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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027910
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】鉄筋用スペーサー
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
E04C5/18 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133269
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164BA46
2E164BA50
(57)【要約】
【課題】各位置決め突起部の突出量毎に鉄筋用スペーサーを複数用意しなくても、単一で鉄筋のかぶり厚をそれぞれ変更することが可能な鉄筋用スペーサーを提供する。
【課題手段】装着される横筋と型枠との間隔を保持する鉄筋用スペーサーとして、横筋Yを周方向に開口する挿通孔12から内部に挿通した状態で嵌合する鉄筋嵌合部11と、鉄筋嵌合部11の外周において周方向へ間隔を隔てた位置より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出し、それぞれの突出端を型枠Kの表面に対し選択的に当接させる第1及び第2位置決め突起部2,3と、を備える。第1及び第2位置決め突起部2,3は、当該各位置決め突起部2,3毎の鉄筋嵌合部11から突出端までの突出長さをそれぞれ異ならせている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設する際に1つの鉄筋に装着され、当該鉄筋と型枠との間隔を保持する鉄筋用スペーサーであって、
前記鉄筋を周方向に開口する挿通孔から内部に挿通した状態で嵌合する鉄筋嵌合部と、
前記鉄筋嵌合部の外周において周方向へ間隔を隔てた位置より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出し、それぞれの突出端を前記型枠の表面に対し選択的に当接させる複数の位置決め突起部と、を備え、
前記複数の位置決め突起部は、当該各位置決め突起部毎の前記鉄筋嵌合部から突出端までの突出長さがそれぞれ異なっていることを特徴とする鉄筋用スペーサー。
【請求項2】
前記鉄筋嵌合部には、当該鉄筋嵌合部を前記鉄筋に対し移動不能に圧接させるように前記挿通孔を周方向に縮める縮め手段が設けられている請求項1に記載の鉄筋用スペーサー。
【請求項3】
前記挿通孔の周方向両端に位置する前記2つの位置決め突起部には、当該両位置決め突起部を把持した状態で前記縮め手段による前記挿通孔の周方向への縮め動作をアシストする把持部がそれぞれ突設されている請求項2に記載の鉄筋用スペーサー。
【請求項4】
前記各位置決め突起部には、コンクリート打設時のコンクリートの流れを許容するように開口する開口孔が設けられている請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の鉄筋用スペーサー。
【請求項5】
前記各位置決め突起部のうちの少なくとも1つには、当該各位置決め突起部毎の前記鉄筋嵌合部から突出端までの突出長さの違いを表示する表示部が設けられている請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の鉄筋用スペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋に装着して鉄筋と型枠との間隔を保持し、コンクリート打設時の鉄筋に対するかぶり厚を一定に確保するための鉄筋用スペーサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木や建築における鉄筋コンクリート工事において、鉄筋に鉄筋用スペーサーを装着して鉄筋と型枠との間隔を保持することで、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚を確保するようにしている。そして、鉄筋用スペーサーは、コンクリートとの相性から、セメント系や金属系の材質で形成されたものが推奨されているものの、一方では、軽量で量産性、取扱い性に優れたプラスチック製のものも多用されている。
【0003】
