IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山洋電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置 図1
  • 特開-電力変換装置 図2
  • 特開-電力変換装置 図3
  • 特開-電力変換装置 図4
  • 特開-電力変換装置 図5
  • 特開-電力変換装置 図6
  • 特開-電力変換装置 図7
  • 特開-電力変換装置 図8
  • 特開-電力変換装置 図9
  • 特開-電力変換装置 図10
  • 特開-電力変換装置 図11
  • 特開-電力変換装置 図12
  • 特開-電力変換装置 図13
  • 特開-電力変換装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027925
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230224BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230224BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133290
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 実
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB83
5H730BB88
5H730DD03
5H730DD12
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF02
5H730FG05
5H770BA11
5H770CA01
5H770DA02
5H770DA41
5H770DA44
5H770EA01
5H770GA17
(57)【要約】
【課題】絶縁トランスを用いることなく直流各部の対接地電位の変動を低減し、直流各部の浮遊容量による漏れ電流の発生を抑制することが可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流電源7からの電圧を昇圧する昇圧チョッパ回路2と、分圧コンデンサC3,C4と、昇圧チョッパ回路2からの直流電圧を交流電圧に変換する2組のハーフブリッジ回路41,42からなるインバータ回路4と、インバータ回路4から出力された交流電圧が供給される三相系統の商用電源8と、昇圧チョッパ回路2を制御する昇圧チョッパ制御部10と、を備える。昇圧チョッパ回路2は、直列に接続されるスイッチング素子Q1~Q3と、リアクトルL1,L2と、平滑コンデンサC1,C2と、を有する。チョッパ制御部10は、スイッチング素子Q2を一定のデューティー比で制御し、スイッチング素子Q1,Q3をそれぞれ周期的に変動するデューティー比で制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から入力される第一直流電圧を昇圧して、第二直流電圧を出力する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路の正極出力端子と負極出力端子との間に、直列に接続される複数の分圧コンデンサと、
前記第二直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路から出力された交流電圧が供給される三相系統の商用電源と、
前記昇圧チョッパ回路を制御する昇圧チョッパ制御部と、
を備え、
前記昇圧チョッパ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子との間に、直列に接続される第一スイッチング素子、第二スイッチング素子、および第三スイッチング素子と、
前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子との第一接続点と、前記直流電源の正極端子との間に接続される第一リアクトルと、
前記第二スイッチング素子と第三スイッチング素子との第二接続点と、前記直流電源の負極端子との間に接続される第二リアクトルと、
前記正極端子と前記正極出力端子との間に接続される第一平滑コンデンサと、
前記負極端子と前記負極出力端子との間に接続される第二平滑コンデンサと、
を有し、
前記インバータ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子の間に、直列に2つのスイッチング素子を接続して構成される、第一ハーフブリッジ回路、第二ハーフブリッジ回路を有し、
前記商用電源は、前記三相系統の一相が前記複数の分圧コンデンサの中間点に接続され、他の二相が前記第一ハーフブリッジ回路における第四スイッチング素子と第五スイッチング素子との中間点と、前記第二ハーフブリッジ回路における第六スイッチング素子と第七スイッチング素子との中間点に、それぞれ接続されており、
前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一スイッチング素子を第一デューティー比でオン・オフ制御し、前記第二スイッチング素子を第二デューティー比でオン・オフ制御し、前記第三スイッチング素子を第三デューティー比でオン・オフ制御し、
前記第二デューティー比は一定であり、前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一デューティー比、前記第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる、
電力変換装置。
【請求項2】
直流電源から入力される第一直流電圧を昇圧して、第二直流電圧を出力する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路の正極出力端子と負極出力端子との間に、直列に接続される複数の分圧コンデンサと、
前記第二直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路から出力された交流電圧が供給される三相系統の商用電源と、
前記昇圧チョッパ回路を制御する昇圧チョッパ制御部と、
を備え、
前記昇圧チョッパ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子との間に、直列に接続される第一スイッチング素子、第二スイッチング素子、および第三スイッチング素子と、
前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子との第一接続点と、前記直流電源の正極端子との間に接続される第一リアクトルと、
前記第二スイッチング素子と第三スイッチング素子との第二接続点と、前記直流電源の負極端子との間に接続される第二リアクトルと、
前記正極端子と前記負極端子との間に、直列に接続される第一平滑コンデンサと第二平滑コンデンサと、を有し、
前記第一平滑コンデンサと前記第二平滑コンデンサとの中間点が、前記複数の分圧コンデンサの中間点に接続され、
