(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028056
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】熱接着性芯鞘型複合繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/14 20060101AFI20230224BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20230224BHJP
C08J 11/18 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
D01F8/14 ZAB
D01F8/06
C08J11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133507
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨森 康裕
【テーマコード(参考)】
4F401
4L041
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AC10
4F401AC11
4F401AC12
4F401BA20
4F401CA25
4F401CA48
4F401CA69
4F401DC01
4F401EA60
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA11Z
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BD11
4L041CA36
4L041DD05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リサイクルポリエステル原料を高比率で含有する再生ポリエステル樹脂を使用した熱接着性複合繊維であって、バージンポリエステル樹脂を用いた繊維と同様の機械的特性値を有し、生産性よく得られる繊維を提供する。
【解決手段】芯鞘型複合繊維であって、ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配されてなり、芯部を構成するポリエステル樹脂が、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂であり、全グリコール成分の合計量を100モル%とするときジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下で、平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である熱接着性芯鞘型複合繊維。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合繊維であって、ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配されてなり、芯部を構成するポリエステル樹脂が下記の再生ポリエステル樹脂であることを特徴とする熱接着性芯鞘型複合繊維。
記
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂であり、
全グリコール成分の合計量を100モル%とするときジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下で、平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である。
【請求項2】
芯部のポエリエステル樹脂と鞘部のポリオレフィン樹脂の質量比が芯/鞘=25/75~75/25であり、繊度が1~12dtexであることを特徴とする請求項1記載の熱接着性芯鞘型複合繊維。
【請求項3】
鞘部のポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の熱接着性芯鞘型複合繊維。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の熱接着性複合繊維を含むことを特徴とする不織布。
【請求項5】
下記(1)~(4)の工程を全て含む製造方法により再生ポリエステル樹脂を得た後、
得られた再生ポリエステル樹脂を芯部、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して溶融紡糸し、500m~5000m/分の速度で引き取ることを特徴とする請求項1記載の熱接着性芯鞘型複合繊維の製造方法。
記
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【請求項6】
下記(1)~(3´)の工程を全て含む製造方法により再生ポリエステル樹脂を得た後、
得られた再生ポリエステル樹脂を芯部、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して溶融紡糸し、500m~5000m/分の速度で引き取ることを特徴とする請求項1記載の熱接着性芯鞘型複合繊維の製造方法。
記
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3´)前記濾液に重縮合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【請求項7】
引き取った後の糸条をローラ間で延伸し、その後、所定の長さに切断することを特徴とする請求項5または6記載の熱接着性芯鞘型複合短繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済ポリエステル製品やポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルに由来するリサイクルポリエステル原料を含む再生ポリエステル樹脂を一部に用いた複合繊維であって、熱接着性を有する複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストであるため、繊維、フィルム、ペットボトル等の成形品等に幅広く用いられている。これらのポリエステル製品は、製造段階又は加工段階で屑の発生が避けられず、また使用後に廃棄処分される場合が多い。ところが、焼却する場合には高熱が発生するため、焼却炉の傷みが大きく、寿命が短くなる。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないために半永久的に残ることになる。
【0003】
近年、一度使用されたポリエステル製品のうち、ゴミとして捨てられたプラスチック容器等が河川を経由して海洋へ流出し、波又は潮流の作用で細かく破砕されてマイクロプラスチックとして海洋生物の体内に蓄積、食物連鎖で濃縮され海洋生物の生態系に悪影響が出ていること、プラスチックが海洋汚染の一大原因となっていることが問題視されていることから、その使用量の削減、生分解性プラスチックへの切り替え等の動きが全世界的に起きている。
【0004】
このような環境上の問題の観点から、資源を再利用するリサイクルが様々な方法で行われている。PETに代表されるポリエステル製品に関しても、その製造工程で発生したポリエステル屑をリサイクルする方法に加え、一度市場に出回って廃棄された製品を回収し、それを原料として再使用する方法が検討されている。特に、近年においては、繊維製品について、一定のリサイクル率を達成することで認定されるエコマークを付与した製品が普及している。
【0005】
