(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027936
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】浴室用履き物
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20230224BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A43B13/14 C
A47K3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133311
(22)【出願日】2021-08-18
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】514067591
【氏名又は名称】株式会社OneTaste
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】國村 あずさ
【テーマコード(参考)】
2D005
4F050
【Fターム(参考)】
2D005FA00
4F050AA03
4F050AA21
4F050GA03
4F050HA58
4F050HA99
4F050JA30
(57)【要約】
【課題】磁石を使用して磁性面である浴室の壁パネルに吸着固定することのできる浴室用履き物を提供する。
【解決手段】靴底部10と甲被部20とを樹脂で一体成形する。 靴底部10に磁石60が埋入され、この磁石60の埋入箇所に相応する靴底部10の裏面の対応部位が吸着面として形成され、磁石60の厚さを、埋入箇所での靴底部10の厚さの1/4以下とし、かつ、磁石60の埋入箇所を靴底部10の裏面の近くに偏らせておく。樹脂が非常に軽量のEVA樹脂であり、磁石がネオジム磁石(ネオジウム磁石)である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底部と甲被部とが柔軟性を有する樹脂で一体成形されてなる浴室用履き物であって、
靴底部に磁石が埋入され、この磁石の埋入箇所に相応する上記靴底部の裏面の対応部位が吸着面として形成されていることを特徴とする浴室用履き物。
【請求項2】
磁石の厚さが磁石の埋入箇所での靴底部の厚さの1/4以下であり、かつ、磁石の埋入箇所が靴底部の裏面の近くに偏った箇所である請求項1に記載した浴室用履き物。
【請求項3】
上記磁石の埋入箇所が、上記靴底部における、当該履き物の利用者の足指の付け根近傍の幅方向中央部である請求項1又は請求項2に記載した浴室用履き物。
【請求項4】
上記樹脂がEVA樹脂であり、上記磁石がネオジム磁石である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した浴室用履き物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズ型やスリッパ型などの浴室用履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室や浴槽を掃除する際に使用される樹脂で一体成形されている浴室用履き物には、その主要部が、靴底部や甲被部のほかに踵部や腰部を備えるシューズ型、靴底部と甲被部とによって形成されているスリッパ型、靴底部とバンド状の甲被部とによって形成されているサンダル型、といった種々のタイプが知られている。これらの浴室用履き物は、水回り箇所である浴室で使用され、洗剤が使われる環境で使用されることが多いといった特殊性を有していることから、耐水性や耐久性、耐薬品性が要求されることは勿論、使用後に水滴が付着したまま放置すると汚れやカビが短時間のうちに発生してしまうおそれがあることから、使用後にすぐに水滴を除去して保管しておくことが望まれる。
【0003】
先行例(特許文献1)には風呂用スリッパについての記述がある。このスリッパは、つま先に磁石を装着し、かかと部分に脚を設けることにより、左右のスリッパ同士のつま先を合わせた形で自立させることができるようになっていて、そうすることによりスリッパの表裏の水切りや乾燥をしやすくなる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、磁石を使用して水切り性のよい形で磁性面である浴室の壁パネルにじゃまにならないように吸着固定しておくことのできる浴室用履き物を提供することを目的としている。特に、繰り返し使用によりつま先部位に曲がり癖が生じているような場合であっても浴室の壁パネルに安定した状態で吸着固定しておくことができるほか、耐水性や耐久性、耐薬品性にも優れて安価に提供することのできる浴室用履き物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る浴室用履き物は、靴底部と甲被部とが柔軟性を有する樹脂で一体成形されてなる浴室用履き物であって、靴底部に磁石が埋入され、この磁石の埋入箇所に相応する上記靴底部の裏面の対応部位が吸着面として形成されている。
