(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028112
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
F16J15/10 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133604
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】緒方 千代太
(72)【発明者】
【氏名】牛島 慎二
(72)【発明者】
【氏名】三木 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山部 匡央
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA05
3J040HA03
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】低温環境下で使用される場合又は低反力であってもシール性能の低下を抑制する。
【解決手段】ガスケット1は、本体部10と、溝の高圧側となる側面に接触するように本体部10から突出する高圧側突起部20と、溝の低圧側となる側面に向かって本体部10から突出する低圧側突起部30とを備えている。本体部10は、上側接触面11と下側接触面12とを有している。高圧側突起部20は、本体部10の延び方向に沿って延びている。また、低圧側突起部30は、本体部10の延び方向に沿って延びており、ガスケット1の取付状態において、溝の低圧側となる側面に対して反力を発生しないように形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材間の隙間に開放する溝に取り付けられて前記隙間の閉塞を図るガスケットであって、
前記隙間を介して対向する面に接触するように形成された本体部と、
前記溝の互いに対向する側面のうちの高圧側となる側面に接触するように前記本体部から突出する部分である高圧側突起部と、
前記溝の互いに対向する側面のうちの低圧側となる側面に向かって前記本体部から突出する部分である低圧側突起部とを備え、
前記本体部は、前記隙間を介して対向する面の一方の面に接触するように形成されている面である一方側接触面と、前記隙間を介して対向する面の他方の面に接触するように形成されている面である他方側接触面とを有しており、
前記高圧側突起部は、前記本体部の延び方向に沿って延びており、
前記低圧側突起部は、前記本体部の延び方向に沿って延びており、前記ガスケットの取付状態において前記溝の低圧側となる側面に対して反力を発生しないように形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記低圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において前記溝の互いに対向する側面の他方に接触しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記高圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、前記本体部の中心が前記溝の互いに対向する側面の間の中央又は該中央近傍に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記高圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、前記本体部の中心が前記溝の互いに対向する側面の間の中央よりも前記低圧側となる側面の側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記高圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、先端部が基端部よりも前記溝の深さ方向に沿った断面が小さくなっていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスケット。
【請求項6】
前記低圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、先端部が基端部よりも前記溝の深さ方向に沿った断面が小さくなっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のガスケット。
【請求項7】
前記高圧側突起部と前記低圧側突起部とは、前記本体部を介して対向するように設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、密封された空間を形成するために、ハウジングとカバーや管と管等の相対移動不能に互いに固定される複数の部材間の隙間の密封を図るために密封装置としてガスケットが使用されている。例えば、燃料電池車や電気自動車、ハイブリット車等のバッテリのケース内の空間を密封するためにガスケットは使用されている。このような従来のガスケットには、固定される部材の夫々又は一方に形成されている環状の溝に取り付けられ、この部材間の隙間の閉塞を図るものがある。
【0003】
このようなガスケットには、溝に取り付けられたガスケットの姿勢を安定させることができるように、ガスケットの両側面に対をなす突起が形成されているものがある。この一対の突起は、ガスケットが溝に取り付けられると溝の側面に押圧され、これにより溝においてガスケットの姿勢が安定するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、従来のガスケットには、低温環境で使用されるものや、樹脂やアルミ材等の剛性の低い材料から形成された部材間の隙間の密封のために用いられるものがある。剛性の低い部材間に用いられるガスケットには、例えばガスケットが接触するシール面に加わるガスケットの反力(荷重)によって部材が変形することを避けるために、低反力(低荷重)となるガスケットが求められている。
【0006】
また、低温環境下では、ゴム材の硬さが増し、ゴム材の弾性が低下する。このため、使用状態においてガスケットが密封対象物から圧力を受けて、ガスケットが溝において移動又は変形した際に、ゴム材の弾性の低下からシール面へのガスケットの接触圧力が低くなり、シール性能が低下してしまう場合がある。
【0007】
また、ガスケットの反力を低くするために、又は、低温環境下においても硬度が高くなり過ぎることがないように、硬度の低いゴム材で作られたガスケットは、反力が低く、使用状態においてガスケットが密封対象物から圧力を受けて、ガスケットが溝において移動又は変形した際に、シール面へのガスケットの接触圧力が低くなり、シール性能が低下してしまう場合がある。
【0008】
