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特開2023-27980意思決定支援装置、意思決定支援プログラム及び意思決定支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027980
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】意思決定支援装置、意思決定支援プログラム及び意思決定支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20230224BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133386
(22)【出願日】2021-08-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高須賀 将秀
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦志
(72)【発明者】
【氏名】児玉 歩
(72)【発明者】
【氏名】高木 博文
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA01
(57)【要約】
【課題】少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる処理を様々な要素を考慮しつつ実行すること。
【解決手段】意思決定支援装置は、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得部と、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出部と、前記解データを出力するデータ出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得部と、
前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出部と、
前記解データを出力するデータ出力部と、
を備える意思決定支援装置。
【請求項2】
前記解算出部は、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段とのいずれかにより、前記問題を解く、
請求項1に記載の意思決定支援装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、
前記解算出部は、前記サイズデータにより示される前記積が第一閾値未満である場合に、前記第二手段により前記問題を解く、
請求項2に記載の意思決定支援装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、
前記解算出部は、前記サイズデータにより示される前記積が第一閾値以上であり、前記第一閾値よりも大きい第二閾値未満である場合に、前記第一手段により前記問題を解く、
請求項2に記載の意思決定支援装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、
前記解算出部は、前記サイズデータにより示される前記積が第二閾値以上である場合に、前記第三手段により前記問題を解く、
請求項2に記載の意思決定支援装置。
【請求項6】
コンピュータに、
少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得機能と、
前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出機能と、
前記解データを出力するデータ出力機能と、
を実現させる意思決定支援プログラム。
【請求項7】
少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得ステップと、
前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出ステップと、
前記解データを出力するデータ出力ステップと、
を含む意思決定支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意思決定支援装置、意思決定支援プログラム及び意思決定支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から仕事を人に割り当てる問題を当該問題に関する様々な制約を考慮しつつ数理的に取り扱う技術の開発が進められている。このような技術として、例えば、特許文献1に開示されている人材マッチングシステムが挙げられる。
【0003】
この人材マッチングシステムは、共有データベースと、勤務実績データと、検索結果提示手段と、確定情報送信手段とを備える。共有データベースは、特定企業からの求人案件データを記憶する。求職者の勤務実績データは、共同事業体の間でブロックチェーンを用いて共有される。検索結果提示手段は、求職者から求人案件に関する検索指示を受け付けた場合、検索指示をした求職者の希望条件、共有データベースに記憶された求人案件データ、及びブロックチェーンのネットワークに流通する該求職者の勤務実績データに基づいて、検索指示に合致する求人案件データを抽出し、検索結果として該求職者に提示する。確定情報送信手段は、検索結果に対して求職者が求人案件の確定をした場合、該求人案件を特定する情報及び求職者のプロフィールデータを、該求人案件を登録した特定企業に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表WO2020/161929号公報
【0005】
しかし、上述した人材マッチングシステムは、求職者の希望条件及び求職者の勤務実績に基づいて求人案件と求職者とをマッチングさせる。このため、上述した人材マッチングシステムは、求人案件と求職者とを一対一でマッチングさせる処理しか実行することができない。また、上述した人材マッチングシステムは、複数の仕事を複数の人に割り当てる処理、求職者の希望条件及び求職者の勤務実績以外の要素を考慮して仕事を人に割り当てる処理等を実行することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる処理を様々な要素を考慮しつつ実行することができる意思決定支援装置、意思決定支援プログラム及び意思決定支援方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得部と、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出部と、前記解データを出力するデータ出力部と、を備える意思決定支援装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上述した意思決定支援装置であって、前記解算出部が、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段とのいずれかにより、前記問題を解く、意思決定支援装置である。
