(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027939
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】複合フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/05 20190101AFI20230224BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20230224BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B32B7/05
C03C27/12 K
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133314
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】保田 浩孝
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AB17B
4F100AB24B
4F100AB25B
4F100AB33B
4F100AG00D
4F100AG00E
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK23A
4F100AK23B
4F100AK25B
4F100AK45B
4F100AK70A
4F100AK70B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100BA32
4F100CA04B
4F100DD07A
4F100DD07B
4F100EC012
4F100EH17A
4F100EH46B
4F100EJ15B
4F100EJ422
4F100HB31B
4F100JG01B
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4F100JK07B
4F100JL10
4F100JL11C
4F211AA03
4F211AA19
4F211AA21
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4F211AA28
4F211AG01
4F211AG03
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4F211SD21
4F211SP04
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4F211TJ13
4F211TJ15
4F211TN09
4F211TQ03
4G061AA21
4G061AA26
4G061AA30
4G061BA01
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB16
4G061CB18
4G061CD02
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】高いラミネート性を有するとともに、工程通過性に優れた複合フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂フィルム(X)と、機能Zを有する基材(Y)とを含む複合フィルムであって、樹脂フィルム(X)は面A及び面Bを有し、面Bと基材(Y)との間に、少なくとも密着部及び空隙が存在し、面Bと基材(Y)との密着力は0.2N/cm以上である、複合フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム(X)と、機能Zを有する基材(Y)とを含む複合フィルムであって、樹脂フィルム(X)は面A及び面Bを有し、面Bと基材(Y)との間に、少なくとも密着部及び空隙が存在し、面Bと基材(Y)との密着力は0.2N/cm以上である、複合フィルム。
【請求項2】
マイクロスコープにより、前記複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、全ての空隙のうち90%以上の空隙は、幅が2.0mm以下である、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
マイクロスコープにより、前記複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、空隙の平均高さは0.1μm以上50μm以下である、請求項1又は2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
基材(Y)は、40℃における引張貯蔵弾性率E’(40)が0.1GPa以上である基材層を含む、請求項1~3のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項5】
式(1):
10<RzB×100/RzA<140 (1)
[式中、RzAは、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Aの十点平均粗さの平均値を示し、RzBは、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Bの十点平均粗さの平均値を示す]
を満たす、請求項1~4のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項6】
樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との前記密着力は、1.3N/cm以上である、請求項1~5のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項7】
基材(Y)は、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項8】
基材(Y)に含まれる可塑剤量は20質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項9】
基材(Y)の厚みは1μm以上100μm以下である、請求項1~8のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項10】
機能Zは、着色性、光吸収性、光反射性、遮音性、光散乱性、発光性、導電性、二重像防止性及び光透過性からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~9のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項11】
機能Zは導電性であり、基材(Y)は、金、銀、銅、金属酸化物、有機導電物質及び炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項12】
機能Zは導電性であり、基材(Y)は、エッチング法、印刷法、コーティング法及び蒸着法からなる群から選択される少なくとも1つの方法により形成された導電性構造体を有する、請求項1~11のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項13】
JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Aの十点平均粗さの平均値RzAは、0.1μm以上50μm以下である、請求項1~12のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項14】
JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Bの十点平均粗さの平均値RzBは、0.1μm以上50μm以下である、請求項1~13のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項15】
基材(Y)の表面のうち、樹脂フィルム(X)とは密着していない面の、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される十点平均粗さの平均値は、0.1μm以上20μm以下である、請求項1~14のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項16】
樹脂フィルム(X)は、ポリビニルアセタール樹脂及び/又はアイオノマー樹脂を含む、請求項1~15のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項17】
さらに接着層(U)を含み、接着層(U)は、樹脂フィルム(X)又は基材(Y)に隣接する、請求項1~16のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項18】
基材(Y)が、基材層(Y’)と機能Zを有する機能層とを含む基材、又は、機能Zを有する基材層(Y”)を含む基材であり、任意に接着層(U)を含む、請求項1~17のいずれかに記載の複合フィルムであって、該接着層をU、該基材層(Y’)をY’、該基材層(Y”)をY”、該機能Zを有する機能層をZ、及び前記樹脂フィルム(X)をXとしたときに、以下の順序で積層された層構成;
X/Y”、X/Z/Y’、X/Z/Y’/U、X/Y’/Z、X/Y’/Z/U、X/Z/Y’/Z、X/Z/Y’/Z/U、Y’/Z/X/Z/Y’、Z/Y’/X/Z/Y’、U/Y’/Z/X/Z/Y’、U/Z/Y’/X/Z/Y’、U/Y’/Z/X/Z/Y’/U、U/Z/Y’/X/Z/Y’/U、Z/Y’/X/Y’/Z、U/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/X/Y’/Z/U、Z/Y’/Z/X/Z/Y’、Z/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’、U/Z/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/U、U/Z/Y’/Z/X/Y’/Z/U、Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z/U、及びこれらの2つ以上がXを介して積層された層構成
のいずれかを有する、複合フィルム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の複合フィルムを含む、合わせガラス用中間膜。
【請求項20】
請求項19に記載の合わせガラス用中間膜が、2枚以上のガラスの間に挟持されてなる、合わせガラス。
【請求項21】
請求項1~18のいずれかに記載の複合フィルムが巻回されてなる、ロール。
【請求項22】
請求項1~18のいずれかに記載の複合フィルムが合紙又はブロッキング防止フィルムとともに巻回されてなる、ロール。
【請求項23】
請求項1~18のいずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、少なくとも樹脂フィルム(X)と機能Zを有する基材(Y)とを重ねた原料複合フィルムを、基材(Y)よりも樹脂フィルム(X)が第1ロールに近くなる向きで、第1ロール及び第2ロールの間を通過させる熱圧着工程を含み、式(2);
20<T1-T2<140 (2)
[式中、T1は、第1ロールの表面温度(℃)を表し、T2は、第2ロールの表面温度(℃)を表す]
を満たす、方法。
【請求項24】
前記熱圧着工程において、原料複合フィルムが第1ロール及び第2ロールの間を通過するときに、0.01MPa以上2.0MPa未満の線圧で加圧をする、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルム及びその製造方法、該複合フィルムを含む合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該複合フィルム等が巻回されてなるロールに関する。
【背景技術】
【0002】
建物又は乗物におけるガラスとして、1対のガラス板が中間接着層により接着され一体化された構成の合わせガラスが知られている。該ガラスは着氷や曇りが生じるため、これを除去する方法として、合わせガラスに導電性を付与し、通電させて除去する方法等が提案されている。このように、合わせガラスに機能性(例えば導電性、熱線遮蔽性、意匠性、光線反射性、光線吸収性等)を付与する技術が求められている。
【0003】
機能性を有する合わせガラスの製造方法としては、例えば該機能を有するプラスチックフィルムを2枚の樹脂中間膜に挟持させ、これを1対のガラス板の間に挿入し、これをオートクレーブ等により高温高圧処理することにより、樹脂中間膜により熱融着させる方法が挙げられる。この場合、3層のフィルムを使用するため、合わせガラス作製工程において、生産性の低下が懸念される。このような問題を解決する方法として、特許文献1には、樹脂中間膜やPETフィルム等のプラスチックフィルムを予め積層した複合フィルムとして取り扱うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような複合フィルムを用いて形成された合わせガラスは、ラミネート性が十分ではなく、高温環境下に曝露されると気泡等の外観欠陥が発生する。一方、ラミネート性を向上させようとすると、工程通過性が低下し、複合フィルムをロール等で搬送している途中で、樹脂中間膜とプラスチックフィルムとの剥離が起こりやすくなる。このように、本発明者の検討によれば、ラミネート性と工程通過性とは相反する関係にあり、ラミネート性と工程通過性とを高い水準で両立することは困難であることがわかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、高いラミネート性を有するとともに、工程通過性に優れた複合フィルム及びその製造方法、該複合フィルムを含む合わせガラス用中間膜、該合わせガラス用中間膜を含む合わせガラス、及び、該複合フィルム等が巻回されてなるロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、樹脂フィルム(X)と、機能Zを有する基材(Y)とを含む複合フィルムについて詳細に検討を重ね、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明には、以下の好適な態様が含まれる。
【0008】
[1]樹脂フィルム(X)と、機能Zを有する基材(Y)とを含む複合フィルムであって、樹脂フィルム(X)は面A及び面Bを有し、面Bと基材(Y)との間に、少なくとも密着部及び空隙が存在し、面Bと基材(Y)との密着力は0.2N/cm以上である、複合フィルム。
[2]マイクロスコープにより、前記複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、全ての空隙のうち90%以上の空隙は、幅が2.0mm以下である、[1]に記載の複合フィルム。
[3]マイクロスコープにより、前記複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、空隙の平均高さは0.1μm以上50μm以下である、[1]又は[2]に記載の複合フィルム。
[4]基材(Y)は、40℃における引張貯蔵弾性率E’(40)が0.1GPa以上である基材層を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の複合フィルム。
[5]式(1):
10<RzB×100/RzA<140 (1)
[式中、RzAは、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Aの十点平均粗さの平均値を示し、RzBは、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Bの十点平均粗さの平均値を示す]