上述のように、従来のガスケットには溝におけるガスケットの姿勢を安定させるための構造を有するものがあるが、上述のように、低温環境下においてシール性能が低下する場合があり、また、低反力のガスケットにおいてはシール性能が低下する場合がある。このため、従来のガスケットに対しては、低温環境下で使用される場合であっても、また、低反力のガスケットであっても、シール性能が低下することを防止できる構成が求められている。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、低温環境下で使用される場合であっても、又は低反力のガスケットであっても、シール性能が低下することを抑制することができるガスケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るガスケットは、部材間の隙間に開放する溝に取り付けられて前記隙間の閉塞を図るガスケットであって、前記隙間を介して対向する面に接触するように形成された本体部と、前記溝の互いに対向する側面のうちの高圧側となる側面に接触するように前記本体部から突出する部分である高圧側突起部と、前記溝の互いに対向する側面のうちの低圧側となる側面に向かって前記本体部から突出する部分である低圧側突起部とを備え、前記本体部は、前記隙間を介して対向する面の一方の面に接触するように形成されている面である一方側接触面と、前記隙間を介して対向する面の他方の面に接触するように形成されている面である他方側接触面とを有しており、前記高圧側突起部は、前記本体部の延び方向に沿って延びており、前記低圧側突起部は、前記本体部の延び方向に沿って延びており、前記ガスケットの取付状態において前記溝の低圧側となる側面に対して反力を発生しないように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記低圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において前記溝の互いに対向する側面の他方に接触しないように形成されている。
【0012】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記高圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、前記本体部の中心が前記溝の互いに対向する側面の間の中央又は該中央近傍に位置するように形成されている。
【0013】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記高圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、前記本体部の中心が前記溝の互いに対向する側面の間の中央よりも前記低圧側となる側面の側に位置するように形成されている。
【0014】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記高圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、先端部が基端部よりも前記溝の深さ方向に沿った断面が小さくなっている。
【0015】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記低圧側突起部は、前記ガスケットの取付状態において、先端部が基端部よりも前記溝の深さ方向に沿った断面が小さくなっている。
【0016】
本発明の一態様に係るガスケットにおいて、前記高圧側突起部と前記低圧側突起部とは、前記本体部を介して対向するように設けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るガスケットによれば、低温環境下で使用される場合であっても、又は低反力のガスケットであっても、シール性能が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るガスケットの平面図である。
【
図2】
図1に示すガスケットのA-A線における断面を示す断面図である。
【
図3】ケースの溝に取り付けられた状態のガスケットを示す図である。
【
図4】ケースにカバーが取り付けられて、ケースとカバーとの間の隙間を閉塞している使用状態のガスケットを示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るガスケットの変形例のA-A線における断面を示す断面図である。
【
図6】ケースの溝に取り付けられた状態のガスケットを示す図である。
【
図7】ケースにカバーが取り付けられて、ケースとカバーとの間の隙間を閉塞している使用状態のガスケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1の平面図であり、
図2は、
図1に示すガスケット1のA-A線における断面を示す断面図である。つまり、
図2は、ガスケット1が延びる延び方向に直交する断面を示している。以下、説明の便宜上、矢印a(
図2参照)方向の側(一方の側)を上側とし、矢印b(
図2参照)方向の側(他方の側)を下側とする。矢印a,bは夫々、1つの直線に平行に延びており、平面視においてガスケット1が囲む空間Sが開口する方向に延びている。
図1は上側から見たガスケット1を示している。また、上側及び下側に直交し、ガスケット1が囲む空間S側(
図1,2の矢印c方向側)を内周側とし、内周側とは反対側(
図1,2の矢印d方向側)を外周側とする。なお、上述の上側や下側等は、空間におけるガスケット1の姿勢を限定するものではなく、ガスケット1は空間においてどのような姿勢も取り得る。
【0021】
図1,2に示すように、本発明の実施の形態に係るガスケット1は、部材間の隙間に開放する溝に取り付けられてこの隙間の閉塞を図るガスケットである。ガスケット1は、部材間の隙間を介して対向する面に接触するように形成された本体部10と、部材間の隙間に開放する溝の互いに対向する側面のうちの高圧側となる側面に接触するように本体部10から突出する部分である高圧側突起部20と、部材間の隙間に開放する溝の互いに対向する側面のうちの低圧側となる側面に向かって本体部10から突出する部分である低圧側突起部30とを備えている。本体部10は、部材間の隙間を介して対向する面の一方の面(上側の面)に接触するように形成されている面である一方側接触面としての上側接触面11と、部材間の隙間を介して対向する面の他方の面(下側の面)に接触するように形成されている面である他方側接触面としての下側接触面12とを有している。高圧側突起部20は、
図1に示すように、本体部10の延び方向に沿って延びている。また、低圧側突起部30は、
図1に示すように、本体部10の延び方向に沿って延びており、ガスケット1の取付状態において、部材間の隙間に開放する溝の低圧側となる側面に対して反力を発生しないように形成されている。以下、ガスケット1について具体的に説明する。
【0022】
図1に示すように、ガスケット1は環状に延びており、本体部10、高圧側突起部20、及び低圧側突起部30も環状に延びている。ガスケット1はゴム状弾性体から一体に作られており、本体部10、高圧側突起部20、及び低圧側突起部30は、同一の材料から形成された一体のガスケット1の部分である。ガスケット1の延び方向に直交する断面(以下、単に断面ともいう。)の形状(以下、単に断面形状ともいう。)は、延び方向に亘って(全周に亘って)一様又は略一様の形状となっている。ガスケット1のゴム状弾性体は、低硬度のゴム状弾性体である。なお、ガスケット1のゴム状弾性体は、低硬度のゴム状弾性体でなくてもよい。
【0023】
ガスケット1の断面形状は、具体的には
図2に示すような形状となっている。本体部10は、断面において、仮想直線xに沿って延びており、例えば、仮想直線xに平行又は略平行に延びており、矩形又は略矩形を呈している。また、本体部10は、断面において、仮想直線xが中心線又は略中心線となるような形状になっている。本体部10の断面形状は、例えば
