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特開2023-2797液晶ポリマー材料上で配向を生じさせる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002797
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】液晶ポリマー材料上で配向を生じさせる方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221227BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20221227BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20221227BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20221227BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221227BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221227BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/30 365
G09F9/00 313
G02F1/1337
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022174842
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2019504834の分割
【原出願日】2017-07-20
(31)【優先権主張番号】16182085.7
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17179308.6
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518163910
【氏名又は名称】ロリク・テクノロジーズ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ROLIC TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デレベール,ファビアン・グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】タン,チアン
(72)【発明者】
【氏名】エッカール,ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】スカンデュッチ・ド・フレイタス,パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ザイベルレ,フーベルト
(57)【要約】      (修正有)
【課題】積み重ねられたLCP層の生産の複雑さを低減し、そして同時に、生産コストを低減する。
【解決手段】本発明は、異方性光学機能及び配向能を含む層を含む光学素子を製造する方法に関する。該層は、重合性液晶と1つ以上の光配列性物質とを含む組成物から形成される。該層上の配向は、直線偏光された光に露光することによって達成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性光学機能及び配向能を含む層(23、26、27、28)を含む光学素子(1、2、3、4、5、6)を製造する方法であって、
- 重合性液晶及び光配列性物質(PLCPO材料)を含む組成物を提供する工程と、
- 支持体(21)上にPLCPO材料の層を形成する工程と、
- PLCPO層(23、26、27、28)において重合性液晶の重合を開始させる工程と、
- 表面の少なくとも1つの領域における配向方向が、該少なくとも1つの領域における層の上面の直下の液晶の液晶ダイレクタの配列と異なるように、PLCPO層(23、26、27、28)を配向光に露光して、スレーブ材料のために層の上面に配向を生じさせる工程と
を含む方法。
【請求項2】
PLCPO層(23、26、27、28)の液晶材料に配向処理を適用する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
配向光の作用によるPLCPO層(23、26、27、28)中の液晶の再配列が阻止される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
重合性液晶の重合が、PLCPO層(23、26、27、28)が配向光に露光される前に開始される、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
重合性液晶の重合が、PLCPO層(23、26、27、28)が配向光に露光された後に開始される、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項6】
重合性液晶の重合及び配向の生成が、PLCPO層(23、26、27、28)を配向光に露光する一工程において達成される、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項7】
PLCPO材料が、1を超える光配列性物質を含む、請求項1~6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
光配列性物質の濃度が、PLCPO層の中央よりも該層の上面において高くなるように、PLCPO中の光配列性物質が密度勾配を有する、請求項1~7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
光配列性物質が、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、並びに/又はポリシロキサンである、請求項1~8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
PLCPO材料が、等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤を含む、請求項1~9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
光学異方特性を有し、そして、その表面において配向能を有するPLCPO層(23、26、27、28)を含む層構造(1、2、3、4、5、6)であって、少なくとも1つの領域において、PLCPO層によって与えられる配向方向が、層の上面の直下のPLCPO層中の液晶配列とは異なる層構造。
【請求項12】
光配列性物質の濃度が、PLCPO層の中央よりも層の上面において高くなるように、PLCPO中の光配列性物質が密度勾配を有する、請求項11記載の層構造。
【請求項13】
光配列性物質が、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、並びに/又はポリシロキサンである、請求項11又は12記載の層構造。
【請求項14】
PLCPO材料が、等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤を含む、請求項11~13のいずれか記載の層構造。
【請求項15】
PLCPO層によって与えられる配向が、局所的に異なる配列を有する、請求項11~14のいずれか記載の層構造。
【請求項16】
PLCPO層と直接接触している追加の異方性層を有し、追加の層が、液晶ポリマー(25、26、27、28)を含み、追加の層の液晶ポリマーが、PLCPO層の配向情報に従って配向される、請求項11~15のいずれか記載の層構造。
【請求項17】
層構造がアクロマティックリターダとして作用するように、PLCPO層及び追加の異方性層が構成される、請求項16に記載の層構造。
【請求項18】
反射偏光子と請求項17記載のアクロマティックリターダとを含む光学装置。
【請求項19】
液晶又はOLEDディスプレイにおける光管理のための、請求項11~17のいずれか記載の層構造の使用。
【請求項20】
重合性液晶と光配列性物質とを含む組成物であって、光配向物質の重量パーセントが、5%未満、1重量%未満、又は更には0.1重量%未満であり、そして、光配列性物質が、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、並びに/又はポリシロキサンである組成物。
【請求項21】
光配列性物質が、ポリマーであり、そして、側鎖にフッ素化部分を含む、請求項20記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマー材料を含む材料の表面上で配向を生じさせる方法、及びこのような方法を用いて製造される層構造に関する。
【0002】
背景技術
数年前から、様々な用途のための液晶ディスプレイ(LCD)及び光学リターダフィルム、例えば、パッシブ3Dのテレビ及びモニタ用のフィルムパターンドリターダとしても知られている3Dコンバータフィルム等の大規模生産に光配向が導入されて成功をおさめている。
【0003】
表面をブラシでこすることによる従来の液晶の配向に比べて、光配向技術は、高い再現性、配向パターニング、及びロール・ツー・ロール製造に対する適性等の多くの利点を有する。更に、光配向層において配向を生じさせる光は表面変調に追従することができるので、光配向はレンズ等の曲面に適用することができるが、これは、他の配向法の大部分には当てはまらない。現行の光配向技術では、光配向材料の薄層がガラス板又はプラスチック箔等の基板に適用される。
【0004】
光学リターダフィルムの場合、光配向層上に液晶モノマーが適用される。光配向層の配向情報を液晶モノマーに転写した後、液晶材料を固化させるために該モノマーを重合及び/又は架橋させる。重合及び/又は架橋した液晶モノマーは、液晶ポリマー(LCP)としても知られている。
【0005】
米国特許第6,717,644(B2)号には、個々の光学軸方向を有するLCP層のスタックが開示されている。LCP層はそれぞれ、光配向層等の配向層によって配向される。このため、LCP層のスタックにおける層の総数は、LCP層の数の少なくとも2倍である。例えば、個々の光学軸方向を有するLCP層のスタッキングを用いて、Solcフィルタ等の干渉色フィルタを作製することができる。
【0006】
米国特許第7,364,671(B2)号には、架橋性液晶及び光配列性物質を含む組成物が開示されている。更に、これには、該組成物に含まれる光配列性物質の光配向によって架橋性液晶の配列を生じさせる方法が開示されている。続いて、UV光に露光することによって液晶を架橋させる。したがって、上記組成物を使用すれば追加の配向層が必要ないので、1層だけをコーティングすればよい。層中の配列されたLCPに起因して、表面は液晶の配列能を示す。したがって、このような層は、例えばLCDにおいて配向層として使用することができ、そして同時に、層中の配列されたLCPに起因して光学リターダンスを与える。しかし、隣接する液晶材料に転写される方向は、該組成物から作製される層の表面における液晶材料の方向と同一である。第2の層中の物質が異なる偏光方向の照射光で直接光配向され得るように上記組成物の第2の層が第1の層の上に適用される場合でさえも、照射光によって誘導される配列と競合し、そして、ほぼ消滅し得ない第1の層由来の配向力が存在するであろう。上述の米国特許第6,717,644(B2)号に示唆されているように2つの層間に等方性層を適用すると、2つの液晶組成物層の配向が分断されるが、再度層が追加されるので、これは望ましくない。
【0007】
米国特許第8,054,411(B2)号では、上記材料組成物の層を、配向能を有する表面に適用する。該組成物の液晶分子は、光配向物質を含まない通常の液晶材料と同様に、表面の配向方向に従って配向される。次いで、配向表面の配列方向とは異なる、該材料組成物の層において配向方向を誘導することができる偏光方向を有する直線偏光された光により、配向表面の反対側から光配向を実施する。2つの異なる配向力が液晶材料において異なる配列方向を誘導するので、そして、再配列を可能にする条件が選択されるので、層中の液晶材料はねじれ始める。続いて、UV光に露光することによって層中の液晶材料を架橋させて、ねじれた構造を固化させる。直線偏光された光に露光された架橋層の自由表面は、上記と同様に更なる液晶層、例えばLCP層のための配向表面として作用することができる。しかし、追加の層中の液晶分子は、該材料組成物の架橋層の表面において液晶分子と同じ方向に配向される。
