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特開2023-2792ソマトスタチン受容体を過剰発現する神経内分泌腫瘍を処置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002792
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ソマトスタチン受容体を過剰発現する神経内分泌腫瘍を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/08 20060101AFI20221227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221227BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K51/08 100
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61P35/04
A61K51/00 100
A61K51/02 100
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022174286
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2019226638の分割
【原出願日】2016-06-24
(31)【優先権主張番号】62/176,901
(32)【優先日】2015-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517447426
【氏名又は名称】アドバンスド アクセレレーター アプリケーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ ブオノ
(72)【発明者】
【氏名】マリベル ロペラ シエラ
(57)【要約】
【課題】ソマトスタチン受容体を過剰発現する神経内分泌腫瘍を処置する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ソマトスタチン受容体を過剰発現するがんを処置する方法に関する。より具体的には、本発明は、ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)および免疫腫瘍学療法(I-O療法)の組合せが、神経内分泌腫瘍の処置のために投与される併用療法を提供する。具体的な実施形態では、PRRTは、[177]ルテチウム-DOTA[O]-Tyr[3]-オクトレオテートであり、I-O療法は、PD-1/PD-L1およびCTLA-4経路を阻害する阻害剤を投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書の一部に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[該当なし]
【0002】
技術分野
本発明は、ソマトスタチン受容体を過剰発現するがんを処置する方法に関する。より具体的には、本発明は、ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)および免疫腫瘍学療法(I-O療法)の組合せが、神経内分泌腫瘍を処置するために投与される併用療法を提供する。
【背景技術】
【0003】
神経内分泌新生物(neuroendocrine neoplasia)は、様々な臓器部位および組織型において起こる。神経内分泌腫瘍(NET)は、内分泌(ホルモン)および神経系の細胞から生じる腫瘍である。神経内分泌腫瘍(NET)には、一定範囲の形態学的、機能的、および行動的特性を有する一群の腫瘍が含まれる。これらの腫瘍は一般に、ゆっくりと成長する。しかし、これらは、主に肝臓に蔓延する潜在性を有し、これらが実際に蔓延したとき、これらは、生命を危うくし、現在のモダリティーで処置することが困難であり得る。
【0004】
NETは、体全体にわたって分布した分散神経内分泌細胞を発生源とする稀有な異種腫瘍である。用語「神経内分泌」は、内分泌および神経系の両方によって産生される神経ホルモン、神経伝達物質、または神経修飾物質を合成、貯蔵、および分泌するこれらの細胞の能力に関する。
【0005】
NETを有するほとんどの患者は、症状を呈さず、彼らの腫瘍は、無関係の手術または検査の際にのみ発見される。ある特定のホルモンおよび他の化学物質を産生する機能性NETは、患者が症状を呈する原因となることが多いが、これらの症状の非特異的な性質は、診断の遅延に、または誤診にさえ至り得る。NETを有する患者が正しく診断される時までに、がんは通常、転移しており、局所または遠隔転移が症例のおよそ50%で観察される。これらが転移すると、NETは、手術単独によって有効に処置することができず、一般に治癒できない。
【0006】
したがって、NETについての療法のかなりの必要性が存在するが、進行NETの処置に現在利用可能な限られた数の選択肢が存在するだけである。
【0007】
NETの処置の礎は、ソマトスタチン類似体(SSA)、例えば、サンドスタチン(Novartis)またはSomatuline(登録商標)(Ipsen)などの使用である。伝統的に、SSAが対症処置のために使用されており、それでも、何らかの抗腫瘍活性が確認されている。化学療法および標的療法は、膵臓NET(pNET)についてのみ登録されており、一方、胃腸(GI)または肺NETについては、SSAの使用が限定承認されているのみである。その結果として、多くの患者は、特に疾患が進行した状況においてすべての利用可能な処置選択肢を使い果たしているのが事実であり、それは、転移NETの全身的処置に対する未だ対処されていない高い医療上の必要性を表す。
【0008】
対症療法レベルにおいて、SSAは、転移性カルチノイド腫瘍に関連した重度の下痢、潮紅エピソード、および心疾患を含めたある特定の臨床的症候群(総称してカルチノイド症候群と呼ばれる)を制御するのに使用されている。
【0009】
ほとんどのNETは、ソマトスタチン受容体(SSTR)を過剰発現する。細胞外の分子を検知し、ホルモンであるソマトスタチンに応答して細胞内事象を活性化するこれらのプロテインG共役受容体は、ヒト細胞内で発現される。この、短期間持続する内因性ホルモンは、内分泌系の重要な調節因子であり、その活性を模倣するソマスタチン類似体は、成長ホルモン、グルカゴン、およびインスリンの活性を阻害し、カルチノイド症候群関連症状を制御するのに非常に有効であることが判明した。成長ホルモン、グルカゴン、およびインスリンも、カルチノイド腫瘍によって産生されることが多い。
【0010】
しかし、カルチノイド症候群の対症処置は、転移NET自体を処置することと別個のものである。部分的な抗増殖効果に基づいて、IpsenのSomatuline(登録商標)Depot(登録商標)(ランレオチド(Ianreotide))が、胃腸膵管における切除不能な、高分化型または中分化型、局所進行または転移NET(GEPNET)を有する成人患者の処置について2014年12月にFDAによって承認された。エベロリムス(Afinitor(登録商標)、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)の経口阻害剤)は、膵臓起源の進行性神経内分泌腫瘍および胃腸(GI)または肺起源の高分化型非機能性、切除不能、局所進行または転移NET(第3相治験において観察された11カ月のPFS)の処置についてUSにおいて承認された。これらは、今日までで、これまで中腸腫瘍について承認された唯一の「抗腫瘍」療法である。しかし、腫瘍が、通常処置を開始して約6~18カ月後に、その効果に抵抗性または無応答性となった場合1、2、3、GIおよび肺NETにおける介入について承認された他の療法は存在しない。したがって、これらの腫瘍は、現在利用可能な療法によって治療不能である。
【0011】
化学療法剤および一部の標的療法は、pNETのスタンダードオブケアとなっているが、奏功率は、腫瘍の攻撃性によって変動し、それでも、およそ30%から50%の間であると推定されている。2つの標的療法が、進行性非機能性pNETの処置について承認されているが、生存利益は限られている。
【0012】
[0010]で上記に論じたように、これらの標的療法の最初は、Afinitor(登録商標)(エベロリムス)、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤の使用であるが、Afinitor(登録商標)で処置すると、重度の皮膚および胃腸障害、腎臓および肝臓毒性、ならびに骨髄損傷が起こり得る。
【0013】
唯一の他の処置は、第3相治験において観察された11.4カ月のPFSに基づいて成人における疾患進行を有する切除不能または転移性高分化型pNETの処置について2011年にFDAおよびEMAによって承認された、Sutent(登録商標)(スニチニブ)、多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤、またはRTKの使用である。やはり、これは、理想的とは言えない介入であり、その理由は、Sutent(登録商標)で処置すると、重度の副作用、例えば、腎不全、心不全、胃腸障害、出血、および血液学的障害(例えば、好中球減少症、血小板減少症、および貧血)などが起こり得るためであり、これらは、その最も一般的な有害な薬物反応に数えられる。
【0014】
