(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027911
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/10 20180101AFI20230224BHJP
【FI】
G01N23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133270
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 武
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 享司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 和朗
(72)【発明者】
【氏名】児矢野 大佑
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001HA13
2G001LA10
2G001PA11
2G001PA14
2G001QA02
(57)【要約】
【課題】透過画像の撮影に影響しないように荷物を容器に固定する。
【解決手段】給気口221は、コンプレッサ、送風機等から送られる空気等の気体を上方に吐出する。給気口221と接続した給気管121は、給気口221から送られてくる気体を下方の開口で受け入れて上方の開口から風船13の開口へ排出する。給気管121から供給される空気は、風船13の内部に蓄積され風船13を膨張させる。膨張し始めると風船13は、はじめに先端部が膨らみ、荷物Jを上から押さえつける。そして、その後、風船13は、その他の部位が膨らんで荷物Jを横から押さえつける。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された荷物の周囲に配した風船を膨張させて該荷物を固定し、固定した該荷物に電磁波を照射して該荷物の透過画像を撮像し、該透過画像により前記荷物を検査する検査装置。
【請求項2】
前記容器の底部に設けられた給気管から前記風船に気体を供給して該風船を膨張させる
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記給気管は、前記底部において、前記容器が置かれる台に設けられた給気口に応じた位置に設けられている
請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記給気口が設けられた前記台に前記容器を置いて、該給気口と該容器の底部に設けられた給気管とを接続し、該給気口から該給気管を通して前記風船に気体を供給する
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記台に設けられた吸引口から気体を吸引して前記容器を該台に接続させる
請求項3又は4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記台、及び前記容器のそれぞれの接続面は、互いに対応する形状であって、前記吸引口から気体が吸引されるほど前記給気口と前記給気管とが近づく形状を有する
請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記容器は、前記台に設けられた吹上口から吹上がる気体により、該台から浮遊する
請求項3から6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記容器は、前記吹上口から吹上がる気体を受けて自身を移動させる推進力を生じる翼を有する
請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記容器は自身の識別情報が記されたタグを有し、読取機が該タグから読取った前記識別情報が条件を満たすときに、前記風船を膨張させる
請求項1から8のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
前記風船は、前記荷物を上から押さえつける方向に膨張した後、横から押さえつける方向に膨張する
請求項1から9のいずれか1項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過画像により荷物を検査する検査装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空港の搭乗口では危険物の持ち込みを阻止するためにX線等の電磁波を照射して手荷物の中身を透過した画像(透過画像という)を撮像し、この透過画像に基づいて手荷物を検査する検査装置が用いられている。手荷物の中身を検査することは、空港以外でも劇場、映画館、鉄道等にも求められている。
【0003】
ところで、一般に、検査する手荷物の透過画像を撮像するためには、手荷物を容器ごと回転させたり移動させたりする必要がある。しかし、収容した容器の中で手荷物が動くと透過画像にブレが生じる。そこで、透過画像のブレを抑制するために、容器内に手荷物を固定する治具等の機構を用意することが考えられる。
