(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028168
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】医療用テープ
(51)【国際特許分類】
A61L 15/64 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A61L15/64 100
A61L15/64 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133703
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】520140992
【氏名又は名称】株式会社彩
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 明郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 洋作
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA02
4C081AA03
4C081AA14
4C081BA11
4C081DA04
4C081DA05
4C081DB01
4C081EA02
(57)【要約】
【課題】管腔状器官の損傷部位等の処置を行う場合に、管腔状器官を侵襲することなく、短期の内容物漏出を防止することが可能で、且つ、長期の損傷部位の修復を促進することが可能な医療用テープを提供すること。
【解決手段】長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する漸増部を有する不織布で構成されており、管腔状器官の外周に前記不織布同士を重ねて巻き付け可能であり、巻き付けられた状態で前記管腔状器官の組織細胞を含む体液が前記不織布に浸透可能である、医療用テープ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する漸増部を有する不織布で構成されており、管腔状器官の外周に前記不織布同士を重ねて巻き付け可能であり、巻き付けられた状態で前記管腔状器官の組織細胞を含む体液が前記不織布に浸透可能である、医療用テープ。
【請求項2】
前記不織布が、生体吸収性材料製の繊維で構成されている、請求項1記載の医療用テープ。
【請求項3】
前記漸増部において、最小厚さが40μm以下であり、最大厚さが最小厚さより大きく150μm以下である、請求項1又は2に記載の医療用テープ。
【請求項4】
前記漸増部の全長に対して、
厚さの最小側の端から28~35%の長さまでの部分の目付は、20g/m2以下であり、
厚さの最大側の端から8~13%の長さまでの部分の目付が、50g/m2以下である、
請求項1~3の何れかに記載の医療用テープ。
【請求項5】
前記不織布を構成する繊維の繊維径の中央値が32μm以下である、請求項1~4の何れかに記載の医療用テープ。
【請求項6】
前記不織布がメルトブロー不織布である、請求項1~5の何れかに記載の医療用テープ。
【請求項7】
血管の外周に巻き付け可能な止血用である、請求項1~6の何れかに記載の医療用テープ。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の医療用テープと、固着剤とを組み合わせた治療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用テープに関し、特に、管腔状器官の外周に巻き付けて用いる医療用テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、動脈や静脈等の血管等の循環器系、消化管、胆管、肝管等の消化器系、気管、気管支や気管支枝等の呼吸器系、尿管、尿道や卵管、精管等の泌尿生殖器系における管腔状器官やその他の器官の損傷等に対する治療目的のために、不織布を基材とし、これと所望の生理活性を有する物質とを組み合わせた医療用具が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、血液製剤を用いることなく、脆弱化した組織を補強でき、かつ、高い耐圧性と癒着を起こさない癒着防止能とを有する生体組織補強材料キットとして、生体吸収性材料からなる不織布と所定量のアルギン酸ナトリウムとを含有するものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、血管壁に長期間密着し、周囲に誘導した結合組織とともに動脈瘤を被って血管壁を補強し、動脈瘤の増大、破裂および再発を防止すること等を目的として、有効成分としてフィブリノゲン成分及びトロンビン成分、並びに基材として生体吸収性合成繊維からなる不織布より構成された動脈瘤治療用コーティング材料が開示されている。
【0005】
また、医療用途ではないが、特許文献3には、塗膜防水用として重ね合せ部の段差が生じず美観を損なわない不織布を提供することを目的として、ノークリンプステープルファイバーおよび/またはロークリンプステープルファイバーを主構成繊維とし、且つ手で容易に裁断できる合成繊維不織布において、重ね代部として両側端部からそれぞれ幅(V)50~100mmの部分の厚さを端部に向かって漸減し端部において限りなく薄いものとした塗膜防水および/または防蝕用不織布補強材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5963130号公報
【特許文献2】特許第4398651号公報
【特許文献3】特開2001-336055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2には、不織布を管腔状器官の外周に巻き付けることや不織布の厚さについて特段言及されていない。特許文献3に記載の発明では、端部に向かって漸減した部分を有する不織布が採用されているが、医療用具とは全く用途が異なり、しかも、その構成を採用する目的は、不織布の端部同士を重ね合わせた際の段差を生じさせず、美観が保たれるようにすることである。
【0008】
ところで、管腔状器官が例えば血管である場合、手術中に、(a)自己の血管(特に動脈)の一部を人工血管等の血管構成部品に交換して移植する際に血管壁を縫合して繋ぎ合わせる操作、(b)単に血管(例えば動脈)壁の損傷、出血に対する修復止血操作などの操作において、血管壁の合わせ目や血管壁の縫合の針の刺し孔(針孔)から出血する場合がある。
【0009】
このような出血の対策としては、恒久的に止血して再出血の危険を無くす恒久的止血操作が行われる。この恒久的止血操作は、圧迫止血操作と縫合止血操作に大別される。圧迫止血操作は、出血部位周域で血液凝固塊が出血部位を固めて止血する血液本来の自然止血作用を、出血部位を人工的に圧迫することにより促進する方法であって、出血の勢いが比較的弱い出血に有効な止血法である。縫合止血操作は、血管等の出血部位を手術用の針と糸で縫合あるいは結紮して出血部位を人工的に閉鎖することにより止血を行う操作であって、出血の勢いが強い出血にも有効な止血法である。