よって、伝統的な化学療法は、高分化NETの処置において役割はほとんどなく、その理由は、これらの腫瘍のほとんどは、ゆっくりと成長し、処置するのが困難であるためである。文献における化学療法の効力の厳密な査定は、毒性が関連し、特に「中腸カルチノイド」において、応答が短期間しか続かず散発的である、不均質な一連の患者に対する後ろ向き研究が大半なため難しい。単一または複数の作用物質を含めた多くのスキームが試みられている。
【0015】
膵臓腫瘍におけるストレプトゾトシンに基づくスキームは、かなりの客観的応答を生じ
たが、「中腸カルチノイド」において使用されたスキームのどれも、NETの処置においていずれの活性も示さなかった。一部の良好な初期応答は、テモゾロミド+カペシタビンの組合せに関し小集団について報告されたが、やはり、これらの早期データは、NETのために現在利用可能な療法が不十分であり、かなりの治療成果を生み出すことができる追加のロバストな療法に対する長年の切実な必要性が存在することを明らかにする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下でより詳細に記載する本発明は、NETを有効に処置する併用療法手法を提供する。
【0017】
本発明は、ソマトスタチン受容体を過剰発現する腫瘍に罹患した患者を処置する方法であって、前記患者にペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)およびI-O療法の組合せを投与することを含む方法に関する。
【0018】
具体的な実施形態では、PRRTは、[177]ルテチウム-DOTA[O]-Tyr[3]-オクトレオテートである。
【0019】
具体的な実施形態では、I-O療法は、PD-1/PD-L1およびCTLA-4経路を阻害する阻害剤を投与することを含む。他の実施形態では、PD-1/PD-L1およびCTLA-4経路の阻害剤は、PD-1/PD-L1軸またはCTLA-4/B7受容体複合体を標的とする抗体である。なおさらなる実施形態では、PD-1/PD-L1経路の阻害剤は、PD-1およびPD-L1の両方を標的とする阻害剤の組合せである。
【0020】
特定の実施形態では、PD-1/PD-L1またはCTLA-4/B7経路は、ニボルマブ、MK-3475、MPDL3280A、MED14736、イピリムマブ、およびトレメリムマブからなる群から選択される。
【0021】
本発明は、がんが神経内分泌腫瘍である実施形態によって特に明確にされる。より具体的には、前記処置は、神経内分泌腫瘍の成長の阻害、神経内分泌腫瘍細胞の増殖の阻害、神経内分泌腫瘍転移の阻害、神経内分泌腫瘍細胞の腫瘍形成能の低減、および神経内分泌腫瘍内のがん幹細胞または腫瘍開始細胞の頻度を低減する方法のうちの1つまたは複数を含む。
【0022】
ソマトスタチン受容体を発現または過剰発現する任意の神経内分泌腫瘍を、本発明の方法によって処置することができる。例示的な、このような腫瘍としては、それだけに限らないが、胃腸膵臓神経内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍、褐色細胞腫、傍神経節腫、髄様甲状腺がん、肺神経内分泌腫瘍、胸腺神経内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍または膵神経内分泌腫瘍、下垂体腺腫、副腎腫瘍、メルケル細胞癌、乳がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、頭頚部腫瘍、尿路上皮癌(膀胱)、腎細胞癌、肝細胞癌、GIST、神経芽細胞腫、胆管腫瘍、子宮頸腫瘍、ユーイング肉腫、骨肉腫、SCLC、前立腺がん、黒色腫、髄膜腫、神経膠腫、髄芽腫 血管芽腫、テント上原始、神経外胚葉性腫瘍、および鼻腔神経芽細胞腫からなる群が挙げられる。
【0023】
特定の例では、神経内分泌腫瘍は、機能性カルチノイド腫瘍、膵島細胞腺腫、ガストリノーマ、血管作用性腸管ペプチド(VIP)腫、グルカゴノーマ、セロトニノーマ、ヒスタミン腫瘍(histaminoma)、ACTH腫、褐色細胞腫(pheocromocytoma)、およびソマトスタチノーマからなる群から選択される。
【0024】
本発明によって処置される神経内分泌腫瘍は、グレードによって定義することができ、
低グレード、中グレード、または高グレード神経内分泌腫瘍であり得る。具体的な実施形態では、腫瘍は、機能性神経内分泌腫瘍である。代替として、神経内分泌腫瘍は、非機能性神経内分泌腫瘍である。
【0025】
特に好適な実施形態では、がんは、小細胞肺がんである。他の好適な実施形態では、がんは、進行性中腸神経内分泌腫瘍である。一部の実施形態では、本発明は、サンドスタチン(Novartis)またはSomatuline(登録商標)(Ipsen)に応答性でない神経内分泌腫瘍の療法を提供する。他の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、PD-1/PD-L1経路の阻害剤に非応答性であり、または低応答を有する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ソマトスタチン受容体を過剰発現するがんを有する患者を処置する方法であって、前記患者に、ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)および免疫腫瘍学療法の組合せを投与することを含み、前記PRRTおよび前記免疫腫瘍学療法の複合効果により、前記がんに対する治療効果が生じる、方法。
(項目2)
ソマトスタチン受容体を過剰発現するがんを有する患者を処置する方法であって、前記患者に、ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)およびPD-1/PD-L1/CTLA-4経路を阻害する阻害剤の組合せを投与することを含み、前記PRRTおよびPD-1/PD-L1経路の前記阻害剤の複合効果により、前記がんに対する治療効果が生じる、方法。
(項目3)
前記PRRTが、[177]ルテチウム-DOTA[O]-Tyr[3]-オクトレオテートである、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記PD-1/PD-L1/CTLA-4経路の前記阻害剤が、PD-L1を標的とする抗体である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記PD-1/PD-L1経路の前記阻害剤が、PD-1を標的とする抗体である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記PD-1/PD-L1経路の前記阻害剤が、ニボルマブ、MK-3475、MPDL3280A、MED14736、イピリムマブ、およびトレメリムマブからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記がんが、神経内分泌腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記処置が、神経内分泌腫瘍の成長の阻害、神経内分泌腫瘍細胞の増殖の阻害、神経内分泌腫瘍転移の阻害、神経内分泌腫瘍細胞分化の誘導、神経内分泌腫瘍細胞の腫瘍形成能の低減、および神経内分泌腫瘍内のがん幹細胞または腫瘍開始細胞の頻度を低減する方法のうちの1つまたは複数を含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記神経内分泌腫瘍が、胃腸膵臓神経内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍、褐色細胞腫、傍神経節腫、髄様甲状腺がん、肺神経内分泌腫瘍、胸腺神経内分泌腫瘍、カルチノイド腫瘍または膵神経内分泌腫瘍、下垂体腺腫、副腎腫瘍、メルケル細胞癌、乳がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、頭頚部腫瘍、尿路上皮癌(膀胱)、腎細胞癌、肝細胞癌、GIST、神経芽細胞腫、胆管腫瘍、子宮頸腫瘍、ユーイング肉腫、骨肉腫、SCLC、前立腺がん、黒色腫、髄膜腫、神経膠腫、髄芽腫 血管芽腫、テント上原始、神経外胚葉性腫瘍、および鼻腔神経芽細胞腫からなる群から選択される、項目6に記載の方法。
(項目10)
前記神経内分泌腫瘍が、機能性カルチノイド腫瘍、膵島細胞腺腫、ガストリノーマ、血管作用性腸管ペプチド(VIP)腫瘍、グルカゴノーマ、セロトニノーマ、ヒスタミン腫瘍、ACTH腫、褐色細胞腫、およびソマトスタチノーマからなる群から選択される、項目6に記載の方法。
(項目11)
前記神経内分泌腫瘍が、低グレード、中グレード、または高グレード神経内分泌腫瘍である、項目6に記載の方法。
(項目12)
前記がんが、小細胞肺がんである、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記がんが、進行性中腸神経内分泌腫瘍である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記がんが、サンドスタチン(Novartis)またはSomatuline(登録商標)(Ipsen)に応答性でない、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記がんが、PD-1/PD-L1経路の阻害剤に非応答性であるか、または低応答を有する、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記神経内分泌腫瘍が、機能性神経内分泌腫瘍である、項目6に記載の方法。
