IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社幸和製作所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002818
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】歩行補助車
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
A61H3/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175958
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2019207838の分割
【原出願日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019035618
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598087841
【氏名又は名称】株式会社幸和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 慶輔
(72)【発明者】
【氏名】藤田 瑛仁
(72)【発明者】
【氏名】峯垣 淳平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】城戸 遼
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 章
(57)【要約】
【課題】安全性を向上させた歩行補助車を提供する。
【解決手段】歩行補助車は、アームレスト31に置いた腕で握ることが可能な把手部32を有する上部フレーム21と、補助対象者の前方において上下方向に延びる接続部を介して上部フレーム21を支持し且つ車輪1を有する下部フレーム20と、補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッド30aと、第1胴体パッド30aよりも上方に位置し、後方へ転倒しそうなった補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッド30bと、膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、補助対象者の折り曲げた膝に接触して膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータ80と、膝サポータ80よりも下方に位置し、補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と下部フレーム21の間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイド81と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレストと、前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部と、を有する上部フレームと、
前記補助対象者の前方において上下方向に延びる接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレームと、
前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッドと、
前記第1胴体パッドよりも少なくとも一部が上方に位置し、後方へ転倒しそうなった前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッドと、
前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、前記補助対象者の折り曲げた膝に接触して当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータと、
前記膝サポータよりも下方に位置し、前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイドと、
を備える、歩行補助車。
【請求項2】
前記第2胴体パッドは、前記補助対象者の胴体を支持するための支持姿勢と、前記補助対象者の離脱を許容する離脱許容姿勢と、を切り替え可能に構成されている、請求項1に記載の歩行補助車。
【請求項3】
前記膝サポータが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第1曲面を有し、
前記車体下侵入禁止ガイドが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第2曲面を有し、