【0010】
恒久的止血操作においては、第一に完全な止血が最重要視され、止血操作の後例えば1日後に同部位から再出血の可能性のある止血操作は許容されない。次いで、完全な止血後に止血操作部位に血栓形成や内腔狭窄・閉塞を生ずる危険性を極力低減することも重要視される。このような観点から、恒久的止血操作としては、圧迫止血操作が第一選択とされる。その理由は以下のとおりである。縫合止血操作においては、針と糸による新たな縫合創を損傷部位等の周域の血管壁に形成して侵襲を加えるため、特に動脈硬化が強い動脈等では、この縫合操作の新たな縫合創の侵襲の分だけ損傷部位の修復は悪くなる。その結果、縫合止血操作は後に血栓形成や狭窄・閉塞を生ずる危険が、圧迫止血操作より大きいためである。
【0011】
このように、血管壁等からの出血に対する止血操作においては、完全な恒久的止血と同時に、止血後の円滑な自己修復・治癒も併せて達成することを可能とする処置が求められている。
【0012】
また、管腔状器官が例えば尿管である場合は、尿管壁の断裂部を繋ぎ合わせて修復する操作を行うと、その合わせ目から尿が漏出する場合がある。尿管は腎臓から膀胱へ尿を送達する管腔状器官であって、尿管壁を構成する筋肉の蠕動運動が生む脈動性の尿管内圧により尿は膀胱に向かって送達される。このように尿には脈動性内圧がかかっているため、尿管壁を縫合して繋ぎ合わせた場合、縫合の合わせ目から尿が漏出する危険が避けられない。尿管壁の縫合部分からの尿漏出を避けるには、縫合部が内圧に耐えるように、多数の緊密な縫合を加えることが必要である。しかし、緊密で多数の縫合を加えられた縫合部では、その後に極めて高率に尿管腔の狭窄や尿管結石を引き起こし、ひいては腎機能障害の危険を惹起することが知られている。そのため、縫合数を極力少なくして疎に縫合を行う吻合法が選択される。この場合、疎な縫合をした尿管吻合部から尿が漏出するが、排液管(ドレナージチューブ)を尿管吻合部の近傍から皮膚を介して体外にまで設置して漏出尿を体外に誘導・排液する治療が併用される。そして、尿管吻合部からの尿漏出が止まるまでに吻合部が治癒した段階に至って初めて、排液管は体外へ抜去される。排液管が抜去可能となるまでの期間、患者は体内からの排液管により体外のチューブに繋がれた状態で長い入院期間を過ごすこととなる。また、患者は排液管を介する逆行性感染症(ドレーン感染症)に罹患する可能性がある。
【0013】
このように、尿管壁の断裂部の修復する操作においては、尿管吻合部の狭窄予防が最重要視され、その結果として、吻合物から漏出する尿を体外に排出するために、患者は、ドレーン感染症の可能性はあるものの、ドレナージチューブに繋がれた状態での長期入院を余儀なくされる。したがって、尿管壁の断裂部を繋ぎ合わせて修復する操作においては、尿管吻合部の狭窄予防と同時に、尿漏れも併せて達成することを可能とする処置が求められている。
【0014】
以上のように、血管と尿管とでは処置方針が大きく異なるが、いずれの場合も、管腔状器官の内容物の漏出を短期的には勿論のこと長期的にも管壁の修復により確実に防止するとともに、管壁への侵襲を全く行わないか極力少なくして、侵襲に起因する狭窄・閉塞を防止することを可能とする処置が求められている。
【0015】
そこで、本発明の目的は、管腔状器官の損傷部位等の処置を行う場合に、管腔状器官を侵襲することなく、短期の内容物漏出を防止することが可能で、且つ、長期の損傷部位の修復を促進することが可能な医療用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する漸増部を有する不織布を用い、これを管腔状器官の外周に重ねて巻き付け可能となるように構成することで前述の課題が解決可能であることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0017】
(1)長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する漸増部を有する不織布で構成されており、管腔状器官の外周に前記不織布同士を重ねて巻き付け可能であり、巻き付けられた状態で前記管腔状器官の組織細胞を含む体液が前記不織布に浸透可能である、医療用テープ。
(2)前記不織布が、生体吸収性材料製の繊維で構成されている、項(1)記載の医療用テープ。
(3)前記漸増部において、最小厚さが40μm以下であり、最大厚さが最小厚さより大きく150μm以下である、項(1)又は(2)に記載の医療用テープ。
(4)前記漸増部の全長に対して、厚さの最小側の端から28~35%の長さまでの部分の目付は、20g/m2以下であり、厚さの最大側の端から8~13%の長さまでの部分の目付が、50g/m2以下である、項(1)~(3)の何れかに記載の医療用テープ。
(5)前記不織布を構成する繊維の繊維径の中央値が32μm以下である、項(1)~(4)の何れかに記載の医療用テープ。
(6)前記不織布がメルトブロー不織布である、項(1)~(5)の何れかに記載の医療用テープ。
(7)血管の外周に巻き付け可能な止血用である、項(1)~(6)の何れかに記載の医療用テープ。
(8)項(1)~(7)の何れかに記載の医療用テープと、固着剤とを組み合わせた治療用キット。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、管腔状器官の損傷部位の処置を行う場合に、管腔状器官を侵襲することなく、短期の内容物漏出を防止することが可能で、且つ、長期の損傷部位の修復を促進することが可能な医療用テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)実験動物の動脈を血管鉗子で血流を遮断し動脈を半周横切して損傷させた状態を示した図である。(b)血流再開時の裂け込み防止のため、横切りした損傷部位の合計三か所を緩く縫合した状態を示した図である。(c)横切りした損傷部位に医療用テープを巻き付けた後5分間静置した状態を示した図である。(d)血管鉗子解除の後、7分間の完全止血を確認している状態を示した図である。
【
図2】(a)実施例1の医療用テープを巻き付けた損傷部位を含む実験動物から摘出した総頸動脈の実体顕微鏡の画像を示した図である。(b)実施例1の医療用テープを巻き付けた損傷部位を含む実験動物から摘出した総腸骨動脈の実体顕微鏡の画像を示した図である。(c)
図2(a)で示される摘出した総頸動脈のヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。(d)
図2(b)で示される摘出した総頸動脈のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。
【
図3】実験動物の尿管吻合部に巻き付けた実施例1の医療用テープに固着剤を散布して静置した状態を示した図である。
【
図4】実験動物から摘出した、実施例1の医療用テープを巻き付けた吻合部を含む尿管等の標本の肉眼写真を示した図である。
【
図5】
図4の矢印で示した吻合部のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。