【0008】
あるLCP層におけるダイレクタ(液晶分子の平均方向と平行な方向として定義される)が隣接するLCP層におけるダイレクタに影響しないように、LCP層を積み重ねるのに必要な層の数を減らすことができる方法及び材料を有することが望ましい。このような課題に対する解決策は、積み重ねられたLCP層の生産の複雑さを低減し、そして同時に、生産コストを低減するであろう。
【0009】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、複雑なLCP層のスタックを含む装置の生産を簡略化するための方法及び関連する材料を提供することである。本発明の別の目的は、上記方法及び材料を用いて生産することができる装置を提供することである。
【0010】
本発明に係る方法では、少なくとも1層のLCP含有層は、重合性液晶と1つ以上の光配列性物質とを含む組成物から形成される。任意の種類の配向処理を使用して、所望の方向及び/又は構成に重合性液晶材料を配列させることができる。配向光に露光することによって該組成物中の重合性液晶の配列が変化する上記先行技術から知られている方法とは対照的に、本発明の方法は、配向光に露光したときに液晶材料の既に確立されている配列が修正されるのを回避する。したがって、表面の少なくとも1つの領域における配向方向が該少なくとも1つの領域における層の上面の直下の液晶の液晶ダイレクタの配列と異なるように、配向光に露光することによって、上記層の表面において配向が生じる。
【0011】
ねじれていない液晶層については、液晶分子の配列方向は、層の厚み方向に沿って変化しない。しかし、コレステリックな液晶層等のねじれた液晶層については、配列方向が厚み方向に沿って変動する。層中の液晶の位置に関連する用語「表面の直下」とは、該表面に最も近接する液晶分子を指すものとする。したがって、特定の位置における「表面の直下の液晶の配列方向」とは、該位置において該表面に最も近接する液晶分子の平均配列を指すものとする。用語「液晶ダイレクタ」は、「液晶分子の平均配列」と互換的に使用される。液晶分子のみを含む層については、表面に最も近接する液晶分子は該層の表面内でもある。この場合、表面に最も近接する液晶の配列方向は、表面における又は表面内の配列と同一である。非液晶材料を含む組成物では、状況が異なる場合がある。特に非液晶材料が液晶材料から相分離しており、そして、層の表面に主に位置している場合、層の表面に液晶分子が存在しない場合がある。この場合、表面に最も近接する液晶分子は、層の表面から若干距離がある。
【0012】
読みやすくする目的のために、重合性液晶及び光配列性物質(polymerizable liquid crystals and a photo-orientable substance)を含有する材料を指すために、以下ではPLCPOという略記を使用する。したがって、PLCPO層は、PLCPO材料から作製された層である。
【0013】
配向光に露光することによってPLCPO層の表面で生じた配向は、液晶材料等のPLCPO層上に堆積したスレーブ材料に転写され得る。驚くべきことに、配向光によって生じた配向は、上述の米国特許第7,364,671(B2)号に開示されているように液晶を配向させるのに十分な程度それ自体強力である、PLCPO層中の配向された液晶に起因する強力な配向力さえも圧倒する。
【0014】
PLCPO層中の液晶材料の重合は、例えば、配向光に露光する前、露光と同時に、又は露光した後に偏光されていない化学光に露光することによって開始され得る。好ましくは、重合は、配向光に露光する前に開始される。その場合、組成物中の光配列性物質の種類に応じて、偏光されていない光が光配列性物質の実質的な光反応を開始させないように注意する場合があるが、その理由は、そうしなければ、後で配向光に露光する際に感光性部分の数が配列を生じさせるのに十分でなくなる場合があるためである。例えば、重合性液晶材料と光配列性物質の波長感度が異なり、したがって、配向光に必要なものとは異なる波長の光によって液晶材料の重合が開始され得るようにPLCPO材料を設計してよい。好ましくは、PLCPO材料は光開始剤を含む。
【0015】
他方、配向光の特定の光スペクトルについて、配向光に1回露光すれば液晶材料の重合及び光配列性物質の配列の生成が同時に開始されるようにPLCPO材料を設計してもよい。材料及び露光パラメータを適切に選択することによって、配向光によって誘導される光配向反応に起因する配列力が液晶の構成を変形させるのに十分な強度になる前に、既に配列された所望の構成で液晶材料を迅速に固化させることが可能である。
【0016】
液晶が重合する前にPLCPO層が配列に露光される場合、重合性液晶の構成を維持することさえも可能である。この場合、PLCPO材料の粘度は、液晶の再配列又はねじれ変形を避けるのに十分な程度高くなければならない。この目的のために、配向光に露光したときから液晶が十分重合するまでPLCPO材料の温度を透明温度未満で維持することが有益である。
【0017】
PLCPO材料は、溶媒を含有していてよい。溶媒は、組成物の調製及び保管、並びに最適な印刷及び/又はコーティングの性能のための粘度の適切な調整に有益であり得る。溶媒は、典型的には、PLCPO材料が支持体に堆積した後に例えば加熱することによって除去される。溶媒を含まないPLCPO材料は、好ましくは約室温で液晶相を有していなければならない。
【0018】
PLCPO材料は、等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤を更に含み得る。
【0019】
色素又はキラル添加剤の非存在下では、PLCPO材料の配列された層は複屈折性を示し、そして、光学リターダとして作用する。
【0020】
好ましい実施態様では、PLCPO材料は、光の可視スペクトルにおける少なくとも1つの波長域の光を吸収する1つ以上の二色性色素を含む。このようなPLCPO材料の配向された層は、次いで、直線偏光子として作用する。
【0021】
別の好ましい実施態様では、PLCPO材料は、1つ以上のキラル添加剤を含む。キラル添加剤は、液晶にねじれを引き起こす。キラル添加剤を含むPLCPO材料の配列された層では、左回り又は右回りのねじれ変形が誘導され得、ねじれ角度はキラル添加剤の種類及び濃度、並びに層の厚みに依存する。例えば、このような層において90°のねじれが生じる場合、PLCPO層の上面の直下の液晶は、該層の底部における液晶に対して90°で配列される。より高濃度のキラル添加剤では、コレステリック相が誘導され得、これによって、特定の波長帯において光が部分的に反射する。この効果は、層内のらせん軸が均一に配向されていない場合にも生じる。したがって、これは、PLCPO層の堆積前又は後に配向処理をする必要がない例である。らせん軸が層の厚み方向に沿って均一に配向される場合、コレステリック構成の特徴的な反射バンド内において、層平面に対する法線から入射する光の50%が反射し、そして、円偏光される。コレステリック液晶相におけるピッチが短いため、層の上面における液晶の配列は均一な方向にはほぼ配列され得ないが、その理由は、層の厚みのわずかなばらつきがねじれのばらつきを引き起こすためである。
【0022】
本発明の状況において、コレステリック層の特性は、光学異方性の意味に含まれるものとするが、その理由は、反射した光が左掌性又は右掌性で円偏光されるためである。
【0023】
層及び層の表面と組み合わせて使用される相対語「上」及び「下」は、支持体の位置に関して規定される。したがって、層の下部は支持体の方を向いているが、上側又は上面は、それぞれ支持体から離れた方を向いている。
【0024】
本発明の方法に従って適用及び処理されるPLCPO層は光学機能を有するが、これは、液晶材料及びその構成によって、並びにPLCPO材料に含まれる光学的に等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤によって決定される。光学機能に加えて、このようなPLCPO層は、スレーブ材料、例えば重合性又は非重合性の液晶材料を配向するための配向表面を有する。先行技術と比べたこのようなPLCPO層の利点は、PLCPO層の上面において配向光によって誘導される配向方向が、PLCPO層中の液晶材料の任意の配列から分断される点である。
【0025】
本願の状況において、用語「重合性」及び「重合した」は、それぞれ、「架橋性」及び「架橋した」の意味を含むものとする。同様に、「重合」は「架橋」の意味を含むものとする。
【0026】
本願の状況において、「光配列性物質」は、配向光に露光したときに異方特性が誘導され得る材料である。更に、用語「光配列された物質」は、配向光に露光することによって配向された光配列性物質を指すために使用される。本発明では、誘導された異方性は、スレーブ材料、特に液晶材料に配向能を与えるようなものでなければならない。用語「配向方向」は、スレーブ材料において誘導される好ましい方向を指すものとする。例えば、スレーブ材料が液晶材料である場合、配向方向は液晶分子が配向される方向である。
【0027】
本願の状況において、用語「配向光」は、光配列性物質において異方性を誘導することができ、そして、少なくとも部分的に直線若しくは円偏光される、及び/又は斜め方向から光配列性物質の表面に入射する光を意味するものとする。好ましくは、配向光は、5:1超の偏光度で直線偏光される。配向光の波長、強度、及びエネルギーは、光配列性物質の感光性に応じて選択される。典型的には、波長は、UV-A、UV-B、及び/若しくはUV-Cの範囲、又は可視範囲内である。好ましくは、配向光は450nm未満の波長の光を含む。配向光は420nm未満の波長の光を含むことがより好ましい。
【0028】
配向光が直線偏光される場合、配向光の偏光面は、配向光の伝搬方向及び偏光方向によって画定される平面を意味するものとする。配向光が楕円偏光される場合、偏光面は、光の伝搬方向及び偏光楕円の長軸によって画定される平面を意味するものとする。
【0029】
光配向(photo-alignment)、光配向性(photo-alignable)、及び光配向された(photo-aligned)という用語は、それぞれ光配列(photo-orientation)、光配列性(photo-orientable)、及び光配列された(photo-oriented)という用語と同義的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、添付図面によって更に説明される。様々な機構が必ずしも縮尺通り描かれている訳ではないことを強調する。
図1図1は、LCP層が2層の配列層の間に挟まれている現行のLCPスタックの例を示す。
図2図2は、重合し、そして、配向光に露光されたPLCPO層がスレーブ材料に配向を与える、本発明に係る単純なスタックを示す。
図3図3は、2層のLCP層が互いに積み重ねられている現行のLCPスタックの例を示す。各LCP層は、別個の配向層によって配向される。
図4図4は、スレーブ材料の層がPLCPO層によって配向される層スタックを示す。
図5図5は、第2のPLCPO層中の液晶が、第1のPLCPO層の表面において誘導された配向によって配列される、2層のPLCPO層を含む素子を示す。
図6図6は、PLCPO層が別のPLCPO層の配向情報によって配向され、そして、次のPLCPO層に配向情報を与える、4層のPLCPO層を含む素子を示す。
図7図7は、実施例2で調製された層構造のアクロマティックな光学特性を示す。
図8図8は、実施例4で調製された層構造のアクロマティックな光学特性を示す。
【0031】
発明を実施するための形態
本発明の第1の態様によれば、配向されたLCP層のスタックを製造する方法が提供される。
【0032】
本発明の方法は、
- 重合性液晶及び光配列性物質(PLCPO材料)を含む組成物を提供する工程と、
- 支持体上にPLCPO材料の層を形成する工程と、
- 場合により、必要に応じてPLCPO層の液晶材料に配向処理を適用する工程と、
- PLCPO層において重合性液晶の重合を開始させる工程と、
- PLCPO層を配向光に露光して、スレーブ材料のために層の上面において配向を生じさせる工程であって、上面の少なくとも1つの領域において生じた配向方向が、該少なくとも1つの領域における層の上面の直下の液晶の液晶ダイレクタの配列と異なる工程と
を含む。
【0033】
