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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027998
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20230224BHJP
   B41J 2/15 20060101ALI20230224BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/175 501
B41J2/15
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B41J2/175 121
B41J2/175 143
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133419
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】関 亮文
(72)【発明者】
【氏名】竹花 宗一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EC11
2C056EC31
2C056FA10
2C056HA22
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB13
2C056KB35
2C056KB37
2C056KC14
2C057AF71
2C057AG14
(57)【要約】
【課題】圧力調整機構の影響で印刷の品質に問題が生じることを適切に防止する。
【解決手段】インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インクジェットヘッド及びインク供給系108を備え、インク供給系108は、圧力調整機構である圧力ダンパ204と、容器側流路である流路202と、圧力ダンパ204からからインクジェットヘッドへインクを流すヘッド側流路である流路302が形成されている接続部材206とを有し、圧力ダンパ204は、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、圧力調整機構出口である出力ポート418から流路302へ供給し、接続部材206における流路302の少なくとも一部の流路断面積は、出力ポート418の流路断面積よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの外部でインクを貯留するインク容器から前記インクジェットヘッドへインクを供給するインク供給系と
を備え、
前記インク供給系は、
前記インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構と、
前記インク容器から前記圧力調整機構へインクを流すインクの流路である容器側流路と、
前記圧力調整機構と前記インクジェットヘッドとを接続する部材であり、前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを流すインクの流路であるヘッド側流路が形成されている接続部材と
を有し、
前記圧力調整機構は、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、前記ヘッド側流路につながる出口である圧力調整機構出口から前記ヘッド側流路へ供給し、
前記接続部材における前記ヘッド側流路の少なくとも一部の流路断面積は、前記圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ヘッド側流路は、インクが流れる方向が変わる屈曲部を少なくとも一つ有する流路であり、
前記ヘッド側流路における前記インクジェットヘッドの側の出口に最も近い位置にある前記屈曲部よりも上流側でインクを流す流路である第1流路部と、
前記第1流路部よりも前記インクジェットヘッドに近い位置でインクを流す流路であり、前記ヘッド側流路における前記インクジェットヘッドの側の出口まで一定の方向で直線状にインクを流す第2流路部と
を有し、
前記第2流路部の少なくとも一部の流路断面積は、前記圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きく、かつ、前記第1流路部の流路断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
予め設定される主走査方向へインクの吐出対象に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部を更に備え、
前記インクジェットヘッドは、前記主走査方向と直交するノズル列方向における位置を互いに異ならせて複数のノズルが並ぶノズル列を4列以上有し、
前記インクジェットヘッドにおけるそれぞれの前記ノズル列は、前記ヘッド側流路を介して前記圧力調整機構から供給される同じ色のインクを吐出するノズル列であり、前記主走査方向における位置を互いに異ならせて、前記主走査方向へ並ぶことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置に対して前記インクジェットヘッドにおけるいずれかの前記ノズルからインクを吐出する動作をベタ印字と定義し、前記ベタ印字を行う領域の前記主走査方向における端の近傍において前記主走査動作での前記主走査方向への前記インクジェットヘッドの相対移動に伴って同時にインクを吐出する前記ノズル列の数が変化する領域をノズル列数変化領域と定義し、前記ベタ印字を行う領域における前記ノズル列数変化領域以外の部分をノズル列数一定領域と定義した場合、
前記主走査動作において、前記主走査駆動部は、
前記ノズル列数一定領域において前記インクジェットヘッドにおける全ての前記ノズル列に対して前記圧力調整機構からインクを供給でき、
かつ、前記主走査方向における少なくともいずれかの側の前記ノズル列数変化領域において、前記圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化がインクを吐出する前記ノズル列の数の変化に対して間に合わなくなる速度で、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向へ相対移動させることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記接続部材における前記ヘッド側流路の少なくとも一部の流路断面積が前記圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きくなっていることにより、前記接続部材の前記ヘッド側流路は、前記圧力調整機構出口と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流量を調整するバッファとして機能し、前記圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化がインクを吐出する前記ノズル列の数の変化に対して間に合わなくなる場合に、インクを吐出する前記ノズル列が必要とする量のインクを、前記ノズル列へ供給することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記圧力調整機構は、
前記インク容器から供給されるインクを前記圧力調整機構の中で前記インクジェットヘッドへ向けて流すインクの流路である調整機構内流路の途中においてインクを貯留するインク貯留部と、
前記インク貯留部に貯留されているインクの圧力を大気圧よりも低い圧力に調整する調圧部と、
前記調整機構内流路において前記インク貯留部と前記インクジェットヘッドとの間に配設される弁と
を有し、
前記インク貯留部は、開口部を有する貯留部であり、
前記調圧部は、
前記インク貯留部と反対の側が大気に触れる状態で前記インク貯留部の前記開口部を覆う可撓性の膜と、
前記インク貯留部から離れる方向へ前記可撓性の膜を付勢する付勢手段と
を有し、
前記付勢手段によって前記可撓性の膜を付勢することで、前記インク貯留部に貯留されているインクの圧力を大気圧よりも低い圧力に調整し、
前記弁は、前記調整機構内流路での前記インクジェットヘッドの側におけるインクの圧力と前記インク貯留部内のインクの圧力との差に応じて開閉することで、前記所定の範囲の圧力に調整されたインクを前記インクジェットヘッドへ向けて流すことを特徴とする請求項4又は5に記載の印刷装置。
【請求項7】
少なくとも一部の流路断面積が前記圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きい前記ヘッド側流路を有する前記接続部材を用いて前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを供給する構成を第1インク供給構成と定義し、前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを供給する流路として全ての位置で流路断面積が前記圧力調整機構出口の流路断面積以下になっている流路を用いる構成を第2インク供給構成と定義した場合、
同時にインクを吐出する前記ノズル列の数が徐々に増加する側の前記ノズル列数変化領域において、前記主走査駆動部は、前記第2インク供給構成で前記インクジェットヘッドへインクを供給した場合には、インクを吐出すべき前記ノズル列へ供給されるインクが、少なくとも一部のタイミングで不足する速度で、前記主走査方向へ前記インクジェットヘッドを相対移動させ、
前記接続部材は、前記第1インク供給構成で前記インクジェットヘッドへインクを供給することで、同時にインクを吐出する前記ノズル列の数が徐々に増加する側の前記ノズル列数変化領域において、インクを吐出すべき前記ノズル列へ供給されるインクの不足が生じないように、前記インクジェットヘッドへインクを供給することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドに対し、
インク供給系により、前記インクジェットヘッドの外部でインクを貯留するインク容器から前記インクジェットヘッドへインクを供給し、
前記インク供給系は、
前記インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構と、
前記インク容器から前記圧力調整機構へインクを流すインクの流路である容器側流路と、
前記圧力調整機構と前記インクジェットヘッドとを接続する部材であり、前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを流すインクの流路であるヘッド側流路が形成されている接続部材と
を有し、
前記圧力調整機構により、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、前記ヘッド側流路につながる出口である圧力調整機構出口から前記ヘッド側流路へ供給し、
前記接続部材における前記ヘッド側流路の少なくとも一部の流路断面積は、前記圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きいことを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、
インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの外部でインクを貯留するインク容器から前記インクジェットヘッドへインクを供給するインク供給系と
を備え、
前記インク供給系は、
前記インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構と、
前記インク容器から前記圧力調整機構へインクを流すインクの流路である容器側流路と、
前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを流すインクの流路であるヘッド側流路と
を有し、
前記圧力調整機構は、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、前記ヘッド側流路につながる出口である圧力調整機構出口から前記ヘッド側流路へ供給し、
前記ヘッド側流路は、前記インクジェットヘッドの前段においてインクを貯留することで、前記圧力調整機構出口と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流量を調整するバッファとして機能し、前記圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化が前記インクジェットヘッドにおいて必要とされるインクの量の変化に対して間に合わなくなる場合に、前記インクジェットヘッドが必要とする量のインクを、前記インクジェットヘッドへ供給することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
インクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、
インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドに対し、
インク供給系により、前記インクジェットヘッドの外部でインクを貯留するインク容器から前記インクジェットヘッドへインクを供給し、
前記インク供給系は、
前記インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構と、
