(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028137
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】離脱防止装置
(51)【国際特許分類】
F16L 21/08 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
F16L21/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133649
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】笠原 太郎
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015GA03
(57)【要約】
【課題】互いに連結されている一対の分割体における連結箇所の曲げや捻じれに対する強度を高めることのできる離脱防止装置を提供する。
【解決手段】離脱防止装置1は、周方向に分割された複数の分割体1A,1B,1Cから構成されており、分割体1A,1B,1Cは、内周部に周方向に延びる爪部14が設けられた基部8と、基部8の周方向両端部に設けられた連結部10L,10Rと、を備え、連結部10L,10Rは、基部8から受口部2aのフランジ2bまで延びており、先端に連結係止片10aが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の流体管の受口部と他方の流体管の挿口部とが、複数の締結部材により前記受口部のフランジに締結された押輪によって密封状に接続された接続箇所に外嵌され、これら流体管の抜出しを防止する離脱防止装置であって、
前記離脱防止装置は、周方向に分割された複数の分割体から構成されており、
前記分割体は、内周部に周方向に延びる爪部が設けられた基部と、当該基部から前記受口部のフランジまで延び、先端に係止片が設けられた腕部と、前記基部の周方向両端部に設けられた連結部と、を備え、
前記連結部は、前記基部から前記受口部のフランジまで延びており、先端に連結係止片が設けられていることを特徴とする離脱防止装置。
【請求項2】
前記分割体は、前記基部の周方向両端部に設けられた前記連結部の間に、前記基部から前記受口部のフランジまで延び、先端に係止片が設けられた腕部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の離脱防止装置。
【請求項3】
前記腕部の係止片の端面及び前記連結部の連結係止片の端面は、前記受口部のフランジの端面に対して略面一に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の離脱防止装置。
【請求項4】
前記分割体は、周方向両端部の前記連結部の連結係止片が、前記腕部の係止片を介して一体に連続していることを特徴とする請求項2または3に記載の離脱防止装置。
【請求項5】
前記連結部及び前記腕部は、径方向高さが略同一であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の離脱防止装置。
【請求項6】
前記複数の分割体の連結状態において、互いに連結された前記連結部と前記腕部とが、周方向に等配されていることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の離脱防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の抜け出しを防止する離脱防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の流体管の受口部に対し、他方の流体管の挿口部を挿入する接続構造において、挿口部側に外嵌される押輪と受口部側のフランジとをボルト・ナット等の締結部材にて締結し、受口部と挿口部との周面間に周方向に沿って配置されたシール材によって、受口部と挿口部とが密封状に接続される接続構造が知られている。このような接続構造にあっては、地震等による不測の外力が加わった場合に、受口部と挿口部との抜け出しを防止する離脱防止装置が適用されているものも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の離脱防止装置は、周方向に分割された複数の分割体同士を環状に連結することで、受口部及び挿口部に外嵌可能に構成されている。各分割体は、挿口部の外周面に沿って固定に配置される基部と、この基部から管軸方向に受口部側のフランジを超えて延設された複数の腕部と、を備えている。基部は、その内周部に設けられ内径方向に突出する複数の爪部が挿口部の外周面に食い込むことで、挿口部に固定される。また、各腕部は、その軸方向先端にて内径方向に屈折された係止片が、受口部側のフランジに係止するように配置される。