前記インバータ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子の間に、直列に2つのスイッチング素子を接続して構成される、第一ハーフブリッジ回路、第二ハーフブリッジ回路を有し、
前記商用電源は、前記三相系統の一相が前記複数の分圧コンデンサの中間点に接続され、他の二相が前記第一ハーフブリッジ回路における第四スイッチング素子と第五スイッチング素子との中間点と、前記第二ハーフブリッジ回路における第六スイッチング素子と第七スイッチング素子との中間点に、それぞれ接続されており、
前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一スイッチング素子を第一デューティー比でオン・オフ制御し、前記第二スイッチング素子を第二デューティー比でオン・オフ制御し、前記第三スイッチング素子を第三デューティー比でオン・オフ制御し、
前記第二デューティー比は一定であり、前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一デューティー比、前記第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる、
電力変換装置。
【請求項3】
前記商用電源において、V結線またはデルタ結線されたトランス巻線の一つが前記トランス巻線の中点で接地されている、または、Y結線されたトランスの中性点が接地されている、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記昇圧チョッパ制御部は、前記接地された中点あるいは前記接地された中性点と、前記複数の分圧コンデンサの中間点が接続された前記一相との間に印加されている電圧に基づいて、前記第一デューティー比、前記第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる、
請求項3に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池で発電した直流電力を商用周波数の交流に変換して商用系統と連系し、交流電力を系統に送り出す電力変換装置が知られている。例えば、特許文献1には、太陽電池からの直流電力を三相出力の交流電力に変換し、一相を接地した三相の系統と連系して交流電力を系統に送り出す太陽光電力変換装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の太陽光電力変換装置では、直列に接続された2個のスイッチング素子を2組有するインバータ回路を備え、このインバータ回路の直流入力部間に直流電圧を分圧する2個のコンデンサを直列接続し、三相出力の1つとしてコンデンサの接続部から出力線を引き出し、三相出力の他の2つとして2組のスイッチング素子の中間点からそれぞれ出力線を引き出してハーフブリッジインバータ回路の構成とし、コンデンサの接続部から引き出された出力線を接地した一相に接続している。また、特許文献1の太陽光電力変換装置では、電圧が低い太陽光などの直流電源をインバータの直流電圧に変換するために昇圧チョッパ方式のDC/DCコンバータを用いている。当該太陽光電力変換装置は、このような構成とすることにより、絶縁トランスを用いずにインバータの直流部における対地間電位の変動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-103768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、一相を接地した三相の系統と連系する構成(例えば、国内で多く利用されている三相三線式のV相接地方式の系統に連系する構成)の電力変換装置について記載されている。しかしながら、その他の接地方式の系統と連系する構成、例えば、V結線あるいはデルタ結線されたトランス巻線の一つを巻線の中点で接地する方式や、Y結線されたトランスの中性点を接地する方式などの系統と連系する構成の電力変換装置については記載されていない。したがって、昇圧チョッパ方式のDC/DCコンバータを用いたトランスレス方式の電力変換装置において直流部の対地間電位の変動を抑制する点に関してはさらなる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、絶縁トランスを用いることなく直流各部の対接地電位の変動を低減し、直流各部の浮遊容量による漏れ電流の発生を抑制することが可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電力変換装置は、
直流電源から入力される第一直流電圧を昇圧して、第二直流電圧を出力する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路の正極出力端子と負極出力端子の間に、直列に接続される複数の分圧コンデンサと、
前記第二直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路から出力された交流電圧が供給される三相系統の商用電源と、
前記昇圧チョッパ回路を制御する昇圧チョッパ制御部と、
を備え、
前記昇圧チョッパ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子の間に直列に接続される第一スイッチング素子、第二スイッチング素子、および第三スイッチング素子と、
前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子との第一接続点と、前記直流電源の正極端子との間に接続される第一リアクトルと、
前記第二スイッチング素子と第三スイッチング素子との第二接続点と、前記直流電源の負極端子との間に接続される第二リアクトルと、
前記正極端子と前記正極出力端子との間に接続される第一平滑コンデンサと、
前記負極端子と前記負極出力端子との間に接続される第二平滑コンデンサと、
を有し、
前記インバータ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子の間に、直列に2つのスイッチング素子を接続して構成される、第一ハーフブリッジ回路、第二ハーフブリッジ回路を有し、
前記商用電源は、前記三相系統の一相が前記複数の分圧コンデンサの中間点に接続され、他の二相が前記第一ハーフブリッジ回路における第四スイッチング素子と第五スイッチング素子との中間点と、前記第二ハーフブリッジ回路における第六スイッチング素子と第七スイッチング素子との中間点に、それぞれ接続されており、
前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一スイッチング素子を第一デューティー比でオン・オフ制御し、前記第二スイッチング素子を第二デューティー比でオン・オフ制御し、前記第三スイッチング素子を第三デューティー比でオン・オフ制御し、
前記第二デューティー比は一定であり、前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一デューティー比、前記第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる。