前記インク容器から前記圧力調整機構へインクを流すインクの流路である容器側流路と、
前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを流すインクの流路であるヘッド側流路と
を有し、
前記圧力調整機構により、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、前記ヘッド側流路につながる出口である圧力調整機構出口から前記ヘッド側流路へ供給し、
前記ヘッド側流路について、前記インクジェットヘッドの前段においてインクを貯留させることで、前記圧力調整機構出口と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流量を調整するバッファとして機能させ、前記圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化が前記インクジェットヘッドにおいて必要とされるインクの量の変化に対して間に合わなくなる場合に、前記インクジェットヘッドが必要とする量のインクを、前記インクジェットヘッドへ供給させることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う印刷装置であるインクジェットプリンタが広く用いられている。また、従来、インクジェットヘッドへインクを供給するインクの圧力(インク供給圧力)を調整する構成に関し、インクの供給圧力を大気圧よりも低い負圧に調整する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-232595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者は、負圧に調整したインク供給圧力でインクジェットヘッドへインクを供給する場合において、インクの供給圧力を調整する圧力調整機構の影響で、印刷の品質に問題が生じる場合があることを見出した。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、負圧に調整したインク供給圧力でインクジェットヘッドへインクを供給する構成に関し、様々な実験等を行った。そして、例えば印刷速度を高速化した場合等において、インクの供給圧力を調整する圧力調整機構の影響で、印刷の品質に問題が生じる場合があることを見出した。より具体的に、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う場合、通常、インクジェットヘッドで必要になるインクの量は、印刷の動作中に変化する。そのため、例えば高速に印刷を行う場合等には、インクジェットヘッドで必要になるインクの量の変化に対して、圧力調整機構の出口から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなる場合がある。また、その結果、印刷の品質に問題が生じることが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、インク供給系からインクジェットヘッドまでのインクの供給速度がインクの消費速度に対して追いつかなくなることで、インクジェットヘッド内のインク室等に貯留されるインクが空になり、印刷の品質に問題が生じること等が考えられる。
【0006】
この点に関し、このような原因で印刷の品質に問題が生じることについては、従来、認識がされていなかった。これに対し、本願の発明者は、様々な実験等を行うことで、圧力調整機構の影響でこのような問題が生じ得ることを見出した。また、本願の発明者は、鋭意研究により、圧力調整機構からインクジェットヘッドへインクを流す流路の中である程度の量のインクを貯留することで、このような問題を適切に防止し得ることを見出した。また、そのための構成として、例えば、圧力調整機構とインクジェットヘッドとを接続する部材である接続部材にインクの流路を形成し、その流路の少なくとも一部について、圧力調整機構の出口と比べて太くしておくことを考えた。そして、更に様々な実験等を行うことで、このような構成によって上記の問題を適切に防止し得ることを確認した。
【0007】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの外部でインクを貯留するインク容器から前記インクジェットヘッドへインクを供給するインク供給系とを備え、前記インク供給系は、前記インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構と、前記インク容器から前記圧力調整機構へインクを流すインクの流路である容器側流路と、前記圧力調整機構と前記インクジェットヘッドとを接続する部材であり、前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを流すインクの流路であるヘッド側流路が形成されている接続部材とを有し、前記圧力調整機構は、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、前記ヘッド側流路につながる出口である圧力調整機構出口から前記ヘッド側流路へ供給し、前記接続部材における前記ヘッド側流路の少なくとも一部の流路断面積は、前記圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きい。
【0008】
このように構成した場合、圧力調整機構出口の流路断面積よりも少なくとも一部の流路面積が大きくなっているヘッド側流路を用いることで、例えば、圧力調整機構よりもインクジェットヘッドに近い位置において、圧力調整機構出口から出てくるインクの流量に対して余裕を持たせてインクを貯留することができる。また、これにより、例えば、インクジェットヘッドで必要となるインクの量が変化した場合において、インクジェットヘッドへのインクの供給をより適切に行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、圧力調整機構の影響で印刷の品質に問題が生じることを適切に防止することができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0009】
この構成において、ヘッド側流路としては、例えば、インクが流れる方向が変わる屈曲部を少なくとも一つ有する流路を用いることが考えられる。この場合、ヘッド側流路は、例えば、ヘッド側流路におけるインクジェットヘッドの側の出口に最も近い位置にある屈曲部よりも上流側でインクを流す流路である第1流路部と、第1流路部よりもインクジェットヘッドに近い位置でインクを流す第2流路部とを有する。また、第2流路部は、例えば、インクジェットにおけるインクの入り口につながる直線状の流路であり、ヘッド側流路におけるインクジェットヘッドの側の出口まで一定の方向で直線状にインクを流す。そして、この場合、第2流路部の少なくとも一部の流路断面積について、圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きく、かつ、第1流路部の流路断面積よりも大きくすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ヘッド側流路において適切にインクを貯留することができる。また、この場合、インクジェットヘッドまで直線状にインクを流す部分の流路面積を大きくすることで、例えば、インクジェットヘッドで必要となるインクの量が変化した場合に、必要な量のインクを迅速かつ適切にインクジェットヘッドへ供給することができる。
【0010】
また、この構成において、印刷装置は、例えば、主走査駆動部を更に備える。主走査駆動部については、例えば、予め設定される主走査方向へインクの吐出対象に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作をインクジェットヘッドに行わせる駆動部等と考えることができる。また、インクジェットヘッドは、例えば、主走査方向と直交するノズル列方向における位置を互いに異ならせて複数のノズルが並ぶノズル列を4列以上有する。この場合、インクジェットヘッドにおけるそれぞれのノズル列は、ヘッド側流路を介して圧力調整機構から供給される同じ色のインクを吐出するノズル列であり、主走査方向における位置を互いに異ならせて、主走査方向へ並ぶ。
【0011】
このような構成の場合、例えば、一つのインクジェットヘッドにおいて共通の圧力調整機構からインクの供給を受ける複数のノズル列のうち、同時にインクを吐出するノズル列の数について、主走査動作時のタイミングによって変化する場合がある。そして、この場合、同時にインクを吐出するノズル列の数が変化することで、インクジェットヘッドで必要となるインクの量も変化することになる。また、この場合、ノズル列の数が4列以上と多くなっていることで、同時にインクを吐出するノズル列の数が様々に変化することになる。また、同時にインクを吐出するノズル列の数が1列変化することで生じる必要なインクの量の変化量が少なくなること等も考えられる。そして、この場合、圧力調整機構では、段階毎のインクの量の差が小さく、かつ、ノズル列の数に応じた複数の段階でインクの量が変わるように、インクジェットヘッドにおいて同時にインクを吐出するノズル列の数が変化する毎に、圧力調整機構出口から出るインクの量を変化させることが必要になる。
【0012】
しかし、この場合、例えば主走査動作時にインクジェットヘッドの相対移動の速度を速くすると、例えば、同時にインクを吐出するノズル列の数の変化に対して、圧力調整機構の出口から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなることが生じやすくなる。また、その結果、印刷の品質に問題が生じることが考えられる。また、この場合において、例えば、圧力調整機構の出口から出てくるインクの量の変化が間に合うように主走査動作を行うと、インクジェットヘッドの相対移動の速度が遅くなることで、印刷の速度が低下することになる。これに対し、上記のように構成した場合、例えば、同時にインクを吐出するノズル列の数の変化に対して、圧力調整機構の出口から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなる場合にも、インクジェットヘッドの各ノズル列へのインクの供給を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷をより高速に行うこと等が可能になる。
【0013】
また、同時にインクを吐出するノズル列の数の変化に対して圧力調整機構の出口から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなる状態は、例えばベタ印字を行う場合において、ベタ印字を行う領域の主走査方向における端の近傍において生じやすくなる。これに対し、上記のように構成した場合、例えば、ベタ印字を行う領域の主走査方向における端の近傍に対しても、高い品質で適切に印刷を行うことができる。より具体的に、ベタ印字については、例えば、印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置に対してインクジェットヘッドにおけるいずれかのノズルからインクを吐出する動作等と考えることができる。また、この場合、ベタ印字を行う領域の主走査方向における端の近傍では、主走査動作での主走査方向へのインクジェットヘッドの相対移動に伴って、同時にインクを吐出するノズル列の数が変化する。そして、この場合、同時にインクを吐出するノズル列の数が変化する領域について、例えば、ノズル列数変化領域と考えることができる。また、ベタ印字を行う領域におけるノズル列数変化領域以外の部分について、例えば、ノズル列数一定領域と考えることができる。そして、この場合、主走査動作において、主走査駆動部は、例えば、ノズル列数一定領域においてインクジェットヘッドにおける全てのノズル列に対して圧力調整機構からインクを供給でき、かつ、主走査方向における少なくともいずれかの側のノズル列数変化領域において、圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化がインクを吐出するノズル列の数の変化に対して間に合わなくなる速度で、インクジェットヘッドを主走査方向へ相対移動させる。
【0014】
このように構成した場合、例えば、主走査動作時におけるインクジェットヘッドの相対速度を適切に高めて、高速な印刷を行うことができる。また、この場合において、圧力調整機構出口の流路断面積よりも少なくとも一部の流路面積が大きくなっているヘッド側流路を用いることで、例えば、圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化がインクを吐出するノズル列の数の変化に対して間に合わなくなるタイミングでも、インクジェットヘッドの各ノズルへのインクの供給を適切に行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、高速かつ高品質の印刷を適切に行うことができる。
【0015】
