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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028079
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】精米用研削ロール及び精米方法
(51)【国際特許分類】
   B02B 3/06 20060101AFI20230224BHJP
   B02B 7/02 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B02B3/06 104
B02B7/02 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133557
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】重道 五二
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043AA03
4D043DA04
4D043DE14
4D043DE24
4D043DE56
4D043DE58
4D043FA06
4D043HA04
4D043HA07
4D043HB07
4D043JC05
4D043MA08
4D043MB06
4D043MB07
(57)【要約】
【課題】米粒を精白する際に発生する糠の付着を防止し、精米効率を向上させることができる精米用研削ロールを提供する。
【解決手段】台金の表面に超砥粒を電着してなる電着砥石であって、米粒を精白する際に使用する精米用研削ロールにおいて、前記台金は円筒状の外周面を有し、前記外周面には周方向であって回転方向に交差する方向に開口縁部を有する複数の凹部を形成し、前記台金の外周面に超砥粒を電着する。前記各凹部は超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有し、前記超砥粒はダイヤモンド砥粒又はcBN砥粒であることが好ましい。前記台金は、複数の環状円板を積層して円筒状に構成され、各環状円板の外周縁に形成される周期性を有する各凹凸の頂面により前記円筒状の外周面を形成することが好ましい。前記台金は、隣接する各環状円板の各凹凸が周方向に所定ピッチ位相がずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成されることが好ましい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金の表面に超砥粒を電着してなる電着砥石であって、米粒を精白する際に使用する精米用研削ロールにおいて、
前記台金は円筒状の外周面を有し、前記外周面には周方向であって回転方向に交差する方向に開口縁部を有する複数の凹部を形成し、
前記台金の前記外周面に前記超砥粒を電着することを特徴とする精米用研削ロール。
【請求項2】
前記各凹部は前記超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有し、
前記超砥粒はダイヤモンド砥粒又はcBN砥粒である請求項1に記載の精米用研削ロール。
【請求項3】
前記台金は、複数の環状円板を積層して円筒状に構成され、前記各環状円板の外周縁に形成される周期性を有する各凹凸の頂面により前記円筒状の外周面を形成する請求項1又は2に記載の精米用研削ロール。
【請求項4】
前記台金は、隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成される請求項3に記載の精米用研削ロール。
【請求項5】
前記台金は、隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に1/2ピッチずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成される請求項3又は4に記載の精米用研削ロール。
【請求項6】
前記各環状円板は、周方向の基準位置を示す位置目印を有し、前記基準位置に対する前記各凹凸の位相の周方向のずれピッチを示す位相目印を有してなり、
前記台金は、前記位置目印に基づいて前記各環状円板の周方向の基準位置を合わせ、前記位相目印に基づいて隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態となるよう、前記複数の環状円板を積層して構成される請求項4又は5に記載の精米用研削ロール。
【請求項7】
精米用研削ロールが精白筒内に配置され、前記精米用研削ロールの外周面と前記精白筒の内周面との間には精白室が形成されてなり、前記精白室の一端側に米粒の供給口、前記精白室の他端側に米粒の排出口を有し、前記排出口に圧力蓋が設けられる精米機であって、
請求項1乃至6のいずれかに記載の精米用研削ロールを用いて米粒を精白する前記精米機における精米方法において、