【0008】
また、本発明の一側面に係る電力変換装置は、
直流電源から入力される第一直流電圧を昇圧して、第二直流電圧を出力する昇圧チョッパ回路と、
前記昇圧チョッパ回路の正極出力端子と負極出力端子との間に、直列に接続される複数の分圧コンデンサと、
前記第二直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路から出力された交流電圧が供給される三相系統の商用電源と、
前記昇圧チョッパ回路を制御する昇圧チョッパ制御部と、
を備え、
前記昇圧チョッパ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子との間に、直列に接続される第一スイッチング素子、第二スイッチング素子、および第三スイッチング素子と、
前記第一スイッチング素子と第二スイッチング素子との第一接続点と、前記直流電源の正極端子との間に接続される第一リアクトルと、
前記第二スイッチング素子と第三スイッチング素子との第二接続点と、前記直流電源の負極端子との間に接続される第二リアクトルと、
前記正極端子と前記負極端子との間に、直列に接続される第一平滑コンデンサと第二平滑コンデンサと、を有し、
前記第一平滑コンデンサと前記第二平滑コンデンサとの中間点が、前記複数の分圧コンデンサの中間点に接続され、
前記インバータ回路は、
前記正極出力端子と前記負極出力端子の間に、直列に2つのスイッチング素子を接続して構成される、第一ハーフブリッジ回路、第二ハーフブリッジ回路を有し、
前記商用電源は、前記三相系統の一相が前記複数の分圧コンデンサの中間点に接続され、他の二相が前記第一ハーフブリッジ回路における第四スイッチング素子と第五スイッチング素子との中間点と、前記第二ハーフブリッジ回路における第六スイッチング素子と第七スイッチング素子との中間点に、それぞれ接続されており、
前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一スイッチング素子を第一デューティー比でオン・オフ制御し、前記第二スイッチング素子を第二デューティー比でオン・オフ制御し、前記第三スイッチング素子を第三デューティー比でオン・オフ制御し、
前記第二デューティー比は一定であり、前記昇圧チョッパ制御部は、前記第一デューティー比、前記第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば絶縁トランスを用いることなく直流各部の対接地電位の変動を低減し、直流各部の浮遊容量による漏れ電流の発生を抑制することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
図2】スイッチング素子を一定のデューティー比でオン・オフ制御する昇圧チョッパ制御部の構成図である。
図3図2の昇圧チョッパ制御部によって生成されるスイッチングパターンを示す図である。
図4図3に示すスイッチングパターンでスイッチング素子を制御したときの、busP-P間電圧、busN-N間電圧を示す図である。
図5図3に示すスイッチングパターンでスイッチング素子を制御したときの、トランス巻線の中点から見た各部の電圧波形を示す図である。
図6】スイッチング素子を周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御する昇圧チョッパ制御部の構成図である。
図7図6の昇圧チョッパ制御部によって生成されるスイッチングパターンを示す図である。
図8図6に示すスイッチングパターンでスイッチング素子を制御したときの、busP-P間電圧、busN-N間電圧を示す図である。
図9図6に示すスイッチングパターンでスイッチング素子を制御したときの、トランス巻線の中点から見た各部の電圧波形を示す図である。
図10】(a)はY結線されたトランスの中性点が接地されている系統、(b)はデルタ結線のS相が接地されている系統を示す図である。
図11図10(a)に示す系統において、スイッチング素子を一定のデューティー比でオン・オフ制御したときの各部の電圧波形を示す図である。
図12図10(a)に示す系統において、スイッチング素子を周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御したときの各部の電圧波形を示す図である。
図13図10(b)に示す系統において、スイッチング素子を一定のデューティー比でオン・オフ制御したときの各部の電圧波形を示す図である。
図14】本発明の変形例に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の回路構成を示す図である。当該電力変換装置は、直流電力を三相の交流電力に変換し、連系した三相系統に交流電力を送出する装置である。図1に示すように、電力変換装置1は、昇圧チョッパ回路2と、分圧コンデンサ3と、インバータ回路4と、フィルタ回路5と、制御回路6と、を備える。昇圧チョッパ回路2の入力側には直流電源7が接続されている。フィルタ回路5の出力側には三相系統の商用電源8が接続されている。制御回路6は、昇圧チョッパ回路2を制御する昇圧チョッパ制御部10と、インバータ回路4を制御するインバータ制御部20と、を有する。
【0013】
昇圧チョッパ回路2は、直流電源7から入力される第一直流電圧を第二直流電圧に昇圧し、昇圧した第二直流電源をインバータ回路4に出力する。昇圧チョッパ回路2は、第一スイッチング素子Q1、第二スイッチング素子Q2、および第三スイッチング素子Q3と、第一リアクトルL1、および第二リアクトルL2と、第一平滑コンデンサC1、および第二平滑コンデンサC2と、を有する。
【0014】
第一スイッチング素子Q1と第二スイッチング素子Q2と第三スイッチング素子Q3とは、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aと負極出力端子21bの間に、直列に接続されている。これらのスイッチング素子Q1~Q3は、例えば、IGBT(絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ)と、逆並列された還流ダイオードとで構成されている。
【0015】
第一リアクトルL1は、第一スイッチング素子Q1と第二スイッチング素子Q2との第一接続点22aと、直流電源7の正極端子Pとの間に接続されている。第二リアクトルL2は、第二スイッチング素子Q2と第三スイッチング素子Q3との第二接続点22bと、直流電源7の負極端子Nとの間に接続されている。
【0016】
第一平滑コンデンサC1は、直流電源7の正極端子Pと昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aとの間に接続されている。第二平滑コンデンサC2は、直流電源7の負極端子Nと昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bとの間に接続されている。
【0017】
