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  • 特開-シリンジポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027907
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】シリンジポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/145 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A61M5/145 508
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133263
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽畑 元晴
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066HH30
(57)【要約】
【課題】バレルの位置ずれを抑制できるシリンジポンプを提供する。
【解決手段】シリンジポンプ100は、後端に開口が形成され開口の周囲にバレルフランジ213を有するバレル210と、バレル210の内側に嵌入されるプランジャロッド220と、を含むシリンジ200に適用される。シリンジポンプ100は、バレル210のバレルフランジ213をバレルフランジ213の厚み方向に挟持するバレルフランジ押さえ部130と、バレル210の外周面に当接してバレル210を保持するバレルクランプ122とを備えている。バレルクランプ122は、バレルフランジ213に当接する当接面124を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端に開口が形成され前記開口の周囲にフランジを有するバレルと、前記バレルの内側に嵌入されるプランジャロッドと、を含むシリンジに適用されるシリンジポンプであって、
前記バレルの前記フランジを前記フランジの厚み方向に挟持する挟持部と、
前記バレルの外周面に当接して前記バレルを保持するクランプ部とを備え、
前記クランプ部は、前記フランジに当接する当接面を有する、シリンジポンプ。
【請求項2】
前記挟持部は、前記フランジに接触する押さえ面と、前記押さえ面に対して前記厚み方向に相対移動可能に設けられたフランジホルダとを有し、前記押さえ面と前記フランジホルダとによって前記フランジを挟持し、
前記当接面と前記押さえ面とは同一平面上に位置する、請求項1に記載のシリンジポンプ。
【請求項3】
前記フランジに当接する前記当接面と前記フランジを挟持する前記挟持部との間に、前記開口が位置する、請求項1または請求項2に記載のシリンジポンプ。
【請求項4】
前記クランプ部は、本体部分と、前記本体部分から突き出したリブ状の凸部とを有し、
前記凸部の先端に前記当接面が設けられる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンジポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
正確な量の薬液をシリンジから投与するために、シリンジポンプが用いられる。国際公開2009/113341号(特許文献1)には、薬液を充填したシリンジを固定するためのクランプを備えるシリンジポンプが記載されている。クランプは、シリンジ本体を不動状態で固定する。シリンジポンプは、クランプ固定異常を知らせるランプを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2009/113341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンジを含む送液系に閉塞が発生すると、シリンジ内圧が上昇する。シリンジ内圧の上昇によりバレルの位置がずれると、プランジャロッドからバレルに、バレルの軸方向に対して傾斜する方向の力が作用することがある。この力の作用で、バレルの位置ずれがさらに増大する可能性がある。
【0005】
本開示では、バレルの位置ずれを抑制できるシリンジポンプが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、後端に開口が形成され開口の周囲にフランジを有するバレルと、バレルの内側に嵌入されるプランジャロッドと、を含むシリンジに適用される、シリンジポンプが提案される。シリンジポンプは、バレルのフランジをフランジの厚み方向に挟持する挟持部と、バレルの外周面に当接してバレルを保持するクランプ部とを備えている。クランプ部は、フランジに当接する当接面を有している。
【0007】
上記のシリンジポンプにおいて、挟持部は、フランジに接触する押さえ面と、押さえ面に対して厚み方向に相対移動可能に設けられたフランジホルダとを有し、押さえ面とフランジホルダとによってフランジを挟持し、当接面と押さえ面とは、同一平面上に位置してもよい。
【0008】
上記のシリンジポンプにおいて、フランジに当接する当接面とフランジを挟持する挟持部との間に、開口が位置してもよい。
【0009】
上記のシリンジポンプにおいて、クランプ部は、本体部分と、本体部分から突き出したリブ状の凸部とを有し、凸部の先端に当接面が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るシリンジポンプによれば、バレルの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のシリンジポンプに装着されるシリンジの外観を示す斜視図である。
図2】実施形態のシリンジポンプの構成を示す斜視図である。
