IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンスター技研株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027945
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】マスキング用水性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230224BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20230224BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230224BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20230224BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230224BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20230224BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20230224BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L23/00
C08L7/00
C08L29/04 Z
C08L1/02
C08K5/3475
C08K5/13
C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133322
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩一
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
【Fターム(参考)】
4H017AA02
4H017AA03
4H017AB17
4H017AD00
4H017AD02
4H017AE05
4J002AB014
4J002AC00W
4J002AC01W
4J002BB01X
4J002BE02Y
4J002EJ006
4J002EJ016
4J002EU176
4J002FA044
4J002FD014
4J002FD036
4J002FD310
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】 種々の材料のマスキング用途に、より具体的には、表面に凹凸を有する材料のマスキング用途に好適なマスキング用組成物を提供する。
【解決手段】 ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含む、マスキング用水性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含む、マスキング用水性組成物。
【請求項2】
ゴムラテックス(A)(固形分)とポリオレフィンエマルション(B)(固形分)との質量比(ゴムラテックス(A)(固形分):ポリオレフィンエマルション(B)(固形分))は、99.5:0.5~50:50である、請求項1記載のマスキング用水性組成物。
【請求項3】
ゴムラテックス(A)は、天然ゴムラテックスを含み、天然ゴムラテックスの少なくとも一部は加硫されている、請求項1又は2に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項4】
水溶性ポリマー(C)は、ポリビニルアルコールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項5】
更に、界面活性剤(E)を含み、界面活性剤は非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項6】
更に、老化防止剤(F)を含み、老化防止剤は、ベンゾトリアゾール系化合物及びフェノール系化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項7】
針状フィラー(D)の平均繊維長は、10~400μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項8】
針状フィラー(D)は、セルロースを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項9】
組成物の粘度は、20℃で1000~150000mPa・sであり、20℃での粘度比は、2.0~8.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項10】
凹凸を有する表面を有する材料用にも適する、請求項1~9のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のマスキング用水性組成物から形成されたマスキング層を有する材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスキング用水性組成物に関し、さらに詳しくは、ゴムラテックス、ポリオレフィンエマルション、水溶性ポリマー及び針状フィラーを含む、マスキング用水性組成物に関する。そのマスキング用水性組成物は、例えば樹脂、金属及びガラス等の表面の保護用、マスキングに好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
建築材料(例えば、外壁材、内壁材など)は、一般的に建築現場以外の場所、例えば、工場等で、適切な大きさ及び形状等に加工され、その後、その建築材料は建築現場で施工される。そのような建築材料の表面及びその他の建築材料との接続部分等は、実際に施工されるまでの間、適切に保護することが必要である。保護が不十分であると、建築材料表面に傷を生ずる、汚濁によって表面の塗工の劣化を生じる、他の建築材料との接続のためのシーリングに支障を生じる等の問題を生じ得る。
