IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水テクノ成型株式会社の特許一覧

特開2023-27908樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット
<>
  • 特開-樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット 図1
  • 特開-樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット 図2
  • 特開-樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット 図3
  • 特開-樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット 図4
  • 特開-樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット 図5
  • 特開-樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027908
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】樹脂成形体及びその製造方法、並びに樹脂成形体形成用キット
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230224BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230224BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230224BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230224BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L1/02
C08K3/22
C08L23/04
C08K5/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133265
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】390033112
【氏名又は名称】積水テクノ成型株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 祐介
(72)【発明者】
【氏名】森 俊明
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002BB031
4J002BB033
4J002DE076
4J002DE086
4J002DE137
4J002EG018
4J002FA042
4J002FD012
4J002FD016
4J002FD023
4J002FD097
4J002FD208
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】優れた外観を有する、樹脂成形体を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方とを含み、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量が、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、200重量部以下であり、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量が、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、50重量部以下である樹脂成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂と、
(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方と、
(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方と、
を含み、
前記(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、200重量部以下であり、
前記(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、50重量部以下である、樹脂成形体。
【請求項2】
(D)ポリエチレンワックスをさらに含み、
前記(D)ポリエチレンワックスの含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、10重量部以下である、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
(E)金属石鹸をさらに含み、
前記(E)金属石鹸の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、10重量部以下である、請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
(F)酸化チタンをさらに含み、
前記(F)酸化チタンの含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、10重量部以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
下記樹脂組成物(X)を50重量%以上、99重量%以下と、下記樹脂組成物(Y)を1重量%以上、50重量%以下とをドライブレンドすることにより、混合物を得る工程と、
前記混合物を成形することにより、樹脂成形体を得る工程と、
を備える、樹脂成形体の製造方法。
樹脂組成物(X):(a)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
樹脂組成物(Y):(b)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物(X)が、(D)ポリエチレンワックスをさらに含む、請求項5に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