図2に示すように、本体部10の中央又は中央近傍から上側接触面11に向かって先細になるような形状となっており、本体部10の中央又は中央近傍から下側接触面12に向かって先細になるような形状となっている。本体部10の断面形状はこれに限らず、例えば、本体部10の中央又は中央近傍から上側接触面11又は下側接触面12に向かって輪郭がR形状(円弧状)となるように形成してもよい。
【0024】
また、ガスケット1が溝に取り付けられて部材間に挟まれた後述するガスケット1の使用状態において、上側接触面11は、部材間の隙間を介して対向する面のうちの上側の面に接触するように形成されている。一方、ガスケット1の使用状態において、下側接触面12は、部材間の隙間を介して対向する面のうちの下側の面に接触するように形成されている。上側接触面11は、本体部10に全周に亘って環状に形成されており、例えば、
図2に示すように、断面における輪郭が仮想直線xに直交又は略直交するような形状となっており、
図1に示すように上側接触面11は平面又は略平面状になるように形成されている。下側接触面12も同様に、本体部10に全周に亘って環状に形成されており、例えば、
図2に示すように、断面における輪郭が仮想直線xに直交又は略直交するような形状となっており、
図1に示すように下側接触面12は平面又は略平面状になるように形成されている。
【0025】
高圧側突起部20は、例えば、ガスケット1の内縁側(内周側)において、本体部10に沿って本体部10の全周に亘って環状に形成されており、後述するガスケット1の取付状態において、ガスケット1が取り付けられる溝の互いに対向する側面のうちの密封ガスや作動油等の密封対象物の圧力が作用して高圧側となる側の面に向かって本体部10から突出している。高圧側突起部20は、例えば
図2に示すように、本体部10の仮想直線x方向における中央又は略中央から突出している。また、高圧側突起部20は、上述のように、ガスケット1の取付状態において、溝の高圧側となる側面に接触するようになっている。具体的には、高圧側突起部20の先端の面である先端面21が、ガスケット1の取付状態において、溝の高圧側となる側面に接触するようになっている。なお、ガスケット1の外側にシール対象物がある場合には、ガスケット1の外縁側(外周側)に高圧側突起部20が形成される。
【0026】
高圧側突起部20は、先端面21に向かって先細になっており、
図2に示すように、高圧側突起部20の断面形状は、先端面21に向かうに連れて幅が狭くなっている。なお、高圧側突起部20の幅は、仮想直線x方向における上側面22と下側面23との間の間隔である。なお、上側面22は、高圧側突起部20の上側に面する面であり、下側面23は、高圧側突起部20の下側に面する面である。なお、高圧側突起部20は、ガスケット1の取付状態において、その先端部(先端面21)が基端部よりも溝51(
図3参照)の深さ方向に沿った断面が小さくなるように形成されていればよく、先細り形状の他にも、先端部の輪郭がR形状(円弧状)となるように形成してもよい。
【0027】
図2に示すように、断面において、高圧側突起部20の上側面22は、仮想直線xに対して下側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における上側面22の輪郭は、直線又は略直線となっている。上側面22は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0028】
また、
図2に示すように、断面において、高圧側突起部20の下側面23は、仮想直線xに対して上側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における下側面23の輪郭は、直線又は略直線となっている。下側面23は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0029】
また、
図2に示すように、断面において、高圧側突起部20の先端面21は、仮想直線xに沿う輪郭を描くように形成されており、断面における先端面21の輪郭は、仮想直線xに平行又は略平行な直線又は略直線となっている。先端面21は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0030】
高圧側突起部20は、後述するガスケット1の取付状態において、本体部10の中心がガスケット1が取り付けられる溝の互いに対向する側面の間の中央又は該中央近傍に位置するように形成されている。具体的には、ガスケット1の取付状態において、本体部10の中心線(仮想直線x)が溝の高圧側となる側面と溝の低圧側となる側面との間の中央又は該中央近傍に位置するように、高圧側突起部20の仮想直線xに直交する方向の長さは設定されている。
【0031】
低圧側突起部30は、例えば、ガスケット1の外縁側(外周側)において、本体部10に沿って本体部10の全周に亘って環状に形成されており、後述するガスケット1の取付状態において、ガスケット1が取り付けられる溝の互いに対向する側面のうちの密封ガスや作動油等の密封対象物の圧力が作用して高圧側となる側とは反対側の低圧側となる側の面に向かって本体部10から突出している。低圧側突起部30は、高圧側突起部20に本体部10を介して対向するように設けられており、低圧側突起部30は、例えば
図2に示すように、本体部10の仮想直線x方向における中央又は略中央から突出している。また、低圧側突起部30は、上述のように、ガスケット1の取付状態において、溝の低圧側となる側面に対して反力を発生しないようになっている。具体的には、低圧側突起部30の先端の面である先端面31は、ガスケット1の取付状態において、溝の低圧側となる側面に接触しないようになっている。または、
図3に示すように、低圧側突起部30の先端面31は、ガスケット1の取付状態において、溝の低圧側となる側面に接触するようになっているが、圧側突起部30の先端面31は、溝の低圧側となる側面に対して押圧されず、溝の低圧側となる側面に対して反力を発生しないようになっている。なお、ガスケット1の外側にシール対象物がある場合には、ガスケット1の内縁側(内周側)に低圧側突起部30が形成される。
【0032】
低圧側突起部30は、先端面31に向かって先細になっており、
図2に示すように、低圧側突起部30の断面形状は、先端面31に向かうに連れて幅が狭くなっている。なお、低圧側突起部30の幅は、仮想直線x方向における上側面32と下側面33との間の間隔である。なお、上側面32は、低圧側突起部30の上側に面する面であり、下側面33は、低圧側突起部30の下側に面する面である。なお、低圧側突起部30は、ガスケット1の取付状態において、その先端部(先端面31)が基端部よりも溝51(
図3参照)の深さ方向に沿った断面が小さくなるように形成されていればよく、先細り形状の他にも、先端部の輪郭がR形状(円弧状)となるように形成してもよい。
【0033】
図2に示すように、断面において、低圧側突起部30の上側面32は、仮想直線xに対して下側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における上側面32の輪郭は、直線又は略直線となっている。上側面32は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0034】