を満たす、[1]~[4]のいずれかに記載の複合フィルム。
[6]樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との前記密着力は、1.3N/cm以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の複合フィルム。
[7]基材(Y)は、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の複合フィルム。
[8]基材(Y)に含まれる可塑剤量は20質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の複合フィルム。
[9]基材(Y)の厚みは1μm以上100μm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の複合フィルム。
[10]機能Zは、着色性、光吸収性、光反射性、遮音性、光散乱性、発光性、導電性、二重像防止性及び光透過性からなる群から選択される少なくとも1つである、[1]~[9]のいずれかに記載の複合フィルム。
[11]機能Zは導電性であり、基材(Y)は、金、銀、銅、金属酸化物、有機導電物質及び炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]~[10]のいずれかに記載の複合フィルム。
[12]機能Zは導電性であり、基材(Y)は、エッチング法、印刷法、コーティング法及び蒸着法からなる群から選択される少なくとも1つの方法により形成された導電性構造体を有する、[1]~[11]のいずれかに記載の複合フィルム。
[13]JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Aの十点平均粗さの平均値RzAは、0.1μm以上50μm以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の複合フィルム。
[14]JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Bの十点平均粗さの平均値RzBは、0.1μm以上50μm以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の複合フィルム。
[15]基材(Y)の表面のうち、樹脂フィルム(X)とは密着していない面の、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される十点平均粗さの平均値は、0.1μm以上20μm以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の複合フィルム。
[16]樹脂フィルム(X)は、ポリビニルアセタール樹脂及び/又はアイオノマー樹脂を含む、[1]~[15]のいずれかに記載の複合フィルム。
[17]さらに接着層(U)を含み、接着層(U)は、樹脂フィルム(X)又は基材(Y)に隣接する、[1]~[16]のいずれかに記載の複合フィルム。
[18]基材(Y)が、基材層(Y’)と機能Zを有する機能層とを含む基材、又は、機能Zを有する基材層(Y”)を含む基材であり、任意に接着層(U)を含む、[1]~[17]のいずれかに記載の複合フィルムであって、該接着層をU、該基材層(Y’)をY’、該基材層(Y”)をY”、該機能Zを有する機能層をZ、及び前記樹脂フィルム(X)をXとしたときに、以下の順序で積層された層構成;
X/Y”、X/Z/Y’、X/Z/Y’/U、X/Y’/Z、X/Y’/Z/U、X/Z/Y’/Z、X/Z/Y’/Z/U、Y’/Z/X/Z/Y’、Z/Y’/X/Z/Y’、U/Y’/Z/X/Z/Y’、U/Z/Y’/X/Z/Y’、U/Y’/Z/X/Z/Y’/U、U/Z/Y’/X/Z/Y’/U、Z/Y’/X/Y’/Z、U/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/X/Y’/Z/U、Z/Y’/Z/X/Z/Y’、Z/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’、U/Z/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/U、U/Z/Y’/Z/X/Y’/Z/U、Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z/U、及びこれらの2つ以上がXを介して積層された層構成
のいずれかを有する、複合フィルム。
[19][1]~[18]のいずれかに記載の複合フィルムを含む、合わせガラス用中間膜。
[20][19]に記載の合わせガラス用中間膜が、2枚以上のガラスの間に挟持されてなる、合わせガラス。
[21][1]~[18]のいずれかに記載の複合フィルムが巻回されてなる、ロール。
[22][1]~[18]のいずれかに記載の複合フィルムが合紙又はブロッキング防止フィルムとともに巻回されてなる、ロール。
[23][1]~[18]のいずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、少なくとも樹脂フィルム(X)と機能Zを有する基材(Y)とを重ねた原料複合フィルムを、基材(Y)よりも樹脂フィルム(X)が第1ロールに近くなる向きで、第1ロール及び第2ロールの間を通過させる熱圧着工程を含み、式(2);
20<T1-T2<140 (2)
[式中、T1は、第1ロールの表面温度(℃)を表し、T2は、第2ロールの表面温度(℃)を表す]
を満たす、方法。
[24]前記熱圧着工程において、原料複合フィルムが第1ロール及び第2ロールの間を通過するときに、0.01MPa以上2.0MPa未満の線圧で加圧をする、[23]に記載の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合フィルムは、高いラミネート性を有するとともに、工程通過性に優れている。そのため、合わせガラスに機能性を付与できる樹脂中間膜として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施態様にかかる複合フィルムを幅方向に沿って切断して得られる断面をマイクロスコープにより観測した写真である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施態様にかかる複合フィルムを幅方向に沿って切断して得られる断面をマイクロスコープにより観測した写真において、空隙部分を拡大した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[複合フィルム]
本発明の複合フィルムは、樹脂フィルム(X)と、機能Zを有する基材(Y)とを含み、樹脂フィルム(X)が面A及び面Bを有し、面Bと基材(Y)との間に、少なくとも密着部及び空隙が存在し、面Bと基材(Y)との密着力が0.2N/cm以上である。
【0012】
本発明者は、樹脂フィルム(X)と、機能Zを有する基材(Y)とを含む複合フィルムにおいて、面Bと基材(Y)との間に、少なくとも密着部及び空隙を設け、面Bと基材(Y)との密着力を0.2N/cm以上に調整すれば、驚くべきことに、合わせガラス作製時の高いラミネート性と、優れた工程通過性とを両立できることを見出した。
具体的には、本発明の複合フィルムは、合わせガラス作製時の高いラミネート性を有するため、該複合フィルムを用いて作製した合わせガラスを高温環境下に曝露しても、気泡等の外観欠陥の発生を有効に抑制できるとともに、また優れた工程通過性を有するため、複合フィルムの製造工程時における樹脂フィルム(X)と基材(Y)との剥離を防止できることを見出した。これは、合わせガラス作製時に、所定の空隙に起因してガラスと複合フィルム間で、高い脱気性能を発現でき、かつ密着部において、面Bと基材(Y)とに所定値以上の密着力が付与されることで、製造工程時の耐剥離性を向上できるからだと推定される。
【0013】
<機能Zを有する基材(Y)>
本発明の複合フィルムは、機能Zを有する基材(Y)(単に基材(Y)ということがある)を含む。基材(Y)は、機能Zを有していれば、特に限定されず、単層体又は積層体であってよい。基材(Y)は、好ましくは基材層を含み、単層体である場合は基材層からなり、積層体である場合は基材層と他の層とを含んでなることが好ましい。基材(Y)は、基材層及び他の層をそれぞれ1つ含んでいてもよく、それぞれ2つ以上含んでいてもよい。
【0014】
本発明の一実施態様では、基材(Y)が基材層からなる場合、好ましくは基材層が機能Zを有する。また、基材(Y)が基材層と他の層とを含んでなる場合は、基材層が機能Zを有していてもよく、他の層が機能Zを有していてもよく、その両方が機能Zを有していてもよい。なお、本明細書において、基材層が機能Zを有する場合、機能Zを有する基材層と称し、他の層が機能Zを有する場合、機能Zを有する機能層、単に機能層又はZ層と称することがある。基材(Y)に様々な機能Zを付与しやすい観点からは、基材(Y)に少なくともZ層を設けることにより、基材(Y)に機能Zを付与することが好ましい。なお、基材(Y)に含まれる樹脂や添加剤の種類を選択したり、Z層を設けたりすること等により、基材(Y)に機能Zを付与できる。
【0015】
基材(Y)(好ましくは基材層)は、樹脂を含むことが好ましい。基材(Y)に含まれる樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリチオカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性エラストマー、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、アニリン樹脂、アセトン-ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、マレイミド樹脂、マレイミド-シアン酸エステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、スチレン樹脂、ゴム系樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ラミネート性及び工程通過性を高めやすい観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1つがより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂がさらに好ましい。基材(Y)はこれらの樹脂を単独又は二種以上組み合わせて含んでいてよい。なお、ポリ(メタ)アクリル樹脂は、ポリアクリル樹脂又はポリメタクリル樹脂を示す。
【0016】
機能Zとしては、例えば着色性、光吸収性(例えばUV吸収性、赤外線吸収性、電磁波吸収性)、光反射性(例えば赤外反射性、電磁波反射性)、遮音性、光散乱性、発光性、導電性、二重像防止性、光透過性(例えば、赤外透過性、電磁波透過性)等が挙げられ、着色性、光吸収性、光反射性、遮音性、光散乱性、発光性、導電性、二重像防止性及び光透過性からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、光吸収性及び導電性からなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましい。機能Zは、異なる2つ以上の機能であってもよい。
【0017】
本発明の好適な実施態様では、基材(Y)(好ましくは基材層)は、ポリビニルアセタール樹脂を含む。基材(Y)がポリビニルアセタール樹脂を含むことにより、比較的温和な条件で熱圧着した場合にも面Bと基材(Y)との密着力を大きくすることができるため、熱圧着後に面Bと基材(Y)との間の空隙を維持しやすい。その結果、工程通過性を向上させながら、合わせガラス作製時のラミネート性を向上させやすく、得られる合わせガラスを高温環境下に曝露しても気泡等の外観欠陥の発生を有効に抑制しやすい。
【0018】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールコポリマー等のポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化によって製造される樹脂である。
【0019】
本発明の好適な実施態様において、基材(Y)は1つのポリビニルアセタール樹脂を含むか、或いは粘度平均重合度、アセタール化度、酢酸ビニル単位の含有率、アルコール単位の含有率、エチレン含有量、アセタール化に用いられるアルデヒドの分子量、及び鎖長のうちいずれか1つ以上がそれぞれ異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含んでよい。
【0020】
ポリビニルアセタール樹脂は、例えば次のような方法によって製造できるが、これに限定されない。まず、濃度3~30質量%のポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールコポリマーの水溶液を、80~100℃の温度範囲で保持した後、10~60分かけて徐々に冷却する。温度が-10~30℃まで低下したところで、アルデヒド及び酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30~300分間アセタール化反応を行う。次に、反応液を30~200分かけて20~80℃の温度まで昇温し、30~300分保持する。その後、反応液を、必要に応じて濾過した後、アルカリ等の中和剤を添加して中和し、樹脂を濾過、水洗及び乾燥することにより、ポリビニルアセタール樹脂が製造される。
【0021】
アセタール化反応に用いる酸触媒は特に限定されず、有機酸及び無機酸のいずれも使用できる。そのような酸触媒の例として、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸及び塩酸等が挙げられる。これらの中でも、酸の強度及び洗浄時の除去のしやすさの観点から、塩酸、硫酸及び硝酸が好ましく用いられる。
【0022】
好適な破断エネルギーを有するポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂の製造に使用されるアルデヒド又はケト化合物は、2~10個の炭素原子を有する線状、分岐状又は環状であることが好ましく、線状又は分岐状であることがより好ましい。これにより、相応の線状又は分岐状のアセタール基がもたらされる。また、ポリビニルアセタール樹脂は、複数のアルデヒド又はケト化合物の混合物により、ポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールコポリマーをアセタール化して得られるものであってもよい。
【0023】
ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも1つのポリビニルアルコールと、2~10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族非分岐のアルデヒドとの反応により生じるものであることが好ましい。そのようなアルデヒドとしては、好適な破断エネルギーを有するポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、n-ブチルアルデヒドが好ましい。アセタール化に使用するアルデヒドにおけるn-ブチルアルデヒドの含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0024】