精米歩合90%までの米粒の領域は、前記精米用研削ロールの回転数が1,000~1,200rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が18~22アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御することを特徴とする精米方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒造米等の米粒を精白する際に使用する精米用研削ロール、及び前記精米用研削ロールを用いた精米方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酒造米を精白する酒造用精米機が知られている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
特許文献1,2に記載された酒造用精米機は、循環式の竪型精米機であって、竪配置された精米用研削ロールが精白筒内に配置されており、前記精米用研削ロールの外周面と前記精白筒の内周面との間に形成される精白室に米粒が繰り返し供給され、前記精白室内を移動する米粒を前記精米用研削ロールにより研削して精白する。
【0003】
ところで、前記精米用研削ロールは、台金表面にcBN砥粒やダイヤモンド砥粒などの超砥粒を電着してなる電着砥石であり、耐久性が高く、かつ、研削性能に優れる。
【0004】
ところが、前記電着砥石を用いた精米では砥石の表面に糠が付着しやく、特に精米初期に発生する赤糠(精米歩合90%程度までの間で発生する糠)は粘着性が高いため、前記電着砥石の表面に付着して目詰まりをおこし、精米効率が低下する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-98301号公報
【特許文献2】特許第5897301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、酒造米等の米粒を精白する際に発生する糠の付着を防止し、精米効率を向上させることができる精米用研削ロールを提供することを目的とする。
また、本発明は、前記精米用研削ロールを用いて酒造米等の米粒を精白するに際し、米粒を効率よく精白することができる精米方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
台金の表面に超砥粒を電着してなる電着砥石であって、米粒を精白する際に使用する精米用研削ロールにおいて、
前記台金は円筒状の外周面を有し、前記外周面には周方向であって回転方向に交差する方向に開口縁部を有する複数の凹部を形成し、
前記台金の前記外周面に前記超砥粒を電着することを特徴とする。
【0008】
本発明は、
前記台金の前記円筒状の外周面に形成される前記各凹部が、前記周方向に交差する方向に、直線状の開口縁部を有することが好ましい。
【0009】
また、本発明は、
前記台金の前記円筒状の外周面に形成される前記各凹部が、前記周方向に交差する方向に、前記回転方向に凸形状のV字状又は円弧状の開口縁部を有することが好ましい。
【0010】
本発明は、
前記各凹部が前記超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有し、
前記超砥粒がダイヤモンド砥粒又はcBN砥粒であることが好ましい。
【0011】
本発明は、
前記各凹部が前記超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有し、
前記各凹部の寸法を、前記台金の周方向に0.8mm、軸方向に0.8mm、半径方向(深さ)に0.8mmとし、前記超砥粒を、粒度#80とすることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、
前記各凹部が前記超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有し、
前記各凹部の寸法を、前記台金の周方向に0.2~2.0mm、軸方向に0.2~10.0mm、半径方向(深さ)に0.2~5.0mmの範囲とし、前記超砥粒を、粒度#30~#120の範囲とすることが好ましい。
【0013】
本発明は、
前記台金が、複数の環状円板を積層して円筒状に構成され、前記各環状円板の外周縁に形成される歯車状の周期性を有する各凹凸の頂面により前記円筒状の外周面を形成し、前記各凹凸の他の面により前記各凹部を形成することが好ましい。
【0014】
本発明は、
前記台金が、隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成されることが好ましい。
【0015】
本発明は、
前記台金が、隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に1/2ピッチずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成されることが好ましい。
【0016】
本発明は、
前記各環状円板が、周方向の基準位置を示す位置目印を有し、前記基準位置に対する前記各凹凸の位相の周方向のずれピッチ(ずれ量)を示す位相目印を有してなり、