【0009】
本発明の一態様は、上述した意思決定支援装置であって、前記データ取得部が、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、前記解算出部が、前記サイズデータにより示される前記積が第一閾値未満である場合に、前記第二手段により前記問題を解く、意思決定支援装置である。
【0010】
本発明の一態様は、上述した意思決定支援装置であって、前記データ取得部が、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、前記解算出部が、前記サイズデータにより示される前記積が第一閾値以上であり、前記第一閾値よりも大きい第二閾値未満である場合に、前記第一手段により前記問題を解く、意思決定支援装置である。
【0011】
本発明の一態様は、上述した意思決定支援装置であって、前記データ取得部が、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、前記解算出部が、前記サイズデータにより示される前記積が第二閾値以上である場合に、前記第三手段により前記問題を解く、意思決定支援装置である。
【0012】
本発明の一態様は、コンピュータに、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得機能と、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出機能と、前記解データを出力するデータ出力機能と、を実現させる意思決定支援プログラムである。
【0013】
本発明の一態様は、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得ステップと、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出ステップと、前記解データを出力するデータ出力ステップと、を含む意思決定支援方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる処理を様々な要素を考慮しつつ実行することができる意思決定支援装置、意思決定支援プログラム及び意思決定支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る意思決定支援装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る条件データにより示される条件の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る条件データにより示される条件の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るベイジアンネットワークの一例を示す図である
図5】本発明の実施形態に係る第一手段の一例を説明するための図である。
図6】本発明の実施形態に係る意思決定支援装置により算出された解のコストの合計の一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る意思決定支援装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る意思決定支援装置の機能的な構成の一例を示す図である。図1に示した意思決定支援装置は、多目的最適化問題等の問題の解を探索する装置である。多目的最適化問題は、例えば、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題である。ここで言う主体は、例えば、人、装置、器具、プログラムを実行する上で必要な記憶領域等のリソースである。
【0017】
また、多目的最適化問題は、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能な問題である。目的関数は、多目的最適化問題において考慮される必要がある要素を表す関数である。例えば、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題である場合、目的関数は、各仕事と各主体との相性を示す指標、各仕事の性質、二つ以上の仕事同士の関連性、二つ以上の主体同士の関係、各主体が有する知識、経験、技能及び性能の少なくとも一つである。
【0018】
さらに、多目的最適化問題の解は、出来る限り多数の目的関数を出来る限り大きくすること又は出来る限り小さくすることが好ましく、出来る限り多数の目的関数を最大にすること又は最小にすることが更に好ましい。
【0019】
図1に示すように、意思決定支援装置10は、データ取得部11と、解算出部12と、データ出力部13とを備える。以下の説明では、意思決定支援装置10が少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題の解を算出する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
データ取得部11は、問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得する。ここで言う条件は、例えば、主体同士の相性、各主体が有する知識、経験、技能及び性能の少なくとも一つ、各主体のこれまでの仕事の実績、各主体がこれまでに仕事を遂行する際に関わっていた主体である。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る条件データにより示される条件の一例を示す図である。図2は、各主体が各仕事を遂行する上で活用することが可能な知識、経験、技能、性能等に関する数値を示している。例えば、図2の二行二列目は、仕事Aを遂行する上で主体Aが有している知識、経験等の程度が「10」であることを示している。また、例えば、図2の五行四列目は、仕事Cを遂行する上で主体Dが有している知識、経験等の程度が「6」であることを示している。条件データは、例えば、図2に示した内容を示すデータである。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に係る条件データにより示される条件の一例を示す図である。図3は、各主体が現在までに遂行した仕事を示している。例えば、図3の二行三列目は、前回、主体Aが仕事Bを遂行したことを示している。また、例えば、図3の五行二列目は、今回、主体Dが仕事Dを遂行することを示している。条件データは、例えば、図3に示した内容を示すデータである。