【
図6】実験動物から摘出した、比較例3の医療用テープを巻き付けた吻合部を含む尿管等の標本の肉眼写真を示した図である。
【
図7】
図6の矢印で示した吻合部のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る医療用テープは、長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する漸増部を有する不織布で構成されている。そして、管腔状器官の外周に前記不織布同士を重ねて巻き付け可能であり、巻き付けられた状態で前記管腔状器官の組織細胞を含む体液が前記不織布に浸透可能であるように構成されている。ここで、「漸増する」には、長さ方向の一方端側から他方端側に向かうに従い増加する場合の他、一部に同じ厚さである部分を有する場合を含む。漸増していることの確認は、例えば、後述する実施例の欄において示した方法で厚さを測定することにより行うことができる。また、「長さ方向の厚さ」とは、不織布の長さ方向の仮想直線と、厚さが一定である方向の仮想直線とが交差する角度が直角である場合の他、鋭角である場合を含む。
【0021】
このように漸増部を有することで、管腔状器官に対して医療用テープを巻き付ける際に弛みを生じさせず、不織布同士を密着して巻き付けることが可能になる。また、例えば、血液等の体液等が巻き付けた状態で不織布に浸透する、或いは、巻き付け時に不織布に体液等が付着し得る。このように濡れた状態の不織布は繊維同士の摩擦力が増し、管腔状器官内を内容物が通過する際の管腔状器官の外径の変化により生ずるずり応力に抗することが可能な巻き回された不織布間の摩擦力を容易に発生させて、管腔状器官の損傷部位等を緊密に圧迫することができる。また、特に血管の止血の場合は、損傷部位からは通常血液が流れ出るため、巻き付けられた不織布に浸透した血液が凝固してゲル状物質の血液凝固塊になることで、巻き付けられた隣接する不織布同士を接着する作用を発揮し得る。血管以外の管腔状器官の場合は、後述するように、必要に応じて固着剤を不織布に塗布することで不織布同士の接着力をより向上させることが可能である。その結果、短期的な内容物の漏出を防止することができる。
【0022】
また、長期的には、医療用テープを巻き付けるだけであることで管腔状器官への侵襲がなく、管腔状器官の組織細胞を含む血液等の体液が、巻き付けられた状態の不織布に浸透することで、損傷部位の修復治癒過程が促進され、その結果、各種管腔状器官の狭窄・閉塞や、血管の血栓の形成を防止することができる。また自然治癒終了後に管壁の強度を十分に回復させ強度不足の病的状態の遺残をも予防することができる。更に、損傷部位の組織の修復治癒の過程では、損傷部位の強度保持効果は勿論のこと、不織布を構成する繊維が、細胞の接着・増殖を促進し血管壁再生を円滑化する人工的足場として作用し得る。その結果、自己の管壁と同質に近い組織の再生修復効果を有し得る。
【0023】
以上のように医療用テープは、管腔状器官の内容物の漏出防止効果、損傷部位の組織の再生修復の促進という根本的な治療効果を有し得るため、従来の手技では対応が困難といわれている重篤な損傷部位の治療が可能である。
【0024】
不織布を構成する繊維は特に限定はなく医療用途で許容可能な各種の有機繊維を用いることができる。このような繊維としては、生体吸収性材料製の繊維、非生体吸収性材料製の繊維何れでもよく、目的に応じて適宜選択することができる。生体吸収性材料としては、例えば、特許文献1等に記載のものを用いることができる。具体的には、例えば、ポリグリコリド(ポリグリコール酸)、ポリラクチド(ポリ乳酸)(D、L、DL体)、グリコリド(グリコール酸の環状二量体)-ラクチド(乳酸の環状二量体)(D、L、DL体)共重合体、グリコリド-ε-カプロラクトン共重合体、ラクチド(D、L、DL体)-ε-カプロラクトン共重合体、ポリ(p-ジオキサノン)、グリコリド-ラクチド(D、L、DL体)-ε-カプロラクトン共重合体、ポリ-ε-カプロラクトン等の合成高分子、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、キチンなどの天然物由来の材料が挙げられる。これらの生体吸収性材料は、1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよいが、天然物由来のものは、合成高分子と組み合わせて用いるのが好ましい。共重合体は、ランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体でもよい。生体吸収性材料のうち、ポリグリコリド、ラクチド(D、L、DL体)-ε-カプロラクトン共重合体が好ましい。また、ラクチド(D、L、DL体)-ε-カプロラクトン共重合体は、ランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体でもよいが、ブロック共重合体が好ましい。非生体吸収性材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成高分子、綿、絹糸、蜘蛛糸等の天然物由来のものが挙げられる。
【0025】
漸増部は、長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する。漸増部における最小厚さと最大厚さは、巻き回す管腔状器官の外径の大きさ、巻き回し回数などを考慮して決定することができる。内容物の漏出をより効果的に防止する観点等からは、最小厚さは40μm以下が好ましい。また、操作性の観点等からは、最小厚さは3μm以上が好ましい。また、最大厚さは、巻き付けた時の不織布同士の密着性、操作性、血液等の体液の浸透性等の観点から、150μm以下が好ましい。漸増する構造を形成するため、最大厚さは、最小厚さより大きければよいが、50μm以上が好ましい。漸増部の所望の位置の厚さは、例えば、実施例の欄に記載の方法により所望の位置の厚さを測定し、求めることができる。また、その測定結果に基づいて、漸増部において漸増することを確認することができる。当該方法では、不織布の長さ方向を複数の区分に均等に分画し、中心位置の厚さを測定してその区画の代表厚さとし、この代表厚さをもって、漸増部を特定するものとする。1区画の長さ方向の大きさ(長さ)は特に限定はなく、不織布の全長に応じて決定することができ、例えば、1区画の長さが、不織布の全長に対して8~25%であるのが好ましい。
【0026】
漸増部の長さは、管腔状器官の外径の大きさ巻き回し回数などを考慮して決定することができる。例えば、管腔状器官の内腔が空虚の状態の外周の長さの1.5~10倍とすることができる。管腔状器官が動脈である場合は、例えば、3~8倍、管腔状器官が静脈である場合は、例えば1.5~10倍、尿管である場合は、例えば、2.5~5倍とすることができる。
【0027】