また、
図2に示すように、断面において、低圧側突起部30の下側面33は、仮想直線xに対して上側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における下側面33の輪郭は、直線又は略直線となっている。下側面33は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0035】
また、
図2に示すように、断面において、低圧側突起部30の先端面31は、仮想直線xに沿う輪郭を描くように形成されており、断面における先端面31の輪郭は、仮想直線xに平行又は略平行な直線又は略直線となっている。先端面31は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0036】
上述のように、低圧側突起部30は、ガスケット1の取付状態において、溝の低圧側となる側面に先端面31が接触しないようになっており、または、溝の低圧側となる側面に先端面31が接触するが、溝の低圧側となる側面に対して先端面31は押圧されず、溝の低圧側となる側面に対して低圧側突起部30は反力を発生しないようになっている。このため、低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さは、高圧側突起部20の仮想直線xに直交する方向の長さよりも短くなっている。低圧側突起部30が、ガスケット1の取付状態において、溝の低圧側となる側面に対して先端面31が押圧されず、溝の低圧側となる側面に対して低圧側突起部30が反力を発生しないようになっている場合、低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さは、高圧側突起部20の仮想直線xに直交する方向の長さよりも僅かに短くなっている。
【0037】
図2に示すように、ガスケット1の断面において、本体部10は、中心線(仮想直線x)に関して対称又は略対称となっており、また、本体部10は、本体部10の仮想直線x方向の中央において仮想直線xに直交する直線に関して対称又は略対称となっている。また、ガスケット1の断面において、高圧側突起部20は、仮想直線x方向の中央に延びる直線(中心線)に関して対称又は略対称となっている。また、ガスケット1の断面において、低圧側突起部30は、仮想直線x方向の中央に延びる直線(中心線)に関して対称又は略対称となっている。また、ガスケット1は、断面において、中心線(仮想直線x)に関して対称又は略対称となっており、また、ガスケット1は、ガスケット1の仮想直線x方向の幅の中央に直交する直線に関して対称又は略対称となっている。なお、ガスケット1の断面において、ガスケット1又は各部分は、上述のように対称になっていなくてもよい。
【0038】
次いで、上述の構成を有するガスケット1の作用について説明する。
【0039】
ガスケット1は、上述のように、部材間の隙間に開放する溝に取り付けられてこの部材間の隙間の閉塞を図るために用いられる。ガスケット1は、例えば、
図3,4に示すように、ケース50及びカバー60の一対の部材間においてこの部材間の内部の空間を密封するために用いられる。なお、
図3は、ケース50の溝51に取り付けられた状態のガスケット1を示す図であり、
図4は、ケース50にカバー60が取り付け固定されて、ケース50とカバー60との間の隙間を閉塞している使用状態のガスケット1を示す図である。
【0040】
ケース50及びカバー60は、例えば燃料電池やリチウムイオン電池等の電池のハウジングを形成する部材であり、ケース50の内部に燃料電池等が収容される。なお、ガスケット1が用いられるガスケット1の取付対象は、電池のハウジングに限られない。また、ガスケット1の取付対象は一対の部材に限られず、ガスケット1は、3つ以上の部材の間の隙間の閉塞を図るためにも用いられる。
【0041】
図3に示すように、例えばケース50の外縁部52には環状の溝51が形成されており、ガスケット1はこの溝51に取り付けられるようになっている。溝51は、ケース50の外縁部52の上面52aから凹んでおり、
図4に示すように、ケース50とカバー60との間の隙間に開放する。また、溝51は、
図3に示すように、断面矩形又は略矩形であり、互いに対向する一対の側面51a,51bを有しており、また、側面51a,51bの間に広がる底面51cを有している。側面51aはケース50の内部側に位置する側面であり、
図4に示す使用状態にいて、内部の密封対象物から圧力を受けて高圧になる高圧側となる側面である。また、側面51bはケース50の外部側に位置する側面であり、高圧側となる側面の反対側の低圧側となる側面である。以下、高圧側となる側面51aを高圧側側面51aといい、低圧側となる側面51bを低圧側側面51bという。なお、溝51は、ケース50ではなくカバー60に形成されていてもよい。また、ケース50及びカバー60に溝が形成されていてもよい。なお、溝51の断面形状は矩形又は略矩形に限られない。
【0042】
図3に示すように、ケース50の溝51にガスケット1が取り付けられた状態において、高圧側突起部20の先端面21は、溝51の高圧側側面51aに接触するようになっている。この高圧側突起部20の先端面21の接触により、ガスケット1は、ケース50の溝51に所定の力で保持される。これにより、ガスケット1の溝51からの脱落の防止が図られる。ガスケット1を溝51に取り付ける際に、ケース50の上面52a又は溝51の高圧側側面51aに高圧側突起部20は接触するが、高圧側突起部20は先細形状となっているため、この接触による抗力を低減させることができ、ガスケット1の溝51への装着荷重を低減することができる。
【0043】
上述のように、高圧側突起部20の仮想直線xに直交する方向の長さは、溝51に取り付けられたガスケット1の本体部10の中心線(仮想直線x)が溝51の高圧側側面51aと低圧側側面51bとの間の幅方向の中央又は幅方向の中央近傍に位置するように設定されている。このため、溝51に取り付けられたガスケット1において、本体部10の中心線(仮想直線x)は、溝51の幅方向の中央又はその近傍に位置している。
【0044】
また、上述のように、ケース50の溝51にガスケット1が取り付けられた状態において、低圧側突起部30は、溝51の低圧側側面51bに対して反力を発生しないようになっている。つまり、低圧側突起部30の先端面31は、溝51の低圧側側面51bに接触しておらず、または、
図3に示すように、先端面31は、溝51の低圧側側面51bに接触しているが、低圧側突起部30は低圧側側面51b対して反力を発生していない。
【0045】
上述のように、ガスケット1が溝51に取り付けられた状態において、高圧側突起部20は溝51の高圧側側面51aに接触する。このため、本体部10の仮想直線x方向(上下方向)の長さ、又はガスケット1における高圧側突起部20の仮想直線x方向における位置は、本体部10の下側接触面12又は上側接触面11が、溝51の底面51cに接触した状態において、高圧側突起部20が溝51の高圧側側面51aに接触するような長さ又は位置となっている。なお、
図4に示すガスケット1の使用状態では、溝51内に本体部10の下側接触面12側の部分が収容されるようになっているが、ガスケット1の使用状態において、溝51内に本体部10の上側接触面11側の部分が収容されていてもよい。
【0046】