分圧コンデンサ3は、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aと負極出力端子21bとの間に接続されている。分圧コンデンサ3は、昇圧チョッパ回路2において直列接続されている第一スイッチング素子Q1、第二スイッチング素子Q2、および第三スイッチング素子Q3と並列に接続されている。分圧コンデンサ3は、図に示す例では第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4とで構成されている。第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4とは、直列に接続されている。なお、コンデンサの数は2個に限定されない。
【0018】
第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cは、三相系統の商用電源8のS相に接続されている。第一分圧コンデンサC3における第二分圧コンデンサC4との中間点31c側とは反対側の端子31aは、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aに接続されている。第二分圧コンデンサC4における第一分圧コンデンサC3との中間点31c側とは反対側の端子31bは、昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bに接続されている。第一分圧コンデンサC3の容量と第二分圧コンデンサC4の容量とは、より近似する容量であることが好ましい。
【0019】
インバータ回路4は、昇圧チョッパ回路2の出力電圧である第二直流電圧を交流電圧に変換して出力する。インバータ回路4は、第一ハーフブリッジ回路41と、第二ハーフブリッジ回路42と、を有する。第一ハーフブリッジ回路41は、第四スイッチング素子Q11と、第五スイッチング素子Q12とで構成されている。第二ハーフブリッジ回路42は、第六スイッチング素子Q13と、第七スイッチング素子Q14とで構成されている。
【0020】
第四スイッチング素子Q11と第五スイッチング素子Q12とは、直列に接続されている。第六スイッチング素子Q13と第七スイッチング素子Q14とは、直列に接続されている。第四スイッチング素子Q11と第五スイッチング素子Q12、および第六スイッチング素子Q13と第七スイッチング素子Q14は、分圧コンデンサ3(第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4)と同様に、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aと負極出力端子21bとの間に接続されている。
【0021】
フィルタ回路5は、第一フィルタリアクトルL3と、第二フィルタリアクトルL4と、第一フィルタコンデンサC5と、第二フィルタコンデンサC6と、を有する。
第一フィルタリアクトルL3の一方の端子は、インバータ回路4の第一ハーフブリッジ回路41における第四スイッチング素子Q11と第五スイッチング素子Q12との中間点43に接続されている。また、第一フィルタリアクトルL3の他方の端子は、三相系統の商用電源8のR相に接続されている。第二フィルタリアクトルL4の一方の端子は、インバータ回路4の第二ハーフブリッジ回路42における第六スイッチング素子Q13と第七スイッチング素子Q14との中間点44に接続されている。また、第二フィルタリアクトルL4の他方の端子は、三相系統の商用電源8のT相に接続されている。
【0022】
第一フィルタコンデンサC5の一方の端子は、第一フィルタリアクトルL3の商用電源8側の端子に接続されている。また、第一フィルタコンデンサC5の他方の端子は、第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cに接続されている。第二フィルタコンデンサC6の一方の端子は、第二フィルタリアクトルL4の商用電源8側の端子に接続されている。また、第二フィルタコンデンサC6の他方の端子は、第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cに接続されている。
【0023】
第一ハーフブリッジ回路41は、第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cと、第四スイッチング素子Q11と第五スイッチング素子Q12との中間点43との間に交流電圧を発生させる。フィルタ回路5の第一フィルタリアクトルL3と第一フィルタコンデンサC5は、第一ハーフブリッジ回路41から出力される交流電圧を商用電源8に通過させるとともに、第一ハーフブリッジ回路41のスイッチングにより発生するキャリア周波数の信号が商用電源8に通過するのを防止する。
【0024】
第二ハーフブリッジ回路42は、第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cと、第六スイッチング素子Q13と第七スイッチング素子Q14との中間点44との間に交流電圧を発生させる。フィルタ回路5の第二フィルタリアクトルL4と第二フィルタコンデンサC6は、第二ハーフブリッジ回路42から出力される交流電圧を商用電源8に通過させるとともに、第二ハーフブリッジ回路42のスイッチングにより発生するキャリア周波数の信号が商用電源8に通過するのを防止する。
【0025】
直流電源7は、正極端子Pが第一リアクトルL1と第一平滑コンデンサC1との接続点に接続されており、負極端子Nが第二リアクトルL2と第二平滑コンデンサC2との接続点に接続されている。直流電源7の直流電圧としては、例えば、太陽電池によって発電された直流電圧等が挙げられる。なお、直流電源7の正極端子Pと負極端子Nとに接続されている符号CE1,CE2は、直流電源7の対地間浮遊容量である。
【0026】
商用電源8は、インバータ回路4から出力される交流電圧が供給される。商用電源8は、例えば、三相三線の系統である。商用電源8は、例えば、V結線されたトランス巻線の一つのトランス巻線が中点Mで接地されている。図に示す商用電源8では、V結線されたトランス巻線におけるR線とS線の中点Mで接地されている。中点Mに対するS相の電圧は、R-S間の線間電圧の1/2の電圧である。したがって、S相に接続されている分圧コンデンサ3の中間点31cの電圧は、R-S間の電圧の1/2の電圧となる。
【0027】
昇圧チョッパ制御部10は、昇圧チョッパ回路2のスイッチング素子Q1~Q3をそれぞれ所定のデューティー比でオン・オフ制御する。昇圧チョッパ制御部10は、例えば、第二スイッチング素子Q2を一定のデューティー比でオン・オフ制御し、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3をそれぞれ周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御する。具体的には、昇圧チョッパ制御部10は、商用電源8における接地された中点Mと、分圧コンデンサ3の中間点31cが接続されたS相と、の間に印加される電圧に基づいて、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3のデューティー比をそれぞれ周期的に変動させてオン・オフ制御する。