ポリビニルアセタール樹脂を製造するために使用されるポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコールコポリマーは、単独であるか、又は粘度平均重合度若しくは加水分解度等が異なるポリビニルアルコール若しくはエチレンビニルアルコールコポリマーの混合物であってよい。
【0025】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、100以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましく、400以上であることがさらに好ましく、600以上であることがさらにより好ましく、700以上であることが特に好ましく、750以上であることが極めて好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が上記の下限以上であると、合わせガラス作製時に機能層の変形及び断線が抑制されやすく、得られる合わせガラスにおいて熱によりガラスがずれる現象が防止されやすい。また、ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましく、2300以下であることが特に好ましく、2000以下であることが極めて好ましい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度が上記の上限以下であると良好な製膜性が得られやすい。また、上記粘度平均重合度が上記上限以下であると、ラミネート性及び工程通過性を高めやすい。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は、例えば、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定できる。なお、ポリビニルアルコール樹脂は、市販品を用いてもよい。
【0026】
ポリビニルアセタール樹脂の好ましい粘度平均重合度の下限値および上限値は、前記したポリビニルアルコールの好ましい粘度平均重合度の下限値および上限値と同一である。基材(Y)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が、前記下限以上かつ前記上限以下であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度は、例えばJISK6728(1977)「ポリビニルブチラールの試験方法」により求められる。
【0027】
ポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位の含有率(アセチル基量ともいう)は、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖のエチレンユニットを基準として、好ましくは0.1~20モル%、より好ましくは0.5~3モル%(例えば1モル%以下)または5~8モル%である。原料のポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を適宜調整することにより、酢酸ビニル単位の含有率を前記範囲内に調整できる。酢酸ビニル単位の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂の極性に影響を及ぼし、それによって、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの可塑剤相溶性および機械的強度が変化し得る。酢酸ビニル単位の含有率が前記範囲内であると、基材(Y)と樹脂フィルム(X)との密着性を向上しやすく、および光学歪の低減等が達成されやすい。基材(Y)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂における酢酸ビニル単位の含有率が、上記範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において「ポリビニルアセタール樹脂の主鎖のエチレンユニットを基準として」とは、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一構成単位としたときの、全構成単位における対象の構成単位の含有率であることを意味する。原料のポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を適宜調整することにより、酢酸ビニル単位の量(アセチル基量)を前記範囲内に調整できる。
【0028】
本発明の一実施態様において、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は特に限定されない。アセタール化度は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、さらにより好ましくは60モル%以上、特に好ましくは68モル%以上であり、好ましくは86モル%以下、より好ましくは84モル%以下、さらに好ましくは82モル%以下である。ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を適宜調整することにより、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は上記範囲内に調整できる。アセタール化度が上記範囲内であると、基材(Y)の力学的強度が十分なものになりやすい。また、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。基材(Y)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、上記範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明の一実施態様において、ポリビニルアセタール樹脂におけるビニルアルコール単位の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖のエチレンユニットの質量を基準として、好ましくは6~26質量%、より好ましくは12~24質量%、さらに好ましくは15~22質量%、さらにより好ましくは18~21質量%である。また、ポリビニルアセタール樹脂におけるビニルアルコール単位の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖のエチレンユニットを基準として、好ましくは9~36モル%、より好ましくは18~34モル%、さらに好ましくは22~34モル%、さらにより好ましくは26~34モル%、特に好ましくは26~31モル%、極めて好ましくは26~30モル%である。ビニルアルコール単位の含有率が前記範囲内であると、樹脂フィルム(X)又は後述する接着層(U)が可塑化ポリビニルアセタール樹脂層である場合に、当該可塑化ポリビニルアセタール樹脂層と基材(Y)との屈折率差が小さくなり、光学むらの少ない合わせガラスが得られやすい。一方で、基材(Y)にさらに遮音性能を付与する場合には、ポリビニルアセタール樹脂におけるビニルアルコール単位の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖のエチレンユニットの質量を基準として、6~20質量%が好ましく、8~18質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましく、11~13質量%が特に好ましく、また、ポリビニルアセタール樹脂の主鎖のエチレンユニットを基準として、9~29モル%が好ましく、12~26モル%がより好ましく、15~23モル%がさらに好ましく、16~20モル%が特に好ましい。ポリビニルアルコールをアセタール化する際のアルデヒドの使用量を調整することにより、ビニルアルコール単位の含有率は前記範囲内に調整できる。ビニルアルコール単位の含有率が上記範囲内であると、樹脂フィルム(X)との屈折率差が小さくなり、複合フィルムを含む合わせガラスの光学むらを低減しやすい。基材(Y)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率が、上記範囲内であることが好ましい。
【0030】
ポリビニルアセタール樹脂は、通常、アセタール基単位、ビニルアルコール単位及び酢酸ビニル単位から構成されており、これらの各単位量は、例えば、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」又は核磁気共鳴法(NMR)によって測定できる。
【0031】
ポリビニルアセタール樹脂が、アセタール基単位、ビニルアルコール単位及び酢酸ビニル基単位以外の他の単位を含む場合は、ビニルアルコール単位量と酢酸ビニル基の単位量とを測定し、これらの両単位量をアセタール基単位量から差し引くことで、残りの他の単位の量を算出できる。
【0032】
本発明の一実施態様において、ポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度は、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは120mPa・s以上、さらに好ましくは150mPa・s以上であり、200mPa・s以上、240mPa・s以上、又は265mPa・s以上であってもよい。粘度平均重合度の高いポリビニルアルコールを原料又は原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用又は併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度は上記の下限以上に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、かかる混合物の前記粘度が上記の下限以上であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度が上記の下限以上であると、合わせガラスの作製時に機能層の変形及び断線が抑制されやすく、得られる合わせガラスにおいて熱によりガラスがずれる現象が防止されやすい。
前記粘度は、良好な製膜性が得られやすい観点から、例えば2000mPa・s以下、好ましくは1500mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは800mPa・s以下、さらにより好ましくは500mPa・s以下、特に好ましくは450mPa・s以下、特により好ましくは400mPa・s以下である。
【0033】
本発明の一実施態様において、ポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量は、好ましくは115,000~200,000、より好ましくは120,000~160,000、さらに好ましくは130,000~150,000である。粘度平均重合度の高いポリビニルアルコールを原料又は原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用又は併用することにより、ポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量は上記範囲内に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量が上記範囲内であると、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を向上しやすい。また、耐クリープ性及び破断強度等のフィルム物性も高めやすい。ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、特に好ましくは2.9以上である。例えば、粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコールの混合物をアセタール化したり、粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコールのアセタール化物を混合したりすることにより、ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布は上記の下限以上に調整できる。ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が上記の下限以上であると、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を向上しやすい。また、耐クリープ性及び破断強度等のフィルム物性も高めやすい。分子量分布の上限は特に限定されないが、製膜しやすさの観点から、通常は10以下、好ましくは5以下である。基材(Y)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量及び分子量分布が、上記範囲内であることが好ましい。
ピークトップ分子量及び分子量分布は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量既知のポリスチレンを標準として求められる。
【0034】
本発明の一実施態様において、基材(Y)は、良好な製膜性が得られやすい観点から、未架橋のポリビニルアセタールを含むことが好ましい。基材(Y)が、架橋されたポリビニルアセタールを含むことも可能である。ポリビニルアセタールを架橋するための方法は、例えば、EP 1527107B1及びWO 2004/063231 A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱自己架橋)、EP 1606325 A1(ポリアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)、及びWO 2003/020776 A1(グリオキシル酸により架橋されたポリビニルアセタール)に記載されている。また、アセタール化反応条件を適宜調整することで、生成する分子間アセタール結合量をコントロールしたり、残存水酸基のブロック化度をコントロールしたりすることも有用な方法である。
【0035】
基材(Y)はアイオノマー樹脂を含有していてもよい。アイオノマー樹脂としては、例えばエチレン由来の構成単位、およびα,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位を有し、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の少なくとも一部がナトリウムイオンなどの金属イオンによって中和された樹脂が挙げられる。金属イオンによって中和される前のエチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体において、α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有量は、該エチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体の質量に基づいて2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、上記α,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位の含有量は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上記アイオノマー樹脂が有するα,β-不飽和カルボン酸由来の構成単位としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸に由来する構成単位などが挙げられ、中でもアクリル酸またはメタクリル酸に由来する構成単位が特に好ましい。上記アイオノマー樹脂としては、入手容易性の観点から、エチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマーおよびエチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマーがより好ましく、エチレン-アクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー、エチレン-メタクリル酸共重合体のナトリウムアイオノマーが特に好ましい。