【0004】
特許文献1は、光学顕微鏡の焦点合わせに関する作業負荷を低減し、検査時間の短縮を図るための検査用治具、を開示している。
【0005】
特許文献2は、照明手段の光を透過させる透過部を備えた中間部材に表示パネルを装着して支持し、その表示パネルをその光によって検査する検査装置、を開示している。
【0006】
特許文献3は、現場での患者テーブルとガントリ間の調整の必要性を軽減するように構成された統合患者スキャナシステム、を開示している。
【0007】
特許文献4は、パレットの保持動作と解除動作との切り換えを、搬送位置又は保持位置のいずれかに設けた固定部等との協働動作によって機械的に行い、搬送位置にあるパレットの保持を解除して搬送を可能とし、保持位置にあるパレットを保持して位置ずれを抑制するパレット搬送機構、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-250069号公報
【特許文献2】特開2005-201646号公報
【特許文献3】特表2008-541127号公報
【特許文献4】国際公開番号WO2010/052773
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した治具等が例えば金属製であると、治具そのものが検査のために照射した電磁波等を遮るため、透過画像が欠損し、検査できなくなることがある。また、手荷物を傷つけたり変形させたりすることは、可能な限り抑制されることが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、透過画像の撮影に影響しないように荷物を容器に固定すること、である。また、本発明の目的は、容器に収容した荷物を固定する際にその荷物の損傷を抑えること、である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、容器に収容された荷物の周囲に配した風船を膨張させて該荷物を固定し、固定した該荷物に電磁波を照射して該荷物の透過画像を撮像し、該透過画像により前記荷物を検査する検査装置、を第1の態様として提供する。
【0012】
第1の態様の検査装置によれば、透過画像の撮影に影響しないように荷物を容器に固定することができる。
【0013】
第1の態様の検査装置において、前記容器の底部に設けられた給気管から前記風船に気体を供給して該風船を膨張させる、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0014】
第2の態様の検査装置によれば、風船を膨張させるための気体を容器外から供給することができる。
【0015】
第2の態様の検査装置において、前記給気管は、前記底部において、前記容器が置かれる台に設けられた給気口に応じた位置に設けられている、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0016】
第3の態様の検査装置によれば、風船を膨張させるための気体を容器が置かれる台に設けられた給気口から供給することができる。
【0017】
第3の態様の検査装置において、前記給気口が設けられた前記台に前記容器を置いて、該給気口と該容器の底部に設けられた給気管とを接続し、該給気口から該給気管を通して前記風船に気体を供給する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0018】
第4の態様の検査装置によれば、容器が置かれる台に設けられた給気口から、この給気口に接続され、容器の底部に設けられた給気管を通して、風船に気体が供給される。
【0019】
第3又は第4の態様の検査装置において、前記台に設けられた吸引口から気体を吸引して前記容器を該台に接続させる、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0020】
第5の態様の検査装置によれば、接触せずに容器を台に接続させることができる。
【0021】
第5の態様の検査装置において、前記台、及び前記容器のそれぞれの接続面は、互いに対応する形状であって、前記吸引口から気体が吸引されるほど前記給気口と前記給気管とが近づく形状を有する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0022】
第6の態様の検査装置によれば、気体を吸引することで容器の台に対する位置決めをすることができる。
【0023】
第3から第6のいずれか1の態様の検査装置において、前記容器は、前記台に設けられた吹上口から吹上がる気体により、該台から浮遊する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0024】
第7の態様の検査装置によれば、容器に接触することなく、容器を台から離すことができる。
【0025】
