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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028036
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20230224BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133478
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅大
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 貴智
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA30
2H199DA33
2H199DA46
3D344AA01
3D344AA03
3D344AA09
3D344AA12
3D344AA19
3D344AA27
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】HUD装置等の表示装置に設けられる光学要素のがたつきを防止して画像の表示位置を高い精度で調整することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示部2に表示された画像の画像光を投射する凹面鏡3を備えるHUD装置1において、凹面鏡3は装置ボディ5に回転軸33,34により軸支されるとともに回転機構4により軸周り方向に軸転可能とされている。凹面鏡3を回転軸33,34の軸方向及び軸周り方向に付勢する単一の弾性部材6を備える。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部に表示された画像の画像光を車両の透光部材に投射する光学要素を備える表示装置であって、当該光学要素は装置ボディに軸支されるとともに回転機構により軸周り方向に軸転可能とされており、前記光学要素を軸方向及び軸周り方向に付勢する単一の弾性部材を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記光学要素は回転軸を備えており、当該回転軸は前記装置ボディに設けられた軸受において軸転可能に軸支されるとともに前記回転機構に連結されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記弾性部材は板バネで構成され、前記装置ボディに固定される固定部と、前記光学要素に弾接し、当該光学要素を前記軸方向と前記軸周り方向にそれぞれ付勢する弾接片を備える請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記弾性部材は板バネで構成され、前記装置ボディに固定される固定部と、前記光学要素を前記軸方向に付勢する第1弾接片と、前記光学要素を前記軸周り方向に付勢する第2弾接片を備える請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記弾性部材は板バネで構成され、前記装置ボディに固定される固定部と、前記光学要素に対して前記軸方向と前記軸周り方向に付勢する分力を発生させる弾接片を備える請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記回転軸は軸方向に隣接されたフランジ部と、前記回転機構に連結される連結部を備え、前記弾性部材は前記フランジ部が前記軸受に軸方向に当接するように付勢する請求項2ないし5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記光学要素は、前記回転軸の径方向に延長されたアーム部を備え、前記弾性部材は当該アーム部を回転軸の軸周り方向に付勢する請求項2ないし6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記回転機構は軸連結部を支点にしてアクチュエータにより傾動される傾動ブラケットを備えており、前記回転軸の連結部はこの軸連結部において軸周り方向に一体に連結される請求項6または7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記光学要素は凹面鏡であり、前記ウインドシールドに対してその反射面の角度が変化されるように傾動される請求項1ないし8のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