【0036】
基材(Y)(好ましくは基材層)は、可塑剤を含んでいてよい。基材(Y)中の可塑剤の量は、基材(Y)(又は基材層)の質量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下又は1質量%以下であってもよく、実質的に可塑剤を含有していなくてもよい。可塑剤の量が上記の上限以下であると、製膜性及び取扱い性に優れた基材(Y)が製造されやすく、得られる合わせガラスの作製時の機能層の変形等が抑制されやすく、その結果、機能層の機能を有効に発現しやすい。また、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を向上しやすい。基材(Y)中の可塑剤の量は、通常0質量%以上である。可塑剤を含む場合、下限は0.1質量%以上であってもよい。
【0037】
可塑剤としては、好ましくは、下記群の1つ又は複数の化合物を使用できる。
・多価の脂肪族又は芳香族酸のエステル。該エステルとしては、例えば、ジアルキルアジペート(例えば、ジヘキシルアジペート、ジ-2-エチルブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートとの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート);アジピン酸と脂環式エステルアルコール若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル(例えば、ジ(ブトキシエチル)アジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート);ジアルキルセバケート(例えば、ジブチルセバケート);セバシン酸と脂環式若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル;フタル酸のエステル(例えば、ブチルベンジルフタレート、ビス-2-ブトキシエチルフタレート);及び脂環式多価カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル(例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)が挙げられる。
・多価の脂肪族若しくは芳香族アルコール又は1つ以上の脂肪族若しくは芳香族置換基を有するオリゴエーテルグリコールのエステル又はエーテル。該エステル又はエーテルとしては、例えば、グリセリン、ジグリコール、トリグリコール、テトラグリコール等と、線状若しくは分岐状の脂肪族若しくは脂環式カルボン酸とのエステルが挙げられる。さらに具体的には、ジエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールベンゾエートが挙げられる。
・脂肪族又は芳香族のエステルアルコールのリン酸エステル。該リン酸エステルとしては、例えば、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)、トリエチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート、及びトリクレジルホスフェートが挙げられる。
・クエン酸、コハク酸及び/又はフマル酸のエステル。
【0038】
また、多価アルコールと多価カルボン酸とからなるポリエステル若しくはオリゴエステル、これらの末端エステル化物若しくはエーテル化物、ラクトン若しくはヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル若しくはオリゴエステル、又はこれらの末端エステル化物若しくはエーテル化物等を可塑剤として用いてもよい。
【0039】
基材(Y)中に可塑剤が含まれる場合、樹脂フィルム(X)との間で可塑剤が移行することに伴う問題(例えば、経時的な物性変化等の問題)を抑制する観点から、樹脂フィルム(X)に含まれるものと同じ可塑剤、又は樹脂フィルム(X)の物性(例えば、耐熱性、耐光性、透明性及び可塑化効率等)を損なわない可塑剤を使用することが好ましい。このような観点から、可塑剤として、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(3GO又は3G8)、トリエチレングリコール-ビス(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール-ビスヘプタノエートが含まれることが好ましく、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(3GO又は3G8)が含まれることが特に好ましい。
【0040】
基材(Y)(好ましくは基材層)は、別の添加剤を含んでいてよい。そのような添加剤としては、例えば、水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、増白剤若しくは蛍光増白剤、安定剤、色素、加工助剤、耐衝撃性改良剤、流動性改良剤、架橋剤、顔料、発光材料、屈折率調整剤、遮熱材料、有機若しくは無機ナノ粒子、焼成ケイ酸および表面活性剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。基材(Y)に含まれる基材層及び/又はZ層に添加剤を含有させて、機能Zを付与してもよい。例えば、赤外吸収性を付与するために、基材層に錫ドープ酸化インジウム(ITO)を含有させることができる。基材(Y)が添加剤を含有する場合、添加剤の含有量は、基材(Y)の質量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。なお、添加剤が、基材(Y)中の基材層に含まれる場合、上記添加剤の含有量は基材層に基づくものであってよい。
【0041】
本発明の複合フィルムにおいて、機能Zを有する基材(Y)の製造方法は、特に限定されないが、例えば基材(Y)が機能Zを有する基材層からなる場合、基材層を形成する樹脂及び任意に添加剤、好ましくは基材層を形成する樹脂及び機能Zを付与し得る添加剤を配合し、これを混合、例えば均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等、公知の製膜方法によりフィルム又はシート(層)を作製し、これを基材(Y)とすることができる。また、例えば、基材(Y)が、基材層にZ層が積層された基材である場合、樹脂又は樹脂組成物から基材層を形成後、該基材層上にラミネート等の慣用の方法を用いてZ層を積層することにより得ることができる。なお、本明細書において、樹脂に添加剤等を添加した混合物を樹脂組成物と称する。また、複合フィルム中に空隙を設けたり、空隙のサイズ、表面粗さなどを調整する目的で、基材(Y)の表面にエンボス加工等を施してもよい。
【0042】
機能Zを有する基材(Y)の製造において、公知の方法の中でも特に押出機を用いてフィルム又はシート(層)を製造する方法が好適に採用される。押出時の樹脂温度は、樹脂又は樹脂組成物の種類に応じて適宜選択でき、例えば樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合は、150~250℃が好ましく、170~230℃がより好ましい。樹脂温度が上記の上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の分解を抑制でき、揮発性物質の含有量を低減できる。また、樹脂温度が上記の下限以上である場合にも、揮発性物質の含有量を低減できる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から、減圧により揮発性物質を除去することが好ましい。押出機を用いて基材(Y)を製造する場合、後述するように、金属箔上に基材層を溶融押出してもよい。
【0043】
本発明の一実施態様にかかる複合フィルムにおいて、機能Zは導電性であり、基材(Y)は、金、銀、銅、金属酸化物、有機導電物質及び炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。このような複合フィルムは、複合フィルムを用いて合わせガラスを作製した場合に、合わせガラスに生じた着氷や曇りを効率的に除去できるため好適である。かかる実施態様の基材(Y)は、例えば、導電性を有し、かつ金、銀、銅、金属酸化物、有機導電物質及び炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む基材層を含んでなる基材、又は、導電性を有し、かつ金、銀、銅、金属酸化物、有機導電物質及び炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むZ層と導電性を有さない基材層とを含んでなる基材が挙げられる。また、基材層及びZ層の両方が導電性を有し、かつ金、銀、銅、金属酸化物、有機導電物質及び炭素化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0044】
本発明の一実施態様にかかる複合フィルムにおいて、機能Zは導電性であり、基材(Y)は、エッチング法、印刷法、コーティング法及び蒸着法からなる群から選択される少なくとも1つの方法により形成された導電性構造体を有することが好ましい。かかる実施態様の基材(Y)は、例えば、エッチング法、印刷法、コーティング法及び蒸着法からなる群から選択される少なくとも1つの方法により形成された導電性構造体と、基材層とを有する基材であることが好ましく、基材層上に該導電性構造体が配置された基材であることがより好ましい。導電性構造体を形成するためのエッチング法、印刷法、コーティング法及び蒸着法は、それぞれ慣用の方法により実施することができる。
【0045】
機能Zが導電性である基材(Y)の具体的な例としては、基材層の表面に、又は、2層の基材層の間に、導電インクを用いた印刷法による導電性構造体又は金属箔に基づく導電性構造体を有する基材などが挙げられる。導電インクを用いた印刷法による導電性構造体を基材層の表面に有する基材は、例えば、基材層の面上に、スクリーン印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷により、導電性粒子及び/又は導電性繊維を含む導電インクを印刷することにより製造してよい。金属箔に基づく導電構造体を基材層の表面に有する基材は、例えば、基材層と金属箔とを重ねて熱圧着させるか、又は金属箔上に基材層を溶融押出し、その後、フォトリソグラフィの手法を用いて導電性構造体を作製することにより製造してよい。
【0046】
2層の基材層の間に、導電インクを用いた印刷による導電性構造体又は金属箔に基づく導電性構造体を有する基材は、前記のようにして製造された導電性構造体を有する基材層の導電性構造体の面上に、もう1つの基材層を重ねて熱圧着させるか、前記導電性構造体の面上に、もう1つの基材層を構成する樹脂又は樹脂組成物を溶融押出するか、又は前記導電性構造体の面上にキャスト法にて基材層をコートすることにより製造してよい。なお、先に金属箔と接合された基材層を構成する樹脂又は樹脂組成物と、後に金属箔と接合された基材層を構成する樹脂又は樹脂組成物とは、同じ組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。
【0047】
基材層と金属箔とを重ねて熱圧着させた後、フォトリソグラフィの手法を用いて導電性構造体を作製することにより基材(Y)を製造する場合、基材層と金属箔とを接合させる工程は、例えば下記方法により実施できる。
・基材層と金属箔とを重ねて熱圧着させる方法、
・金属箔上に基材層を構成する前記樹脂又は樹脂組成物の溶融物を被覆して接合する方法、例えば、金属箔上に前記樹脂又は樹脂組成物を溶融押出する方法、若しくは金属箔上に前記樹脂又は樹脂組成物をナイフ塗布等により塗布する方法、又は
・溶媒、若しくは基材層を構成する樹脂及び溶媒を含む樹脂組成物の溶液又は分散液を、金属箔及び基材層の一方若しくは両方に塗布するか、若しくは金属箔と基材層との間に注入し、金属箔と基材層とを接合させる方法。
【0048】
熱圧着時の接合温度は、基材層を構成する樹脂の種類に依存するが、通常は70~180℃、好ましくは90~170℃、より好ましくは100~165℃、さらに好ましくは110~160℃である。接合温度が上記の範囲内であると、良好な接合強度が得られやすい。
先に記載したとおり、押出時の樹脂温度は、基材層中の揮発性物質の含有量を低下させる観点から、150~250℃が好ましく、170~230℃がより好ましく、また、揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から、減圧により揮発性物質を除去することが好ましい。
また、前記溶媒として、基材層を構成する樹脂に通常使用される可塑剤を使用することが好ましい。そのような可塑剤としては、可塑剤として上記に例示のものが挙げられる。
【0049】
得られた金属箔付基材層から導電性構造体を形成する工程は、公知のフォトリソグラフィの手法を用いて実施できる。前記工程は、例えば後の実施例に記載のとおり、金属箔付基材層の金属箔上にドライフィルムレジストをラミネートした後、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成し、次いで、エッチング抵抗パターンが付与された基材層を銅エッチング液に浸漬して導電性構造体を形成した後、公知の方法により残存するフォトレジスト層を除去することにより実施できる。
【0050】
このような機能Zを有する基材(Y)の製造方法は、所望の形状の導電性構造体を簡便かつ容易に形成できるため、基材層に導電性構造体を付与する際の生産効率を著しく改善できる。
【0051】
本発明の一実施態様において、導電性構造体の厚さは、光の反射低減及び必要な発熱量が得られやすい観点から、好ましくは1~30μm、より好ましくは2~20μm、さらに好ましくは3~15μm、特に好ましくは3~13μmである。導電性構造体の厚さは、例えば、厚み計又はレーザー顕微鏡等を用いて測定できる。
【0052】
導電性構造体は、前方視認性及び必要な発熱量が得られやすい観点から、好ましくは、線状、格子状又は網状の形状を有する。ここで、線状の例としては、直線状、波線状及びジグザグ状等が挙げられる。1つの導電性構造体において、形状は単一であってもよいし、複数の形状が混在していてもよい。
【0053】
線状、格子状又は網状の形状を構成する導電性構造体の線幅は、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~30μm、特に好ましくは3~20μmである。導電性構造体の線幅が上記範囲内であると、十分な発熱量が確保されやすく、かつ所望の前方視認性が得られやすい。
【0054】
導電性構造体の腐食を抑制する観点から、基材(Y)、好ましくは基材層が腐食防止剤を含有していてもよい。腐食防止剤を含有する場合、基材(Y)に含有される腐食防止剤の量は、基材(Y)の質量に基づいて、好ましくは0.005~5質量%である。腐食防止剤の例としては、置換された、または置換されていないベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0055】