【0028】
インバータ制御部20は、インバータ回路4のスイッチング素子Q11~Q14を所望の状態にスイッチング制御する。インバータ制御部20は、第一ハーフブリッジ回路41の第四スイッチング素子Q11と第五スイッチング素子Q12との中間点43からR相交流電力を出力し、第二ハーフブリッジ回路42の第六スイッチング素子Q13と第七スイッチング素子Q14との中間点44からT相交流電力を出力するようにインバータ回路4制御する。具体的には、インバータ制御部20は、制御波形とキャリア三角波とを比較して、制御波形の方が大きい場合に上側のスイッチング素子Q11,Q13がオンして、下側のスイッチング素子Q12,Q14がオフする駆動波形を生成する。また、インバータ制御部20は、制御波形の方が小さい場合に下側のスイッチング素子Q12,Q14がオンして、上側のスイッチング素子Q11,Q13がオフする駆動波形を生成する。
【0029】
次に、昇圧チョッパ制御部10による昇圧チョッパ回路2(スイッチング素子Q1~Q3)のスイッチング制御について以下に説明する。
【0030】
本発明の電力変換装置1における昇圧チョッパ制御部10は、上述したように、昇圧チョッパ回路2の第二スイッチング素子Q2を一定のデューティー比でオン・オフ制御し、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3をそれぞれ周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御する。
そこで先ず、比較例として、昇圧チョッパ制御部10が昇圧チョッパ回路2の第一スイッチング素子Q1から第三スイッチング素子Q3をそれぞれ一定のデューティー比でオン・オフ制御する場合について図2から図5を参照して説明する。
【0031】
図2は、第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をそれぞれ一定のデューティー比でオン・オフ制御するときの昇圧チョッパ制御部10の構成図である。図2に示すように、昇圧チョッパ制御部10は、定電圧のチョッパ制御信号11と、キャリア三角波12と、をコンパレータ13で比較して、第二スイッチング素子Q2を制御する第二ゲート信号を生成する。そして、昇圧チョッパ制御部10は、生成した第二ゲート信号をインバータ14により反転して第一スイッチング素子Q1および第三スイッチング素子Q3を制御する、第一ゲート信号および第三ゲート信号を生成する。
【0032】
図3は、昇圧チョッパ制御部10によって生成された第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンを示す図である。図3に示すように、第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御する第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンは、いずれも一定のデューティー比となっている。そして、第一スイッチング素子Q1を制御する第一ゲート信号と第三スイッチング素子Q3を制御する第三ゲート信号のスイッチングパターンは、第二スイッチング素子Q2を制御する第二ゲート信号のスイッチングパターンに対してオン・オフが反転したスイッチングパターンになっている。
【0033】
図4は、図3に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したときの、直流電源7の正極端子Pの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aの電圧と、直流電源7の負極端子Nの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bの電圧を示す図である。
【0034】
図4に示すように、このときの直流電源7の正極端子Pの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aの電圧は、「busP-P間電圧」=「bus電圧/2」-「直流入力電圧/2」=150Vの一定の電圧になる。また、直流電源7の負極端子Nの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bの電圧は、「busN-N間電圧」=「直流入力電圧/2」-「bus電圧/2」=-150Vの一定の電圧になる。なお、本実施形態の昇圧チョッパ回路2は、直流電源7から入力される正極端子Pと負極端子N間のDC300V(第一直流電圧)をDC600V(第二直流電圧)に昇圧して、正極出力端子21aと負極出力端子21b間に出力する回路であるとする。
【0035】
図5は、図3に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したときの、商用電源8の中点Mから見た各部の電圧波形を示す図である。上述したように中点Mは、接地(E)された点である。
【0036】
図5に示すように、このときの商用電源8の中点Mから見た分圧コンデンサ3の中間点31cの電圧(「bus0-E間電圧」)は、中点M(接地E)から見たS相の電圧(三相系統のS-E間の電圧)であり、DC0Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。
【0037】
また、商用電源8の中点Mから見た直流電源7の正極端子Pの電圧(「P-E間電圧」)は、DC150Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。商用電源8の中点Mから見た直流電源7の負極端子Nの電圧(「N-E間電圧」)は、DC-150Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。
【0038】
また、商用電源8の中点Mから見た昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aの電圧(「busP-E間電圧」)は、DC300Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。商用電源8の中点Mから見た昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bの電圧(「busN-E間電圧」)は、DC-300Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。
【0039】
このように、図3に示すスイッチングパターンでスイッチング素子Q1~Q3をオン・オフ制御したときは、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nの対地間電位と、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aおよび負極出力端子21bの対地間電圧が、商用電源8の周波数(50/60Hz)と電圧(交流成分AC100V)で変動する。このため、例えば、正極端子Pおよび負極端子Nと対地との間には、対地間浮遊容量CE1、CE2を介して漏れ電流が流れる。