(項目17)
前記神経内分泌腫瘍が、非機能性神経内分泌腫瘍である、項目6に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、神経内分泌腫瘍の成長を阻害する方法、神経内分泌腫瘍細胞の増殖を阻害する方法、神経内分泌がんを処置または安定化する方法、神経内分泌腫瘍転移を阻害する方法、神経内分泌腫瘍細胞の腫瘍形成能を低減する方法、および神経内分泌腫瘍内のがん幹細胞または腫瘍開始細胞の頻度を低減する方法を提供する。より具体的には、本明細書に提供する方法は、ペプチド受容体放射性核種の免疫腫瘍学療法との組合せを投与することを含む。一部の実施形態では、ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)は、その全体構造内にLu-177などの放射性同位体を担持する、ソマトスタチン受容体(sstr)に対して高親和性を有する放射標識SSAペプチドを使用する療法である。本発明では、PRRTは、PD-1および/またはPD-L1/CDLA-4阻害剤と組み合わされる。
【0027】
ルタセラ:
【0028】
SSAは、野生型内因性ソマトスタチンホルモンより長い半減期を有する、ソマトスタチン内因性ホルモンの合成版である。具体的な実施形態では、PRRTにおいて使用される好適な分子は、ルタセラ([177]ルテチウム-DOTA[O]-Tyr[3]-オクトレオテート)であり、これは、Lu-177-標識SSAのすぐに注射できる溶液である。
【0029】
ルタセラは、3つの構成要素から構成される。第1の構成要素は、SSAオクトレオテートである。この構成要素は、NET細胞を標的とするペプチドである。第2の構成要素は、DOTA、環状構造を通じて複合体中に金属(Lu-177など)を組み合わせることができる化合物であり、第3の構成要素は、Lu-177、放射性同位体である。
【0030】
ルタセラは、SSTR2受容体、これらのタイプの腫瘍上で最も一般に発現される受容体に選択的に結合することによってある特定のNETを処置する。次いでルタセラは、高エネルギー電子の局所放出を送達することによって標的化様式でNET細胞を破壊する。
ルタセラは、ガンマ線も放出するので、これは、疾患管理ツールとしても有用であり得、その理由は、この種類の放出は、SPECTカメラで捕捉することができ、よって、薬物の分布および薬物動態を判定するのに、かつまた線量推定に使用することができるためである。
【0031】
全体的に、NETの処置に対する現在の限られた選択肢および有効度、具体的には、進行性中腸NETの処置の欠如を踏まえると、ルタセラは、進行性中腸NETおよび他のソマトスタチン受容体陽性腫瘍の処置における患者転帰を潜在的に改善することによって、かなりの医療上の必要性を満たすことができる。
【0032】
ルタセラは、手術不能の、進行性、高分化型、SSTR2陽性、中腸NETの処置について第3相治験において試験されている史上初のPRRT(ペプチド受容体放射性核種療法)放射性医薬品である。
【0033】
現在の第3相治験は、Sandostatin(登録商標)LAR 60mgと比較してルタセラの効力および安全性を評価する(29.6GBqの総累積投与放射能を使用して)多施設、ランダム化、実薬対照、並行群間研究である。
【0034】
免疫腫瘍学療法
【0035】
免疫腫瘍学療法(またはI-O療法)は、疾患と闘うために体自体の免疫系を利用するがん処置の新しく出現した分野である。I-O療法の目標は、直接的に免疫系を活性化し、または腫瘍による抑制の機構を阻害することによって、免疫系の能力を回復させてがん細胞を排除することである。
【0036】
免疫系は、複数のチェックポイントまたは「免疫学的ブレーキ」に依存して、健康細胞上の免疫系の過剰活性化を回避する5、6。T細胞の活性化を防止することによって免疫系を下方調節すると、自己免疫が低減し、自己寛容が促進される。腫瘍細胞は、多くの場合、これらのチェックポイントを活用して免疫系による検出をエスケープする。CTLA-4およびPD-1は、がん療法の標的として研究されてきたチェックポイントである5、6
【0037】
プログラム細胞死タンパク質1は、PD-1としても公知であり、T細胞上で発現される細胞表面受容体である。PD-1は、多くの腫瘍細胞を含めた体内の様々な細胞上で発現されるPD-L1に結合し、これは、免疫系を逃れる腫瘍の能力に寄与するT細胞機能を阻害する5、6
【0038】
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4;CD152としても公知)は、T細胞の表面上で発現され、そこでこれは、阻害性の下流のT細胞受容体(TCR)シグナリングを誘導し、T細胞共刺激受容体、CD28の活性を相殺することによってこれらの活性化の初期段階を主に抑制する19、20。CTLA-4は、抗原提示細胞の表面上でB7リガンド(CD80およびCD86)に、より高い親和性および結合活性で結合することによって、これらについての競合においてCD28を打ち負かすと考えられている21。前臨床研究では、CTLA-4を遮断すると、T細胞増殖が1.5倍~2倍増大し、インターロイキン-2産生が6倍増大する22
【0039】
CTLA-4の生理的役割は、エフェクターT細胞(Teff)を抑制することだけでなく、免疫抑制性CD4+FoxP3+調節性T細胞(Treg)の機能を増大させることでもある。Treg特異的CTLA-4欠損は、細胞培養中のTregの抑制能力を減少させ、樹状細胞(DC)上のCD80およびCD86発現の上方調節をもたらすことを
示した23。CTLA-4遮断は、T細胞活性化を促進し、かつ前臨床モデルでは、腫瘍微小環境内のFcγ受容体発現マクロファージの存在に依存するプロセスにおいて腫瘍内Tregを枯渇させることが示された24、25
【0040】
2011年3月25日に、米国食品医薬品局は、切除不能または転移性黒色腫の処置についてイピリムマブ注射(YERVOY、Bristol-Myers Squibb Company)を承認した。承認は、黒色腫の少なくとも1つの事前の全身的処置を受けたことがある切除不能または転移性黒色腫を有する患者におけるランダム化(3:1:1)、二重盲検、ダブルダミー臨床治験(MDX010-20)に基づいた。全生存期間(OS)が治験の主要エンドポイントであった。無増悪生存期間および最良全奏功率も査定した。
【0041】
イピリムマブは、2011年7月13日に欧州連合(EU)において製造承認を受け、効能「事前の療法を受けた成人における進行(切除不能または転移性)黒色腫の処置」について現在承認されている。委員会規制(EC)第1234/2008の第16条に従って、Bristol-Myers Squibb Pharma EEIGは、効能の拡張を含めたバリエーションについて願書を2012年8月2日に、欧州医薬品庁に提出した。2013年10月に、MAHは、進行(切除不能または転移性)黒色腫を有する以前に処置されていない成人患者の処置についてYervoyの効能の拡張を提案した。
【0042】
イピリムマブは、転移性CRPCおよび黒色腫を有する患者においてRTと組み合わせて評価された。管理できる耐容性を有する有望な活性が、抗アンドロゲン療法後に進行したCRPCを有する患者における第I/II相治験において観察されたが26、第III相治験からの結果は、ドセタキセル後のCRPCにおいてRTにイピリムマブを加えても、OSにおいて有意な改善を示さなかった。サブグループ分析は、疾患があまり進行していない患者について利益を確かに示唆した27。イタリア拡大アクセスプログラムの進行中にイピリムマブ後にRTを受けた進行黒色腫を有する21人の患者からの臨床データの分析により、イピリムマブ処置後のRTは、その効果をさらに増強し得ることが示された28。RTに対する局所的応答は、13人の患者(62%)において検出され、一方、8人の患者(38%)は、いずれの局所的退縮も示さなかった。21人すべての患者のOSの中央値は、13カ月(範囲6~26)であった。局所的応答を有する13人の患者のうち11人(85%)が、アブスコパル効果を示し、RTに対する局所的応答がアブスコパル応答および転帰について予測的であり得ることを示唆した。アブスコパル応答を有する、および有さない患者のOSの中央値はそれぞれ、22.4カ月(範囲2.5~50.3)および8.3カ月(範囲7.6~9.0)であった。現在、15を超える臨床治験が、イピリムマブ+RTを評価するのに単独で進行中である。
【0043】
PD-1およびPD-L1阻害剤はともに、PD-1とPD-L1との相互作用を標的とする。PD-L1とPD-1との相互作用は、免疫応答を減衰させる。PD-1またはPDL-1のようなチェックポイントを阻害すると、免疫系の「ブレーキが解放され」、抗腫瘍T細胞応答を増強することができる。このクラスの療法は、がんにおいて抗力を示した。以前に試験された他の免疫療法と比較して、PD-1/PD-L1阻害剤は、単剤療法として使用されるとき、より広い範囲の腫瘍型にわたって、かつより低い割合の高グレード毒性、主に免疫介在性副作用を伴って、はるかにより高い割合の患者において腫瘍を収縮させるようである。化学療法および「標的」療法を含めた標準療法と比較して、PD-1/PD-L1阻害剤を含めた免疫療法は、応答のより長い継続時間ももたらすようである。
【0044】
PD-1受容体を標的とするニボルマブ(オプジーボ、Bristol-Myers Squibb)は、転移性黒色腫を処置するのに(セカンドライン)2014年7月に日