第7の態様の検査装置において、前記容器は、前記吹上口から吹上がる気体を受けて自身を移動させる推進力を生じる翼を有する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0026】
第8の態様の検査装置によれば、気体を吹上げることで容器を移動させることができる。
【0027】
第1から第8のいずれか1の態様の検査装置において、前記容器は自身の識別情報が記されたタグを有し、読取機が該タグから読取った前記識別情報が条件を満たすときに、前記風船を膨張させる、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0028】
第9の態様の検査装置によれば、タグの読取り結果に応じて風船を膨張させるか否かを切り換えることができる。
【0029】
第1から第9のいずれか1の態様の検査装置において、前記風船は、前記荷物を上から押さえつける方向に膨張した後、横から押さえつける方向に膨張する、という構成が第10の態様として採用されてもよい。
【0030】
第10の態様の検査装置によれば、上方が開口した容器に収容した荷物が風船の膨張によって浮き上がることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態に係る検査システム9の全体構成の例を示す図。
【
図4】接続部12に設けられた給気管121の例を示す図。
【
図5】吹上口212から吹上がる気体により浮遊する容器1の例を示す図。
【
図6】吹上口212から気体を受けて推進力を生じさせる翼14の例を示す図。
【
図7】気体の吸引により台2に接続する容器1の例を示す図。
【
図8】風船を膨張させて荷物Jを固定する様子の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施形態>
<検査システムの全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る検査システム9の全体構成の例を示す図である。検査システム9は、容器1に収容された荷物の透過画像を撮像し、この透過画像により荷物の中身を検査するシステムである。
図1に示す検査システム9は、容器1、台2、照射装置3、ラインセンサ4、情報処理装置5、入口側コンベア6a、出口側コンベア6b、及び筐体7を有する。
【0033】
図において、各構成が配置される空間をxyz右手系座標空間として表す。図に示す座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を-x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、-y方向、z軸方向、+z方向、-z方向を定義する。
【0034】
図1において-z方向は重力の作用する方向、つまり、下であり、+z方向は上である。-y方向は、容器1が搬送される方向である。
【0035】
入口側コンベア6aは、荷物を収容した容器1を台2へ搬送する搬送装置である。
図1に示す入口側コンベア6aは、台2の+y方向に設置されており、上に載せた容器1を、ベルトコンベアやローラーコンベア等の搬送機構によって矢印D1の方向(つまり、-y方向)に搬送する。
【0036】
台2は、搬送された容器1を載せて下降し、入口側コンベア6aによる容器1の搬送路よりも下(つまり-z方向)に設置された検査領域に移動させる。また、
図1に示す台2は、上に載せた容器1を回転させる。
【0037】
図2は、台2の機能を説明するための斜投影図である。
図2(a)に示すように、容器1が搬送路に沿って矢印D1の方向に搬送され、台2の上に乗ると、台2は、矢印D2の方向に回転しながら、矢印D3に移動する。すなわち、台2は、容器1を載せて回転しながら下降する。
【0038】
図2(b)に示すように、照射装置3は、容器1が下降して検査領域に到達したときに、ラインセンサ4に向けてX線等の電磁波を照射する。
図1に示す照射装置3は、ラインセンサ4の-y方向に設置されている。そのため、
図1に示す照射装置3は、矢印D4の方向(つまり、+y方向)に電磁波を照射する。
【0039】
ラインセンサ4は、X線等の電磁波を感知する複数の受波素子がx軸方向に沿って配列されたセンサである。なお、
図2に示す照射装置3は、ラインセンサ4の複数の受波素子が並ぶ方向に沿って電磁波を走査するため、電磁波の照射方向は、x軸方向の成分が変化してもよい。
【0040】
下降して検査領域に移動した容器1は、照射装置3とラインセンサ4との間に位置するため、ラインセンサ4は、容器1、及びこの容器1に収容された荷物を透過した電磁波(透過波ともいう)を感知する。ラインセンサ4は、透過波を感知した位置、及びその透過波の強度の情報を情報処理装置5に送信する。透過波を感知した位置の情報は、例えば、複数の受波素子の識別番号等により表される。
【0041】