【0004】
これにより離脱防止装置は、挿口部と受口部とが抜け出し方向へ相対移動しようとする外力が作用した場合に、挿口部側に爪部によって固定された基部から延設された係止片が、フランジの端面に係止する係止状態を維持できるため、これら挿口部と受口部との抜け出しを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-197191号(第4~6頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1の離脱防止装置にあっては、各分割体の周方向の両端に、周方向に厚みを有するフランジ状の連結部を有しており、周方向に対向する分割体の連結部同士を連結することで隣接している分割体同士を環状に連結することができる。しかしながら、互いに連結されている一対の流体管における接続箇所に対して、管軸方向に抜け出す方向の外力に加え、曲げ方向や捻じれ方向の外力が複合的に作用した場合に、互いに連結されている一対の分割体に対してそれぞれ異なる方向の力が生じると、各分割体は、それぞれが個別には抜け出し防止機能を発揮するものの、隣接する分割体に対しては異なる方向に傾動しようとして、連結箇所に局所的な応力が生じる。これにより、分割体同士の連結部や各連結部を締結している締結部材に負荷が集中して破損する虞があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、互いに連結されている一対の分割体における連結箇所の曲げや捻じれに対する強度を高めることのできる離脱防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の離脱防止装置は、
一方の流体管の受口部と他方の流体管の挿口部とが、複数の締結部材により前記受口部のフランジに締結された押輪によって密封状に接続された接続箇所に外嵌され、これら流体管の抜け出しを防止する離脱防止装置であって、
前記離脱防止装置は、周方向に分割された複数の分割体から構成されており、
前記分割体は、内周部に周方向に延びる爪部が設けられた基部と、前記基部の周方向両端部に設けられた連結部と、を備え、
前記連結部は、前記基部から前記受口部のフランジまで延びており、先端に連結係止片が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、例えば互いに連結されている一対の流体管における接続箇所に対して曲げ方向や捻じれ方向の外力が複合的に作用した場合に、互いに連結されている一組の連結部それぞれの各連結係止片が受口部のフランジに係止され、協働する。これにより、一組の連結箇所に曲げや捻じれが生じにくくなるため、複数の分割体における連結箇所の曲げや捻じれに対する強度を高めることができる。
【0009】
前記分割体は、前記基部の周方向両端部に設けられた前記連結部の間に、前記基部から前記受口部のフランジまで延び、先端に係止片が設けられた腕部をさらに備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、フランジの周方向に沿って、先端に係止片が設けられた腕部をさらに備えることで、離脱防止機能を高めることができる。
【0010】
前記腕部の係止片の端面及び前記連結部の連結係止片の端面は、前記受口部のフランジの端面に対して略面一に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、一方の流体管と他方の流体管の相対的な移動方向や傾動方向に関わらず、係止片及び連結係止片のうちの少なくともいずれか一つに受口部のフランジが係止されるにあたって、略一定の範囲内で相対移動及び相対傾動を規制することができるため、効果的である。
【0011】
前記分割体は、周方向両端部の前記連結部の連結係止片が、前記腕部の係止片を介して一体に連続していることを特徴としている。
この特徴によれば、腕部の係止片と連結部の連結係止片が相互に支持されるため、腕部の係止片及び連結部の連結係止片を補強することができる。
【0012】
前記連結部及び前記腕部は、径方向高さが略同一であることを特徴としている。
この特徴によれば、腕部と連結部との外観状の形状が近似するため、分割体同士の連結部分を目立たせることがなく、美観性が良い。
【0013】
前記複数の分割体の連結状態において、互いに連結された前記連結部と前記腕部とが、周方向に等配されていることを特徴としている。
この特徴によれば、力を分散させる効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例における離脱防止装置を挿口管側から見た斜視図である。
【
図2】離脱防止装置を受口管側から見た斜視図である。
【
図3】離脱防止装置を示す一部断面の側面図である。
【
図12】隣接している連結部を内径側から見た斜視図である。