また、外壁材は現場での施工において、目地にシーリング材を打設する前に紙製マスキングテープが使用されるが、表面がフラットではない外壁材に対しては、マスキングテープを隙間無く貼るために時間がかかるという課題がある。
【0003】
例えば、特許文献1は、ゴムラテックス及び/又はポリオレフィン系エマルジョンと、シリコーン樹脂エマルジョンと、ワックスエマルジョンとを含有してなる剥離層形成用塗布組成物を開示する。特許文献1は、その剥離層形成用塗布組成物は、内装材料として用いられる壁紙等の壁装材に剥離層を形成させるために好適であることを開示する。
【0004】
特許文献2は、(共)重合体ラテックス100重量部(固形分換算)に対して、充填材10~500重量部及び増粘剤0.1~10重量部を含有し、pHが3~12、粘度が100~10,000cp、フィルムの引張強度が30~200kgf・cm2及び伸び率が50~1,000%である水性マスキング用組成物を開示する。特許文献2は、その水性マスキング用組成物は、金属製品のケミカルミーリングに好適に使用することができることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-074865号公報
【特許文献2】特開平6-041473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2は、いずれも、比較的平坦な表面に対してマスキング性を有するが、建築材料(例えば、外壁材、内壁材など)の表面は、必ずしも平坦でなく、凹凸を有することが多い。
更に、建築材料の表面にマスキング用組成物が塗布されて剥離層が形成された後、しばらくして、適度な時間が経過した後、剥離されて、次の工程、例えば、シーリング等されることが多い。従って、適度な耐候性も求められる。
更に、近年ますます、地球環境の保護、労働環境の改良とともに、意匠性が求められており、表面の凹凸も大きくなる傾向がある。そのため剥がす角度が一定ではなく、鋭角での剥離において破断しない強靭性として伸び、せん断強度、剥離性等の性質に優れることも要求されており、これらの要求に対応できる、新たなマスキング用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含む、マスキング用水性組成物は、種々の材料のマスキング用途に、より具体的には、表面に凹凸を有する材料のマスキング用途に好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本明細書は、以下の実施形態を含む。
1. ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含む、マスキング用水性組成物。
2. ゴムラテックス(A)(固形分)とポリオレフィンエマルション(B)(固形分)との質量比(ゴムラテックス(A)(固形分):ポリオレフィンエマルション(B)(固形分))は、99.5:0.5~50:50である、上記1記載のマスキング用水性組成物。
3. ゴムラテックス(A)は、天然ゴムラテックスを含み、天然ゴムラテックスの少なくとも一部は加硫されている、上記1又は2に記載のマスキング用水性組成物。
4. 水溶性ポリマー(C)は、ポリビニルアルコールを含む、上記1~3のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
5. 更に、界面活性剤(E)を含み、界面活性剤は非イオン性界面活性剤を含む、上記1~4のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
6. 更に、老化防止剤(F)を含み、老化防止剤は、ベンゾトリアゾール系化合物及びフェノール系化合物から選択される少なくとも1種を含む、上記1~5のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
7. 針状フィラー(D)の平均繊維長は、10~400μmである、上記1~6のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
8. 針状フィラー(D)は、セルロースを含む、上記1~7のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
9. 組成物の粘度は、20℃で1000~150000mPa・sであり、20℃での粘度比は、2.0~8.0である、上記1~8のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
10. 凹凸を有する表面を有する材料用にも適する、上記1~9のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物。
11. 上記1~10のいずれか1つに記載のマスキング用水性組成物から形成されたマスキング層を有する材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含み、マスキング用水性組成物は、種々の材料のマスキング用途に、より具体的には、表面に凹凸を有する材料のマスキング用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一の要旨において、新規なマスキング用水性組成物を提供し、それは、
ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含む。
【0011】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、ゴムラテックス(A)を含む。
本明細書において、ゴムラテックス(A)とは、ゴム(ゴム弾性を有する高分子)のコロイド状水分散物をいい、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
ゴム(ゴム弾性を有する高分子)とは、エラストマーと呼ばれる高分子であってよく、熱硬化性エラストマー及び熱可塑性エラストマー等を含む。