リサイクルポリエステル原料として、製造工程で発生したポリエステル屑あるいは使用済みのポリエステル製品を回収したものを用いてリサイクルする方法としては、各種の方法が提案されている。
【0006】
例えば、PET屑にメタノールを添加してジメチレンテレフタレート(以下「DMT」と表記することがある。)とエチレングリコール(以下「EG」と表記することがある。)に分解する方法(特許文献1)、PET屑にEGを添加して解重合した後、メタノールを添加してDMTを回収する方法(特許文献2)、PET屑をEGで解重合してオリゴマーとし、これを重縮合反応に用いる方法(特許文献3)等が提案されている。
【0007】
ところで、一旦製品となったPETボトル等を再生する際に問題になる不純物としては、ポリエステル樹脂中に添加されている各種の添加剤のほか、ボトル本体に付属するものとして、a)キャップ(アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン)、b)中栓、c)ライナー(ポリプロピレン、ポリエチレン)、d)ラベル(紙、ポリスチレン等の樹脂、インク)、e)接着剤、f)印字用インク等がある。
【0008】
一般に、再生工程の前処理としては、回収されたPETボトルを振動ふるいにかけて砂、金属等を除去する。その後、PETボトルを洗浄し、着色ボトルを分離した上で、荒い粉砕を行う。そして、風力分離によりラベル等を取り除く。さらに、キャップ等に由来するアルミニウム片を除いて、PETボトル片を細かく粉砕する。高温アルカリ洗浄により接着剤、蛋白質、かび等の成分を除き、比重差によりポリプロピレン、ポリエチレン等の異種成分を分離する工程が行われる。
【0009】
しかしながら、これらの工程を経たとしても、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の非ポリエステル樹脂をPET樹脂から完全に分離・除去することは困難である。
【0010】
例えば、特許文献1~3に記載のリサイクル方法で再生ポリエステル樹脂の製造を試みたとしても、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものとはいえず、バージンポリエステル樹脂同様の品質を有する製品を得ることは困難である。このように異物の混入量が十分に低減されていないと、紡糸工程又は製膜工程における濾過フィルターの昇圧速度が速く、長期の連続運転ができず、加工操業性が非常に悪くなる。しかも、特許文献1~3のような方法では、回収装置の設置、運転、維持等に多額のコストもかかり、実用性という点でも改善の余地がある。
【0011】
特許文献4記載の発明には、ポリエステル屑をエチレングリコールで解重合した後に、平均目開きが10~50μmのフィルターでろ過した後、再重合反応を行う方法が記載されている。そして、得られた再生ポリエステル樹脂は、異物の混入量が少なく、加工時の操業性に優れるものであることが示されている。
【0012】
しかしながら、この方法においても、上記のような非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えておらず、異物の混入量が十分に低減できたものではなかった。
【0013】
このように、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えており、バージンポリエステルと同様に各種の製品を得ることが可能で、かつ品質の高い製品を得ることができる再生ポリエステル樹脂は未だに得られていない。
【0014】
中でもポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を得る際には、異物の混入量が大きく生産性に影響を及ぼす。2成分以上からなる複合繊維を紡糸したり、細繊度化したりするなどを行うほど、異物の影響を大きく受けることとなり、生産が困難となったり、また得られる繊維の機械的特性値が劣るものとなるという問題点がある。
【0015】
なお、ポリエステルを用いた繊維のなかで、各種の衛生用品やフィルター部材などには熱接着性を有する複合繊維が幅広く用いられている。なかでも、例えばおむつなどの人体に触れるような用途においては、優れた機械的特性と柔らかな風合いが求められることから、芯にポリエステル成分、鞘にポリオレフィン成分を用いた芯鞘型の熱接着性複合繊維が好適に用いられる。
【0016】
特許文献5には、再生ポリエステル樹脂を用いた熱接着性複合繊維の製造方法が記載されている。しかしながら、この方法においても、ポリエステル屑の解重合及び再重合反応を行う際に副生成するジエチレングリコール(以下「DEG」と表記することがある。)の量が多かったり、カルボキシル末端基濃度が高かったりするなどの課題があり、バージンポリエステル樹脂を用いたものより紡糸操業性に劣ったり、繊維を熱接着させる際の収縮が大きくなり、不織布の加工が困難になったり、得られる不織布の地合いが悪化したりするため、改善が必要なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特公昭42-8855号公報
【特許文献2】特開昭48-62732号公報
【特許文献3】特開昭60-248646号公報
【特許文献4】特開2005-171138号公報
【特許文献5】特開2020-079453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、使用済ポリエステル製品やポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルなどに由来するリサイクルポリエステル原料を高比率で含有する再生ポリエステル樹脂を一部に使用した熱接着性複合繊維であって、バージンポリエステル原料を用いたときと同様の特性値を有するとともに、生産性よく得ることができる熱接着性複合繊維及びこれを用いた不織布を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、上記の課題を達成するために、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0020】
すなわち、本発明は、芯鞘型複合繊維であって、ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配されてなり、芯部を構成するポリエステル樹脂が下記の再生ポリエステル樹脂であることを特徴とする熱接着性芯鞘型複合繊維を要旨とするものである。
記
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂であり、
全グリコール成分の合計量を100モル%とするときジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下で、平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である。
【0021】
また、本発明は、下記(1)~(4)の工程を全て含む製造方法により再生ポリエステル樹脂を得た後、得られた再生ポリエステル樹脂を芯部、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して溶融紡糸し、500m~5000m/分の速度で引き取ることを特徴とする上記載の熱接着性芯鞘型複合繊維の製造方法。
記
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【0022】