下記樹脂組成物(X)と、下記樹脂組成物(Y)とを含む、樹脂成形体形成用キット。
樹脂組成物(X):(a)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
樹脂組成物(Y):(b)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースを含有する、樹脂成形体、該樹脂成形体の製造方法、及び該樹脂成形体の製造時に用いられる樹脂成形体形成用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への配慮や機械的物性向上の観点から、間伐材等のセルロースを樹脂組成物に混練する提案がなされている。しかしながら、セルロースは吸湿性が高く、また熱劣化により変色し易いことから、シルバーや焦げなどの外観不良の問題が生じる場合がある。
【0003】
下記の特許文献1には、木目模様を有するポリオレフィン系樹脂成形品の製造方法が開示されている。特許文献1では、木目形成顔料マスターバッチのベース樹脂として融点が170~220℃、メルトフローレートが1~50g/10分である熱可塑性ポリエステルエラストマーが使用されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、樹脂成形品に模様を形成するための合成樹脂用模様材が開示されている。特許文献2では、分子中にビニル基又はアルコキシシラン基を有する架橋性オレフィン重合体を基材の一部又は全部に使用し、径1~200d、長さ0.1~3mmの繊維に加工後に架橋してなる合成樹脂用模様材が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4430202号
【特許文献2】特許第3056485号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の樹脂成形体では、その製造に際し、セルロースから発生した酸成分が、スクリューや、シリンダー、あるいは金型などの成形用部材を腐食させてしまうという問題がある。加えて、特許文献2の合成樹脂用模様材は、繊維の染色に手間がかかり、外観品質が劣るという問題がある。従って、優れた外観を有する樹脂成形体が求められている。
【0007】
本発明の目的は、優れた外観を有する、樹脂成形体、該樹脂成形体の製造方法、及び該樹脂成形体の製造時に用いられる樹脂成形体形成用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂成形体は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方とを含み、前記(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、200重量部以下であり、前記(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、50重量部以下である。
【0009】
本発明に係る樹脂成形体のある特定の局面では、(D)ポリエチレンワックスをさらに含み、前記(D)ポリエチレンワックスの含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、10重量部以下である。
【0010】
本発明に係る樹脂成形体の他の特定の局面では、(E)金属石鹸をさらに含み、前記(E)金属石鹸の含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、10重量部以下である。
【0011】
本発明に係る樹脂成形体のさらに他の特定の局面では、(F)酸化チタンをさらに含み、前記(F)酸化チタンの含有量が、前記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上、10重量部以下である。
【0012】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法は、下記樹脂組成物(X)を50重量%以上、99重量%以下と、下記樹脂組成物(Y)を1重量%以上、50重量%以下とをドライブレンドすることにより、混合物を得る工程と、前記混合物を成形することにより、樹脂成形体を得る工程とを備える。
樹脂組成物(X):(a)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
樹脂組成物(Y):(b)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
【0013】
本発明に係る樹脂成形体の製造方法のさらに他の特定の局面では、前記樹脂組成物(X)が、(D)ポリエチレンワックスをさらに含む。
【0014】
本発明に係る樹脂成形体形成用キットは、下記樹脂組成物(X)と、下記樹脂組成物(Y)とを含む。
樹脂組成物(X):(a)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
樹脂組成物(Y):(b)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有する、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、優れた外観を有する、樹脂成形体、該樹脂成形体の製造方法、及び該樹脂成形体の製造時に用いられる樹脂成形体形成用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。
図2図2は、実施例2で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。
図3図3は、実施例3で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。
図4図4は、実施例4で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。
図5図5は、比較例1で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。