本で、2014年12月にUS FDAによって承認された。2015年4月に、これは、転移性黒色腫の単剤療法としての承認についてEMAにおいて肯定的な意見を得た。これは、非小細胞肺がん(NSCLC、扁平上皮サードライン)およびホジキンリンパ腫(サードライン)において現在調査されている。
【0045】
一部の腫瘍型は、前立腺、結腸直腸、および膵がんを含めて、早期臨床治験において抗PD-1/PD-L1単剤療法に対してほとんど応答を示さなかった。このような疾患について、かつより免疫応答性の腫瘍型の群内の非応答者について、併用療法は、免疫応答を誘発するのに役立ち得る。臨床治験は、神経内分泌腫瘍についてこれまで提案されていない。
【0046】
PD-L1およびPD-1タンパク質発現を、小細胞癌の94の臨床症例において分析した。小細胞癌のどれも、腫瘍細胞内でPD-L1タンパク質発現を示さなかった。PD-L1およびPD-1発現は、間質内で認められた。免疫組織化学検査を使用して、症例の18.5%が腫瘍浸潤性マクロファージ内でPD-L1発現を示し、48%がPD-1陽性リンパ球を示した。RNA-seqは、37.2%において中等度のPD-L1遺伝子発現を示した。PD-L1は、マクロファージおよびT細胞マーカーと相関した。第2のPD-1リガンドPD-L2は、27.9%において発現され、同様の相関を示した。よって、PD-1/PD-L1経路は、小細胞癌の一部において活性化されると思われる。Charite病院(Berlin)およびBadberka中央病院(ドイツ)からの他の経験も、高分化のものと比較して、低分化NETにおいてより高いCD3陽性リンパ球の存在およびPD-L1発現を示唆する。したがって、著者らは、PD-1/PD-L1は、特に低分化NETにおいて、免疫療法の有望な標的であり得ることを示して結論づけた。
【0047】
それでもやはり、PD-L1/PD-L2発現を有する患者は、抗PD-1処置に応答し得る。しかし、腫瘍によるPD-L1発現は、PD-1/PD-L1阻害剤が単剤療法として使用される場合、これらに対する応答の完全な予測因子ではない。実際に、PD-L1陰性腫瘍は、より低いパーセンテージで依然として応答し得る一方、PD-L1陽性腫瘍のすべてが応答するわけではないが、これらは、応答する可能性が高い。
【0048】
小細胞肺がんおよび肺外小細胞癌は、最も攻撃的なタイプの神経内分泌癌(G3)であり、低分化神経内分泌癌(PDNEC)とも呼ばれる。他の臓器に起源があるG1およびG2などの神経内分泌腫瘍のより無痛性形態(高または中分化腫瘍とも呼ばれる)におけるPD-1/PD-L1経路についての研究は、行われていない。
【0049】
Antoniaら[AdRef.11]は、ニボルマブ+イピリムマブの組合せで処置された49人の患者について、ASCO 2014において予備データを報告した。患者は、4サイクルにわたって、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg、またはニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgのいずれか、その後、ニボルマブ単独を受けた。処置関連、グレード3~4のAEが患者の49%において発生し、患者の35%は、処置関連AEに起因して治験薬を中止した。最も一般的なグレード3~4処置関連AEは、下痢症(n=5、10%)、ALT上昇(n=4、8%)、AST上昇(n=4、8%)、大腸炎(n=4、8%)、リパーゼ上昇(n=4、8%)、疲労(n=3、6%)、および間質性肺炎(n=3、6%)を含んでいた。薬物関連AEに起因する中止率は、ニボルマブ-1-mg/kg/イピリムマブ3-mg/kg-非扁平上皮アームにおいて最高であり、ほとんどの中止は、処置の同時フェーズ中に行われた。奏功率は、11%~33%の範囲であり、一部の患者は、応答の継続期間が延長された。
【0050】
Antoniaら[AdRef.11]は、トレメリムマブ+MEDI4736の組合
せについて、ASCO 2015で報告した。用量漸増相においてMEDI4736+トレメリムマブ併用療法で処置された102人の患者のうち、40%がグレード3またはそれ超の処置関連AEを有し、最も一般的な処置関連グレード3~4事象は、大腸炎(n=9、9%)、下痢症(n=8、8%)、間質性肺炎(n=4、4%)、AST増加(n=4、4%)、およびALT増加(n=3、3%)であった。観察された奏功率は、すべてのコホートにわたって27%であり、41%の割合が、疾患制御を呈した(少なくとも16週間のCR、PR、およびSD)28、29
【0051】
最近の研究により、放射線療法を免疫療法の強力なアジュバントとして適用することができ、実際に、照射された腫瘍のin situワクチンへの変換に寄与し、腫瘍細胞に対する特異免疫をもたらし得ることが示唆されている9、10
【0052】
しかし、外部放射線療法による抗腫瘍免疫の誘導を最良に実証する臨床観察は、アブスコパル効果(同時放射線療法で処置された患者における非照射病変部の退縮を指す)である。これは、長年にわたって複数の腫瘍型において報告されているが、アブスコパル効果は、低頻度である9、。これらの珍しい出来事は、放射線療法による順調な免疫化に対する既存の障壁を反映する。
【0053】
照射の免疫原性促進効果(proimmunogenic effect)を利用するのに使用される最適な照射レジメンは、まだ確定していない。外部照射およびチェックポイント阻害剤療法の相乗効果は、様々な研究において試験されている。しかし、分割および線量は、照射およびチェックポイント阻害剤処置の相乗効果を誘導するのに主要な役割を果たすと思われる11
【0054】
分割されても、抗腫瘍免疫の増大における外部放射線療法の効果は、一時的である。
【0055】
この欠点は、意外にも、ペプチド受容体放射性核種療法を使用することによって解決することができた。
【0056】
よって、本発明は、個々の薬物と比較して毒性プロファイルを増大させることなく、がん細胞増殖を相乗的に低下させることができる、PRRTおよびI-Oの新規組合せに関する。
【0057】
PRRTは、イオン化放射線の送達によって腫瘍細胞周期を混乱させるその能力に加えて抗腫瘍免疫応答を誘導することができる。例えば、NETのヒト異種移植腫瘍モデルにおいてルタセラPRRTで処置すると、CD86+ APC浸潤が増大し、これらの細胞上のCD86の発現が増大することが観察された12
【0058】
受容体が媒介する作用機序に起因して、PRRT剤は、連続の安定な内部放射線療法を可能にし、増大した、一定の、かつ永続性のある抗原曝露をもたらす。
【0059】
この脈絡において、放射線療法の免疫原性促進効果は、PRRTを使用して、腫瘍が確立すると適所に存在する免疫抑制ネットワークを補正することによって増強することができる。抗PD-1/PD-L1/CTLA-4などの最新のI-O剤は、がんに対し確立された寛容性を打ち破り、有効な腫瘍特異的免疫応答を取り戻すという課題を徐々に引き受けている。提案された組合せは、新規の機構:代謝経路(腫瘍によるソマトスタチン受容体の過剰発現)を使用し、腫瘍抗原を放出する腫瘍の損傷を創製し、それ自体を免疫系により見えるようにする細胞への内部照射を介して細胞死を誘導する。免疫チェックポイント遮断(例えば、PD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害)などの免疫療法は、相乗的な予想外の形で、免疫抗腫瘍T細胞応答を改善し、照射の効果を増強するはずで
ある。
【0060】
SSAアゴニストとともにPRRTを使用すると、健康組織を保存しながら療法全体の間のこれらの認識された安定な内部移行に基づく永続性のある応答にとってさらに有利となり得る。この目的に関して、腫瘍細胞によって内部移行される性質を有する特異的なPRRTの使用は、好適であり得る(例えば、ルタセラ)。
【0061】
リンパ球毒性は、PRRT後に一般に観察される13、14。この毒性が、医師および腫瘍学者がPRRTおよびI-Oの組合せを提唱するのを妨げる主な要因である。例えば、Denoyerら(2015年)は、Lu-DOTATATEが末梢血リンパ球に対して毒性を有することに言及した。TおよびBリンパ球がともに、がんに対する免疫応答において非常に重要な役割を有することが一般的に承認されている(Linnebacherら)。しかし、本発明者らは、ルタセラの毒性がB-リンパ球により特異的であることも示した16。この知見は、重要であり、その理由は、Tリンパ球が、最も豊富な腫瘍浸潤物であり、したがってがんとの闘いにおいて最も関係付けられるためである。
【0062】
PRRT後のリンパ球減少症は、免疫学的応答を低減する場合があり、Lu17716よりむしろY90放射性核種で重症である。
【0063】
Milan31のグループ出身のBodeiら(Bodei Lら、2014年)は、177LuベースPRRT、90YベースPRRT、または組み合わせた2種の化合物を用いて1997年~2013年に処置された807人の患者におけるPRRT後の毒性の後ろ向き分析を示した。重度の血液学的毒性グレード3~4が、90Y PRRTで処置された症例の14.1%および177Luで処置された症例の3.1%で観察され、Y90と比較して、Lu-DOTATATE(ルタセラ)を用いたPRRTのより好都合な血液学的安全性プロファイルを示した。
【0064】