このようなプラスチック製の鉄筋用スペーサーとしては、1つの鉄筋に回転可能に装着される略U字状の鉄筋嵌合部と、この鉄筋嵌合部の外周に放射状に突設され、先端を型枠の表面に当接させる複数の位置決め突起部とを備え、各位置決め突起部が、そのうちの互いに相隣なる2本の位置決め突起部を型枠に当接させたときに鉄筋のかぶり厚が等しくなるように形成されたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-71015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来のものでは、複数の位置決め突起部のうちの互いに相隣なる2本の位置決め突起部を型枠に当接させることで鉄筋のかぶり厚が等しくなるものの、鉄筋のかぶり厚自体が固定されている。そのため、鉄筋のかぶり厚を変更したい場合には、各位置決め突起部の突出量が大きい又は小さい新たな鉄筋用スペーサーにその都度変更する必要があり、各位置決め突起部の突出量毎に鉄筋用スペーサーを用意しなければならない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各位置決め突起部の突出量毎に鉄筋用スペーサーを複数用意しなくても、単一で鉄筋のかぶり厚をそれぞれ変更することが可能な鉄筋用スペーサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、コンクリートを打設する際に1つの鉄筋に装着され、当該鉄筋と型枠との間隔を保持する鉄筋用スペーサーを前提とする。更に、前記鉄筋を周方向に開口する挿通孔から内部に挿通した状態で嵌合する鉄筋嵌合部と、前記鉄筋嵌合部の外周において周方向へ間隔を隔てた位置より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出し、それぞれの突出端を前記型枠の表面に対し選択的に当接させる複数の位置決め突起部と、を備える。そして、前記複数の位置決め突起部は、当該各位置決め突起部毎の前記鉄筋嵌合部から突出端までの突出長さをそれぞれ異ならせていることを特徴としている。
【0008】
また、前記鉄筋嵌合部に、当該鉄筋嵌合部を前記鉄筋に対し移動不能に圧接させるように前記挿通孔を周方向に縮める縮め手段を設けることがこのましい。
【0009】
また、前記挿通孔の周方向両端に位置する前記2つの位置決め突起部に、当該両位置決め突起部を把持した状態で前記縮め手段による前記挿通孔の周方向への縮め動作をアシストする把持部をそれぞれ突設させていてもよい。
【0010】
また、前記各位置決め突起部に、コンクリート打設時のコンクリートの流れを許容するように開口する開口孔を設けていてもよい。
【0011】
更に、前記各位置決め突起部のうちの少なくとも1つに、当該各位置決め突起部毎の前記鉄筋嵌合部から突出端までの突出長さの違いを表示する表示部を設けていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上、要するに、鉄筋を内部に嵌合する鉄筋嵌合部の外周において周方向へ間隔を隔てた位置より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出する複数の位置決め突起部の突出端までの突出長さをそれぞれ異ならせることで、複数の位置決め突起部の突出端を型枠の表面に対し選択的に当接させると鉄筋のかぶり厚が変更される。これにより、各位置決め突起部の突出量毎に異なる鉄筋用スペーサーを用意する必要がなく、単一の鉄筋用スペーサーであっても鉄筋のかぶり厚をそれぞれ変更することができる。
【0013】
また、挿通孔を周方向に縮める縮め手段を鉄筋嵌合部に設けることで、鉄筋嵌合部を鉄筋に対し強固に固定することができ、コンクリートの流れ、特にコンクリート中の骨材の流れが各位置決め突起部に当接してもコンクリート打設時の鉄筋に対する鉄筋嵌合部の移動を効果的に防止することができる。
【0014】
また、挿通孔の周方向両端に位置する2つの位置決め突起部に、当該両位置決め突起部を把持した状態で縮め手段による挿通孔の周方向への縮め動作をアシストする把持部をそれぞれ突設させることで、鉄筋を鉄筋嵌合部の内部に嵌合した状態で両位置決め突起部の把持部を把持すると、挿通孔の周方向への縮め動作が非常に行い易くなり、縮め手段による縮め動作を円滑にサポートすることができる。
【0015】
また、各位置決め突起部に、コンクリート打設時のコンクリートの流れを許容する開口孔を設けることで、コンクリートやコンクリート中の骨材が開口孔を介して流れて各位置決め突起部の周囲に確実にコンクリートを充填、密着させて、鉄筋用スペーサーの表裏で空隙が生じるのを防止でき、コンクリートが分断されずに一体化され、熱膨張時及びコンクリートの乾燥収縮時に発生する応力集中を低減してひび割れの発生を低減することができる。
【0016】
更に、各位置決め突起部のうちの少なくとも1つに、当該各位置決め突起部毎の鉄筋嵌合部から突出端までの突出長さの違いを表示する表示部を設けることで、各位置決め突起部毎の突出量の違いを表示部の表示に従って簡単に見分けることができ、単一の鉄筋用スペーサーによる鉄筋のかぶり厚の変更を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る鉄筋用スペーサーを横筋に装着して一方の位置決め突起部の突片を型枠に当接させた状態を示す斜視図である。
図2図1の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを他方の位置決め突起部側から見た側面図である。
図3図1の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを上方から見た平面図である。