【0023】
また、データ取得部11は、複数の目的関数が定義されることが可能な多目的最適化問題等の問題のサイズを示すサイズデータを取得する。ここで言う問題のサイズは、例えば、当該問題に含まれる仕事の総数、当該問題に含まれる主体の総数及び個々の主体が単位時間当たりに遂行可能な仕事の量の数の少なくとも二つの積である。また、例えば、サイズデータは、当該問題に含まれる仕事の総数と、当該問題に含まれる主体の総数との積を示していてもよい。
【0024】
解算出部12は、複数の目的関数が定義されることが可能な多目的最適化問題等の問題をグラフィカルモデルに変換する。ここで言うグラフィカルモデルは、確率論、統計、機械学習等の分野で使用されるグラフに関する数理モデルである。このようなグラフィカルモデルとして、例えば、ベイジアンネットワーク、マルコフ確率場、条件付き確率場が挙げられる。
【0025】
図4は、本発明の実施形態に係るベイジアンネットワークの一例を示す図である。図4の右側には、問題に含まれる仕事を示しており、実線又は破線で描かれている正方形が示されている。図4の左側には、問題に含まれる主体を示しており、実線又は破線で描かれている円が示されている。図4に示した正方形同士又は円同士を結ぶ実線は、条件データにより示される二つ以上の仕事同士の関連性又は二つ以上の主体同士の関係を表している。解算出部12は、例えば、問題を図4に示したベイジアンネットワークに変換する。なお、図4に示した正方形と円とを結ぶ実線は、解算出部12により算出される解の一つを表している。
【0026】
次に、解算出部12は、複数の目的関数が定義されることが可能な多目的最適化問題等の問題を条件データにより示される条件の下で解き、問題の解を示す解データを生成する。また、解算出部12は、例えば、第一手段、第二手段又は第三手段により問題を解く。
【0027】
第一手段は、問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を問題に段階的に課すことにより問題の解を探索する手段である。解算出部12は、例えば、サイズデータにより示される問題に含まれる仕事の総数と、問題に含まれる主体の総数との積が第一閾値以上であり、第一閾値よりも大きい第二閾値未満である場合に、第一手段により問題を解く。
【0028】
図5は、本発明の実施形態に係る第一手段の一例を説明するための図である。図5は、問題の解の集合を表すベクトル空間の一例を示している。図5に示した二本の矢印は、当該ベクトル空間を規定する軸の一例を示している。また、図5は、閉曲線C1、閉曲線C2、閉曲線C3、閉曲線C4、領域R及び点Pを示している。
【0029】
閉曲線C1は、第一数理モデルを使用して算出される問題の解の集合を表している。閉曲線C2は、第一数理モデルに制約を加えた第二数理モデルを使用して算出される問題の解の集合を表している。閉曲線C3は、第二数理モデルに制約を加えた第三数理モデルを使用して算出される問題の解の集合を表している。閉曲線C4は、第三数理モデルに制約を加えた第四数理モデルを使用して算出される問題の解の集合を表している。
【0030】
領域Rは、問題の解のうち実行可能な解の集合を表している。ここで言う実行可能な解は、例えば、多目的最適化問題が少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題である場合、問題に含まれている全ての主体が自身に割り当てられた全ての仕事を遂行することを可能とし、問題に含まれている全ての仕事が少なくとも一つの主体により遂行される解である。
【0031】
点Pは、問題の解のうち最適な解を表している。ここで言う最適な解は、実行可能な解の一つであり、問題を解く上で考慮される必要がある要素の少なくとも一つが所定の条件を満たしている解である。また、このような要素は、例えば、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題である場合、主体が仕事に着手する前に実施する必要がある準備、主体が有する知識、経験、技能及び性能の少なくとも一つ、主体が仕事を遂行するために必要な時間、主体が仕事を遂行する場合に負う負担である。
【0032】
例えば、図5に示すように、第一手段は、第一数理モデル、第二数理モデル、第三数理モデル及び第四数理モデルの順にこれら四つの数理モデルを問題に適用し、実行可能な解及び最適な解の少なくとも一方を探索する手段である。
【0033】
第二手段は、問題に含まれる仕事の中から主体に割り当てる仕事を選択する場合の数及び主体が割り当てられた仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により問題の解を探索する手段である。解算出部12は、例えば、サイズデータにより示される問題に含まれる仕事の総数と、問題に含まれる主体の総数との積が第一閾値未満である場合に、第二手段により問題を解く。
【0034】
第三手段は、問題の解の中から実行可能な解を選択し、問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより問題の解を探索する手段である。解算出部12は、例えば、サイズデータにより示される問題に含まれる仕事の総数と、問題に含まれる主体の総数との積が第二閾値以上である場合に、により問題を解く。
【0035】
また、第一閾値及び第二閾値は、例えば、意思決定支援装置10が問題を解くために実行する計算に使用可能なメモリの容量及び意思決定支援装置10が解の探索に必要な時間の少なくとも一方に基づいて決定された閾値である。
【0036】
また、第一手段、第二手段及び第三手段は、サイズデータにより示される問題のサイズが比較的大きい場合であっても、問題の解を算出することが可能な手段となっている。例えば、第一手段、第二手段及び第三手段は、サイズデータにより示される仕事の数が所定の数を超えていることにより問題のサイズが比較的大きい場合であっても、問題の解を算出することが可能な手段となっている。
【0037】