図4に示すように、溝51にガスケット1が取り付けられたケース50にカバー60がボルト等によって固定されると、ガスケット1はケース50とカバー60との間で圧縮されてガスケット1の使用状態となる。ケース50にカバー60が取り付けられた状態において、ケース50の上面52aとこの上面52aに対向するカバー60の内面60aとの間に隙間Gが形成されるが、この隙間Gは、ガスケット1の位置において閉塞される。使用状態において、本体部10の下側接触面12が溝51の底面51cに接触しており、本体部10の上側接触面11が溝51の底面51cに対向するカバー60の内面60aの部分に接触している。
【0047】
ケース50にカバー60を固定する際、本体部10は、カバー60の内面60aと溝51の底面51cとの間で圧縮されていく。この時、
図4に示すように、本体部10は、仮想直線xに直交する幅方向に膨らんでいき、低圧側突起部30の先端面31は、溝51の低圧側側面51b側に動いていく。そして、カバー60がケース50に固定されると、
図4に示すように、低圧側突起部30の先端面31は、溝51の低圧側側面51bに接触している。このように、低圧側突起部30は、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触するような形状となっている。具体的には、低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さは、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触するような長さに設定されている。
【0048】
このように、使用状態において、本体部10の上側接触面11はカバー60の内面60aに押し付けられ、本体部10の下側接触面12は溝51の底面51cに押し付けられ、ガスケット1はケース50とカバー60との間の隙間Gを閉塞し、ケース50とカバー60とが形成する空間を密封している。
【0049】
なお、図示の例とは反対にガスケット1が取り付けられた場合、本体部10の上側接触面11は
図4に示す下側接触面12と同様に溝51の底面51cに接触し、本体部10の下側接触面12は
図4に示す上側接触面11と同様にカバー60の内面60aに接触し、ガスケット1はケース50とカバー60との間の隙間Gを閉塞する。
【0050】
また、上述のように、ケース50にカバー60を固定する際、低圧側突起部30の先端面31は、溝51の低圧側側面51b側に動いていき、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触している。このため、密封対象物から圧力を受けて、ガスケット1が高圧側から圧力を受けた際に、本体部10が低圧側、つまり溝51の低圧側側面51bに向かって押され、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに押し付けられる。これにより、低圧側側面51bとの接触に基づく低圧側突起部30の反力と、高圧側からの圧力とによって本体部10は幅方向に圧縮され、本体部10は仮想直線x方向に膨張し、本体部10の上側接触面11及び下側接触面12は互いに離れる方向に動く。これにより、上側接触面11はカバー60の内面60aに向かって押され、また、下側接触面12は溝51の底面51cに向かって押され、上側接触面11はカバー60の内面60aに更に押し付けられ、また、下側接触面12は溝51の底面51cに更に押し付けられることになる。このようにして、ガスケット1のセルフシール作用が得られる。
【0051】
なお、低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さは、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触するような長さに設定されているとしたが、低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さは、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触しないような長さに設定されていてもよい。この場合も、高圧側から本体部10が押圧されることにより、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触し、上述の場合と同様にガスケット1のセルフシール作用が得られる。セルフシール作用が得られるように、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部30の先端面31が溝51の低圧側側面51bに接触しない形態の場合は、この先端面31と低圧側側面51bとの間の間隔が狭くなるような形態が好ましい。
【0052】
上述のように、ガスケット1によれば、高圧側から本体部10が押圧されることにより、本体部10又はガスケット1が溝51において移動又は変形することなく、または、本体部10又はガスケット1が溝51において僅かに移動又は変形することにより、ガスケット1のセルフシール作用が得られる。このように、ガスケット1はセルフシール作用がより確実に得られるようになっている。
【0053】
また、上述のように、高圧側から本体部10が押圧されることにより、本体部10又はガスケット1が溝51において移動又は変形することなく、または、本体部10又はガスケット1が溝51において僅かに移動又は変形することにより、ガスケット1のセルフシール作用が得られる。このため、ガスケット1が低温環境下で使用されている場合、ガスケット1のゴム硬度が増し、ガスケット1の弾性が低下して、ガスケット1は移動又は変形し難くなるが、この場合においても、ガスケット1によればセルフシール作用が得られる。
【0054】
また、ガスケット1のゴム状弾性体を低硬度にして低反力のものとした場合でも、本体部10又はガスケット1が溝51において移動又は変形することなく、または、本体部10又はガスケット1が溝51において僅かに移動又は変形することにより、ガスケット1のセルフシール作用が得られる。このため、ガスケット1がセルフシール作用を奏するために、ガスケット1を大きく変形又は移動させる必要がなく、低硬度のガスケット1の変形や移動によって本体部10のシール面の接触が失われることを抑制することができる。
【0055】
また、低圧側側面51bとの接触に基づく低圧側突起部30の反力と高圧側からの圧力とによって本体部10は幅方向に圧縮されてセルフシール作用が得られるので、本体部10の低圧側の側面が低圧側側面51bに接触する場合に比べて、低圧側側面51bとの接触に基づく反力によって本体部10に加わる面圧を大きくすることができる。このため、ガスケット1のセルフシール作用によるシール性能を高めることができる。
【0056】
また、ガスケット1の使用状態において、ガスケット1は、本体部10の上側接触面11、本体部10の下側接触面12、高圧側突起部20の先端面21、及び低圧側突起部30の先端面31において、カバー60及び溝51に夫々接触している。または、ガスケット1の使用状態において、ガスケット1は、本体部10の上側接触面11、本体部10の下側接触面12、及び高圧側突起部20の先端面21において、カバー60及び溝51に夫々接触しており、また、低圧側突起部30の先端面31は溝51の低圧側側面51bに僅かな隙間を空けて対向している。このため、使用状態において、ガスケット1の姿勢は安定している。また、高圧側突起部20と低圧側突起部30は、本体部10を介して互いに対向しているため、使用状態において、ガスケット1の姿勢を安定させることができる。従って、高圧側からの力がガスケット1に加わっても、ガスケット1が変形したり動くことが抑制されており、ガスケット1のメクレや倒れによるシール性能の低下が抑制されている。