最後に、2つの処置(PRRTおよびI-O)の毒性プロファイルは異なり、したがってこれらは、患者に対して副作用の有意な増大を引き起こすことは予期されない。
【0065】
例えば、ルタセラを投与すると、T細胞ではなくB細胞に本質的に影響する血液毒性をもたらし得るので、ルタセラは、T細胞に基づく抗PD1/PDL1/CTLA-4処置の免疫応答に影響しないはずである。
上記を考慮すると、ルタセラを、PD-1/PD-L1/CTLA-4経路を阻害する阻害剤と組み合わせると、伝統的に処置するのが困難であったNETの有効で新しい処置をもたらすことになることが予想される。
【0066】
この複合効果は、ソマトスタチン受容体を過剰発現するあらゆるがんにおいて起こるはずである。この組合せは、グレードI~II NETに対するPRRT(例えば、ルタセラ)の効果(ルタセラが適切と見なされる効能)を延長し、かつグレードIII NETなどの第I~II相臨床研究または概念実証研究においてルタセラに対して有意な応答を示さなかったがんにも有意な治療効果を可能にするはずである。小細胞肺がんおよび肺外小細胞癌は、神経内分泌癌の最も攻撃的なタイプであり、予想外の結果を伴ってこの組合せから恩恵を受けることができる。
【0067】
この理論を支持して、PRRTの他の種類の作用物質、主に化学療法との組合せを使用したいくつかの研究が、非常に良好な結果を示した。
【0068】
sstr2を過剰発現する一部の神経内分泌腫瘍組織上のsstr2およびPD-1/PD-L1、ならびに/またはPD-L2受容体の同時発現が、免疫組織化学検査によっ
て査定された。小細胞肺がんおよび結腸直腸がん(ともに神経内分泌)からのヒト腫瘍組織試料がこの評価に使用された。sstr2発現とCTLA-4との間の関係は、あまり報告されていない。
【0069】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片(厚さ5~6μm)を使用した。切片を乾燥させ、脱パラフィンした(de-paraffinated)。免疫組織化学(IHC)染色を、Thermo Fisher製の抗PD-1(1:100に希釈した)、抗PD-L1(1:50に希釈した)、および抗SSTR2(1:100に希釈した)一次抗体を使用して実施した。ImmunoCruz LSAB Staining System製の抗ウサギおよび抗マウス二次抗体を使用した。IHC染色の標準手順を続け、一次抗体のインキュベーション時間は、1時間45分であった。二次抗体について、インキュベーション時間は、30分であった。IHC手順の最後に、組織を脱水し、画像を、Leica DFC420Cを備えたOlympus BX60およびLeica
LASソフトウェアを用いて取得した。
【0070】
IHC染色の予備的結果は、両方の組織型におけるPD-1およびsstr2受容体の発現を示す。分析した組織検体では、PD-L1は、より低い程度で発現されるようであるが、さらなる分析が進行中である。
【0071】
他のsstr2発現腫瘍由来の組織試料に対する追加の免疫組織化学分析およびmRNAアッセイが、本発明の原理をさらに支持するために進行中である。さらに、追加の探索的前臨床試験を、神経内分泌腫瘍の適当なラット膵臓モデルにおいて、177Lu-DOTATATEおよび抗PD1(または抗PDL-1およびCTLA-4)抗体との併用療法の効力を査定するために計画している。
【0072】
処置の方法
【0073】
本発明は、神経内分泌腫瘍を処置する方法を提供する。神経内分泌腫瘍(NET)は、内分泌(ホルモン)および神経系の細胞から生じる腫瘍である。神経内分泌腫瘍(NET)には、広範囲の形態学的、機能的、および行動的特性を有する一群の腫瘍が含まれる。これらの腫瘍は一般に、ゆっくりと増殖するが、主に肝臓に蔓延する潜在性を有し、これらが実際に蔓延したとき、これらは、生命を危うくし、現在のモダリティーで処置することが困難であり得る。
【0074】
神経内分泌腫瘍は、これらの起源の部位によって伝統的に分類されてきた。ある特定の実施形態では、NETは、膵神経内分泌腫瘍(pNET)ならびに肺、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、および直腸のカルチノイド腫瘍からなる群から選択される。さらなる実施形態では、NETは、卵巣、胸腺、甲状腺髄質、副腎(例えば、褐色細胞腫)、および傍神経節(傍神経節腫)の神経内分泌腫瘍からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって処置されるNETは、小細胞肺がん(SCLC)である。ある特定の代替の実施形態では、NETは、非小細胞肺がんである。ある特定の実施形態では、NETは、膵神経内分泌腫瘍(PET)またはカルチノイド腫瘍である。ある特定の実施形態では、NETは、非小細胞肺がん、膵がん、または甲状腺がんである。
【0075】
神経内分泌腫瘍は、グレードおよび分化によっても分類される。例えば、Phanら、Pancreas、39巻(6号):784~798頁(2012年)15を参照。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、高分化低グレード腫瘍である。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、中分化中グレード腫瘍である。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、低分化高グレード腫瘍である。一実施形態では、低グレード腫瘍は、
10HPF(高倍率視野)当たり2未満の有糸分裂および壊死なしによって特徴付けられる。一実施形態では、中グレード腫瘍は、10HPF(高倍率視野)当たり2~10有糸分裂または壊死の病巣によって特徴付けられる。一実施形態では、高グレード腫瘍は、10HPF(高倍率視野)当たり10超の有糸分裂によって特徴付けられる。
【0076】
他の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、WHO分類2000および2010に基づいて、神経内分泌腫瘍グレード1-グレード2(または高分化内分泌腫瘍もしくは癌(WDET/WDEC))、神経内分泌癌グレード3または低分化内分泌癌(carinoma)/小細胞癌(PDEC)、混合型アデノ神経内分泌癌(MANEC)、ならびに過形成性および新生物発生前病変部に分割することができる。ENETS/WHO/AJCC分類システムによれば、腫瘍G1は、Ki67指数≦2%またはMI(有糸分裂カウント)<2を有するものであり、腫瘍G2は、3~20%以内のKi67指数またはMI=2~20を有するものであり、腫瘍G3は、Ki67指数≧20%またはMI>20を有するものである。
【0077】
神経内分泌腫瘍は、機能性および非機能性NETとしても分類される。NETは、特異的な臨床的症候群が腫瘍細胞によるホルモンの過剰産生に起因して誘導されるとき、機能性と見なされる。機能性NETの例としては、それだけに限らないが、カルチノイド症候群をもたらし得るカルチノイド腫瘍、ならびに機能性pNET、例えば、膵島細胞腺腫、ガストリノーマ、血管作動性腸管ペプチド(VIP)腫瘍、グルカゴノーマ、およびソマトスタチノーマが挙げられる。
【0078】
非機能性NETは、腫瘍細胞によるホルモンの過剰産生に起因する臨床的症候群と関連しないが、依然として腫瘍またはその転移の存在に関係した症状(例えば、腹痛または膨満)を生じさせ得る。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、機能性NETである。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、非機能性NETである。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、機能性カルチノイド腫瘍、膵島細胞腺腫、ガストリノーマ、血管作用性腸管ペプチド(VIP)腫瘍、グルカゴノーマ、セロトニノーマ、ヒスタミン腫瘍、ACTH腫、褐色細胞腫、およびソマトスタチノーマからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、NSCLCである。
【0079】
ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、原発性腫瘍である。代替の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、転移性腫瘍である。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、原発臓器の壁の外側に蔓延していない。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、原発臓器の壁を通じて、かつ周囲組織、例えば、脂肪、筋肉、またはリンパ節などに蔓延している。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、原発臓器から離れた組織または臓器、例えば、肝臓、骨、または肺に蔓延している。
【0080】
具体的な実施形態では、本発明の方法は、処置に難治性である神経内分泌がんまたは腫瘍の処置において特に有用となることが企図されている。非限定的な例として、がんまたは腫瘍は、化学療法抵抗性(すなわち、化学療法の1つまたは複数の形態に抵抗性)であり得る。ある特定の実施形態では、がんまたは腫瘍は、ソマトスタチン類似体を用いた処置に抵抗性である。ある特定の実施形態では、がんまたは腫瘍は、キナーゼ阻害剤を用いた処置に抵抗性である。さらに他の実施形態では、がんまたは腫瘍は、PD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤を用いた処置に抵抗性である。