【
図13】受口管及び挿口管に対して地震等の不測の外力が働いた状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る離脱防止装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0016】
実施例に係る離脱防止装置につき、
図1から
図13を参照して説明する。以下、
図3の紙面右側を離脱防止装置の軸方向右側とし、同紙面左側を離脱防止装置の軸方向左側として説明する。
【0017】
図1~
図3に示されるように、本実施例の一方の流体管である受口管2と、他方の流体管である挿口管3とは、例えば、地中に埋設される上水道用のダクタイル鋳鉄製であり、管の内周面がモルタル層で被覆されている。尚、
図3における下半分では、同図で示される離脱防止装置1の直径方向に対して中心軸より傾斜して延びる部分の断面が図示されている。
【0018】
また、本発明に係る流体管は、ダクタイル以外の鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はモルタル層に限らず、例えばエポキシ樹脂層、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0019】
また、本実施例では流体管内の流体は、本実施例の上水に限らず、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、水以外の液体でも良いし、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0020】
図6に示されるように、受口管2は、受口形状の受口部2aと、受口部2aの端部に設けられるフランジ2bと、を有している。挿口管3は、受口部2aに挿入される挿口部3aを有している。
【0021】
また、受口管2及び挿口管3は、受口部2aの内周面2cと挿口管3の外周面3bとの間に全周に亘って配置された環状のシール材4を介して挿嵌されている。また、挿口管3の外周面3bには、一体あるいは複数に分割された円弧状の部材を接続してなる環状の押輪5が外嵌設置されている。この押輪5は、フランジ2b側に突出する押圧部5aを有している。
【0022】
押輪5は、フランジ2bに対して複数のT頭ボルト6,6,…及びナット7,7,…(複数の締結部材(
図3参照))を締結して連結されている。この締結に伴って押輪5とフランジ2bとを接近させることにより、押圧部5aによって押圧されるシール材4が受口部2aの内周面2cと挿口部3aの外周面3bとに密着して、受口管2及び挿口管3は密封状に接続される。
【0023】
また、
図3に示されるように、押輪5は、径方向に螺挿されているボルト5bが螺進されて、その内周部に配置されている図示しない爪部材が挿口管3の外周面3bに食い込むことで、挿口管3に固定されている。これら押輪5の爪部材及びボルト5bは、周方向に6等配されており、その外径側には、後述する一つの腕部9または隣接する一組の連結部10L,10Rが配置される。
【0024】
図3~
図6に示されるように、離脱防止装置1は、例えば本実施例のように、押輪5を介し密封状に接続された受口管2及び挿口管3が管軸方向に抜け出すことを防止するものであって、ダクタイル鋳鉄製の複数の分割体(本実施例では3つの分割体1A,1B,1C)を周方向に配置してボルト・ナット21,21(
図4,
図5参照)により連結されることで環状に形成されている。尚、本実施例の離脱防止装置1は、3つの分割体1A,1B,1Cから構成されているが、2つの分割体、または4つ以上の分割体により環状に形成されていてもよい。
【0025】
次いで、各分割体について
図3~
図8を用いて説明する。3つの分割体1A,1B,1Cは同一形状で同じ構成を有しているため、分割体1Bを例に取り説明する。分割体1Bは、周方向に湾曲して延びる弧状の基部8と、基部8における周方向中央から受口部2aのフランジ2b及び押輪5のボルト5bを跨ぐように軸方向に延びる腕部9(
図6参照)と、基部8における周方向両端部からフランジ2b及び押輪5のボルト5bを跨ぐように軸方向に延びる連結部10L(
図3参照)及び連結部10R(
図6参照)と、から主に構成されている。
【0026】
また、
図4,
図5に示されるように、腕部9及び連結部10L,10Rは、それぞれの外径端が略同一円周上に配置されており、すなわち径方向高さが略同一であることから、腕部9と連結部10L,10Rとの外観状の形状が近似するため、分割体1A,1B,1C同士の連結部分を目立たせることがなく、美観性が良い。
【0027】
尚、本実施例の分割体1A,1B,1Cは、