図6図6は、比較例2で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0018】
(樹脂成形体)
本発明に係る樹脂成形体は、(A)熱可塑性樹脂と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方とを含む。上記(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量は、上記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、200重量部以下である。また、上記(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量は、上記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、50重量部以下である。
【0019】
本発明の樹脂成形体は、上記の構成を備えるので、成形用部材の腐食を抑制することができ、優れた外観とすることができる。
【0020】
従来、セルロースは吸湿性が高く、また熱劣化により変色し易いことが知られており、セルロースを樹脂組成物に混錬すると、焦げなどの外観不良の問題が生じることがあった。また、セルロースから発生した酸成分は、スクリューや、シリンダー、あるいは金型などの成形用部材を腐食させてしまうという問題があった。
【0021】
本発明者らは、(A)熱可塑性樹脂と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方とを上記特定の割合で含有することにより、セルロースから発生する酸成分を中和することができ、成形時に用いる成形用部材の腐食を抑制できることを見出した。また、本発明者らは、上記の構成を備えることにより、優れた外観を有する樹脂成形体が得られることを見出した。
【0022】
本発明の樹脂成形体は、優れた外観を有するので、特に、住宅、建材、家具、自動車、生活用品などの内外装に使用される部品に好適に用いることができる。また、本発明の樹脂成形体は、セルロースを含有させることができるので、環境的側面からも好適に用いることができる。
【0023】
以下、本発明の樹脂成形体を構成する各成分の詳細について説明する。
【0024】
(A)熱可塑性樹脂;
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリ乳酸、又はポリフェニルサルファイドなどが挙げられる。なかでも、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0026】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、又は直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらのポリエチレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体のうちいずれであってもよい。
【0028】
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンなどが挙げられる。
【0029】
これらのポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0030】
これらのポリプロピレン系樹脂の流動性(MFR:メルトフローレート)の範囲は、10g/10min以上であることが好ましく、30g/10min以上であることがより好ましく、60g/10min以上であることがさらに好ましく、80g/10min以上であることが特に好ましい。流動性が上記範囲のポリプロピレン系樹脂を用いることによって、低温での成形性が良くなり、外観品質をより一層向上させることができる。なお、ポリプロピレン系樹脂の流動性(MFR)の上限値は、特に限定されないが、例えば、200g/10minとすることができる。
【0031】
熱可塑性樹脂の融点は、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。熱可塑性樹脂の融点が上記上限値以下である場合、製造時における熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。なお、熱可塑性樹脂の融点の下限値は、特に限定されないが、例えば、100℃とすることができる。
【0032】
また、樹脂成形体中における熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されず、樹脂成形体全体100重量部に対し、好ましくは20重量部以上、より好ましくは50重量部以上、好ましくは98重量部以下、より好ましくは95重量部以下である。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲内にある場合、製造時における成形性をより一層向上させることができ、生産性をより一層向上させることができる。
【0033】
(B)セルロース粉体及びセルロース繊維;
セルロース粉体及びセルロース繊維は、それぞれを単独で用いてもよく、併用してもよい。このようなセルロース粉体及びセルロース繊維うち少なくとも一方は、熱可塑性樹脂中に含有されることが望ましい。この場合、より一層優れた外観を有する樹脂成形体とすることができる。
【0034】
上記セルロース粉体は、樹木原料から精油及び水分の少なくとも一部が除去されることによって得られた固形物であり、樹木原料から精油及び水分の少なくとも一部が除去された残渣又は残留物である。従って、固形物は、樹木原料よりも乾燥した状態となっており、樹木原料から精油及び水分の少なくとも一部が除去される過程において多孔質化している。
【0035】
固形物は、樹木原料から精油及び水分の少なくとも一部が除去されたものであり、精油又は水分が完全に除去されずに一部の精油又は水分が残存していてもよい。
【0036】
樹木原料は、樹木の木質部、すなわち、枝、幹、及び根のうち少なくとも1つに由来するものであってよいし、樹木の葉に由来するものであってよい。なかでも、樹木原料は、樹木の葉に由来するものを含有していることが好ましい。樹木原料は、樹木の木質部に由来するもの及び樹木の葉に由来するものの双方を含有していてもよい。このような樹木原料としては、樹木の幹から落とされた枝葉(枝に葉がついた状態のもの)などが挙げられる。