また、この構成において、接続部材のヘッド側流路については、例えば、インクの流量に対するバッファをして機能していると考えることもできる。より具体的に、この場合、接続部材におけるヘッド側流路の少なくとも一部の流路断面積が圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きくなっていることにより、接続部材のヘッド側流路について、例えば、圧力調整機構出口とインクジェットヘッドとの間でインクの流量を調整するバッファとして機能すると考えることができる。また、この場合、ヘッド側流路は、例えば、圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化がインクを吐出するノズル列の数の変化に対して間に合わなくなる場合に、インクを吐出するノズル列が必要とする量のインクを、ノズル列へ供給する。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッドの各ノズルへのインクの供給を適切に行うことができる。
【0016】
また、この構成において、圧力調整機構は、例えば、インク貯留部、調圧部、及び弁を有する。インク貯留部は、例えば、調整機構内流路の途中においてインクを貯留する。この場合、調整機構内流路については、例えば、インク容器から供給されるインクを圧力調整機構の中でインクジェットヘッドへ向けて流すインクの流路等と考えることができる。また、インク貯留部は、例えば、開口部を有する貯留部である。調圧部は、例えば、インク貯留部に貯留されているインクの圧力を大気圧よりも低い圧力に調整する。より具体的に、調圧部は、例えば、可撓性の膜及び付勢手段を有する。この場合、可撓性の膜は、例えば、インク貯留部と反対の側が大気に触れる状態で、インク貯留部の開口部を覆う。また、付勢手段は、例えば、インク貯留部から離れる方向へ可撓性の膜を付勢する。そして、調圧部は、例えば、付勢手段によって可撓性の膜を付勢することで、インク貯留部に貯留されているインクの圧力を大気圧よりも低い圧力に調整する。また、弁は、例えば、調整機構内流路において、インク貯留部とインクジェットヘッドとの間に配設される。この場合、弁は、例えば、調整機構内流路でのインクジェットヘッドの側におけるインクの圧力とインク貯留部内のインクの圧力との差に応じて開閉することで、所定の範囲の圧力に調整されたインクをインクジェットヘッドへ向けて流す。このように構成すれば、例えば、圧力調整機構により、インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を適切に調整することができる。このような圧力調整機構としては、例えば、公知の機械式の圧力ダンパ等を好適に用いることができる。
【0017】
また、主走査動作時のインクジェットヘッドの相対移動の速度や、接続部材を介してインクジェットヘッドへインクを供給する動作の特徴については、例えば、全ての位置で流路断面積が圧力調整機構出口の流路断面積以下になっている流路で圧力調整機構からインクジェットヘッドへインクを供給する場合との対比によって考えることもできる。より具体的に、この場合、例えば、少なくとも一部の流路断面積が圧力調整機構出口の流路断面積よりも大きいヘッド側流路を有する接続部材を用いて圧力調整機構からインクジェットヘッドへインクを供給する構成を第1インク供給構成と定義し、圧力調整機構からインクジェットヘッドへインクを供給する流路として全ての位置で流路断面積が圧力調整機構出口の流路断面積以下になっている流路を用いる構成を第2インク供給構成と定義して、主走査動作時のインクジェットヘッドの相対移動の速度や、接続部材を介してインクジェットヘッドへインクを供給する動作の特徴について、考えることができる。また、この場合、例えば、同時にインクを吐出するノズル列の数が徐々に増加する側のノズル列数変化領域において、主走査駆動部は、例えば、第2インク供給構成でインクジェットヘッドへインクを供給した場合には、インクを吐出すべきノズル列へ供給されるインクが、少なくとも一部のタイミングで不足する速度で、主走査方向へインクジェットヘッドを相対移動させる。また、接続部材は、例えば、第1インク供給構成でインクジェットヘッドへインクを供給することで、例えば、同時にインクを吐出するノズル列の数が徐々に増加する側のノズル列数変化領域において、インクを吐出すべきノズル列へ供給されるインクの不足が生じないように、インクジェットヘッドへインクを供給する。このように構成すれば、例えば、主走査動作時におけるインクジェットヘッドの相対移動の速度を適切に高速化しつつ、インクジェットヘッドへのインクの供給を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高速かつ高品質の印刷を適切に行うことができる。
【0018】
また、本発明の特徴について、例えば、上記と異なる観点で考えることもできる。この場合、例えば、接続部材のヘッド側流路がインクの流量に対するバッファをして機能することに着目して、本発明の特徴を考えることもできる。また、この場合、本発明について、例えば、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置であって、インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの外部でインクを貯留するインク容器から前記インクジェットヘッドへインクを供給するインク供給系とを備え、前記インク供給系は、前記インクジェットヘッドへ供給されるインクの圧力を調整する圧力調整機構と、前記インク容器から前記圧力調整機構へインクを流すインクの流路である容器側流路と、前記圧力調整機構から前記インクジェットヘッドへインクを流すインクの流路であるヘッド側流路とを有し、前記圧力調整機構は、大気圧よりも低い所定の範囲の圧力に調整されたインクを、前記ヘッド側流路につながる出口である圧力調整機構出口から前記ヘッド側流路へ供給し、前記ヘッド側流路は、前記インクジェットヘッドの前段においてインクを貯留することで、前記圧力調整機構出口と前記インクジェットヘッドとの間でインクの流量を調整するバッファとして機能し、前記圧力調整機構出口から出てくるインクの量の変化が前記インクジェットヘッドにおいて必要とされるインクの量の変化に対して間に合わなくなる場合に、前記インクジェットヘッドが必要とする量のインクを、前記インクジェットヘッドへ供給することを特徴とする等と考えることができる。また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、圧力調整機構の影響で印刷の品質に問題が生じることを適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置100について説明をする図である。図1(a)は、印刷装置100の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置100におけるインクジェットヘッド102の構成の一例を示す。
図2】インク供給系108のより具体的な構成等について説明をする図である。図2(a)は、インク供給系108の構成の一例を示す。図2(b)は、インク供給系108の要部の構成の一例を示す。図2(c)は、接続部材206における流路302の構成の一例を示す。
図3】接続部材206の構成の一例を具体的に示す図である。図3(a)は、本例とは異なる接続部材206の構成を示す。図3(b)は、本例の接続部材206の構成の一例を示す。
図4】圧力ダンパ204の具体的な構成の一例を示す図である。
図5】ベタ印字を行う動作等について詳しく説明をする図である。図5(a)は、ベタ印字領域500の一例を示す。図5(b)は、主走査動作におけるインクジェットヘッド102の移動に伴う吐出ノズル列数の変化の一例を示す。図5(c)は、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102との接続の仕方を異ならせた複数の構成を用いて行った実験の一部の結果を示す。
図6】流路302流れるインクの流速について簡略化して説明をする図である。図6(a)は、本例の流路302とは異なる流路を流れるインクの流速について説明をする図である。図6(b)は、本例の流路302を流れるインクの流速の例を簡略化して示す。
図7】接続部材206における流路302の変形例について説明をする図である。図7(a)、(b)は、流路302の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置100について説明をする図である。図1(a)は、印刷装置100の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置100におけるインクジェットヘッド102の構成の一例を示す。本例において、印刷装置100は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、複数のインクジェットヘッド102、プラテン104、複数のインク容器106、インク供給系108、キャリッジ110、主走査駆動部112、副走査駆動部114、及び制御部120を備える。以下に説明をする点を除き、印刷装置100は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置100は、図1に図示する構成以外に、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を更に備えてもよい。
【0022】
複数のインクジェットヘッド102は、インクジェット方式でインクを吐出する吐出ヘッドであり、インクの吐出対象である媒体50に対し、インク供給系108を介して複数のインク容器106から供給されるインクを吐出する。また、本例において、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、互いに異なる色のインクを吐出する。より具体的に、本例において、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、減法混色法でのプロセスカラーの各色のインクである、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、及びブラック(K)色の各色のインクを吐出する。また、それぞれのインクジェットヘッド102は、複数のノズルを有し、印刷する画像に応じて、それぞれのノズルからインクを吐出する。より具体的に、本例において、それぞれのインクジェットヘッド102は、例えば図1(b)に示すように、複数のノズル列122を有する。この場合、ノズル列122については、例えば、所定のノズル列方向における位置をずらして複数のノズルが並ぶ列等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、ノズル列方向は、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動方向である主走査方向(図中のY方向)と直交する方向である。主走査動作については、例えば、所定の主走査方向へ媒体50に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。また、本例において、それぞれのノズル列122に含まれる複数のノズルは、主走査方向における位置を揃えて、ノズル列方向に並ぶ。そして、一つのインクジェットヘッド102における複数のノズル列122は、主走査方向における位置を互いに異ならせて、主走査方向へ並ぶ。また、それぞれのインクジェットヘッド102において、複数のノズル列122は、インク供給系108を介していずれかのインク容器106から供給されるインクを吐出する。また、これにより、一つのインクジェットヘッド102における複数のノズル列122は、同じ色のインクを吐出する。また、本例において、それぞれのインクジェットヘッド102は、4列以上のノズル列122を有するインクジェットヘッドの一例であり、6列(6個)のノズル列122を有する。
【0023】
プラテン104は、複数のインクジェットヘッド102と対向させて媒体50を保持する台状部材である。複数のインク容器106は、複数のインクジェットヘッド102へ供給するインクをインクジェットヘッド102の外部で貯留する容器である。本例において、複数のインク容器106のそれぞれは、互いに異なる色のインクを貯留しており、いずれかのインクジェットヘッド102に対し、インク供給系108を介して、インクを供給する。インク容器106としては、例えば、インクボトルやインクカートリッジ等を好適に用いることができる。インク供給系108は、複数のインク容器106から複数のインクジェットヘッド102へインクを供給するインクの供給路等を含む構成である。本例において、インク供給系108は、圧力ダンパ等を有し、圧力ダンパによって供給圧力が調整されたインクをインクジェットヘッド102へ供給する。インク供給系108のより具体的な構成等については、後に更に詳しく説明をする。キャリッジ110は、複数のインクジェットヘッド102を保持する保持部材である。また、本例において、キャリッジ110は、複数のインクジェットヘッド102と共に、インク供給系108の一部を保持する。より具体的に、本例において、キャリッジ110は、インク供給系108における圧力ダンパ等を保持する。このように構成すれば、例えば、インクジェットヘッド102の近傍に圧力ダンパ等を適切に設置することができる。
【0024】