【0007】
このように構成されている浴室用履き物によれば、靴底部の裏面の吸着面を磁性面である浴室の壁パネルに吸着固定しておくことが可能である。このため、使用後の履き物を浴室の壁パネルに吸着固定するという方法で片付けられるようになる。また、磁石は靴底部に埋入されているので、使用中に磁石が浴室の床面に直接当たって傷付けたり、浴室の壁パネルに吸着固定したときに磁石が浴室の床面に直接当たって傷付けたりするおそれはない。そのほか、靴底部と甲被部とが柔軟性を有する樹脂で一体成形されていることにより安価に提供することが可能になる。
【0008】
本発明では、磁石の厚さが磁石の埋入箇所での靴底部の厚さの1/4以下であり、かつ、磁石の埋入箇所が靴底部の裏面の近くに偏った箇所であることが望ましい。これによれば、磁石の埋入箇所での靴底部によるクッション性が損なわれにくくなると共に、浴室の壁パネルへの吸着性が損なわれにくくなる。
【0009】
本発明では、上記磁石の埋入箇所が、上記靴底部における、当該履き物の利用者の足指の付け根近傍の幅方向中央部であることが望ましい。この構成を採用しておくと、使用によって浴室用履き物のつま先部位が上向きに反り変形するような曲がり癖を生じていても、そのような曲がり癖の影響を受けずに上記吸着面を浴室の壁パネルに安定性よく吸着固定することができる。履き物の左右の部位が上向きに反り変形するような曲がり癖が生じた場合も同様である。また、磁石の埋入箇所が靴底部の前部であるために、壁パネルに吸着固定した履き物はその甲被部が上になる形になって安定した吸着固定状態が得られるだけでなく、使用後に当該履き物の内面や靴底部の裏面に付着している水滴が履き口部を通じて速やかに落下し、短時間のうちに水切りや乾燥が行われるようになる。
【0010】
本発明では、上記樹脂がEVA樹脂であり、上記磁石がネオジム磁石であることが望ましい。これによれば、EVA樹脂に特有の水回り箇所での使用に適する優れた耐水性や耐久性、洗剤に対する耐薬品が発揮されるほか、EVA樹脂に特有の軽量性や弾力性によって使用感がさらに向上する。また、非常に軽量なEVA樹脂製の浴室用履き物に対し、磁石がネオジム磁石(ネオジウム磁石)であることにより、浴室の壁パネルに浴室用履き物を容易に脱落しないように吸着固定することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る浴室用履き物は、磁石を利用して水切り性のよい形で磁性面である浴室の壁パネルにじゃまにならないように吸着固定した状態で放置しておくだけで、履き物の内面や裏面に付着している水滴を水切りしたり乾燥したりすることができる。このため、水回り箇所である浴室や浴槽の掃除に使用した後の履き物を壁面を利用して容易に片付けることができるだけでなく、使用後の短時間のうちに汚れやカビが短時間のうちに発生することを効果的に防止することが可能になる。このような効果は、使用によって履き物のつま先部位が上向きに反り変形するような曲がり癖を生じていても、そのような曲がり癖の影響を受けずに発揮される。
【0012】
そのほか、本発明によれば、磁石の埋入箇所や磁石の厚さ、樹脂や磁石の種類に一定の工夫を講じておくことによって、使用感や壁パネルに吸着固定したときの安定性、耐水性や耐久性、洗剤に対する耐薬品などに優れる履き物を安価に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物を一足単位で示した概略斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物の側面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物の縦断側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物に施された凹凸模様の一部を省略して示した裏面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る履き物を浴室の壁パネルに吸着固定した状態を例示した側面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る浴室用履き物の縦断側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る浴室用履き物に施された凹凸模様の一部を省略して示した裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、実施形態を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物100を一足単位で示した概略斜視図、