図5に示されるように、6等配されているT頭ボルト6,6,…及びナット7,7,…の間に後述する係止片9aまたは連結係止片10aを配置するために、いずれの分割体1A,1B,1Cも、略同一形状である基部8と、1つの腕部9と、2つの連結部10L,10Rを有する同一形状であるが、複数の分割体のうち、少なくとも一つの分割体における基部8の周方向長さが異なっていてもよく、少なくとも一つの分割体における腕部9の数が異なっていてもよい。すなわち、分割体1A,1B,1Cの形状は個別に適宜変更されてもよい。
【0028】
図7に示されるように、基部8の内周部には、爪部材14を挿嵌・固定するための2つの凹部8a,8aが周方向に所定間隔離間して配置されている。尚、特に図示しないが、基部8には、各凹部8aに連通するように径方向または径方向に傾斜してボルトが螺挿されていてもよく、このような構成であれば、外径側からボルトを螺進させることにより、凹部8a内に収容された後述する爪部材14を内径方向に押圧させることができる。
【0029】
凹部8aについてより詳しくは、凹部8aの周方向中心が、腕部9と連結部10Lとの間における周方向中心、または腕部9と連結部10Rとの間における周方向中心と、略同一の位置に配置されるように形成されている。また、連結部10L側に配置されている凹部8aの周方向における連結部10L側の端は、基部8の周方向における連結部10L側の端縁近傍に配置されて、同凹部8aの周方向における腕部9側の端は、基部8の周方向中心近傍に配置されている。同様に、連結部10R側に配置されている凹部8aの周方向における連結部10R側の端は、基部8の周方向における連結部10R側の端縁近傍に配置されて、同凹部8aの周方向における腕部9側の端は、基部8の周方向中心近傍に配置されている。言い換えれば、各凹部8aは、腕部9の周方向中心近傍と後述する隣接する一組の連結部10L,10Rの周方向中心との間近傍まで延びている。
【0030】
図4,
図6,
図11に示されるように、爪部材14は、周方向に弧状に延設されており、その内径側の係止爪16が挿口管3の外周面3bの周方向に対してほぼ全周に食い込むことで、挿口管3に離脱防止装置1を係止するためのものである。爪部材14は、ダクタイル鋳鉄、鋼、ステンレス鋼、樹脂等の少なくとも挿口管3の表面部よりも硬質な材料から形成されている。また、爪部材14は、周方向の両端部の嵌合溝14a,14aと凹部8aの周方向の内端部との間に嵌合されているゴム等の弾性体15,15の弾性復帰力により、凹部8aから脱落しないように保持されている。
【0031】
図9に示されるように、腕部9は、基部8から管軸方向に延設されており、その先端に受口管2のフランジ2bに係止されて挿口管3との相対的な抜け出しを規制するための係止片9aを有している。腕部9についてより詳しくは、基部8から外径側に傾斜して延びている傾斜部9bと、傾斜部9bの外径側端から屈曲して軸方向に沿って延びている延設部9cと、延設部9cの先端に略直交して内径方向に突出している係止片9aと、を有している。
【0032】
また、腕部9の外側には、傾斜部9bの外径側端部から、延設部9c及び係止片9aの内径端縁まで延びる一対のリブ9d,9dが形成されている。これらリブ9d,9dは、腕部9における周方向両端縁に沿って形成されており、腕部9の軽量化を図りつつ、その構造強度を確保している。
【0033】
次いで、
図7に示されるように、分割体1Bを例に取り、連結部10L,10Rについて説明する。連結部10Lは、
図7において紙面下側に配置されており、連結部10Rは、同図において紙面上側に配置されている。これら連結部10L,10Rは後述する突出部10hの構成を除き、ほぼ対称形状であるため、特に断らない限り、以降の説明において連結部10Lについて説明し、連結部10Rについて重複する説明は省略する。
【0034】
連結部10Lは、受口管2のフランジ2bに係止されて挿口管3との相対的な抜け出しを規制するための連結係止片10aを有しており、さらに分割体1Bと隣接する他の分割体1Cにおける連結部10R(以下、単に「隣接する連結部10R」と記載する)とボルト・ナット21により連結されるものである。
【0035】
連結部10Lについてより詳しくは、
図9,
図10に示されるように、基部8から外径側かつ軸方向右側に傾斜して延びている傾斜部10bと、傾斜部10bの外径側端に屈曲して軸方向右側に延びている延設部10cと、延設部10cの先端、すなわち軸方向右端に略直交して内径方向に突出している連結係止片10aと、基部8から軸方向左側に延びる薄板状のフランジ10dと、を有している。
【0036】
また、連結部10Lには、ボルト・ナット21,21(
図4参照)で締結するために貫通孔10e,10fが形成されている。貫通孔10eは、傾斜部10bの中央を幅方向(分割体1Bにおける略周方向)に貫通している。貫通孔10fは、フランジ10dの中央を貫通孔10eと同方向に貫通している。尚、本実施例においてボルト・ナット21のボルトはT頭ボルトとして図示しているが、六角ボルトであってもよく、適宜変更されてもよい。