重合性液晶を重合させる工程及び配向光に露光する工程は、任意の順序であってよい。重合は、配向光に露光する前又は後に開始させてよい。該方法の特別な実施態様では、重合及び配向の生成は、配向光に露光する一工程で達成される。いずれの場合も、配向光に露光されている間、液晶がその構成を維持するように注意しなければならない。好ましくは、これは、PLCPO層を配向光に露光する前に液晶を重合させることによって行われる。
【0034】
液晶を重合させる前にPLCPO層を配向光に露光する場合、配向光が液晶の再配列及びねじれ変形を誘導しないように注意しなければならない。この目的のために、配向光に露光したときから液晶が十分重合するまでPLCPO材料の温度をPLCPO材料の透明温度未満で維持することが有益である。好ましくは、PLCPO材料の温度は、配向光に露光したときから液晶が重合するまで、該PLCPO材料の透明温度よりも5℃又は10℃未満低い。PLCPO材料の温度は、透明温度よりも20℃、30℃、又は40℃未満低いことがより好ましく、そして、PLCPO材料の温度は、透明温度よりも50℃、60℃、又は70℃未満低いことが最も好ましい。PLCPO材料の温度は、室温に近いことが更に好ましい。特に、該温度は、50℃未満が好ましく、40℃未満がより好ましく、そして、30℃未満が最も好ましい。
【0035】
好ましくは、配向光の作用によるPLCPO層中の液晶の再配列が阻止されるが、これは、PLCPO層中の液晶の配列が配向光に露光することによって変化しないことを意味する。
【0036】
該方法の好ましい実施態様では、チルト配向を生じさせるために、例えば液晶にプレチルト角を与えるために、配向光は、PLCPO層の表面に対して斜め方向から照射される。
【0037】
PLCPO層の全領域を配向光に露光した場合、単軸配向が生じる。配向光は、例えば、フォトマスクによって特定の領域を覆うことにより又は所望の領域のみに光線を走査することにより、PLCPO層の一部のみが配向光に露光されるような形状であってもよい。PLCPO層に配列パターンを生じさせるために、後続の露光工程に偏光面の異なる配向光を付加してもよい。空間的に変調された偏光面を有する配向光に露光することを含む、光配向によって配向パターンを生じさせることが知られている任意の他の方法を更に使用してもよい。その結果、PLCPO層の表面に複数の配列方向が生じ得る。好ましい相対方向は、0°、45°、90°、135°である。異なる領域における方向の好ましい組み合わせは、0°及び45°、0°及び90°、45°及び135°である。
【0038】
配向光に露光することなく、PLCPO層中の液晶材料はPLCPO表面において配向能を与えるので、特定の領域を配向光に選択的に露光することによって配列パターンを生じさせることが可能である。露光後、露光された領域における配向方向は、配向光の偏光面及び露光エネルギー等の露光条件によって規定されるが、一方、露光されていない領域における配向方向は、PLCPO層の重合した液晶材料の配列方向によって規定される。配向光が斜め方向から照射される場合、露光された領域においてチルト配列を生じさせることができ、これは光配向によって制御されるが、一方、露光されていない領域は、重合した液晶材料の配列によって制御されるチルト又は非チルトの配向を有し得る。
【0039】
上述の通り、PLCPO層は、配向光への露光前に予め配列能を与える。したがって、配向光に露光されたときに誘導される配向力は、PLCPO層中の配列された液晶によって与えられる配向力と競合する。したがって、配向光の露光線量による2つの配向力間のバランスを調整することが可能である。これは、得られる配列方向が配向光の露光線量の関数として変動するという効果を有する。本発明の好ましい実施態様では、該方法は、偏光面は同じであるがエネルギーの異なる配向光をPLCPO層の異なるゾーンに照射することを含む。これは、フォトマスクを使用する複数回露光、グレースケールマスクを通した単回露光、空間的に強度変調された配向光の投射、又は所望のゾーンへの光線の走査等の幾つかの公知の方法によって行うことができる。
【0040】
支持体は、剛性であっても可撓性であってもよく、そして、任意の形態又は形状を有していてよい。例えば、複雑な表面を有する本体であってよい。原則として、任意の材料からなっていてよい。好ましくは、支持体は、プラスチック、ガラス、若しくは金属を含むか、又はシリコンウエハである。支持体が可撓性である場合、該支持体はプラスチック又は金属箔であることが好ましい。好ましくは、支持体の表面は平坦である。幾つかの用途では、支持体は、マイクロレンズ若しくはマイクロプリズム等の微細構造、又は矩形構造等の形状の急変を示す構造等の局所的表面構造を含み得る。好ましくは、支持体は透明である。
【0041】
PLCPO材料の堆積中に支持体が移動している場合がある。例えば、PLCPO材料の層は、好ましくはプラスチック又は金属である移動している可撓性箔上に材料組成物を堆積させることによって、連続ロール・ツー・ロールプロセスで生産され得る。次いで、得られたフィルムを支持体箔と一緒にロール状に巻き取ってもよく、又はフィルムを支持体から外してもよく、次いで、支持体なしで自立型フィルムとして巻き取ってもよい。
【0042】
支持体は、有機、誘電体、又は金属の層等の追加の層を有していてもよい。層は、様々な機能を有していてよく、例えば有機層は、コーティングされる材料の支持体との適合性を高めるプライマー層としてコーティングされ得る。金属層は、例えばディスプレイ等の電気光学装置において使用されるときに電極として使用されてもよく、又は反射体としての機能を有していてもよい。また、支持体は、例えば薄膜トランジスタ、電極、又はカラーフィルタを含み得るLCD用の基板等、特定の機能を有する光学素子又は装置であってもよい。別の例では、支持体は、OLED層構造を含む装置である。また、支持体は、リターダフィルム、偏光子、例えば偏光フィルム又はシート偏光子、反射偏光子、例えば市販されているVikuity(商標)DBEFフィルムであってもよい。
【0043】
PLCPO層は、押出成形、鋳造、成型、2D若しくは3Dの印刷、又はコーティング等の任意の好適な方法によって支持体に適用され得る。好適なコーティング方法は、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ブラッシング、バーによるキャスティング、ローラコーティング、フローコーティング、ワイヤコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、メータリング・ロッド(Meyerバー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ローラコーティング、フレキソコーティングである。好適な印刷方法は、シルクスクリーン印刷、レリーフ印刷、例えばフレキソ印刷、ジェット印刷、凹版印刷、例えば直接グラビア印刷又はオフセットグラビア印刷、リソグラフ印刷、例えばオフセット印刷、又はステンシル印刷、例えばスクリーン印刷を含む。
【0044】
PLCPO材料の層は、支持体の表面全体を覆わなくてもよい。むしろ、該層は、例えば印刷によってパターンの形態で適用されてもよく、堆積後に例えばフォトリソグラフィー法によってパターンの形態を有するように処理されてもよい。
【0045】
PLCPO層における光配列性物質の主な目的はPLCPO層の上面に配向を生じさせることであるので、光配列性物質が層の厚み方向に沿って等しく分布している必要はない。したがって、光配列性物質の量の他の化合物の量に対する比は、好ましくは、層の厚み方向に沿って変動するが、これは、厚み方向に沿って光配列性物質の濃度勾配が存在することを意味する。好ましくは、PLCPO層の中央よりも該層の上面の方が光配列性物質の濃度が高い。より好ましくは、光配列性物質及び重合性液晶は相分離している。好ましくは、相分離した光配列性物質は、重合性液晶の上及び/又は下に層として配置される。
【0046】
PLCPO層中の液晶の配向は、液晶を配向するための任意の公知の手段によって達成され得る。例えば、支持体は配向表面を有していてよく、これは、該表面が液晶を配向する能力を有することを意味するものとする。支持体は、更に処理することなく、予め配向を与えることができる。例えば、プラスチック基板を支持体として使用する場合、それは製造方法、例えば基板の押出成形又は延伸に起因して、表面上に配向を与えることができる。また、配向能を生じさせるために支持体をブラシでこするか又は方向性微細構造をインプリントすることも可能である。あるいは、配向性能に関して特に設計された支持体に材料の薄層をコーティングしてもよい。該層を更に、ブラシでこするか又は例えばインプリントによって表面上に方向性微細構造を有するように処理してもよい。薄層が光配列性物質を含む場合、配向光に露光することによって配向を生じさせることができる。
【0047】
PLCPO層中の液晶の配列パターンを規定するために、基板の配向表面は配向方向のパターンを示してよい。好ましくは、光配列性物質を含む配向層がこの目的のために使用され、そして、異なる偏光面の配向光に選択的に露光することによって配向パターンが生じる。
【0048】
本発明の好ましい実施態様では、重合性液晶の重合前に配向光に露光することによってPLCPO層中の液晶の配向が生じる。これは、PLCPO材料は光配列性物質を含むので可能である。したがって、これによってLCP層のスタックを製造するために必要な層が更に減少するが、その理由は、PLCPO層中の液晶の配向に追加の配向層が必要ないためである。基板上に追加の光配向層を備える場合と同様に、この方法では、PLCPO材料中の液晶に配列パターンを生じさせることが可能である。配向光は、PLCPO層の上側に照射され得る。この場合、PLCPO層の上面に配向を与えるのに必要な、本発明の方法に係る後続の光配向反応で感光性部分を利用可能にするために、PLCPO層の上面近傍に十分な量の感光性部分を残すように注意する場合がある。例えば、異なる波長感度を有し、そして、それぞれ適切な波長スペクトルを有する異なる配向光を使用することによって選択的に活性化され得る2つの異なる光配列性物質がPLCPO材料に含まれていてよい。
【0049】
好ましい実施態様では、支持体は、配向光に対して少なくとも部分的に透過性であり、そして、配向光は支持体を通してPLCPO層の下側上に照射される。この目的のために、支持体は、好ましくはガラス板又はプラスチック基板、例えばプラスチックフィルムである。好ましくは、基板は低い光複屈折を有する。好ましくは、基板のインプレーン光学リターダンスは、100nm未満、より好ましくは50nm未満、そして、最も好ましくは20nm未満である。
【0050】
光配列によってPLCPO層の内側の液晶を配向する上記方法では、配向光に露光する前、露光している間、又は露光した後のPLCPO材料の温度を例えばPLCPO材料の透明温度の直下又は直上の温度に上昇させることによって、液晶配列を支援することが有益である。
【0051】
PLCPO材料中の液晶に配向を与える上記方法のいずれかにおいて、PLCPO材料の堆積後にPLCPO層の温度を上昇させることが有益である場合がある。
【0052】
上記変形例のいずれかに加えて、本発明の方法は、PLCPO層の配向された表面上にスレーブ材料を適用する工程を含み得る。
【0053】
本願の状況において、「スレーブ材料」は、光配列された材料と接触したときに異方性を確立する能力を有する任意の材料を指すものとする。
【0054】
用語「異方性の」及び「異方性」は、例えば、光吸収、複屈折、導電率、分子配列、他の材料、例えば液晶の配列についての特性、又は機械的特性、例えば弾性率を指し得る。例えば、スレーブ材料が可視光について光吸収異方性を示す場合、それは直線偏光子として作用し得る。用語「配向方向」は、異方特性の対称軸を指すものとする。
【0055】
スレーブ材料は、重合性及び/又は非重合性の化合物を含み得る。
【0056】
スレーブ材料は、溶媒を用いる又は用いないコーティング及び/又は印刷によって適用され得、そして、PLCPO層の全領域又はその一部のみに適用され得る。好ましくは、該方法は、スレーブ材料をPLCPO層に適用する前又は適用した後に該スレーブ材料を加熱することを含む。また、該方法は、熱処理又は化学線への露光によってスレーブ材料において重合を開始させることを含み得る。スレーブ材料の性質に応じて、窒素等の不活性雰囲気下又は真空下で重合を実施するのが有益である場合がある。スレーブ材料は、等方性若しくは異方性の色素、及び/又は蛍光色素を含有し得る。
【0057】
好ましくは、スレーブ材料は自己組織化材料である。スレーブ材料は液晶材料であることがより好ましく、そして、スレーブ材料は、液晶ポリマー(LCP)材料であることが特に好ましい。
【0058】