図2は本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物100の側面図、
図3は本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物100の縦断側面図、
図4は本発明の第1実施形態に係る浴室用履き物に施された凹凸模様14の一部を省略して示した裏面図、
図5は
図3の要部を説明的に示した拡大図、
図6は足裏の説明図である。
【0015】
図1に一足単位で示した浴室用履き物100は樹脂で一体成形されていて、水回り箇所である浴室や浴槽を掃除する際に利用者が履いて使用する。実施形態の履き物100に使われている樹脂はEVA樹脂であり、EVA樹脂に特有の弾力性や柔軟性を発揮するほか、耐水性や耐久性、洗剤に対する耐薬品などにも優れている。また、
図1や
図2に示した履き物100は、靴底部10と甲被部20と踵部30と腰部40とを一体に有するシューズ型のものであり、踵部30と腰部40と甲被部20の端縁部とによって囲まれた履き口部50を有する。そして、靴底部10には、前から後に向かって順に踏み付け部11、踏まず部12及び履き踵部13が備わっているほか、裏面には、水に濡れた床面などでの滑り止めに役立つ所定パターンの凹凸模様14が踏み付け部11と履き踵部13とに振り分けて施されている。
【0016】
図3のように、靴底部10では、踏まず部12が踏み付け部11や履き踵部13よりもやや肉薄に形成されていて、使用(歩行)中などには、踏まず部12が無理なく容易に曲がり変形して使用感を低下させないようになっている。利用者がこの浴室用履き物100を履いた状態では、一転鎖線で例示した利用者の足Lの甲が甲被部20によって覆われ、足のつま先が踏み付け部11の前端部に当接し、足の土踏まずが踏まず部12に当接し、足の踵が履き踵部13に当接すると共に、足の五指の付け根が踏み付け部11の前後方向略中央部に当接する。特に、五指のうちの第2指又は第3指の付け根付近が踏み付け部11の幅方向略中央部付近に当接する。
図6には、足Lの五指の付け根Fを楕円形の破線で囲んでその位置を明示してある。また、五指のうちの第2指又は第3指の付け根の位置を符号F2,F3で示している。
【0017】
図2又は
図3のように、靴底部10の前部における幅方向中央部に磁石60が埋入されていて、この磁石60の埋入箇所に相応する靴底部10の裏面の対応部位が吸着面61として形成されている。磁石60にはニッケルメッキなどでさび止め処理されたネオジム磁石(ネオジウム磁石)が用いられているために強い吸着性が発揮される。
図3のように、磁石60が埋入されている靴底部10の前部の内面には履き物100の利用者の足指の付け根F(
図6参照)が当接する。特に、靴底部10の前部における幅方向中央部に位置している磁石60の埋入箇所の内面には、利用者の足指の第2指又は第3指の付け根(
図6参照)が当接する。
【0018】
図7は履き物100を浴室の壁パネル200に吸着固定した状態を例示した側面図である。同図のように、上記した履き物100は、靴底部10に埋入されている磁石60を利用して裏面の吸着面61を浴室の磁性面である壁パネル200に吸着固定することが可能である。この履き物100においては、磁石60の埋入箇所が靴底部10の前部であるため、壁パネル200に吸着固定したときには、図示のように甲被部20が上になる形になって安定した吸着固定状態が得られ、併せて、使用後の履き物100が壁パネル200に沿う状態でそれほど場所を取らずに片付けられるようになる。また、使用後に履き物100の内面や靴底部10の裏面に付着している水滴が履き口部50を通じて速やかに落下し、短時間のうちに水切りや乾燥が行われるようになる。その上、磁石60は靴底部10に埋入されているので、履き物100の使用中に磁石60が浴室の床面に直接当たって傷付けたり、使用後に履き物100を壁パネル200に吸着固定したときに磁石60が壁パネル200に直接当たって傷付けたりするおそれはない。なお、磁性面である壁パネル200の表面には、鋼板の表面を樹脂被覆することにより形成されている壁パネルの表面が相当するほか、磁性体である鋼板の表面そのものによって形成されている壁パネルの表面や、あるいは、磁性面を有する板片を部分的に貼り付けることによって形成された壁パネルの表面などが相当する。
【0019】
この実施形態では、磁石60の埋入箇所が、利用者の足指の付け根F(
図6参照)の近傍である靴底部10の前部に定められていることにより、使用によって履き物100のつま先部位が
図7に破線Aで示したように上向きに反り変形するような曲がり癖を生じていても、そのような曲がり癖の影響を受けずに吸着面61を壁パネル200に安定性よく吸着固定することができる。また、履き物100の靴底部10左右の部位が上向きに反り変形するような曲がり癖が生じている場合にも、磁石60の埋入箇所が、利用者の五指に第2又は第3指の付け根F2,F3(