【0037】
樹木原料となる樹木としては、例えば、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科クロベ属、ヒノキ科ビャクシン属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、マツ科ヒマラヤスギ属、マツ科トウヒ属、マツ科マツ属、マツ科カラマツ属、マツ科ツガ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属、イチイ科カヤ属、ヒノキ科アスナロ属などが挙げられる。
【0038】
ヒノキ科ヒノキ属の樹木としては、例えば、ヒノキ、タイワンヒノキ、ベイヒバ、ローソンヒノキ、チャボヒバ、サワラ、クジャクヒバ、オウゴンチャボヒバ、スイリュウヒバ、イトヒバ、オウゴンヒヨクヒバ、シノブヒバ、オウゴンシノブヒバ、ヒムロスギなどが挙げられる。
【0039】
ヒノキ科クロベ属の樹木としては、例えば、ニオイヒバ、ネズコなどが挙げられる。
【0040】
ヒノキ科ビャクシン属の樹木としては、例えば、ハイビャクシン、ネズミサン、エンピツビャクシン、オキナワハイネズなどが挙げられる。
【0041】
ヒノキ科スギ属の樹木としては、例えば、スギ、アシウスギ、エンコウスギ、ヨレスギ、オウゴンスギ、セッカスギ、ミドリスギなどが挙げられる。
【0042】
マツ科モミ属の樹木としては、例えば、トドマツ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、シラベ、バルサムファー、ミツミネモミ、ホワイトファー、アマビリスファー、アオトドマツ、カリフォルニアレッドファー、グランドファー、ノーブルファーなどが挙げられる。
【0043】
マツ科トウヒ属の樹木としては、例えば、アカエゾマツ、トウヒなどが挙げられる。
【0044】
マツ科マツ属の樹木としては、例えば、アカマツ、ダイオウショウ、ストローブマツ、ハイマツなどが挙げられる。
【0045】
マツ科カラマツ属の樹木としては、例えば、カラマツなどが挙げられる。
【0046】
マツ科ツガ属の樹木としては、例えば、ツガなどが挙げられる。
【0047】
フトモモ科ユーカリ属の樹木としては、例えば、ユーカリ、ギンマルバユーカリ、カマルドレンシス、レモンユーカリなどが挙げられる。
【0048】
コウヤマキ科コウヤマキ属の樹木としては、例えば、コウヤマキなどが挙げられる。
【0049】
イチイ科カヤ属の樹木としては、例えば、カヤなどが挙げられる。
【0050】
ヒノキ科アスナロ属の樹木としては、例えば、ヒバ、アスナロ、ヒノキアスナロ、ホソバアスナロなどが挙げられる。
【0051】
セルロースには、モノテルペン類やセスキテルペン類などの精油が含まれていてもよい。
【0052】
モノテルペン類としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、カンフェン、サンテン、トリシクレン、ミルセン、アロオシメン、イソプレン、オシメン、ピロネン、クリプトテネン、β-フェランドレン、2,4(8)-p-メンタジエン、メノゲレン、セスキシトロネン、ジンギベレン、サビネン、3,8(9)-p-メンタジエン、テルピネン-4-オール、シトロネラール、ボルニルアセテート、α-テルピネオール、δ-3-カレン、テルピノレン、γ-テルピネン、1,8-シネオール、リモネン、テルピネン、リナロール、シトラール、ゲラニオール、メントール、チモール、カルバクロール、チオテルピネオールなどが挙げられる。
【0053】
セスキテルペン類としては、例えば、β-カリオフィレン、メノゲレン、セスキシトロネン、ジンギベレン、サビネンなどが挙げられる。
【0054】
これらのセルロースは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0055】
セルロース粉体(固形物)の平均粒径は、0.1μm~10000μmが好ましい。より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。なお、セルロース粉体の平均粒径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定し、メディアン径(D50)で表される値とする。
【0056】
セルロース粉体の平均粒径が上記下限値以上である場合、樹脂組成物の優れた流動性をより一層確実に確保することができる。また、セルロース粉体の平均粒径が上記上限値以下である場合、樹脂成形体の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0057】
セルロース粉体の平均粒径は、例えば、汎用の微粉砕装置(例えば、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、高圧水流を用いた湿式微粉砕装置)を用いてセルロース粉体を所定の平均粒径となるように粉砕して調整することができる。
【0058】
セルロース粉体の固形物は、樹木原料から精油及び水分の少なくとも一部が除去されてなるが、樹木原料から精油及び水分の少なくとも一部を除去する方法は、特に限定されない。固形物の製造方法としては、例えば、下記(1)及び(2)の製造方法が挙げられる。
【0059】
(1)樹木原料(例えば、伐採された樹木など)を減圧下にて加熱することによって、樹木原料から精油分及び水分の一部を除去する方法。
【0060】
(2)樹木原料(例えば、伐採された樹木など)を減圧下にてマイクロ波を照射しながら加熱することによって、樹木原料から精油分及び水分の一部を除去する方法。
【0061】
樹木原料の木質部と葉の双方に由来する材料は、例えば、製材工程において樹木の幹から落とされた枝葉(枝に葉がついた状態のもの)を減圧水蒸気蒸留法により精油分及び水分の一部を除去して得られるものであってよい。
【0062】
セルロース粉体の吸湿率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、好ましくは90%以下、より好ましくは50%以下である。セルロース粉体の吸湿率が上記範囲内である場合、製造時における熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。
