対する傾きを制御する。これにより、ワークWに対する融接ヘッド32の角度が所定の条件となるように維持される。
【0031】
図6は、融接装置1のハードウェア構成を示した図である。図6に示すように、制御装置50は、プロセッサ51、メモリ52、および入出力IF53を含む。制御装置50は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、またはPLC(programmable logic controller)等により実現される。プロセッサ51、メモリ52、および入出力IF53は、バスを介して互いに電気的に接続されている。
【0032】
プロセッサ51は、メモリ52に格納された種々のプログラムを実行することで、種々の制御および種々の演算を行う。プロセッサ51としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、又は、これらの組み合わせを用いることができる。プロセッサ51は、例えば、ロボットアーム20の動作を制御する。
【0033】
メモリ52は、プロセッサ51により実行される種々のプログラムを格納している。融接に関するプログラムは、メモリ52に格納されている。融接に関するプログラムとは、融接装置1全体の動作および制御ルーチンを記述したプログラムである。メモリ52としては、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を用いることができる。
【0034】
入出力IF53は、ロボットアーム20、力覚センサ35、および融接稼動部5と通信を行うインタフェースである。入出力IF53として、例えばUSB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、SCSI(Small Computer System Interface)、シリアル通信等を用いることができる。
【0035】
<融接装置の制御方法>
融接装置1の制御方法について、図6を用いて説明する。図6は、実施形態1に係る融接装置1の制御方法を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、プロセッサ51によって融接に関するプログラムが実行されると、制御装置50はロボットアーム20の動作を制御する。制御装置50の制御に従って、ロボットアーム20のワークWに対する位置および角度が所定の条件を満たすようにロボットアーム20の動作が調整される。これにより、融接ヘッド32のワークWに対する位置および角度が所定の条件を満たす位置および角度となる。ワークWに対する融接ヘッド32の位置および角度は、維持工程において、所定の条件を維持するように調整される。この維持工程については、後で詳述する。さらに、制御装置50の制御に従って、融接ハンド30がワークWの接合部Aに沿って移動するようにロボットアーム20の動作が制御される。
【0037】
ステップS2において、融接稼動部5は、制御装置50の制御に従って、融接ヘッド32の電極およびワークWに対して電圧を印加する。電圧が印加されることにより融接ヘッド32からアークが発生し、ワークWの接合部Aが融接される。
【0038】
ステップS1およびステップS2と並行して、ステップS3およびステップS4が繰り返して行われている。
【0039】
ステップS3において、力覚センサ35は、支持体40を介してワークWから受ける力およびモーメントを検出する。より詳細には、力覚センサ35は、支持体40に作用する力およびモーメントを検出する。力覚センサ35が検出した力およびモーメントの値は、入出力IF53を介して制御装置50に入力される。
【0040】
ステップS4において、制御装置50は、ステップ3において検出された力およびモーメントに基づいて、融接ヘッド32のワークWに対する位置および角度が所定の条件となるようにロボットアーム20の動作を補正する制御する。これにより、融接ヘッド32のワークWに対する位置および角度が所定の条件となるように維持される。
【0041】
図8に示すように、制御装置50は、支持体40に作用する垂直抗力FZの値が所定の範囲内であるか否かを判定する(S5)。垂直抗力FZの値が所定の範囲内である場合(S5でYES)、ステップS7に進む。垂直抗力FZの値が所定の範囲内でない場合(S5でNO)、制御装置50は、検出される垂直抗力FZの値が所定の範囲内となるようにロボットアーム20の動作を補正する(S6)。ステップS6によりロボットアーム20の動作を補正した後、ステップS7に進む。
【0042】
次に、制御装置50は、支持体40に作用する第1回転モーメントMYの値が所定の範囲内であるか否かを判定する(S7)。第1回転モーメントMYの値が所定の範囲内である場合(S7でYES)、ステップS9に進む。第1回転モーメントMYの値が所定の範囲内でない場合(S7でNO)、制御装置50は、検出される第1回転モーメントMYの値が所定の範囲内となるようにロボットアーム20の動作を補正する(S8)。ステップS8によりロボットアーム20の動作を補正した後、ステップS9に進む。
【0043】