図4図1の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを横筋の軸線方向となる背面側から見た背面図である。
図5図1の鉄筋用スペーサーを正面側から見た正面図である。
図6図5の鉄筋用スペーサーを背面側から見た背面図である。
図7図5の鉄筋用スペーサーを右側方から見た右側面図である。
図8図5の鉄筋用スペーサーを左側方から見た左側面図である。
図9図5の鉄筋用スペーサーを上方から見た平面図である。
図10図5の鉄筋用スペーサーを下方から見た底面図である。
図11図5の鉄筋用スペーサーを斜め右側方から見た斜視図である。
図12図1の鉄筋用スペーサーを横筋に装着して他方の位置決め突起部の突片を型枠に当接させた状態を示す斜視図である。
図13図12の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを一方の位置決め突起部側から見た左側面図である。
図14図12の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを上方から見た平面図である。
図15図12の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを正面側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る鉄筋用スペーサーを横筋に装着して一方の第1位置決め突起部の突片を型枠に当接させた状態を示す斜視図、図2図1の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを他方の第2位置決め突起部側から見た側面図をそれぞれ示している。また、図3図1の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを上方から見た平面図、図4図1の横筋に装着した状態の鉄筋用スペーサーを横筋の軸線方向となる背面側から見た背面図をそれぞれ示している。
【0020】
図1図4に示すように、1は鉄筋としての横筋Yと型枠Kとの間隔を保持する鉄筋用スペーサーであって、コンクリートを打設する際に1つの横筋Yに装着される。この鉄筋用スペーサー1は、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂により成形されている。
【0021】
横筋Yは、複数の縦筋T,T(図では2つのみ示す)との交差部Sにおいて位置決めされた状態で針金などの結束具(図示せず)により各縦筋Tに結束されている。このとき、横筋Yは縦筋Tよりも型枠K寄りに配置されている。また、横筋Y及び縦筋Tとしては、D13(公称直径12.7mm)又はD16(公称直径15.9mm)の異形鉄筋が用いられている。
【0022】
図5図1の鉄筋用スペーサー1を正面側から見た正面図、図6図5の鉄筋用スペーサー1を背面側から見た背面図をそれぞれ示している。また、図7図5の鉄筋用スペーサー1を右側方から見た右側面図、図8図5の鉄筋用スペーサー1を左側方から見た左側面図をそれぞれ示している。更に、図9図5の鉄筋用スペーサー1を上方から見た平面図、図10図5の鉄筋用スペーサー1を下方から見た底面図、図11図5の鉄筋用スペーサー1を斜め右側方から見た斜視図をそれぞれ示している。
【0023】
図5図11に示すように、鉄筋用スペーサー1は、横筋Yに嵌合する鉄筋嵌合部11を備えている。この鉄筋嵌合部11は、周方向に横筋Yを挿通可能とする挿通孔12を有する断面略C字状に形成されている。また、鉄筋嵌合部11の周方向略中間位置にはヒンジ部15が設けられ、このヒンジ部15を支点にして挿通孔12の周方向への間隔を増減変更できるようにしている。なお、鉄筋嵌合部11の内周には、鉄筋嵌合部11の中心Oを通る軸線と平行に延びる複数の突条リブ13,13,…が周方向に設けられ、横筋Yに対する滑り止め効果を有している。
【0024】
また、鉄筋用スペーサー1は、鉄筋嵌合部11の外周において周方向へ間隔を隔てた位置より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出する2つの第1及び第2位置決め突起部2,3を備えている。第1及び第2位置決め突起部2,3は、鉄筋嵌合部11の外周において互いに向き合う位置に設けられ、鉄筋嵌合部11の中心Oより周方向に略90°の範囲でそれぞれ扇状に突出している。
【0025】
第1及び第2位置決め突起部2,3は、横筋Yに対する鉄筋嵌合部11の周方向の位置を変更することで、型枠Kの表面に対し必要とする横筋Yのかぶり厚に応じてそれぞれの突出端を選択的に当接させることが可能となっている。この場合、第1及び第2位置決め突起部2,3は、互いの一端同士が挿通孔12を挟んで当該挿通孔12の周方向両端に位置している。
【0026】