図6は、本発明の実施形態に係る意思決定支援装置により算出された解のコストの合計の一例を示す図である。図6は、図4に示したベイジアンネットワークと、当該ベイジアンネットワークに重ねて示されている多角形とを示している。図6に示した二つの多角形の面積の合計は、正方形と円とを結ぶ実線により示されている解のコストの合計を表している。また、ここで言う解のコストは、例えば、当該解の通りに少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てた場合に、各主体が効率的に各仕事を遂行し、各仕事が確実に遂行される度合いであり、値が小さい程、当該解が優れていることを表す。
【0038】
解算出部12は、第一手段、第二手段又は第三手段を使用してコストが出来る限り小さくなる解を算出する処理を実行する。この処理は、ベイジアンネットワーク上の距離の合計が出来る限り小さくなる解を算出する処理である。また、解算出部12は、第一手段、第二手段又は第三手段を使用してコストが最小となる解を算出する処理を実行することが好ましい。この処理は、ベイジアンネットワーク上の距離の合計が最小となる解を算出する処理である。
【0039】
データ出力部13は、解データを出力する。解データは、例えば、解算出部12により算出された解を意思決定支援装置10に接続されているディスプレイに表示するためのデータである。
【0040】
次に、図7を参照しながら実施形態に係る意思決定支援装置により実行される処理の一例を説明する。図7は、本発明の実施形態に係る意思決定支援装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【0041】
ステップS101において、データ取得部11は、条件データ及びサイズデータを取得する。
【0042】
ステップS102において、解算出部12は、問題をグラフィカルモデルに変換する。
【0043】
ステップS103において、解算出部12は、サイズデータにより示される仕事の総数と主体の総数との積が第一閾値未満であるか否かを判定する。解算出部12は、サイズデータにより示される仕事の総数と主体の総数との積が第一閾値未満であると判定した場合(ステップS103:YES)、処理をステップS104に進める。一方、解算出部12は、サイズデータにより示される仕事の総数と主体の総数との積が第一閾値以上であると判定した場合(ステップS103:NO)、処理をステップS105に進める。
【0044】
ステップS104において、解算出部12は、第二手段により問題を解く。
【0045】
ステップS105において、解算出部12は、サイズデータにより示される仕事の総数と主体の総数との積が第二閾値未満であるか否かを判定する。解算出部12は、サイズデータにより示される仕事の総数と主体の総数との積が第二閾値未満であると判定した場合(ステップS105:YES)、処理をステップS106に進める。一方、解算出部12は、サイズデータにより示される仕事の総数と主体の総数との積が第二閾値以上である場合(ステップS105:NO)、処理をステップS107に進める。
【0046】
ステップS106において、解算出部12は、第一手段により問題を解く。
【0047】
ステップS107において、解算出部12は、第三手段により問題を解く。
【0048】
ステップS108において、データ出力部13は、解を示す解データを出力する。
【0049】
以上、実施形態に係る意思決定支援装置10について説明した。意思決定支援装置10は、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題をグラフィカルモデルに変換し、問題を条件データにより示される条件の下で解く。例えば、意思決定支援装置10は、当該問題をベイジアンネットワークに変換し、当該問題を条件データにより示される条件の下で第一手段、第二手段又は第三手段により解く。
【0050】
これにより、意思決定支援装置10は、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる処理を様々な要素を考慮しつつ実行することができる。例えば、意思決定支援装置10は、上述した処理を実行することにより、各仕事と各主体との相性を示す指標、各仕事の性質、各主体が有する知識、経験、技能及び性能の少なくとも一つ等だけではなく、二つ以上の仕事同士の関連性、二つ以上の主体同士の関係、各主体のこれまでの仕事の実績、各主体がこれまでに仕事を遂行する際に関わっていた主体等が考慮された解を算出することができる。また、例えば、意思決定支援装置10は、上述した処理を実行することにより、少なくとも二つの仕事を遂行する上での少なくとも二つの主体を含むチーム、グループ等の生産性、効率等も評価することができる。したがって、意思決定支援装置10は、より精度が高い解を算出することができる。
【0051】
また、意思決定支援装置10は、サイズデータにより示される問題のサイズに応じて第一手段と、第二手段と、第三手段とを使い分ける。例えば、意思決定支援装置10は、サイズデータにより示される問題に含まれる仕事の総数と、問題に含まれる主体の総数との積の大きさに応じて第一手段と、第二手段と、第三手段とを使い分ける。
【0052】
これにより、意思決定支援装置10は、問題のサイズに応じて好適な手段を使い分けることにより、より精度が高い解を算出することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、多目的最適化問題として、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を例に挙げたが、これに限定されない。
【0054】
例えば、上述した多目的最適化問題として、仮想化により複数のハードウェアを統合し、複数のソフトウェアに割り当てる問題が挙げられる。この場合、目的関数は、例えば、各ハードウェアの稼働率、各ハードウェアに掛かる負荷、各ハードウェアの処理速度となる。
【0055】
或いは、上述した多目的最適化問題として、複数のテーマを有する技術開発を遂行する場合に複数のテーマを複数の技術者に割り当てる問題が挙げられる。この場合、目的関数は、例えば、各技術者が有する知識及び経験、各テーマの重要度、各テーマの納期、技術開発全体の納期となる。
【0056】