前記台金は、前記位置目印に基づいて前記各環状円板の周方向の基準位置を合わせ、前記位相目印に基づいて隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態となるよう、前記複数の環状円板を積層して構成されることが好ましい。
【0017】
本発明は、
前記各環状円板が、周方向の基準位置を示す位置目印を有し、前記基準位置に対する前記各凹凸の位相の周方向のずれピッチ(ずれ量)を示す位相目印を有してなり、
前記台金は、前記位置目印が軸方向に一直線状となり、前記位相目印に基づいて隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態となるよう、前記複数の環状円板を積層して構成されることが好ましい。
ここで、本発明において、前記位相目印は無印を含むものである。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
精米用研削ロールが精白筒内に配置され、前記精米用研削ロールの外周面と前記精白筒の内周面との間には精白室が形成されてなり、前記精白室の一端側に米粒の供給口、前記精白室の他端側に米粒の排出口を有し、前記排出口に圧力蓋が設けられる精米機であって、
上記いずれかに記載の精米用研削ロールを用いて米粒を精白する前記精米機における精米方法において、
精米歩合90%までの米粒の領域(「赤糠」領域)は、前記精米用研削ロールの回転数が1,000~1,200rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が18~22アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明は、
精米歩合70%までの米粒の領域(「中糠」領域)は、前記精米用研削ロールの回転数が800~1,000rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が18~22アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御し、
精米歩合60%までの米粒の領域(「白糠」領域)は、前記精米用研削ロールの回転数が800~1,000rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が14~18アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御することが好ましい。
【0020】
また、本発明は、
精米歩合50%までの米粒の領域(「白糠」領域)は、前記精米用研削ロールの回転数が600~800rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が14~18アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御し、
精米歩合50%未満の米粒の領域(「白糠」領域)は、前記精米用研削ロールの回転数が600~800rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が10~14アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の精米用研削ロールは、前記台金が円筒状の外周面を有し、前記外周面には周方向であって回転方向に交差する方向に開口縁部を有する複数の凹部を形成し、前記台金の前記外周面に前記超砥粒を電着するので、前記台金の外周面に電着される前記超砥粒、及び前記台金の外周面に形成される前記各凹部の前記開口縁部によって米粒を精白することができる。
また、本発明の精米用研削ロールは、米粒を精白する際に発生する糠を、前記台金の円筒状の外周面に形成される前記各凹部に収容し、前記各凹部に収容した前記糠を、当該精米用研削ロールの回転にともなう遠心力や重力等により前記各凹部から除去することができる。
したがって、本発明の精米用研削ロールによれば、酒造米等の米粒を精白する際に発生する糠の付着を防止し、特に精米初期に発生する粘着性の高い赤糠であっても付着を防止でき、精米効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の精米用研削ロールは、米粒を精白する際に発生する糠が、前記台金の前記外周面に電着される前記超砥粒の上に堆積し付着した場合でも、前記台金の前記外周面に形成される前記各凹部の前記開口縁部は常に米粒と衝突して露出した状態となっており、前記各凹部の前記開口縁部によって米粒を精白できるので、精米効率が低下しない。
【0023】
本発明の精米用研削ロールは、前記台金の円筒状の外周面に複数の凹部を形成し、前記台金の前記円筒状の外周面に前記超砥粒を電着するので、前記台金の前記外周面に安価な小粒の超砥粒を電着した場合でも精米効率を向上させることができる。
【0024】
本発明の精米用研削ロールは、前記台金の円筒状の外周面であって、特に円弧面状の外周面に超砥粒を電着するので、米粒に対して分散して力を作用させることができ、台金表面に先鋭突起を有する場合のように、一部の米粒に対して力が集中して作用することがなく、精米品質が向上する。
【0025】