また、本発明は、下記(1)~(3´)の工程を全て含む製造方法により再生ポリエステル樹脂を得た後、得られた再生ポリエステル樹脂を芯部、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して溶融紡糸し、500m~5000m/分の速度で引き取ることを特徴とする上記載の熱接着性芯鞘型複合繊維の製造方法を要旨とするものである。
記
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3´)前記濾液に重縮合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱接着性芯鞘型複合繊維は、繊維の横断面形状において芯部に配する再生ポリエステル樹脂が、異物の混入量が少なく、かつ、ジエチレングリコールの含有量、カルボキシル末端基濃度が特定の範囲を満足するものであるため、バージンポリエステル樹脂を用いた場合と同様に紡糸操業性に優れ、バージンポリエステル樹脂を用いたものと同等の熱収縮特性の複合繊維を得ることができる。
【0024】
また、本発明の不織布は、前記の再生ポリエステル樹脂を用いた複合繊維からなるため、バージンポリエステル樹脂を用いた複合繊維からなるものと同様の良好な地合いとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明の熱接着性芯鞘型複合繊維(以下、本発明の複合繊維と称することがある。)は、繊維の横断面形状においてポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配したものである。芯部を構成するポリエステル樹脂は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む再生ポリエステル樹脂である。
【0027】
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
【0028】
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑(ポリエステル屑)、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
【0029】
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていてもよいし、あるいは溶融してペレット化されていてもよい。上記a)及びb)は、それぞれ単独で使用してもよいし、両者の混合物を用いてもよい。
【0030】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであってもよい。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
【0031】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の性状としては、限定的ではなく、上記a)及びb)の形態のままでもよいし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、ポリエステル屑の溶融物を冷却及び切断して得られるペレット、PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体(分散液又は溶液)の形態であってもよい。これらの原料を用いてポリエステル製品を製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
【0032】
芯部を構成するポリエステル樹脂中の上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上が好ましい。リサイクルポリエステル原料の含有量が40質量%未満であると、環境問題に配慮するという目的を果たすとはいい難い。リサイクルポリエステル原料の含有量の上限については、特に限定するものではないが、後述する再生ポリエステル樹脂の製造方法によって、リサイクルポリエステル原料の含有量が40~100質量%の再生ポリエステル樹脂を得ることが可能である。
【0033】
再生ポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下の特性値を有するものである。なかでも、3.5モル%以下であることが好ましい。特に、後述する製造方法により得られるポリエステル樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いるが、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。芯部を構成する再生ポリエステル樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量を4モル%以下とすることにより、機械的強度に優れる複合繊維とすることができる。また、結晶性に優れた性能を有しているため、複合繊維の熱収縮率を低くすることができ、各種の不織布などに好適に使用することができる。エチレングリコールの含有量の下限値は、例えば0.5モル%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0034】
再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が30当量/t以下であり、特に25当量/t以下であることが好ましく、なかでも20当量/t以下であることがより好ましい。カルボキシル末端基濃度を30当量/t以下とすることにより、耐熱性に優れた性能を有しており、このため、バージンポリエステルと同様に操業性よく溶融紡糸を行うことができる。なお、カルボキシル末端基濃度の下限値は、例えば5当量/t程度とすることができるが、これに限定されない。
【0035】
再生ポリエステル樹脂は、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であり、0.5MPa/h以下であることが好ましく、なかでも0.4MPa/h以下であることが好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物、非ポリエステル樹脂に由来する異物等の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示す。平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることにより、バージンポリエステルと同様に生産性よく溶融紡糸を行うことができ、強度、伸度などの機械的物性値に優れた繊維を製造することも可能となる。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
【0036】
平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端に濾過粒度12μmのステンレス鋼製綾畳織フィルターをセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式により上記平均昇圧速度を算出する。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12
なお、ステンレス鋼製綾畳織フィルターは、呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mmのものを用いる。測定で用いるエクストルーダー、フィルター等は、本発明の規定を満たす限りは、公知又は市販のものを適宜使用することもできる。