【0063】
セルロース繊維の長さは、特に限定されないが、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下である。セルロース繊維の長さが上記範囲内にある場合、例えば木目調の質感により一層優れるなどのより優れた外観を得ることができる。
【0064】
また、セルロース繊維の繊維径は、好ましくは2nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは10μm以下である。セルロース繊維の繊維径が上記範囲内にある場合、例えば木目調の質感により一層優れるなどのより優れた外観を得ることができる。
【0065】
なお、セルロース繊維の長さ及び繊維径を測定するに際しては、例えば、樹脂組成物10gを、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むオルトジクロロベンゼン(o-DCB)溶液(BHT:o-DCB(重量比)=50:50)1000mLに添加した混合液を用意する。そして、用意した混合液を、溶解ろ過装置(例えば、TOSHO社製、商品名「DF-8020」など)により、混合液の温度を145℃、回転速度を25rpmとして、2時間振とうさせ、樹脂を溶解させて、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することが望ましい。なお、セルロース繊維の長さ及び繊維径は、観察した50個のセルロース繊維の平均値とすることができる。
【0066】
セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、200重量部以下、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量が上記下限値以上である場合、例えば木目調の質感により一層優れるなどのより優れた外観を得ることができる。また、セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量が上記上限値以下である場合、製造時における熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、製造時における成形性をより一層向上させることができる。
【0067】
(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウム;
酸化カルシウムや酸化マグネシウムは、吸湿性が高く、また、セルロースから発生する酸成分を中和することができる成分である。従って、酸化カルシウムや酸化マグネシウムを含有することにより、成形用部材の腐食をより一層抑制することができる。酸化カルシウム及び酸化マグネシウムは、それぞれを単独で用いてもよく、併用して用いてもよい。
【0068】
酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、50重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。また、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量が上記下限値以上である場合、成形時における成形用部材の腐食をより一層抑制することができる。また、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量が上記上限値以下である場合、セルロースが吸湿した水分を効率よく脱湿し、シルバー発生をより一層抑制させることができる。
【0069】
(D)ポリエチレンワックス;
本発明の樹脂成形体は、さらにポリエチレンワックスを含んでいてもよい。ポリエチレンワックスを含む場合、剪断熱を低減することができるので、製造時においてより一層低温で加工することができる。また、熱可塑性樹脂中におけるセルロース粉体やセルロース繊維の分散性をより一層向上させることができる。
【0070】
ポリエチレンワックスの含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下である。ポリエチレンワックスの含有量が上記下限値以上である場合、製造時においてより一層低温で加工することができる。また、熱可塑性樹脂中におけるセルロース粉体やセルロース繊維の分散性をより一層向上させることができる。また、ポリエチレンワックスの含有量が上記上限値以下である場合、より一層高い生産性を実現できる。
【0071】
(E)金属石鹸;
本発明の樹脂成形体は、金属石鹸をさらに含んでいてもよい。金属石鹸を含む場合、熱可塑性樹脂中におけるセルロース粉体やセルロース繊維の分散性をより一層向上させることができる。
【0072】
金属石鹸としては、特に限定されないが、ステアリン酸の金属塩、ラウリン酸の金属塩、リシノール酸の金属塩、オクチル酸の金属塩、カプリン酸の金属塩、ミリスチン酸の金属塩、パルミチン酸の金属塩などを用いることができる。上記ステアリン酸の金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。上記ラウリン酸の金属塩としては、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等が挙げられる。上記リシノール酸の金属塩としては、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等が挙げられる。上記オクチル酸の金属塩としては、オクチル酸亜鉛等を挙げることができる。なかでも、金属石鹸としては、ステアリン酸の金属塩を用いることが好ましい。この場合、熱可塑性樹脂中におけるセルロース粉体やセルロース繊維の分散性をより一層高めることができ、樹脂成形体の機械的物性をより一層向上させることができる。また、より一層優れた外観を得ることができる。
【0073】
上記金属石鹸は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0074】
金属石鹸の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。金属石鹸の含有量が上記下限値以上である場合、熱可塑性樹脂中におけるセルロース粉体やセルロース繊維の分散性をより一層高めることができ、樹脂成形体の機械的物性をより一層向上させることができる。また、より一層優れた外観を得ることができる。また、金属石鹸の含有量が上記上限値以下である場合、金属石鹸のブリードアウトをより一層確実に抑えることができる。