情報処理装置5は、プロセッサ、メモリ、及び通信部を有する。メモリは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有し、コンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶する。プロセッサは、メモリからプログラムを読出して実行することにより情報処理装置5の各部を制御する。通信部は、有線又は無線により情報処理装置5を、台2や照射装置3、ラインセンサ4等、他の装置に通信可能に接続する通信回路である。
【0042】
情報処理装置5は、受付けた操作に応じた信号をプロセッサに送る操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等を含む操作部を有してもよい。情報処理装置5は、プロセッサの制御の下で画像を表示する液晶ディスプレイ等の表示部を有してもよい。
【0043】
図1に示す情報処理装置5は、台2、照射装置3、及びラインセンサ4を制御する。そして、情報処理装置5は、ラインセンサ4から受信した透過波の情報を用いて、容器1に収容された荷物の透過画像を生成(撮像)する。そして、情報処理装置5は、生成した透過画像を解析して荷物内部の危険物の有無を判断する。情報処理装置5によるこの画像解析には、例えば、機械学習を用いた物体検知アルゴリズム等が用いられる。
【0044】
すなわち、情報処理装置5は、透過画像に基づいて荷物を検査する。したがって、この情報処理装置5、台2、照射装置3、及びラインセンサ4は、容器に収容された荷物に電磁波を照射してこの荷物の透過画像を撮像し、この透過画像によりこの荷物を検査する検査装置の例である。以下、情報処理装置5、台2、照射装置3、及びラインセンサ4をまとめて検査装置ともいう。検査装置には、これ以外の他の構成が含まれてもよい。
【0045】
透過画像の撮像が完了すると、照射装置3は電磁波の照射を停止し、台2は上昇する。上昇して搬送路に戻った容器1は、出口側コンベア6bに搬送される。出口側コンベア6bは、透過画像の撮像が完了した荷物を収容している容器1を受け入れて、これを検査システム9の外部へ移動させる。
【0046】
筐体7は、台2、照射装置3、及びラインセンサ4を収容し、容器1を入口側コンベア6aから受け入れ、出口側コンベア6bから送り出す。筐体7は、照射装置3が照射するX線等の電磁波が外部に漏れ難くなるように、例えば鉛等を含有した材質で構成される。
【0047】
筐体7は、容器1を外から受け入れ、又は送り出すときに
図1に破線で示す扉を開けてもよい。この扉は容器1の搬送に伴う機械的な力によって開閉されてもよいし、赤外線センサ等により容器1の通過を検知して、この検知結果に応じて開閉を制御されてもよい。この制御は情報処理装置5が行ってもよい。
【0048】
<容器1及び台2の構成>
図3は、容器1及び台2の構成の例を示す図である。
図3に示す容器1は、側壁10、底部11、接続部12、風船13、及び翼14を有する。また、
図3に示す台2は、載置部21、固定部22、及び移動部23を有する。
【0049】
側壁10は、筒状の壁であり、容器1の内部を囲って外部と区切る部材である。
図3に示す例で、側壁10は四方を囲った四角筒である。側壁10は、筒の伸びる方向がz軸方向に沿うように配置される。側壁10は、例えば樹脂等の、金属よりもX線を透過し易い材質で形成される。側壁10の下端はxy平面にほぼ平行な面を形成する。したがって、容器1が台2の上面のように滑らかな平面に置かれると、その平面と容器1の側壁10の下端との隙間はほとんど生じない。
【0050】
底部11は、xy平面に平行な板であって、容器1の底を形成する部材である。底部11の縁は側壁10の内側に隙間なく固定されている。これにより、底部11は、側壁10の内部を
図3に示す上部空間R1と下部空間R2とに区画する。
【0051】
上部空間R1は、検査対象となる荷物を収容する空間である。下部空間R2は、接続部12を設置する空間である。
図3に示す例で、上部空間R1は、下部空間R2に比べて大きい。
【0052】
接続部12は、容器1を台2に接続させる部材である。
図3に示す接続部12は、底部11の-z側の面に固定されて下部空間R2に収容される。つまり、接続部12の高さ(z軸方向の長さ)は、下部空間R2の高さよりも低い。そのため、接続部12は、側壁10の-z方向の端を結んだ平面よりも下に突出することがない。
図3に示す接続部12の下面(-z方向の面)には、凹部が設けられている。接続部12は、給気管121、及びタグ122を有する。したがって、この接続部12を有する容器1は、自身の識別情報が記されたタグを有する容器の例である。
【0053】
給気管121は、接続部12の下面から底部11の上面までをz軸方向に沿って貫通する管である。給気管121は、容器1が決められた位置(定位置ともいう)に置かれたときに、給気口221(後述する)に応じた位置に来て、これに接続可能になるように設けられている。これにより、容器1が定位置に置かれると、給気管121は、給気口221から下方の開口を通して送られてくる気体を上方の開口から排出する。