【0040】
続いて、昇圧チョッパ制御部10が昇圧チョッパ回路2の第二スイッチング素子Q2を一定のデューティー比でオン・オフ制御し、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3をそれぞれ周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御する場合について図6から図9を参照して説明する。
【0041】
図6は、第二スイッチング素子Q2を一定のデューティー比で、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3をそれぞれ周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御するときの昇圧チョッパ制御部10の構成図である。図6に示すように、昇圧チョッパ制御部10は、チョッパ制御信号11と、キャリア三角波12とをコンパレータ13で比較して、第二スイッチング素子Q2を制御する第二ゲート信号を生成する。この制御は、図2で説明した場合と同様である。
【0042】
そして、昇圧チョッパ制御部10は、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御するデューティー比を変動させるためのデューティー変調信号15と、チョッパ制御信号11と、を減算器16に入力して差分を算出する。昇圧チョッパ制御部10は、減算器16の出力をコンパレータ17に入力し、キャリア三角波12と比較して第一スイッチング素子Q1を制御する第一ゲート信号を生成する。デューティー変調信号15は、電源系統の中点MとS間の電圧、または電源系統のR-S間の線間電圧の1/2の電圧を、昇圧チョッパ制御部10内で制御される電圧のレベルに合わせた信号である。中点MとS間の電圧、R-S間の線間電圧の1/2の電圧は、図2で説明したように、DC0Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧である。
【0043】
また、昇圧チョッパ制御部10は、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御するデューティー比を変動させるためのデューティー変調信号15と、チョッパ制御信号11と、を加算器18に入力して加算する。昇圧チョッパ制御部10は、加算器18の出力をコンパレータ19に入力し、キャリア三角波12と比較して第三スイッチング素子Q3を制御する第三ゲート信号を生成する。
【0044】
また、昇圧チョッパ制御部10は、コンパレータ17から出力される第一ゲート信号およびコンパレータ19から出力される第三ゲート信号がコンパレータ13から出力される第二ゲート信号に対して反転した極性となるように、キャリア三角波12が入力されるコンパレータ17,19の入力端子の極性とキャリア三角波12が入力されるコンパレータ13の入力端子の極性とを相違させている。図示の例では、コンパレータ13はキャリア三角波12が反転入力端子に入力され、コンパレータ17,19はキャリア三角波12が非反転入力端子に入力されている。
【0045】
図7は、図6に示す昇圧チョッパ制御部10によって生成された第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンを示す図である。図7に示すように、第二スイッチング素子Q2をオン・オフ制御する第二ゲート信号のスイッチングパターンは、破線51に示されるように、一定のデューティー比となっている。そして、第一スイッチング素子Q1をオン・オフ制御する第一ゲート信号と第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御する第三ゲート信号のスイッチングパターンは、デューティー変調信号15によって変調されて、デューティー比が破線52,53に示されるように、第二ゲート信号のスイッチングパターンに対してオン・オフが反転したスイッチングパターンをベースとして、それぞれ周期的に変動するデューティー比となっている。さらに、第一ゲート信号と第三ゲート信号のスイッチングパターンは、第一ゲート信号のスイッチングパターンにおけるデューティー比の周期的な変動と、第三ゲート信号のスイッチングパターンにおけるデューティー比の周期的な変動とは、デューティー比の大小が逆の変動になっている。
【0046】
図8は、図7に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したときの、直流電源7の正極端子Pの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aの電圧(busP電圧)と、直流電源7の負極端子Nの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bの電圧(busN電圧)を示す図である。
【0047】
図8に示すように、このときの直流電源7の正極端子Pの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aの電圧は、「busP-P間電圧」=「bus電圧/2」-「直流入力電圧/2」+「三相系統のS-E間電圧」=「DC150Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧」となる。また、直流電源7の負極端子Nの電圧に対する昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bの電圧は、「busN-N間電圧」=「直流入力電圧/2」-「bus電圧/2」+「三相系統のS-E間電圧」=「DC-150Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧」となる。
【0048】
図9は、図8に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したときの、商用電源8の中点Mから見た各部の電圧波形を示す図である。
【0049】
図9に示すように、このときの商用電源8の中点Mから見た分圧コンデンサ3の中間点31cの電圧(「bus0-E間電圧」)は、中点M(接地E)から見たS相の電圧(三相系統のS-E間の電圧)であり、DC0Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。
【0050】
また、商用電源8の中点Mから見た直流電源7の正極端子Pの電圧(「P-E間電圧」)は、図5で示したような重畳された三相系統のS-E間電圧(DC150Vを中心として交流成分のAC100V)が相殺されて、変動のないDC150Vの直流電圧になる。同様に、商用電源8の中点Mから見た直流電源7の負極端子Nの電圧(「N-E間電圧」)は、重畳されていた三相系統のN-E間電圧が相殺されて、変動のないDC150Vの直流電圧になる。