自動車のヘッドアップディスプレイとして構成され、前記ウインドシールドは当該自動車のフロントガラスである請求項9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に配設される表示装置に関し、特にヘッドアップディスプレイに適用して好適な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の表示装置として、自動車の乗員に対して所要の画像を表示するヘッドアップディスプレイ(Head up Display:以下、HUD装置と称する)が提案されている。特許文献1には、液晶(LCD)等の画像表示器に表示された画像を光学系により自動車の風防ガラス(フロントガラス)に投影し、この風防ガラスの前方に形成される虚像(以下、表示画像とも称する)を乗員が視認するように構成されたHUD装置が提案されている。また、このHUD装置は画像を投影する光学系の一部に凹面鏡を備えており、この凹面鏡を支持部に支持している。このHUD装置は当該凹面鏡で反射した画像光が風防ガラスに投射される位置を変化させて表示画像の視認位置を調整するために、凹面鏡の角度調整を行なうための回転機構が設けられる。
【0003】
特許文献1のHUD装置では、凹面鏡は回転軸が支持部に支持されているが、回転軸と支持部との間に生じるガタにより表示画像の位置ずれが生じ易く、視認性が低下するおそれがある。これを防止するために、弾性部材により回転軸を支持部に対して押し付ける構成がとられているが、回転軸を径方向に押し付ける構成であるので、回転軸の軸方向のがたつきを防止することは難しい。
【0004】
一方、特許文献2には、HUD装置において、弾性部材により凹面鏡の回転軸を軸受体に対して互いに垂直なX方向とZ方向に押し付けることにより、回転軸のスラスト方向(軸方向)とラジアル方向(径方向)のがたつきを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-192962公報
【特許文献2】特許第6642290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の技術は、凹面鏡の回転軸を支持部や軸受等の支持部材に対して弾性部材により押し付けることにより、回転軸の軸方向や径方向におけるがたつきを防止している。しかし、凹面鏡の角度位置、すなわち回転軸周り方向の位置を調整する回転機構を備えたHUD装置においては、特許文献1,2の技術を適用しても、回転軸と、これに連結される回転機構との間に生じるがたつき、特に回転軸周りのがたつきを防止することは難しい。そのため、凹面鏡を傾動させる際に回転軸と回転機構との間にいわゆるバックラッシュが生じ易く、凹面鏡の角度位置を高い精度で制御することが難しいという課題がある。この課題を解決するためには、特許文献1,2では回転軸周りのがたつきを防止するための独立した弾性部材を別途に配設する必要があり、部品点数の増大や組み付け作業の煩雑化を生じることになる。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成で凹面鏡等の光学要素におけるがたつきを防止したHUD装置等の表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像表示部に表示された画像の画像光を車両の透光部材に投射する光学要素を備える表示装置であって、光学要素は装置ボディに軸支されるとともに回転機構により軸周り方向に軸転可能とされており、光学要素を軸方向及び軸周り方向に付勢する単一の弾性部材を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい形態として、光学要素は回転軸を備えており、当該回転軸は装置ボディに設けられた軸受において軸転可能に軸支されるとともに回転機構に連結されている。その上で、弾性部材は板バネで構成され、装置ボディに固定される固定部と、光学要素に弾接し、光学要素を軸方向と前記軸周り方向にそれぞれ付勢する弾接片を備える構成とする。
【0010】
例えば、弾性部材は板バネで構成され、装置ボディに固定される固定部と、光学要素を軸方向に付勢する第1弾接片と、光学要素を軸周り方向に付勢する第2弾接片を備える。あるいは、弾性部材は板バネで構成され、装置ボディに固定される固定部と、光学要素に対して軸方向と軸周り方向に付勢する分力を発生させる弾接片を備える。
【0011】
本発明において、回転軸は軸方向に隣接されたフランジ部と、回転機構に連結される連結部を備えており、弾性部材はフランジ部が軸受に軸方向に当接するように付勢する構成としてもよい。また、光学要素は、回転軸の径方向に延長されたアーム部を備え、弾性部材はアーム部を回転軸の軸周り方向に付勢する構成としてもよい。さらに、回転機構は軸連結部を支点にしてアクチュエータにより傾動される傾動ブラケットを備えており、回転軸の連結部はこの軸連結部において軸周り方向に一体に連結される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学要素は単一の弾性部材により軸方向及び軸周り方向に付勢されるので、光学要素の軸方向及び軸周り方向の位置が規制され、光学要素に連結される回転機構との間のがたつきを防止し、表示画像の変動を防止した品質の高い表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明を適用したHUD装置の概念構成図。
図2】HUD装置の概略斜視図。
図3】HUD装置の概略平面図。
図4】凹面鏡の第1回転軸の近傍部位の斜視図。
図5図4に示した部位の平面図。
図6図4に示した部位の部分分解斜視図。