【0081】
ある特定の実施形態では、神経内分泌がんまたは腫瘍は、肝臓に転移している。非限定的な例として、神経内分泌がんまたは腫瘍は、肝臓に転移したカルチノイドまたは膵神経内分泌腫瘍である。
【0082】
一態様では、本発明は、神経内分泌腫瘍の処置におけるPPRTのI-O療法との組合せの使用を提供する。この処置の組合せは、神経内分泌腫瘍成長の阻害、神経内分泌腫瘍体積の低減、および/または神経内分泌腫瘍の腫瘍形成能の低減に有用である。使用の方法は、in vitro、ex vivo、またはin vivo方法であり得る。ある特定の実施形態では、PPRTは、ルタセラである。PRRTは、標的放射性核種療法の1種、すなわち、例えば、ある特定の細胞を捜し出すように設計された放射標識分子の投与によって、治療線量の放射線を悪性腫瘍に送達する処置の一形態である。ある特定の実施形態では、PPRTは、ルタセラである。PRRTに使用され得る他の作用物質の非網羅的リストとしては、それだけに限らないが、111In-DTPA-オクトレオチド、90Y-DOTATOC、90Y-DOTATATE、177Lu-DOTATOC、90Y-ランレオチド、177Lu-DOTACIN、111In-DOTA-BASS、177Lu-DOTA-JR11、ならびに非密封放射標識源、例えば(それだけに限らないが)、131ヨウ素、153サマリウム、223ラジウム、225アクチニウム/213ビスマス、211アスタチン、166ホルミウム、186レニウム、188レニウム、67銅、149プロメチウム、199金、105ロジウム、77臭素、111インジウム、および123/125ヨウ素で放射標識されたSSAペプチドを使用する任意の治療剤などが挙げられる。
【0083】
ルタセラは、当業者に周知の方法によって生成することができる。例示的なこのような方法としては、US5,804,157またはUS5,830,431に記載されたものが挙げられる。
【0084】
本発明は、神経内分泌腫瘍を処置する方法であって、対象(例えば、処置を必要とする対象)にPD-1/PD-L1/CTAL-4経路の阻害剤と組み合わせて治療有効量のPPRTを投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、膵神経内分泌腫瘍である。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、カルチノイドである。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、肺の神経内分泌腫瘍である。非限定的な例として、肺における神経内分泌腫瘍は、SCLCであり得る。本発明は、細胞表面内でSSTRを過剰発現する神経内分泌腫瘍、例えば(それだけに限らないが)、下垂体腺腫、胃腸および膵臓内分泌癌(GEPNET腫瘍)、肺NET、傍神経節腫、褐色細胞腫、小細胞肺がん、甲状腺髄様癌、乳がん、前立腺がん、ならびに悪性リンパ腫などの処置に特に有用である。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、PPRTは、ルタセラである。
【0085】
本発明は、対象にPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤と組み合わせて治療有効量のPPRTを使用して神経内分泌腫瘍成長を阻害するための方法をさらに提供する。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍成長を阻害する方法は、in vitroで対象に腫瘍細胞を治療有効量のPPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤の一方または両方と接触させることを含む。例えば、不死化神経内分泌腫瘍細胞株が、腫瘍成長を阻害するためにPPRTが添加される培地中で培養される。一部の実施形態では、神経内分泌腫瘍細胞は、患者試料、例えば、組織生検、胸水、または血液試料などから単離され、ならびに腫瘍成長を阻害するためにPPRTおよび/またはPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤が添加される培地中で培養される。
【0086】
一部の実施形態では、神経内分泌腫瘍成長を阻害する方法は、in vivoで神経内分泌腫瘍または腫瘍細胞を本発明の併用療法と接触させることを含む。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍または腫瘍細胞をPPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤と接触させることは、動物モデルにおいて実施される。例えば、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤は、神経内分泌腫瘍成長を阻害するために、免疫不全マウス(例えば、NOD/SCIDマウス)内で成長させられ
た神経内分泌腫瘍異種移植片に投与することができる。一部の実施形態では、神経内分泌腫瘍がん幹細胞が、患者試料、例えば、組織生検、胸水、または血液試料などから単離され、免疫不全マウス内に注射され、次いでそれは、神経内分泌腫瘍細胞成長を阻害するために、本発明の併用療法(すなわち、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤)を投与される。一部の実施形態では、PPRTおよび/またはPD-1/PD-L1/CTLA-4経路阻害剤は、神経内分泌腫瘍成長を防止するために動物内に腫瘍形成細胞を導入すると同時に、または、導入後まもなく投与される。一部の実施形態では、PPRTおよび/またはPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤は、腫瘍形成細胞が指定サイズまで増殖した後、治療剤として投与される。
【0087】
ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍成長を阻害する方法は、対象に治療有効量のPPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4の阻害剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、神経内分泌腫瘍を有し、または腫瘍を除去してもらっている。
【0088】
ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、膵神経内分泌腫瘍である。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、カルチノイドである。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、肺の神経内分泌腫瘍である。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、NSCLCである。
【0089】
さらに、本発明は、対象における神経内分泌腫瘍の腫瘍形成能を低減する方法であって、対象に治療有効量のPPRTおよびPD-1/PD-L1の阻害剤を投与することを含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍は、がん幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、神経内分泌腫瘍内のがん幹細胞の頻度は、作用物質の投与によって低減される。ある特定の実施形態では、PPRTは、ルタセラである。
【0090】
よって、本発明は、神経内分泌腫瘍内のがん幹細胞の頻度を低減する方法であって、腫瘍を有効量のPPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4経路の阻害剤と接触させることを含む方法も提供する。
【0091】
本明細書で述べたように、PPRTは、PD-1/PD-L1経路の阻害剤と組み合わせて投与される。このような方法では、PPRTは、PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤の投与の前、それと同時的に、かつ/またはそれに引き続いて投与することができる。PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤を含む医薬組成物も提供されている。PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤を用いた併用処置は、NETの処置に対して相乗効果を有することが期待される。
【0092】
PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤の組合せは、任意の順序で、または同時的に投与することができることが察知されるであろう。選択された実施形態では、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4は、他の抗がん剤を用いた処置を以前に受けたことがある患者に投与される。ある特定の他の実施形態では、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤は、実質的に同時にまたは同時的に投与される。例えば、対象は、PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤を用いた処置の過程を受けている間にPPRTを与えられ得る。さらに、対象は、他の形態のがん療法、例えば、化学療法を既に受けており、または同時的に受けている場合があることが企図されている。ある特定の実施形態では、PPRTは、PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤を用いた処置の1年以内に投与される。ある特定の代替の実施形態では、PPRTは、PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤、および/または追加の抗がん剤を用いた任意の処置の10、8、6、4、または2カ月以内に投与される。ある特定の他の実施形態では、PPRTは、PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤および
/または追加の抗がん剤を用いた任意の処置の4、3、2、または1週間以内に投与される。一部の実施形態では、PPRTは、PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤および/または追加の抗がん剤を用いた任意の処置の5、4、3、2、または1日以内に投与される。PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤ならびに/または追加の抗がん剤もしくは処置は、数時間または数分のうちに(すなわち、実質的に同時に)対象に投与され得ることがさらに察知されることになる。
【0093】
PPRTおよび少なくとも1種のPD-1/PD-L1阻害剤の組合せの投与に加えて、追加の抗がん剤も投与することが有用となり得る。抗がん剤の有用なクラスとしては、例えば、抗チューブリン剤、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、白金錯体、例えば、cis-プラチン、一(白金)、二(白金)、および三核白金錯体、ならびにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、葉酸代謝拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソ尿素、プラチノール、パフォーミング化合物(performing compound)、プリン代謝拮抗薬、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、代謝拮抗薬、抗有糸分裂薬、トポイソメラーゼ阻害剤、または血管新生阻害剤がある。
【0094】
PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害と組み合わせて投与され得る抗がん剤には、化学療法剤が含まれる。よって、一部の実施形態では、方法または処置は、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤ならびに化学療法剤または複数の異なる化学療法剤のカクテルの併用投与を伴う。PPRTを用いた処置は、これらの他の療法の投与の前に、それと同時的に、またはそれに引き続いて行うことができる。本発明が企図する化学療法としては、当技術分野で公知であり、市販されている化学物質または薬物、例えば、ゲムシタビン、イリノテカン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、TAXOL、メトトレキセート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、およびカルボプラチンが挙げられる。併用投与は、単一医薬製剤での、もしくは別個の製剤を使用する共投与、またはいずれかの順序での、しかし一般に、すべての活性剤が同時にその生物活性を発揮できる時間内での連続投与を含むことができる。このような化学療法剤の調製および投薬スケジュールは、製造者の指示に従って、または熟練した専門家が経験的に決定した通りに使用することができる。
【0095】
本発明において有用な化学療法剤として、それだけに限らないが、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)(CYTOXAN)など;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなど;アジリジン、例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、およびウレドパなど;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamime)を含めたエチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamine)、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなど;ニトロソ尿素(nitrosureas)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなど;抗生物質、例えば、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、ク
ロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾトシン(streptozocin)、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなど;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキセートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)など;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなど;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなど;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど;抗副腎剤(anti-adrenal)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメト;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK;ラゾキサン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(arabinoside)(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、およびドキセタキセル(TAXOTERE、Rhone-Poulenc Rorer、Antony、フランス);クロランブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチンなど;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(OMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も挙げられる。化学療法剤として、腫瘍上でホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(ファレストン)を含めた抗エストロゲン;ならびに抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、およびゴセレリンなど;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も挙げられる。
【0096】
ある特定の実施形態では、治療剤は、キナーゼ阻害剤である。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、多標的受容体チロシンキナーゼ阻害剤である。キナーゼ阻害剤としては、それだけに限らないが、スニチニブ(Pfizerがスーテントとして販売している)、パゾパニブ、クリゾチニブ、ダサチニブが挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、スニチニブである。
【0097】
ある特定の実施形態では、治療剤は、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)の阻害剤である。mTOR阻害剤としては、それだけに限らないが、テムシロリムス、シロリム
ス、デフォロリムス、およびエベロリムスが挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、エベロリムスである。
【0098】
ある特定の実施形態では、治療剤は、ソマトスタチン類似体である。ソマトスタチン類似体は、ソマトスタチンの特異的高親和性膜受容体との相互作用を通じて作用する。ソマトスタチン類似体としては、それだけに限らないが、オクトレオチド、ソマチュリン、およびRC160(オクタスタチン)が挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、オクトレオチドである。