【0012】
ゴム(ゴム弾性を有する高分子)として、例えば、天然ゴム、加硫された天然ゴム、その他の変性天然ゴム、スチレンブタジエン共重合体、ニトリルブタジエン共重合体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、エチレンプロピレンジエン重合体、アクリル重合体、及びウレタン結合を含む重合体等を例示することができる。
ゴム(ゴム弾性を有する高分子)として、天然ゴム、加硫された天然ゴム、その他の変性天然ゴム、スチレンブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム)、ニトリルブタジエン共重合体、ブタジエン重合体(ブタジエンゴム)、イソプレン重合体、エチレンプロピレンジエン重合体、アクリル重合体、及びウレタン結合を含む重合体から選択される少なくとも一種以上含むことが好ましく、天然ゴム、加硫された天然ゴム、その他の変性天然ゴム、スチレンブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム)、ブタジエン重合体(ブタジエンゴム)から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、スチレンブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム)を含むことが更に好ましい。スチレンブタジエン共重合体(スチレンブタジエンゴム)を含む場合、全体的に物性が向上し、密着性が向上し得る。
ゴムラテックス(A)は、天然ゴムラテックスを含み、天然ゴムラテックスの少なくとも一部は加硫されていることが好ましい。
【0013】
ゴムラテックス(A)の固形分は、30~95質量%であることが好ましく、40~90質量%であることがより好ましく、50~85質量%であることが更に好ましく、60~80質量%であることが更により好ましい。ゴムラテックス(A)の固形分が、30~95質量%である場合、本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、ハイソリッド で乾燥性が良く、貯蔵安定性により優れる。
【0014】
ゴムラテックス(A)として、市販品を使用することができる。
株式会社レジテックス製のTRH-70(商品名)(固形分:70質量%)、株式会社レジテックス製のULACOL(商品名)(固形分:61質量%)、株式会社レジテックス製のSS-58(商品名)(固形分:58質量%)、株式会社レジテックス製のPC518R(商品名)(固形分:60質量%)、株式会社レジテックス製のSBR1273(商品名)(固形分:50質量%)、株式会社レジテックス製のSBR1262(商品名)(固形分:49質量%)、JSR株式会社製の2108(商品名)(固形分:40質量%)、JSR株式会社製の0568(商品名)(固形分:50質量%)、日本エイアンドエル株式会社製のナルスターSR130(商品名)(固形分:49質量%)、日本エイアンドエル株式会社製のナルスターSR107(商品名)(固形分:48質量%)等を例示できる。
ゴムラテックス(A)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、例えば、35~95質量部のゴムラテックス(A)(固形分)を含んでよく、45~90質量部のゴムラテックス(A)(固形分)を含むことが好ましく、55~85質量部のゴムラテックス(A)(固形分)を含むことがより好ましく、60~80質量部のゴムラテックス(A)(固形分)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、65~75質量部のゴムラテックス(A)(固形分)を含む場合、強靭性により優れる。
【0016】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、ポリオレフィンエマルション(B)を更に含むことができる。
本明細書において、ポリオレフィンエマルション(B)とは、例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなどの、アルケン(一般式CnH2n、オレフィンともいう)の重合体(ポリマー)のエマルションをいい、オレフィンの重合体が微粒子状で(水性)媒体中に分散して存在することができれば、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0017】
ポリオレフィンエマルション(B)のポリオレフィンとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を例示することができる。
ポリオレフィンとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を含むことが好ましい。
【0018】
ポリオレフィンエマルション(B)に含まれる粒子の粒子径は、0.01~100μmであることが好ましく、0.01~50μmであることがより好ましく、0.01~30μmであることが更に好ましく、0.01~10μmであることが更により好ましい。
ポリオレフィンエマルション(B)に含まれる粒子の粒子径は、0.01~100μmである場合、貯蔵安定性により優れる。
尚、ポリオレフィンエマルション(B)に含まれる粒子の粒子径は、コールターカウンター法を用いて測定することができる。
【0019】
ポリオレフィンエマルション(B)に含まれる粒子の軟化点は、30~100℃であることが好ましく、35~80℃であることがより好ましく、40~75℃であることが更に好ましく、50~60℃であることが更により好ましい。
ポリオレフィンエマルション(B)に含まれる粒子の軟化点は、50~60℃である場合、強靭性により優れる。
尚、ポリオレフィンエマルション(B)に含まれる粒子の軟化点は、JISK6760に準拠して測定することができる。
【0020】