主走査駆動部112は、複数のインクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる駆動部である。本例において、主走査駆動部112は、主走査方向へキャリッジ110を移動させることで、キャリッジ110に保持されている複数のインクジェットヘッド102を移動させて、複数のインクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる。また、主走査動作において、主走査駆動部112は、印刷すべき画像に応じて選択されるインクの吐出位置へ、それぞれのインクジェットヘッド102におけるそれぞれのノズルに、インクを吐出させる。副走査駆動部114は、複数のインクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる駆動部である。副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ媒体50に対して相対的に移動する動作等を考えることができる。本例において、副走査駆動部114は、副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送することで、複数のインクジェットヘッド102に副走査動作を行わせる。また、副走査駆動部114は、主走査動作の合間に複数のインクジェットヘッド102に副走査動作を行わせることで、媒体50において複数のインクジェットヘッド102と対向する範囲を変更する。制御部120は、例えば印刷装置100のCPU等を含む部分であり、印刷装置100の動作を制御するプログラム(例えば、ファームウェア等)に従って、印刷装置100の各部の動作を制御する。本例によれば、例えば、媒体50に対する印刷の動作を適切に実行することができる。
【0025】
続いて、印刷装置100におけるインク供給系108のより具体的な構成等について、更に詳しく説明をする。図2は、インク供給系108のより具体的な構成等について説明をする図である。図2(a)は、インク供給系108の構成の一例を示す図であり、印刷装置100における複数のインクジェットヘッド102のうちの一つに対してインクを供給する経路に着目して、インク容器106からインクジェットヘッド102へインクを供給するための構成の例を示す。図2(b)は、インク供給系108の要部の構成の一例を示す図であり、インク供給系108の一部を構成する圧力ダンパ204及び接続部材206の構成の一例をインクジェットヘッド102と共に示す。図2(c)は、接続部材206における流路302の構成の一例を示す。本例において、インク供給系108は、一つのインクジェットヘッド102へインク容器106からインクを供給するための構成として、流路202、圧力ダンパ204、及び接続部材206を有する。
【0026】
流路202は、インク容器106から圧力ダンパ204へインクを流すインクの流路である。本例において、流路202は、容器側流路の一例であり、キャリッジ110(図1参照)に保持されている圧力ダンパ204に対して、インク容器106からインクを供給する。この場合、流路202における圧力ダンパ204側の端部の位置は、主走査動作時において、変化することになる。そのため、流路202については、例えば、インクジェットヘッド102と共に移動する圧力ダンパ204に対してインクを供給する可撓性の流路等と考えることができる。このような流路202としては、例えば、可撓性のチューブ等を好適に用いることができる。
【0027】
圧力ダンパ204は、圧力調整機構の一例であり、インクジェットヘッド102へ供給されるインクの圧力を調整する。本例において、圧力ダンパ204は、流路202を介してインク容器106から受け取るインクについて、大気圧よりも低い所定の範囲の負圧の圧力に調整する。そして、圧力が調整されたインクについて、接続部材206を介して、インクジェットヘッド102へ供給する。より具体的に、本例において、圧力ダンパ204は、所定の範囲の負圧の圧力に調整されたインクについて、例えば図2(b)に示すように、接続部材206における流路302につながるインクの出口である出力ポート418から、接続部材206における流路302へインクを供給する。この場合、圧力ダンパ204の出力ポート418は、圧力調整機構出口の一例である。また、本例において、圧力ダンパ204は、機械式の圧力ダンパである。この場合、圧力ダンパ204は、例えば、公知の機械式の圧力ダンパと同一又は同様の構成を有してよい。より具体的に、圧力ダンパ204としては、例えば、特開2012-232595号公報に開示されている調圧弁と同一又は同様の構成等を好適に用いることができる。圧力ダンパ204のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0028】
接続部材206は、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102とを接続する部材である。本例において、接続部材206は、圧力ダンパ204を保持する保持部材としての機能を有しており、インクジェットヘッド102の近傍において、キャリッジ110上に配設される。この場合、圧力ダンパ204について、例えば、接続部材206に保持されることで、インクジェットヘッド102及び接続部材206と共にキャリッジ110上に配設されると考えることができる。また、本例において、接続部材206には、圧力ダンパ204からインクジェットヘッド102へインクを流すインクの流路302が形成されている。流路302は、圧力ダンパ204よりもインクジェットヘッド102に近い側でインクを流すヘッド側流路の一例である。また、本例において、流路302は、接続部材206内において経路が固定されたインクの流路であり、一端側が圧力ダンパ204の出力ポート418に接続され、他端側がインクジェットヘッド102におけるインクの入口152に接続されることで、圧力ダンパ204からインクジェットヘッド102へインクを流す。流路302としては、例えば、インクが流れる方向が変わる屈曲部を少なくとも一つ有する流路を用いることが考えられる。
【0029】
より具体的に、本例において、流路302は、例えば図2(c)に示すように、複数の屈曲部322a、bを有する。また、本例の流路302については、例えば、図中に示す第1流路部312及び第2流路部314を有するインクの流路等と考えることもできる。この場合、第1流路部312については、例えば、流路302におけるインクジェットヘッド102の側の出口に最も近い位置にある屈曲部である屈曲部322bよりも上流側でインクを流す流路等と考えることができる。本例において、第1流路部312は、屈曲部322bよりも上流側において間に屈曲部322aを挟んで屈曲するインクの流路になっている。第2流路部314については、例えば、第1流路部312よりもインクジェットヘッド102に近い位置でインクを流す流路等と考えることができる。本例において、第2流路部314は、インクジェットヘッド102におけるインクの入口152につながる直線状の流路である。この場合、第2流路部314について、例えば、流路302におけるインクジェットヘッド102の側の出口まで一定の方向で直線状にインクを流す流路になっていると考えることができる。
【0030】
また、本例において、第2流路部314は、第1流路部312や圧力ダンパ204の出力ポート418と比べて断面積が大きな流路(太い流路)になっている。より具体的に、本例において、第1流路部312は、流路断面積が所定の値S1になっている流路である。この場合、流路断面積については、例えば、インクが流れる方向と直交する面による流路の断面積等と考えることができる。流路断面積については、例えば、流路の太さを示す面積等と考えることもできる。また、第1流路部312のように、間に屈曲部を有する流路の場合、屈曲部の位置での流路断面積を厳密に考えることが難しい場合もある。そのため、第1流路部312の流路断面積がS1であることについては、例えば、第1流路部312における直線部分の流路面積がS1であること等と考えることもできる。また、本例において、第1流路部312の流路断面積S1は、圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積と等しくなっている。この場合、流路断面積が等しいことについては、例えば、複数の流路を接続することで生じるずれや誤差等の許容範囲内で、実質的に等しいこと等と考えることができる。また、出力ポート418と第1流路部312との間で流路断面積が等しいことについては、例えば、第1流路部312の設計上の流路断面積について、圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積と意図的に異ならせることなく、出力ポート418の流路断面積に合わせていること等と考えることができる。
【0031】
これに対し、本例において、第2流路部314の流路断面積は、第1流路部312の流路断面積S1よりも大きくなっている。より具体的に、本例において、第2流路部314の流路断面積は、S1よりも大きな値S2になっている。この場合、第2流路部314の流路断面積S2については、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きくなっていると考えることもできる。また、第2流路部314について、例えば、出力ポート418や第1流路部312と比べて太い流路になっていると考えることもできる。第1流路部312と比べて第2流路部314が太くなって構成については、例えば、流路302の中で第2流路部314がインク溜まりとして機能する構成等と考えることもできる。
【0032】
また、本例の流路302の構成については、例えば、流路302の少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きくなっている構成の一例等と考えることもできる。この場合、流路302の少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きくなっていることについては、例えば、実質的に大きくなっていること等と考えることができる。また、実用上、流路302の少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きくなっていることについて、例えば、流路302の少なくとも一部(例えば、第2流路部314)の流路断面積について、圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積の1.1倍以上(好ましくは1.2倍以上)になっていること等と考えることができる。
【0033】
また、本例の接続部材206における流路302の特徴については、例えば図3に示すように、本例とは異なる構成の接続部材206と比較することで、より具体的かつ適切に理解することができる。図3は、接続部材206の構成の一例を具体的に示す図である。図3(a)は、本例とは異なる接続部材206の構成を示す。図3(b)は、本例の接続部材206の構成の一例を示す。以下においては、説明の便宜上、図3(a)に示す接続部材206について、従来の接続部材206という。また、図3(b)については、例えば、図2に示した接続部材206の構成をより具体的に示す図と考えることができる。
【0034】
図3(a)に示すように、従来の接続部材206については、例えば、流路302の全体において流路断面積が一定になっていると考えることができる。また、この場合、この一定の流路断面積について、圧力ダンパ204の出力ポートの流路断面積に合わせた面積になっていると考えることができる。これに対し、図3(b)に示す本例の接続部材206では、上記においても説明をしたように、流路302における第2流路部314の流路断面積について、圧力ダンパ204の出力ポートや第1流路部312の流路断面積よりも大きくしている。そして、この場合、本例の接続部材206について、例えば、流路302における第2流路部314の流路断面積を従来の接続部材206における流路302の流路断面積よりも大きくしていると考えることができる。また、このような本例の流路302の構成については、例えば、少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポートの流路断面積よりも大きくなっている構成の一例と考えることができる。また、この構成について、例えば、第2流路部314の少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポートの流路断面積よりも大きくなっている構成の一例と考えることもできる。
【0035】
また、この場合、本例の接続部材206では、流路302の少なくとも一部の流路断面積が大きくなることで、例えば、インクジェットヘッド102へのインクの供給をより適切に行い、高い品質での印刷を行うことが可能になる。より具体的に、本例においては、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102とを接続する流路302の少なくとも一部の流路断面積を大きくすることで、例えば、インクジェットヘッド102で必要になるインクの量が変化した場合において、圧力ダンパ204の出力ポートから出てくるインクの量の変化が遅れた場合等にも、インクジェットヘッド102へのインクの供給をより適切に行うことができる。また、この場合において、流路302における第2流路部314の流路断面積を大きくすることで、例えば、このような効果をより適切に得ることが可能になっている。そこで、以下、本例の接続部材206の構成に関する技術的な意味等について、詳しく説明をする。また、以下において詳しく説明をするように、本例の接続部材206の構成は、圧力ダンパ204を用いることと関連している。そのため、先ず、圧力ダンパ204の具体的な構成について、説明をする。