【0075】
(F)酸化チタン;
本発明の樹脂成形体は、酸化チタンをさらに含んでいてもよい。酸化チタンを含む場合、樹脂成形体による隠蔽性をより一層向上させることができる。
【0076】
酸化チタンの含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。酸化チタンの含有量が上記下限値以上である場合、樹脂成形体による隠蔽性をより一層向上させることができる。また、酸化チタンの含有量が上記上限値以下である場合、高い機械強度をより一層保持することができる。
【0077】
(G)シラン架橋性ポリプロピレン樹脂;
本発明の樹脂成形体は、シラン架橋性ポリプロピレン樹脂をさらに含んでいてもよい。シラン架橋性ポリプロピレン樹脂は、ビニルシラン化合物で変性されたポリプロピレン樹脂である。シラン架橋性ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂にビニルシラン化合物をグラフト共重合したものであってもよく、プロピレンとビニルシラン化合物とをランダム共重合させたものであってもよい。シラン架橋性ポリプロピレン樹脂を含む場合、製造時における熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的強度をより一層高めることができる。
【0078】
ビニルシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのビニルシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0079】
シラン架橋性ポリプロピレン樹脂の架橋度は、沸騰キシレン10時間の抽出残量と組成物の配合比より算出された成分量の比から求めたゲル分率で、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。シラン架橋性ポリプロピレン樹脂の架橋度が上記下限値以上である場合、製造時における熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的強度をより一層高めることができる。他方、架橋度が上記上限値以下である場合、熱可塑性樹脂中におけるセルロースの分散性をより一層高めることができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的物性をより一層向上させることができる。
【0080】
シラン架橋性ポリプロピレン樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。シラン架橋性ポリプロピレン樹脂の含有量が上記下限値以上である場合、製造時における熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的強度をより一層高めることができる。他方、シラン架橋性ポリプロピレン樹脂の含有量が上記上限値以下である場合、熱可塑性樹脂中におけるセルロースの分散性をより一層高めることができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的物性をより一層向上させることができる。
【0081】
(H)着色成分;
本発明の樹脂成形体は、染料及び顔料のうち少なくとも一方である着色成分をさらに含んでいてもよい。上記顔料は、有機顔料であってもよく、無機顔料であってもよい。有機顔料としては、例えば、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ナフトール系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系の有機顔料などが挙げられる。また、無機顔料としては、酸化チタン、チタンイエロー、ベンガラ、群青、酸化クロム、モリブデンレッド、カーボンブラック、コバルトブルー、コバルトグリーン、銅フタロシアニングリーン、銅フタロシアニンブルーなどが挙げられる。
【0082】
これらの着色成分は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0083】
着色成分の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。着色成分の含有量が上記範囲内にある場合、より優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的物性をより一層高めることができる。
【0084】
(I)その他の添加剤;
本発明の樹脂成形体は、任意成分として様々な添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系などの酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系などの紫外線吸収剤;金属害防止剤;各種充填剤;帯電防止剤;安定剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
以下、本発明の樹脂成形体の製造方法の一例について説明する。
【0086】
[樹脂成形体の製造方法]
本発明の樹脂成形体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
【0087】
まず、(A)熱可塑性樹脂と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方とを含む樹脂組成物を用意する。上記(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量は、上記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、200重量部以下である。また、上記(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量は、上記(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上、50重量部以下である。なお、樹脂組成物は、上記樹脂成形体の欄で説明した(D)ポリエチレンワックスや、(E)金属石鹸、(F)酸化チタン、(G)シラン架橋性ポリプロピレン樹脂、(H)着色成分、あるいは(I)その他の添加剤などをさらに含んでいてもよく、上記樹脂成形体の欄で説明した含有量となるように含んでいてもよい。