本発明の一実施態様において、基材(Y)の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、さらにより好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは95μm以下、さらに好ましくは90μm以下、さらにより好ましくは85μm以下、特に好ましくは80μm以下、特により好ましくは75μm以下である。基材(Y)の厚みが上記の下限以上であると、基材(Y)の収縮又は変形に起因して導電性構造体に歪等が生じる問題が起こりにくい。基材(Y)の厚みが上記の上限以下であると、樹脂フィルム(X)が可塑剤を含む場合、樹脂フィルム(X)から基材(Y)への可塑剤移行量が少なくなり、樹脂フィルム(X)中の可塑剤量の低下が抑制されるため、本発明の複合フィルムを用いた乗物用ガラスを搭載した乗物の衝突時における頭部衝撃が大きくなる等の問題が起こりにくい。また、基材(Y)が上記範囲内であると、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性が向上しやすい。基材(Y)の厚さは、厚み計又はレーザー顕微鏡等を用いて測定できる。
【0056】
本発明の一実施態様において、基材(Y)は、40℃における引張貯蔵弾性率E’(40)が、好ましくは0.1GPa以上である基材層を含むことが好ましい。基材層の引張貯蔵弾性率E’(40)は、より好ましくは0.2GPa以上、さらに好ましくは0.5GPa以上、さらにより好ましくは0.7GPa以上、特に好ましくは1.0GPa以上であり、好ましくは10GPa以下、より好ましくは5.0GPa以下、さらに好ましくは3.0GPa以下である。引張貯蔵弾性率E’(40)が上記の下限以上であると、貼り合わせ工程での加熱による変形を抑制しやすく、引張貯蔵弾性率E’(40)が上記の上限以下であると、合わせガラスの製造工程において、皴等を抑制しやすい。基材(Y)の引張貯蔵弾性率E’(40)は、動的粘弾性装置を用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0057】
本発明の一実施態様において、基材(Y)の表面のうち、樹脂フィルム(X)とは密着していない面の、JIS B 0601:1994によって準拠して、任意の5箇所で測定される十点平均粗さの平均値(RzYと表記することがある)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、さらにより好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2.0μm以上、特により好ましくは3.0μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。該十点平均粗さの平均値RzYが、上記の下限以上であると、複合フィルムの合わせガラス化工程における、脱気性能を高めやすく、また上記の上限以下であると、複合フィルムのラミネート性を高めやすい。十点平均粗さの平均値RzYは、複合フィルムにおける基材Yの幅方向に対する中央部を中心点とし、その中心点から幅方向に10mm、長手方向に200mmの短冊状に複合フィルムを、幅方向に連続するように5ヶ所(順にA、B、C(中央)、D、Eとする)切り出す;そして、該サンプル(試験片)の内、B、C、Dそれぞれについて、複合フィルムから樹脂フィルム(X)を剥離し、基材(Y)の表面のうち、樹脂フィルム(X)とは密着していない面について、表面粗さ計を使用し、JIS B0601:1994に準じて、任意の5箇所で測定された個々の十点平均粗さの平均値であり、例えば実施例に記載の方法により測定できる。十点平均粗さの平均値RzYは、基材(Y)の組成、例えば基材(Y)に含まれる樹脂や添加剤の種類及び含有量;複合化前(例えば熱圧縮工程前)の基材(Y)の表面の粗さや空隙サイズ;基材(Y)の製造条件;複合フィルムの製造条件などを適宜調整することにより、上記範囲に調整できる。例えば、基材(Y)として上記の好ましい樹脂や機能Zを用いること、後述する複合フィルムの製造条件においてロールの表面温度や線圧などを適宜調整することにより、上記範囲に調整してもよい。なお、基材(Y)の表面のうち、樹脂フィルム(X)とは密着していない面に後述する接着層(U)を有し、当該接着層(U)が最外層である場合には、当該接着層(U)の表面のうち、基材(Y)とは密着していない面の、JIS B 0601:1994によって準拠して、任意の5箇所で測定される十点平均粗さの平均値が、上記範囲内であることが好ましい。
【0058】
<樹脂フィルム(X)>
本発明の複合フィルムは、樹脂フィルム(X)を含む。樹脂フィルム(X)は面A及び面Bを有し、面Bが基材(Y)と密着している側の面であり、面Aが基材(Y)と密着していない側の面である。
【0059】
樹脂フィルム(X)は樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては、<機能Zを有する基材(Y)>の項に例示の樹脂が挙げられ、これらの中でも、ラミネート性及び工程通過性を高めやすい観点から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリビニルアセタール樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及びポリカーボネート樹脂からなる群から選択される少なくとも1つがより好ましく、ポリビニルアセタール樹脂及び/又はアイオノマー樹脂がさらに好ましい。
【0060】
樹脂フィルム(X)に含み得るポリビニルアセタール樹脂は、例えば、<機能Zを有する基材(Y)>の項に記載のポリビニルアルコール樹脂と同様のものを使用することができ、好ましくはアセタール化度、アルコール単位の含有率、及び酢酸ビニル単位の含有率の範囲を下記の好適な実施態様にかかる範囲とすること以外は、<機能Zを有する基材(Y)>の項に記載のポリビニルアルコール樹脂と同様のものを使用してよい。
【0061】
本発明の好適な実施態様において、樹脂フィルム(X)に含み得るポリビニルアセタール樹脂中のビニルアルコール単位の含有率は、ポリビニルアセタール主鎖のエチレンユニットを基準として、好ましくは6モル%以上、より好ましくは12モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、さらにより好ましくは18モル%以上であり、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下、さらにより好ましくは31モル%以下である。ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を調整することにより、ビニルアルコール単位の含有率は上記範囲内に調整できる。ビニルアルコール単位の含有率が上記範囲内であると、耐貫通性、接着性、又は遮音性に優れた合わせガラスが得られやすい。また、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。樹脂フィルム(X)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率が、上記範囲内であることが好ましい。
【0062】
本発明の好適な実施態様において、樹脂フィルム(X)に含み得るポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、特に限定されないが、好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、さらにより好ましくは60モル%以上、特に好ましくは65モル%以上であり、好ましくは86モル%以下、より好ましくは84モル%以下、さらに好ましくは82モル%以下、さらにより好ましくは78モル%以下である。ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化する際のアルデヒドの使用量を適宜調整することにより、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は上記範囲内に調整できる。アセタール化度が上記範囲内であると、複合フィルムから合わせガラスを作製した際の耐貫通性又はガラスとの接着性を向上しやすい。また、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。樹脂フィルム(X)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、上記範囲内であることが好ましい。
【0063】
本発明の好適な実施態様において、樹脂フィルム(X)に含み得るポリビニルアセタール樹脂中の酢酸ビニル単位の含有率は、ポリビニルアセタール主鎖のエチレンユニットを基準として、好ましくは0.05モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは0.2モル%以上、さらにより好ましくは0.5モル%以上であり、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、さらにより好ましくは3モル%以下である。原料のポリビニルアルコールのケン化度を適宜調整することにより、酢酸ビニル単位の含有率は上記範囲内に調整できる。酢酸ビニル単位の含有率が上記範囲内であるポリビニルアセタール樹脂を含むと、可塑剤を使用する場合に可塑剤との相溶性に優れたフィルムが得られやすい。また、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。樹脂フィルム(X)が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位の含有率が、上記範囲内であることが好ましい。
【0064】
樹脂フィルム(X)に含み得るアイオノマー樹脂は、例えば、<機能Zを有する基材(Y)>の項に記載のアイオノマー樹脂と同様のものを使用することができる。
【0065】
樹脂フィルム(X)は、可塑剤を含んでいてよく、ラミネート性及び工程通過性を高めやすい観点から、可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤としては、<機能Zを有する基材(Y)>の項に記載の可塑剤を用いることができる。樹脂フィルム(X)が可塑剤を含む場合、可塑剤の含有量は、複合フィルムを作製する前の状態(基材(Y)と積層する前の状態)では、樹脂フィルム(X)の質量に対して、好ましくは16.0質量%以上、より好ましくは16.1質量%以上、さらに好ましくは22.0質量%以上、さらにより好ましくは26.0質量%以上であり、好ましくは36.0質量%以下、より好ましくは32.0質量%以下、さらに好ましくは30.0質量%以下である。該可塑剤の含有量が上記範囲内であると、耐衝撃性に優れた合わせガラスが得られやすい。また、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を向上しやすい。また、樹脂フィルム(X)として、遮音機能を有する樹脂フィルム(X)を用いることもできる。その場合、可塑剤の含有量は、複合フィルムを作製する前の状態(基材(Y)と積層する前の状態)では、樹脂フィルム(X)の質量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは30~50質量%、さらに好ましくは31~40質量%、特に好ましくは32~35質量%である。
【0066】
本発明の一実施態様において、基材(Y)と樹脂フィルム(X)がそれぞれポリビニルアセタール樹脂を含む場合、基材(Y)を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率と、樹脂フィルム(X)を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率との差は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。基材(Y)を構成するポリビニルアセタール樹脂及び/又は樹脂フィルム(X)を構成するポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、基材(Y)を構成する少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率と、樹脂フィルム(X)を構成する少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率との差が前記上限値以下であることが好ましい。前記差が前記上限値以下であると、複合フィルムにおいて可塑剤が移行した後の平衡状態において基材(Y)と樹脂フィルム(X)との屈折率差が小さくなることから、互いに寸法が異なる基材(Y)と樹脂フィルム(X)を使用した場合にその境界が視認しにくいため好ましい。
一方、基材(Y)を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率を、樹脂フィルム(X)を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率よりも低くすることで、複合フィルムにおいて可塑剤が移行した後の平衡状態における基材(Y)中の平均可塑剤量を30質量%以上とすることも好ましい態様の1つである。その場合、基材(Y)を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率は、樹脂フィルム(X)を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の含有率よりも5質量%以上低いことが好ましく、8質量%以上低いことがより好ましい。前記ビニルアルコール単位の含有率の差が前記下限値以上であると、平衡状態での基材(Y)の可塑剤量を十分に高くすることができ、遮音機能が付与された合わせガラスが得られやすいため好ましい。
【0067】
樹脂フィルム(X)は、必要に応じて、<機能Zを有する基材(Y)>の項に記載の添加剤を含むことができる。樹脂フィルム(X)が添加剤を含有する場合、添加剤の含有量は、樹脂フィルム(X)の質量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%である。
【0068】
樹脂フィルム(X)は、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよいが、単層フィルムであることが好ましい。
【0069】
樹脂フィルム(X)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば<機能Zを有する基材(Y)>の項に記載の基材(Y)と同様の方法が挙げられる。例えば、樹脂フィルム(X)を構成する樹脂、並びに任意に可塑剤及び/又は添加剤を混合又は混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等、公知の製膜方法によりフィルム又はシート(層)を作製し、これを樹脂フィルム(X)とすることができる。なお、複合フィルム中に空隙を設けたり、空隙のサイズ、表面粗さなどを調整する目的で、樹脂フィルム(X)の表面にエンボス加工等を施してもよい。
【0070】
樹脂フィルム(X)の厚みは、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは300μm以上、さらにより好ましくは500μm以上、特に好ましくは700μm以上であり、好ましく1600μm以下、より好ましくは1200μm以下、さらに好ましくは1100μm以下である。また、樹脂フィルム(X)は、厚み方向の断面形状が楔状である領域を有していてもよい。樹脂フィルム(X)の厚みが上記範囲内であると、優れた耐貫通性を得やすい。また複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。上記厚みは、厚み計又はレーザー顕微鏡等を用いて測定できる。