【0036】
図4は、圧力ダンパ204の具体的な構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、圧力ダンパ204は、機械式の圧力ダンパである。この場合、機械式の圧力ダンパについては、例えば、受動部品のみで圧力の調整を行う圧力調整機構等と考えることができる。受動部品については、例えば、電力等のエネルギーの供給が不要な部品等と考えることができる。機械式の圧力ダンパについては、例えば、電力等のエネルギーの供給を受けるポンプを用いずに圧力を調整する圧力調整機構等と考えることもできる。また、本例において、圧力ダンパ204は、負圧室402、圧力室404、連絡流路室406、調圧部408、弁410、バネ412、作動杆414、入力ポート416、及び出力ポート418を有する。
【0037】
負圧室402、圧力室404、及び連絡流路室406のそれぞれは、圧力ダンパ204内でのインクの流路である調整機構内流路の一部となる構成である。この場合、調整機構内流路については、例えば、インク容器106(図1参照)から供給されるインクを圧力ダンパ204の中でインクジェットヘッド102(図1参照)へ向けて流すインクの流路等と考えることができる。また、本例において、調整機構内流路がインクジェットヘッド102へ向けてインクを流すことについては、例えば、接続部材206(図2参照)に対して出力ポート418からインクを出力すること等と考えることができる。また、これらの構成のうち、負圧室402は、調整機構内流路の途中においてインクを貯留するインク貯留部の一例であり、調整機構内流路でインクが流れる方向において圧力室404及び連絡流路室406よりも上流側で、入力ポート416を介してインク容器106から供給されるインクを貯留する。また、本例において、負圧室402は、開口部を有する貯留部であり、調圧部408における可撓膜422に開口部が覆われた状態で、インクを貯留する。また、これにより、負圧室402は、調圧部408によって圧力が調整されたインクを貯留する。また、負圧室402は、入力ポート416介してインクの流路202(図2参照)とつながることで、インク供給系108から供給されるインクを貯留する。更に、本例において、負圧室402は、可撓膜422に覆われる開口部と反対側に、インクの流路となる開口を有し、この開口を介して、連絡流路室406とつながっている。
【0038】
圧力室404は、調整機構内流路でインクが流れる方向において圧力室404及び連絡流路室406よりも下流側でインクを貯留する貯留部である。また、本例において、圧力室404は、出力ポート418の前段でインクを貯留することで、出力ポート418及び接続部材206を介して、インクジェットヘッド102とつながっている。また、これにより、圧力室404におけるインクの圧力は、インクジェットヘッド102内のインクの圧力と釣り合った状態になる。この場合、インクジェットヘッド102内のインクの圧力とは、例えば、インクジェットヘッド102におけるノズルの前段でインクを貯留するインク室におけるインクの圧力である。更に、本例において、圧力室404は、開口を介して、連絡流路室406とつながることで、この開口及び連絡流路室406を介して、負圧室402とつながっている。また、圧力室404と連絡流路室406との間の開口には、弁410が設けられている。連絡流路室406は、負圧室402と圧力室404とをつなぐ流路となる空間である。また、本例において、連絡流路室406は、弁410と連動する作動杆414を収容している。
【0039】
調圧部408は、負圧室402に貯留されているインクの圧力を大気圧よりも低い所定の負圧の圧力に調整するための構成である。本例において、調圧部408は、可撓膜422、受圧部材424、及びバネ426を有する。可撓膜422は、可撓性の膜であり、上記のように、負圧室402の開口部を覆う。また、より具体的に、本例において、可撓膜422は、遮気性のフィルムであり、負圧室402と反対の側が大気に触れる状態で、負圧室402の開口部を覆う。可撓膜422としては、例えば、樹脂製のフィルム等を好適に用いることができる。受圧部材424は、可撓膜422が周囲から受ける力を受ける部材であり、可撓膜422を外側へ押し出す向きの力をバネ426から受けるように、可撓膜422における負圧室402側の面に一体的に接合される。この場合、受圧部材424について、例えば、可撓膜422を介して大気圧に応じた力を受け、かつ、この力と反対の向きで、バネ426の付勢力と、負圧室402内のインクからインクの圧力に応じた力とを受けると考えることができる。また、本例において、受圧部材424は、負圧室402と連絡流路室406との間の開口を通過する棒状の受圧伝達部を有しており、この開口を介して受圧伝達部と作動杆414とを係合させることで、受圧部材424が周囲から受ける力を作動杆414へ伝達する。バネ426は、付勢手段の一例であり、可撓膜422を外側へ押し出す向きの力を受圧部材424へ加えることで、負圧室402から離れる方向へ可撓膜422を付勢する。
【0040】
このように構成した場合、上記のように、可撓膜422における外側の面は、大気圧に応じた力を受けることになる。また、可撓膜422における内側の面は、受圧部材424を介して受けるバネ426の付勢力と、負圧室402内のインクの圧力に応じた力とを受けることになる。そして、この場合、可撓膜422の外側及び内側のそれぞれが受ける力が釣り合うことで、負圧室402内のインクの圧力について、例えば、バネ426の付勢力に応じて決まる所定の負圧になると考えることができる。また、調圧部408について、例えば、バネ426によって可撓膜422を付勢することで、負圧室402に貯留されているインクの圧力を大気圧よりも低い圧力に調整していると考えることができる。
【0041】
弁410は、圧力室404と連絡流路室406との間の開口を開閉する開閉手段である。弁410については、例えば、調整機構内流路において、負圧室402とインクジェットヘッド102との間に配設されていると考えることもできる。また、本例において、弁410は、圧力室404から連絡流路室406のへ向かう方向へ移動することで閉じ、その反対方向へ移動することで開く弁であり、連絡流路室406の側で作動杆414からの力を受け、圧力室404の側でバネ412の付勢力を受ける。この場合、弁410について、例えば、連絡流路室406及び圧力室404のそれぞれの側において、連絡流路室406及び圧力室404のそれぞれに貯留されているインクの圧力に応じた力を更に受けると考えることができる。また、本例において、バネ412は、圧力室404内に配設されて、弁410を閉じる方向へ弁410を付勢する。これに対し、作動杆414は、連絡流路室406の側から、弁410を開く方向の力を弁410に加える。また、図4に図示した構成等から理解できるように、作動杆414は、受圧部材424から伝達される力に応じた力を弁410に加える。より具体的に、本例において、作動杆414は、揺動支点に対して揺動支点の一方側及び他方側で揺動するアームを有する部材であり、受圧部材424から伝達される力について、一方側及び他方側のアームの長さに応じて決まる比率で変換して、弁410に加える。また、これにより、作動杆414は、負圧室402内で負圧になっているインクの圧力に応じた力を、弁410に加える。
【0042】
また、上記においても説明をしたように、本例において、圧力室404におけるインクの圧力は、インクジェットヘッド102内のインクの圧力と釣り合った状態になる。そのため、圧力室404の側において、弁410は、インクジェットヘッド102内のインクの圧力に応じた力と、バネ412の付勢力を受ける。そして、この場合、インクジェットヘッド102内のインクの圧力が所定の圧力よりも高い状態では、弁410を閉じる方向の力の方が優位になり、弁410が閉じた状態になる。また、例えばインクジェットヘッド102においてインクが消費され、インクジェットヘッド102内のインクの圧力が低下した場合、弁410を閉じる方向の力の方が弱くなることで、弁410を開く方向の力の方が優位になり、弁410が開くことになる。また、その結果、負圧室402内で負圧に調整されたインクが、連絡流路室406を介して、圧力室404へ流れ込むことになる。また、圧力室404へ流れ込んだインクは、出力ポート418及び接続部材206を介して、インクジェットヘッド102へ供給される。また、インクジェットヘッド102に十分な量のインクが供給され、インクジェットヘッド102内のインクの圧力が高まった場合、弁410が閉じて、インクジェットヘッド102へのインクの供給が停止することになる。この場合、弁410について、例えば、調整機構内流路でのインクジェットヘッド102の側におけるインクの圧力と負圧室402内のインクの圧力との差に応じて開閉すると考えることができる。また、弁410について、このような開閉の動作によって、所定の範囲の圧力に調整されたインクをインクジェットヘッド102へ向けて流すと考えることができる。
【0043】
また、入力ポート416は、インク容器106から供給されるインクを受け取るインクの入り口である。出力ポート418は、接続部材206へ向けてインクを出力するインクの出口である。また、上記の説明等から理解できるように、本例において、出力ポート418は、圧力室404とつながっており、圧力室404から供給されるインクを、接続部材206へ向けて出力する。本例によれば、例えば、圧力ダンパ204により、インクジェットヘッド102へ供給されるインクの圧力を適切に調整することができる。また、これにより、例えば、大気圧よりも低い所定の範囲の負圧の圧力に調整されたインクをインクジェットヘッド102に適切に供給することができる。
【0044】
続いて、本例の接続部材206の構成に関する技術的な意味等について、詳しく説明をする。上記のように、本例においては、圧力ダンパ204を用いることで、インクジェットヘッド102へ供給するインクの圧力を調整することができる。また、この場合において、機械式の圧力ダンパ204を用いることで、装置の小型化や低コスト化を実現すること等も可能になる。しかし、印刷装置100(図1参照)の構成や動作等によっては、圧力ダンパ204を用いることで、印刷の品質に問題が生じる場合もある。
【0045】
この点に関し、本願の発明者は、従来の構成で印刷を行う場合に関し、主走査方向へ延伸する所定の幅(例えば、2mm以下の線幅)の縦線が所定の余白(例えば、2mm以下の余白)を空けて繰り返して並ぶバーコードのような画像(以下、バーコード状の画像という)を印刷すると、意図しないインクのしぶきが発生して、印刷の品質に影響が生じる場合があることを見出した。また、いわゆるベタ印字を行う場合において、塗りつぶす領域の端付近での描き出しのタイミングや描き終わりのタイミングにおいて、意図しない縞が発生して、印刷の品質に影響が生じる場合があることを見出した。また、このような現象に関し、様々な実験等を行うことで、程度の差はあるものの、インクの種類(例えば、溶剤インク、水性インク、UVインク等)によらず発生する現象であることや、主走査動作時におけるインクジェットヘッド102の移動速度(スキャン速度)を十分に遅くした場合や、印刷のパス数を十分に多くした場合には生じなくなること等を確認した。しかし、スキャン速度を遅くした場合や、パス数を増やした場合には、印刷の速度が大幅に低下することになる。これに対し、本例においては、上記において説明をした構成の接続部材206を用いることで、従来の構成では問題が生じる印刷速度で印刷を行った場合にも、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。また、以下においては、この点について、ベタ印字を行う場合の動作に着目して、詳しく説明をする。
【0046】
図5は、ベタ印字を行う動作等について詳しく説明をする図である。図5(a)は、ベタ印字を行う場合に媒体においてインクが吐出される領域であるベタ印字領域500の一例を示す。この場合、ベタ印字については、例えば、印刷の解像度に応じて設定される全ての吐出位置に対してインクジェットヘッド102におけるいずれかのノズルからインクを吐出する動作等と考えることができる。また、ベタ印字については、例えば、ベタ印字領域500内の吐出位置に対して一つのインクジェットヘッド102における複数のノズル列のいずれかのノズルからインクを吐出する動作等と考えることもできる。吐出位置にノズルからインクを吐出することについては、例えば、設計上の吐出位置に対して所定のサイズのインクのドットが形成されるようにインクを吐出すること等と考えることができる。また、ベタ印字については、例えば、一つの色のインクでの印刷の濃度を予め設定された100%の濃度にすること等と考えることもできる。
【0047】
また、上記においても説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド102は、6列のノズル列を有する。この場合、一つのインクジェットヘッド102における6列のノズル列について、共通の経路でインクジェットヘッド102の外部からインクが供給されるノズル列等と考えることができる。また、一つのインクジェットヘッド102における6列のノズル列については、例えば、接続部材206における一つの流路302(図2参照)を介して圧力ダンパ204(図2参照)から供給される同じ色のインクを吐出するノズル列等と考えることもできる。そして、この場合、ベタ印字の動作において、主走査駆動部112(図1参照)は、基本的に、一つのインクジェットヘッド102における全てのノズル列から同時にインクを吐出させつつ、主走査方向へインクジェットヘッド102を移動させる。しかし、ベタ印字で塗りつぶす領域の端付近での描き出しのタイミングや描き終わりのタイミングにおいて、主走査駆動部112は、インクジェットヘッド102における一部のノズル列のみからインクを吐出させることになる。そのため、ベタ印字領域500について、例えば図中に示すように、非端部領域502及び端部領域504を含む領域になると考えることができる。