前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい、請求項1又は2に記載の歩行補助車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自力での歩行が困難な補助対象者の歩行を補助するための歩行補助車に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、病人、身体障害者、あるいは高齢者などの、足腰が弱く自力での歩行が困難な補助対象者の歩行を補助するための歩行補助車が知られている。例えば、特許文献1に記載の歩行補助車は、車輪と、車輪にブレーキをかけるためのブレーキレバーを有するブレーキ機構と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-68784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歩行時の安全性や安定性を向上させるための一つの有効な手段として、補助対象者の胴体を支持するための胴体支持部を設けることが考えられる。補助対象者が歩行補助車を支えに立ち座りを行う場合に、胴体支持部が支持する位置まで体を動かす動作と、車輪のロックに関する操作との双方を同時又は順序立てて実行する必要がある。これは、利便性を損なうおそれがあり、また、必要な操作を失念すれば安定性が損なわれる恐れが考えられる。
【0005】
本開示の目的は、安全性と利便性との双方を向上させた歩行補助車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の歩行補助車は、
車輪を有する本体フレームと、
前記本体フレームに設けられ、補助対象者の胴体を左右側方から支持するための胴体支持部と、
前記車輪をロックするためのロック部材をロック位置又は非ロック位置のいずれかに電磁的に移動可能に構成された電磁ロック機構と、を備え、
前記胴体支持部は、補助対象者の胴体を支持するための支持姿勢と、補助対象者の離脱を許容する離脱許容姿勢とを切り替え可能に構成されており、
所定第1操作に応じて前記胴体支持部の姿勢を前記支持姿勢に切り替えると共に前記ロック部材を前記非ロック位置に移動させ、
所定第2操作に応じて前記胴体支持部の姿勢を前記離脱許容姿勢に切り替えると共に前記ロック部材を前記ロック位置に移動させるように構成されている。
【0007】
この構成によれば、胴体支持部の姿勢が支持姿勢に切り替わる歩行開始時に、自動的に車輪のロックが解除され、胴体支持部の姿勢が離脱許容姿勢に切り替わる歩行終了時に、自動的に車輪のロックがなされるので、安全性を確保可能となる。それでいて、車輪のロックに関する操作をしなくても胴体支持部の姿勢を変更するための操作を行うだけで車輪がロック又はロック解除されるので、1つの操作で2つの動作を実現でき、利便性を向上させることが可能となる。
したがって、安全性と利便性との双方を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を前方上方から見た斜視図
図2】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を後方上方から見た斜視図
図3】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を前方から見た正面図
図4】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を後方から見た背面図
図5】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を左側方から見た側面図
図6】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を上方から見た平面図
図7】第1実施形態の歩行補助車(胴体支持部が支持姿勢)を下方から見た底面図
図8】第1実施形態の歩行補助車の制御系を示すブロック図
図9】車輪の状態、電磁ロック機構の位置、及びブレーキ部の関係を示す図
図10】車輪の状態、電磁ロック機構の位置、及びブレーキ部の関係を示す図
図11】胴体支持部が離脱許容姿勢にある状態を示す背面図
図12】胴体支持部が離脱許容姿勢にある状態を示す側面図
図13】胴体支持部が離脱許容姿勢にある状態を示す平面図
図14】プロセッサが実行する処理ルーチンを示すフローチャート
図15】第2実施形態の歩行補助車の制御系を示すブロック図
図16】福祉用具のデータ取得システムを示すブロック図
図17】第4実施形態の歩行補助車を前方上方から見た斜視図
図18】第4実施形態の歩行補助車を後方上方から見た斜視図
図19】第1位置決め部材及び第2位置決め部材による荷重受部の第1上限位置に関する説明図
図20】第1位置決め部材及び第2位置決め部材による荷重受部の第2上限位置に関する説明図
図21】第4実施形態の歩行補助車の左側面図
図22】左側の中車輪及び後車輪を内側から見た側面図
図23】第4実施形態の第1車輪と第2車輪と車輪フレームと本体フレームとの位置関係を示す側面図
図24図23に対応する図であって第4実施形態の変形例を示す図
図25】下肢サポータを示す側面図
図26】下部フレームを構成する一部の部材を隠した左側面図
図27】下肢サポータを隠した歩行補助車を示す後方下方から見た斜視図
図28】対面部材と、起立領域と、下肢サポータとの位置関係を示す平面図
図29図28に対応する図であって第4実施形態の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、歩行補助車は、車輪1を有する本体フレーム2と、本体フレーム2に設けられる胴体支持部30と、車輪1をロックするための電磁ロック機構4と、を有する。歩行補助車は、本体フレーム2に設けられた支持部3(胴体支持部30、アームレスト31又は把手部32、33)により補助対象者を支持又はサポートしつつ、車輪1を回転可能にすることで、補助対象者の歩行を補助するために用いられる。