漸増部の目付即ち面密度は、緻密で均一な巻き付け操作等の観点からは、厚さの最小側の端から28~35%の長さまでの部分の目付は、20g/m2以下であるのが好ましい。同部分の目付の下限は、例えば、1g/m2以上とすることができる。また、緻密で均一な巻き付け操作等の観点から、厚さの最大側の端から8~13%の長さまでの部分の目付は、50g/m2以下であるのが好ましい。同部分の目付の下限は、例えば、10g/m2以上とすることができる。漸増部の目付は、例えば、実施例の欄に記載の方法により測定し、求めることができる。この方法の場合、厚さの測定の場合と同様に、所定の区画の目付を、長さ方向の所定の位置の代表目付とする。また、この場合、厚さの最小側の端は、厚さが最小の区画における、長さ方向の厚い側とは反対側の端とし、厚さの最大側の端は、厚さが最大の区画における、長さ方向の薄い側とは反対側の端とする。
【0028】
不織布を構成する繊維の繊維径は、内容物の漏出をより効果的に防止する観点、損傷部位の修復治癒過程をより促進する観点等から、その中央値が32μm以下であるのが好ましい。また、血液等の体液をより効果的に浸透させる観点等からは、0.6μm以上であるのが好ましい。繊維径は、例えば、不織布が概ね均一な繊維径となる製法で得られた場合は、後述する実施例の欄に記載の方法により測定することができ、中央値を求めることができる。また、繊維径が不織布の部位により異なる場合は、例えば、概ね均一な繊維径の場合と同様にしてその部位ごとに繊維径を測定し、中央値を求めることができる。ここで、中央値とは、統計学上の中央値と同義である。
【0029】
不織布は、前述の漸増部を有する構造であればよい。したがって、例えば、漸増部の厚さが最大となる端から長さ方向に漸減する部分や増減を繰り返す部分等が連設されていてもよいが、医療用テープを弛みなく巻き付けて不織布同士を密着させ易くする観点からは、漸増部の厚さが最小となる端には、長さ方向に漸増する部分が連接されないのが好ましい。不織布の形状は、特に限定はなく、長方形、平行四辺形、台形、菱形、長円形等が挙げられる。また、前述のように厚さが同一の方向の仮想直線と、長さ方向の仮想直線とがなす角度は直角でも良いし鋭角であってもよい。また、不織布の漸増部の長さ方向の厚さが最大側の端部から延びる部分には、巻き付けた不織布と物理的に係合可能な凸部が形成された部材が設けられていてもよい。
【0030】
不織布は、管腔状器官の外周に不織布同士を重ねて巻き付けた状態で前記管腔状器官の組織細胞を含む体液が前記不織布に浸透可能であるように構成される。このように構成することで、医療用テープを管腔状器官の外周に巻き付ける際に、体液が不織布に浸透し、不織布同士の摩擦力が増して、管腔状器官の拡径収径により生ずるずれ応力に対する抗力が得られる。また、損傷部位の修復治癒過程が促進される。このような構成を付与する因子としては、不織布の厚さ、目付、繊維径、繊維の材料等が挙げられる。これらを複合的に調整することで、所望の浸透性を調整することができるが、例えば、実施例の欄に記載のようにして求めることができる繊維間隔を、好ましくは20~800μm、より好ましくは30~400μmとする場合に、損傷部位の修復治癒過程がより効果的に促進させ得る。尚、実施例の欄において説明するように、不織布の製法に応じて繊維間隔の測定方法を変更するものとする。例えば、メルトブロー法及びエレクトロスピニング法の場合(概ね、繊維により貫通孔が明確形成されてない場合)と、編物の布帛を複数枚重ねて交絡させるニードルパンチ法の場合(概ね、繊維により貫通孔が明確に形成されている場合)とでは異なる測定法を採用する。
【0031】
前述の不織布は、従来公知の方法を用いて製造することが可能である。例えば、メルトブロー法、エレクトロスピニング法、ニードルパンチ法などが挙げられる。(a)メルトブロー法では、例えば、一般的な装置を用いて合成樹脂の吐出量を変化させたり、一般的な装置のノズルの孔の配置を調整したりするなどして、所望の漸増部を有する不織布を得ることができる。(b)エレクトロスピニング法では、例えば、合成樹脂液を電界内で線状に飛ばして、標的に積層する際に、標的を左右に偏重して動かすことで、所望の漸増部を有する不織布を得ることができる。また水溶性のスペーサを用いて不織布を形成した後水洗してスペーサを除去することで前述の繊維間隔を調整することもできる。(c)ニードルパンチ法では、例えば、複数の編物の布帛を重ね合わせた後交絡させて不織布を形成する際に、布帛の重ね合わせ方を調整するなどして所望の漸増部を有する不織布を得ることができる。このうち、所望の不織布を得やすいため、メルトブロー法が好ましい。即ち、メルトブロー不織布が好ましい。
【0032】
前述の医療用テープは、管腔状器官に巻き付けられた状態で管腔状器官の組織細胞を含む体液が不織布に浸透可能であるため、例えば血液の凝固作用により巻き付けられた隣接する不織布同士を接着することができるが、より良好な接着効果を得る観点から、不織布を巻き付ける際に、患者自身の血液以外に固着剤を不織布に塗布してもよい。このような固着剤としては、例えば、フィブリン糊、アルギン酸又は薬理学上許容されるアルギン酸と一価の陽イオンの塩及び多価陽イオンの混合物(混合後の生成物を架橋アルギン酸とも称する。)、シリコーン系接着剤、嫌気性接着剤、シアノアクリレート系接着剤、光硬化型接着剤などが挙げられる。薬理学上許容されるアルギン酸の一価の陽イオンの塩における一価の陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。また、多価陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等の無機多価イオンやポリリジン等の有機多価イオン等の多価の陽イオンが挙げられる。尚、多価陽イオンとしては、このような多価陽イオンを含む各種の塩の形態であってよい。このような塩としては、例えば、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸第一鉄等が挙げられる。固着剤は、巻き付ける直前に予め不織布の表面の全体又は部分的に塗布した状態にしてから用いてもよいし、巻き付けながら塗布してもよいし、巻き付けた後に塗布してもよい。このように、前述の医療用テープと固着剤とを組み合わせて、治療用キットとして各種の管腔状器官の治療に用いることができる。
【0033】
前述の医療用テープ、或いは、これと固着剤とを組み合わせた治療用キットは、各種の管腔状器官の治療に用いることができるが、血管の外周に巻き付け可能な止血用、尿管の外周に巻き付け可能な尿漏れ防止用、胆道系の胆汁漏出防止用、気道の空気漏れ防止用、生殖器系の生殖器管腔臓器壁修復用、神経系髄液漏出防止用などとして好適である。
【実施例0034】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0035】
(実施例1)
<不織布の作製>