図3図2のシリンジポンプをX方向から見た図である。
図4図2のシリンジポンプをY方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、実施形態のシリンジポンプ100に装着されるシリンジ200の外観を示す斜視図である。図1に示されるように、シリンジ200は、バレル210と、プランジャロッド220とを備えている。バレル210は、ポリプロピレンなどの、透明または半透明の樹脂材料で形成されている。バレル210の内周面に、シリコーンオイルなどの潤滑油が塗布されていてもよい。
【0014】
バレル210は、円筒状の収容部211を有している。収容部211は、内部に液剤を収容する。バレル210の先端には、液剤出入口212が設けられている。バレル210の後端には、開口が形成されている。バレル210の後端の、開口の周囲に、バレルフランジ213が設けられている。バレルフランジ213は、バレル210の後端から径方向外側に張り出すように形成されている。
【0015】
プランジャロッド220は、バレル210の内側に嵌入されている。プランジャロッド220の先端には、バレル210の内周面に接触するガスケット部(図示せず)が設けられている。プランジャロッド220の後端には、フランジ221が設けられている。プランジャロッド220は、ガスケット部とフランジ221とを連結する連結部222を有している。
【0016】
図1図4に示されるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。Z方向は、円筒状の収容部211の軸方向であって、バレル210に対するプランジャロッド220の相対移動方向である。
【0017】
図2は、実施形態のシリンジポンプ100の構成を示す斜視図である。図3は、図2のシリンジポンプ100をX方向から見た図である。図4は、図2のシリンジポンプ100をY方向から見た図である。図2図4には、互いに異なる方向から見たシリンジポンプ100が図示されている。
【0018】
図2図4に示されるように、シリンジポンプ100は、シリンジ200に適用されるポンプである。シリンジポンプ100がプランジャロッド220を収容部211の内部へ移動させることにより、収容部211内の液剤が、液剤出入口212から外部へ流出する。シリンジポンプ100は、本体部110と、バレル保持部120と、バレルフランジ押さえ部130と、スライド軸140と、押動部150と、把持部160と、操作部材170とを主に備えている。
【0019】
本体部110には、駆動部と、駆動部を制御する制御部とが設けられている。駆動部は、スライド軸140を駆動するモータ、および、モータに接続された減速機を含んでいる。
【0020】
バレル保持部120は、シリンジポンプ100に装着されたシリンジ200のバレル210を保持する。バレル保持部120は、支柱121と、バレルクランプ122とを有している。バレルクランプ122は、支柱121の延在方向(Y方向)に移動可能であり、かつ、Y軸を回転中心として回転可能に構成されている。支柱121とバレルクランプ122とは一体に形成されていてもよい。バレルクランプ122が支柱121に対して相対移動可能に形成されていてもよい。
【0021】
シリンジ200をシリンジポンプ100に装着するときには、バレルクランプ122を、図2図4に示される位置から上方へ引き上げて支柱121の延在方向に沿って本体部110から離れるように移動させ、その位置でY軸を回転中心としてバレルクランプ122を90°回転させる。その状態で、シリンジ200をシリンジポンプ100上に載置する。その後バレルクランプ122を図2図4に示される元の位置に戻すことで、バレルクランプ122がシリンジ200のバレル210の外周面に当接する。このようにして、バレル保持部120によって、シリンジ200のバレル210が保持される。
【0022】
バレルフランジ押さえ部130は、シリンジポンプ100に装着されたシリンジ200のバレルフランジ213に当接する。バレルフランジ押さえ部130は、押さえ面134と、フランジホルダ132とを有している。フランジホルダ132は、押さえ面134に対して、バレルフランジ213の厚み方向であるZ方向に相対移動可能に設けられている。バレルフランジ押さえ部130は、フランジホルダ132を押さえ面134に向けて付勢する付勢部材をさらに有していてもよい。
【0023】
シリンジ200をシリンジポンプ100に取り付けた際に、バレル210の後端に設けられたバレルフランジ213は、フランジホルダ132と押さえ面134とによって挟持される。バレルフランジ押さえ部130は、バレルフランジ213をバレルフランジ213の厚み方向に挟持する、実施形態の挟持部に相当する。
【0024】
バレルフランジ213は、前方向に向く前方面213Aを有している。前方面213Aは、平板状のバレルフランジ213の表面のうち、収容部211に向く側の面である。バレルフランジ213がフランジホルダ132と押さえ面134との間に挟持された状態で、前方面213Aの下部が押さえ面134に対向しており、前方面213Aの下部と押さえ面134とが面接触している。
【0025】
バレルクランプ122は、支柱121によって支持されバレル210に当接する本体部分を有している。バレルクランプ122はさらに、凸部123を有している。凸部123は、バレルクランプ122の本体部分から突き出したリブ状の形状を有している。シリンジ200がシリンジポンプ100に装着されて、バレルクランプ122の本体部分がバレル210の外周面に当接した状態で、凸部123の先端の当接面124が、バレルフランジ213の前方面213Aの上部に当接している。
【0026】