【0011】
<車輪1>
図1~7に示すように、車輪1は、左右で対をなすように本体フレーム2に対して複数対設けられている。本実施形態では、一対の前車輪1F、一対の中車輪1C、一対の後車輪1Rを含む3対の車輪1が設けられているが、これに限定されない。例えば、車輪1の対数を変更してもよい。本実施形態では、車輪1は円盤状の車輪であるが、これに限定されず、ボール形状などを採用してもよい。本実施形態では、中車輪1Cには、3相ブラシレスモータ等の走行電動部が接続されており、補助対象者の歩行速度に応じた速度制御、左右の速度調整による斜行抑制制御などの走行制御がプロセッサ50(図8参照)により実行される。
【0012】
<本体フレーム2>
本体フレーム2は、車輪1を有する下部フレーム20と、支持部3を有する上部フレーム21と、を有する。上部フレーム21は下部フレーム20に昇降自在に支持されている。上部フレーム21は、電動シリンダ等の昇降電動部60(図8参照)の駆動により上昇又は下降する。この構成によれば、上部フレーム21に設けられた支持部3を支えに補助対象者が立ち座り動作を容易に行うことが可能となる。なお、本体フレーム2には図示しないバッテリが搭載されており、各電動部及び制御部の動力源となっている。
【0013】
具体的には、下部フレーム20は、平面視でU字状に形成されたU字部位20aと、U字部位20aの中央部から起立する起立部位20bと、を有する。上部フレーム21は、平面視でU字状に形成されたU字部位21aと、U字部位21aの中央部から垂下する垂下部位21bと、を有する。
【0014】
下部フレーム20のU字部位20aには、左右に対をなす車輪1が前後方向に間隔をあけて複数対(本実施形態では前車輪1F、中車輪1C及び後車輪1Rの3対)配置されている。また、下部フレーム20のU字部位20aは、補助対象者が起立するための足場空間を形成している。これにより、足場空間に起立した補助対象者の前後左右それぞれに車輪1が配置されることになり、補助対象者を適切に支持することが可能になる。下部フレーム20の起立部位20bは、上部フレーム21の垂下部位21bを支持しており、上部フレーム21の昇降動作に伴って上部フレーム21の垂下部位21bを下部フレーム20の起立部位20bが収容するように構成されている。なお、下部フレーム20には、図8に示すように、昇降電動部60と、上部フレーム21が所定上限高さに達したことを検出するスイッチなどの上限センサ61と、上部フレーム21が所定下限高さに達したことを検出するスイッチなどの下限センサ62と、が設けられている。上限センサ61及び下限センサ62は、上部フレーム21の高さ位置検出センサとして機能する。
【0015】
図1~7に戻り、上部フレーム21のU字部位21aは、補助対象者を前方及び左右側方から包囲可能となるサイズに設定されている。上部フレーム21のU字部位21aのうち、補助対象者の左右側方となる部位には、胴体支持部30及びアームレスト31が設けられている。アームレスト31には第2把手部33が一体に形成されている。また、上部フレーム21には、第1把手部32が設けられている。第1把手部32は、アームレスト31の前方に配置され、アームレスト31に腕を置いた状態で握ることが可能な位置に配置されている。
なお、上部フレーム21のU字部位21a、アームレスト31、第1把手部32及び胴体支持部30は、それぞれ位置調整可能に構成されているが、詳細は後述する。
【0016】
上部フレーム21のU字部位21aの中央部には、歩行補助車を操作するための操作部70が設けられている。操作部70は、図8に示すように、上部フレーム21を上昇させる上昇指示ボタン71と、上部フレーム21を下降させる下降指示ボタン72と、胴体支持部30の姿勢を変更させる姿勢変更指示ボタン73と、を有する。これらのボタン71~73が操作されれば、プロセッサ50(制御部)が検知可能に構成されている。
【0017】
<胴体支持部30>
図1~7に戻り、胴体支持部30は、補助対象者の胴体を左右側方から支持するために上部フレーム21に設けられている。胴体支持部30は、補助対象者の胴体を支持するための支持姿勢P1(図4~6参照)と、補助対象者の離脱を許容する離脱許容姿勢P2(図11~13参照)とを切り替え可能に構成されている。本実施形態では、胴体支持部30は、胴体を左右側方から支持するために前後方向に延びる第1胴体パッド30aと、胴体を後方から支持するための第2胴体パッド30bと、を有する。第2胴体パッド30bが第1胴体パッド30aに対して回転により位置変更することにより、胴体支持部30の姿勢を支持姿勢P1又は離脱許容姿勢P2に切り替え可能に構成されている。図4及び図6に示すように、支持姿勢P1における第2胴体パッド30bは、第1胴体パッド30aの支持面30cの少なくとも一部よりも左右方向内側に突出する位置にある。図11及び図13に示すように、離脱許容姿勢P2における第2胴体パッド30bは、第1胴体パッド30aの支持面30cよりも左右方向外側に退避する位置にある。図6に示すように、第1胴体パッド30aの前端部は左右方向内側へ延びており、これにより補助対象者の前方への離脱を禁止している。