【0037】
図6,
図7に示されるように、連結部10Rのフランジ10dには、隣接する連結部10Lに対向配置される周方向外面の軸方向左端に、分割体1Bの周方向外方に突出する突出部10hが形成されている。
【0038】
また、
図4及び
図5に示されるように、連結部10Lの延設部10cには、対向配置される連結部10Rから周方向に離間する方向かつ外径方向に傾斜して延びるテーパ面を有するリブ10Laが形成されている。同様に、連結部10Rの延設部10cには、対向配置される連結部10Lから周方向に離間する方向かつ外径方向に傾斜して延びるテーパ面を有するリブ10Raが形成されている。
【0039】
また、
図5に示されるように、連結部10Lの連結係止片10aには、対向配置される連結部10Rとは反対側の周方向端に、軸方向に突出しているリブ10Lbが形成されている。同様に、連結部10Rの連結係止片10aには、対向配置される連結部10Lとは反対側の周方向端に、軸方向に突出しているリブ10Rbが形成されている。
【0040】
これらリブ10La,10Lbは、連結部10Lの軽量化を図りつつ、その構造強度を確保している。同様に、リブ10Ra,10Rbは、連結部10Rの軽量化を図りつつ、その構造強度を確保している。
【0041】
また、
図8,
図9に示されるように、連結部10L,10Rの連結係止片10aは、周方向に湾曲して延びる架設部12,12を介して腕部9の係止片9aに一体に連続している。
【0042】
次に、離脱防止装置1を組み立てる作業について説明する。
図3~
図6に示されるように、腕部9の係止片9aと、連結部10L,10Rの連結係止片10a,10aが、T頭ボルト6,6,…及びナット7,7,…を周方向に避けた受口管2のフランジ2bの軸方向右端面2dに当接するように分割体1A,1B,1Cを配置し、隣接する一組の連結部10L,10Rをボルト・ナット21,21で締結する。
【0043】
このとき、ボルト・ナット21,21を締結し、隣接する一組の連結部10L,10Rを近接させることによって、分割体1A,1B,1Cが内径方向に移動して、離脱防止装置1が縮径される。これにより、各爪部材14は、基部8を介して挿口管3の外周面3bに押圧されて、爪部材14の係止爪16が外周面3bに食い込み、離脱防止装置1が挿口管3の外周面3bに固定される。
【0044】
また、ボルト・ナット21,21の締結が完了し、爪部材14の係止爪16が外周面3bに十分に食い込んだ状態であっても、隣接する一組の連結部10L,10Rの対向面は接触することなく、これらの対向面間には、隙間が形成されている。言い換えれば、爪部材14の係止爪16が外周面3bに十分に食い込む前に、隣接する一組の連結部10L,10R同士が当接して、離脱防止装置1の縮径を規制することが防止されている。よって、隣接する一組の連結部10L,10Rをボルト・ナット21,21で締結することにより、爪部材14に対し、係止爪16を外周面3bに確実に食い込ませるための押圧力を与えることができる。
【0045】
また、連結部10Rの突出部10hが隣接する連結部10Lの周方向外面に当接することがあるが、傾斜部10bの貫通孔10eに挿通されたボルト・ナット21の増し締めは可能であるため、爪部材14の係止爪16を外周面3bに食い込ませることができる。
【0046】
また、隣接する一組の連結部10L,10Rが連結された状態では、連結部10Lのリブ10Laと連結部10RのリブRaとの間に溝が構成され、連結部10Lのリブ10Lbと連結部10RのリブRbとの間にも溝が構成される。腕部9の一対のリブ9d,9dの間にも溝が構成されていることから、腕部9と連結された隣接する一組の連結部10L,10Rとの外観状の形状が近似するため、分割体1A,1B,1C同士の連結部分を目立たせることがなく、美観性が良い。
【0047】
次に、離脱防止装置1が外嵌されている受口管2及び挿口管3に対して、地震等の不測の外力が加わったときの態様について説明する。
【0048】
例えば、受口管2及び挿口管3がそれぞれの軸心方向に沿って相対的に抜け出そうとした場合には、腕部9の係止片9aや連結部10L,10Rの連結係止片10aに受口管2のフランジ2bが係止される。このとき、基部8は、爪部材14,14,…により挿口管3の外周面3bに固定されているため、受口管2及び挿口管3の抜け出しを規制することができる。
【0049】
加えて、爪部材14の外周面は、受口管2に向かって大径となる傾斜面14b(
図3参照)であり、これと同じ方向に傾斜した凹部8aのテーパ面8b(
図3参照)に対して内方から接触している。そのため、受口管2及び挿口管3が相対的に抜け出そうとした場合には、腕部9の係止片9aや連結部10L,10Rの連結係止片10aに受口管2のフランジ2bが係止される。一方、爪部材14は、離脱防止装置1における他の各種部材に対して相対的に受口管2から離間方向に挿口管3と共に従動する。