液晶ポリマー(LCP)材料は、本願の状況において使用されるとき、液晶モノマー及び/又は液晶オリゴマー及び/又は液晶ポリマー及び/又は架橋した液晶を含む液晶材料を意味するものとする。液晶材料が液晶モノマーを含む場合、典型的には、例えば配向層との接触に起因してLCP材料において異方性が生じた後にこのようなモノマーを重合させてよい。重合は、熱処理によって又は好ましくは紫外線を含む化学線に露光することによって開始させることができる。LCP材料は、液晶化合物を1種類だけ含んでいてもよいが、追加の重合性及び/又は非重合性の化合物を含んでいてもよく、該化合物の全てが液晶化合物である必要はない。更に、LCP材料は、光開始剤、阻害剤、キラル添加剤、等方性又は異方性の蛍光及び/又は非蛍光の色素、特に二色性色素を含むがこれらに限定されない添加剤を含有し得る。
【0059】
好適な液晶モノマー又はプレポリマーは、例えば、国際公開公報第2005/105932号、国際公開公報第2005/054406号、国際公開公報第2004/085547号、国際公開公報第2003/027056号、米国特許出願公開第2004/0164272号、米国特許第6746729号、米国特許第6733690号、国際公開公報第2000/48985号、国際公開公報第2000/07975号、国際公開公報第2000/04110号、国際公開公報第2000/05189号、国際公開公報第99/37735号、米国特許第6395351号、米国特許第5700393号、米国特許第5851424号、及び米国特許第5650534号に開示されている。好ましい液晶モノマー又はプレポリマーは重合性基を有し、該基はアクリレート若しくはジアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、アリル、ビニル、又はアクリルアミドである。
【0060】
別の好ましい実施態様では、スレーブ材料はPLCPO材料であり、第2のPLCPO層を形成する。このPLCPO上層中の液晶は、次いで、PLCPO下層の配向された表面によって配向される。配向光に露光することによるPLCPO上層表面における重合性液晶の重合及び配向の生成は、PLCPO下層に関して上記したのと同様の方法(方法及び材料の様々な変形例を含む)で行うことができる。第2のPLCPO層の上面で配向が生じるので、スレーブ材料の別の層を上に適用してもよい。したがって、スレーブ材料の第2の層は、上記と同じ理由で別個の配向層を必要としない。同じ又は異なる材料組成物を第1及び第2のPLCPO層に用いてよい。例えば、第1のPLCPO層は二色性色素を含んでいてよく、それによって、直線偏光子として作用し、そして、第2のPLCPO層はキラル添加剤を含んでいてよく、それによって、コレステリック液晶層として作用する。別の例では、第1の層はリターダとして作用するが、一方第2のPLCPO層は二色性色素を含み、そして、直線偏光子として作用する。第1及び第2のPLCPO層のいずれかにおける液晶は、均一に配向されてもよく、又は局所的に異なる配列方向を有してもよい。
【0061】
同様に、第3のPLCPO層を、第3のPLCPO層に配向情報を与える第2のPLCPO層上に適用してもよい。更なるPLCPO層を同様に適用してもよい。互いに積み重ねられるPLCPO層の数に制限はない。多数の配列された液晶層を必要とするスタックが本発明の方法から最も大きな恩恵を受けるが、その理由は、この方法を使用しないと、第1のPLCPO層上に積み重ねられるLCP又はPLCPOの層等のスレーブ材料層がそれぞれ追加の配向層を必要とするためである。
【0062】
本発明の第2の態様によれば、本発明に係る方法及び装置において使用するための、重合性液晶と1つ以上の光配列性物質(PLCPO)とを含む材料組成物が提供される。
【0063】
PLCPO材料は、1種を超える光配列性物質を含み得る。
【0064】
PLCPO材料は、光開始剤及び/又は阻害剤、光安定剤、等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤、並びにレオロジー特性又は接着を改善するための他の添加剤を更に含有し得る。
【0065】
光配列性物質の合計の重合性液晶の合計に対する重量比が0.5未満、より好ましくは0.2未満、そして、最も好ましくは0.1未満であるPLCPO材料が好ましい。PLCPO層の厚みに応じて、PLCPO材料中の光配列性物質の重量パーセントは、5%未満、1重量%未満、又は更には0.1重量%未満であってよい。極端な場合、依然として十分な配向特性を得るには0.01重量%の光配列性物質で十分である。好ましくは、相分離を支援するために、光配列性物質はフッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、及び/又はポリシロキサンである。好ましくは、光配列性物質はポリマーであり、そして、側鎖にフッ素化部分を含む。光配列性ポリシロキサンの例は、国際公開公報第2017/081056号に開示されている。フッ素化部分を含む光配列性物質は、例えば、米国特許第8,173,749(B)号、米国特許出願公開第2011/0065859(A1)号、米国特許出願公開第2012/0316317号、米国特許第9,097,938(B2)号、米国特許出願公開第2016/0083655(A1)号、米国特許出願公開第2016/0271894(A1)号に見出すことができる。これら特許及び特許出願は、フッ素化物質に関して参照することによって組み入れられる。上記特許及び特許出願の実施例におけるフッ素化部分は、主に、ポリマーの側鎖の一部である。したがって、これら側鎖は相分離に大きな影響を与える。本発明の目的のために、他の主鎖構造は、したがって、上記特許における実施例の特定の主鎖構造よりもフッ素化側鎖構造と併用され得る。好ましい実施態様では、PLCPO材料は、2つの異なる種類の光配列性物質を含み、そのうちの一方はPLCPO層の上面に移動する傾向があり、そして、他方は該層の底面に移動する傾向がある。
【0066】
好ましくは、PLCPO材料は、光配列性物質PA2、PA3、又はPA4のうちの1つ以上を含み、これらは以下の実施例に記載される。
【0067】
相分離を支援するために、光配列性物質及び液晶分子のモノマー双極子モーメントが互いに異なるように光配列性物質及び重合性液晶材料を選択することができる。モノマー双極子モーメントは、モノマーの双極子モーメント、又はポリマー、オリゴマー、及びプレポリマーの場合、それぞれこのようなポリマー、オリゴマー、及びプレポリマーのモノマー単位の双極子モーメントを指すものとする。好ましくは、モノマー双極子モーメントは、0.5デバイ超、より好ましくは1デバイ超、そして、最も好ましくは1.5デバイ超異なる。
【0068】
PLCPO材料中の光配列性物質は、光反応機構とは独立に、配向光に露光されたときにスレーブ材料に配向特性を与える異方特性が生じ得る任意の種類の感光性材料であってよい。したがって、好適な光配列性物質は、例えば、配向光に露光されたときに光二量体化、光分解、trans-cis異性化、又は光フリース転位によって異方性が誘導される材料である。好ましいPLCPO材料は、配向光に露光されたときに光二量体化が開始され得る光配列性物質を含む。
【0069】
上記の通り、光配列性物質は光配列性部分を組み込み、該部分は、配向光に露光されたときに好ましい方向を発達させ、それによって異方特性を生じさせることができる。このような光配列性部分は、好ましくは、異方性吸収特性を有する。典型的には、このような部分は230~500nmの波長域内に吸収を示す。好ましくは、光配列性部分は300~450nmの波長域内に光の吸収を示し、310~380nmの波長範囲内に吸収を示す部分がより好ましい。
【0070】
好ましくは、光配列性部分は、炭素-炭素、炭素-窒素、又は窒素-窒素の二重結合を有する。
【0071】
例えば、光配列性部分は、置換又は非置換のアゾ色素、アントラキノン、クマリン、メリシアニン、2-フェニルアゾチアゾール、2-フェニルアゾベンズチアゾール、スチルベン、シアノスチルベン、フルオロスチルベン、シンナモニトリル、カルコン、シンナマート、シアノシンナマート、スチルバゾリウム、1,4-ビス(2-フェニルエチレニル)ベンゼン、4,4’-ビス(アリールアゾ)スチルベン、ペリレン、4,8-ジアミノ-1,5-ナフトキノン色素、アリールオキシカルボン酸誘導体、アリールエステル、N-アリールアミド、ポリイミド、ケトン部分又は2つの芳香環と結合したケトン誘導体を有するジアリールケトン、例えば、置換ベンゾフェノン、ベンゾフェノンイミン、フェニルヒドラゾン、及びセミカルバゾンである。
【0072】
上記異方吸収性材料の調製は、例えば、Hoffmanらによる米国特許第4,565,424号、Jonesらによる米国特許第4,401,369号、Cole, Jr.らによる米国特許第4,122,027号、Etzbachらによる米国特許第4,667,020号、及びShannonらによる米国特許第5,389,285号によって示されているように周知である。
【0073】
好ましくは、光配列性部分は、アリールアゾ、ポリ(アリールアゾ)、スチルベン、シアノスチルベン、シンナマート、又はカルコンを含む。
【0074】
光配列性物質は、具体的には、モノマー、オリゴマー、又はポリマーであってよい。光配列性部分は、例えば、ポリマー若しくはオリゴマーの主鎖内若しくは側鎖内で共有結合してもよく、又はモノマー若しくは重合性ではない他の化合物の一部であってもよい。光配列性物質は、更に、様々な種類の光配列性部分を含むコポリマーであってもよく、又は光配列性部分を有する及び有しない側鎖を含むコポリマーであってもよい。
【0075】
ポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、ポリマレインイミド、ポリ-2-クロロアクリレート、ポリ-2-フェニルアクリレート;非置換の又はC~Cアルキルで置換されたポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ-2-クロロアクリルアミド、ポリ-2-フェニルアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリビニルエステル、ポリスチレン誘導体、ポリシロキサン、ポリアクリル酸若しくはポリメタクリル酸の直鎖若しくは分岐鎖のアルキルエステル;ポリフェノキシアルキルアクリレート、ポリフェノキシアルキルメタクリレート、1~20個の炭素原子のアルキル残基を有するポリフェニルアルキルメタクリレート;ポリアクリルニトリル、ポリメタクリルニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリ-4-メチルスチレン、又はこれらの混合物を意味する。
【0076】
また、光配列性物質は、光増感剤、例えば、ケトクマリン及びベンゾフェノンも含み得る。
【0077】
更に、好ましい光配列性のモノマー又はオリゴマー又はポリマーは、米国特許第5,539,074号、米国特許第6,201,087号、米国特許第6,107,427号、米国特許第6,632,909号、及び米国特許第7,959,990号に記載されている。
【0078】
本発明の第3の態様によれば、本発明に係る方法及び関連する材料を使用することによって作製される異方性層のスタックが提供される。
【0079】
図1は、上述の米国特許第6,717,644(B2)号から知られている先行技術の層構造1を示し、図中、液晶ポリマー層13は、基板11上の配向層12によって配向される。LCP層13上の第2の配向層14は、液晶材料に配向を与える。少なくとも1つの領域では、層14によって与えられる配向方向は、上記領域の下の領域における液晶層13の配列方向とは異なる。
【0080】
本発明に係る図2中の構造2は、図1中の先行技術の構造と同じ特性を得るために、基板21上に2層しか必要としない。基板の上の配向層22は、PLCPO層23中の液晶材料を配列する。スタック2は、本発明の方法に従って製造された。したがって、層23の最上面は、少なくとも1つの領域において、層23によって与えられる配向方向が上面の直下の層23における液晶配列と異なるように、スレーブ材料に配向を与える。層23中の液晶は局所的に異なる配向を有し得る。また、PLCPO層23の表面上の配向は、配列パターンの形態であってよく、これは、液晶内側層23の配列の変化によって規定されるものと同じである必要はない。層23を調製するために使用されるPLCPO材料の組成に応じて、層23は例えば複屈折性であってよく、偏光子として作用することができ、ねじれていてもよく、又はコレステリックであってもよい。配向層22は必ずしも必要ではないが、その理由は、上に更に記載した通り、PLCPO層中の重合性液晶を配向する他の手段を使用することができるためである。最も簡単な場合、本発明に係る構造は、基板21上の単一の層23からなる。上記の通り、支持体は、有機、誘電体、又は金属の層等の追加の層を有していてもよい。