乳酸とε-カプロラクタムのブロック共重合体(以下、「LA-CL」と称する。)(株式会社BMG製、乳酸に由来する構成単位の含有率:73~77モル%、ε-カプロラクトンに由来する構成単位の含有率:23~27モル%、固有粘度:1.2~1.8dL/g(Polarimetry Chloroform, 25℃,濃度=0.1g/dL)、Melting range: 104~114℃(DSC測定、10℃/Min))を用い、ノズルの孔の配置を調整した一般的な装置を用いたメルトブロー法により、繊維径は不織布全体で概ね均一で、厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する部分を有する不織布(メルトブロー不織布)を作製した。得られた不織布を用い、幅10mm、長さ100mmの長方形となるように裁断し、長さ方向の厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する漸増部を含む不織布1を作製した。尚、不織布1は、長さ方向に直交する方向が概ね同じ厚さである。
【0036】
<厚さの測定>
得られた不織布1について、長さ方向の所定の位置の厚さを以下のように測定して算出した。
薄い側の端から5mmの位置から始めて、厚い方へ向かって10mm間隔で測定部位を決め、各部位における厚さを測定した。測定に際しては、不織布1を5枚重ねたものを1セットとして、その不織布5枚分の厚さをダイアル式精密厚さ測定器(尾崎製作所製、G-7C)で3回測定し、3回の算術平均の値を不織布5枚分の厚さとした。また、5枚の不織布を重ねた1セットを、5セット別々に準備して前述のようにして厚さを測定し、その5セットの測定値の算術平均から、不織布1枚分の厚さを算出した。結果を表1に示す。
【0037】
<目付(面密度)の測定>
得られた不織布1について、長さ方向の所定の位置の目付(面密度)を以下のようにして測定し、算出した。
厚さの測定の場合と同様にして、薄い側の端から5mmの位置から始めて、厚い方へ向かって10mm間隔で測定部位の中心位置を決め、隣接する中心位置の中間点で切断し、長さ方向10mm幅の切断片(大きさ:10mm×10mm)を10個作製した。同様にして作製した同じ中心位置の切断片10枚を1セットとして準備した。秤量に際しては、この1セット10枚分の重量を一度に纏めて、マイクロ天秤(Sartorisu Lab Instruments GmbH & Co. KG社製、PRACTUM124-1S)で秤量した。一度に測定する10枚分の1セットは、別々に5セット準備して前述のようにして秤量し、その5セットの各秤量値を算術平均した値を10で割って1枚分の重量を算出した。結果を表1に示す。表1の結果より、不織布1の漸増部は薄い側の端からの距離が90mmまでの部分とみなす。そして、例えば、厚さの最小側の端から33%(=10×3/90×100)までの部分の目付が14.4g/m2となり、厚さの最大側の端から11%(=10/90×100)までの部分の目付が31g/m2(即ち、薄い側の端からの距離が85mmである中心位置を有する切断片の目付の値)。
【0038】
【0039】
<繊維径の中央値の測定>
測定法はHoriiの方法(Horii T., The effects of fiber diameter and spacing-size of an artificial scaffold on the in vivo cellular response and tissue remodeling, ACS Applied Bio Materials 2021, in press)に準じた。まず予備の走査型電子顕微鏡(走査電顕)検査として、鋭利なカッターで不織布1を切断し、ステンレス製六角治具に巻きつけて牽引して不織布1の断端の内部を開いて固定し、その断端近傍の不織布内部の繊維を走査電顕で撮像した。この像により、不織布内部の繊維は、全てがほぼ円形であること、数珠玉状、棍棒状や分枝状の形状の繊維が無いことを確認したが、まれに二本の繊維が平行して接着している形状が認められた。そこで、繊維の断面形状が8字型や断面の最大直径と最小直径の差が1.2倍以上のものは、繊維径の測定には不適と考え、次に行う繊維径の測定には用いないこと(選定基準)とした。次に繊維径の測定を行った。すなわち、不織布1を液体窒素で凍結・硬化した後、小型ハンマーで打撃を加えて凍結硬化している不織布1を破断した。次に、不織布1の切断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、製品名S-570)で撮影した。この時、1つの視野で後述する個数以上の測定が可能な断面が存在する画像を1か所以上撮影した。得られた1つの視野の撮像から、前述の予備の走査電顕検査による選定基準に基づき、切断面に露出した繊維断面の中から無作為に50個の繊維断面を選定した。距離測定ソフト(開発元:Wayne Rasband (NIH)、製品名:ImageJ)を用いて、選定した繊維断面の最長直径と最短直径の和を求め、これを2で割った値を繊維径とした。この様にして測定した50個の繊維径の中央値(統計学における中央値と同義である。)を求めた。2つ以上の視野を用いる場合は、それぞれについて中央値を求め、さらにそれらの中央値を撮影した切断面の長さ方向の位置の繊維径の中央値とする。以上の測定は、不織布の長さ方向の、両端部から15mm以内の部分と中央部の三か所での切断面において測定し、得られた中央値の中央値を、不織布1の繊維径の中央値とした。その結果、不織布1の繊維径の中央値は、15μmであった。
【0040】
<繊維間隔の測定>
<<測定法a>>
測定法はHoriiの方法(Horii T., The effects of fiber diameter and spacing-size of an artificial scaffold on the in vivo cellular response and tissue remodeling, ACS Applied Bio Materials 2021, in press)に準じた。すなわち、不織布1を液体窒素で凍結・硬化した後、小型ハンマーで打撃を加えて凍結硬化している不織布1を破断した。次に、不織布1の断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、製品名S-570)で撮影した。得られた撮像に基づき、切断面に露出した繊維断面の中から無作為に一つの繊維を選定し、その選定した繊維断面の中心を円心とする同心円を描いた。同心円の半径を徐々に拡大していき、この同心円内に入る他の繊維断端にマークを付けた。このマークを付けられた繊維断端を同心円の円心から距離が近い順番に30個選び、距離測定ソフト(開発元Wayne Rasband (NIH)、製品名ImageJ)を用いて選定した繊維断端の円心とマークを付けた各繊維断端との距離、すなわち選定した繊維断端の中心と他の30個の繊維断端との距離を測定して、これを繊維間隔として測定した。測定した30個の繊維間隔の中央値(統計学における中央値と同義である。)を求めた。同様にして一つの不織布1の切断面について3か所を無作為に選んで3つの視野の中央値をそれぞれ求め、求めた3つの中央値の中央値をその不織布1の切断面の位置の繊維間隔とした。以上の繊維間隔の測定は、不織布の長さ方向の、両端部から15mm以内の部分と中央部の三か所での切断面において測定し、得られた中央値の中央値を、不織布1の繊維径の中央値とした。その結果、不織布1の繊維間隔は、54μmであった。