【0037】
本発明に係る再生ポリエステル樹脂は、その種類は特に限定されないが、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。本発明に係る再生ポリエステル樹脂中におけるPETの含有量は70質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上であることが好ましく、さらには90~100質量%であることが好ましい。
【0038】
後述する再生ポリエステル樹脂の製造方法においては、通常はエチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるPETを得ることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、PET以外のポリエステル樹脂が重縮合反応により生成する場合もある。このため、本発明に係る再生ポリエステル樹脂としては、主体となるPET以外に、酸成分又はグリコール成分として、以下に示す成分が共重合されていてもよい。これらの成分は2種以上含まれていてもよい。
【0039】
酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、グリコール成分としては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ブチルエチルプロパンジオール、(2-メチル1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等を挙げることができる。
【0040】
再生ポリエステル樹脂の重合度については、所望の機械物性の繊維とするために適宜選択することができ、限定されるものではないが、極限粘度として0.4~0.8が好ましく、0.5~0.75がより好ましい。この範囲の極限粘度とすることにより、操業性よく機械特性に優れた熱接着性複合繊維を得ることができる。極限粘度が0.4未満の場合、ポリマー圧力が低いため紡糸時の吐出ムラが生じ操業性が悪化したり、重合度が低いため繊維強度が低下したりするため好ましくない。一方、0.8を超える場合、ポリマー圧力が高いため紡糸時に口金部材の変形が生じたり、重合度が高いため所定の延伸倍率をかけられなくなったりするなど、操業性や機械特性の悪化につながるため好ましくない。
【0041】
本発明の複合繊維の鞘部に用いるポリオレフィン樹脂は、熱接着成分として機能するものであり、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン-1、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエンなどが挙げられる。また、これらのポリオレフィン樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で共重合成分や添加剤が含まれていてもよい。
【0042】
ポリオレフィン樹脂の種類は、所望の機械物性及び熱接着性の繊維とするために適宜選択することができ、限定されるものではないが、一般的な熱接着加工温度や樹脂の汎用性、ポリエステル樹脂との複合紡糸性などを考慮すると、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましく、ポリエチレンがより好ましく、なかでも高密度ポリエチレンが特に好ましい。そして、ポリオレフィン樹脂の融点については、所望の熱接着性の繊維とするために適宜選択することができ、限定されるものではないが、一般的な熱接着加工温度を考慮すると、100~150℃が好ましく、110~140℃がより好ましい。
【0043】
ポリオレフィン樹脂の重合度については、所望の機械物性及び熱接着性の繊維とするために適宜選択することができ限定されるものではないが、メルトフローレイトとして5~40g/10分が好ましく、10~30g/10分がより好ましく、15~25g/10分が特に好ましい。メルトフローレイトが5g/10分未満の場合、ポリマー圧力が低いため紡糸時の吐出ムラが生じ操業性が悪化する恐れがある。一方、40g/10分を超える場合、ポリマー圧力が高いため紡糸時に口金部材の変形が生じたり、重合度が高いため熱接着加工時に融け広がりにくく、不織布などの製品強度が低くなる恐れがある。 なお、上述のASTM D 1238に記載の方法に準じて、時間10分、荷重20.2Nにて樹脂を測定したものであり、樹脂がポリエチレンの場合は温度190℃、ポリプロピレンの場合は温度230℃で測定する。
【0044】
本発明の複合繊維の芯部と鞘部の比率は、質量比で芯/鞘=25/75~75/25が好ましく、30/70~70/30がより好ましく、35/65~65/35が特に好ましい。芯部の質量比が25/75未満であると、ポリエステル樹脂の量が少なくなるため、繊維の機械的強度が低くなる傾向となる。一方、芯部の質量比が75/25を超えると、鞘部の熱接着性成分であるポリオレフィン樹脂の量が少なくなるため、熱接着性が不十分となり、不織布などの製品強度が低くなるため好ましくない。
【0045】
本発明の複合繊維の繊度は、1~12dtexが好ましく、1.2~7dtexがより好ましく、1.5~4dtexが特に好ましい。熱接着性芯鞘型複合繊維は、例えばおむつなどの人体に触れるような用途に使用される場合、柔らかな風合いが求められることから、繊度は前述の範囲にて細いものが好ましいが、用途によって適宜選択すればよい。なお、1dtex未満のものは、細繊度のため操業性よく繊維を得ることが困難となったり、繊維の強度が低下しやすくなったりするため好ましくない。一方、12dtexを越える場合、繊維の集束が悪化しやすくなるため操業性よく繊維を得ることが困難となったり、不織布などの製品の風合いが悪化したりするため好ましくない。なお、上述の繊度はJIS L-1015 8.5の方法により測定したものである。
【0046】
本発明の複合繊維の強度について限定されるものではなく、適用する用途に応じて適宜選択すればよいが、加工上や使用上の耐性を考慮すると、1.5cN/dtex以上が好ましく、2.0cN/dtex以上がより好ましい。強度の上限について、繊維製造の際の紡糸及び延伸により繊維にかかる張力、すなわち紡糸速度及び延伸倍率などの要因を考慮すると、5cN/dtex程度がよい。なお、繊維の強度はJIS L-1015 8.7により測定したものである。
【0047】
本発明の複合繊維の伸度について限定されるものではなく、適用する用途に応じて適宜選択すればよいが、加工上や使用において耐えうる伸度を考慮し、繊維製造の際の紡糸速度及び延伸倍率などの要因を考慮すると、50~100%が好ましく、60~90%がより好ましく、上限については120%程度がよい。なお、上述の伸度はJIS L-1015 8.7により測定したものである。
【0048】
本発明の複合繊維は、120℃における熱収縮率は25%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。一般には、風合いの滑らかな不織布を得ようとする際には熱収縮率が低いものが好適に使用される。一方、例えば嵩高な不織布を得ようとする際にはこの限りではなく、用途に応じて所定の熱収縮率とすることが望ましい。なお、本発明に用いるポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下の特性値を有するものであり、結晶性が高いことから、繊維の熱収縮率をバージンポリエステル樹脂を用いた場合と同等に低くすることができる。