【0081】
好ましくは、PLCPO層は複屈折性であり、そして、光学リターダの機能を有する。ほとんどの用途では、光学リタデーションは10nmよりも高い。好ましくは、リタデーションは50nmよりも高く、より好ましくは100nmよりも高い。具体的には、PLCPO層は、四分の一波長又は半波長のリターダとして作用し得る。
【0082】
PLCPO層における典型的な材料については、PLCPO層の厚みは、100nm超、好ましくは500nm超、より好ましくは1μm超である。幾つかの用途では、PLCPOの厚みは2μm超、又は更には3μm超である。
【0083】
好ましくは、光配列性物質の量の他の化合物の量に対する比は、好ましくは、層23の厚み方向に沿って変動し、これは、厚み方向に沿って光配列性物質の濃度勾配が存在することを意味する。好ましくは、光配列性物質の濃度は、PLCPO層の中央よりも該層の上面において高い。より好ましくは、光配列性物質及び重合した液晶は相分離している。好ましくは、相分離した光配列性物質は、重合した液晶の上及び/又は下に層として配置される。好ましくは、光配列性物質は、濃度勾配又は相分離を支援するために、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、及び/又はポリシロキサンである。
【0084】
配向層22を有する又は有しない上記構造2は、例えば、単独ピクセルセルを含む液晶ディスプレイ用の基板として使用することができ、この場合、層23は、偏光子又はリターダ又はねじれリターダ又はコレステリック層の光学機能を有し、そして、一方、層23の表面は、液晶セルに充填される切り替え可能な液晶に配向を与える。他の用途では、例えば液晶ポリマー材料でコーティングされ得、次いで、層23の表面によって与えられる配向情報に従って配向される光学フィルム用の基板として構造2を使用することができる。
【0085】
同様に米国特許第6,717,644(B2)号に開示されており、そして、図3に図示されている先行技術の構造3は、配向層14上にLCP層15を含む。2層の配向層12及び14は、LCP層13及び15のそれぞれに個々の配向情報を与え得る。これによって、LCP層13及び15の対向する領域において異なる液晶配列方向を有することが可能になる。
【0086】
構造2に加えて、図4中の構造4は、PLCPO層23の光配向された表面と接触しているスレーブ材料25の層を含む。スレーブ材料は、層23の光配向された表面によって配向されている。好ましくは、スレーブ材料はLCP材料を含む。LCP材料は、二色性色素及び/又はキラル添加剤等の添加剤を更に含み得る。したがって、層25は、複屈折性であってもよく、偏光子として作用することができ、ねじれていてもよく、又はコレステリックであってもよい。構造2に関して記載した通り、配向層22は任意である。層23の特徴は、図2に関して記載した通りである。層23を調製するために使用されるPLCPO材料の組成に応じて、例えば、層23は複屈折性であってもよく、偏光子として作用することができ、ねじれていてもよく、又はコレステリックであってもよい。
【0087】
層23及び層25の機能の任意の組み合わせが可能である。本発明の好ましい層構造では、層23はLCP材料を含む。本発明の好ましい実施態様では、PLCPO層23及び層25は複屈折性であり、そして、リターダの機能を有する。層23又は25のうちの一方は四分の一波長板に対応するリターダンスを有し得、そして、他方は半波長板に対応するリターダンスを有し得る。周知の概念、例えばS. Pancharatnam, ”Achromatic combinations of birefringent plates. Part II: An achromatic quarter-WP,” Proc.Ind. Acad. Sci. 41, 137 (1955)に従って、両リターダの光学軸間の適切な角度、例えば40°~70°の範囲を選択することによって、アクロマティックリターダを実現することができる。
【0088】
アクロマティックリターダは、多くの用途において標準的な単軸リターダに置き換わることができ、それは、リターダによって与えられる光学効果が光の波長とはほぼ無関係に機能するという利点を有する。具体的には、例えばLDCにおいて偏光された光を効率的に管理するために、アクロマティックリターダを反射偏光子、例えば、市販されているVikuity(商標)DBEFフィルムと組み合わせることができる。
【0089】
本発明の別の好ましい実施態様では、層23及び25のうちの一方はリターダの機能を有し、一方、他方の層は二色性色素を含み、そして、直線偏光子として作用する。偏光層の吸収方向とリターダ層の光学軸との間の任意の角度を選択することができる。リターダ層が四分の一波長のリターダンスを有し、そして、光学軸が偏光層の吸収方向に対して45°の角度をなす場合、2層が一緒になって円偏光子として作用する。円偏光子は、等方性光を円偏光された光に変換することができ、そして、光学機器及び装置において多くの用途を有する。例は、パッシブ3Dガラス又は反射防止構造であり、これらは、例えば環境光の反射を防ぐためにOLEDディスプレイ上で使用される。
【0090】
本発明の別の好ましい実施態様では、層23及び25のうちの一方はリターダの機能を有し、一方、他方の層は、ねじれリターダにとって適切な量のキラル添加剤を含む。層の厚み及びねじれ角度を適切に調整することによって、単軸リターダの層を使用する上述のアクロマティックリターダの代替としてアクロマティック挙動を達成することができる。
【0091】
本発明の別の好ましい実施態様では、層23及び25のうちの一方はリターダの機能を有し、一方、他方の層はキラル添加剤を含み、そして、コレステリック層として作用する。リターダ層は液晶を含むので、光学軸を任意の方向において局所的に調整することができる。リターダ層は等方性の環境光において可視ではないが、直線又は円の偏光子を通して素子を分析することによって要求に応じて可視にすることができるので、このような素子は光学セキュリティ装置において使用するのに魅力的である。
【0092】
図5の構造5では、第2のPLCPO層26が第1のPLCPO層23上に存在するように、PLCPO材料をスレーブ材料として使用する。PLCPO層中の液晶は、層23の光配向された表面によって配向されている。構造2に関して記載した通り、配向層22は任意である。層23の特徴は、図2に関して記載した通りである。PLCPO層26中の液晶は、PLCPO層23の光配向された表面によって配向されている。層26は光配列性物質も含むので、その上の別のスレーブ材料に配列パターンの形態であってよい配向情報を与えるために、その表面を光配向によって処理することができる。層26を調製するために使用されるPLCPO材料の組成に応じて、層26は、例えば複屈折性であってもよく、偏光子として作用することができ、ねじれていてもよく、又はコレステリックであってもよい。
【0093】
図6中の構造6は、本発明に係る別の構成を示す。それは、互いに重なり合う4層のPLCPO層23、26、27、28を含む。場合により、支持体21とPLCPO層23との間に配向層が存在してもよい。層23、26、27、28はそれぞれ、それぞれの層に使用されるPLCPO組成物に応じてその独自の光学機能を有する。したがって、各層は、互いに独立して、複屈折性であってもよく、偏光子として作用することができ、ねじれていてもよく、又はコレステリックであってもよい。各層は、上のPLCPO層に与えられる配向情報を生じさせるために配向光に露光されている。層26中の重合した液晶は、層23の表面によって配向されている。層27中の重合した液晶は層26の表面によって配向されており、そして、層28中の重合した液晶は層27の表面によって配向されている。また、層28は配向表面を有し、そして、その上にコーティングされ得るスレーブ材料に配向情報を与える。図6の層のような複数のPLCPO層を含む構造の製造は、本発明から特に恩恵を受けるが、その理由は、先行技術に従うと、各光学的機能層、例えばLCP層が個々の配向層を必要とするためである。
【0094】
本発明に係る構造2、4、5、6のそれぞれにおいて、PLCPO層の各表面はチルト配向を与え得る。スレーブ材料に転写されるときのプレチルト角の値及び方向は、局所的に変動し得る。チルト配向は、PLCPO層の斜め露光によって達成され得る。
【0095】
層23と同様に、光配列性物質の量の他の化合物の量に対する比は、層26又は任意の更なるPLCPO層の厚み方向に沿って変動することが好ましく、これは、厚み方向に沿って光配列性物質の濃度勾配が存在することを意味する。好ましくは、光配列性物質の濃度は、PLCPO層の中央よりも該層の上面において高い。より好ましくは、光配列性物質及び重合した液晶は相分離している。好ましくは、相分離した光配列性物質は、重合した液晶の上及び/又は下に層として配置される。
【0096】
本発明の好ましい実施態様は、液晶ポリマーを含む3層を有し、これらは一緒になってアクロマティック円偏光子として作用し、そして、例えばOLEDディスプレイ用の反射防止構造として使用することができる。液晶ポリマーを含む層のうちの2層はPLCPO層であってよく、そして、第3の層は、LCPを含むが光配列性物質は含まない層であってもよく、第3の層はPLCPO層であってもよい。3層のうちの最下層又は上層のいずれかは配向された二色性色素を含み、したがって、直線偏光子として作用するが、一方、他の2層は複屈折性であり、そして、上記の通り公知の概念に従ってアクロマティックリターダとして作用するように互いに対して及び偏光層に対して配置される。
【0097】
他の特定の実施態様は、上記の通り同様にPancharatnamの概念に基づいて2層超が液晶ポリマー含有層であるが、改善されたアクロマティック性能を有するアクロマティックリターダである。
【0098】
複数の光学的異方性層を必要とする層構造の具体例は、Solc又はLyotのフィルタ等の干渉色フィルタである。Solcフィルタにおける層はそれぞれ、異なる配向の光学軸を必要とする。したがって、Solcフィルタが先行技術のLCPスタックで実現される場合、層の総数はLCP層の数の2倍になるが、その理由は、各LCP層が別個の配向層を必要とするためである。本発明に係る図6の層構造が使用される場合、Solcフィルタにおける層の数は2分の1に減少する。したがって、本発明は、生産時間及びコストを劇的に低減すると同時に、生産収量を増加させる。
【0099】
本発明に係る装置は、例えば、LCD、ディスプレイ又はOLED照明器具のような有機発光装置(OLED)用の輝度強化フィルムと組み合わせて使用され得る。本発明に係る更なる装置は、LCD用のバックライトユニットの部品として使用され得る。好ましくは、本発明に係る装置は、光学セキュリティ素子において使用される。
【0100】
実施例
実施例で使用した材料
化合物
光配向材料PA1
【化1】

国際公開公報第2012/085048(A1)号に記載の通り合成。
【0101】
光配向材料PA2
【化2】

国際公開公報第2015024810(A1)号の調製例A4に従って調製。
【0102】
光配向材料PA3
x=80及びy=20のコポリマー
【化3】

国際公開公報第2015024810(A1)号の調製例A6に従って調製。
【0103】
光配向材料PA4
x=90及びy=10のコポリマー
【化4】

国際公開公報第2015024810(A1)号の実施例A6と同様に調製。
【0104】
架橋性液晶化合物LCC1
ペンチル2,5-ビス[[4-(6-プロパ-2-エノイルオキシヘキソキシ)ベンゾイル]オキシ]ベンゾアート
米国特許第5,593,617号のスキーム1、2、3、4と同様に調製。
【0105】
架橋性液晶化合物LCC2
【化5】
【0106】
架橋性液晶化合物LCC3
【化6】
【0107】
二色性色素dDye
【化7】

国際公開公報第2015/177062号に従って調製。
【0108】
組成物
重合性液晶材料M-LCP1
95.525重量% LCC1
2重量% Irgacure OXE 02(BASF)
2重量% Kayarad DPCA-20(日本化薬株式会社)
0.25重量% TEGO Flow 300(Evonik)
0.2重量% Tinuvin 123(BASF)
0.025重量% BHT(Aldrich)
【0109】
重合性液晶材料M-LCP2