【0057】
このように、本発明の第1の実施の形態に係るガスケット1によれば、低温環境下で使用される場合であっても、又は低反力のゴム状弾性体から形成されていても、シール性能が低下することを抑制することができる。
【0058】
次いで、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット2について説明する。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット2の延び方向に直交する断面を示す断面図である。ガスケット2は、
図1に示すガスケット1と同様の平面視の形状を有しており、
図5に示す断面は、ガスケット1の
図2に示す断面に対応する。ガスケット2は、上述のガスケット1に対して、高圧側突起部と低圧側突起部の形態が異なり、高圧側突起部20及び低圧側突起部30とは夫々異なる高圧側突起部25及び低圧側突起部35を備えている。以下、ガスケット2について、上述のガスケット1と同一の構成又は同様の機能を有する構成については、同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0060】
高圧側突起部25は、例えば、ガスケット2の内縁側(内周側)において、本体部10に沿って本体部10の全周に亘って環状に形成されており、ガスケット2の取付状態において、ガスケット2が取り付けられる溝51高圧側側面51aに向かって本体部10から突出している。高圧側突起部25は、例えば
図5に示すように、本体部10の仮想直線x方向における中央又は略中央から突出している。また、高圧側突起部25は、ガスケット2の取付状態において、溝51の高圧側側面51aに接触するようになっている。具体的には、高圧側突起部25の先端の面である先端面26が、ガスケット2の取付状態において、溝51の高圧側側面51aに接触するようになっている。なお、ガスケット2の外側にシール対象物がある場合には、ガスケット2の外縁側(外周側)に高圧側突起部25が形成される。
【0061】
高圧側突起部25は、先端面26に向かって先細になっており、
図5に示すように、高圧側突起部25の断面形状は、先端面26に向かうに連れて幅が狭くなっている。なお、高圧側突起部25の幅は、仮想直線x方向における上側面27と下側面28との間の間隔である。なお、上側面27は、高圧側突起部25の上側に面する面であり、下側面28は、高圧側突起部25の下側に面する面である。なお、高圧側突起部25は、ガスケット1の取付状態において、その先端部(先端面26)が基端部よりも溝51(
図6参照)の深さ方向に沿った断面が小さくなるように形成されていればよく、先細り形状の他にも、先端部の輪郭がR形状(円弧状)となるように形成してもよい。
【0062】
図5に示すように、断面において、高圧側突起部25の上側面27は、仮想直線xに対して下側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における上側面27の輪郭は、直線又は略直線となっている。上側面27は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0063】
また、
図5に示すように、断面において、高圧側突起部25の下側面28は、仮想直線xに対して上側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における下側面28の輪郭は、直線又は略直線となっている。下側面28は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0064】
また、
図5に示すように、断面において、高圧側突起部25の先端面26は、仮想直線xに沿う輪郭を描くように形成されており、断面における先端面26の輪郭は、仮想直線xに平行又は略平行な直線又は略直線となっている。先端面26は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0065】
高圧側突起部25は、ガスケット2の取付状態において、本体部10の中心が溝51の高圧側側面51aと低圧側側面51bとの間の中央よりも低圧側側面51b側に位置するように形成されている。具体的には、ガスケット2の取付状態において、本体部10の中心線(仮想直線x)が溝51の高圧側側面51aと低圧側側面51bとの間の中央よりも低圧側側面51b側に位置するように、高圧側突起部25の仮想直線xに直交する方向の長さは設定されている。つまり、高圧側突起部25の仮想直線xに直交する方向の長さは、上述の高圧側突起部20の仮想直線xに直交する方向の長さよりも長くなっている。
【0066】
低圧側突起部35は、例えば、ガスケット2の外縁側(外周側)において、本体部10に沿って本体部10の全周に亘って環状に形成されており、ガスケット2の取付状態において、溝51の低圧側側面51bに向かって本体部10から突出している。低圧側突起部35は、高圧側突起部25に本体部10を介して対向するように設けられており、低圧側突起部35は、例えば
図5に示すように、本体部10の仮想直線x方向における中央又は略中央から突出している。また、低圧側突起部35は、上述のように、ガスケット2の取付状態において、溝51の低圧側側面51bに対して反力を発生しないようになっている。具体的には、低圧側突起部35の先端の面である先端面36は、ガスケット2の取付状態において、溝51の低圧側側面51bに接触しないようになっている。または、低圧側突起部35の先端面36は、ガスケット2の取付状態において、溝51の低圧側側面51bに接触するようになっているが、圧側突起部35の先端面36は、溝51の低圧側側面51bに対して押圧されず、溝51の低圧側側面51bに対して反力を発生しないようになっている。なお、ガスケット2の外側にシール対象物がある場合には、ガスケット2の内縁側(内周側)に低圧側突起部35が形成される。
【0067】
低圧側突起部35は、先端面36に向かって先細になっており、
図5に示すように、低圧側突起部35の断面形状は、先端面36に向かうに連れて幅が狭くなっている。なお、低圧側突起部35の幅は、仮想直線x方向における上側面37と下側面38との間の間隔である。なお、上側面37は、低圧側突起部35の上側に面する面であり、下側面38は、低圧側突起部35の下側に面する面である。なお、低圧側突起部35は、ガスケット1の取付状態において、その先端部(先端面36)が基端部よりも溝51(
図6参照)の深さ方向に沿った断面が小さくなるように形成されていればよく、先細り形状の他にも、先端部の輪郭がR形状(円弧状)となるように形成してもよい。
【0068】
図5に示すように、断面において、低圧側突起部35の上側面37は、仮想直線xに対して下側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における上側面37の輪郭は、直線又は略直線となっている。上側面37は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0069】