【0051】
また、商用電源8の中点Mから見た昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aの電圧(「busP-E間電圧」)は、DC300Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。商用電源8の中点Mから見た昇圧チョッパ回路2の負極出力端子21bの電圧(「busN-E間電圧」)は、DC-300Vを中心として交流成分のAC100Vが重畳した電圧波形になる。
【0052】
このように、図7に示すスイッチングパターンでスイッチング素子Q1~Q3をオン・オフ制御したときは、三相系統のS-E間電圧がbusP-P間およびbusN-N間電圧に加算されるため、「P-E間電圧」および「N-E間電圧」、すなわち、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nの対地間電位が変動のない直流電圧になる。このため、例えば、正極端子Pおよび負極端子Nと対地との間では、対地間浮遊容量CE1、CE2へ流れる漏れ電流が抑制される。なお、図に示した例ではトランス巻線のR線とS線の中点Mを接地する場合について説明したが、例えば、S線とT線の中点を接地する場合においても同様に、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nの対地間電位が変動のない直流電圧になる。
【0053】
また、上記実施形態では、V結線されたトランス巻線における一つの巻線の中点が接地されている三相系統の商用電源8について説明したが、これに限られない。例えば、商用電源8は、図10(a)に示すように、Y結線されたトランスの中性点が接地されている系統のものであってもよい。また、商用電源8は、図10(b)に示すように、デルタ結線の例えばS相が接地されている系統のものであってもよい。
【0054】
図11は、図10(a)に示すY結線の中性点接地の商用電源8において、図3に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したとき、すなわち、第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンがいずれも一定のデューティー比であるときの、商用電源8の中性点から見た各部の電圧波形を示す図である。
【0055】
図11に示すように、第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンがいずれも一定のデューティー比であるときは、V結線のR線とS線の中点Mが接地されている場合の電圧波形(図5参照)と同様に、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nの対地間電位(「P-E間電圧」,「N-E間電圧」)と、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aおよび負極出力端子21bの対地間電圧(「busP-E間電圧」,「busN-E間電圧」)が、商用電源8の周波数(50/60Hz)と電圧(この系統では交流成分AC115V)で変動する。
【0056】
図12は、図10(a)に示すY結線の中性点接地の商用電源8において、図6で示すデューティー変調信号15を、Y結線の中性点とS間の電圧を昇圧チョッパ制御部10内で制御される電圧のレベルに合わせた信号に置き換え、図7に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したとき、すなわち、第二ゲート信号のスイッチングパターンが一定のデューティー比で、第一ゲート信号と第三ゲート信号のスイッチングパターンがそれぞれ周期的に変動するデューティー比であるときの、商用電源8の中性点から見た各部の電圧波形を示す図である。ここで、Y結線の中性点電圧は、R,S,Tから抵抗分圧により、あるいはコンデンサ分圧により求めた電圧でもよい。また、(R-S電圧+T-S電圧)/3により求めた電圧でもよい。
【0057】
図12に示すように、第二ゲート信号のスイッチングパターンが一定のデューティー比で、第一ゲート信号と第三ゲート信号のスイッチングパターンがそれぞれ周期的に変動するデューティー比で構成されているときは、V結線のR線とS線の中点Mが接地されている場合の電圧波形(図9参照)と同様に、三相系統のS-E間電圧がbusP-P間およびbusN-N間電圧に加算されるため、「P-E間電圧」および「N-E間電圧」、すなわち、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nの対地間電位が変動のない直流電圧になる。
【0058】
図13は、図10(b)に示すデルタ結線のS相接地の商用電源8において、図3に示す第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンで第一スイッチング素子Q1~第三スイッチング素子Q3をオン・オフ制御したとき、すなわち、第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンがいずれも一定のデューティー比であるときの、商用電源8のS相から見た各部の電圧波形を示す図である。
【0059】
図13に示すように、デルタ結線のS相接地の場合には、第一ゲート信号~第三ゲート信号のスイッチングパターンが全て一定のデューティー比であっても、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nの対地間電位(「P-E間電圧」,「N-E間電圧」)と、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aおよび負極出力端子21bの対地間電圧(「busP-E間電圧」,「busN-E間電圧」)が、変動のない直流電圧になる。したがって、商用電源8がデルタ結線のS相接地の場合には、ゲート信号のスイッチングパターンにおけるデューティー比を周期的に変動させる制御を行う必要がない。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る電力変換装置1は、直流電源7から入力される第一直流電圧を昇圧して、第二直流電圧を出力する昇圧チョッパ回路2と、昇圧チョッパ回路2の正極出力端子21aと負極出力端子21bの間に、直列に接続された第一分圧コンデンサC3および第二分圧コンデンサC4で構成される分圧コンデンサ3と、第二直流電圧を交流電圧に変換して出力するインバータ回路4と、インバータ回路4から出力された交流電圧が供給される三相系統の商用電源8と、昇圧チョッパ回路2を制御する昇圧チョッパ制御部10と、を備える。