図3参照)の近傍である靴底部10の幅方向中央部に定められていることにより、そのような曲がり癖の影響を受けずに吸着面61を壁パネル200に安定性よく吸着固定することができる。
【0020】
この実施形態に係る履き物100において、磁石60の埋入箇所が、靴底部10の内面に近付き過ぎていると、吸着面61で発現する吸着性が弱まって
図7に示した壁パネル200に対する十分な吸着力が得られにくくなる。また、磁石60に平板状の磁石を用いた場合において、
図5に示した磁石60の厚さTが、埋入箇所での靴底部10の厚さSに比べて厚すぎると、EVA樹脂でなる靴底部10の弾力性が発揮されにくくなって使用感が損なわれるおそれがある。この点に関して調査した結果、磁石60の厚さTを、埋入箇所での靴底部10の厚さSの1/4以下とし、かつ、磁石60の埋入箇所を靴底部10の裏面の近くに偏らせておくと、靴底部10の弾力性が十分に発揮されて使用感が損なわれず、しかも、吸着面61で発現する吸着性も損なわれにくいことが判った。特に、磁石60の厚さTを埋入箇所での靴底部10の厚さSの1/5以下にしておけば、靴底部10の弾力性が十分に発揮されて磁石60を埋入していないものに比べても遜色のない弾力性ないし使用感を得られることが判っている。また、靴底部10の裏面からの磁石60の埋入深さD1は、履き物100の使用中に靴底部10が床面に擦れても、磁石60の下側で靴底部10が容易に破れたり剥がれたりしない程度に深く、かつ、磁石60の吸着力が吸着面61に十分に反映される程度に浅く定められている。さらに、靴底部10の内面からの磁石60の埋入深さD2は、利用者の足指の付け根F(
図6参照)に磁石60が当たるような違和感を生じない程度に深く定められている。以上より、靴底部10の厚さSや磁石60の厚さT、靴底部10の裏面からの埋入深さD1などは、使用感や吸着面61の吸着性などを勘案して適宜選定すべきである。
【0021】
図8は本発明の第2実施形態に係る浴室用履き物100の縦断側面図であり、
図9は本発明の第2実施形態に係る浴室用履き物100の裏面図である。各図において第1実施形態と同一部分には、同一符号を付している。この第2実施形態において、靴底部10の後部における履き踵部13の幅方向中央部に磁石60が埋入されていて、この磁石60の埋入箇所に相応する靴底部10の裏面の対応部位が吸着面61として形成されている。
【0022】
この第2実施形態においては、使用による浴室用履き物100の反り変形するような曲がり癖が最も少ない靴底部10の後部における履き踵部13の幅方向中央部に、磁石60を埋入している。これにより、磁石60を埋入する位置としては、最も曲がり癖の影響を受けずに上記吸着面を浴室の壁パネルに吸着固定することができる。この場合、磁石60の埋入箇所が靴底部10の後部であるため、浴室用履き物100を壁パネル200に吸着固定したときには、甲被部20が下になる形で吸着固定すると安定した吸着固定状態が得られる。また、第2実施形態の浴室用履き物100であっても、使用後に履き物100の内面や靴底部10の裏面に付着している水滴が履き口部50を通じて速やかに落下し、短時間のうちに水切りや乾燥が行われるようにしたい場合には、浴室用履き物100は非常に軽量であるEVA樹脂製であるため、甲被部20が上になる形で吸着固定することもできる。
【0023】
上記各実施形態において、偏平で平面視矩形の磁石60の長手方向を靴底部10の前後方向に一致させた縦長形態で靴底部10に埋入してあるけれども、この点は、磁石60を横長形態で埋入させておいてもよく、どちらを選択するかは、壁パネル200に吸着固定させたときの安定性や使用感などを勘案して適宜定めるべきである。また、靴底部10に磁石60を埋入するための手段としては、たとえば、靴底部10の成形時に、靴底部10に磁石60を収容する凹部を成形し、その凹部に磁石60を収容した状態で、凹凸模様14を形成する樹脂層を成形するときにその樹脂層で上記凹部を閉塞し、併せて、靴底部10に凹凸模様14を具備させるという手段を採用することが可能である。また、ただ単に、靴底部10に形成した凹部に磁石60を収容してその凹部を蓋体で塞ぐ、という手段を採用することも可能である。
【0024】
上記各実施形態では、靴底部10と甲被部20と踵部30と腰部40とを一体に有するシューズ型の履き物100を説明したけれども、本発明は、上記したシューズ型以外に、その主要部が靴底部と甲被部とによって形成されているスリッパ型、あるいは、その主要部が靴底部とバンド状の甲被部とによって形成されているサンダル型、といった種々のタイプの履き物に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 靴底部
20 甲被部
60 磁石
61 吸着面
100 履き物(浴室用履き物)
F 利用者の足指の付け根
T 磁石の厚さ
S 磁石の埋入箇所での靴底部の厚さ