【0049】
なお、上述の熱収縮率は、JIS L1015 8.15 b)の方法を用いて、温度を120℃、時間を15分として測定したものである。なお、後述のショートカット繊維など、機械捲縮が付与されていない場合は、はじめに、顕微鏡にて任意の拡大率で観察して測定した繊維長(N)を測定する。次いで、当該繊維を内温が85℃の乾燥機内に静置して15分加熱処理を行い、処理後の繊維長(M)を測定し、[1-(M/N)]×100により算出されるものである。なお、n数は30とする。
【0050】
本発明の複合繊維が短繊維の形態である場合、20~150mmの繊維長が例示されるロングカット繊維としてもよく、2~20mmの繊維長が例示されるショートカット繊維としてもよい。一般にロングカット繊維には機械捲縮が付与され、サーマルスルー不織布やスパンレース不織布などを得る際に用いることができ、これらの不織布は衛材やオムツなどに用途に好適である。また、一般にショートカット繊維は捲縮が付与されず、油剤などで繊維に水分散性を付与したものであり、湿式不織布(抄紙)などを得る際に用い、フィルターなどの用途に好適である。なお、エアレイド不織布を得る際に好適な短繊維は、機械捲縮が付与され、かつ、2~20mmの繊維長がよく、このような形態及び繊維長を有する短繊維としてもよい。
【0051】
本発明の複合繊維が長繊維の形態である場合、モノフィラメントとしてもよく、マルチフィラメントとしてもよい。また、一工程で得られるPOY糸、SDY糸であってもよく、二工程で得られるFDY糸であってもよい。さらには、スパンボンド法により得ることもできる。
【0052】
本発明の複合繊維は、再生ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィンを鞘部に配したものである。芯部と鞘部は同芯としてもよく、偏芯としてもよい。例えば風合いの滑らかな不織布を得ようとする際には熱収縮率が低い同芯が好適であり、嵩高の不織布を得ようとする際には熱収縮差によるクリンプが発現しやすい偏芯が好適であり、用途や要求特性に応じて適宜選択すればよい。なお、芯部の再生ポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下の特性値を有するものであり、結晶性が高いことから、繊維の熱収縮率をバージンポリエステル樹脂を用いた場合と同等に低くすることができる。
【0053】
本発明の複合繊維の横断面形状は、円形断面に限られることなく、扁平、三角等の各種異形のものなど、適宜選択すればよい。
【0054】
本発明の複合繊維を用いた不織布は、バージンポリエステル樹脂を用いた場合と同等の特性を有するポリエステル樹脂を芯部に配していることから、風合いや地合いに優れる。なお、不織布の形態としては、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、湿式不織布(抄紙)などが挙げられる。なかでも、本発明の複合繊維は熱接着性を有することから、サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、湿式不織布(抄紙)に適用することが好ましい。このような不織布を得る際、本発明の複合繊維は、あらかじめ所定の長さに切断した短繊維とすることが好ましい。不織布の目付や厚みなどは、用途や所望する不織布物性と考慮して適宜選択することができる。
【0055】
また、本発明の複合繊維を用いた不織布は、必要に応じて他の繊維が混合されていてもよい。
【0056】
次に、本発明の熱接着性芯鞘型複合繊維の製造方法について説明する。
まず、芯部に配する再生ポリエステル樹脂と鞘部に配するポリオレフィン樹脂を準備する。再生ポリエステル樹脂は、本件出願人等が提案している特願2021-132793号あるいは特願2020-59233号に記載されている再生ポリエステル樹脂の製造方法により得られた再生ポリエステル樹脂を用いるとよい。具体的には、下(1)~(4)の工程を全て含む製造方法により得る。
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
また、具体的には、下(1)~(3´)の工程を全て含む製造方法により再生ポリエステルを得る。
(1)a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3´)前記濾液に重縮合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【0057】
(1)の工程において、エチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行うが、このとき、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が、1.08~1.40となるようにしてエチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合を行う。再生ポリエステル樹脂のリサイクル原料使用率が100質量%未満である場合は、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料に加えて、エチレンテレフタレートオリゴマーを添加して解重合を行うとよい。エチレンテレフタレートオリゴマーを添加する際にも、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.40とする。なお、このとき添加するエチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、2~20程度がよい。前記のモル比として解重合を行うことにより、リサイクルポリエステル原料に含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われ、次の(2)の工程において異物を除去することができ、また、得られる再生ポリエステルのカルボキシル末端基濃度やジエチレングリコールの含有量を所望の範囲とすることができる。
【0058】
また、(1)の工程にて、解重合を行って得られる解重合体の溶融粘度は10~1500mPa・sがよい。前記したモル比を調整して解重合を行うことに加え、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得ることにより、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出がより効率よく行われ、次の(2)の工程において異物をもれなく除去することができ、また、次の工程である重縮合触媒等の添加剤を加える工程において、重縮合触媒等の添加剤を凝集させることなく、均一に混練することができる。なお、解重合体の溶融粘度は、解重合時の熱処理温度で測定した値であり、ブルックフィールド社製VISCO METER DV-1型溶融粘度計を用い、試料量8.5gで測定したものである。
【0059】
解重合時の反応温度は、反応器や溶融押出機の内温を220~285℃とする。この温度範囲とすることにより、操業性が良好で、得られる再生ポリエステルのカルボキシル末端基濃度やジエチレングリコールの含有量を所望の範囲とすることができる。
【0060】
(2)の工程においては、(1)の工程で得られた解重合体を含む反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する。反応生成物は液状体であり、特定のフィルターを通過させることにより、析出した異物を除去し、異物混入量の少ない解重合体を得ることができる。
【0061】