そして、昇圧チョッパ回路2は、正極出力端子21aと負極出力端子21bの間に直列に接続される第一スイッチング素子Q1、第二スイッチング素子Q2、および第三スイッチング素子Q3と、第一スイッチング素子Q1と第二スイッチング素子Q2との第一接続点22aと直流電源7の正極端子Pとの間に接続される第一リアクトルL1と、第二スイッチング素子Q2と第三スイッチング素子Q3との第二接続点22bと直流電源7の負極端子Nとの間に接続される第二リアクトルL2と、直流電源7の正極端子Pと正極出力端子21aとの間に接続される第一平滑コンデンサC1と、直流電源7の負極端子Nと負極出力端子21bとの間に接続される第二平滑コンデンサC2と、を有する。インバータ回路4は、正極出力端子21aと負極出力端子21bの間に、直列に接続されたスイッチング素子Q11とQ12で構成される第一ハーフブリッジ回路と、直列に接続されたスイッチング素子Q13とQ14で構成される第二ハーフブリッジ回路42を有する。商用電源8は、三相系統の一相が第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cに接続され、他の二相が第一ハーフブリッジ回路41における第四スイッチング素子Q11と第五スイッチング素子Q12との中間点43と、第二ハーフブリッジ回路42における第六スイッチング素子Q13と第七スイッチング素子Q14との中間点44に、それぞれ接続されている。チョッパ制御部10は、第一スイッチング素子Q1を第一デューティー比でオン・オフ制御し、第二スイッチング素子Q2を第二デューティー比でオン・オフ制御し、第三スイッチング素子Q3を第三デューティー比でオン・オフ制御し、第二デューティー比を一定で制御し、第一デューティー比、第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる。この構成によれば、昇圧チョッパ回路2を構成する第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3のオン・オフデューティー比を周期的に変動させることで、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nにおける対接地電位の変動を抑制することができる。これにより、絶縁トランスを用いずに、直流電源7の浮遊容量による漏れ電流の発生を抑制できる。
【0061】
また、電力変換装置1によれば、V結線またはデルタ結線されたトランス巻線の一つがトランス巻線の中点で接地されている商用電源8、または、Y結線されたトランスの中性点が接地されている商用電源8に対して、直流電圧の対接地電位の変動を抑えることができる。
【0062】
また、電力変換装置1によれば、昇圧チョッパ制御部10は、接地された中点Mあるいは接地された中性点と、第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cが接続された一相との間に印加されている電圧に基づいて、第一デューティー比、第三デューティー比をそれぞれ周期的に変動させる。このように、接地された中点Mあるいは中性点と分圧コンデンサの中間点31cが接続されている一相との間に印加されている電圧を用いてスイッチング素子Q1,Q3のデューティー比を変化させることで、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nにおける対接地電位の変動を適切に抑制することができる。
【0063】
(変形例)
次に、電力変換装置の変形例について説明する。
図14は、変形例に係る電力変換装置100の回路構成を示す図である。図14に示すように、電力変換装置100は、昇圧チョッパ回路120の構成が図1に示す電力変換装置1の昇圧チョッパ回路2の構成と相違する。
【0064】
電力変換装置100の昇圧チョッパ回路120は、第一平滑コンデンサC1と第二平滑コンデンサC2とが直流電源7の正極端子Pと負極端子Nとの間に直列に接続されている。すなわち、第一平滑コンデンサC1と第二平滑コンデンサC2は、第一リアクトルL1と正極端子Pとの接続点23aと、第二リアクトルL2と負極端子Nとの接続点23bとの間に直列に接続されている。そして、第一平滑コンデンサC1と第二平滑コンデンサC2との中間点23cが、第一分圧コンデンサC3と第二分圧コンデンサC4との中間点31cに接続されている。
【0065】
電力変換装置100における分圧コンデンサ3、インバータ回路4、フィルタ回路5、および制御回路6(昇圧チョッパ制御部10,インバータ制御部20)の構成は、電力変換装置1におけるそれらの構成と同様である。また、昇圧チョッパ回路2の入力側に接続されている直流電源7、およびフィルタ回路5の出力側に接続されている商用電源8についても電力変換装置1のそれらと同様である。
【0066】
そして、昇圧チョッパ制御部10は、電力変換装置1における図6および図7に示す昇圧チョッパ制御部と同様に、第二スイッチング素子Q2を一定のデューティー比でオン・オフ制御し、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3とをそれぞれ周期的に変動させるデューティー比でオン・オフ制御する。昇圧チョッパ制御部10は、商用電源8における接地された中点Mと、分圧コンデンサ3の中間点31cが接続されたS相と、の間に印加される電圧に基づいて、第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3のデューティー比をそれぞれ周期的に変動させてオン・オフ制御する。
【0067】
上記変形例に係る電力変換装置100のような構成によっても、実施形態の電力変換装置1と同様に、昇圧チョッパ回路120を構成する第一スイッチング素子Q1と第三スイッチング素子Q3のオン・オフデューティー比を周期的に変動させることで、直流電源7の正極端子Pおよび負極端子Nにおける対接地電位の変動を抑制することができる。これにより、絶縁トランスを用いずに、直流電源7の浮遊容量による漏れ電流の発生を抑制できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0069】
1 電力変換装置
2 昇圧チョッパ回路
3 分圧コンデンサ
4 インバータ回路
5 フィルタ回路
6 制御回路
7 直流電源
8 商用電源
10 昇圧チョッパ制御部
13,17,19 コンパレータ
14 インバータ
15 デューティー変調信号
16 減算器
18 加算器
20 インバータ制御部
21a 正極出力端子
21b 負極出力端子
22a 第一接続点
22b 第二接続点
31a 端子
31b 端子
31c 中間点
41 第一ハーフブリッジ回路
42 第二ハーフブリッジ回路
43,44 中間点
C1 第一平滑コンデンサ
C2 第二平滑コンデンサ
C3 第一分圧コンデンサ
C4 第二分圧コンデンサ
C5 第一フィルタコンデンサ
C6 第二フィルタコンデンサ
L1 第一リアクトル
L2 第二リアクトル
L3 第一フィルタリアクトル
L4 第二フィルタリアクトル
N 負極端子
P 正極端子
Q1 第一スイッチング素子
Q2 第二スイッチング素子
Q3 第三スイッチング素子
Q11 第四スイッチング素子
Q12 第五スイッチング素子
Q13 第六スイッチング素子
Q14 第七スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14