【0088】
樹脂組成物は、下記樹脂組成物(X)を50重量%以上、99重量%以下と、下記樹脂組成物(Y)を1重量%以上、50重量%以下とをドライブレンドすることにより得られた混合物であってもよい。
【0089】
樹脂組成物(X)は、(a)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有することが好ましい。上記(a)熱可塑性樹脂や、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方の含有量は、樹脂組成物(X)全体を100重量%としたときの含有量である。
【0090】
樹脂組成物(X)は、(a)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを溶融混練することにより得られたコンパウンドであることが好ましい。溶融混練の方法については、特に限定されないが、例えば、プラストミルなどの二軸スクリュー混練機、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、加圧式ニーダーなどの混練装置を用いて、加熱下において混練する方法などが挙げられる。これらのなかでも、押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。樹脂組成物(X)の形態としては、特に限定されないが、例えば、ペレットとすることができる。なお、樹脂組成物(X)のペレットの直径(ペレット径)は、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。ペレット径は、試料からペレット100粒をランダムに採取し、ノギスを用いて最長箇所での直径を測定することで求めることができる。
【0091】
なお、(a)熱可塑性樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂を適宜用いることができる。また、(B)セルロース粉体及びセルロース繊維のうち少なくとも一方としても、上述したセルロース粉体やセルロース繊維を適宜用いることができる。樹脂組成物(X)は、必要に応じて上述した(D)ポリエチレンワックスや、(E)金属石鹸、(F)酸化チタン、(G)シラン架橋性ポリプロピレン樹脂、(H)着色成分、あるいは(I)その他の添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。なかでも、樹脂組成物(X)は、(D)ポリエチレンワックスをさらに含んでいることが好ましい。
【0092】
樹脂組成物(Y)は、(b)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを含有することが好ましい。上記(b)熱可塑性樹脂や(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方の含有量は、樹脂組成物(Y)全体を100重量%としたときの含有量である。
【0093】
樹脂組成物(Y)は、(b)熱可塑性樹脂を20重量%以上、99重量%以下と、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方を1重量%以上、80重量%以下とを溶融混練することにより得られたコンパウンドであることが好ましい。溶融混練の方法については、特に限定されないが、例えば、プラストミルなどの二軸スクリュー混練機、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、加圧式ニーダーなどの混練装置を用いて、加熱下において混練する方法などが挙げられる。これらのなかでも、押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。樹脂組成物(Y)の形態としては、特に限定されないが、例えば、ペレットとすることができる。なお、樹脂組成物(Y)のペレットの直径(ペレット径)は、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましく、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましい。ペレット径は、試料からペレット100粒をランダムに採取し、ノギスを用いて最長箇所での直径を測定することで求めることができる。
【0094】
なお、(b)熱可塑性樹脂としては、上述した熱可塑性樹脂を適宜用いることができる。また、(C)酸化カルシウム及び酸化マグネシウムのうち少なくとも一方としても、上述した酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを適宜用いることができる。樹脂組成物(Y)は、必要に応じて上述した(D)ポリエチレンワックスや、(E)金属石鹸、(F)酸化チタン、(G)シラン架橋性ポリプロピレン樹脂、(H)着色成分、あるいは(I)その他の添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0095】
なお、本明細書において、ドライブレンドとは、溶融や溶剤の添加をせずに、ペレット形状を変化させたり、粉砕させたりするような剪断等による外力を加えずに混合することをいう。このようなドライブレンドの方法としては、特に限定されず、例えば、単に樹脂組成物(X)と樹脂組成物(Y)とを手で混合することにより行うことができる。また、小型タンブラーなどを用いて混合してもよい。
【0096】
次に、用意した樹脂組成物を、例えば、プレス加工、押出加工、押出ラミ加工、射出成形、ブロー成形、回転成形などの方法によって成形することで、樹脂成形体を得ることができる。
【0097】
なお、樹脂組成物の成形は、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下の温度で行われることが望ましい。この場合、樹脂組成物の熱劣化をより一層抑制することができ、より一層優れた外観を得ることができる。また、樹脂成形体の機械的強度をより一層向上させることができる。なお、樹脂組成物の成形温度の下限値は、特に限定されないが、例えば、150℃とすることができる。