次いで、(3´)の工程では、(2)の工程で得られた濾液に、重縮合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
【0062】
あるいは、(2)の工程で得られた濾液に、重合触媒を添加し、混練し、反応生成物を得(工程(3))、この反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う(工程(4))。
【0063】
重縮合触媒は、例えば、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物等の公知のものを用いるとよい。重縮合反応における温度および減圧条件を上記の範囲とすることにより、生産効率が良好となる。なお、温度の上限は熱分解しないことを考慮して285℃とする。
【0064】
また、重合触媒を添加して混錬する際の温度は、重縮合反応温度の±10℃の範囲内がよい。
【0065】
前述した方法で得られた再生ポリエステル樹脂を芯部、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して溶融紡糸し、500m~4000m/分の速度で引き取り、本発明の複合繊維を得る。また、引き取った糸条をローラー間で延伸し、必要に応じて、所望の長さに切断する。
【0066】
本発明の複合繊維において、繊維の形態として所定の繊維長を有する短繊維を製造する方法について説明する。具体的には、まず、再生ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂をそれぞれ別の溶融押し出し装置にペレットとして供給、溶融し、再生ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して紡糸口金から吐出させる。吐出された糸条束を冷却固化し、500~1500m/minのローラで引き取ることにより、未延伸糸を得る。そして、未延伸糸を80~120万dtexとなるように集束し、糸条束をローラ間で2~4倍の延伸倍率で延伸し、所定の長さに切断する。ロングカット繊維とする場合には、延伸後にスタッフィングボックス等を用いて機械捲縮を施すとよい。ショートカット繊維とする場合には、機械捲縮を施すか、あるいは機械捲縮を施すことなく、1~10mmの長さに切断する。
【0067】
本発明の複合繊維において、繊維の形態として長繊維(連続繊維)とする場合であって、FDY法によって長繊維を製造する方法について説明する。この場合も、再生ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂をそれぞれ別の溶融押し出し装置にペレットとして供給、溶融し、再生ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して紡糸口金から吐出させる。吐出された糸条束を冷却固化し、500~1500m/minのローラで引き取ることにより、未延伸糸を得る。そして、未延伸糸をローラ間で2~4倍の延伸倍率で延伸し、巻き取ることによって、本発明の複合長繊維を得る。
【0068】
また、繊維の形態として長繊維(連続繊維)とする場合であって、POY法によって長繊維を製造する方法について説明する。この場合も、再生ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂をそれぞれ別の溶融押し出し装置にペレットとして供給、溶融し、再生ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して紡糸口金から吐出させる。吐出された糸条束を冷却固化し、2000~4000m/minのローラで引き取ることにより、高配向の未延伸糸を得る。そして、未延伸糸をローラ間で1.1~2倍の延伸倍率で延伸、巻き取ることによって、本発明の複合長繊維を得る。
【0069】
また、スパンボンド法によって、本発明の複合繊維(連続複合繊維)を得ることもできる。この場合も、再生ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂をそれぞれ別の溶融押し出し装置にペレットとして供給、溶融し、再生ポリエステル樹脂を芯部に、ポリオレフィン樹脂を鞘部に配して紡糸口金から吐出させる。吐出した糸条は、公知の冷却装置を用いて冷却した後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取り、ネット上に堆積させてウェブを得る。牽引細化の際の速度(引取速度)は、2500m~5000m/分程度に設定すればよい。また、スパンボンド法による連続繊維の単繊維繊度は0.5~10デシテックス程度の任意の繊度とすればよい。スパンボンド法により形成したウェブは、熱エンボスロール等に通して熱処理を行うことや、ニードルパンチ処理等により繊維同士を交絡させること等による一般的な不織布化手段により、不織布とすればよい。
【0070】
なお、上記した繊維の製造工程において、あるいは、繊維の後加工工程において、各種の油剤や機能剤などを付与してもよい。
【0071】
本発明の熱接着性複合芯鞘型短繊維を用いた不織布は、通常の不織布の加工方法で製造することができる。サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布は、機械捲縮を付与したロングカットの短繊維を用いればよく、湿式不織布(抄紙)は機械捲縮を付与しないショートカット繊維を用いるとよい。また、エアレイド不織布は機械捲縮を付与したショートカット繊維を用いて製造することが一般的である。また、本発明の熱接着性複合短繊維以外に、主体となる繊維(熱処理によって溶融しない高融点繊維からなるもの)を適宜混合し、不織布とするとよい。
【0072】
サーマルボンド不織布、エアレイド不織布、湿式不織布(抄紙)をはじめとする不織布を得る際に、鞘部に配したポリオレフィンを熱接着成分として機能させるための熱処理温度は、溶融開始温度を考慮して適宜選択する。例えば、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレンを用いる場合は、130℃程度で熱接着させるとよい。なお、本発明の熱接着性複合繊維に用いるポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下の特性値を有するものであり、結晶性が高いことから、繊維の熱収縮率をバージンポリエステル樹脂を用いた場合と同等に低くすることができるため、鞘部に配したポリオレフィンを熱接着させる際の繊維の収縮を抑えられるため、不織布の地合い、風合いが良好なものとなるという効果を奏する。
【実施例0073】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(1)極限粘度
フェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合物を溶媒とし、20℃で、樹脂(0.2g)を試料として投入し、濃度0.5%溶液とし、常法に基づき20℃にて相対粘度〔ηcr〕を測定し、その値を用いて、下記式により極限粘度〔η〕を算出した。
[η]
【0074】
(2)ポリエステル樹脂の組成(ジエチレングリコール量)
重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
【0075】
(3)カルボキシル末端基濃度
ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
【0076】