95.4重量% LCC2
4重量% Irgacure 907(BASF)
0.5重量% Tego Flow 300(Evonik)
0.1重量% BHT(Aldrich)
【0110】
二色性色素を含む重合性液晶材料M-dLCP
87.8重量% LCC2
10重量% dDye
2重量% Irgacure 369(BASF)
0.2重量% BHT(Aldrich)
【0111】
PLCPO材料M-PLCPO1
97.775重量% LCC2
1重量% PA2
1重量% Irgacure 907(BASF)
0.2重量% Tinuvin 123(BASF)
0.025重量% BHT(Aldrich)
M-PLCPO1の透明温度は約76℃である。
【0112】
PLCPO材料M-PLCPO2
97.775重量% LCC2
1重量% PA3
1重量% Irgacure 907(BASF)
0.2重量% Tinuvin 123(BASF)
0.025重量% BHT(Aldrich)
M-PLCPO2の透明温度は約76℃である。
【0113】
PLCPO材料M-PLCPO3
97.775重量% LCC2
1重量% PA4
1重量% Irgacure 907(BASF)
0.2重量% Tinuvin 123(BASF)
0.025重量% BHT(Aldrich)
M-PLCPO3の透明温度は約76℃である。
【0114】
PLCPO材料M-dPLCPO
86.8重量% LCC2
1重量% PA2
10重量% dDye
2重量% Irgacure 369(BASF)
0.2重量% BHT(Aldrich)
【0115】
コレステリックPLCPO材料M-cPLCPO
54.7重量% LCC1
37.4重量% LCC3
3.6重量% Lumogen S750(BASF)
3重量% Irgacure 907(BASF)
1重量% PA2
0.2重量% Irgafos 168 (BASF)
0.1重量% BHT(Aldrich)
【0116】
溶液
S-PA1
メトキシプロピルアセタート 97重量%に光配向材料PA1 3重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-PA1を調製する。
【0117】
S-LCP1
ブチルアセタート 80重量%及びシクロヘキサノン 20重量%の溶媒混合物 65重量%にM-LCP1 35重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-LCP1を調製する。
【0118】
S-LCP2
メトキシプロピルケトン 80重量%、ジオキサラン(Dioxalane) 10重量%、及びシクロヘキサノン 10重量%の溶媒混合物 90重量%にM-LCP2 10重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-LCP2を調製する。
【0119】
S-dLCP
MEK 80重量%及びシクロヘキサノン 20重量%の溶媒混合物 60重量%にM-dLCP 40重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-dLCPを調製する。
【0120】
S-PLCPO1
ブチルアセタート 80重量%及びシクロヘキサノン 20重量%の溶媒混合物 65重量%にM-PLCPO1 35重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-PLCPO1を調製する。
【0121】
S-PLCPO2
ブチルアセタート 80重量%及びシクロヘキサノン 20重量%の溶媒混合物 65重量%にM-PLCPO2 35重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-PLCPO2を調製する。
【0122】
S-PLCPO3
ブチルアセタート 80重量%及びシクロヘキサノン 20重量%の溶媒混合物 65重量%にM-PLCPO3 35重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-PLCPO3を調製する。
【0123】
S-dPLCPO
MEK 80重量%及びシクロヘキサノン 20重量%の溶媒混合物 60重量%にM-dPLCPO 40重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-dPLCPOを調製する。
【0124】
S-cPLCPO
メトキシプロピルケトン 80重量%、ジオキサラン 10重量%、及びシクロヘキサノン 10重量%の溶媒混合物 74重量%にM-cPLCPO 26重量%を溶解させ、そして、室温で30分間溶液を撹拌することによって溶液S-cPLCPOを調製する。
【0125】
実施例1,プライマーコーティングされた基板の調製
トリアセタートセルロース(TAC)箔を、Kbarコーター(バーサイズ1)を用いてプライマー溶液(DYMAX OC-4021 80% ブチルアセタート中20重量% 固形分含量)でコーティングした。湿潤フィルムを80℃で30秒間乾燥させた;得られた乾燥フィルムの厚みは約2μmであった。次いで、乾燥フィルムを室温で紫外光(1500mJ、不活性N雰囲気下)に露光した。
【0126】
実施例2,可撓性基板におけるアクロマティック四分の一波長リターダ
実施例1のプライマーコーティングされたTAC基板に、光配向溶液S-PA1をKbarコーティング(バーサイズ0)した。湿潤フィルムを80℃で30秒間乾燥させた;乾燥フィルム厚みは約100nmであった。次いで、乾燥フィルムを室温で平行な直線偏光されたUV(LPUV)光(280~320nm;50mJ/cm2)に露光した。偏光面は、TAC基板上の基準縁に対して20°であった。
【0127】
露光された光配向層上に、Kbarコーティング(バーサイズ2)によって溶液S-PLCPO1から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、続いて、高圧水銀ランプの200mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは2.2μmであった。
【0128】
交差偏光子の間でフィルムを分析したとき、該フィルムは複屈折性であり、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配列されていることが見出された。チルト補正器を用いて270nmの光学リタデーションが測定された。
【0129】
次いで、TAC基板上の上記基準縁に対して80°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;150mJ/cm2)にPLCPO層を露光した。LPUV光に露光した後、該フィルムを再度分析した。露光した際に光学特性が変化しなかったことが見出された。特に、該フィルムは、単軸複屈折性であり、全くねじれておらず、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配向されていた。光学リタデーションは、依然として270nmであった。
【0130】
続いて、LCP溶液S-LCP1をPLCPO層上にKbarコーティング(バーサイズ1)した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、そして、高圧水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。
【0131】
得られたフィルムは、目に見える欠陥の全くない均質な外観を示した。偏光解析法によってフィルムを分析することによって、該フィルムが、図7に示すようにアクロマティック四分の一波長板(AQWP)の特性を有していることが見出された。偏光解析評価から、LCP1層が130~140nmの光学リタデーションを有し、そして、LCP1層の光学軸の配列がTAC基板上の上記基準縁に対して80°であることも見出された。
【0132】
実施例3,アクロマティック四分の一波長リターダ、架橋及び配列のための単回露光
実施例2と同様に、プライマーコーティングされたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、そして、TAC基板上の基準縁に対して20°の偏光面を有する配向光に露光した。
【0133】
実施例2のように、Kbarコーティング(バーサイズ2)によって、露光された光配向層上に溶液S-PLCPO1から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させた。
【0134】
PLCPO層中のLCP材料を同時に架橋させ、そして、PLCPO層の表面上に配向を生じさせるために、TAC基板上の基準縁に対して80°の偏光面を有する偏光されたUV(A+B)光に窒素下室温で該層を露光した(1500mJ/cm2の水銀ランプ、300~390nm)。
【0135】
露光プロセス後、PLCPO層が固化したことを確認した。更に、該フィルムが複屈折性であり、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配列されていることが見出された。チルト補正器を用いて270nmの光学リタデーションが測定された。
【0136】
続いて、実施例2と同様にPLCPO層上にLCP溶液S-LCP1から層を形成し、アニールし、乾燥させ、そして、架橋させた。
【0137】
得られたフィルムは、目に見える欠陥の全くない均質な外観を示した。偏光解析法によってフィルムを分析することによって、該フィルムがアクロマティックな四分の一波長板の特性を有していることが見出された。偏光解析評価から、LCP1層が130~140nmの光学リタデーションを有し、そして、LCP1層の光学軸の配列がTAC基板上の上記基準縁に対して80°であることも見出された。
【0138】
実施例4,アクロマティック四分の一波長リターダ、PLCPOの架橋前にLPUV露光
実施例2と同様に、プライマーコーティングされたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、そして、TAC基板上の基準縁に対して20°の偏光面を有する配向光に露光した。
【0139】
実施例2のように、Kbarコーティング(バーサイズ2)によって、露光された光配向層上に溶液S-PLCPO1から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させた。
【0140】
次いで、TAC基板上の基準縁に対して80°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;100mJ/cm2)にPLCPO層を室温で露光した。
【0141】
その後、1000mJ/cm2の水銀ランプの光を照射することによって、PLCPO層中のLCP分子を窒素下で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは2.2μmであった。
【0142】
PLCPO材料中のLCP材料が架橋されるまで、LPUV光への露光中又は露光後にPLCPO層を備える基板を室温で維持した。室温ではPLCPO材料の粘度が比較的高いので、LCP分子はLPUV光に露光されたときに再配列しなかった。これは、交差偏光子の間で架橋したPLCPO層を分析することによって確認され、これは、TAC基板上の基準縁に対して20°の光学軸の単軸配列を示した。チルト補正器を用いて約270nmの光学リタデーションが測定された。
【0143】
続いて、実施例2と同様にPLCPO層上にLCP溶液S-LCP1から層を形成し、アニールし、乾燥させ、そして、架橋させた。
【0144】
得られたフィルムは、目に見える欠陥の全くない均質な外観を示した。偏光解析装置を用いてフィルムを分析することによって、該フィルムが、図8に示すようにアクロマティック四分の一波長板の特性を有していることが見出された。偏光解析評価から、LCP1層が130~140nmの光学リタデーションを有し、そして、LCP1層の光学軸の配列がTAC基板上の上記基準縁に対して80°であることも見出された。
【0145】
実施例5,PLCPO層の露光された及び露光されていない領域
実施例2と同様にプライマーコーティングされたTAC基板上で光配向層及びPLCPOフィルムを調製した。実施例2との唯一の違いは、TAC基板上の基準縁に対して80°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;150mJ/cm2)にPLCPO層の領域の一方の半分のみを露光したことであった。PLCPO層の領域の他方の半分は、配向光に露光しなかった。次いで、実施例2のプロセスに従ってPLCPO層上にLCP層を再度調製した。