【0050】
これにより、腕部9の周方向両側に位置する各爪部材14の傾斜面14bが凹部8aのテーパ面8bに対して、相対的に軸方向左側、すなわちテーパ面8bが縮径している側に摺動し、爪部材14が楔効果によって挿口管3の外周面3bに押圧されるため、挿口管3の外周面3bに対する爪部材14の接触抵抗を増大して、離脱防止力を高めることができる。
【0051】
また、
図5を参照して、隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aは、隣接する一組のT頭ボルト6,6及びナット7,7の間に配置されている。また、
図12を参照して、隣接する一組の連結部10L,10Rの周方向両側には、連結部10L側の分割体1Bが備える爪部材14と、連結部10R側の分割体1Cが備える爪部材14が配置されている。
【0052】
これにより、隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aが協働して、隣接する一組のT頭ボルト6,6の間に位置する受口管2のフランジ2bに係止する。このとき、フランジ2bから連結係止片10a,10aが受ける力の方向は略同一方向であることから、連結係止片10a,10aは一つの腕部9の係止片9aと同等の係止機能を発揮する。そのため、連結部10L,10Rの周方向両側に位置する爪部材14が楔効果によって挿口管3の外周面3bに押圧されるため、挿口管3の外周面3bに対する爪部材14の接触抵抗を増大して、離脱防止力を高めることができる。
【0053】
また、
図12に示されるように、隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aが、フランジ2bに係止するとともに、連結部10L側の分割体1Aが備える爪部材14と、連結部10R側の分割体1Bが備える爪部材14とが、挿口管3の外周面3bに食い込む。よって例えば、受口管2と挿口管3とに対し、抜け出し方向の外力に加え、曲げ方向及び捩り方向の外力が複合的に作用した場合、分割体1Aの連結部10Lと分割体1Bの備える爪部材14とが、たすき掛け状に協働して離脱防止力を発揮し、あるいは、分割体1Bの連結部10Rと分割体1Aの備える爪部材14とが、たすき掛け状に協働して離脱防止力を発揮することができる。
【0054】
また、
図13に示されるように、受口管2と挿口管3とが接続箇所を基点に互いの軸心に対し傾くように傾動しても、腕部9の係止片9a及び隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aのうち少なくともいずれか一つ(隣接する連結係止片10a,10aは一組)に、受口管2のフランジ2bが係止されることによって、受口管2と挿口管3との相対的な抜け出しを防止することができる。
【0055】
また、連結係止片10aは、架設部12を介して係止片9aに一体に連続しているため、連結部10L,10Rは、基部8ばかりでなく、腕部9によっても支持されている。すなわち、連結係止片10a,10aはその構造強度が補強されている。これにより、
図13に示されるように、フランジ2bが周方向に隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aに係止される一方、径方向反対側に位置する腕部9における係止片9aはフランジ2bから離間する場合、すなわち連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aに力が集中する場合であっても、フランジ2bを支持し続けることができる。
【0056】
尚、連結部10L,10Rによって腕部9が支持されて補強されているため、一つの腕部9の係止片9aに力が集中する場合であっても、フランジ2bを支持し続けることができる。
【0057】
また、連結係止片10a,10aが協働することで押圧力が分散される。そのため、連結部10L,10Rの幅方向の寸法が、腕部9の幅方向の寸法より短寸であり、単体の強度が腕部9よりも相対的に弱くても、腕部9と同様にフランジ2bを安定して支持することができる。
【0058】
また、
図4,
図5に示されるように、腕部9及び連結部10L,10Rは、周方向に等配されているため、係止片9a及び隣接する一組の連結係止片10a,10aのうちの少なくともいずれか一つにフランジ2bが係止されるにあたって、力を分散させる効率がよい。
【0059】
さらに、腕部9及び連結部10L,10Rは、リブ9d、リブ10La,10Lb、リブ10Ra,10Rbによって構造強度が高められていることに加え、腕部9と連結された隣接する一組の連結部10L,10Rとの外観状の形状が近似していることから、腕部9の係止片9a及び、連結された隣接する一組の連結部10L,10Rの連結係止片10a,10aの構造強度が全周に亘り均等である。
【0060】
また、