(4)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度
前記の方法で測定した。
【0077】
(5)紡糸性
未延伸糸を得る際の、溶融紡糸時の糸切れの状況を、24時間連続して溶融紡糸を行った際の1トンあたりの糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
○:糸切れ回数が0~1回/トンであった。
△:糸切れ回数が1~2回/トンであった。
×:糸切れ回数が2回/トン以上であった。
【0078】
(5)延伸性
未延伸糸を延伸する際の糸切れの状況を、12時間連続して延伸を行った際の1トンあたりの切断回数により、以下のように3段階で評価した。
○:切断回数が0~1回/トンであった。
△:切断回数が1~2回/トンであった。
×:切断回数が2回以上/トンであった。
【0079】
(6)繊度
前述の方法で測定した。
【0080】
(7)強度
【0081】
前述の方法で測定した。
【0082】
(8)伸度
前述の方法で測定した。
【0083】
(9)不織布の風合い
得られた繊維をカード機(大和機工製SC-500DI3HC)に投入し、乾式ウェブを作製した。その後、連続熱処理機(辻井染機工業製NFD-500E2)を用いて、風量57m3/min、処理時間1min、130℃の温度にて熱処理し、サーマルボンド不織布を作製した。
作製した不織布を10名のパネラーが触り、官能評価にて判定した。
○:不織布の地合いが均一であり、風合いが良好である、もしくは嵩高性に富む、と感じる人数が8~10名である。
△:不織布の地合いが均一であり、風合いが良好である、もしくは嵩高性に富む、と感じる人数が3~7名である。
×:不織布の地合いが均一であり、風合いが良好である、もしくは嵩高性に富む、と感じる人数が0~2名である。
【0084】
〔再生ポリエステル樹脂の作製〕
再生ポリエステル樹脂A
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃及び圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
【0085】
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(ポリエステル樹脂を製造する工程で発生するポリエステル屑のペレット状のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.20となるように投入した。
【0086】
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂A(極限粘度:0.69)を得た。
【0087】
再生ポリエステル樹脂B
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
【0088】
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をロータリーバルブを介し約2時間かけて定量投入した。
【0089】
このとき、リサイクルポリエステル原料をG/Aが1.10となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unitとなるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で5時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂B(極限粘度:0.69)を得た。
【0090】
再生ポリエステル樹脂C
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(PETボトルを粉砕又は再溶融してペレット化したもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
【0091】
このとき、リサイクルポリエステル原料を、G/Aが1.16となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂C(極限粘度:0.69)を得た。
【0092】
再生ポリエステル樹脂D
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
【0093】
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.20となるように投入した。
【0094】
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き25μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.05質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度280℃で3時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂D(極限粘度:0.56)を得た。
【0095】
再生ポリエステル樹脂E
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
【0096】
エチレンテレフタレートオリゴマー30.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール2.5質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、70.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.06となるように投入した。
【0097】
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂E(極限粘度:0.69)を得た。
【0098】
再生ポリエステル樹脂F
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
【0099】
エチレンテレフタレートオリゴマー50.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール19.0質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、50.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.36となるように投入した。
【0100】
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂F(極限粘度:0.69)を得た。
【0101】
再生ポリエステル樹脂G
再生ポリエステル樹脂Aと同様にして、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
【0102】
エチレンテレフタレートオリゴマー50.0質量部をES缶に仕込み、続いてES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコール19.0質量部を投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、50.0質量部のリサイクルポリエステルをロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、リサイクルポリエステル原料(実施例1と同様のもの)をG/Aが1.36となるように投入した。
【0103】