また、
図5に示すように、断面において、低圧側突起部35の下側面38は、仮想直線xに対して上側に傾斜する輪郭を描くように形成されており、断面における下側面38の輪郭は、直線又は略直線となっている。下側面38は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0070】
また、
図5に示すように、断面において、低圧側突起部35の先端面36は、仮想直線xに沿う輪郭を描くように形成されており、断面における先端面36の輪郭は、仮想直線xに平行又は略平行な直線又は略直線となっている。先端面36は、断面において曲線の輪郭を呈する形状や、断面において直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈するような形状や、断面において曲線と直線の組み合わせで描かれる輪郭を呈する形状等、他の形状であってもよい。
【0071】
上述のように、低圧側突起部35は、ガスケット2の取付状態において、溝51の低圧側側面51bに先端面36が接触しないようになっており、または、溝51の低圧側側面51bに先端面36が接触するが、溝51の低圧側側面51bに対して先端面36は押圧されず、溝51の低圧側側面51bに対して低圧側突起部36は反力を発生しないようになっている。
【0072】
上述のように、ガスケット2の取付状態において、本体部10の中心線(仮想直線x)が溝51の高圧側側面51aと低圧側側面51bとの間の中央よりも低圧側側面51b側に位置するように、高圧側突起部25の仮想直線xに直交する方向の長さは、上述の高圧側突起部20の仮想直線xに直交する方向の長さよりも長くなっている。このため、低圧側突起部35の仮想直線xに直交する方向の長さは、上述のガスケット1の低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さよりも短くなっている。
【0073】
図5に示すように、ガスケット2の断面において、高圧側突起部25は、仮想直線x方向の中央に延びる直線(中心線)に関して対称又は略対称となっている。また、ガスケット2の断面において、低圧側突起部35は、仮想直線x方向の中央に延びる直線(中心線)に関して対称又は略対称となっている。また、ガスケット2は、断面において、ガスケット2の仮想直線x方向の幅の中央に直交する直線に関して対称又は略対称となっている。なお、ガスケット2の断面において、ガスケット2又は各部分は、上述のように対称になっていなくてもよい。
【0074】
次いで、上述の構成を有するガスケット2の作用について説明する。
【0075】
ガスケット2は、上述のガスケット1と同様に
図6,7に示すように、溝51にガスケット2が取り付けられ、ケース50にカバー60がボルト等によって固定されて、使用状態となる。なお、
図6は、ケース50の溝51に取り付けられた状態のガスケット2を示す図であり、
図7は、ケース50にカバー60が取り付け固定されて、ケース50とカバー60との間の隙間を閉塞している使用状態のガスケット2を示す図である。
【0076】
図6に示すように、ケース50の溝51にガスケット2が取り付けられた状態において、高圧側突起部25の先端面26は、溝51の高圧側側面51aに接触するようになっている。この高圧側突起部25の先端面26の接触により、ガスケット2は、ケース50の溝51に所定の力で保持される。これにより、ガスケット2の溝51からの脱落の防止が図られる。ガスケット2を溝51に取り付ける際に、ケース50の上面52a又は溝51の高圧側側面51aに高圧側突起部25は接触するが、高圧側突起部25は先細形状となっているため、この接触による抗力を低減させることができ、ガスケット2の溝51への装着荷重を低減することができる。
【0077】
上述のように、高圧側突起部25の仮想直線xに直交する方向の長さは、溝51に取り付けられたガスケット2の本体部10の中心線(仮想直線x)が溝51の高圧側側面51aと低圧側側面51bとの間の幅方向の中央よりも低圧側側面51b側に位置するように設定されている。このため、溝51に取り付けられたガスケット2において、本体部10の中心線(仮想直線x)は、溝51の幅方向の中央よりも低圧側側面51b側に位置している。
【0078】
また、上述のように、ケース50の溝51にガスケット2が取り付けられた状態において、低圧側突起部35は、溝51の低圧側側面51bに対して反力を発生しないようになっている。つまり、低圧側突起部35の先端面36は、溝51の低圧側側面51bに接触しておらず、または、先端面36は、溝51の低圧側側面51bに接触しているが、低圧側突起部35は低圧側側面51b対して反力を発生していない。
図6においては、低圧側突起部35の先端面36は、溝51の低圧側側面51bに接触しておらず、先端面36と低圧側側面51bとの間には隙間が形成されている。
【0079】
上述のように、ガスケット2が溝51に取り付けられた状態において、高圧側突起部25は溝51の高圧側側面51aに接触する。このため、本体部10の仮想直線x方向(上下方向)の長さ、又はガスケット2における高圧側突起部25の仮想直線x方向における位置は、本体部10の下側接触面12又は上側接触面11が、溝51の底面51cに接触した状態において、高圧側突起部25が溝51の高圧側側面51aに接触するような長さ又は位置となっている。なお、
図7に示すガスケット2の使用状態では、溝51内に本体部10の下側接触面12側の部分が収容されるようになっているが、ガスケット2の使用状態において、溝51内に本体部10の上側接触面11側の部分が収容されていてもよい。
【0080】
図7に示すように、溝51にガスケット2が取り付けられたケース50にカバー60がボルト等によって固定されると、ガスケット2はケース50とカバー60との間で圧縮されて使用状態となる。ケース50にカバー60が取り付けられた状態において、ケース50の上面52aとこの上面52aに対向するカバー60の内面60aとの間に隙間Gが形成されるが、この隙間Gは、ガスケット2の位置において閉塞される。使用状態において、本体部10の下側接触面12が溝51の底面51cに接触しており、本体部10の上側接触面11が溝51の底面51cに対向するカバー60の内面60aの部分に接触している。
【0081】
ケース50にカバー60を固定する際、本体部10は、カバー60の内面60aと溝51の底面51cとの間で圧縮されていく。この時、
図7に示すように、本体部10は、仮想直線xに直交する幅方向に膨らんでいき、低圧側突起部35の先端面36は、溝51の低圧側側面51b側に動いていく。そして、カバー60がケース50に固定されると、
図7に示すように、低圧側突起部35の先端面36は、溝51の低圧側側面51bに接触している。このように、低圧側突起部35は、カバー60がケース50に固定されたガスケット2の使用状態において、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触するような形状となっている。具体的には、低圧側突起部35の仮想直線xに直交する方向の長さは、カバー60がケース50に固定されたガスケット2の使用状態において、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触するような長さに設定されている。