図3に示す通り、給気管121の上方の開口には、風船13の開口が接続されている。
【0054】
図4は、接続部12に設けられた給気管121の例を示す図である。
図4(a)に示すように、接続部12の上面には、複数の給気管121の上方の開口を互いに繋ぐ溝121cが設けられていてもよい。また、接続部12の下面にも、複数の給気管121の下方の開口を互いに繋ぐ溝121cが設けられていてもよい。溝121cにより、複数の給気管121の開口が繋がるため、それぞれの給気管121により供給される気体は溝121cに溜められて上方に送られる。この溝121cを風船13の開口が覆っている場合、複数の給気管121のそれぞれから供給される気体は、溝121cを介して風船13に供給される。
【0055】
なお、
図4(b)に示すように、接続部12に溝121cは設けられなくてもよい。給気管121の数はいくつでもよく、例えば、
図4(b)に示すように8本でもよい。また、接続部12は、
図4に示す通り円柱状でもよいが、他の形状でもよい。ただし、接続部12の下面は、台2が有する固定部22の上面に対応する形状である。
【0056】
図3に示すタグ122は、容器1の識別情報を読取り可能に記したタグである。タグ122は、近距離無線通信(Near Field Communication、NFC)の規格、例えばISO/IEC18092(NFCIP-1)、ISO/IEC14443、ISO/IEC15693、又はIEEE802.15に準拠した方式で読取装置に接続する機能を有していてもよい。また、タグ122は、いわゆるバーコードや二次元コードによって識別情報を記したものでもよい。
【0057】
タグ122は、決められた領域(読取領域ともいう)に入ったときに、筐体7や台2等に設置された図示しない読取装置に読取られる。読取装置により読取られた識別情報は情報処理装置5に送信される。
【0058】
情報処理装置5のプロセッサは、受信した識別情報がメモリに記憶された所定条件を満たすか否かを判定する。識別情報が所定条件を満たす、と判断する場合、情報処理装置5は、台2、照射装置3、ラインセンサ4を制御して、その識別情報が記されたタグ122を有する容器1の検査を行わせる。
【0059】
風船13は、少なくとも1つの開口を有する袋状の部材であり、この開口から気体を供給することで膨張する。
図3に示す風船13は、容器1の側壁10の内側に沿って配置されている。そのため、容器1の上部空間R1に荷物Jが収容されると、風船13は荷物の周囲に配される。この風船13は、例えば樹脂等の、金属よりもX線を透過し易い材質で形成される。また、風船13の厚みは、例えば1ミリメートル未満等であり、他の構成に比べて薄い。そのため、風船13は、これよりも厚みのある物体に比べてX線等の電磁波を透過させ易い。
【0060】
風船13の開口は、上述した通り、給気管121の上方の開口に接続されている。したがって、給気管121を通って上に向けて供給される気体は風船13の中に送り込まれ、風船13を膨張させる。また、風船13の中に充填された気体が給気管121を通って排出されると、風船13は収縮する。
【0061】
翼14は、容器1に設けられた板状の部材であり、吹上げられた気体を誘導して容器1を排出する方向へ移動させる推進力を生じさせるものである。
図3に示す翼14は、下部空間R2であって容器1の側壁10のうち-y方向の端に固定されている。翼14の下面はyz平面においてy成分が増加するほどz成分が増加するように傾斜している。
【0062】
図3に示す載置部21は、台2のうち容器1が載る部位である。載置部21は、収容室211、及び吹上口212を有する。
【0063】
図3に示す収容室211は、載置部21の上面の中央に設けられた窪みであり、固定部22を収容する。収容室211の垂直に伸びる壁面は、収容している固定部22の側面に沿った形状を有する。このため、収容室211の壁面と固定部22の側面との隙間は、気体の流通を妨げる程度に狭い。収容室211の壁面は、固定部22の側面との摩擦を抑制するように平滑に仕上げられている。
【0064】
吹上口212は、圧縮空気等の気体を吹上げる穴である。吹上口212は、載置部21をz軸方向に貫通しており、下部に接続された図示しないコンプレッサ、送風機等から送られる空気等の気体を上方に吐出する。吹上口212の直上に容器1が載置されているとき、吹上口212から吹上がる気体は、容器1の下部空間R2に充填される。また、吹上口212の直上に容器1に設けられた翼14が存在しているとき、吹上口212から吹上がる気体は、翼14にあたって+y方向に流れる。これにより、この気体は、容器1を-y方向に移動させる推進力を生じさせる。
【0065】
図5は、吹上口212から吹上がる気体により浮遊する容器1の例を示す図である。
図5に示す通り、吹上口212は上方に向けて空気等の気体を吹上げる。吹上げられた気体は、容器1の下部空間R2に滞留し、余剰分は容器1と載置部21との隙間から漏出するこの下部空間R2に滞留する気体の圧力と、隙間から漏出する気流とによって、容器1は浮遊する。したがって、この容器1は、台に設けられた吹上口から吹上がる気体により、この台から浮遊する容器の例である。