図6に示されるように、連結部10L,10Rの連結係止片10aは、その軸方向左端面10gが受口管2のフランジ2bの軸方向右端面2dに対向配置されており、軸方向左端面10gと同一方向を向いている腕部9の係止片9aの軸方向左端面9eと略面一に配置されている。これにより、受口管2と挿口管3の相対的な移動方向や傾動方向に関わらず、係止片9a及び隣接する一組の連結係止片10a,10aのうちの少なくともいずれか一つにフランジ2bが係止されるにあたって、略一定の範囲内で相対移動及び相対傾動を規制することができるため、効果的である。
【0061】
また、例えば従来技術のように、連結係止片が形成されていない連結部であれば、これら連結部に隣接している腕部の係止片にフランジ2bは当接する。これら係止片は、周方向に離間して配置されており、より詳しくは異なる一対のボルト・ナットの間に配置されている。このことから、係止片を介してフランジ2bから受ける力の方向が、隣接する分割体同士で異なると、これら分割体は互いに異なる方向に傾動しようとする。すなわち、連結箇所で曲げや捻じれが生じる。
【0062】
これに対して、本実施例の離脱防止装置1では、隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの連結係止片10a,10aは一つの腕部9と同様に機能することから、フランジ2bから受ける力の方向が、隣接する分割体1B,1C同士で略同一であるため、これら分割体1B,1Cはフランジ2bと共に同一方向に傾動しようとする。これにより、連結箇所で曲げや捻じれが生じることが防止されている。
【0063】
このように、本実施例の離脱防止装置1は、例えば互いに連結されている受口管2と挿口管3との接続箇所に対して曲げ方向や捻じれ方向の外力が作用した場合に、互いに連結されている隣接する一組の連結部10L,10Rそれぞれの各連結係止片10a,10aが受口部2aのフランジ2bに係止され、協働する。これにより、一組の連結部10L,10Rの連結箇所に捻じれが生じにくくなるため、複数の分割体1A,1B,1Cにおける連結箇所の曲げや捻じれに対する強度を高めることができる。
【0064】
また、各分割体1A,1B,1Cは、連結部10L,10Rの間、より詳しくは基部8の中央に腕部9が配置されており、腕部9の係止片9aにも受口部2aのフランジ2bが係止可能であることから、例えば連結部10L,10Rだけを有している分割体から離脱防止装置1が組立てられる構成と比較して、フランジ2bの周方向に沿って係止可能に係止片9a及び連結係止片10aを配置できるため、離脱防止機能を高めることができる。
【0065】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
例えば、前記実施例では、分割体1A,1B,1Cは、ダクタイル鋳造により形成されている態様について説明したが、これに限られず、その他鋳鉄、鋼等の金属製、または硬質の樹脂製等であってもよい。
【0067】
また、分割体1A,1B,1Cは、鋳造により一体成型されている構成として説明したが、これに限られず、複数に分割されている部材を組立てる構成であってもよい。
【0068】
また、分割体1A,1B,1Cは、腕部9及び連結部10L,10Rを有する構成として説明したが、これに限られず、腕部9を有さずに連結部10L,10Rだけを有していてもよく、若しくは2つ以上の腕部9を有していてもよい。
【0069】
また、隣接する一組のT頭ボルト6,6の間すべてに係止片9aまたは隣接する一組の連結係止片10a,10aが配置されているとして説明したが、これに限られず、隣接する一組のT頭ボルト6,6の間の一部には係止片9a及び隣接する一組の連結係止片10a,10aが配置されていなくてもよい。例えば、係止片9aまたは隣接する一組の連結係止片10a,10aが配置される個所が一つ置きまたは複数置きであってもよい。
【0070】
また、離脱防止装置1は、腕部9及び連結部10L,10Rが周方向に等配されている構成として説明したが、これに限られず、腕部9及び連結係止片10a,10aは等配されていなくてもよい。また分割体が腕部9を有さず連結係止片10a,10aだけを有している場合であっても、当該連結係止片10a,10aは等配されていなくてもよい。
【0071】
また、腕部9及び連結部10L,10Rは、押輪5のボルト5bを跨ぐように構成されているとして説明したが、これに限られず、腕部及び連結部のうちいずれか一方のみが、押輪5のボルト5bを跨ぐように構成されていてもよい。
【0072】
また、押輪5は、ボルト5bで爪部材を挿口管3に食い込ませて固定している構成として説明したが、これに限られず、前記実施例の離脱防止装置1同様に、分割されている押輪5を連結し、縮径させることで爪部材を挿口管3に食い込ませる構成であってもよく、爪部材及びボルト5bを有していない構成であってもよい。