【0146】
得られたフィルムを交差偏光子の間で分析したとき、PLCPO層が配向光に露光されなかった領域では、約410nmのリタデーションを有する単軸リターダが作製され、PLCPO層のみのリタデーションと比べてリタデーションが増大したことが見出された。これは、LCP層の液晶が、PLCPO層中の液晶と同じ方向に配向されたことを意味する。
【0147】
PLCPO層が配向光に露光された領域は、実施例2で作製されたフィルムと類似の光学性能を示すことが見出された。
【0148】
実施例6,色素を含むPLCPO層を用いた円偏光子の作製
偏光面が基準縁に対して20°ではなく0°であったことのみを除いて実施例2と同様に、プライマーコーティングしたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、配向光に露光した。
【0149】
露光された光配向層上に、二色性色素を含む溶液S-dPLCPOから、Kbarコーティング(バーサイズ2)によって層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、61℃で60秒間乾燥させ、そして、水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは約2.2μmであった。
【0150】
フィルムは、直線偏光子として作用することが見出された。
【0151】
次いで、TAC基板上の基準縁に対して45°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;150mJ/cm2)にPLCPO層を露光した。
【0152】
続いて、LCP溶液S-LCP1をPLCPO層上にKbarコーティング(バーサイズ1)した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、そして、水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。上記実施例から、LCP1層の光学リタデーションが、緑色光の四分の一波長リタデーションに対応する130~140nmであることが知られている。
【0153】
得られた装置を分析したとき、それが円偏光子として作用することが見出された。これによって、色素を含有するPLCPO層をLPUV光に露光することによって誘導される45°の配向方向に沿ってLCP層の光学軸方向が確立されていることが確認される。
【0154】
実施例7,円偏光子、色素を含むLCP層の作製
実施例2と同様に、プライマーコーティングされたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、そして、TAC基板上の基準縁に対して0°の偏光面を有する配向光に露光した。
【0155】
露光された光配向層上に、Kbarコーティング(バーサイズ1)によって溶液S-PLCPO1から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、続いて、高圧水銀ランプの200mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは約1.1μmであった。
【0156】
交差偏光子の間でフィルムを分析したとき、該フィルムが複屈折性であり、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して0°に配列されていることが見出された。チルト補正器を用いて約140nmの光学リタデーションが測定された。
【0157】
次いで、TAC基板上の基準縁に対して45°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;150mJ/cm2)にPLCPO層を露光した。
【0158】
続いて、二色性色素を含むLCP溶液S-dLCPをPLCPO層上にKbarコーティング(バーサイズ2)した。湿潤フィルムをアニールし、そして、61℃で60秒間乾燥させ、そして、水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。
【0159】
得られた装置を分析したとき、それが円偏光子として作用することが見出された。これによって、PLCPO層をLPUV光に露光することによって誘導される45°の配向方向に沿って、dLCP層に埋め込まれている二色性色素の吸収方向が確立されていることが確認される。
【0160】
実施例8,パターン化円偏光子
実施例2と同様に、プライマーコーティングされたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、そして、TAC基板上の基準縁に対して0°の偏光面を有する配向光に露光した。
【0161】
露光された光配向層上に、Kbarコーティング(バーサイズ1)によって溶液S-PLCPO1から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、続いて、高圧水銀ランプの200mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは約1.1μmであった。
【0162】
交差偏光子の間でフィルムを分析したとき、該フィルムが複屈折性であり、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して0°に配列されていることが見出された。チルト補正器を用いて約140nmの光学リタデーションが測定された。
【0163】
次いで、二重露光プロセスによってPLCPO層の表面に配向パターンを生じさせた。第1の工程では、不透明領域及び透過性領域を有するフォトマスクを通して、TAC基板上の基準縁に対して45°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;300mJ/cm2)をPLCPO層に照射した。第2の工程では、フォトマスクは使用せず、-45°の偏光面を有するLPUV光(280~320nm;150mJ/cm2)にPLCPO層を露光した。
【0164】
続いて、二色性色素を含むLCP溶液S-dLCPをPLCPO層上にKbarコーティング(バーサイズ2)した。湿潤フィルムをアニールし、そして、61℃で60秒間乾燥させ、そして、水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。
【0165】
得られた装置を分析したとき、それがパターン化円偏光子として作用し、第1及び第2の領域のパターンが上記フォトマスクのパターンに対応することが見出された。基板の反対側から装置を照らしたとき、第1の領域を透過した光は左回りに円偏光され、一方、第2の領域を透過した光は右回りに円偏光された。
【0166】
これによって、第1及び第2の領域においてPLCPO層をLPUV光に露光することによって誘導される+45°及び-45°の配向方向に沿って、dLCP層に埋め込まれている二色性色素の吸収方向が確立されていることが確認される。
【0167】
実施例9,コレステリック装置
溶液S-LCP2のKbarコーティング(バーサイズ0)によって、コロナ処理されたPET基板上に薄いLCP層を形成した。
【0168】
該フィルムを61℃で30秒間乾燥させ、次いで、1500mJ/cm2の水銀ランプを照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは約0.2μmであった。異方性LCP層の光学軸が好ましい方向に均一に配向されたことが観察された。PET基板の異方性表面特性によって液晶材料の配列が誘導された。薄いLCP層の目的は、その上にコーティングされるコレステリック材料のための配列力を強化することであった。
【0169】
溶液S-cPLCPOのKbarコーティング(バーサイズ2)によってLCP2層上にコレステリックPLCPO材料の層を形成し、フィルムを61℃で30秒間乾燥させ、そして、1500mJ/cm2の水銀ランプを照射して窒素下でそれを架橋させた。乾燥フィルムの厚みは約2.5μmであった。
【0170】
次いで、cPLCPO層の左半分を0°の偏光面を有するLPUV光に露光し、一方、cPLCPO層の右半分を45°の偏光面を有するLPUV光に露光した。基板の同じ基準縁に対する両角度を測定する。
【0171】
次いで、露光したcPLCPO層にS-LCP1をKbarコーティングした(バーサイズ1)。該フィルムを50℃で60秒間乾燥させ、次いで、1500mJ/cm2の水銀ランプを照射して窒素下で架橋させた。
【0172】
非偏光白色光の反射について得られた装置を観察したとき、コレステリック層の典型的な特性を見ることができた。層に対する法線方向に沿って観察するとそれは赤色に見えたが、より大きな斜角で観察したとき緑に変化した。
【0173】
観察者とLCP1層が観察者に面している装置との間で直線偏光子を備える装置を更に分析することによって、上述の左半分及び右半分において、反射光が異なる偏光面で直線偏光されることが見出された。LCP1リターダの光学軸は、装置の左半分では0°、そして、装置の右半分では45°に配列されたと結論付けることができた。
【0174】
実施例10,M-PLCPO2を使用するアクロマティックリターダ
実施例2と同様に、プライマーコーティングされたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、そして、TAC基板上の基準縁に対して20°の偏光面を有する配向光に露光した。
【0175】
露光された光配向層上に、Kbarコーティング(バーサイズ2)によって溶液S-PLCPO2から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、続いて、高圧水銀ランプの200mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは2.2μmであった。
【0176】
交差偏光子の間でフィルムを分析したとき、該フィルムが複屈折性であり、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配列されていることが見出された。チルト補正器を用いて約270nmの光学リタデーションが測定された。
【0177】
次いで、TAC基板上の上記基準縁に対して80°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;300mJ/cm2)にPLCPO層を露光した。LPUV光に露光した後、該フィルムを再度分析した。露光した際に光学特性が変化しなかったことが見出された。特に、該フィルムは、単軸複屈折性であり、全くねじれておらず、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配向されていた。光学リタデーションは、依然として270nmであった。
【0178】
続いて、LCP溶液S-LCP1をPLCPO層上にKbarコーティング(バーサイズ1)した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、そして、高圧水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。
【0179】
得られたフィルムは、目に見える欠陥の全くない均質な外観を示した。偏光解析法によってフィルムを分析することによって、該フィルムがアクロマティック四分の一波長板の特性を有していることが見出された。偏光解析評価から、LCP1層が130~140nmの光学リタデーションを有することが見出された。
【0180】
実施例11,M-PLCPO3を使用するアクロマティックリターダ
実施例2と同様に、プライマーコーティングされたTAC基板を光配向溶液S-PA1でコーティングし、乾燥させ、そして、TAC基板上の基準縁に対して20°の偏光面を有する配向光に露光した。
【0181】
露光された光配向層上に、Kbarコーティング(バーサイズ2)によって溶液S-PLCPO3から層を形成した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、続いて、高圧水銀ランプの200mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。乾燥フィルムの厚みは2.2μmであった。
【0182】