【0082】
また、上述のように、ケース50にカバー60を固定する際、低圧側突起部35の先端面36は、溝51の低圧側側面51b側に動いていき、カバー60がケース50に固定されたガスケット2の使用状態において、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触している。このため、密封対象物から圧力を受けて、ガスケット2が高圧側から圧力を受けた際に、ガスケット2はガスケット1と同様に作用し、本体部10が低圧側、つまり溝51の低圧側側面51bに向かって押され、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに押し付けられる。これにより、低圧側側面51bとの接触に基づく低圧側突起部35の反力と、高圧側からの圧力とによって本体部10は幅方向に圧縮され、本体部10は仮想直線x方向に膨張し、本体部10の上側接触面11及び下側接触面12は互いに離れる方向に動く。これにより、上側接触面11はカバー60の内面60aに向かって押され、また、下側接触面12は溝51の底面51cに向かって押され、上側接触面11はカバー60の内面60aに更に押し付けられ、また、下側接触面12は溝51の底面51cに更に押し付けられることになる。このようにして、ガスケット2のセルフシール作用が得られる。
【0083】
なお、低圧側突起部35の仮想直線xに直交する方向の長さは、カバー60がケース50に固定されたガスケット2の使用状態において、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触するような長さに設定されているとしたが、低圧側突起部35の仮想直線xに直交する方向の長さは、カバー60がケース50に固定されたガスケット1の使用状態において、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触しないような長さに設定されていてもよい。この場合も、高圧側から本体部10が押圧されることにより、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触し、上述の場合と同様にガスケット2のセルフシール作用が得られる。セルフシール作用が得られるように、カバー60がケース50に固定されたガスケット2の使用状態において、低圧側突起部35の先端面36が溝51の低圧側側面51bに接触しない形態の場合は、この先端面36と低圧側側面51bとの間の間隔が狭くなるような形態が好ましい。
【0084】
上述のように、ガスケット2によれば、ガスケット1と同様に、高圧側から本体部10が押圧されることにより、本体部10又はガスケット2が溝51において移動又は変形することなく、または、本体部10又はガスケット2が溝51において僅かに移動又は変形することにより、ガスケット2のセルフシール作用が得られる。このように、ガスケット2はセルフシール作用がより確実に得られるようになっている。
【0085】
また、上述のように、高圧側から本体部10が押圧されることにより、本体部10又はガスケット2が溝51において移動又は変形することなく、または、本体部10又はガスケット2が溝51において僅かに移動又は変形することにより、ガスケット2のセルフシール作用が得られる。このため、ガスケット2が低温環境下で使用されている場合、ガスケット2のゴム硬度が増し、ガスケット2の弾性が低下して、ガスケット2は移動又は変形し難くなるが、この場合においても、ガスケット2によればセルフシール作用が得られる。
【0086】
また、ガスケット2のゴム状弾性体を低硬度にして低反力のものとした場合でも、本体部10又はガスケット2が溝51において移動又は変形することなく、または、本体部10又はガスケット2が溝51において僅かに移動又は変形することにより、ガスケット2のセルフシール作用が得られる。このため、ガスケット2がセルフシール作用を奏するために、ガスケット2を大きく変形又は移動させる必要がなく、低硬度のガスケット2の変形や移動によって本体部10のシール面の接触が失われることを抑制することができる。
【0087】
また、低圧側側面51bとの接触に基づく低圧側突起部30の反力と高圧側からの圧力とによって本体部10は幅方向に圧縮されてセルフシール作用が得られるので、本体部10の低圧側の側面が低圧側側面51bに接触する場合に比べて、低圧側側面51bとの接触に基づく反力によって本体部10に加わる面圧を大きくすることができる。このため、ガスケット2のセルフシール作用によるシール性能を高めることができる。
【0088】
また、低圧側突起部35の仮想直線xに直交する方向の長さは、ガスケット1の低圧側突起部30の仮想直線xに直交する方向の長さよりも短く、低圧側突起部35は、ガスケット1の低圧側突起部30よりも剛性が高い。このため、低圧側側面51bとの接触に基づく低圧側突起部35の反力は、低圧側側面51bとの接触に基づく低圧側突起部30の反力よりも大きくなる。このため、低圧側突起部35の反力によって本体部10に加わる面圧の大きさは、低圧側突起部30の反力によって本体部10に加わる面圧の大きさよりも大きく、ガスケット2のセルフシール作用によるシール性能を高めることができる。
【0089】
また、ガスケット2は、上述のガスケット1の奏する作用を同様に奏することができ、使用状態においてガスケット2の姿勢を安定させることができ、高圧側からの力がガスケット2に加わっても、ガスケット2が変形したり動くことが抑制されており、ガスケット2のメクレや倒れによるシール性能の低下が抑制されている。
【0090】
このように、本発明の第2の実施の形態に係るガスケット2によれば、低温環境下で使用される場合であっても、又は低反力のゴム状弾性体から形成されていても、シール性能が低下することを抑制することができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るガスケット1,2に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0092】
例えば、上述の本発明の実施の形態に係るガスケット1、2においては、高圧側突起部20,25がガスケット1,2の内周側に、また、低圧側突起部30,35がガスケット1,2の外周側に設けられるとしたが、本発明に係るガスケットが取り付けられる部材の構成に応じて、高圧側突起部はガスケットの内周側に、また、低圧側突起部はガスケットの外周側に設けられる。
【0093】
また、ガスケット1,2の延び形状は、
図1に示すような平面視矩形の1つの輪を形成する環状の形状に限られず、ガスケット1,2が取り付けられる溝51の延び形状に応じて、種々の形状を取り得る。例えば、ガスケット1,2の延び形状は、一続きの複数の環が形成されるような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…ガスケット、10…本体部、11…上側接触面、12…下側接触面、20,25…高圧側突起部、21,26…先端面、22,27…上側面、23,28…下側面、30,35…低圧側突起部、31,36…先端面、32,37…上側面、33,38…下側面、50…ケース、51…溝、51a…側面(高圧側側面)、51b…側面(低圧側側面)、51c…底面、52…外縁部、52a…上面、60…カバー、60a…内面、G…隙間、x…仮想直線