【0041】
(実施例2)
LA-CLに替えて、ポリグリコール酸(以下「PGA」と称する。)(株式会社BMG製、バイオデグマー(登録商標)PGA、平均分子量35万、融点:225~232℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、厚さが一方端側から他方端側に向かって漸増する不織布2を作製した。また、実施例1と同様にして、不織布2の長さ方向の厚さ、目付を測定、算出した。結果を表2に示す。表2の厚さの測定結果より、不織布2の全体が漸増部となる。
【0042】
【0043】
<繊維径の測定>
実施例1と同様にして繊維径を測定し、その中央値を求めた。その結果、繊維径の中央値は、4.2μmであった。
【0044】
<繊維間隔の測定>
実施例1と同様に測定し、繊維間隔を求めた。その結果、繊維間隔は、32μmであった。
【0045】
(比較例1)
LA-CAを用い、メルトブロー法により、厚さが均一な不織布1Aを作製した。厚さは、実施例1で得られた不織布1の最も薄い部分を含む区画の厚さ(15μm)及び目付(0.30mg/cm2)と同程度の厚さ及び目付となるようにした。得られた不織布1Aについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0046】
(比較例2)
LA-CAを用い、メルトブロー法により、厚さが均一な不織布1Bを作製した。厚さは、実施例1で得られた不織布1の中間程度の厚さ及び目付となるようにした。得られた不織布1Bについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0047】
(比較例3)
LA-CAを用い、メルトブロー法により、厚さが均一な不織布1Cを作製した。厚さは、実施例1で得られた不織布1の最も厚い部分を含む区画の厚さ及び目付と同程度の厚さ及び目付となるようにした。得られた不織布1Cについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0048】
(比較例4)
LA-CAを1,3-ジオキソランに溶解して得られた15重量%樹脂溶液用い、エレクトロスピニング法により、厚さが均一な不織布1Dを作製した。厚さは、実施例1で得られた不織布1の最も薄い部分を含む区画の厚さ(15μm)及び目付(0.30mg/cm2)よりもさらに小さい厚さ及び目付となるようにした。得られた不織布1Dについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0049】
(比較例5)
PGAを用い、メルトブロー法により、厚さが均一な不織布2Aを作製した。厚さは、実施例2で得られた不織布2の最も薄い部分を含む区画の厚さ(40μm)及び目付(0.50mg/cm2)と同程度の厚さ及び目付となるようにした。得られた不織布2Aについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0050】
(比較例6)
市販の不織布(グンゼ株式会社製、ネオベールナノ(登録商標) D5、材料:PGA繊維、製法:メルトブロー法、厚さ:均一)を用いて、幅10mm、長さ100mmとなるように裁断し、長さ方向の厚さが均一な不織布2Cを作製した。不織布2Cについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0051】
(比較例7)
市販の不織布(グンゼ株式会社製、ネオベール(登録商標)シート 015G、材料:PGA繊維、製法:平均繊維径16μmのモノフィラメント10~12本を束ねたてマルチフィラメントの編物を複数枚重ねてニードルパンチ法で交絡させたもの、厚さ:均一)を用いて、幅10mm、長さ100mmとなるように裁断し、長さ方向の厚さが均一な不織布2Bを作製した。不織布2Bについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値を実施例1の場合と同様にして求めた。繊維間隔は下記のようにして求めた。結果を表3に示す。
【0052】
<繊維間隔の測定>
<<測定法b>>
不織布の表面を実体顕微鏡(Carl Zeiss社製、製品名:Stemi 2000-C、光源:KL1500 LCD、倍率10倍以下、表側と裏側の両側から光源照射)で撮影し、得られた撮像をコンピュータ画像システム(Carl Zeiss社製、AxioVision)に取り込み、取り込まれた画像に基づき、距離測定ソフト(開発元:Wayne Rasband (NIH)、製品名:ImageJ、0.01μmまで測定可能)を使用して繊維間隔を求めた。繊維間隔の算出は、編物中のフィラメント糸により形成されている1つのループにより形成されている孔を無作為に30個選択し、ループの孔が涙滴形あるいは多角形の場合は、涙滴形あるいは多角形の最も長い対角線とそれに垂直な最も長い孔の横断線の和を2で割った値を孔の直径とした。この直径として求めた30個の値の中央値(統計学における中央値と同義である。)を繊維間隔とした。
【0053】
(比較例8)
PGA(実施例2と同じもの)を1,3-ジオキソランに溶解して得られた15重量%樹脂溶液用い、エレクトロスピニング法により、厚さが均一な不織布2Dを作製した。厚さは、実施例2で得られた不織布2の最も薄い部分を含む区画の厚さ(40μm)及び目付(0.50mg/cm2)よりもさらに小さい厚さ及び目付となるようにした。得られた不織布2Dについて、長さ方向の一方端からの距離が95mm及び5mmの位置の厚さ及び目付を実施例1と同様にして測定、算出した。また、繊維径の中央値及び繊維間隔を実施例1の場合と同様にして求めた。結果を表3に示す。
【0054】
【0055】
(評価1)
実施例1、2及び比較例1~8の各不織布を医療用テープ(止血用テープでもある。評価1において以下同じ。)として用い、実験動物の損傷させた血管に対する止血及び修復促進について評価した。実験方法及び結果は以下のとおりである。
【0056】
<実験方法>
体重12kg前後のビーグル犬を実験動物として用いた。本実験は止血困難な心臓血管手術時の使用を想定し、ヘパリンによる血液抗凝固状態を作成して実験を行った。全身麻酔下に犬の腹部大動脈、頸動脈、総腸骨動脈を露出した。血管鉗子でこの動脈血流を遮断し、動脈の壁を径の半分にまで径方向に壁全層に渡り横切することにより動脈壁の損傷部位を作成した(
図1(a)参照)。血流再開時に動脈圧の負荷により内膜層と中膜層の間に剥離裂け込みが自然に発生するのを防止する目的で横切した動脈壁の断端同士を、横切部位の中央と両側の端の合計三か所に一針ずつ、合計三針、6-0血管縫合糸で緩く縫合した(
図1(b)参照)。
【0057】