図7】(a)図5のa-a線に沿う断面図、(b)図5のb-b線に沿う断面図。
図8】(a)変形例の要部の模式的な分解斜視図、(b)変形例の模式的な正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は自動車に適用したHUD装置の概念構成図であり、自動車の左側から見た構成である。自動車のダッシュボードDB内にHUD装置1が配設されており、当該HUD装置1から出射した画像光Lを、当該ダッシュボードDBの上面開口を通して自動車のフロントガラス(ウインドシールドと称する)WSに投射させる。投射された画像光LはウインドシールドWSで反射されて自動車の運転者等の乗員Mに向けられる。この画像光Lが乗員Mの眼に入ることにより、当該乗員MはウインドシールドWSを透して自動車の前方位置に画像光による画像(虚像)Iを視認することができ、当該画像の表示が行われる。
【0015】
HUD装置1は、画像表示部2と、この画像表示部2に表示された画像を図1に示したウインドシールドWSに投射する光学要素3を備えている。画像表示部2は所望の画像を表示してその画像光を出射する構成であり、例えば液晶表示装置で構成される。光軸要素3は画像表示部2から出射される画像光を反射する反射鏡、ここでは凹面鏡で構成されている。この凹面鏡3は所要の焦点距離となる曲率の球面または自由曲面で構成された反射面部30を備えており、この反射面部30は画像表示部2に対向配置されている。これにより、画像表示部2から出射されて凹面鏡3の反射面部30で反射された光はウインドシールドWSに投射され、ここで反射されて乗員Mの眼に入るように構成される。
【0016】
また、前記HUD装置1には、後述するように凹面鏡3を傾動するための回転機構が設けられている。この回転機構によって凹面鏡3の角度を調整することにより、鎖線で示すように、凹面鏡3で反射される光の方向が変化され、ウインドシールドWSに投射される光の位置と方向が変化される。これにより、身長等の違いにより視線位置が高い乗員Mmの眼に入る光の方向が変化され、乗員Mと乗員Mmが同じ位置に画像Iを視認することが可能になる。
【0017】
図2は前記HUD装置1の概略斜視図であり、図3はその概略平面図である。なお、以降において左右方向、上下方向は図2に基づく方向である。HUD装置1は浅皿状の装置ボディ5を備えており、この装置ボディ5の内底部50の一部に前記画像表示器2が搭載され、これと対面する位置に前記凹面鏡3が搭載されている。凹面鏡3は反射面部30の左右両端においてそれぞれ後面側に突出され、上下縁が先端に向けて幅寸法が低減されるテーパ状をした第1アーム部31及び第2アーム部32と、これら第1アーム部31及び第2アーム部32の先端からそれぞれ水平左右方向の外側に突出された第1回転軸33及び第2回転軸34を備えている。
【0018】
そして、前記装置ボディ5の内底部50には前記各回転軸33,34に対応する部位に壁状の第1軸受51及び第2軸受52が立設されている。これら第1軸受51及び第2軸受52は上縁に半円状の凹溝が形成された構成であり、前記各回転軸33,34はそれぞれ対応する軸受51,52の凹溝に支承されて軸転可能とされている。したがって、凹面鏡3はこれら回転軸33,34が軸転されることにより両回転軸33,34を結ぶ軸線Axを支点にして傾動され、反射面部30の垂直方向の傾動角度が変化される。
【0019】
前記第1回転軸33には回転機構4の傾動ブラケット42が連結されている。この回転機構4は装置ボディ5の内底部50の下側面に固定されたアクチュエータ40を備えており、このアクチュエータ40は、例えば図2,3には表れないモータにより螺進されるスクリュー構成の駆動ロッド41を備えている。駆動ロッド41は装置ボディ5の内底部50から上方に向けて突出されており、軸方向、すなわち上下方向に移動される。前記傾動ブラケット42はこの駆動ロッド41の上側先端にボールジョイントにより連結されており、駆動ロッド41の上下移動により傾動され、この傾動により連結されている第1回転軸33を軸転させ、凹面鏡3を傾動させることが可能とされている。
【0020】
図4は前記凹面鏡3の第1回転軸33の近傍部位の斜視図であり、図5はその平面図である。また、図6はその部分分解斜視図である。前記第1回転軸33には、フランジ部35と連結部36が軸方向に一体に形成されている。フランジ部35は第1回転軸33よりも大径の円形フランジとして形成されている。連結部36は円周面の一部が平面に切除された非円形の軸として形成されている。そして、第1回転軸33が第1軸受51に軸支されたときに、フランジ部35と連結部36は第1軸受51の外側(左側)に突出位置されるとともに、連結部36は前記傾動ブラケット42に連結されている。
【0021】
前記傾動ブラケット42は長さ方向の中間部43が板状に形成されており、この中間部43の一端部が前記第1回転軸33に連結する軸連結部44として構成され、他端部が前記アクチュエータ4の駆動ロッド41に連結するアクチュエータ連結部45として構成されている。軸連結部44は前記フランジ部35とほぼ同径寸法をした円柱状に形成され、装置ボディ5の内底部50の一部に立設された第2軸受53に軸支される。これにより、傾動ブラケット42は、この軸連結部44を支点にして軸周り方向に傾動が可能とされている。