【0071】
本発明の一実施態様において、本発明の複合フィルムに含まれる樹脂フィルム(X)において、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Aの十点平均粗さの平均値RzAは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらにより好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上、特により好ましくは20μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは42μm以下、さらにより好ましくは40μm以下である。面Aの十点平均粗さの平均値RzAが上記の範囲内であると、複合フィルムのラミネート性を向上しやすい。十点平均粗さの平均値RzAは、複合フィルムにおける基材Yの幅方向に対する中央部を中心点とし、その中心点から幅方向に10mm、長手方向に200mmの短冊状に複合フィルムを、幅方向に連続するように5ヶ所(順にA、B、C(中央)、D、Eとする)切り出す;そして、該サンプル(試験片)の内、B、C、Dそれぞれについて、複合フィルムから樹脂フィルム(X)を剥離し、樹脂フィルム(X)の面Aについて、表面粗さ計を使用し、JIS B0601:1994に準じて、任意の5箇所で測定された個々の十点平均粗さの平均値であり、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0072】
本発明の一実施態様において、本発明の複合フィルムに含まれる樹脂フィルム(X)において、JIS B0601:1994に準拠して測定される面Bの十点平均粗さの平均値RzBは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、さらにより好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上、特により好ましくは9μm以上、極めて好ましくは10μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは42μm以下、さらにより好ましくは40μm以下である。面Bの十点平均粗さの平均値RzBが上記の下限以上であると、複合フィルムのラミネート性を向上しやすく、また上記の上限以下であると、複合フィルムの工程通過性を向上しやすい。特に十点平均粗さの平均値RzBが大きいほど、樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との間に存在する空隙のサイズ(特に空隙高さ)が大きくなる傾向があり、ラミネート性が高まりやすいと考えられる。十点平均粗さの平均値RzBは、複合フィルムにおける基材Yの幅方向に対する中央部を中心点とし、その中心点から幅方向に10mm、長手方向に200mmの短冊状に複合フィルムを、幅方向に連続するように5ヶ所(順にA、B、C(中央)、D、Eとする)切り出す;そして、該サンプル(試験片)の内、B、C、Dそれぞれについて、複合フィルムから樹脂フィルム(X)を剥離し、樹脂フィルム(X)の面Bについて、表面粗さ計を使用し、JIS B0601:1994に準じて、任意の5箇所で測定された個々の十点平均粗さの平均値であり、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、十点平均粗さの平均値RzA及びRzBはそれぞれ、樹脂フィルム(X)の組成、例えば樹脂フィルム(X)に含まれる樹脂や添加剤の種類及び含有量;複合化前(例えば熱圧縮工程前)の樹脂フィルム(X)の表面の粗さや空隙サイズ;樹脂フィルム(X)の製造条件;複合フィルムの製造条件などを適宜調整することにより、上記範囲に調整できる。例えば、樹脂フィルム(X)として上記の好ましい樹脂や添加剤を用いること、後述する複合フィルムの製造条件においてロールの表面温度及び線圧などを適宜調整することにより、上記範囲に調整してもよい。
【0073】
本発明の一実施態様において、本発明の複合フィルムは、式(1):
10<RzB×100/RzA<140 (1)
[式中、RzAは、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Aの十点平均粗さの平均値を示し、RzBは、JIS B0601:1994に準拠して、任意の5箇所で測定される面Bの十点平均粗さの平均値を示す]
を満たすことが好ましい。前記RzAと前記RzBとが式(1)の関係を満たすと、複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を向上しやすい。
【0074】
RzB×100/RzAは、好ましくは20以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは60以上、さらにより好ましくは80以上、特に好ましくは90以上、特により好ましくは100以上であり、好ましくは135以下、より好ましくは130以下、さらに好ましくは120以下、さらにより好ましくは110以下である。RzB×100/RzAが上記の下範囲内である、複合フィルムのラミネート性を向上しやすい。
【0075】
<複合フィルム>
本発明の複合フィルムは、前記樹脂フィルム(X)と、前記機能Zを有する基材(Y)とを含み、樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との間に、少なくとも密着部及び空隙が存在し、面Bと基材(Y)との密着力が0.2N/cm以上である。樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との間に空隙を有さない場合は、複合フィルムのラミネート性が十分でなく、また面Bと基材(Y)との密着力が0.2N/cm未満である場合は、複合フィルムの工程通過性が十分でない。本発明の複合フィルムは、前記密着部及び前記空隙を有し、前記密着力が0.2N/cm以上であるため、高いラミネート性と優れた工程通過性とを両立できる。そのため、本発明の複合フィルムは、合わせガラスに機能性を付与できる樹脂中間膜として好適に使用できる。なお、本明細書において、複合フィルムの工程通過性とは、複合フィルムの製造工程時における樹脂フィルム(X)と基材(Y)との剥離を抑制又は防止できる特性を意味し、工程通過性が高いほど又は工程通過性に優れるほど、該剥離を抑制又は防止しやすくなることを示す。また、本明細書において、複合フィルムのラミネート性とは、合わせガラス作製時のラミネート性を意味し、より詳細には、複合フィルムを用いて作製された合わせガラスを高温環境下に曝露した際に気泡等の外観欠陥の発生を抑制又は防止できる特性を示し、ラミネート性が高いほど又はラミネート性に優れるほど、該気泡等の外観欠陥の発生を抑制又は防止しやすくなることを示す。そのため、複合フィルムのラミネート性は、複合フィルムを用いて作製された合わせガラスの耐熱性ということもできる。
【0076】
樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との間に密着部及び空隙が存在するかを調べる方法としては、例えば複合フィルムを幅方向に沿って切断し、マイクロスコープにより切断面を観察する方法が挙げられる。例えば、
図1は、本発明の一実施態様にかかる複合フィルムを幅方向に沿って切断して得られる断面をマイクロスコープにより観測した写真であり、
図2は、本発明の一実施態様にかかる複合フィルムを幅方向に沿って切断して得られる断面をマイクロスコープにより観測した写真において、空隙部分を拡大した写真である。
図1及び
図2は本発明の一実施態様であり、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
図1及び
図2に示される通り、樹脂フィルム1の面Bと基材2との間に空隙3及び密着部4が存在することが確認される。空隙3の両端部は2つの密着部4により構成されている。
【0077】
また、本明細書において、空隙の幅とは、空隙の両端部を構成する2つの密着部において、一方の密着部の中心部から他方の密着部の中心部までの間(2つの密着部間ともいう)の距離を表し、空隙の高さとは、空隙の中央部における樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との距離を表す。また、該空隙の中央部は、2つの密着部間の中央部を表す。例えば、
図2に示されるように、空隙3の幅5は、両端部を構成する2つの密着部4の中心部間の距離であり、空隙3の高さ6は、空隙3の中央部における樹脂フィルム1の面Bと基材2との距離である。
【0078】
本発明の一実施態様において、マイクロスコープにより、複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、全ての空隙のうち90%以上の空隙は、その幅が、好ましくは2.0mm以下、より好ましく1.5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、さらにより好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.5mm以下であり、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上である。全ての空隙のうち90%以上の空隙の幅が上記の範囲内であるとラミネート性を高めやすい。空隙の幅は上記に定義した通りであり、全ての空隙のうち90%以上の空隙の幅が上記の範囲内であるかは、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0079】
本発明の一実施態様において、本発明の複合フィルムは、マイクロスコープにより、複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、空隙の平均幅が、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは100μm以上、さらにより好ましくは150μm以上、特に好ましくは200μm以上であり、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1000μm以下、さらに好ましくは700μm以下、さらにより好ましくは500μm以下、特に好ましくは400μm以下である。該空隙の平均幅が上記の範囲内であると、ラミネート性を高めやすい。複合フィルムの幅方向の中央部10cm範囲の断面における空隙の平均幅は、該断面に存在する全ての空隙の空隙幅の平均値を示し、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0080】
本発明の一実施態様において、本発明の複合フィルムは、マイクロスコープにより、複合フィルムの幅方向に沿って、該幅方向の中央部10cm範囲の断面を観察した際に、複数の密着部と、隣接する2つの密着部を両端部として存在する空隙とを有し、空隙の平均高さが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、さらにより好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上、特により好ましくは9μm以上、極めて好ましくは10μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは42μm以下、さらにより好ましくは40μm以下である。該空隙の平均高さが上記の範囲内にあると、ラミネート性を高めやすい。複合フィルムの幅方向の中央部10cm範囲の断面における空隙の平均高さは、該断面において、連続する10カ所の空隙における空隙高さの平均値を示し、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
なお、空隙の平均幅及び平均高さは、樹脂フィルム(X)及び基材(Y)の組成、例えば樹脂フィルム(X)及び基材(Y)に含まれる樹脂や添加剤の種類及び含有量;複合化前(例えば熱圧縮工程前)の樹脂フィルム(X)及び基材(Y)の表面の粗さや空隙サイズ;樹脂フィルム(X)及び基材(Y)の製造条件;複合フィルムの製造条件などを適宜調整することにより、上記範囲に調整できる。例えば、樹脂フィルム(X)及び基材(Y)として上記の好ましい樹脂や機能Zを用いること、後述する複合フィルムの製造条件においてロールの表面温度及び線圧などを適宜調整することにより、上記範囲に調整してもよい。
【0081】
本発明の複合フィルムにおいて、樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との密着力は、0.2N/cm以上である。該密着力は、好ましくは0.3N/cm以上、より好ましくは0.5N/cm以上、さらに好ましくは1.0N/cm以上、さらにより好ましくは1.3N/cm以上、特に好ましくは1.5N/cm以上、特により好ましくは1.8N/cm以上である。該密着力が上記の下限以上であると、工程通過性を高めやすい。また、該密着力の上限は特に限定されず、例えば30N/cm以下又は20N/cm以下であってよい。樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との密着力は、樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)との剥離強度を示し、JIS K6854-3に記載される剥離試験により測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0082】
本発明の複合フィルムの厚みは、好ましくは55μm以上、より好ましくは120μm以上、さらに好ましくは350μm以上、さらにより好ましくは500μm以上、特に好ましくは600μm以上であり、好ましく2000μm以下、より好ましくは1500μm以下、さらに好ましくは1200μm以下である。複合フィルムの厚みが上記範囲内であると、ラミネート性、工程通過性及び耐貫通性を高めやすい。上記厚みは、厚み計又はレーザー顕微鏡等を用いて測定できる。
【0083】
本発明の複合フィルムは、樹脂フィルム(X)及び基材(Y)以外の他の層を含んでいてよい。他の層としては、例えば接着層(U)、赤外線反射層、紫外線反射層、色補正層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、蛍光・発光層、遮音層、エレクトロクロミック層、サーモクロミック層、フォトクロミック層、意匠性層、又は高弾性率層等が挙げられる。他の層は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0084】
接着層(U)は樹脂及び任意に添加剤を含んでいてよい。樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ニトリルセルロース樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、メラミン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられ、これらの中でも、接着性を高めやすい観点から、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルブチラール樹脂としては、上記に例示のポリビニルブチラール樹脂を好適に使用できる。