ポリオレフィンエマルション(B)の固形分は、20~70質量%であることが好ましく、25~65質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることが更に好ましく、35~45質量%であることが更により好ましい。ポリオレフィンエマルション(B)の固形分が、20~70質量%である場合、本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、乾燥性、貯蔵安定性により優れる。
【0021】
ポリオレフィンエマルション(B)として、市販品を使用することができる。
例えば、三井化学株式会社製のケミパールA-400(商品名)(固形分:40質量%、粒子径:3.5μm、軟化点:55℃)、三井化学株式会社製のケミパールM200(商品名)(固形分:40質量%、粒子径:6μm、軟化点:75℃)、住友精化株式会社製のザイクセンAC(商品名)(固形分:30質量%、粒子径:0.2μm)、ユニチカ株式会社製のアローベースCD-1200(商品名)(固形分:20質量%、粒子径:0.7μm)を例示できる。
ポリオレフィンエマルション(B)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物(固形分)あたり、例えば、0.1~20質量部のポリオレフィンエマルション(B)(固形分)を含んでよく、0.5~15質量部のポリオレフィンエマルション(B)(固形分)を含むことが好ましく、1~10質量部のポリオレフィンエマルション(B)(固形分)を含むことがより好ましく、1.5~5質量部のポリオレフィンエマルション(B)(固形分)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、100質量部のマスキング用水性組成物(固形分)あたり、0.1~20質量部のポリオレフィンエマルション(B)(固形分)を含む場合、強靭性により優れる。
【0023】
更に、ゴムラテックス(A)(固形分)とポリオレフィンエマルション(B)(固形分)との質量比(ゴムラテックス(A)(固形分):ポリオレフィンエマルション(B)(固形分))は、0.5:99.5~50:50であることが好ましく、1:99~30:70であることがより好ましく、2:98~20:80であることが更に好ましく、5:95~10:90であることが更により好ましい。
ゴムラテックス(A)(固形分)とポリオレフィンエマルション(B)(固形分)との質量比(ゴムラテックス(A)(固形分):ポリオレフィンエマルション(B)(固形分))は、0.5~99.5:50~50である場合、本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、強靭性により優れる。
【0024】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、水溶性ポリマー(C)を更に含むことができる。
本明細書において、水溶性ポリマー(C)とは、一般的に、水に溶けるポリマーであると当業者に理解されるポリマーをいい、例えば、ポリビニルアルコール、ポリブチルアルコール、水溶性ナイロン、水溶性ポリエステルなどのポリマーをいい、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0025】
水溶性ポリマー(C)として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリブチルアルコール、水溶性ナイロン、水溶性ポリエステル 等を例示することができる。
水溶性ポリマー(C)は、ポリビニルアルコール、又はポリブチルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。
【0026】
水溶性ポリマー(C)の固形分は、1~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましく、15~25質量%であることが更により好ましい。水溶性ポリマー(C)の固形分が、1~40質量%である場合、本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、乾燥性、貯蔵安定性により優れる。
【0027】
水溶性ポリマー(C)として、市販品を使用することができる。
株式会社クラレ製のクラレポバール5-98(商品名)(ケン化度:98~99mol%)、クラレポバール28-98(商品名)(ケン化度:98~99mol%)、デンカ株式会社製のデンカポバールK-05(商品名)(ケン化度:98.3mol%)、積水化学株式会社製のブチラールKW-3(商品名)(固形分:20質量%)、等を例示できる。
水溶性ポリマー(C)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物(固形分)あたり、例えば、1~20質量部の水溶性ポリマー(C)(固形分)を含んでよく、1~15質量部の水溶性ポリマー(C)(固形分)を含むことが好ましく、1~10質量部の水溶性ポリマー(C)(固形分)を含むことがより好ましく、1~5質量部の水溶性ポリマー(C)(固形分)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、1~20質量部の水溶性ポリマー(C)(固形分)を含む場合、強靭性により優れる。
【0029】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、針状フィラー(D)を更に含むことができる。
本明細書において、針状フィラー(D)とは、針のように細長い針状の形状を有するフィラー(充填材)をいい、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0030】
針状フィラー(D)として、例えば、セルロース、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)等を例示することができる。