【0066】
入口側コンベア6aは、例えば、ベルトコンベアやローラーコンベア等の動力によって、又は傾斜した搬送路を滑る容器1(及び、これに収容された荷物J)の自重によって、容器1を-y方向に移動させる。しかし、載置部21の上には容器1を移動させる力は働いていない。したがって、載置部21と接触して、接触箇所の摩擦により容器1が停止しないように、吹上口212は、気体を吹上げて、容器1を載置部21の僅かに上方(例えば、1ミリメートル程度)に浮遊させる。
【0067】
図6は、吹上口212から気体を受けて推進力を生じさせる翼14の例を示す図である。載置部21に設けられた吹上口212のいずれかが翼14の直下に位置しており、吹上口212から気体が吹上げられると、翼14は、下から上へ吹上げられた気体、つまり、+z方向に進む気体を傾けられた下面で受けて+y方向に導く。これにより生じた
図6に示す気流Fは、+y方向に流れるため、容器1を-y方向に推進させる。したがって、この翼14を有する容器1は、吹上口から吹上がる気体を受けて自身を移動させる推進力を生じる翼を有する容器の例である。
【0068】
検査が終了した後、吹上口212が吹上げる気体によって、容器1は再び浮遊するとともに、翼14の作用により、出口側コンベア6bのある-y方向に移動する。
【0069】
台2が有する固定部22は、上述した容器1の接続部12と接続して容器1を台2に固定する部材である。固定部22の上面は、
図3に示す通り凸部を有する。この凸部は、接続部の下面に設けられた凹部に対応する形状である。固定部22の凸部と、接続部12の凹部とが一致する形状であるため、固定部22が上昇して接続部12との隙間が狭くなると、接触点からの抗力を受けて、これら凸部と凹部とが一致する方向に容器1が動く。これにより、容器1のx軸方向、及びy軸方向の位置が調整される。
【0070】
固定部22は、上述した収容室211において上下に移動可能な状態で収容される。固定部22の側面には、収容室211の壁面との隙間から気体が通過し難いようにシール材等が用いられている。また、固定部22の側面は、収容室211の壁面との摩擦係数が比較的低くなるように材質が選択されている。これにより、固定部22は、自身の側面を、収容室211の壁面に沿って摺動させながら上下に移動する。固定部22が上下に移動しても、固定部22と収容室211との隙間はシールされているため、下部空間R2に充填された気体は収容室211に漏れ難い。
【0071】
吸引口222は、固定部22をz軸方向に貫通する穴である。吸引口222の下方の開口は、図示しない真空ポンプ等に接続され、吸引されている。これにより、容器1の下部空間R2に充填している空気等の気体は、吸引口222を通して下方に移動し、真空ポンプ等に吸引される。
【0072】
図7は、気体の吸引により台2に接続する容器1の例を示す図である。容器1が、ほぼ定位置に到達すると、図示しない検知器によりこの容器1の存在が検知され、情報処理装置5に通知される。情報処理装置5は、例えば、吹上口212に気体を供給する送風機等を停止する。これにより、容器1は、浮遊した位置から下降し、載置部21の上面に接触して停止する。このとき容器1の側壁10の下端と、載置部21の上面との接触部分には隙間がほとんどないため、下部空間R2は密閉空間となる。
【0073】
図示しない読取装置によりタグ122に記された識別情報が読取られ、情報処理装置5に通知されると、情報処理装置5は、この識別情報が所定条件を満たす場合に、検査を開始する。
【0074】
ここで、情報処理装置5は、上述した図示しない真空ポンプ等を稼働させ吸引口222を通して下部空間R2の内部の気体を吸引する。これにより、固定部22は上昇し、接続部12に接触する。上述したとおり、固定部22の上面の凸部は接続部12の凹部に対応しているため、吸引口222から気体が吸引されるほど、これらの形状に沿って容器の前後左右(つまり、x軸方向、y軸方向)の位置が調整される。そして、上述した凹部と凸部との隙間に気体がなくなるとき、互いの位置決めがなされて固定部22の上面は接続部12の下面に密着接続する。したがって、この吸引口222は、台に設けられ、気体を吸引して容器を台に接続させる吸引口の例である。
【0075】
上述したとおり、容器1が定位置にあるとき、接続部12に設けられた給気管121は、台2の固定部22に設けられた給気口221に応じた位置にある。つまり、給気管121は、底部において、容器が置かれる台に設けられた給気口に応じた位置に設けられている給気管の例である。
【0076】
そして、吸引口222から気体が吸引されるほど、固定部22の上面、及び、接続部12の下面(すなわち台2、及び容器1のそれぞれの接触面)が近づくため、給気口221と給気管121とは近づく。
【0077】
つまり、この台2、及びこの容器1のそれぞれの接触面は、台、及び容器のそれぞれの互いに対応する形状であって、吸引口から気体が吸引されるほど給気口と給気管とが近づく形状を有する接続面の例である。