【0085】
本発明の一実施態様において、本発明の複合フィルムは接着層(U)を含み、接着層(U)は、合わせガラス化の観点から、樹脂フィルム(X)又は基材(Y)に隣接することが好ましく、いずれかの表面のうち、密着していない面に積層されていることが好ましい。
【0086】
本発明の複合フィルムの層構成は、樹脂フィルム(X)及び基材(Y)を含んでいれば、特に限定されないが、以下の順序で積層された層構成のいずれかを有することが好ましい。このような層構成であると、本発明の複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を向上しやすい。なお、基材(Y)が、基材層(Y’)と機能Zを有する機能層とを含む基材である場合、基材層(Y’)をY’及び該機能層をZとし、基材(Y)が機能Zを有する基材層(Y”)を含む基材である場合、基材層(Y”)をY”とする。また、接着層をU、樹脂フィルム(X)をXとする。
X/Y”、X/Z/Y’、X/Z/Y’/U、X/Y’/Z、X/Y’/Z/U、X/Z/Y’/Z、X/Z/Y’/Z/U、Y’/Z/X/Z/Y’、Z/Y’/X/Z/Y’、U/Y’/Z/X/Z/Y’、U/Z/Y’/X/Z/Y’、U/Y’/Z/X/Z/Y’/U、U/Z/Y’/X/Z/Y’/U、Z/Y’/X/Y’/Z、U/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/X/Y’/Z/U、Z/Y’/Z/X/Z/Y’、Z/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’、U/Z/Y’/Z/X/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/U、U/Z/Y’/Z/X/Y’/Z/U、Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z、U/Z/Y’/Z/X/Z/Y’/Z/U、及びこれらの2つ以上をXを介して積層した層構成。
なお、これらの層構成の層間に、上記他の層を含んでいてもよい。また、複合フィルムが2つ以上の樹脂フィルム(X)を含む場合、各樹脂フィルム(X)は同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。基材層(Y’)、基材層(Y”)、機能Z層、及び接着層(U)をそれぞれ2つ以上含む場合も同様である。
【0087】
[複合フィルムの製造方法]
本発明の複合フィルムの製造方法は、特に限定されないが、少なくとも樹脂フィルム(X)と機能Zを有する基材(Y)とを重ねた原料複合フィルムを、基材(Y)よりも樹脂フィルム(X)が第1ロールに近くなる向きで、第1ロール及び第2ロールの間を通過させる熱圧着工程を含む方法が好ましい。このような熱圧着工程を含むと、ラミネート性及び工程通過性に優れた複合フィルムを製造しやすい。
【0088】
原料複合フィルムは、少なくとも前記樹脂フィルム(X)と前記機能Zを有する基材(Y)とを重ねたフィルムである。接着層(U)等の他の層を含む複合フィルムを製造する場合は、所望とする層構成となるように他の層を積層させればよい。また、原料複合フィルムには、工程通過時の欠点を抑制する観点から、保護フィルムを片面又は両面に積層させることもできる。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられ、前記保護フィルムは接着層を有していても良い。耐熱性等の観点から、ポリエステル系樹脂フィルムが好ましい。
【0089】
熱圧着工程では、基材(Y)よりも樹脂フィルム(X)が第1ロールに近くなる向きで、第1ロール及び第2ロールの間を通過させる。熱圧着工程において、以下の式(2):
20<T1-T2<140 (2)
[式中、T1は、第1ロールの表面温度(℃)を表し、T2は、第2ロールの表面温度(℃)を表す]
を満たすことが好ましい。第1ロールの表面温度と第2ロールの表面温度とが式(2)の関係を満たすと、ラミネート性及び工程通過性に優れた複合フィルムを製造しやすい。
【0090】
T1-T2は、好ましくは25℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、さらにより好ましくは45℃以上であり、好ましくは130℃以下、より好ましくは115℃、さらに好ましくは100℃以下、さらにより好ましくは80℃以下、特に好ましくは65℃以下、特により好ましくは60℃以下である。T1-T2が上記範囲であると、得られる複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。
【0091】
T1は、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは130℃以下、さらにより好ましくは110℃以下、特に好ましくは90℃以下であり、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、さらにより好ましくは70℃以上である。T1が上記の上限以下であると、ラミネート性を高めやすく、またT1が上記の下限以上であると、工程通過性を高めやすい。
【0092】
T2は、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらにより好ましくは80℃以下、特に好ましくは60℃以下、特により好ましくは50℃以下であり、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、さらにより好ましくは20℃以上、特に好ましくは25℃以上である。T2が上記の上限以下であると、ラミネート性を高めやすく、またT2が上記の下限以上であると、工程通過性を高めやすい。
【0093】
熱圧着工程において、原料複合フィルムが第1ロール及び第2ロールの間を通過するときに、0.01MPa以上2.0MPa未満の線圧で加圧をすることが好ましい。該線圧は、より好ましくは0.05MPa以上、さらにより好ましくは0.1MPa以上であり、より好ましくは1.5MPa以下、さらに好ましくは1.0MPa以下、さらにより好ましくは0.5MPa以下、特に好ましくは0.35MPa以下である。該線圧が上記範囲内であると、得られる複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。
【0094】
熱圧着工程において、原料複合フィルムが第1ロール及び第2ロールの間を通過するときの速度は、好ましくは0.01m/分以上、より好ましくは0.05m/分以上、さらにより好ましくは0.1m/分以上、特に好ましくは0.2m/分以上であり、好ましくは2.0m/分以下、より好ましくは1.5m/分以下、さらに好ましくは1.0m/分以下、さらにより好ましくは0.8m/分以下である。該速度が上記範囲内であると、得られる複合フィルムのラミネート性及び工程通過性を高めやすい。
【0095】
熱圧着工程で使用する装置は、ロール・ツー・ロール方式に用いられる慣用の装置を使用することができる。また、原料複合フィルムの片面又は両面に保護フィルムを積層させた場合は、熱圧着工程後、該保護フィルムを剥離することで複合フィルムを得ることができる。
【0096】
[ロール]
本発明は、本発明の複合フィルムが巻回されてなる、ロールを包含する。本発明のロールは、好ましくは長尺状の前記複合フィルムがロール状に巻回されてなる。長尺状とは、複合フィルムの幅方向よりも長さ方向の方が大きいフィルムを示す。本発明のロールの大きさは特に限定されないが、複合フィルムの長さが例えば100~4000m、複合フィルムの幅が例えば300~1800mmである。本発明のロールは、前記複合フィルムを含んでなるため、ロール状に巻回する際に、樹脂フィルム(X)と基材(Y)との剥離を有効に抑制できる。また、本発明のロールは合わせガラス作製時のラミネート性にも優れるため、得られる合わせガラスを高温環境下に曝露しても、気泡等の外観欠陥の発生を有効に抑制又は防止できる。
【0097】
本発明のロールは、複合フィルム以外の紙又はフィルムを含んでいてよい。該フィルムとしては、特に限定されず、慣用のものを使用でき、例えばブロッキング防止フィルム、静電気防止フィルム、保護フィルムなどが挙げられる。本発明の一実施態様では、ブロッキング等を有効に防止しやすい観点から、本発明のロールは、合紙又はブロッキング防止フィルムを含んでなり、好ましくは、前記複合フィルムが合紙又はブロッキング防止フィルムとともに巻回されてなる。
【0098】
[合わせガラス用中間膜及び合わせガラス]
本発明は、本発明の複合フィルムを含む、合わせガラス用中間膜を包含する。本発明の合わせガラス用中間膜は、前記複合フィルムを含むため、層間の剥離を有効に防止でき、合わせガラス作製時の作業性、ラミネート性にも優れている。該合わせガラス用中間膜は、前記複合フィルム以外のフィルムを含んでいてよい。フィルムとしては、特に限定されず、慣用のフィルムを用いることができる。
【0099】
本発明は、本発明の合わせガラス用中間膜が、2枚以上のガラスの間に挟持されてなる、合わせガラスを包含する。本発明の合わせガラスは、本発明の複合フィルムを含む合わせガラス用中間膜を含んでなるため、合わせガラス作製時の脱気性に優れ、高温環境下に曝露されても、気泡等の外観不良の発生を有効に抑制又は防止できる。
【0100】
ガラスとしては、透明性、耐候性及び力学強度の観点から、好ましくは無機ガラス;又はメタクリル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、若しくはポリシクロオレフィン系樹脂シート等の有機ガラス;などが挙げられ、より好ましくは無機ガラス、メタクリル樹脂シート又はポリカーボネート樹脂シートであり、特に好ましくは無機ガラスである。無機ガラスとしては、例えばフロートガラス、強化ガラス、半強化ガラス、化学強化ガラス、グリーンガラス又は石英ガラス等が挙げられる。
【0101】
本発明の一実施態様にかかる合わせガラスにおいて、機能Zを有する基材(Y)が導電層(又は導電性構造体)を含む場合、導電層はガラスと接していてもよいが、導電層がガラスと直接接していると、導電層の封止が不十分となって水分が侵入して導電層の腐食を招いたり、合わせガラス製造時に空気が残存して気泡残存又は剥がれの原因を招いたりする場合があるため、部分的あるいは全体に接着層 (U)を封止が不十分な領域に使用してもよい。また、合わせガラス端部から水分が侵入して導電層の腐食を招く場合があるため、導電層は、合わせガラスの端部より1cm以上内側に配置されていることが好ましい。さらに本発明の合わせガラスは、導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離が好ましくは200μm未満、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。導電層と、少なくとも一方のガラスの内側表面との距離が上記範囲であると、ガラス表面の加熱効率が向上し、高い発熱性を得ることができる。
【0102】
本発明の合わせガラスの層構成としては、<複合フィルム>の項に記載の層構成の両表面にそれぞれガラスを積層した層構成などが挙げられる。
【0103】
本発明の合わせガラスは、建物又は乗物における合わせガラスとして使用できる。乗物用ガラスとは、汽車、電車、自動車、船舶又は航空機といった乗物のための、フロントガラス、リアガラス、ルーフガラス又はサイドガラス等を意味する。
【0104】
本発明の一実施態様にかかる合わせガラスにおいて、樹脂フィルム(X)及び/又は基材(Y)が可塑剤を含む場合、通常、可塑剤が含まれない他方の層又は可塑剤が相対的に少ない他方の層に時間経過に伴って移行し、樹脂フィルム(X)に含まれる可塑剤量と基材(Y)に含まれる可塑剤量とは同程度となる。本発明において、この平均可塑剤量は、好ましくは18~35質量%、より好ましくは20~30質量%、特に好ましくは25~29質量%である。平均可塑剤量が前記範囲内であると、例えば衝突時の乗車人物の頭部への衝撃が緩和される等、合わせガラスの所望の特性が得られやすい。平均可塑剤量は、可塑剤移行後に下記式に従い算出できる。
【数1】
A(質量%):樹脂フィルム(X)の可塑剤量
a(mm):樹脂フィルム(X)の厚み
B(質量%):基材(Y)の可塑剤量
b(mm):基材(Y)の厚み
【0105】
樹脂フィルム(X)に含まれる可塑剤量、樹脂フィルム(X)の厚み、基材(Y)に含まれる可塑剤量、及び基材(Y)の厚みを調整することにより、平均可塑剤量は前記範囲内に調整してよい。
【0106】
本発明の合わせガラスは当業者に公知の方法で製造できる。例えば、ガラスの上に前記複合フィルムを配置し、さらにもう一つのガラスを重ねたものを、予備圧着工程として温度を高めて複合フィルムをガラスに全面又は局所的に融着させ、次いでオートクレーブで処理することで、合わせガラスを製造できる。
【0107】
上記予備圧着工程としては、過剰の空気を除去したり隣接する層同士の軽い接着を実施したりする観点から、バキュームバッグ、バキュームリング、又は真空ラミネーター等の方法により減圧下に脱気する方法、ニップロールを用いて脱気する方法、及び高温下に圧縮成形する方法等が挙げられる。
【0108】
例えばEP 1235683 B1に記載のバキュームバッグ法又はバキュームリング法は、例えば約2×104Pa及び130~145℃で実施される。
【0109】
真空ラミネーターは、加熱可能かつ真空可能なチャンバーからなり、このチャンバーにおいて、約20分~約60分の時間内に合わせガラスが形成される。通常は1Pa~3×104Paの減圧及び100℃~200℃、特に130℃~160℃の温度が有効である。真空ラミネーターを用いる場合、温度及び圧力に応じて、オートクレーブでの処理を行わなくてもよい。
【0110】
オートクレーブでの処理は、例えば約1×106Pa~約1.5×106Paの圧力及び約100℃~約145℃の温度で20分から2時間程度実施される。
【実施例0111】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
【0112】
[評価項目及び評価方法]
<引張貯蔵弾性率の測定>
実施例及び比較例において用いた基材(Y)に含まれるポリビニルブチラール樹脂フィルム(基材層)について、下記方法により引張貯蔵弾性率E’(40)を測定した。
基材(Y)に含まれるポリビニルブチラール樹脂フィルム(基材層)を、幅3mm及び長さ3cmの寸法にカットし、動的粘弾性測定用サンプルを作製した。動的粘弾性装置(株式会社ユービーエム製、「Rheogel-E4000」)を用い、20mmのチャック間距離、0.3Hzの周波数、自動調整(10μm、0.05%)の歪み制御、自動静荷重(最低静荷重25g、自動制御値200%)の静荷重制御、-100℃から140℃まで3℃/分の昇温速度、及び引張モードで分析を行った。
【0113】
<十点平均粗さの平均値(Rz)および密着力の測定>
実施例及び比較例で得られた複合フィルムにおける基材Yの幅方向に対する中央部を中心点とし、その中心点から幅方向に10mm、長手方向に200mmの短冊状に複合フィルムを、幅方向に連続するように5ヶ所(すなわち、中央部50mmの範囲)切り出した。ここで、かかる5つのサンプル(試験片)を、順にA、B、C(中央)、D、Eとする。中央部のサンプルCについて、オートグラフ(株式会社島津製作所製、「AG-IS」)を用いて、チャック間距50mm、試験速度100mm/minの条件で、JIS K6854-3に記載される剥離試験を行い、樹脂フィルム(X)と基材(Y)との間の剥離強度を、密着力(N/cm)とした。