針状フィラー(D)は、セルロール、ウォラストナイト、カーボンファイバーを含むことが好ましく、セルロールを含むことがより好ましい。
【0031】
針状フィラー(D)の平均繊維長は、10~400μmであることが好ましく、50~350μmであることがより好ましく、100~300μmであることが更により好ましい。
針状フィラー(D)の平均繊維長は、10~400μmである場合、発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、強靭性により優れ、より高粘度比になり得る。
針状フィラー(D)の平均繊維長は、Fiber Tester(L&W社)を用いて測定することができる。
【0032】
針状フィラー(D)のかさ比重は、10~150g/Lであることが好ましく、25~115g/Lであることが更に好ましく、40~80g/Lであることが更により好ましい。
針状フィラー(D)のかさ比重は、10~150g/Lである場合、発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、強靭性により優れ、より高粘度比になり得る。
針状フィラー(D)のかさ比重は、JIS K 5101-12-2記載の方法等で測定することができる。
【0033】
針状フィラー(D)として、市販品を使用することができる。
日本製紙株式会社製のKCフロックW50(商品名)(平均繊維長:115μm、かさ比重:23~33g/L)、KCフロックW100(商品名)(平均繊維長:100μm、かさ比重:20~30g/L)、レッテンマイヤー株式会社製のBC-200(商品名)(平均繊維長:300μm、かさ比重:70~90g/L)、レッテンマイヤー株式会社製のBWW-40(商品名)(平均繊維長:200μm、かさ比重:125~145g/L)等を例示できる。
針状フィラー(D)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0034】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、例えば、1~30質量部の針状フィラー(D)を含んでよく、1~20質量部の針状フィラー(D)を含むことが好ましく、1~15質量部の針状フィラー(D)を含むことがより好ましく、1~10質量部の針状フィラー(D)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、1~30質量部の針状フィラー(D)を含む場合、強靭性により優れ、より高粘度比になりえる。
【0035】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、界面活性剤(E)を更に含むことができる。
本明細書において、界面活性剤(E)とは、親水基と疎水基を有し、水と油との両者に親和性を有する(両親媒性という)化合物であり、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0036】
界面活性剤(E)として、例えば、水中でマイナスイオンに電離し得るカルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸エステル塩等の親水基を有する陰イオン界面活性剤;
水中でプラスイオンに電離し得るアミン塩又は第4級アンモニウム塩を有する陽イオン界面活性剤;
水に溶解したときアルカリ性領域では陰イオンの性質を示し、酸性領域では陽イオンの性質を示すカルボン酸塩、アミノ酸、ベタイン等の両性イオンを有する両性イオン界面活性剤;
親水基が水中でイオン解離しない水酸基(-OH)及び/又はエーテル結合(-O-)などで構成されているエステル型、エーテル型、エステル・エーテル型等の非イオン性親水基を有する非イオン性界面活性剤を例示することができる。
界面活性剤(E)は、非イオン界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤(E)は、非イオン界面活性剤を含む場合、発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、保管後の剥離性により優れる(膜の破断をより生じ難くなる)。
【0037】
界面活性剤(E)として、市販品を使用することができる。
第一工業製薬株式会社製のノイゲン(商品名)、日油株式会社製のノニオン(商品名) 株式会社ADEKA製のアデカトールLA775(商品名)、三洋化成株式会社製のエレミノール200L(商品名)等を例示できる。
界面活性剤(E)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物(固形分)あたり、例えば、1~10質量部の界面活性剤(E)を含んでよく、1.5~9質量部の界面活性剤(E)を含むことが好ましく、2~8質量部の界面活性剤(E)を含むことがより好ましく、2.5~7.5質量部の界面活性剤(E)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、100質量部のマスキング用水性組成物(固形分)あたり、1~10質量部の界面活性剤(E)を含む場合、保管後の剥離性により優れる(膜の破断をより生じ難くなる)。
【0039】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、老化防止剤(F)を更に含むことができる。
本明細書において、老化防止剤(F)とは、光(主に、紫外線)及び/又は熱等によってマスキング用水性組成物が劣化することを防止することができる化合物をいい、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0040】
老化防止剤(F)として、例えば、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチル-5'-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6'-tert-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート等のベンゾトリアゾール系化合物;