【0098】
本発明の樹脂成形体の製造方法では、成形用部材の腐食を抑制することができ、しかも優れた外観を有する、樹脂成形体を得ることができる。
【0099】
[樹脂成形体形成用キット]
本発明に係る樹脂成形体形成用キットは、上述した樹脂組成物(X)と、樹脂組成物(Y)とを含む。また、樹脂組成物(X)と、樹脂組成物(Y)とが、ドライブレンドされた混合物であることが好ましい。
【0100】
本発明の樹脂成形体形成用キットは、例えば、上述した本発明の樹脂成形体の製造方法における成形前の樹脂組成物として用いることができる。また、本発明の樹脂成形体の製造方法における成形前の混合物として用いてもよい。
【0101】
本発明の樹脂成形体形成用キットは、本発明の樹脂成形体の製造方法に用いることができるので、このような樹脂成形体形成用キットを用いて、成形時における成形用部材の腐食を抑制することができ、優れた外観を有する、樹脂成形体を製造することができる。
【0102】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
(セルロース粉体の調製)
セルロース粉体は、マツ科モミ属の樹木の枝葉を減圧下にてマイクロ波を照射しながら加熱することによって、樹木原料から精油分及び水分の一部を除去することにより得た。なお、分級については、呼び径18メッシュにジェットミル微粉砕装置を用いて固形物を所定の平均粒径となるように粉砕して調整を行った。
【0104】
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてのポリエチレン樹脂を100重量部と、上記の方法で粒径を調整したセルロース粉体(平均粒径7μm)を5重量部と、酸化カルシウム(平均粒径10μm)を5重量部と、ポリエチレンワックスを5重量部とを、ラボプラストミルを用いて、180℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。
【0105】
ポリエチレン樹脂としては、プライムポリマー社製、商品名「ハイゼックス2208J」(融点133℃)を用いた。酸化カルシウムとしては、近江化学工業社製、商品名「CML#31」を用いた。ポリエチレンワックスとしては、三井化学社製、商品名「エクセレックス30200B」を用いた。ラボプラストミルとしては、東洋精機社製、品番「R100」を用いた。
【0106】
得られた樹脂組成物を、樹脂組成物の温度200℃、金型の温度40℃にて射出成形することで、縦100mm×横100mm×厚み2mmの樹脂成形体を得た。
【0107】
図1は、実施例1で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。図1より、実施例1では、ゲート口から放射線状に発生するシルバー発生がなく、光沢が抑えられており、優れた外観を有する樹脂成形体が得られていることを確認することができる。
【0108】
(実施例2)
セルロース粉体の代わりにセルロース繊維(ダイセル社製、品番「プラストロンPP-RF」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0109】
図2は、実施例2で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。図2より、実施例2では、セルロース繊維が樹脂表面に均一に浮き出た模様状の光沢が抑えられており、優れた外観を有する樹脂成形体が得られていることを確認することができる。
【0110】
(実施例3)
酸化カルシウム(近江化学工業社製、品番「CML#31」)の代わりに酸化マグネシウム(協和化学工業社製、品番「キョーワマグ30」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0111】
図3は、実施例3で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。図3より、実施例3では、ゲート口から放射線状に発生するシルバー発生がなく、光沢が抑えられており、優れた外観を有する樹脂成形体が得られていることを確認することができる。
【0112】
(実施例4)
熱可塑性樹脂としてのポリエチレン樹脂を100重量部と、上記の方法で粒径を調整したセルロース粉体(平均粒径7μm)を5重量部と、酸化カルシウム(平均粒径10μm)を5重量部と、ポリエチレンワックスを5重量部と、酸化チタン(堺化学工業社製、平均粒径0.26μm)5重量部とを、ラボプラストミルを用いて、180℃で溶融混練することにより樹脂組成物を得た。なお、ポリエチレン樹脂は実施例1と同様のものを用いた。このようにして得られた樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0113】
図4は、実施例4で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。図4より、実施例4では、ゲート口から放射線状に発生するシルバー発生がなく、乳白色の優れた外観を有する樹脂成形体が得られていることを確認することができる。
【0114】
(比較例1)
セルロース粉体を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0115】
図5は、比較例1で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。図5より、比較例1の樹脂成形体では、光沢が抑えられておらず優れた外観が得られていないことがわかる。
【0116】
(比較例2)
酸化カルシウムを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂成形体を得た。
【0117】
図6は、比較例2で得られた樹脂成形体の外観を示す写真である。図6より、比較例2の樹脂成形体では、ゲート口から放射線状に発生するシルバー発生しているため、優れた外観が得られていないことがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6