【0022】
軸連結部44の内側(右側)の端面には、第1回転軸33と一体の前記連結部36と同じに内周面の一部に平坦面を有する断面形状した凹穴からなる連結穴46が形成されている。この連結穴46に当該連結部36が軸方向に嵌入されており、これにより連結部36、すなわち第1回転軸33は軸連結部44に対して軸周り方向に一体化される。また、アクチュエータ連結部45は、前記したようにボールジョイントにより駆動ロッド41に連結されている。これにより、アクチュエータ40が駆動されて駆動ロッド41が上下方向に移動されると、傾動ブラケット42は軸連結部44を支点にして垂直方向に傾動され、この傾動によって第1回転軸33を軸周りに回転し、凹面鏡3を傾動させることが可能とされている。
【0023】
さらに、前記装置ボディ5の内底部50には、前記第1回転軸33に臨む部位にボス部54が立設されており、このボス部54に弾性部材6が配設されている。この弾性部材6は所要形状に屈曲加工された板バネからなり、当該ボス部54に対して固定される固定部60と、この固定部60から延長された弾接部61を備えている。この板バネ6の固定部60は2本のネジ7によりボス部54に固定され、弾接部61は前記凹面鏡3の第1アーム部31に弾接されている。
【0024】
図7(a),(b)はそれぞれ図5のa-a線、b-b線に沿った断面図である。板バネ6の弾接部61は、第1アーム部31の外側面、すなわち左側面に弾接される第1弾接片62と、第1アーム部31のテーパ状をした上縁に弾接される第2弾接片63を備えている。第1弾接片62は第2弾接片63の一方の縁から下方に向けて突出された小型の舌片で構成され、第1アーム部31の外側面(左側面)に弾接されている。これにより、第1弾接片62は第1アーム部31を軸方向の内側、すなわち図7(a)の右側に向けて付勢することになる。
【0025】
また、第2弾接片63は固定部60から第1アーム部31に沿って延長された片持片として構成され、その先端が第1アーム部31の上縁に弾接されている。この第2弾接片63の長さ寸法は第1回転軸33の径寸法よりも長く形成されており、第1回転軸33よりも凹面鏡3の反射面部30に近い部位において弾接されている。これにより、第2弾接片63は第1アーム部31の基端側、すなわち反射面部30側を下方に向けて付勢する。換言すれば、第1回転軸33を図7(b)の時計回り方向に向けて付勢することになる。
【0026】
このように、凹面鏡3は板バネ6の第1弾性片62によって第1回転軸33の側から第2回転軸34に向けて軸線Axに沿った方向に付勢される。また、凹面鏡3は第2弾性片63によって反射面部30が下方に向くように軸線Axの軸周り方向に付勢される。
【0027】
以上説明したHUD装置1では、図1を参照して説明したように、画像表示部2において表示された画像の画像光は凹面鏡3において反射され、さらに自動車のウインドシールドWSに投射されるので、乗員MはウインドシールドWSを透して自動車の前方位置に表示画像(虚像)Iを視認する。また、回転機構4のアクチュエータ40を制御することにより、傾動ブラケット42は軸連結部44を支点にして垂直方向に傾動される。この傾動により軸連結部44に連結されている第1回転軸33が一体的に軸転され、第1アーム部31を介して凹面鏡3が傾動され、反射面部30の傾動角度が変化される。この反射面部30の傾動角度の変化制御によりウインドシールドWSに投射される画像光の位置や方向が変化され、視線位置が相違する乗員Mに対しても同じ位置に画像Iを視認することができるように調整が行なわれる。
【0028】
ところで、このHUD装置1においては、凹面鏡3の第1回転軸33及び第2回転軸34はそれぞれ装置ボディ5に設けられた第1軸受51及び第2軸受52に軸支されている。これら第1回転軸33及び第2回転軸34の軸方向の寸法は、それぞれ対応する第1軸受51及び第2軸受52の軸方向とほぼ同じ寸法に設計されているが、実際には両回転軸33,34の軸転を許容するために設計寸法には所定の余裕(マージン)が設けられている。そのため、第1回転軸33及び第2回転軸34はこの余裕の寸法だけ第1軸受51及び第2軸受52において軸方向に移動されることになり、これによって凹面鏡3の軸線Axに沿った軸方向のがたつきが生じることがある。この軸方向のがたつきにより凹面鏡3の左右方向の位置が変化され、表示画像の位置が左右方向に変動される。
【0029】
この実施形態では、第1回転軸33には隣接してフランジ部35が設けられ、このフランジ部35は第1軸受51の左側面に対面する位置に配置される。また、板バネ6の弾接部61の第1弾接片62は第1アーム部31の左側面に弾接されている。したがって、第1弾接片62によって第1アーム部31が軸方向の右方向に付勢され、これと一体の第1回転軸33も右方向に付勢されると、さらに一体のフランジ部35が第1軸受51の左側面に当接され、この当接によって第1回転軸33及び第1アーム部31の軸方向の移動が規制され、凹面鏡3の軸方向の移動が規制されて軸方向、すなわち左右方向のがたつきが防止される。
【0030】