【0078】
上述した凸部と凹部とが一致するとき、固定部22の上面、及び、接続部12の下面が互いに密着接続するため、給気口221に応じた位置にある給気管121は、この給気口221に接続する。
【0079】
図8は、風船を膨張させて荷物Jを固定する様子の例を示す図である。固定部22の上面と接続部12の下面とが互いに密着接続すると、給気管121の下方の開口と給気口221の上方の開口とは接続する。給気口221は、図示しないコンプレッサ、送風機等から送られる空気等の気体を上方に吐出する。したがって、給気口221と接続した給気管121は、給気口221から送られてくる気体を下方の開口で受け入れて上方の開口から風船13の開口へ排出する。給気管121から供給される空気は、風船13の内部に蓄積され風船13を膨張させる。
【0080】
したがって、この検査システム9の検査装置は、容器の識別情報が記されたタグから読取機によって読取られた識別情報が条件を満たすときに、風船を膨張させる検査装置の例である。
【0081】
膨張し始めると風船13は、
図8(a)で示した通り、はじめに先端部が膨らみ、荷物Jに接触する。そして風船13は、荷物Jを上から押さえつける。そして、その後、
図8(b)に示した通り、風船13は、その他の部位が膨らんで荷物Jを横から押さえつける。つまり、
図8に示す風船13は、荷物を上から押さえつける方向に膨張した後、横から押さえつける方向に膨張する風船の例である。これにより、風船13は、容器1に収容した荷物Jが浮き上がって上方の開口から突出することを抑制する。また、風船13は、荷物Jを容器1の内部で横方向に大きく移動させずに固定することができる。
【0082】
すなわち、この風船13は、荷物の周囲に配されて、膨張することにより荷物を容器に固定する風船の例である。また、この検査システム9の検査装置は、容器に収容された荷物の周囲に配した風船を膨張させてこの荷物を固定し、固定したこの荷物に電磁波を照射してこの荷物の透過画像を撮像し、この透過画像によりこの荷物を検査する検査装置の例である。
【0083】
また、この検査装置は、容器の底部に設けられた給気管から風船に気体を供給してこの風船を膨張させる検査装置の例である。また、この検査装置は、給気口が設けられた台に容器を置いて、この給気口と容器の底部に設けられた給気管とを接続し、この給気口からこの給気管を通して風船に気体を供給する検査装置の例である。
【0084】
検査においてラインセンサ4は、容器1に収容された荷物Jを様々な角度から撮像する必要があるため、台2はz軸方向に並行な軸を中心に荷物Jを容器1ごと回転させる。このとき、荷物Jは、回転によって容器1内を移動しないように容器1に固定されている必要がある。したがって、検査に先立って情報処理装置5は、上述したように風船13を膨張させて荷物Jを固定する。
【0085】
移動部23は、載置部21を移動させる部材である。移動部23が載置部21を移動させると、これに伴って載置部21の収容室211に収容された固定部22も移動する。
【0086】
移動部23は、載置部21を回転させる。また、移動部23は、載置部21を上下に移動させる。移動部23は、これらの移動を同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。移動部23は、例えば、載置部21を回転させながら下降させてもよい。また、移動部23は、例えば、載置部21を回転させることなく上昇させてもよい。移動部23は、入口側コンベア6aから出口側コンベア6bへ通じる容器1の搬送路よりも下の検査領域に容器1を移動させる。
【0087】
<検査システム9の動作>
図9は、検査システム9の動作の例を示すフロー図である。例えば航空機の乗客が荷物Jを容器1に収容すると(ステップS101)、この容器1は、入口側コンベア6aにより台2へ搬送される(ステップS102)。
【0088】
台2では、図示しない検知装置により容器1が検知される(ステップS103)。この検知結果を受けて情報処理装置5は図示しないコンプレッサ、送風機等を稼働させる。これにより、吹上口212は気体を吹上げて容器1を台2の載置部21の上へ誘導する(ステップS104)。
【0089】
図示しない読取装置がタグ122から識別情報を読取ると(ステップS105)、情報処理装置5は、この識別情報が所定の条件を満たすか否か判断する(ステップS106)。読取られた識別情報が所定の条件を満たさない、と判断する場合(ステップS106;NO)、情報処理装置5は処理をステップS115へ進める。
【0090】
一方、読取られた識別情報が所定の条件を満たす、と判断する場合(ステップS106;YES)、情報処理装置5は、図示しない真空ポンプを制御して吸引口222から容器1の下部空間R2を満たしている空気を吸引させる。これにより容器1は台2に接続する(ステップS107)。
【0091】