その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、ES缶とPC缶との間に目開き30μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、酢酸コバルトを0.5×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.40質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂F(極限粘度:0.69)を得た。
【0104】
再生ポリエステル樹脂H
リサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)23.1質量部をエステル化反応器に仕込み、ES缶の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを2.6質量部投入した。ES缶の内温降下が止まったところより、34.6質量部のリサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)を約30分かけて定量投入したのち、エチレングリコール3.9質量部を追加で投入した。
【0105】
このとき、リサイクルポリエステル原料を、G/Aが1.35となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットしてPC缶へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターを通過させることにより濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、色調調整剤として酢酸コバルトを0.2×10-4mol/unit、二酸化チタン0.23質量部を加え、温度270℃で混練し、反応生成物を得た。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度270℃で5.5時間、重縮合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.69)を得た。
【0106】
バージンポリエステル樹脂(リサイクルポリエステル原料を使用しないポリエステル樹脂)
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー100.0質量部をPC缶に仕込み、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa、温度275℃で3時間、溶融重合反応を行い、バージンポリエステル樹脂(極限粘度0.69)を得た。
【0107】
再生ポリエステル樹脂A~Hおよびバージンポリエステル樹脂の特性値を表1に示す
【0108】
【表1】
表1から明らかなように、再生ポリエステル樹脂A~Dは、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量、平均昇圧速度が本発明で規定する範囲内のものであった。
【0109】
一方、再生ポリエステル樹脂Eでは、解重合反応時のG/Aが低いため、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
【0110】
再生ポリエステル樹脂Fでは、解重合反応時のG/Aが高いため、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
【0111】
〔熱接着性複合繊維の作製〕
実施例1
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂A、ポリオレフィン樹脂としてメルトフローレイトが20の高密度ポリエチレン樹脂を用いて、ポリエステル樹脂/ポリエチレン樹脂の質量比を60/40とし、紡糸温度280℃、紡糸速度(引取速度)1000m/分、吐出量1000g/分で、同芯状となる芯鞘複合ニードルを備えた2174孔の紡糸孔を有する紡糸口金を用いて紡糸し、未延伸糸を得た。この未延伸糸を、50℃の熱ロールを用いて2.7倍に延伸し、120℃の熱ロールで熱処理後、スタッフィングボックスを通して機械捲縮を付与し、制電成分を含有する油剤を付与した後に乾燥させ、切断することにより、繊度が2.2dtex、繊維長が44mmの短繊維を得た。
【0112】
実施例2
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の複合繊維を得た。
【0113】
実施例3
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の複合繊維を得た。
【0114】
実施例4
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の複合繊維を得た。
【0115】
実施例5
紡糸口金として偏芯状となる芯鞘複合ニードルを備えた2174孔の紡糸孔を有する紡糸口金を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5の複合繊維を得た。
【0116】
実施例6
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Hを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の複合繊維を得た。
【0117】
比較例1
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の複合繊維を得た。
【0118】
比較例2
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Fを用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の複合繊維を得た。
【0119】
比較例3
ポリエステル樹脂として再生ポリエステル樹脂Gを用いたこと以外は実施例1と同様にしたが、再生ポリエステル樹脂Gの平均昇圧速度が高いものであったため、紡糸操業ができず、熱接着性複合繊維を得ることができなかった。
【0120】
比較例4、5
ポリエステル樹脂/ポリエチレン樹脂の質量比を表2記載の比率としたこと以外は実施例1と同様にしたが、ポリエステル樹脂/ポリエチレン樹脂の質量比が一方に偏っていたため、紡糸操業ができず、熱接着性複合繊維を得ることができなかった。
【0121】
参考例
ポリエステル樹脂としてバージンポリエステル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、複合繊維を得た。
【0122】
【表2】
実施例および比較例等の評価・特性値を表2に示す。表2から明らかなように、実施例1~6で得られた熱接着性複合繊維は、紡糸・延伸性よく得ることができ、また、物性もバージンポリエステル樹脂を用いたものと遜色がなかった。また、得られた複合繊維からなる不織布の風合いも良好であった。
【0123】
一方、比較例1で得られた熱接着性複合繊維は、用いた再生ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基濃度が高かったため、紡糸性が悪く、また低強度・低伸度のものとなった。
【0124】
比較例2で得られた熱接着性複合繊維は、用いた再生ポリエステル繊維のジエチレングリコールの含有量が高かったため、やや紡糸・延伸性に劣り、低強度・高伸度のものとなった。また、得られた複合繊維からなる不織布の風合いも劣るものであった。