次に、制御装置50は、支持体40に作用する第2回転モーメントMXの値が所定の範囲内であるか否かを判定する(S9)。第2回転モーメントMXの値が所定の範囲内である場合(S9でYES)、維持工程S4は終了する。第2回転モーメントMXの値が所定の範囲内でない場合(S9でNO)、制御装置50は、検出される第2回転モーメントMXの値が所定の範囲内となるようにロボットアーム20の動作を補正する(S10)。ステップS10によりロボットアーム20の動作を補正した後、維持工程S4は終了する。
【0044】
<第1変形例>
実施形態1の支持体40の第1変形例について、図9を用いて説明する。図9は、実施形態1に係る支持体40aの第1変形例を示す図である。第1変形例においては、取付部45に力覚センサ35が設けられている。
【0045】
図9に示すように、本変形例における支持体40aは、第1柱体42aと、第2柱体43aと、接続部41に加え、更に取付部45を有する。取付部45は、接続部41に設けられている。取付部45は、融接ハンド30の取付具に取り付けられる部材である。取付部45は、ハンド側取付部451と、ワーク側取付部452とを有する。力覚センサ35は、ハンド側取付部451とワーク側取付部452との間に配置される。なお、力覚センサ35はハンド本体31と取付部45のハンド側の端部との間に設けられてもよい。本変形例における力覚センサ35は、接続部41に作用する力およびモーメントを検出する。
【0046】
上述したステップS3において、力覚センサ35は、接続部41に作用する垂直抗力FZ、第1回転モーメントMYおよび第2回転モーメントMXを検出する。次に、制御装置50は、上述したステップS4において、垂直抗力FZ、第1回転モーメントMYおよび第2回転モーメントMXが所定の範囲内であるかを判定する。垂直抗力FZ、第1回転モーメントMYおよび第2回転モーメントMXのうち少なくともいずれかの値が所定の範囲内でない場合、制御装置50は垂直抗力FZ、第1回転モーメントMYおよび第2回転モーメントMXが所定の範囲内となるようにロボットアーム20の動作を補正する。
【0047】
これにより、第1柱体42aおよび第2柱体43aがワークWに常に当接した状態を保つことができ、支持体40aを介してワークWから受ける力およびモーメントをより正確に検出することができる。その結果、ワークWに対する融接ヘッド32の位置および角度が所定の条件となるように維持される。
【0048】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図10を用いて以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0049】
図10は、実施形態2に係る融接装置の要部を示す図である。実施形態2に係る融接装置は、実施形態1に係る融接装置1と比べて、力覚センサ35がロボットアーム20の先端と融接ハンド30との間に配置されている点で異なる。また、実施形態2に係る融接装置は、力覚センサ35が融接ハンド30に作用する力およびモーメントを直接検出する点で、実施形態1に係る融接装置1と異なる。
【0050】
図10に示すように、力覚センサ35は、ロボットアーム20の先端と、取付部材33との間に配置されている。力覚センサ35は、第1面36aがロボットアーム20の先端側に、第2面37aが融接ハンド30側に位置するように、配置されている。力覚センサ35は、支持体40を介して融接ハンド30に作用する力およびモーメントを検出する。
【0051】
力覚センサ35が検出した融接ハンド30に作用する力およびモーメントは、入出力IF53を介して制御装置50に入力される。制御装置50は、検出された力およびモーメントに基づいて、融接ヘッド32のワークWに対する位置および角度が所定の条件となるようにロボットアーム20の動作を補正する制御する。
【0052】
上述した実施形態では、融接ヘッドから電気エネルギーを放出するアーク溶接を行う融接装置について説明したが、これに限られるものではない。本願は、融接ヘッドからその他のエネルギー(光、熱)を放出する融接、例えばレーザー溶接またはガス溶接等についても、適用可能である。レーザー溶接の場合、融接稼動部5はレーザー発振部を有し、融接ヘッドにはレーザー発振部より励起されたレーザー光を収束させるレンズが設けられる。ガス溶接の場合、融接稼動部5はガス供給部を有し、融接ヘッドは、ガス供給部からのガスを放出するトーチおよび放出されたガスに点火する点下部が設けられる。
【0053】
上述した実施形態では、制御装置は融接装置の内部にあるものとして説明したが、これに限られるものではない。制御装置は融接装置の外部に有しているものであってもよい。
【0054】
上述した実施形態では、床面に固定される基台に設けられているロボットアームについて説明したが、これに限られるものではない。ロボットアームは、車輪を有し、移動可能な基台に取り付けられていてもよい。
【0055】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 融接装置
2 融接ロボット
5 融接稼動部
10 基台
20 ロボットアーム
35 力覚センサ
30 融接ハンド
31 ハンド本体
32 融接ヘッド
33 取付部材
36 第1部材
37 第2部材
40 支持体
41 接続部
42 第1柱体
43 第2柱体
44 ローラ
45 取付部
50 制御装置
51 プロセッサ
52 メモリ
53 入出力IF
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10