また、意思決定支援装置10が有する機能の少なくとも一部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム又はソフトウェアを実行することにより実現される。また、これらのうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体を備える記憶装置に格納されていてもよいし、DVD、CD-ROM等の着脱可能な非一過性の記憶媒体に格納されており、当該記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。ただし、意思決定支援装置10は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換、組み合わせ又は設計変更が加えられてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…意思決定支援装置、11…データ取得部、12…解算出部、13…データ出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得部と、
前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出部と、
前記解データを出力するデータ出力部と、
を備え
前記解算出部は、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段の全ての手段を備え、前記問題のサイズデータに応じて前記第一手段、前記第二手段又は前記第三手段の中から使用する手段を選択し、選択した手段により、前記問題を解く、
意思決定支援装置。
【請求項2】
前記データ取得部は、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、
前記解算出部は、前記サイズデータにより示される前記積が第一閾値未満である場合に、前記第二手段により前記問題を解く、
請求項に記載の意思決定支援装置。
【請求項3】
前記データ取得部は、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、
前記解算出部は、前記サイズデータにより示される前記積が第一閾値以上であり、前記第一閾値よりも大きい第二閾値未満である場合に、前記第一手段により前記問題を解く、
請求項に記載の意思決定支援装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、前記問題に含まれる前記仕事の総数と、前記問題に含まれる前記主体の総数との積を示すサイズデータを取得し、
前記解算出部は、前記サイズデータにより示される前記積が第二閾値以上である場合に、前記第三手段により前記問題を解く、
請求項に記載の意思決定支援装置。
【請求項5】
コンピュータに、
少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得機能と、
前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出機能と、
前記解データを出力するデータ出力機能と、
を実現させ
前記解算出機能において、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段の全ての手段を備え、前記問題のサイズデータに応じて前記第一手段、前記第二手段又は前記第三手段の中から使用する手段を選択し、選択した手段により、前記問題を解かせるための意思決定支援プログラム。
【請求項6】
少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得ステップと、
前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出ステップと、
前記解データを出力するデータ出力ステップと、
を含み
前記解算出ステップにおいて、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段の全ての手段を備え、前記問題のサイズデータに応じて前記第一手段、前記第二手段又は前記第三手段の中から使用する手段を選択し、選択した手段により、前記問題を解く、
意思決定支援方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得部と、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出部と、前記解データを出力するデータ出力部と、を備え、前記解算出部は、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段の全ての手段を備え、前記問題のサイズデータに応じて前記第一手段、前記第二手段又は前記第三手段の中から使用する手段を選択し、選択した手段により、前記問題を解く、意思決定支援装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の一態様は、コンピュータに、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得機能と、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出機能と、前記解データを出力するデータ出力機能と、を実現させ、前記解算出機能において、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段の全ての手段を備え、前記問題のサイズデータに応じて前記第一手段、前記第二手段又は前記第三手段の中から使用する手段を選択し、選択した手段により、前記問題を解かせるための意思決定支援プログラムである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の一態様は、少なくとも一つの目的関数が定義されることが可能であり、少なくとも二つの仕事を少なくとも二つの主体に割り当てる問題を解く上で前提となる条件を示す条件データを取得するデータ取得ステップと、前記問題をグラフィカルモデルに変換し、前記問題を前記条件データにより示される条件の下で解き、前記問題の解を示す解データを生成する解算出ステップと、前記解データを出力するデータ出力ステップと、を含み、前記解算出ステップにおいて、前記問題の解を算出する際に考慮する必要がある制約を前記問題に段階的に課すことにより前記問題の解を探索する第一手段と、前記問題に含まれる前記仕事の中から前記主体に割り当てる前記仕事を選択する場合の数及び前記主体が割り当てられた前記仕事を遂行する場合におけるコストを出来る限り小さくする処理により前記問題の解を探索する第二手段と、前記問題の解の中から実行可能な解を選択し、前記問題の一部を緩和した緩和問題の双対問題を解くことにより前記問題の解を探索する第三手段の全ての手段を備え、前記問題のサイズデータに応じて前記第一手段、前記第二手段又は前記第三手段の中から使用する手段を選択し、選択した手段により、前記問題を解く、意思決定支援方法である。