この際、医療用テープとしての各不織布は、総頸動脈では幅10mmで長さ60mmのものを、総腸骨動脈では幅10mmで長さ80mmのものを、腎動脈分岐部の末梢側の腹部大動脈では幅10mmで長さ100mmのものを用いた。これらの内で総頸動脈用の幅10mmで長さ60mmのものと、総腸骨動脈用の幅10mmで長さ80mmのものの作成に際しては、実施例では厚さの厚い側を切除破棄することにより、残る厚さの薄い側を含む不織布の長さ60mmあるいは80mmの部分を、総頸動脈用の長さ60mmの医療用テープあるいは総腸骨動脈用の長さ80mmの医療用テープとして使用した。比較例では、不織布の長さ方向の厚さに差異が無いので、いずれか一方端の長さ20mmあるいは40mmの部分を切除破棄し、残った長さ60mmあるいは80mmの部分を、総頸動脈用の長さ60mmの医療用テープあるいは総腸骨動脈用の長さ80mmの医療用テープとして使用した。
【0058】
各医療用テープを、前述の動脈壁を横切して損傷させた動脈壁の損傷部位の周囲の動脈の全周に、不織布同士が重なるように巻き付け、止血操作を行った。実施例では、厚さが漸増する漸増部があるため、巻き付けに際しては、最初に(即ち、巻き付けた時の最も内側の層として)厚さの最も薄い端から巻き付け、この上に更に不織布を巻き重ねて、最も厚い側の端を最後に巻き付ける(すなわち最も外側の層となる)ように、医療用テープを巻き付けた。この巻き付けに際し、医療用テープは、最初の動脈壁にも、また巻き付ける医療用テープを構成する不織布同士も、弛み無く密着するように心掛けて、医療用デープを軽く牽引しながら巻き付けた。比較例では不織布の厚さが均一であるため、最初に巻き付ける端には拘らなかったが、実施例の場合と同様にして医療用テープを巻き付けた。
【0059】
巻き付けには、1回あたり3分という時間内に完全に巻き付けるように時間制限を設定した。その理由は、テープの操作性も評価するためである。操作性については各操作者に個別に、各実施例と比較例の医療用テープ毎に(i)実用上で総合的操作性が良いと思われる医療用テープに「〇」印、実用上の操作性に課題があると思われる医療用テープに「×」印をつける評価、および(ii)操作者が感じた操作上の使用感について、100字以内でコメントを記載してもらった。
【0060】
完全に巻き付けが終わった状態で、固着剤として、自己血液、アルギン酸及びカルシウムイオン、又は、フィブリン糊を医療用テープの不織布に十分に浸透させて5分間静置し(
図1(c)参照)、その後血管鉗子を除去した。血管鉗子除去後から7分間、前述の各動脈壁の損傷部位からの出血の有無を観察し、完全に止血していて医療用テープを巻き付けた損傷部位から全く出血を認めない場合を完全止血と判定した(
図1(d)参照)。またこの7分間に僅かでも出血の兆候を認めた場合には出血と判定した。
【0061】
止血操作を含む手術手技は、独立に2名の外科医が、全く同じ操作を行った。同名の動脈の止血操作の実験は、一匹の動物について1箇所とした。1名の外科医が1種類の医療用テープについて止血操作を行った部位は、腹部大動脈2カ所、総腸骨動脈2カ所、総頸動脈2カ所の合計6箇所であり、1種類の医療用テープには2名の外科医によって12回の止血操作が行われたことになる。
【0062】
<実験結果>
<<短期の止血効果>>
(1)実施例1及び比較例1~4
実施例1及び比較例1~4の各不織布で構成された医療用テープの止血操作では、3分以内に医療用テープの血管への巻き付けが完了したが、表4に示すように、実施例1の不織布1で構成された医療用テープを用いた場合は、12回の止血操作の全てにおいて完全な止血が達成された。他方、比較例1~4の不織布1A~1Dの医療用テープを用いた場合は、何れも完全止血が出来ない場合が存在した。操作性に関しては、実施例1のものについては2名の外科医は何れも操作性が良好(○)と評価したが、全ての比較例1~4のものは、実施例のものより操作性が劣り、課題があると評価した。またその課題の内容は、両外科医の間でほとんど同じであった。
【0063】
【0064】
(2)実施例2及び比較例5~8
実施例2及び比較例5~8の各不織布で構成された医療用テープの止血操作でも、3分以内に医療用テープの血管への巻き付けが完了したが、表5に示すように、実施例2の不織布2で構成された医療用テープを用いた場合は、12回の止血操作の全てにおいて完全な止血が達成された。他方、比較例5~8の不織布2A~2Dの医療用テープを用いた場合は、何れも完全止血が出来ない場合が存在した。操作性に関しては、実施例2のものについては2名の外科医は何れも操作性が良好(○)と評価したが、全ての比較例5~8のものは、実施例のものより操作性が劣り、課題があると評価した。またその課題の内容は、両外科医の間でほとんど同じであった。
【0065】
【0066】
<<長期の修復促進作用>>
前述のようにして止血操作を行った実験動物を、観察期間2月、4月又は6月を経過した後に安楽死せしめて解剖し、止血操作を加えた動脈を摘出して肉眼的および実体顕微鏡下に病理学的に治癒状態を評価した。その後ホルマリン固定を施して通常の方法に従って厚さ4μmのヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色組織学的標本として、光学顕微鏡下に治癒状態を評価した。
【0067】
実施例1、2の医療用テープを用いて前述のようにして止血操作を行った実験動物は、全て、前述の観察期間において元気に生存した。そして、前述のようにして、止血操作を行ってから観察期間経過後に止血操作を加えた全ての動脈壁の修復状態を病理学的に検討した。実施例1、2の医療用テープを用いた実験動物の結果のうち、総頸動脈及び総腸骨動脈の結果を
図2に示す。
図2(a)は、実施例1の医療用テープを巻き付けた損傷部位を含む実験動物から摘出した総頸動脈の実体顕微鏡の画像を示した図、
図2(b)は、同じく摘出した総腸骨動脈の実体顕微鏡の画像を示した図、
図2(c)は、
図2(a)で示される摘出した総頸動脈のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図、
図2(d)は、
図2(b)で示される総腸骨動脈のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。尚、他の動脈及び実施例2の医療用テープを用いた場合も同様の画像が得られた。
【0068】
図2等に示すように、全ての部位において再出血を生じたことを示す所見は全く認めなかった。また、動脈壁の修復状態も順調な治癒過程を経過した完全治癒が達成されており、実施例1、2の治療用テープによる病的異物反応などの病的所見や、動脈損傷部位の修復過程における異常な経過を示す所見である動脈瘤化や瘢痕性動脈狭窄や瘢痕性動脈閉塞、血栓性動脈狭窄や血栓性動脈閉塞、動脈壁の解離性変化や感染性変化などの病的所見は全く認めなかった。
【0069】
比較例1~8の医療用テープを用いた実験動物では、4月以内に腹部大動脈からの出血で死亡したものが複数認められた。実施例1、2の場合と同様にして、検討を行ったところ、各比較例の医療用テープを用いた実験動物のうち1匹以上で、肉眼的あるいは病理組織学的に、動脈瘤形成や出血を示す血腫形成あるいは血腫の瘢痕治癒した痕跡が認められた。
【0070】
以上の結果から、実施例1、2の医療用テープは、早期の止血効果で完全な止血が可能であるのみならず、長期の血管損傷部位の修復においても優れた血管壁の再生修復を助ける効果が期待できると考えられた。