容器1の接続部12が台2の固定部22に接続すると、情報処理装置5は図示しないコンプレッサ等を制御して給気口221、及びこの給気口221に接続した給気管121から風船13へ空気を供給する(ステップS108)。
【0092】
情報処理装置5は、図示しない圧力計により計測された風船13の内部の圧力値(気圧)を取得し、この気圧が安定したか否かを判断する(ステップS109)。気圧が安定していない、と判断する期間にわたって(ステップS109;NO)、情報処理装置5は上述したコンプレッサ等を制御して風船13へ空気を供給し続ける。
【0093】
一方、気圧が安定した、と判断すると(ステップS109;YES)、情報処理装置5は、給気口221の図示しない弁を閉じて風船13の内部を密閉するとともに、台2の移動部23を制御して台2を回転させ、下降させる(ステップS110)。そして、台2に載置された容器1が検査領域に到達すると、情報処理装置5は、容器1に収容された荷物Jの検査を行う(ステップS111)。
【0094】
検査が終了すると、情報処理装置5は、台2の移動部23を制御して台2を上昇させて元の位置に戻す(ステップS112)。そして、情報処理装置5は、上述した給気口221の弁を開放して風船13から空気を除去する(ステップS113)。
【0095】
情報処理装置5は、上述した圧力計により計測された風船13の気圧を取得し、この気圧が安定したか否かを判断する(ステップS114)。気圧が安定していない、と判断する期間にわたって(ステップS114;NO)、情報処理装置5は風船13から空気が除去されるのを待つ。
【0096】
一方、気圧が安定した、と判断すると(ステップS114;YES)、情報処理装置5は、上述したコンプレッサ、送風機等を稼働させ、吹上口212から気体を吹上げさせて容器1を出口側コンベア6bへ搬送する(ステップS115)。なお、ステップS106で、識別情報が所定の条件を満たさない、と判断された結果、ステップS115で容器1が出口側コンベア6bへ搬送された場合、情報処理装置5は上述した表示部等によりこの判断の結果を表示して、検査システム9を利用する検査員に知らせてもよい。この表示を見た検査員は、例えば、出口側コンベア6bへ搬送された容器1から、この内部に固定された荷物Jを取り出して他の手段で検査すればよい。
【0097】
以上、説明した動作により、検査システム9の検査装置は、透過画像の撮影に影響しないように荷物Jを容器1に固定することができる。また、この検査装置によれば、容器1に収容した荷物Jは、固定される際に損傷を受けることが抑えられる。
【0098】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0099】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0100】
<1>
上述した実施形態において、吹上口212が吹上げる気体や給気口221が供給する気体は空気であったが他の気体でもよい。また、検査システム9の全体を空気以外の気体が満たしている場合、吸引口222が吸引する気体は空気以外のその気体でもよい。
【0101】
<2>
上述した実施形態において、検査装置は、容器1の底部11に設けられた給気管121から風船13に気体を供給してこの風船13を膨張させていたが、風船13を膨張させる構成はこれに限らない。例えば、風船13に気体を供給する管は容器1の上部の開口から風船13の開口に伸びていてもよい。また、風船13は、例えば、内包する物質の化学反応によって膨張してもよい。要するに、風船13は、荷物の周囲に配されて、膨張することにより荷物を容器に固定する風船であればよい。
【0102】
<3>
上述した実施形態において、容器1の接続部12はタグ122を有していたが、タグ122を有しなくてもよい。また、容器1は翼14を有していたが、翼14を有しなくてもよい。
【0103】
<4>
上述した実施形態において、風船13は、容器1に収容された荷物Jを上から押さえつける方向に膨張した後、横から押さえつける方向に膨張していたが、膨張の順序はこれに限らない。
【0104】
<5>
上述した実施形態において、固定部22の上面の凸部は接続部12の下面の凹部に対応していたが、固定部22の上面の形状は、接続部12の下面の形状に対応していれば、凸部でなくてもよい。例えば、固定部22の上面に凹部が設けられており、接続部12の下面には、固定部22の上面に設けられた凹部に応じた凸部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…容器、10…側壁、11…底部、12…接続部、121…給気管、121c…溝、122…タグ、13…風船、14…翼、2…台、21…載置部、211…収容室、212…吹上口、22…固定部、221…給気口、222…吸引口、23…移動部、3…照射装置、4…ラインセンサ、5…情報処理装置、6a…入口側コンベア、6b…出口側コンベア、7…筐体、9…検査システム、D1…矢印、D2…矢印、D3…矢印、D4…矢印、R1…上部空間、R2…下部空間。