第1及び第2位置決め突起部2,3は、鉄筋嵌合部11の軸線方向中央部より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出する平板状の扇片21,31と、この扇片21,31の半径方向外方端に一体的に設けられた略四分の一円弧状の突出縁部22,32と、扇片21,31の表裏両面において鉄筋嵌合部11の中心Oより略45°の範囲でそれぞれ放射状に延びる3本のリブ23,33とを備えている。第1及び第2位置決め突起部2,3の扇片21,31には、各リブ23,33の間においてそれぞれ開口する開口孔24,34が設けられている。これらの開口孔24,34は、コンクリート打設時にコンクリートの流れを許容するように開口している。
【0027】
また、第1位置決め突起部2の突出縁部22には、周方向等間隔置きに8つの突片25,25,…が突設されている。各突片25の先端は、略円弧状に形成されている。また、各突片25は、周方向に疎らな状態に配置され、互いに相隣なる突片25,25同士の間隔が各突片25の周方向の幅よりも若干広くなっている。
【0028】
一方、第2位置決め突起部3の突出縁部32には、周方向等間隔置きに7つの突片35,35,…が突設されている。各突片35の先端は、第1位置決め突起部2の各突片25に比して大きな円弧状に形成されている。また、各突片35は、第1位置決め突起部2の各突片25に比して周方向に密な状態に配置され、互いに相隣なる突片35,35同士の間隔が各突片25の周方向の幅よりも若干狭くなっている。
【0029】
そして、第1及び第2位置決め突起部2,3は、鉄筋嵌合部11から突出端となる各突片25,35の先端までの突出長さ(半径方向の長さ)が互いに異なっている。具体的には、鉄筋嵌合部11の中心Oから第1位置決め突起部2の各突片25の先端までの突出長さが40mmに、鉄筋嵌合部11の中心Oから第2位置決め突起部3の各突片35の先端までの突出長さが50mmにそれぞれ設定されている。
【0030】
また、各位置決め突起部2,3の扇片21,31の表裏両面には、第1及び第2位置決め突起部2,3の突出長さ(鉄筋嵌合部11の中心Oから第1及び第2位置決め突起部2,3の各突片25,35の先端までの突出長さ)を表示する表示部26,36がそれぞれ設けられている。更に、第1位置決め突起部2の突出縁部22及び各突片25は、第2位置決め突起部3との区別化を明確にする上で赤色(図では網掛け状態で示す)に着色されている。
【0031】
そして、第1位置決め突起部2は、横筋Yに対し鉄筋嵌合部11の挿通孔12を上方から挿通することで、型枠Kの表面に対し必要とする横筋Yのかぶり厚(40mm)を得るために突出端となる各突片25の先端を当接させるようにしている。
【0032】
図12図1の鉄筋用スペーサー1を横筋Yに装着して他方の第2位置決め突起部3の突片35を型枠Kに当接させた状態を示す斜視図、図13図12の横筋Yに装着した状態の鉄筋用スペーサー1を一方の第1位置決め突起部2側から見た左側面図をそれぞれ示している。また、図14図12の横筋Yに装着した状態の鉄筋用スペーサー1を上方から見た平面図、図15図12の横筋Yに装着した状態の鉄筋用スペーサー1を正面側から見た正面図をそれぞれ示している。
【0033】
図12図15に示すように、第2位置決め突起部3は、横筋Yに対し鉄筋嵌合部11の挿通孔12を挿通して鉄筋嵌合部11の周方向の位置を180°変更することで、型枠Kの表面に対し必要とする横筋Yのかぶり厚(50mm)を得るために突出端となる各突片35の先端を当接させるようにしている。
【0034】
また、鉄筋嵌合部11には、当該鉄筋嵌合部11を横筋Yに対し移動不能に圧接させるように挿通孔12を周方向に縮める縮め手段4が設けられている。この縮め手段4は、挿通孔12の周方向両端に位置する第1及び第2位置決め突起部2,3同士の間に設けられている。更に、縮め手段4は、第2位置決め突起部3の挿通孔12側のリブ33の半径方向中央部より第1位置決め突起部2側に突出する第1突出片41と、第1位置決め突起部2の挿通孔12側のリブ23の半径方向中央部より第2位置決め突起部3側に突出する第2突出片42と、を備えている。
【0035】
第1及び第2突出片41,42は、互いに鉄筋嵌合部11の中心Oを同心円とする円弧状に形成されている。第1突出片41は、第2突出片42に設けられた断面略凹字状の円弧状溝43に挿通可能とされている。そして、第1突出片41の挿通孔12側面には、複数のラック歯44,44,…が設けられている。一方、第2突出片42の円弧状溝43の挿通孔12側面には、各ラック歯44に対し噛み合い、かつ互いの挿通方向(接近方向)への移動を許容する一方離反方向への移動を禁止する爪45,45,…が設けられている。このとき、第1突出片41の各ラック歯44と第2突出片42の各爪45との噛み合いにより、鉄筋嵌合部11の中心Oより周方向に略90°の範囲に開口する挿通孔12は縮められている一方、鉄筋嵌合部11の中心Oより周方向に略90°の範囲でそれぞれ扇状に突出する第1及び第2位置決め突起部2,3同士の間は拡げられている。
【0036】