また、第1回転軸33の軸周り方向についてみると、第1回転軸33と一体の連結部36と、傾動ブラケット42の軸連結部44の連結穴46はそれぞれ円周面の一部に平坦面を有する非円形に形成されており、連結部36が連結穴46に嵌入されたときには第1回転軸33と軸連結部44は軸周り方向に一体化され、したがって第1回転軸33と傾動ブラケット42が軸周り方向に一体かされる。しかし、これら連結部36と連結穴46との間に寸法誤差が生じていると、第1回転軸33と傾動ブラケット42との間に軸周り方向のがたつき生じる。この軸周り方向のがたつきにより凹面鏡3の上下方向の角度が安定せず、表示画像の位置が上下方向に変動される。
【0031】
この実施形態では、板バネ6の弾接部61の第2弾接片63は第1アーム部31の上縁に弾接されており、第1アーム部31は時計回り方向に付勢され、この付勢力によって第1回転軸33と一体の連結部36は軸連結部44の連結穴46に対して時計回り方向に付勢される。すなわち、連結部36と連結穴46の各平面部が互いに当接されて軸周り方向に規制される。これにより、傾動ブラケット42に対する第1回転軸33の軸周り方向のがたつきが防止され、凹面鏡3の上下方向の角度の変化が防止される。
【0032】
このように、実施形態では、1つの板バネ6の弾接部61に第1弾接片62と第2弾接片63を備え、第1弾接片62によって凹面鏡3の軸方向のがたつきが防止され、第2弾接片63によって凹面鏡3の傾動角度のがたつきが防止される。したがって、1つの板バネ6、すなわち1つの弾性部材によって凹面鏡3の軸方向と軸周り方向のがたつきを防止することができ、部品点数の削減、及び組み付け工数の削減を図った簡易な構成のHUD装置が構成できる。
【0033】
図8は実施形態の変形例を説明する図であり、(a)は要部の模式的な斜視図、(b)は作用を説明する模式的な正面図である。図8(a)のように、第1アーム部31には第1回転軸33の軸方向と軸周り方向の両方向に対して傾斜された傾斜面部31aが一体に形成されている。また、弾性部材である板バネ6の弾接部61はこの傾斜面部31aに対して軸周り方向に弾接される単一の弾接片64として形成されている。この弾接片64が当該傾斜面部31aに弾接される部位には、傾斜面部31aに沿って軸方向及び軸周り方向に滑動することができるような形状、例えば球面状の突起64aが一体に形成されている。なお、弾接片64において板バネ6の固定部60から突起64a迄の長さ寸法は、当該固定部60から第1回転軸33の軸芯迄の長さよりも長くされている。
【0034】
図8(b)のように、弾接片64の突起64aが傾斜面部31aに軸周り方向に弾接することにより、傾斜面部31aにおいて矢印で示す弾接力の分力が軸方向に生じる。これにより、傾斜面部31aと一体の第1アーム部31は弾接片64の弾接力によって軸周り方向と軸方向に付勢される。したがって、実施形態と同様に、傾動ブラケット42に対する第1の回転軸33の軸周り方向のがたつきが防止されて凹面鏡3の垂直方向の角度の変化が防止される。また、この変形例では、第1回転軸33と一体の連結部36aはスプライン構造とされており、この場合には傾動ブラケット42の軸連結部44の連結穴46もスプライン構造とされる。
【0035】
この変形例においても、1つの弾性部材としての板バネ6によって凹面鏡3の軸方向のがたつきと軸周り方向のがたつきが防止され、凹面鏡3の傾動確度ぎばらつきの防止、ないし表示画像の位置精度の変動が防止される。したがって、部品点数の削減、及び組み付け工数の削減を図った簡易な構成の高品質のHUD装置が構成できる。
【0036】
本発明において、弾性部材は、1つの部材で凹面鏡を軸方向と軸周り方向にそれぞれ付勢する構成であれば、板バネに限られるものではなく線バネで構成されてもよい。例えば、捩じりバネにより凹面鏡を軸方向と軸周り方向に付勢する構成であってもよい。また、変形例のように1つの弾性部材により生じる分力を利用して凹面鏡を軸方向と軸周り方向に付勢する構成の場合には、弾性部材はコイルバネで構成されてもよい。
【0037】
本発明の表示装置は実施形態に記載のHUD装置に限られるものではなく、回転軸により装置ボディに軸支され、回転軸の軸周りに傾動される光学要素を備える表示装置に適用できる。また、本発明をHUD装置として構成する場合に、コンバイナ等の透明なプラスチックディスクを使用して構成してもよい。さらに、本発明における光学要素は凹面鏡に限られるのものではなく、装置ボディに軸転可能に支持され、回転機構により軸転されて表示画像の表示位置や表示方向を変化制御するための光学要素であれば適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 HUD装置(表示装置)
2 画像表示部
3 凹面鏡(光学要素)
4 回転機構
5 装置ボディ
6 板バネ(弾性部材)
30 反射面部
31,32 アーム部
33,34 回転軸
35 フランジ部
36 連結部
40 アクチュエータ
41 駆動ロッド
42 傾動ブラケット
44 軸連結部
46 連結穴
51,52,53 軸受
61 弾接部
62,63 弾接片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8