1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ブチリデンビス(メチル-ブチルフェノール)、3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸-n-オクタデシル、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のヒンダードフェノール系化合物;
4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ブチリデンビス(メチル-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物;
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物等のアミン-ケトン系化合物;
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、モノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノール等のモノフェノール系化合物;
2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルハイドロキノン等のポリフェノール系化合物;
2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩等のベンズイミダゾール系化合物
を例示することができる。
【0041】
老化防止剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物及びフェノール系化合物をから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。老化防止剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物及びフェノール系化合物をから選択される少なくとも1種を含む場合、発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、耐候性(屋外暴露)により優れる。
【0042】
老化防止剤(F)として、市販品を使用することができる。
城北化学工業株式会社のJF79(商品名)、ケミプロ化成株式会社製のKEMISORB 74(商品名)、アデカ株式会社のアデカスタブAO60P(商品名)、株式会社リャンロンジャパン製のRIANOX 1010(商品名)、大内新興化学工業株式会社のノクラックNS30(商品名)、住化ケムテックス株式会社製のSumilizer BBM-S(商品名)を例示できる。
老化防止剤(F)は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物(固形分)は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、例えば、1~20質量部の老化防止剤(F)を含んでよく、3~15質量部の老化防止剤(F)を含むことが好ましく、5~10質量部の老化防止剤(F)を含むことがより好ましく、7~9質量部の老化防止剤(F)を含むことがより好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、100質量部のマスキング用水性組成物あたり、1~20質量部の老化防止剤(F)を含む場合、耐候性(屋外暴露)により優れる。
【0044】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、その他の成分を適宜含むことができる。その他の成分として、例えば、通常の充填材(針状フィラーを除く)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、炭酸カルシウム、シリカ、クレー等を例示することができる。その他の成分は、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
【0045】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、上述の成分を混合することによって製造することができる。
本発明は、他の要旨において、ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を混合することを含むマスキング用水性組成物の製造方法を提供することができる。
【0046】
他の要旨において、ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を混合する装置及び方法は、本発明が目的とするマスキング用水性組成物を製造することができる限り特に制限されることはない。
そのような混合装置として、具体的には、例えば、二軸ミキサー、プラネタリミキサー、シグマミキサー、ニーダー、アトライター、グレンミル、ロール、ディゾルバー等を使用することができる。
更に、混合は、混合することが可能な入れ物を使用して行うことができ、例えば、タンク、容器等の中で行うことができる。
【0047】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、粘度、粘度比、初期引張強度Tmax(N/mm)、初期伸びEmax(%)、保管後引張強度Tmax(N/mm)、保管後伸びEmax(%)、初期剥離性、保管後剥離性、保管後鋭角剥離性、振動密着性、耐水密着性、耐候性(14日) に優れることが好ましい。詳細な評価方法は、実施例に記載した。