更に、挿通孔12の周方向両端に位置する第1及び第2位置決め突起部2,3には、当該両位置決め突起部2,3を左右の手でそれぞれ把持可能とする把持部27,37がそれぞれ下方向きに突設されている。そして、把持部27,37は、左右の手でそれぞれ把持した状態で縮め手段4による挿通孔12の周方向への縮め動作をアシストしている。また、各把持部27,37の下端部には、コンクリート打設時のコンクリートの流通を可能とする孔部が設けられ、コンクリート内部の断面欠損の抑止効果に加え、製品の軽量化を図る上で非常に有効なものとしている。
【0037】
したがって、本実施の形態では、横筋Yを内部に嵌合する鉄筋嵌合部11の外周において周方向へ間隔を隔てた位置より半径方向外方向きにそれぞれ扇状に突出する第1及び第2位置決め突起部2,3の鉄筋嵌合部11の中心Oから各突片25,35までの突出長さが40mmと50mmとにそれぞれ異なっている。このため、2つの位置決め突起部2,3の突片25,35を型枠Kの表面に対し選択的に当接させることで、横筋Yのかぶり厚が40mmと50mmとに変更される。これにより、各位置決め突起部2,3の突出量毎に異なる鉄筋用スペーサーを用意する必要がなく、単一の鉄筋用スペーサー1であっても横筋Yのかぶり厚をそれぞれ変更することができる。
【0038】
また、鉄筋嵌合部11の挿通孔12の周方向両端に位置する第1及び第2位置決め突起部2,3同士の間に縮め手段4が設けられ、この縮め手段4の第1突出片41を第2突出片42の円弧状溝43に挿通して互いの挿通孔12側面のラック歯44及び爪45を噛み合わせることで、鉄筋嵌合部11を横筋Yに対し移動不能に圧接させるように周方向に縮めている。これにより、鉄筋嵌合部11を横筋Yに対し強固に固定することができ、コンクリートの流れ、特にコンクリート中の骨材の流れが各位置決め突起部2,3に当接してもコンクリート打設時の横筋Yに対する鉄筋嵌合部11の移動を効果的に防止することができる。
【0039】
また、挿通孔12の周方向両端に位置する第1及び第2位置決め突起部2,3に、当該両位置決め突起部2,3を把持した状態で縮め手段4による挿通孔12の周方向への縮め動作をアシストする把持部27,37がそれぞれ突設されているので、横筋Yを鉄筋嵌合部11の内部に嵌合した状態で両位置決め突起部2,3の把持部27,37を把持すると、挿通孔12の周方向への縮め動作が非常に行い易くなり、縮め手段4による縮め動作を円滑にサポートすることができる。
【0040】
また、各位置決め突起部2,3に、コンクリート打設時のコンクリートの流れを許容する開口孔24,34が設けられているので、コンクリートやコンクリート中の骨材が開口孔24,34を介して流れて各位置決め突起部2,3の周囲に確実にコンクリートを充填、密着させて、鉄筋用スペーサー1の表裏で空隙が生じるのを防止でき、コンクリートが分断されずに一体化され、熱膨張時及びコンクリートの乾燥収縮時に発生する応力集中を低減してひび割れの発生を低減することができる。
【0041】
更に、各位置決め突起部2,3の扇片21,31の表裏両面に、当該各位置決め突起部2,3毎の鉄筋嵌合部11の中心Oから各突片25,35までの突出長さを表示する表示部26,36がそれぞれ設けられているとともに、第1位置決め突起部2の突出縁部22及び各突片25が第2位置決め突起部3との区別化を明確にする上で赤色に着色されているので、各位置決め突起部2,3の突出量の違いを表示部26,36及び赤色の着色部分の表示に従って簡単に見分けることができ、単一の鉄筋用スペーサー1による横筋Yのかぶり厚の変更を確実に行うことができる。
【0042】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、鉄筋用スペーサー1の鉄筋嵌合部11を横筋Yに対し嵌合させたが、鉄筋用スペーサーの鉄筋嵌合部を縦筋に対し嵌合させるようにしてもよい。
【0043】
また、前記実施の形態では、第1及び第2位置決め突起部2,3の鉄筋嵌合部11の中心Oから各突片25,35までの突出長さを40mmと50mmとにそれぞれ変更されるようにしたが、第1及び第2位置決め突起部の鉄筋嵌合部の中心から各突片までの突出長さはこれに限定されるものではなく、比較的近似する2つの突出長さに変更されるようにすればよい。
【0044】
また、第1位置決め突起部2の突出縁部22及び各突片25のみを赤色(図では網掛け状態で示す)に着色したが、第2位置決め突起部も他色に着色されていてもよいのはいうまでもない。
【0045】
更に、前記実施の形態では、鉄筋嵌合部11の中心Oから各突片25,35までの突出長さが異なる2つの第1及び第2位置決め突起部2,3を設けたが、互いに突出長さが異なる3種類以上の複数の位置決め突起部が鉄筋嵌合部の外周面の周方向に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 鉄筋用スペーサー
11 鉄筋嵌合部
12 挿通孔
2 第1位置決め突起部
25 突片
26 表示部
3 第2位置決め突起部
35 突片
36 表示部
4 縮め手段
K 型枠
Y 横筋(鉄筋)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15