【0048】
非端部領域502は、ベタ印字領域500における主走査方向の端の部分を除いた領域である。また、図示した構成において、非端部領域502については、ベタ印字領域500における端部領域504以外の領域等と考えることができる。また、本例において、非端部領域502は、一つのインクジェットヘッド102における全てのノズル列からインクを吐出して描く領域である。この場合、非端部領域502について、例えば、主走査動作時に同時にインクを吐出するノズル列の数である吐出ノズル列数が変化しないノズル列数一定領域の一例と考えることができる。吐出ノズル列数については、例えば、ベタ印字の動作でインクを吐出する一つのインクジェットヘッド102において同時にインクを吐出するノズル列の数等と考えることができる。また、本例において、吐出ノズル列数については、例えば、一つのインクジェットヘッド102において共通の圧力ダンパ204からインクの供給を受ける複数のノズル列のうち、同時にインクを吐出するノズル列の数等と考えることができる。また、端部領域504は、ベタ印字での描き出し又は描き終わりのタイミングに対応する領域である。ベタ印字領域500は、主走査方向における一方側及び他方側のそれぞれに、端部領域504を有する。また、ベタ印字の実行時において、主走査方向におけるベタ印字領域500の端の近傍では、主走査動作での主走査方向へのインクジェットヘッド102の移動に伴って、吐出ノズル列数が変化する。そして、本例においては、このような端の近傍の領域が、端部領域504になる。この場合、端部領域504について、例えば、吐出ノズル列数が変化するノズル列数変化領域の一例と考えることができる。
【0049】
また、本例において、吐出ノズル列数は、例えば図5(b)に示すように、変化する。図5(b)は、主走査動作におけるインクジェットヘッド102の移動に伴う吐出ノズル列数の変化の一例を示す。図中に示すように、ベタ印字を実行する場合において、描き出し側の端部領域504では、吐出ノズル列数が徐々に増加する。また、非端部領域502において、吐出ノズル列数は、一定の数になる。そして、描き終わり側の端部領域504では、吐出ノズル列数が徐々に減少する。このように、ベタ印字を実行する場合、端部領域504において、吐出ノズル列数が主走査動作時のタイミングによって変化すると考えることができる。
【0050】
また、ベタ印字を適切に行うためには、少なくとも、非端部領域502での吐出ノズル列数で必要となるインクをインクジェットヘッド102へ供給可能な条件で主走査動作を行うことになる。そして、この場合、非端部領域502においてインクジェットヘッド102へ供給可能なインクの量については、例えば、圧力ダンパ204でのインクの供給能力に応じて決まると考えることができる。また、主走査動作時にインクジェットヘッド102で必要となるインクの量については、例えば、単位時間あたりのインクジェットヘッド102でのインクの消費量等と考えることができる。そして、単位時間あたりのインクジェットヘッド102でのインクの消費量については、例えば、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度が速いほど、多くなると考えることができる。そのため、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度については、少なくとも、非端部領域502においてインクジェットヘッド102で必要となるインクの量と、圧力ダンパ204のインクの供給能力とを考慮して決定することが必要になる。また、この場合、主走査動作において、主走査駆動部112(図1参照)は、少なくとも、ベタ印字の実行時に非端部領域502においてインクジェットヘッド102における全てのノズル列に対して圧力ダンパ204からインクを供給できる速度で、インクジェットヘッド102を移動させる。
【0051】
しかし、上記のように、ベタ印字の実行時において、非端部領域502では、吐出ノズル列数が徐々に変化する。そして、この場合、インクジェットヘッド102で必要となるインクの量についても、吐出ノズル列数の変化に伴って徐々に変化することになる。これに対し、上記においても説明をした圧力ダンパ204の構成等から理解できるように、本例の圧力ダンパ204では、弁410(図4参照)の開閉等を伴う機械的な動作により、出力ポート418(図4参照)から出力するインクの量を変化させることになる。そして、この場合、インクジェットヘッド102で必要となるインクの量の変化が速いと、圧力ダンパ204のインクの供給能力に余裕があったとしても、圧力ダンパ204から出力するインクの量の変化が間に合わなくなること等も考えられる。この場合、圧力ダンパ204から出力するインクの量の変化が間に合わなくなることについては、例えば、インクジェットヘッド102で必要となるインクの量の変化に対して圧力ダンパ204の出力が遅延することで、印刷の品質が低下すること等と考えることができる。また、この点に関し、本願の発明者は、例えば図5(c)に示すように、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102との接続の仕方を異ならせた複数の構成を用いて様々な実験を行った。そして、上記において説明をしたバーコード状の画像を印刷する場合に生じるしぶきの問題や、ベタ印字の実行時に生じる縞の問題について、圧力ダンパ204から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなることに関連して生じる印刷の品質の低下であることを確認した。
【0052】
図5(c)は、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102との接続の仕方を異ならせた複数の構成を用いて行った実験の一部の結果を示す。図中に示す構成のうち、本例構成とは、図2及び図3(b)等を用いて説明をした構成の接続部材206を用いて圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102とを接続する構成である。本例構成については、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418と比べて接続部材206における流路302の一部を太くした構成等と考えることもできる。また、図中に示す構成のうち、従来構成とは、図3(a)に示す構成の接続部材206を用いて圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102とを接続する構成である。従来構成については、例えば、接続部材206における流路302の各位置での太さを圧力ダンパ204の出力ポート418と同等の太さにした構成等と考えることもできる。また、直結構成とは、接続部材206を用いずに圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102とを接続した構成である。より具体的に、直結構成では、圧力ダンパ204の出力ポート418と同等の太さの可撓性のチューブを用いて、圧力ダンパ204の出力ポート418とインクジェットヘッド102とを接続した。また、この実験において、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度については、ベタ印字領域500における非端部領域502の描画時にインクジェットヘッド102における全てのノズル列に対して圧力ダンパ204からインクを供給できる所定の速度に設定した。
【0053】
また、図中に示す項目のうち、しぶきの項目は、線幅が約2mmの縦線が約2mmの余白を空けて繰り返すバーコード状の画像を印刷する場合に意図しないインクのしぶきが発生したか否かを示している。縞の項目は、所定の印刷の解像度でいずれかの一つのインクジェットヘッド102を用いてベタ印字を実行する場合に意図しない縞が発生したか否かを示している。図中に示すように、本例構成で印刷を行った場合、問題となるしぶきや縞の発生が生じることなく、適切に印刷を行うことができた。これに対し、従来構成で印刷を行った場合、バーコード状の画像を印刷では、意図しない小さなしぶきが発生して、印刷の品質が低下した。ベタ印字の実行時には、ベタ印字領域500の端付近に意図しない縞が発生して、印刷の品質が低下した。この縞は、副走査方向へ延伸する縞であり、主走査方向へ一定の間隔で並んだ。また、この実験では、接続部材206を用いない直結構成でも、バーコード状の画像の印刷、及びベタ印字を実行した。そして、この場合も、従来構成を用いる場合と同様に、バーコード状の画像の印刷の実行時に、意図しない小さなしぶきが発生して、印刷の品質が低下した。また、ベタ印字の実行時に、ベタ印字領域500の端付近に意図しない縞が発生して、印刷の品質が低下した。
【0054】
ここで、本願の発明者は、上記の各構成を用いた印刷について、主走査動作でのインクジェットヘッド102の移動の速度を複数段階で変化させて行った。そして、上記のようなしぶきや縞の問題について、インクジェットヘッド102の移動の速度を小さくした場合には生じないことについても、確認をした。また、上記において説明をした実験を含む様々な実験により、従来構成や直結構成で生じる上記のようなしぶきや縞の問題について、吐出ノズル列数の変化に対して圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなることが原因であることを確認した。
【0055】
これに対し、本例構成の接続部材206を用いる場合、接続部材206の流路302の少なくとも一部が太くなっていることで、例えば、圧力ダンパ204よりもインクジェットヘッド102に近い位置において、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの流量に対して余裕を持たせてインクを貯留することができる。また、これにより、例えば、インクジェットヘッド102で必要となるインクの量が変化した場合において、例えば圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化に遅延が生じた場合等にも、必要な量のインクを迅速かつ適切にインクジェットヘッド102へ供給することができる。そのため、本例構成の接続部材206を用いる場合、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が吐出ノズル列数の変化に対して間に合わなくなるタイミングでも、インクジェットヘッド102におけるそれぞれのノズル列の各ノズルへのインクの供給を適切に行うことができる。また、この場合、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度について、例えば、従来構成や直結構成では問題が生じ、かつ、本例構成では適切に印刷が行える構成になっていると考えることができる。そのため、本例によれば、例えば、圧力ダンパ204の影響で印刷の品質に問題が生じることを適切に防止しつつ、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度を適切に高めることができる。また、これにより、例えば、高速かつ高品質の印刷を適切に行うことが可能になる。
【0056】
また、この場合、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化に着目した場合、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度について、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が吐出ノズル列数の変化に対して間に合わなくなる速度になっていると考えることができる。この場合、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が吐出ノズル列数の変化に対して間に合わなくなることについては、例えば、ベタ印字の実行時に主走査方向の少なくともいずれかの側の端部領域504において、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が吐出ノズル列数の変化に対して間に合わなくなること等と考えることができる。また、この場合、接続部材206の流路302について、少なくとも一部が太くなることで、例えば、インクの流量に対するバッファとして機能していると考えることもできる。より具体的に、この場合、本例構成の接続部材206における流路302の少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きくなっていることにより、流路302について、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418とインクジェットヘッド102との間でインクの流量を調整するバッファとして機能すると考えることができる。また、この場合、本例構成の接続部材206における流路302について、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が吐出ノズル列数の変化に対して間に合わなくなる場合に、インクを吐出するノズル列が必要とする量のインクを、インクジェットヘッド102のノズル列に供給すると考えることができる。