樹脂フィルム(X)と基材(Y)とを剥離後、剥離した樹脂フィルム(X)の面A及び面B、並びに基材(Y)の表面のうち樹脂フィルム(X)と密着していない面について、表面粗さ計を使用し、JIS B0601:1994に準じて、λc=0.8mm、λs=2.5μm及び0.25mm/sの条件で、十点平均粗さを測定した。ここで、前記サンプルの内、B、C、Dについてそれぞれ、サンプル表面の任意の5ヶ所における十点平均粗さを測定し、その平均値を十点平均粗さの平均値Rzとした。なお、実施例5、比較例1及び比較例2においては、基材(Y)の表面のうち樹脂フィルム(X)と密着していない面に代えて、接着層(U)の表面のうち基材(Y)と密着していない面について、上記の方法により十点平均粗さを測定した。また、実施例3においては、上記方法で基材(Y)の表面のうち樹脂フィルム(X)と密着していない面の十点平均粗さを測定する代わりに、導電構造体の厚みをマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、「VHX-5000」、200倍率、同軸落射)により測定し、表1に記載した。
【0114】
<空隙の平均幅及び空隙の平均高さの測定>
実施例及び比較例で得られた複合フィルムの幅方向に対する中央部を中心点とし、幅方向に10cm(すなわち、幅方向の中央部10cm範囲)の短冊上に複合フィルムを切り出し、切り出した短冊フィルムにおいて前記幅方向に対応する断面部分を観察できるよう、任意のサンプルホルダーで挟んだのち、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、「VHX-5000」、200倍率、同軸落射)で測定した。樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)中のZ層との間に存在する、空隙である暗部の両端部を形成する2つの密着部において、一方の密着部の中心部から他方の密着部の中心部までの距離(2つの密着部間の距離)を測定し、これを1つの空隙における空隙幅とした。そして、当該短冊フィルムの前記幅方向の断面10cm(すなわち、幅方向の中央部10cm範囲)に存在する全ての空隙の空隙幅が2.0mm以下であるかを確認した。また、該全ての空隙の空隙幅の平均値を複合フィルムの「空隙の平均幅」とした。また、1つの空隙の中央部において、樹脂フィルム(X)の面Bと基材(Y)中のZ層との間の距離を1つの空隙における空隙高さとし、連続する10カ所の空隙における空隙高さの平均値を、複合フィルムの「空隙の平均高さ」とした。
【0115】
<厚さの測定>
樹脂フィルム、基材及び複合フィルムの厚さは、幅方向10cmの範囲内で、3cm毎にJISK6250に準ずる定圧厚さ測定器で測定した平均値を、厚さとした。
【0116】
<アセタール化度及び酢酸ビニル単位の含有率の測定>
実施例及び比較例で使用したポリビニルブチラール樹脂のアセタール化度及び酢酸ビニル単位の含有率は、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定した。
【0117】
<ポリビニルブチラール樹脂の粘度測定>
実施例及び比較例で使用したポリビニルブチラール樹脂の粘度は、各ポリビニルアセタール樹脂をトルエン/エタノール=1/1の混合溶液中に濃度10質量%となるように加え、溶解させ、得られた溶液の粘度を、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定した。
【0118】
<ラミネート性>
実施例及び比較例で得られた複合フィルムを、縦300mm、横300mm、厚さ2mmのガラス2枚の間に積層し、バキュームバッグに投入し、真空引きしながら100℃で30分間静置した。バキュームバッグから中身を取り出し、さらにオートクレーブにて140℃で60分間静置し、合わせガラスを得た。次いで、得られた合わせガラスの目視検査を実施した。さらに、恒温槽内で、100℃で16時間後、110℃で1時間、120℃で1時間、130℃で1時間、140℃で1時間、150℃で1時間と順次、加熱処理を実施した後、ガラス端部10mmを除く領域について、気泡の発生を目視検査し、以下基準に従い評価した。
A:オートクレーブ後、加熱処理後、ともに気泡等の外観欠陥が見られない。
B:オートクレーブ後、140℃での加熱後まで、ともに気泡等の外観欠陥が見られないが、150℃での加熱後以降に5個以下の欠陥が確認できる。
C:オートクレーブ後、気泡等の外観欠陥が見られないが、100℃での加熱後、外観欠点が確認できる。
【0119】
<工程通過性>
粘着ロールクリーナー(日東電工株式会社製、「エレップクリーナー SDR-10-160」)を用いて、実施例及び比較例で得られた複合フィルムの樹脂フィルム(X)表面をハンドローラーで通過させた際に、複合フィルムの樹脂フィルム(X)及び機能層付き基材(Y)との界面剥離が発生しない場合をA、部分的に剥離が生じた場合をB、剥離が生じた場合をCと評価した。
【0120】
[実施例1]
アセタール化度69~71モル%、酢酸ビニル単位の含有率1モル%以下、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1溶液の粘度が1400-1500mPa・sのポリビニルブチラール樹脂72質量%およびトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)28質量%を二軸押出機で溶融混練し、Tダイからフィルム状に押出し、十点平均粗さの平均値(Rz)が25μm、厚さ760μmの可塑化ポリビニルブチラール樹脂フィルムを得、これを樹脂フィルム(X)として用いた。
【0121】
アセタール化度69~71モル%、酢酸ビニル単位の含有率1モル%以下、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1溶液の粘度が150-160mPa・sのポリビニルブチラール樹脂(A)、及びアセタール化度69~71モル%、酢酸ビニル単位の含有率1モル%以下、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1溶液の粘度が1400-1500mPa.sのポリビニルブチラール樹脂(B)を75:25の比率で溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを単軸押出機及びTダイを用いて下記条件で溶融押出し、金属弾性ロール及びゴム弾性ロールを用いて、ポリビニルブチラール樹脂フィルムを得た。得られたポリビニルブチラール樹脂フィルムは、一方の表面が平滑、他方の表面の十点平均粗さの平均値Rzが7.1μmであり、厚さが52μmであった。
溶融押出条件
押出機の設定温度(樹脂材料の溶融温度):200℃、
Tダイの幅:500mm、
Tダイのリップ開度:0.5mm、
Tダイからの溶融樹脂の吐出量:15kg/h
【0122】
上記の方法で得られたポリビニルブチラール樹脂フィルムに、片面が黒化処理された厚み12μmの銅箔を、黒化処理面(以下、黒化面と称することもある)とポリビニルブチラール樹脂フィルムの表面が平滑な面とが接するような向きで重ねた。次に、ポリビニルブチラール樹脂フィルムと銅箔とを重ねた積層体の上下を厚み50μmのPETフィルムで挟み、120℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.5m/分)させた後、PETフィルムを除去することにより、銅箔が積層されたポリビニルブチラール樹脂フィルムを得た。
【0123】
得られた、銅箔が積層されたポリビニルブチラール樹脂フィルムの銅箔上に、ドライフィルムレジストをラミネートした後、フォトリソグラフィの手法を用いてエッチング抵抗パターンを形成した。次に、前記エッチング抵抗パターンが形成された、銅箔が積層されたポリビニルブチラール樹脂フィルムを、銅エッチング液に浸漬して導電性構造体を形成した後、常法により、残存するフォトレジスト層を除去し、ポリビニルブチラール樹脂フィルムの表面に、銅箔のエッチング構造体である導電性構造体を形成させた。導電性構造体は、縦横各18cmの正方形の内部に、各銅線の端部が該正方形の上辺及び下辺に達するように線幅10μmの銅線(主導電細線)が2.0mm間隔で波形状に並んだ構造となるように形成し、この導電性構造体の形成と同時に、前記正方形の上辺及び下辺において、各銅線の端部と電気的に接続するように主バスバーに相当する幅20mm、長さ18cmの銅線を形成した。前記主バスバー上に、長さ50cmの粘着付銅テープ(3M製、「1245」)を貼り合わせ、導電性構造体を作製した。これにより、表面に導電性構造体を有するポリビニルブチラール樹脂フィルム、すなわち、導電性構造体を有する基材層からなる基材(Y)を得た。該基材(Y)は、導電性という機能Zを有する基材である。基材(Y)の導電性構造体を有していない面の十点平均粗さの平均値Rzは5.1μmであった。
【0124】
得られた樹脂フィルム(X)及び基材(Y)を、導電性構造体が樹脂フィルム(X)と接する向きで積層し、上下を厚み50μmのPETフィルムで挟み、樹脂フィルム(X)側を80℃、基材(Y)側を30℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.3m/分)させた後、PETフィルムを除去することにより、複合フィルムを得た。得られた複合フィルムの厚さは810μm、複合フィルム中の樹脂フィルム(X)の厚さは760μm、基材(Y)の厚さは50μmであった。
【0125】
[実施例2]
基材(Y)の作製において、ポリビニルブチラール樹脂(A)及び(B)の混合物(A:B=75:25)95質量%、及びトリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)5質量%を溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂フィルム(X)、ポリビニルブチラール樹脂フィルム、基材(Y)及び複合フィルムを得た。銅箔と積層する前においてポリビニルブチラール樹脂フィルムは、一方の表面が平滑、他方の表面の十点平均粗さの平均値Rzが7.2μmであり、厚さは52μmであった。樹脂フィルム(X)と積層する前において、基材(Y)の導電性構造体を有していない面の十点平均粗さの平均値Rzは5.1μmであった。また、得られた複合フィルムの厚さは810μm、複合フィルム中の基材(Y)の厚さは50μmであった。
【0126】
[実施例3]
複合フィルムの作製において、導電性構造体が樹脂フィルム(X)と接しない向きで、樹脂フィルム(X)及び基材(Y)を積層したこと以外は、実施例1と同様の方法により、樹脂フィルム(X)、ポリビニルブチラール樹脂フィルム、基材(Y)及び複合フィルムを得た。得られた複合フィルムの厚さは810μm、複合フィルム中の樹脂フィルム(X)の厚さは760μm、基材(Y)の厚さは50μmであった。
【0127】
[実施例4]
複合フィルムの作製において、樹脂フィルム(X)側を100℃、基材(Y)側を30℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.4MPa、速度0.3m/分)させたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂フィルム(X)、ポリビニルブチラール樹脂フィルム、基材(Y)及び複合フィルムを得た。得られた複合フィルムの厚さは805μm、複合フィルム中の樹脂フィルム(X)の厚さは777μm、基材(Y)の厚さは48μmであった。
【0128】
[実施例5]
原料樹脂としてのポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと称することがある)フィルム(株式会社クラレ製、「PARAPURE(登録商標) JS」)99.7質量%、及び錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOと称することがある)0.3質量%を二軸押出機で溶融混練し、ストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを単軸押出機及びTダイを用いて溶融押出し、金属弾性ロールを用いて、PMMAフィルムを作製した。該PMMAフィルムは、両面が平滑であり、厚さは100μmであった。該PMMAフィルムは、赤外線吸収性を有する基材層からなる基材(Y)、すなわち、赤外線吸収性という機能Zを有する基材(Y)である。
【0129】
次に、ポリビニルブチラール樹脂(株式会社クラレ製、「Mowital(登録商標)B60H」)の10質量%エタノール溶液を調整し、基材(Y)の片面に、厚さが20μmとなるように塗布・乾燥した。その後、エンボスロールを用いて、接着層(U)が片面に積層された基材層からなる基材(Y)を作製した。基材(Y)の接着層(U)を有していない面の十点平均粗さの平均値Rzは5.0μmであった。
実施例1と同様の方法により樹脂フィルム(X)を作成した後、樹脂フィルム(X)及び接着層(U)を有する基材(Y)をX/Y/Uの順になるよう積層し、上下を厚み50μmのPETフィルムで挟み、樹脂フィルム(X)側を140℃、接着層(U)側を30℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.4MPa、速度0.3m/分)させた後、PETフィルムを除去することにより、複合フィルムを得た。得られた複合フィルムの厚さは870μm、複合フィルム中の樹脂フィルム(X)の厚さは750μm、基材(Y)および接着層(U)の合計厚さは120μmであった。
【0130】
[比較例1]
樹脂フィルム(X)側を80℃、接着層(U)側を30℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.2MPa、速度0.3m/分)させたこと以外は、実施例5と同様の方法で複合フィルムを得た。
【0131】
[比較例2]
機能Zを有する基材(Y)として、着色PETフィルム(日榮新化株式会社製、「黒コート50-SN」、厚さ50μm)を使用したこと以外は、実施例5と同様の方法で複合フィルムを得た。
【0132】
[比較例3]
樹脂フィルム(X)側を140℃、基材(Y)側を100℃に設定した熱圧着ロールの間を通過(圧力:0.4MPa、速度0.3m/分)させたこと以外は、実施例1と同様の方法で複合フィルムを得た。
【0133】
実施例及び比較例で得られた複合フィルムにおいて、密着力(N/cm)の測定結果、並びに、ラミネート性及び工程通過性を評価した結果を表1に示す。また、樹脂フィルム(X)、基材(Y)及び接着層(U)にそれぞれ含まれる樹脂の種類及び可塑剤の含有量(質量%)、基材(Y)を構成する基材層の引張貯蔵弾性率E’(40)、機能Zが有する機能、複合フィルムの層構成、樹脂フィルム(X)の面A及び面(B)のそれぞれの十点平均粗さの平均値(RzA、RzB)、樹脂フィルム(X)と密着していない面の基材(Y)の十点平均粗さの平均値(RzY)、B/A×100(%)、並びに、複合フィルムの空隙の平均幅(mm)及び平均高さ(μm)を測定した結果も表1に示す。
【0134】
【表1】
また、実施例1~5の複合フィルムは、幅方向の断面10cm(すなわち、幅方向の中央部10cm範囲)に存在する全ての空隙の空隙幅が2.0mm以下であった。
【0135】
表1に示される通り、実施例1~3の複合フィルムはラミネート性及び工程通過性の両方の評価がAであり、実施例4及び5の複合フィルムはラミネート性の評価がBであり、工程通過性の評価がAであった。これに対して、比較例2はラミネート性及び工程通過性の両方の評価がBであり、比較例1及び3は一方の評価がCであった。したがって、本発明の複合フィルムは、高いラミネート性を維持しつつ、優れた工程通過性を有することができる。