【0071】
(評価2)
実施例1及び比較例1~3の各不織布を医療用テープ(尿管用テープでもある。評価2において以下同じ。)として用い、実験動物の修復再建手術を行った尿管に対する尿漏れ防止及び修復促進について評価した。実験方法及び結果は以下のとおりである。
【0072】
<実験方法>
体重12kg前後のビーグル犬を実験動物として用いた。本実験は、尿管の部分的切離と切離部分断端の尿管を端々に吻合して修復再建する手術時の使用を想定した実験を行った。全身麻酔下に犬の尿管を露出した。犬実験用尿管カテーテル(クリエートメデイック株式会社製、動物用細径フォーリーカテーテル4.5フレンチサイズ)を、膀胱内から逆行性に腎盂まで進めてここで留置した。次に、尿管を中央部で切離し、長さ2cmに渡って切除した。この尿管切除により残った腎側と膀胱側の尿管断端を次の操作で端端に吻合した。すなわち、カテーテルを通した状態で尿管の両断端を寄せておいて、7-0血管縫合糸を用いて両断端を全層単結節で緩く寄せるように縫合結紮した。単結節の縫合結紮は等間隔に行い、3針に留めた。この状態で、尿管内のカテーテル先端を尿管吻合部の腎臓側10mmの所に移動させた。次に、カテーテルの膀胱側の管口に、着色生理食塩水を入れたシリンジと水圧計を平行に連結し、このシリンジ用いてカテーテル内を10cm水柱圧で加圧し、この圧が尿管吻合部に伝わって、尿管吻合の縫合部から着色性食塩水がスムーズに腹腔内に漏出することを確認した。
【0073】
医療用テープとしての不織布は、幅10mmで長さ60mmのものを用いた。その作製に際しては、実施例1では厚さの薄い側の端から40mmを切除破棄することにより、残る厚さの厚い側を含む不織布の長さ60mmの部分を医療用テープとして用いた。比較例では、不織布の長さ方向の厚さに差異が無いので、いずれか一方端から長さ40mmの部分を切除破棄し、残った長さ60mmの部分を医療用テープとして用いた。
【0074】
各実験動物の尿管吻合部の周囲に全周に、前述の不織布で構成される各医療用テープを、3分以内に、薄い端を巻き始め端として巻き終わりまでタイトに巻きつけた。この状態の上から20mg/mlの濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液(富士化学工業株式会社製、スノーアルギンSSL)と10%グルコン酸カルシウム水溶液を1mlずつ同時に、かつ2回に分けて散布し、その後不織布に十分に浸透させるべく5分間静置した(
図3参照)。その後、カテーテルの膀胱側に連結したシリンジを加圧しながら、着色生理食塩水をカテーテル内に徐々に圧入し、吻合部から着色生理食塩水が漏出するか否かを視認した。判定は、吻合部周囲のアルギン酸が少しでも着色生理食塩水と同じ青色に着色した時点を漏出と判定し、シリンジの加圧力が100cmH
2O(101kPa、ゲージ圧)まで加圧して漏出の無い場合を合格(完全漏出防止)とした。また、操作性については、評価1の場合と同様に(i)及び(ii)により判定した。結果を表6に示す。
【0075】
一連の尿管を修復再建する手術手技は、独立に2名の外科医が、全く同じ操作を行った。
【0076】
<実験結果>
<<短期の尿漏れ防止効果>>
実施例1及び比較例1~4の各不織布で構成された医療用テープの巻き付け操作では、3分以内に医療用テープの血管への巻き付けが完了したが、表6に示すように、実施例1の不織布1で構成された医療用テープを用いた場合は、6回の巻き付け操作の全てにおいて完全な尿漏れ防止が達成された。他方、比較例1~4の不織布1A~1D構成された医療用テープを用いた場合は、何れも完全な尿漏れ防止が出来ない場合が存在した。操作性に関しては、実施例1のものについては2名の外科医は何れも操作性が良好(○)と評価したが、比較例1~4のものは、実施例のものより操作性が劣り、課題があると評価した。またその課題の内容は、両外科医の間でほとんど同じであった。
【0077】
【0078】
<<長期の修復促進作用>>
前述のようにして一連の尿管を修復再建する手術を行った各実験動物を、観察期間3月経過した後に安楽死せしめ、吻合部の尿管を摘出して、肉眼的および立体顕微鏡下に病理学的に治癒状態を評価した。その後ホルマリン固定を施して通常の方法に従って厚さ4μmのヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色組織学的標本として、光学顕微鏡下に治癒状態を評価した。
【0079】
実施例1の医療用テープを用いて前述のようにして手術手技を行った実験動物は観察期間中元気に生存した。そして、前述のようにして摘出した吻合部の尿管の尿管壁の修復状態を病理学的に検討した。実施例1の医療用テープを用いた実験動物の結果を
図4、5に示す。
図4は、摘出した吻合部を含む尿管等の標本の肉眼写真を示した図である。矢印で示した部分が尿管の吻合部である。
図4に示すように、尿管は全体にスムーズであり、吻合部を含む尿管は健常な状態であることが分かる。
図5は、
図4の矢印で示した吻合部のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。
図5に示すように、尿管(符号A)とその周囲の疎性結合組織(符号B)の間には、尿の漏出による空間形成は認められないことが分かる。周囲組織内には点線で囲まれた部分で示す少量の不織布が残存しており、吻合部の治癒が良好であることが分かる。
【0080】
比較例3の医療用テープを用いて前述のようにして手術手技を行った実験動物の結果を
図6、7に示す。尚、比較例1~3の医療用テープを用いた各実験動物のうちで完全漏出防止が出来なかった個体10匹は、動物愛護の観点から実験対象から除外した。残る完全漏出防止が出来た個体8匹は、実施例と同様に3月観察し、観察期間中元気に生存した。
図6は、3月間経過を観察した後に摘出した吻合部を含む尿管等の標本の肉眼写真を示した図である。矢印で示した部分が尿管の吻合部である。
図6に示すように、尿管は全体に浮腫状であり、尿管全体に慢性炎症の継続が示唆される状態である。
図7は、
図6の矢印で示した吻合部のH-E染色組織学的標本の断面の光学顕微鏡の画像を示した図である。
図7に示すように、尿管(符号A)とその周囲の疎性結合組織(符号B)の間には、尿の漏出により形成された大きな空間(符号C)が認められる。また、周囲組織内には点線で囲まれた部分で示す多量の不織布が残存しており、吻合部の治癒は良好ではないことが分かる。
【0081】
以上のように、実施例1の医療用テープを用いた場合は、尿管の狭窄や尿の漏出が生じたことを示す所見は全く認められず、尿管上皮が連続的に再生し順調な治癒過程を経たことがわかった。一方、例えば比較例3の医療用テープの場合は、手術時には、一旦は完全に尿漏出を防止できたと考え経過観察を行った個体でもその後に尿の漏出が発生し、吻合が完全ではなかった。したがって、実施例1の医療用テープは、早期の尿漏れ防止効果で完全な尿漏れの防止が可能であるのみならず、長期の吻合部位の修復においても優れた尿管壁の再生修復を助ける効果が期待できると考えられた。