【0057】
また、本例構成の接続部材206のように、少なくとも一部の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きい流路302を有する接続部材206を用いて圧力ダンパ204からインクジェットヘッド102へインクを供給する構成については、例えば、第1インク供給構成の一例と考えることができる。そして、この場合、圧力ダンパ204からインクジェットヘッド102を供給する流路として全ての位置で流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積以下になっている流路を用いる構成を第2インク供給構成と考えると、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度や、接続部材206を介してインクジェットヘッド102へインクを供給する動作の特徴について、第1インク供給構成と第2インク供給構成との違いに着目して考えることもできる。また、より具体的に、この場合、例えば、ベタ印字領域500における複数の端部領域504のうち、吐出ノズル列数が徐々に増加する側の端部領域504に着目すると、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度について、例えば、第2インク供給構成でインクジェットヘッド102へインクを供給した場合には、インクを吐出すべきノズル列へ供給されるインクが、少なくとも一部のタイミングで不足する速度になっていると考えることができる。また、この場合、本例構成の接続部材206では、第1インク供給構成でインクジェットヘッド102へインクを供給することで、吐出ノズル列数が徐々に増加する側の端部領域504において、インクを吐出すべきノズル列へ供給されるインクの不足が生じないように、インクジェットヘッド102へインクを供給することができる。
【0058】
また、上記のように、本例における接続部材206の流路302については、例えば、インクの流量を調整するバッファとして機能すると考えることができる。そして、流路302がバッファとして機能することについては、例えば図6に示すように、流路を流れるインクの流速に着目して考えることもできる。図6は、流路302(図2参照)を流れるインクの流速について簡略化して説明をする図である。図6(a)は、本例の流路302とは異なる流路を流れるインクの流速について説明をする図であり、全体において流路断面積が一定の断面積aになっている流路を流れるインクの流速の例を示す。図6(b)は、本例の流路302を流れるインクの流速の例を簡略化して示す図であり、流路302の各位置の流路断面積に着目して、流路302に対応する構成を簡略化して示している。また、図6(b)では、流路302において太くなっている部分である第2流路部314(図2参照)よりも上流側の第1流路部312(図2参照)に対応する部分の流路断面積を断面積aとし、第2流路部314に対応する部分の流路断面積について、断面積aよりも大きな断面積bとしている。
【0059】
インク等の液体が所定の流路断面積の流路を流れる場合、その平均流速について、通常、体積流量を流路断面積で除した速度になると考えることができる。また、体積流量について、流速と流路断面積との積になると考えることもできる。そして、この場合、同じ体積流量の液体を互いに異なる流路断面積で流すと、平均流速について、流路断面積に反比例すると考えることができる。より具体的に、例えば、同じ体積流量について、液体を流す流路断面積を2倍にすると、平均流速は、1/2になる。
【0060】
また、例えば図6(a)に示す構成のように、流路断面積が一定である場合、流路の各位置でのインクの流速について、同じになると考えることができる。図6(a)においては、流路の各位置でのインクの流速が所定の流速V1になる場合について、図示をしている。また、図中に示す流速V3は、インクジェットヘッド102側の流路の出口から出た後にインクジェットヘッド102のノズルへ向かって流れるインクの流速である。流速V3については、例えば、インクジェットヘッド102において消費されるインクの量に応じて決まるインクの必要量に対応するインクの供給速度等と考えることができる。また、この場合、上記の流速V1について、流速V3に応じて決まると考えることができる。
【0061】
これに対し、例えば図6(b)に示す構成のように、流路の位置によって流路断面積が異なる場合、流路の各位置でのインクの流速は、流路断面積に応じて変化する。より具体的に、本例の流路302のように、途中で分岐や合流がない状態で入口から出口までインクを流す流路の場合、流路の各位置での体積流量は、同じになる。また、その結果、各位置でのインクの流速は、流路断面積に反比例することになる。そして、この場合、流路断面積が断面積aである部分でのインクの流速V1と比べて、流路断面積がより大きな断面積bでのインクの流速V2は、遅くなる。
【0062】
また、これらの構成に関し、図6(a)に示す構成のように、流路断面積が一定の流路を用いる場合、例えばインクの供給速度に対応する流速V3が変化すると、通常、流速V3の変化に比例して、流路内でのインクの流速V1が変化する。しかし、例えば流速V3が一時的に特に大きくなった場合等には、流速V1について、変化可能な範囲を一時的に超えることが生じやすくなる。これに対し、例えば図6(b)に示す構成の場合、流路断面積が大きな断面積bになっている部分でのインクの流速V2が流速V1よりも遅くなっていることで、流速V3が一時的に特に大きくなった場合等にも、流速V2について、例えば、余裕をもって適切に変化させることが可能になる。また、これにより、流路断面積が大きな断面積bになっている部分について、例えば、バッファとして適切に機能させることができる。また、この場合、流路断面積が大きな断面積bになっている部分について、例えば、インクジェットヘッド102へのインクの供給が間に合うようにインクを貯留していると考えることもできる。
【0063】
また、上記において説明をした効果を得るための具体的な構成に関し、接続部材206の流路302については、上記において説明をした構成に限らず、様々な変形を行うこともできる。図7は、接続部材206における流路302の変形例について説明をする図である。図7(a)、(b)は、流路302の変形例を示す。以下に説明をする点を除き、図7において、図1~5と同じ符号を付した構成は、図1~5における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。また、流路302の変形例については、例えば、図2(b)に示す本例の接続部材206において用いる流路302の変形例等と考えることができる。
【0064】
上記においても説明をしたように、接続部材206における流路302については、例えば、少なくとも一部を太くすることで、流路302の少なくとも一部をインク溜まりとして機能させていると考えることができる。この点に関し、上記においては、主に、流路302における第2流路部314を太くする構成について、説明をした。しかし、流路302の少なくとも一部をインク溜まりとして機能させることを考えた場合、例えば図7(a)に示すように、流路302の全体を太くすること等も考えられる。より具体的に、この場合、流路302の全体について、各位置での流路断面積が、圧力ダンパ204の出力ポート418(図4参照)の流路断面積よりも大きくなっている。このように構成した場合も、例えば、圧力ダンパ204よりもインクジェットヘッド102に近い位置において、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの流量に対して余裕を持たせてインクを貯留することができる。また、これにより、例えば、インクジェットヘッド102(図1参照)で必要となるインクの量が変化した場合において、必要な量のインクを迅速かつ適切にインクジェットヘッド102へ供給することができる。
【0065】
ここで、このような流路302を有する接続部材206を用いる場合においても、圧力ダンパ204及びインクジェットヘッド102としては、上記において説明をした圧力ダンパ204及びインクジェットヘッド102と同一又は同様の構成を用いることが考えられる。そのため、流路302の端部の太さについては、例えば、圧力ダンパ204の出力ポート418やインクジェットヘッド102の入口152(図2参照)に合わせた太さにすることが考えられる。
【0066】
また、本変形例のように、接続部材206における流路302の全体を太くする場合、例えば、接続部材206のサイズが顕著に増大すること等が考えられる。そして、この場合、例えば、接続部材206を設置するために必要な面積が大きくなり、インクジェットヘッド102の近くに接続部材206を設置することが難しくなること等も考えられる。これに対し、上記においても説明をしたように、流路302の一部のみを太くした場合でも、流路302について、適切にインク溜まりとして機能させることができる。そのため、接続部材206のサイズの増大を抑えること等を考えた場合、接続部材206における流路302の一部のみを太くする方が好ましいと考えることができる。
【0067】
また、接続部材206における流路302の一部のみを太くする構成を用いる場合、例えば、太くした部分よりもインクジェットヘッド102に近い位置に細い部分があると、上流にある太い部分と比べて下流側の細い部分の流路抵抗が大きくなることで、インクジェットヘッド102へ向かってインクが流れにくくなり、流路302に太い部分を設けた効果が低下すること等も考えられる。そのため、接続部材206における流路302の一部のみを太くする構成を用いる場合、インクジェットヘッド102につながる部分を太くすることが好ましい。また、この場合、例えば図7(b)に示すように、インクジェットヘッド102につながる直線部分である第2流路部314の最下流部の一部を太くすること等が考えられる。より具体的に、図7(b)に示す変形例では、接続部材206の流路302における第1流路部312の流路断面積と、第2流路部314における上流側の一部の流路断面積とが、圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積に合わせた値S1になっている。そして、第2流路部314における下流側の一部の流路断面積が、S1よりも大きな値S2になっている。このように構成すれば、接続部材206のサイズの増大をより適切に抑えつつ、接続部材206の流路302にインク溜まりの機能を適切に持たせることができる。また、このような構成については、例えば、流路302において、インクジェットヘッド102の直前の部分にインク溜まりを設ける構成の例等と考えることもできる。
【0068】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明等を行う。また、以下においては、説明の便宜上、図7に示した変形例の構成等も含めて、本例という。上記においても説明をしたように、本例においては、接続部材206の流路302の少なくとも一部を太くすることで、流路302の少なくとも一部をインク溜まりとして機能させている。この点に関し、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102との間で余裕を持たせてインクを貯留することを考えるのであれば、接続部材206とは別に、サブタンク等のインク貯留部を用いればよいようにも思われる。しかし、この場合、キャリッジ110(図1参照)上においてインクジェットヘッド102の近傍にサブタンク等を更に追加することが必要になる。また、その結果、キャリッジ110での各部材の設置スペースの確保が難しくなることや、コストの増大等の問題が生じることになる。これに対し、本例においては、新たな部材を追加することなく、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102との間で、余裕を持たせてインクを貯留することが可能になる。
【0069】
また、圧力ダンパ204とインクジェットヘッド102との間で余裕を持たせてインクを貯留することに関し、一見すると、例えば、圧力ダンパ204のインクの供給能力を高めればよいようにも思われる。しかし、上記の説明等から理解できるように、バーコード状の画像を印刷する場合に生じるしぶきや、ベタ印字の実行時に端部領域に生じる縞の問題等は、単なる圧力ダンパ204の供給能力ではなく、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化の速さに関連する事項である。また、この点に関し、上記のように、圧力ダンパ204は、弁410(図4参照)等を用いる機械式のダンパである。そして、この場合、インクジェットヘッド102で必要になるインクの量の変化に合わせて圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量を変化させるためには、通常、ある程度の時間を要することになる。そのため、単に圧力ダンパ204のインクの供給能力を高めたとしても、上記のしぶきや縞の問題を適切に防止することは困難である。