本発明の精米用研削ロールは、前記各凹部が前記超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有するものであれば、前記台金の外周面に電着される超砥粒層は、前記各凹部によって周方向に不連続となるため、米粒を精白する際に発生する糠、特に粘着性が高い赤糠であっても付着しにくく、精米効率が低下しない。
【0026】
本発明の精米用研削ロールは、前記台金が、複数の環状円板を積層して円筒状に構成され、前記各環状円板の外周縁に形成される歯車状の周期性を有する各凹凸の頂面により前記円筒状の外周面を形成し、前記各凹凸の他の面により前記各凹部を形成することとすれば、前記複数の環状円板の外周縁に形成される凹凸形状によって、前記台金の円筒状の外周面に前記複数の凹部を容易に形成することが可能となる。
【0027】
本発明の精米用研削ロールは、前記台金が、隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成されることとすれば、前記台金の前記外周面には、前記各凹部を前記各環状円板間で連続形状に又は非連続形状に形成することができる。
【0028】
本発明の精米用研削ロールは、前記台金が、隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に1/2ピッチずれた状態で、前記複数の環状円板を積層して構成されることとすれば、前記台金の前記外周面には、前記各凹部を前記各環状円板間で非連続形状に独立して形成することができる。
【0029】
本発明は、前記各環状円板が、周方向の基準位置を示す位置目印を有し、前記基準位置に対する前記各凹凸の位相の周方向のずれピッチを示す位相目印を有してなり、前記台金は、前記位置目印に基づいて、例えば前記位置目印が軸方向に一直線状となるよう、前記各環状円板の周方向の基準位置を合わせ、前記位相目印に基づいて隣接する前記各環状円板の前記各凹凸の位相が周方向に所定ピッチずれた状態となるよう、前記複数の環状円板を積層して構成されることとすれば、前記台金の前記外周面に前記複数の凹部を容易かつ正確に形成することが可能となる。
【0030】
また、本発明の精米方法は、精米用研削ロールが精白筒内に配置され、前記精米用研削ロールの外周面と前記精白筒の内周面との間には精白室が形成されてなり、前記精白室の一端側に米粒の供給口、前記精白室の他端側に米粒の排出口を有し、前記排出口に圧力蓋が設けられる精米機であって、上記いずれかに記載の精米用研削ロールを用いて米粒を精白する前記精米機における精米方法において、精米歩合90%までの米粒の領域(「赤糠」領域)は、前記精米用研削ロールの回転数が1,000~1,200rpmであり、かつ、前記精米用研削ロールを回転駆動するためのモータの電流値が18~22アンペアとなるよう、前記圧力蓋の圧迫度を制御するので、前記精米用研削ロールを用いて酒造米等の米粒を精白するに際し、米粒の赤糠領域において、米粒を効率よく精白することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】酒造用精米機の全体斜視図である。
図2図1の酒造用精米機の右側面図である。
図3】精白部の説明図である。
図4】精米用研削ロールの斜視図である。
図5】複数枚の環状円板を積層する様子の説明図である。
図6図4の精米用研削ロールの外周面の説明図である。
図7】第1環状円板の平面図である。
図8】第2環状円板の平面図である。
図9】環状円板を周方向に位置決めして積層する様子の説明図である。
図10】環状円板を種類毎に積層する様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は精米機の一例であって酒造用精米機の全体斜視図を示す。図2図1の酒造用精米機の右側面図であって一部断面図を示す。
【0033】
図1及び図2に示す酒造用精米機1は、循環式の竪型精米機であって、米粒を精白する精白部2、前記精白部2に米粒を供給する貯留タンク3、前記精白部2で精白された米粒を下方に導く万石部4、前記万石部4からの米粒を揚穀し該米粒を前記貯留タンク3に供給する揚穀部5及び当該精米機の制御部6を備える。
【0034】
前記精白部2、貯留タンク3及び万石部4は、精白部基台7上に設置される。また、前記揚穀部5は、揚穀部基台8に支持される状態で設置される。前記揚穀部基台8には上部作業台9が設けられ、前記精白部基台7には下部作業台10が設けられる。
【0035】
前記酒造用精米機1において、前記貯留タンク3に張り込まれた玄米は、前記精白部2において精白作用を受けた後、前記万石部4に至り、前記万石部4で糠が分離された米粒のみが前記揚穀部5の下部へ移送される。前記揚穀部5により揚穀された米粒は循環して再度前記貯留タンク3に貯留され、前記精白部2において再度の精白作用を受ける。前記酒造用精米機1では、玄米が目標とした歩留まり(精米歩合)に仕上がるまで前記循環が繰り返される。
【0036】
図3は本発明の実施の形態における精白部の説明図であって拡大断面図を示す。