交差偏光子の間でフィルムを分析したとき、該フィルムが複屈折性であり、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配列されていることが見出された。チルト補正器を用いて約270nmの光学リタデーションが測定された。
【0183】
次いで、TAC基板上の上記基準縁に対して80°の偏光面を有する平行LPUV光(280~320nm;300mJ/cm2)にPLCPO層を露光した。LPUV光に露光した後、該フィルムを再度分析した。露光した際に光学特性が変化しなかったことが見出された。特に、該フィルムは、単軸複屈折性であり、全くねじれておらず、光学軸はTACフィルムの基準縁に対して20°に配向されていた。光学リタデーションは、依然として約270nmであった。
【0184】
続いて、LCP溶液S-LCP1をPLCPO層上にKbarコーティング(バーサイズ1)した。湿潤フィルムをアニールし、そして、50℃で60秒間乾燥させ、そして、高圧水銀ランプの1500mJ/cm2の光を照射して窒素下室温で架橋させた。
【0185】
得られたフィルムは、目に見える欠陥の全くない均質な外観を示した。偏光解析法によってフィルムを分析することによって、該フィルムがアクロマティック四分の一波長板の特性を有していることが見出された。偏光解析評価から、LCP1層が130~140nmの光学遅延を有することが見出された。
【0186】
本発明及び様々な実施態様は、以下の項目によって要約することができる:
1.異方性光学機能及び配向能を含む層(23、26、27、28)を含む光学素子(1、2、3、4、5、6)を製造する方法であって、
- 重合性液晶及び光配列性物質(PLCPO材料)を含む組成物を提供する工程と、
- 支持体(21)上にPLCPO材料の層を形成する工程と、
- PLCPO層(23、26、27、28)において重合性液晶の重合を開始させる工程と、
- 表面の少なくとも1つの領域における配向方向が、該少なくとも1つの領域における層の上面の直下の液晶の液晶ダイレクタの配列と異なるように、PLCPO層(23、26、27、28)を配向光に露光して、スレーブ材料のために層の上面に配向を生じさせる工程と
を含む方法。
2.PLCPO層(23、26、27、28)の液晶材料に配向処理を適用する工程を更に含む、項目1記載の方法。
3.配向光の作用によるPLCPO層(23、26、27、28)中の液晶の再配列が阻止される、項目1又は2記載の方法。
4.重合性液晶の重合が、PLCPO層(23、26、27、28)が配向光に露光される前に開始される、項目1~3のいずれか記載の方法。
5.重合性液晶の重合が、PLCPO層(23、26、27、28)が配向光に露光された後に開始される、項目1~3のいずれか記載の方法。
6.重合性液晶の重合及び配向の生成が、PLCPO層(23、26、27、28)を配向光に露光する一工程において達成される、項目1~3のいずれか記載の方法。
7.PLCPO材料が、1を超える光配列性物質を含む、項目1~6のいずれか記載の方法。
8.光配列性物質の濃度が、PLCPO層の中央よりも該層の上面において高くなるように、PLCPO中の光配列性物質が密度勾配を有する、項目1~7のいずれか記載の方法。
9.光配列性物質が、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、並びに/又はポリシロキサンである、項目1~8のいずれか記載の方法。
10.PLCPO材料が、等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤を含む、項目1~9のいずれか記載の方法。
11.光学異方特性を有し、そして、その表面において配向能を有するPLCPO層(23、26、27、28)を含む層構造(1、2、3、4、5、6)であって、少なくとも1つの領域において、PLCPO層によって与えられる配向方向が、層の上面の直下のPLCPO層中の液晶配列とは異なる層構造。
12.光配列性物質の濃度が、PLCPO層の中央よりも層の上面において高くなるように、PLCPO中の光配列性物質が密度勾配を有する、項目11記載の層構造。
13.光配列性物質が、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、並びに/又はポリシロキサンである、項目11又は12記載の層構造。
14.PLCPO材料が、等方性若しくは異方性の蛍光及び/若しくは非蛍光の色素、二色性色素、並びに/又はキラル添加剤を含む、項目11~13のいずれか記載の層構造。
15.PLCPO層によって与えられる配向が、局所的に異なる配列を有する、項目11~14のいずれか記載の層構造。
16.PLCPO層と直接接触している追加の異方性層を有し、追加の層が、液晶ポリマー(25、26、27、28)を含み、追加の層の液晶ポリマーが、PLCPO層の配向情報に従って配向される、項目11~15のいずれか記載の層構造。
17.層構造がアクロマティックリターダとして作用するように、PLCPO層及び追加の異方性層が構成される、項目16に記載の層構造。
18.反射偏光子と項目17記載のアクロマティックリターダとを含む光学装置。
19.液晶又はOLEDディスプレイにおける光管理のための、項目11~17のいずれか記載の層構造の使用。
20.重合性液晶と光配列性物質とを含む組成物であって、光配向物質の重量パーセントが、5%未満、1重量%未満、又は更には0.1重量%未満であり、そして、光配列性物質が、フッ素化部分及び/若しくはシロキサン部分を含む、並びに/又はポリシロキサンである組成物。
21.光配列性物質が、ポリマーであり、そして、側鎖にフッ素化部分を含む、項目20記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性光学機能及び配向能を含む層(23、26、27、28)を含む光学素子(1、2、3、4、5、6)を製造する方法であって、
- 重合性液晶モノマー及び光配列性物質を含む組成物(PLCPO材料)を提供する工程、ここで、重合性液晶モノマーは、ジアクリレート及びジメタクリレートから選択される重合性基を有し、かつ、光配列性物質は、ポリマーであり、そして、側鎖にフッ素化部分を含み、かつ、光配列性物質は、配向光に露光されたときに、光二量体化、trans-cis異性化、又は光フリース転位によって異方性が誘導される性質を有し、かつ、光配列性物質の合計の重合性液晶の合計に対する重量比が0.5未満である、
- 支持体(21)上にPLCPO材料の層を形成する工程、ここで、支持体は、PLCPO層中の液晶の配列パターンを規定するために、配向方向のパターンを示す配向表面を有する、
- PLCPO層(23、26、27、28)において重合性液晶の重合を開始させる工程、
面の少なくとも1つの領域におけるスレーブ材料のための配向方向が、該少なくとも1つの領域における層の上面の直下の液晶の液晶ダイレクタの配列と異なるように、PLCPO層(23、26、27、28)を配向光に露光して、スレーブ材料のために層の上面に配向を生じさせる工程、及び
- 光配列された材料と接触したときに異方性を確立する能力を有するスレーブ材料(25)を、PLCPO層の全領域又はその一部のみに適用する工程
を含む方法。
【請求項2】
PLCPO層(23、26、27、28)の液晶に配向処理を適用する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
配向光の作用によるPLCPO層(23、26、27、28)中の液晶の再配列が阻止される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
重合性液晶の重合が、PLCPO層(23、26、27、28)が配向光に露光される前に開始される、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
重合性液晶の重合が、PLCPO層(23、26、27、28)が配向光に露光された後に開始される、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項6】
重合性液晶の重合及び配向の生成が、PLCPO層(23、26、27、28)を配向光に露光する一工程において達成される、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項7】
PLCPO材料が、1を超える光配列性物質を含む、請求項1~6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
光配列性物質の濃度が、PLCPO層の中央よりも該層の上面において高くなるように、PLCPO中の光配列性物質が密度勾配を有する、請求項1~7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
PLCPO材料中の光配列性物質の重量パーセントが、5重量%未満である、請求項1~8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
PLCPO材料中の光配列性物質の重量パーセントが、1重量%未満である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
PLCPO材料が、等方性の蛍光色素、異方性の蛍光色素、非蛍光の色素、二色性色素及びキラル添加剤からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか記載の方法。
【請求項12】
チルト配向を生じさせるために、配向光が、PLCPO層の表面に対して斜め方向から照射される、請求項1~11のいずれか記載の方法。
【請求項13】
スレーブ材料が、液晶ポリマー(LCP)材料である、請求項1~12のいずれか記載の方法。
【請求項14】
スレーブ材料が、PLCPO材料である、請求項1~13のいずれか記載の方法。
【請求項15】
スレーブ材料が、キラル添加剤又は二色性色素を含む、請求項1~14のいずれか記載の方法。
【請求項16】
PLCPO層(23、26、27、28)を含む層構造(1、2、3、4、5、6)であって、PLCPOは重合性液晶モノマー及び光配列性物質を含む組成物(PLCPO材料)を指し、PLCPO層は光配列され、重合したPLCPO材料の層を指し、PLCPO層(23、26、27、28)は光学異方特性を有し、そして、その表面において配向能を有し、少なくとも1つの領域において、PLCPO層によって与えられる配向方向が、層の上面の直下のPLCPO層中の液晶配列とは異なり、重合性液晶モノマーは、ジアクリレート及びジメタクリレートから選択される重合性基を有し、PLCPO層中の光配列性物質は、ポリマーであり、そして、フッ素化部分を含み、かつ、配向光に露光されたときに、光二量体化、trans-cis異性化、又は光フリース転位によって異方性が誘導される性質を有し、光配列性物質の合計の重合性液晶の合計に対する重量比が0.5未満であり、
PLCPO層は支持体(21)上に適用されており、支持体は、PLCPO層中の液晶の配列パターンを規定するために、配向方向のパターンを示す配向表面を有し、そして
層構造が、PLCPO層の全領域又はその一部のみに適用されたスレーブ材料(25)を更に含み、スレーブ材料は光配列された材料と接触したときに異方性を確立する能力を有する、層構造。
【請求項17】
光配列性物質の濃度が、PLCPO層の中央よりも層の上面において高くなるように、PLCPO材料中の光配列性物質が密度勾配を有する、請求項16記載の層構造。
【請求項18】
PLCPO材料が、等方性の蛍光色素、異方性の蛍光色素、非蛍光の色素、二色性色素及びキラル添加剤からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項16記載の層構造。
【請求項19】
PLCPO層によって与えられる配向が、局所的に異なる配列を有する、請求項1618のいずれか記載の層構造。
【請求項20】
PLCPO層と直接接触している追加の異方性層を有し、追加の層が、液晶ポリマー(LCP)材料(25、26、27、28)を含み、追加の層の液晶ポリマーが、PLCPO層の配向情報に従って配向される、請求項1619のいずれか記載の層構造。
【請求項21】
層構造がアクロマティックリターダとして作用するように、PLCPO層及び追加の異方性層が構成される、請求項20に記載の層構造。
【請求項22】
LCP材料が、二色性色素及び/又はキラル添加剤を含む、請求項20記載の層構造。
【請求項23】
反射偏光子と請求項21記載のアクロマティックリターダとを含む光学装置。
【請求項24】
液晶又はOLEDディスプレイにおける光管理のための、請求項1621のいずれか記載の層構造の使用。
【外国語明細書】