【0048】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物の粘度は、回転粘度計(B形粘度計、5号ローター)を使用して、20℃20rpmで測定して、1000~150000mPa・sであることが好ましく、2000~10000mPa・sであることがより好ましく、3000~8000mPa・sであることが更に好ましく、4000~6000mPa・sであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物の粘度は、20℃20rpmで測定して1000~150000mPa・sである場合、スプレー性、垂下性(たれ性)により優れる。
【0049】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物の粘度比(2rpmの粘度/20rpmの粘度)は、20℃で2.0~9.0であることが好ましく、20℃で3.0~8.0であることがより好ましく、20℃で4.0~7.5であることが更に好ましく、20℃で5.0~7.0であることが更により好ましい。
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物の粘度比(2rpmの粘度/20rpmの粘度)は、20℃で2.0~9.0である場合、垂下性(たれ性)により優れる。
【0050】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、公知の塗布装置及びそれらを使用する塗布方法、例えば、エアースプレー、エアーレススプレー、ディスペンサー、ロールコーター、カーテンコーター、ディップコーター等の塗布装置及びそれらを使用する塗布方法を用いて、種々の基材の表面に塗布して、剥離可能層を形成することができる。剥離可能層は、例えば、熱風循環式オーブン、赤外線ヒーター等を使用して、必要であれば所定温度に加熱して、乾燥することができる。
【0051】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、種々の基材の表面に塗布してマスキング層(剥離可能層)を形成することができる。そのようなマスキング層を形成可能な基材として、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル等の樹脂、アルミニウム、塗装鋼板及び電着鋼板等の金属、フロートガラス、強化ガラス及びすりガラス等のガラス、天然木、表面に炭化処理が施された木材、集成材、合板及びパーティクルボード等の木質材料、セメント質材料を使用して製造された窯業系材料等を例示することができる。
【0052】
そのような基材の表面は、平滑であってよいが、凹凸を有していてもよい。凹凸の最大高さは、4~5mmであってよく、6~7mmであってよく、7~8mmであってよく、9~10mmであってよい。凹凸の山の最大の角度は、20~30度であってよく、40~50度であってよく、60~70度であってよく、80~90度であってよい。
【0053】
本発明は好ましい要旨において、本発明の実施形態のマスキング用水性組成物から形成されたマスキング層を有する基材(又は材料)を提供することができる。
これらの基材(又は材料)は、種々の産業上の技術分野に使用することができる。そのような技術分野として、例えば、サイディングボート、ALCパネル及びアルミサッシ等の建築分野、塗装鋼板、電着鋼板及びガラス等の自動車分野などを提示することができる。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0055】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
(A)ゴムラテックス
(a1)天然ゴムラテックス(株式会社レジテックス製のTRH-70(商品名)、固形分:70質量%)
(a2)加硫した(架橋された)天然ゴムラテックス(株式会社レジテックス製のSS-58(商品名)、固形分:58質量%)
(a3)変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(株式会社レジテックス製のSBR1273(商品名)、固形分:50質量%)
(B)ポリオレフィンエマルション
(b1)ポリオレフィン(PE、PP等)微粒子の水性ディスパーション(三井化学株式会社製のケミパールA-400(商品名)、固形分:40質量%、粒子径:0.01~10μm、軟化点:55℃)
(C)水溶性ポリマー
(c1)ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のクラレポバール5-98(商品名)、固形分:20質量%、ケン化度:98~99mol%)
【0056】
(D)針状フィラー
(d1)粉末セルロース(日本製紙株式会社製のKCフロックW100(商品名)、平均繊維長:100μm、平均繊維厚16.9μm、かさ比重:20~30g/L)
(d2)粉末セルロース(レッテンマイヤー株式会社製のBC-200(商品名)、平均繊維長:300μm、平均繊維厚20.0μm、かさ比重:70~90g/L)
(d3’)CaCO3
(E)界面活性剤
(e1)非イオン性界面活性剤(ADEKA株式会社製のアデカトールLA775(商品名))
(F)老化防止剤
(f1)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(城北化学工業株式会社のJF79(商品名)、固形分:100%)
(f2)ヒンダードフェノール系紫外線吸収剤(アデカ株式会社のアデカスタブAO60P(商品名)、固形分:100%)
(f3)ビスフェノール系老化防止剤(大内新興化学工業株式会社のノクラックNS30(商品名)、固形分:100%、)
【0057】
これらの成分を表1及び2に示す割合で配合して、実施例1~10及び比較例1~3のマスキング用水性組成物を製造した。
【0058】
上述のマスキング用水性組成物の各々について、粘度、粘度比、初期引張強度(N/mm)、初期伸び(%)、保管後引張強度(N/mm)、保管後伸び(%)、初期剥離性、保管後剥離性、保管後鋭角剥離性、振動密着性、耐水密着性、耐候性(14日)を、下記の方法で測定し、評価した。結果を表1及び2に示す。
【0059】
粘度及び粘度比