本発明の実施の形態において、前記精白部2は、米粒を精白する精米用研削ロール21と、機台22に対し上下の軸受により鉛直軸まわりに回転可能に支持され前記精米用研削ロール21を一体回転可能に装着し、駆動モータ(図示せず)により回転駆動される竪軸23と、前記精米用研削ロール21及び前記竪軸23を収容し、前記精米用研削ロール21との間に精白室24を形成する精白筒25と、前記精白室24内の圧力を調節する圧力調整部26を備える。
【0037】
前記精米用研削ロール21は、台金の表面にダイヤモンド砥粒やcBN砥粒からなる超砥粒(図示省略)を電着してなる電着砥石であって、前記台金は円筒状の外周面を有し、前記外周面には、後述するように周方向であって回転方向に交差する方向に開口縁部(エッジ)を有する複数の凹部212を形成し、前記台金の前記外周面に前記超砥粒を電着する。
【0038】
前記精白筒25は、前記精白室24内に米粒が供給される供給口251を上側端部に有し、前記精白室24内で精白された米粒を排出する排出口252を下側一側部に有する。
また、前記圧力調整部26は、圧迫度を調整可能であって前記排出口252を塞ぐ圧力蓋261を備え、前記圧力蓋261の圧迫度によって前記精白室24内の圧力を調節する。
前記排出口252の側方には排出樋27が設けられており、前記精白室24内で精白され、前記排出口252から排出された米粒は、前記排出樋27から前記万石部4へと案内される。
【0039】
図4は本発明の実施の形態における精米用研削ロールの斜視図を示す。図5は複数枚の環状円板を積層する様子の説明図を示す。図6図4の精米用研削ロールの外周面の説明図であって一部拡大図を示す。
本発明の実施の形態において、前記精米用研削ロール21は、前記台金が、複数枚の環状円板211を軸方向に積層して円筒状に構成される。
前記各環状円板211には、外周縁に歯車状の周期性を有する凹凸2111が形成され、前記台金は、前記各環状円板211の前記各凹凸2111の頂面2111Aにより前記円筒状の外周面を構成し、前記各凹凸2111の他の面により前記複数の凹部212を構成する。
【0040】
ここでは、前記各環状円板211の外周縁に形成される各凹凸2111は、平面視で略矩形形状であって、図5の左図(図5の右図のC部拡大図)では、前記精米用研削ロール21は、前記台金が、隣接する前記各環状円板211の前記各凹凸2111の位相が互いに周方向に1/2ピッチずれた状態で積層して構成される。そして、図6に示すように、前記台金の円筒状の外周面には、周方向であって矢印で示す回転方向に交差する方向に、直線状に開口縁部を有する複数の凹部212が、軸方向であって前記各環状円板211,211間で非連続形状に独立して形成される。
【0041】
本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、前記台金が、複数の環状円板211を積層して円筒状に構成され、前記各環状円板211の外周縁に形成される歯車状の周期性を有する前記各凹凸2111の頂面2111Aにより前記円筒状の外周面を形成し、前記各凹凸2111の他の面により前記各凹部212を形成するので、前記複数の環状円板211の外周縁に形成される凹凸形状によって、前記台金の円筒状の外周面に前記複数の凹部212を容易に形成することが可能となる。
【0042】
なお、前記精米用研削ロール21は、前記台金が、隣接する前記各環状円板211の前記各凹凸2111の位相が規則的に所定ピッチ、例えば1/3ピッチ、2/3ピッチ等、ずれた状態で、前記複数の環状円板211を積層して構成されるものであれば、前記台金の前記円筒状の外周面には、周方向に交差する方向に、直線状に開口縁部を有する前記複数の凹部212を、軸方向であって前記各環状円板211,211間で連続形状に形成することもできる。
【0043】
前記精米用研削ロール21において、前記台金の円筒状の外周面に形成される前記複数の凹部212は、前記台金の表面に電着される超砥粒(図示省略)の粒度よりも大きな寸法を有する。
一例として、前記各凹部212の寸法を、前記台金の周方向に0.2~2.0mm、軸方向に0.2~10.0mm、半径方向(深さ)に0.2~5.0mmの範囲とし、前記超砥粒を、粒度#30~#120の範囲とすることができる。また、好ましくは、前記各凹部212の寸法を、前記台金の周方向に0.8mm、軸方向に0.8mm、半径方向(深さ)に0.8mmとし、前記超砥粒を、#80とすることができる。
【0044】
前記精米用研削ロール21は、前記台金の少なくとも前記外周面に前記超砥粒を電着することができる。
また、前記精米用研削ロール21は、前記台金の前記外周面、及び前記外周面に形成される前記各凹部212に前記超砥粒を電着することもできる。
【0045】
ここで、前記環状円板211は金属製であることが好ましい。前記環状円板211が金属製であれば、レーザ加工やタレットパンチプレス加工、旋盤加工等により前記環状円板211の外周縁に歯車状の凹凸2111を形成することができる。
前記環状円板211はセラミック製や樹脂製等とすることもできる。
【0046】
前記精米用研削ロール21は、前記台金の前記円筒状の外周面に形成される前記複数の凹部212が、前記周方向に交差する方向に、例えば前記回転方向に凸形状のV字状又は円弧状の開口縁部を有するものとすることもできる。