【0099】
ある特定の実施形態では、化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ酵素(例えば、トポイソメラーゼIまたはII)の作用を妨げる化学療法剤である。トポイソメラーゼ阻害剤としては、それだけに限らないが、ドキソルビシンHCl、ダウノルビシンクエン酸塩、ミトキサントロンHCl、アクチノマイシン0、エトポシド、トポテカンHCl、テニポシド(VM-26)、およびイリノテカンが挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、イリノテカンである。
【0100】
ある特定の実施形態では、化学療法剤は、アルキル化剤である。ある特定の実施形態では、化学療法剤は、テモゾロミドである。
【0101】
ある特定の実施形態では、化学療法剤は、代謝拮抗薬である。代謝拮抗薬は、構造が、通常の生化学反応に要求される代謝産物と同様であるが、細胞分裂などの細胞の1つまたは複数の通常の機能を妨げるのに十分なほどには異なる化学物質である。代謝拮抗薬としては、それだけに限らないが、ゲムシタビン、フルオロウラシル、カペシタビン、メトトレキセートナトリウム、ラリトレキセド、ペメトレキセド、テガフール、シトシンアラビノシド、THIOGUANINE(GlaxoSmithKline)、5-アザシチジン、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン、フルダラビンリン酸エステル、およびクラドリビン、ならびにこれらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、ゲムシタビンである。ある特定の実施形態では、処置される腫瘍は、膵神経内分泌腫瘍であり、第2の抗がん剤は、代謝拮抗薬(例えば、ゲムシタビン)である。
【0102】
ある特定の実施形態では、化学療法剤は、それだけに限らないが、チューブリンに結合する作用物質を含めた抗有糸分裂剤である。非限定的な例として、作用物質は、タキサンを含む。ある特定の実施形態では、作用物質は、パクリタキセルもしくはドセタキセル、またはパクリタキセルもしくはドセタキセルの薬学的に許容される塩、酸、もしくは誘導体を含む。ある特定の実施形態では、作用物質は、パクリタキセル(TAXOL)、ドセタキセル(TAXOTERE)、アルブミン結合パクリタキセル(例えば、ABRAXANE)、DHA-パクリタキセル、またはPG-パクリタキセルである。ある特定の代替の実施形態では、抗有糸分裂剤は、ビンカアルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、もしくはビンデシンなど、またはその薬学的に許容される塩、酸、もしくは誘導体を含む。一部の実施形態では、抗有糸分裂剤は、Eg5キネシンの阻害剤、または有糸分裂キナーゼの阻害剤、例えば、オーロラAもしくはPlk1などである。
【0103】
ある特定の実施形態では、処置は、本明細書に記載のPPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤、ならびに放射線療法の併用投与を伴う。PPRTを用いた処置は、放射線療法の投与の前に、それと同時的に、またはそれに引き続いて行うことができる。このような放射線療法の任意の投与スケジュールは、熟練した専門家が決定した通りに使用することができる。
【0104】
一部の実施形態では、第2の抗がん剤は、抗体を含む。よって、処置は、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤と、それだけに限らないが、EGFR、ErbB2、HER2、DLL4、Notch、および/またはVEGFに結合する抗体を含めた、腫瘍関連抗原に対する抗体との併用投与を伴うことができる。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、血管新生阻害剤である抗体(例えば、抗VEGF抗体)である。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、Notchシグナリングの阻害剤である。ある特定の実施形態では、第2の抗がん剤は、AVASTIN(ベバシズマブ)、ハーセプチン(トラスツズマブ)、VECTIBIX(パニツムマブ)、またはアービタックス(セツキシマブ)である。併用投与は、単一医薬製剤での、もしくは別個の製剤を使用する共投与、またはいずれかの順序での、しかし一般に、すべての活性剤が同時にその生物活性を発揮できる時間内での連続投与を含むことができる。
【0105】
さらに、処置は、1種または複数のサイトカイン(例えば、リンホカイン(Iymphokines)、インターロイキン、腫瘍壊死因子、および/または増殖因子)の投与を含むことができ、あるいはがん細胞の外科的除去もしくは細胞減少処置、例えば、(化学放射線)塞栓形成、高周波アブレーション、および高強度集束超音波(HIFU)アブレーションなど、または治療医師が必要と見なす任意の他の療法を伴うことができる。
【0106】
疾患を処置するために、本明細書に記載の適切な投与量は、処置される神経内分泌腫瘍のタイプ、神経内分泌腫瘍の重症度および過程、神経内分泌腫瘍の応答性、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4が治療または予防目的で投与されるかどうか、以前の療法、患者の病歴などに、すべて治療医師の自由裁量の下で依存する。PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤は、一度に、あるいは数日~数カ月、または治癒がもたらされ、もしくは神経内分泌腫瘍の縮小(例えば、腫瘍サイズの低減)が実現されるまで続く一連の処置にわたって投与することができる。最適な投薬スケジュールは、患者の体内の薬物蓄積の測定から計算することができ、個々の投薬レジメンの相対的効能に応じて変動することになる。
【0107】
投与医師は、最適投与量、投薬方法、および繰り返し頻度(repetition rates)を容易に判定することができる。ある特定の実施形態では、投与量は、体重1kg当たり0.01μg~100mgであり、毎日、毎週、毎月、または毎年、1回または複数回与えることができる。ある特定の実施形態では、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤は、2週間に1回または3週間に1回与えられる。ある特定の実施形態では、PPRTおよびPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬剤の投与量は、体重1kg当たり約0.1mg~約20mgである。処置医師は、体液または組織内の薬物の測定滞留時間および濃度に基づいて投薬の繰り返し速度を推定することができる。
【0108】
通常、ルタセラを含むPRRTは、サイクルで与えられ、各サイクルは、静脈内に投与される3.7~7.4GBqを含む。典型的には、およそ30GBqの治療的累積活性(線量)を、4~6サイクルで容易に分けることができ、それぞれは、5~12週間毎に投与される。6カ月またはさらには数年という長さのより長いサイクル間間隔が使用される得ることが理解されるべきである。さらに、患者は、処置の第1のセットから数カ月または数年後に4~6サイクルの複数のラウンドで処置されてもよい。処置の第2および後続のセットは、同じ活性(線量)を使用してもよく、またはセンターならびに各患者の特性および治療的必要性の経験に応じて異なる活性(線量)を使用してもよい。
【0109】
抗PD-1ニボルマブは、典型的には、2年という最初の期間にわたって、2~3週間毎に約3mg/kgの用量で静脈内に投与される。その後、最初の処置後12週間毎の維
持療法が頻繁に使用される。これらの投薬レジメンは、処置に対する患者の応答に従って、かつ処置臨床医の自由裁量で変動することになることが理解されるべきである。切除不能または転移性黒色腫の処置のためのイピリムマブの推奨用量は、合計4回の用量について、3週間毎に90分にわたって静脈内投与される3mg/kgである。
【0110】
PPRTならびにPD-1/PD-L1/CTLA-4阻害剤(例えば、抗体および可溶性受容体)は、当技術分野で公知の任意の適当な方法によって製剤化して医薬組成物にすることができる。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容されるビヒクルを含む。医薬組成物には、ヒト患者における神経内分泌腫瘍成長の阻害および神経内分泌腫瘍の処置における使用が見出される。
【実施例0111】
実施例1:ルタセラは、7.4GBqの固定線量(12週間毎)で、患者によって耐容される累積線量(最大29.6GBq)まで投与される。ニボルマブは、有効なPD-1/PD-L1遮断を実現する目的で、しかしまた、ルタセラのリンパ球減少症誘導効果に関係した予想リンパ球最下点(anticipated lymphocyte nadir)とオーバーラップしないことを必要としつつ、3mg/kgの用量で各ルタセラ処置について2回:ルタセラの投与の7日前に一方の投与(d-7)および7日後に他方の投与(d+7)を投与される。
研究により、アミノ酸の静脈内投与は、腎臓保護効果を有することが示された。アミノ酸(リシンおよびアルギニンを含有する)の注入は、177Lu-DOTATATEを投与する30~45分前に行うことができ、3~4時間続き得る。

参考文献
【化1】

【化2】