上述のマスキング用水性組成物の各々について、回転粘度計(東京計器株式会社製のB形粘度計(商品名)、5号ローター)を使用して、20℃で、20rpmと2rpmで測定して、20rpmの粘度(η20:mPa・s)と2rpmの粘度(η2:mPa・s)を得た。
粘度比は、2rpmの粘度(η2)を20rpmの粘度(η20)で除して求めた(η2/η20)。
結果は、表1~2に示した。
【0060】
初期引張強度(N/mm)及び初期伸び(%)
上述のマスキング用水性組成物の各々について、膜厚約200μmで1cm×4cmの大きさのシートを作製した。そのシートを、20℃65%RHの条件で3日養生後、 JIS K 7127に記載の方法に準ずる引張試験を行って、引張強度(Tmax)を測定して、初期引張強度(N/mm)を得た。初期引張強度(N/mm)測定時の破断時伸び(Emax)を測定して、初期伸び(%)を得た。結果は、表1~2に示した。
【0061】
保管後引張強度(N/mm)及び保管後伸び(%)
上述のマスキング用水性組成物の各々について、膜厚約200μmで1cm×4cmの大きさのシートを作製した。そのシートを、90℃で15日間保管した。その後、JIS K 7127に記載の方法に準ずる引張試験を行って、引張強度(Tmax)を測定して、保管後引張強度(N/mm)を得た。保管後引張強度(N/mm)測定時の破断時伸び(Emax)を測定して、保管後伸び(%)を得た。結果は、表1~2に示した。
【0062】
初期剥離性
上述のマスキング用水性組成物の各々を、凹凸のあるサイディングの塗面(凹凸の最大高さ:7mm、山の角度は最大70°)に、膜厚約500μmになるように、塗布した。その塗膜を、20℃60%RHの条件で3日養生後、JIS K 6854-2に記載の方法に準じ、つかみ移動速度750mm/minで、180°引張試験を行って、膜の破断の有無を目視で観察した。判断基準は下記の通りである。結果は、表1~2に示した。
○:膜に破断が認められない。
△:膜の最終末端部のみ破断が認められる。
×:膜に破断が認められる。
【0063】
保管後剥離性
上述のマスキング用水性組成物の各々を、凹凸のあるサイディングの塗面(凹凸の最大高さ:7mm、山の角度は最大70°)に、膜厚約500μmになるように、塗布した。その塗膜を、20℃60%RHの条件で3日養生後、更に、70℃で20日間保管した。その後、JIS K 6854-2に記載の方法に準じ、つかみ移動速度750mm/minで、180°引張試験を行って、膜の破断の有無を目視で観察した。判断基準は下記の通りである。結果は、表1~2に示した。
○:膜に破断が認められない。
△:膜の最終末端部のみ破断が認められる。
×:膜に破断が認められる。
【0064】
保管後鋭角剥離性
上述のマスキング用水性組成物の各々を、凹凸のあるサイディングの塗面(凹凸の最大高さ:7mm、山の角度は最大70°)に、膜厚約500μmになるように、塗布した。その塗膜を、20℃60%RHの条件で3日養生後、更に、70℃で20日間保管した。その後、JIS K 6854-2に記載の方法に準じ、つかみ移動速度750mm/minで、30°引張試験を行って、膜の破断の有無を目視で観察した。判断基準は下記の通りである。結果は、表1~2に示した。
○:膜に破断が認められない。
△:膜の最終末端部のみ破断が認められる。
×:膜に破断が認められる。
【0065】
振動密着性
上述のマスキング用水性組成物の各々を、凹凸のあるサイディングの塗面(凹凸の最大高さ:7mm、山の角度は最大70°)に、膜厚約500μmになるように、塗布した。その塗膜を、20℃60%RHの条件で3日養生後、ダイヤモンド刃、厚み2.4mmの丸ノコを用いて、膜の面を長さ20cmカットし、膜の剥がれの有無を目視で観察した。判断基準は下記の通りである。結果は、表1~2に示した。
○:膜に剥がれが認められない。
△:膜にわずかの剥がれが認められる。
×:膜に剥がれが認められる。
【0066】
耐水密着性
上述のマスキング用水性組成物の各々を、凹凸のあるサイディングの塗面(凹凸の最大高さ:7mm、山の角度は最大70°)に、膜厚約500μmになるように、塗布した。その塗膜を、20℃60%RHの条件で3日養生後、20℃の水に1日間浸漬後、膜の剥がれの有無を目視で観察した。判断基準は下記の通りである。結果は、表1~2に示した。
○:膜に剥がれが認められない。
△:膜にわずかの剥がれが認められる。
×:膜に剥がれが認められる。
【0067】
耐候性(14日)
上述のマスキング用水性組成物の各々を、凹凸のあるサイディングの塗面(凹凸の最大高さ:7mm、山の角度は最大70°)に、膜厚約500μmになるように、塗布した。その塗膜を、20℃60%RHの条件で3日養生後、南向き60°角屋外暴露台に14日間放置した。その後、JIS K 6854-2に記載の方法に準じ、つかみ移動速度750mm/minで、180°引張試験を行って、膜の破断の有無を目視で観察した。判断基準は下記の通りである。結果は、表1~2に示した。
○:膜に破断が認められない。
△:膜の最終末端部に破断が認められる。
×:膜に破断が認められる。




【0068】
【表1】









【0069】
【表2】
【0070】
実施例1~10のマスキング用水性組成物は、粘度、粘度比、初期引張強度(N/mm)、初期伸び(%)、保管後引張強度(N/mm)、保管後伸び(%)、初期剥離性、保管後剥離性、保管後鋭角剥離性、振動密着性、耐水密着性、耐候性(14日)のいずれについても劣ることはなく、要求を満たし得るものであった。
【0071】
比較例1~3のマスキング用水性組成物は、上述の性質のいずれかが劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の実施形態のマスキング用水性組成物は、ゴムラテックス(A)、ポリオレフィンエマルション(B)、水溶性ポリマー(C)及び針状フィラー(D)を含み、マスキング用水性組成物は、種々の材料のマスキング用途に、より具体的には、表面に凹凸を有する材料のマスキング用途に好適に使用することができる。