凸部123は、湾曲した形状を有している。凸部123は、バレル210の後端の開口の縁部に沿って延びる形状を有していてもよい。典型的には凸部123は、円弧状の形状を有していてもよい。凸部123は、バレルフランジ213の縁部に沿って延びる形状を有していてもよい。凸部123および当接面124は、図示した例に限られず、任意の形状を有していてもよい。
【0027】
当接面124と押さえ面134とは、X方向およびY方向に延びる同一平面上に位置している。当接面124と押さえ面134とは、バレルフランジ213の厚み方向に直交する同一平面上に位置している。当接面124と押さえ面134とは、プランジャロッド220の移動方向に直交する同一平面上に位置している。
【0028】
バレルフランジ213の前方面213Aに当接する当接面124と、バレルフランジ213を挟持するバレルフランジ押さえ部130との間に、バレル210の後端の開口が位置している。当接面124は、バレル210の開口の上方において、バレルフランジ213に当接している。押さえ面134は、バレル210の開口の下方において、バレルフランジ213に接触している。
【0029】
スライド軸140は、一端が本体部110の駆動部と接続され、他端が押動部150と接続されている。スライド軸140は、スライド軸140の軸方向(Z方向)にスライド可能に構成されている。押動部150は、スライド軸140によって本体部110と連結されている。
【0030】
把持部160は、押圧面161と、押圧面161に対してZ方向に相対移動可能な可動爪部162とを有している。シリンジ200をシリンジポンプ100に取り付けた際に、把持部160は、シリンジ200のプランジャロッド220のフランジ221を、フランジ221の厚み方向(Z方向)に挟持して固定する。
【0031】
押動部150および把持部160は、本体部110の駆動部が駆動することにより、スライド軸140とともに、スライド軸140の軸方向(Z方向)にスライドする。スライド軸140の軸方向は、プランジャロッド220の軸方向に沿っている。押圧面161は、押動部150の、前方向に向く側の一表面である。押動部150および把持部160がZ方向に沿って本体部110に向かって移動するときに、押圧面161は、フランジ221を押圧する。
【0032】
可動爪部162は、押動部150を介して、操作部材170と連結されている。操作部材170は、Z軸を回転中心として、押動部150に対して相対回転可能に構成されている。操作部材170が図2図4に示される位置に配置されているとき、可動爪部162は、Z方向において押圧面161に接近した位置にある。
【0033】
操作部材170を、図2図4に示される位置から、Z軸まわりに反時計回り方向に回転させると、可動爪部162は、Z方向に沿ってスライド移動して押圧面161から離れる。この状態で、シリンジ200をシリンジポンプ100上に載置する。このときフランジ221は、押圧面161と可動爪部162との間に配置される。その後操作部材170を図2図4に示される元の位置に戻すことで、可動爪部162がZ方向に移動して押圧面161に近づいて、フランジ221が、押圧面161と可動爪部162との間に挟持される。
【0034】
以上説明したシリンジポンプ100では、図3,4に示されるように、バレルクランプ122は、バレルフランジ213に当接する当接面124を有している。バレルフランジ213をバレルフランジ押さえ部130で挟持する従来の構成に加えて、バレル210を保持するためのバレルクランプ122にもバレルフランジ213を支持するための構造を設け、複数箇所でバレルフランジ213を支持する構成とされている。これにより、プランジャロッド220がバレル210内に移動するときのバレル210の保持力が向上されている。送液系に閉塞が発生してシリンジ200の内圧が上昇しても、バレル210の位置ずれを抑制できるので、シリンジポンプ100からバレル210が浮き上がる不具合を回避することができる。
【0035】
また図3,4に示されるように、当接面124と、バレルフランジ押さえ部130の押さえ面134とは、同一平面上に位置している。プランジャロッド220がバレル210内に移動するときにプランジャロッド220がバレル210に作用する負荷を、当接面124と押さえ面134との両方で受けられるので、バレル210の保持力を確実に向上させてバレル210の位置ずれを抑制することができる。
【0036】
また図2図4に示されるように、バレルフランジ213に当接する当接面124と、バレルフランジ213を挟持するバレルフランジ押さえ部130との間に、バレル210の後端の開口が位置している。開口の両側からバレルフランジ213を支持できる構成とすることで、バレル210の保持力を確実に向上させてバレル210の位置ずれを抑制することができる。
【0037】
また図2図4に示されるように、バレルクランプ122の本体部分から突き出したリブ状の凸部123の先端に、当接面124が設けられている。このようにすれば、バレル210の外周面に当接してバレル210を保持する機能と、バレルフランジ213に当接してバレルフランジ213を支持する機能とを兼ね備えたバレルクランプ122を、確実に実現することができる。
【0038】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
100 シリンジポンプ、110 本体部、120 バレル保持部、121 支柱、122 バレルクランプ、123 凸部、124 当接面、130 バレルフランジ押さえ部、132 フランジホルダ、134 押さえ面、140 スライド軸、150 押動部、160 把持部、161 押圧面、162 可動爪部、170 操作部材、200 シリンジ、210 バレル、211 収容部、212 液剤出入口、213 バレルフランジ、213A 前方面、220 プランジャロッド、221 フランジ、222 連結部。
図1
図2
図3
図4