前記複数の凹部212が、前記周方向に交差する方向に、前記回転方向に凸形状のV字状又は円弧状の開口縁部を有するものであれば、直線状の開口縁部を有する場合に比べ、開口縁部を長くできるため、精米効率が向上する。
なお、前記各凹部212の内部形状は、前記各環状円板211の外周縁に形成される前記各凹凸2111の形状により任意に構成することができる。
【0047】
図7は第1環状円板の平面図を示す。図8は第2環状円板の平面図を示す。
本発明の実施の形態において、前記各環状円板211は、第1環状円板211Aと第2環状円板211Bの2種類に区別される。
【0048】
図7の例において、前記第1環状円板211Aは、積層する際の周方向の基準位置を示す位置目印2112を内周面に突出状に有し、前記基準位置に対する前記各凹凸2111の位相の周方向のピッチのずれ量(ずれピッチ)を示す位相目印2113を内周面に切欠き状に有する。
【0049】
図8の例において、前記第2環状円板211Bは、積層する際の周方向の基準位置を示す位置目印2112を内周面に突出状に有し、前記基準位置に対する前記各凹凸2111の位相の周方向のずれピッチを示す位相目印を無印として有する。
【0050】
ここでは、前記第1環状円板211Aと前記第2環状円板211Bは、前記位置目印2112に対する前記各凹凸2111の位相が、互いに周方向に1/2ピッチずれている場合を例とする。
なお、本発明の実施の形態において、前記位相目印は無印を含むものである。
【0051】
前記2種類の環状円板211は、前記基準位置に対する前記各凹凸2111の位相の周方向のすれピッチが異なるものであり、前記位相目印により、前記第1環状円板211Aであるか、又は前記第2環状円板211Bであるかを区別して、前記第1環状円板211Aと前記第2環状円板211Bを交互に積層することができる。
【0052】
図9は、図4のA部拡大図であって、複数枚の環状円板を周方向に位置決めして積層する様子の説明図を示す。
図9に示すように、前記精米用研削ロール21の台金は、前記位置目印2112が軸方向に一直線状となるよう、前記複数枚の環状円板211を積層して構成される。
【0053】
図10は、図4のB部を反対側から見た拡大図であって、複数の環状円板を種類毎に積層する様子の説明図を示す。
図10に示すように、前記精米用研削ロール21の台金は、前記位相目印2113により第1環状円板211Aと第2環状円板211Bを区別し、隣接する前記第1環状円板211Aと第2環状円板211Bの前記各凹凸2111の位相が、互いに周方向に1/2ピッチずれた状態となるよう、前記2種類の環状円板211を積層して構成される。
【0054】
本発明の実施の形態において、前記精米用研削ロール21は、前記台金が、前記各環状円板211が前記位置目印と前記位相目印を有し、前記位置目印に基づいて前記各環状円板211の周方向の基準位置を合わせ、前記位相目印に基づいて隣接する前記各環状円板211の前記各凹凸2111の位相が、互いに周方向に1/2ピッチずれた状態となるよう、前記複数の環状円板211を積層して構成されるので、前記台金の前記円筒状の外周面に、前記複数の凹部212を容易かつ正確に形成することができる。
【0055】
なお、前記各環状円板211を、前記各凹凸2111の周方向のずれピッチの違いにより3種類以上に区別し、隣接する前記各環状円板211の前記各凹凸2111の位相が、互いに周方向に所定ピッチずれた状態となるよう、前記3種類以上の環状円板211を積層することで、前記台金を構成することもできる。
【0056】
本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、前記台金が円筒状の外周面を有し、前記外周面には周方向であって回転方向に交差する方向に開口縁部を有する複数の凹部212を形成し、前記台金の前記外周面212に前記超砥粒を電着するので、前記台金の外周面に電着される前記超砥粒、及び前記台金の外周面に形成される前記各凹部212の前記開口縁部によって米粒を精白することができる。
また、本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、米粒を精白する際に発生する糠を、前記台金の円筒状の外周面に形成される前記各凹部212に収容し、前記各凹部212に収容した前記糠を、当該精米用研削ロール21の回転にともなう遠心力や重力等により前記各凹部212から除去することができる。
したがって、本発明の実施の形態における精米用研削ロール21によれば、酒造米等の米粒を精白する際に発生する糠の付着を防止し、特に精米初期に発生する粘着性の高い赤糠であっても付着を防止でき、精米効率を向上させることができる。
【0057】
本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、米粒を精白する際に発生する糠が、前記台金の前記外周面に電着される前記超砥粒の上に堆積し付着した場合でも、前記台金の前記外周面に形成される前記各凹部212の前記開口縁部は常に米粒と衝突して露出した状態となっており、前記各凹部212の前記開口縁部によって米粒を精白できるので、精米効率が低下しない。