【0070】
これに対し、本例においては、上記のように、接続部材206における流路302の少なくとも一部を太くすることで、しぶきや縞の問題を適切に防止することが可能になっている。また、この場合、流路302においてインク溜まりとして機能する太い部分では、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化の遅れを補うために十分な量を貯留することが考えられる。このように構成すれば、例えば、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度を高速化した場合にも、意図しないしぶきや縞が発生することを適切に防止することができる。また、より具体的に、本例の接続部材206における流路302に貯留されるインクの量については、例えば、流路302を太くしない場合の2倍以上にすることが考えられる。この場合、流路302に貯留されるインクの量については、例えば、流路302の容積等と考えることができる。また、流路302の少なくとも一部を太くすることについては、例えば、流路302の少なくとも一部の容積を大きくすること等と考えることができる。また、流路302を太くしない場合に貯留されるインクの量については、例えば、各位置の流路断面積が圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積と等しい流路302を用いる場合に流路302に貯留されるインクの量等考えることができる。また、本例の接続部材206における流路302に貯留されるインクの量については、例えば、流路302を太くしない場合の3倍以上にすることがより好ましい。また、接続部材206における流路302に貯留されるインクの量を多くすることを考えた場合、流路302の少なくとも一部を太くするのではなく、経路が長い流路302を用いればよいようにも思われる。しかし、この場合、長い流路302を形成することで、例えば、接続部材206が大型化すること等が考えられる。また、接続部材206のサイズを大きくしないで長い流路302を形成しようとすると、流路302の屈曲部が多くなり、インクが流れにくくなること等が考えられる。そのため、流路302としては、上記のように、少なくとも一部を太くした構成を用いることが好ましい。
【0071】
また、上記のように、本例の接続部材206の流路302では、少なくとも一部の流路断面積について、圧力ダンパ204の出力ポート418の流路断面積よりも大きくしている。しかし、例えば圧力ダンパ204の変形例においては、例えば出力ポート418の流路断面積について、圧力ダンパ204の供給能力に合わせた流路断面積よりも大きくすること等も考えられる。そして、この場合、流路302における太い部分の流路断面積について、出力ポート418の流路断面積と同等以下になること等も考えられる。そのため、このような場合には、流路302における太い部分の特徴について、出力ポート418の流路断面積ではなく、圧力ダンパ204の供給能力に合わせた流路断面積と比べて大きな流路断面積になっていると考えることができる。また、この場合、流路302における太い部分について、例えば、上記において説明をしたバッファの機能を有するインク溜まりになる太さになっている等と考えることができる。
【0072】
また、上記においても説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド102は、6列のノズル列を有する。この点に関し、上記において説明をしたしぶきや縞の問題については、一つのインクジェットヘッド102が有するノズル列の数が多い場合に特に生じやすいと考えられる。より具体的に、一つのインクジェットヘッド102が有するノズル列の数が多い場合、通常、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度をより高速にすることが可能になる。そして、この場合、インクジェットヘッド102において必要になるインクの量の変化がより速くなり、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなりやすい。また、その結果、例えば従来の構成の接続部材206を用いていると、しぶきや縞の問題が発生しやすくなる。また、一つのインクジェットヘッド102が有するノズル列の数が多い場合、吐出ノズル列数が様々に変化することで、インクジェットヘッド102で必要となるインクの量も様々に変化することになる。また、この場合、ノズル列の数が多くなっていることで、例えば、吐出ノズル列数が1列変化することで生じる必要なインクの量の変化量が少なくなること等も考えられる。そして、この場合、圧力ダンパ204では、段階毎のインクの量の差が小さく、かつ、ノズル列の数に応じた複数の段階でインクの量が変わるように、吐出ノズル列数が変化する毎に、出力ポート418から出るインクの量を変化させることが必要になる。そして、このような場合、例えば、必要なインクの量の変化に対し、圧力ダンパ204における弁410の動きが追随しにくくなること等が考えられる。そのため、一つのインクジェットヘッド102が有するノズル列の数が多い場合において、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度が高速になると、例えば、吐出ノズル列数の変化に対して、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなることが生じやすくなる。また、その結果、上記のように、印刷の品質に問題が生じることが考えられる。
【0073】
また、この点に関し、上記においても説明をしたように、例えば主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動の速度を遅くしたり、印刷のパス数を多くすれば、圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が間に合うように主走査動作を行うことも可能である。しかし、この場合、印刷の速度が大幅に低下することになる。これに対し、本例においては、一つのインクジェットヘッド102が有するノズル列の数が多い場合等において、吐出ノズル列数の変化に対して圧力ダンパ204の出力ポート418から出てくるインクの量の変化が間に合わなくなる場合にも、インクジェットヘッド102の各ノズル列へのインクの供給を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質の印刷をより高速に行うこと等が可能になる。また、一つのインクジェットヘッド102が有するノズル列の数が多くなる場合、例えば、インクジェットヘッド102で消費するインクの最大量が多くなることで、主走査動作時に特定の条件が生じた場合等に、インクジェットヘッド102で必要になるインクの量が段階的に急激に変化する場合がある。そして、この場合、例えば、インクジェットヘッド102で必要になるインクの量の大幅な増大に対して圧力ダンパ204からのインクの供給が間に合わなくなること等が考えられる。また、この場合、例えば従来の構成の接続部材206を用いていると、インク供給系108(図2参照)からインクジェットヘッド102までのインクの供給速度がインクの消費速度に対して追いつかなくなることで、インクジェットヘッド102内のインク室等に貯留されるインクが空になり、印刷の品質に影響が生じることが考えられる。これに対し、本例においては、上記の構成の接続部材206を用いることで、このような場合にも、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。また、ノズル列の数が多くなることで生じる問題については、例えば、一つのインクジェットヘッド102において共通の圧力ダンパ204からインクの供給がされるノズル列の数が4列以上の場合に顕著になると考えられる。そのため、本例の接続部材206については、例えば、インクジェットヘッド102が有するノズル列の数が4列以上の場合に用いることが特に好ましいと考えることもできる。
【0074】
また、印刷装置100(図1参照)においてインク容器106(図1参照)からインクジェットヘッド102までインクを供給するインクの経路に関し、上記においては、主に、1色分のインクを供給する経路に着目して、構成等の説明を行った。この点に関し、上記においても説明をしたように、本例において、インク供給系108は、一つのインクジェットヘッド102へインク容器106から供給するための構成として、流路202、圧力ダンパ204、及び接続部材206を有する。この場合、インク供給系108は、例えば、それぞれのインクジェットヘッド102に対して互いに異なるインク容器106からインクを供給するように、流路202、圧力ダンパ204、及び接続部材206を有する。また、この場合、インク供給系108は、流路202として、例えば、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれにそれぞれが対応する複数の流路202を有する。また、それぞれのインクジェットヘッド102毎に、圧力ダンパ204及び接続部材206を有してよい。
【0075】
また、圧力ダンパ204及び接続部材206としては、例えば、複数のインクジェットヘッド102分の構成をまとめた部材を用いてもよい。この場合、一つの圧力ダンパ204は、例えば、図4に示した構成を複数組有する。また、この場合、圧力ダンパ204について、例えば、複数のインクジェットヘッド102分の互いに独立な調整機構内流路を有していると考えることができる。また、この場合、圧力ダンパ204は、複数の入力ポート416において、互いに独立な複数の流路202を介して複数のインク容器106からインクの供給を受ける。また、それぞれがいずれかのインクジェットヘッド102に対応する複数の出力ポート418から、接続部材206を介して複数のインクジェットヘッド102へインクを供給する。また、より具体的に、圧力ダンパ204としては、例えば、二つのインクジェットヘッド102に対応する2系統の調整機構内流路でインクの圧力を調整することが考えられる。
【0076】
また、接続部材206としては、例えば、複数の圧力ダンパ204を保持する部材を用いてもよい。この場合、接続部材206は、複数の圧力ダンパ204から供給されるインクを、複数のインクジェットヘッド102へ供給する。また、この場合、接続部材206は、互いに独立な複数の流路302を有し、それぞれの流路302からそれぞれのインクジェットヘッド102へインクを供給する。この場合も、上記において説明をした構成の流路302を用いることで、例えば、高速かつ高品質の印刷を適切に行うことができる。また、より具体的に、接続部材206としては、例えば、2個の圧力ダンパ204を保持する部材を用いることが考えられる。また、この場合、接続部材206において、例えば、2系統の調整機構内流路をそれぞれが有する2個の圧力ダンパ204を保持してもよい。このように構成すれば、例えば、一つの接続部材206から、4個のインクジェットヘッド102へインクを供給することができる。また、これにより、例えば、キャリッジ110(図1参照)においてインクジェットヘッド102の周囲に設置する部材の個数を適切に低減することができる。
【0077】
また、上記においては、印刷装置100について、主に、媒体に対してインクを吐出する場合の構成を説明した。この場合、印刷装置100について、例えば、媒体上に2次元の画像を描くインクジェットプリンタ等と考えることができる。これに対し、印刷装置100の変形例においては、印刷装置100として、例えば、立体的な造形物を造形する3Dプリンタ(3D印刷装置)等を用いることも考えられる。また、この場合、造形中の造形物を支持する造形台や、造形中の造形物について、インクを吐出する対象と考えることができる。この場合も、上記と同様の構成でインクジェットヘッド102へのインクの供給を行うことで、例えば、造形物の造形を高い品質で適切に行うことができる。また、印刷装置100については、例えば、液体吐出装置の一例等と考えることもできる。この場合、インクについて、例えば、液体吐出装置が吐出する液体の一例と考えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば印刷装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
100・・・印刷装置、102・・・インクジェットヘッド、104・・・プラテン、106・・・インク容器、108・・・インク供給系、110・・・キャリッジ、112・・・主走査駆動部、114・・・副走査駆動部、120・・・制御部、122・・・ノズル列、152・・・入口、202・・・流路、204・・・圧力ダンパ、206・・・接続部材、302・・・流路、312・・・第1流路部、314・・・第2流路部、322・・・屈曲部、402・・・負圧室、404・・・圧力室、406・・・連絡流路室、408・・・調圧部、410・・・弁、412・・・バネ、414・・・作動杆、416・・・入力ポート、418・・・出力ポート、422・・・可撓膜、424・・・受圧部材、426・・・バネ、50・・・媒体、500・・・ベタ印字領域、502・・・非端部領域、504・・・端部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7