【0058】
本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、前記台金の円筒状の外周面に複数の凹部212を形成し、前記台金の前記円筒状の外周面に前記超砥粒を電着するので、前記台金の前記外周面に安価な小粒の超砥粒を電着した場合でも精米効率を向上させることができる。
【0059】
本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、前記台金の円筒状の外周面であって、前記台金の円弧面状の外周面に超砥粒を電着するので、精白室内を流動する米粒に対して分散して力を作用させることができるので、台金表面に先鋭突起を有する場合のように、一部の米粒に対して力が集中して作用することがなく、精米品質が向上する。
【0060】
本発明の実施の形態における精米用研削ロール21は、前記各凹部212が前記超砥粒の粒度よりも大きな寸法を有するので、前記台金の外周面に電着される超砥粒層は、前記各凹部212によって周方向に不連続となるため、米粒を精白する際に発生する糠、特に粘着性が高い赤糠であっても付着しにくく、精米効率が低下しない。
【0061】
本発明の実施の形態において、図1及び図2に示す酒造用精米機では、前記精米用研削ロール21を用いて、例えば以下の条件で米粒を精白することができる。
(1)精米歩合90%までの領域(「赤糠」領域):
前記精米用研削ロール21の回転数が1,000~1,200rpmであり、かつ、前記精米用研削ロール21を回転駆動するための駆動モータの電流値が18~22アンペアとなるよう、前記精白室24の前記排出口252を塞ぐ前記圧力蓋261の圧迫度を制御する。
【0062】
上記本発明の実施の形態における精米方法によれば、前記精米用研削ロール21を用いて酒造米等の米粒を精白するに際し、前記精米用研削ロール21に赤糠が付着することがなく、米粒の赤糠領域において、米粒を効率よく精白することができる。
【0063】
(2)精米歩合70%までの領域(「中糠」領域):
前記精米用研削ロール21の回転数が800~1,000rpmであり、かつ、前記精米用研削ロール21を回転駆動するための駆動モータの電流値が18~22アンペアとなるよう、前記圧力蓋261の圧迫度を制御する。
【0064】
(3)精米歩合60%までの領域(「白糠」領域):
前記精米用研削ロール21の回転数を800~1,000rpmであり、かつ、前記精米用研削ロール21を回転駆動するための駆動モータの電流値が14~18アンペアとなるよう、前記圧力蓋261の圧迫度を制御する。
【0065】
(4)精米歩合50%までの領域(「白糠」領域):
前記精米用研削ロール21の回転数が600~800rpmであり、かつ、前記精米用研削ロール21を回転駆動するための駆動モータの電流値が14~18アンペアとなるよう、前記圧力蓋261の圧迫度を制御する。
【0066】
(5)精米歩合50%未満の領域(「白糠」領域):
前記精米用研削ロール21の回転数が600~800rpmであり、かつ、前記精米用研削ロール21を回転駆動するための駆動モータの電流値が10~14アンペアとなるよう、前記圧力蓋261の圧迫度を制御する。
【0067】
上記本発明の実施の形態における精米方法によれば、前記精米用研削ロール21を用いて酒造米等の米粒を精白するに際し、赤糠に続く中糠、白糠も前記精米用研削ロール21に付着することがなく、米粒を効率よく精白することができる。
【0068】
上記本発明の実施の形態では、酒造用精米機を例として説明したが、前記精米用研削ロール21は、酒造用以外の精米機でも使用することができる。
また、上記本発明の実施の形態では、竪型精米機を例として説明したが、前記精米用研削ロール21は、横型精米機で使用することもできる。
【0069】
本発明の実施の形態において、前記精米用研削ロール21の台金は、複数枚の環状円板211を積層して円筒状に構成したが、1つの円筒体により構成することもできる。その場合、前記円筒体の外周面にフライス加工や転造加工等により前記複数の凹部212を形成することができる。
【0070】
本発明は、上記実施の形態に限るものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の精米用研削ロールは、酒造米等の米粒を精白する際に発生する糠の付着を防止し、精米効率を向上させることができるものであり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 酒造用精米機
2 精白部
21 精米用研削ロール
211 環状円板
211A 第1環状円板
211B 第2環状円板
2111 凹凸
2111A 頂面
2112 位置目印
2113 位相目印
212 凹部
22 機台
23 竪軸
24 精白室
25 精白筒
251 供給口
252 排出口
26 圧力調整部
261 圧力蓋
27 排出樋
3 貯留タンク
4 万石部
5 揚穀部
6 制御部
7 精白部基台
8 揚穀部基台
9 上部作業台
10 下部作業台

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10