すなわち、本実施形態において、胴体支持部30は、補助対象者の胴体を左右側方だけでなく前後方向からも支持可能に構成されており、離脱許容姿勢P2は、補助対象者の後方への離脱を許容している。なお、前後関係を逆にすれば、胴体支持部30は離脱許容姿勢P2において補助対象者の前方への離脱を許容することになる。
【0018】
同4に示すように、支持姿勢P1における第2胴体パッド30bは、第1胴体パッド30aの支持面30cよりも上方に位置するように構成されている。この構成によれば、補助対象者が後方へ転倒しそうになったときに、より高い位置で補助対象者の背中を支持して負担する荷重を低減でき、適切な支持が可能となる。なお、第2胴体パッド30bが第1胴体パッド30aと同じ高さ以下で支持するように構成してもよい。
【0019】
一般的に、歩行時及び歩行停止時を含め、胴体支持部30に対して、左右側方及び下方に向かう補助対象者の荷重が発生しやすい。モータ等の電動部によって胴体支持部30の位置又は姿勢を変更するように構成した場合、構造によっては補助対象者の荷重を電動部が常時負担する場合があり、その場合には、電力消費が大きくなるおそれがある。
そこで、本実施形態では、図4~6に示すように、第1胴体パッド30aは、電動部を介さずに上部フレーム21(本体フレーム2)に直接又は間接的に支持されている。このようにすれば、発生頻度が高い左右側方及び下方に向かう補助対象者の荷重を、電動部を介さずに支持することができ、電力消費を低減可能となる。一方、第2胴体パッド30bは、モータ等の姿勢変更用電動部63(図8参照)を介して第1胴体パッド30aに支持されている。
【0020】
本明細書において、支持姿勢P1は、胴体支持部30が胴体に接触して拘束する姿勢だけを意味するのではなく、胴体との間に隙間が設けられ補助対象者が転倒に至る初期動作の段階で支持可能となる姿勢を含む。また、胴体は特にその部位が特定されるものではないが、当該初期動作の段階で支持可能な有効な部位として胸部を採用することができ、さらには側胸部を採用することができる。
【0021】
<電磁ロック機構4>
図9及び図10は、車輪の状態、電磁ロック機構4の位置、及びブレーキ部の関係を示す図である。図9(a)は、電磁ロック機構4が第1位置P3にあり、ロック部材40が非ロック位置LP2にあり、車輪1が非拘束状態である様子を示す。図9(b)は、電磁ロック機構4が第1位置P3にあり、ロック部材40がロック位置LP1にあり、車輪1が拘束状態である様子を示す。図10は、電磁ロック機構4が第2位置P4にあり、ロック部材40がロック位置LP1にあり、車輪1が非拘束状態である様子を示す。なお、図9及び図10は、電磁ロック機構4及びその周辺構成の動作をわかりやすく説明するために抽象化しており、厳密に示していない。
【0022】
図9及び図10に示すように、電磁ロック機構4は、車輪1(本実施形態では中車輪1C)をロックするためのロック部材40をロック位置LP1又は非ロック位置LP2のいずれかに電磁的に移動可能に構成されている。具体的には、電磁ロック機構4は、励磁に応じてロック部材40を移動させるソレノイドを用いたロック用電動部41を有し、励磁状態でロック部材40が非ロック位置LP2に移動し、非励磁状態でロック部材40がロック位置LP1に移動するように構成されている。ロック位置LP1及び非ロック位置LP2は、ロック用電動部41に対するロック部材40の相対的な位置を意味する。この構成により、歩行補助車の電源がオフでロック用電動部41が非励磁の場合には、原則、車輪1が拘束された状態となる。電磁ロック機構4の駆動はプロセッサ50(図8参照)が制御する。
【0023】
具体的には、図9(a)及び図9(b)に示すように、車輪1に干渉する干渉状態[図9(a)参照]と車輪1に干渉しない非干渉状態[図9(b)参照]とを切り替え可能に構成されたブレーキ部42が設けられている。本実施形態では、ブレーキ部42が常時、非干渉状態になるように付勢されており、ロック部材40がロック位置LP1にあるときにロック部材40がブレーキ部42を押してブレーキ部42が車輪1と干渉状態となり、ロック部材40が非ロック位置LP2にあるときにロック部材40がブレーキ部42を押さずブレーキ部42が車輪1と非干渉状態に復帰する。
【0024】
<手動による車輪1の拘束解除構成>
上記の通り、電磁ロック機構4は非励磁状態でロック部材40をロック位置LP1に位置するように構成されており、その結果、歩行補助車の電源がオフの場合には車体を動かすことができない。そこで、補助対象者以外の人(医療関係者、介護関係者)が容易に移動可能にするために、次の構成を採用している。この構成は任意であり、省略可能である。
【0025】
すなわち、図9及び図10に示すように、ロック部材40を含む電磁ロック機構4は、第1位置P3と第2位置P4とのいずれかに移動可能に構成されている。第1位置P3は、図9に示すように、ロック位置LP1にあるロック部材40が車輪1の拘束を引き起こす位置である。第2位置P4は、ロック位置LP1にあるロック部材40が車輪1の拘束を引き起こさない位置である。電磁ロック機構4は、レバーなどの所定操作部43に連結されており、所定操作部43を動かすことで電磁ロック機構4を第1位置P3又は第2位置P4に移動可能に構成されている。第2位置P4は第1位置P3に比べて電磁ロック機構4をブレーキ部42から離した位置である。
なお、車輪が拘束状態であるかを検出するためのスイッチなどの車輪拘束センサ64(図8参照)が設けられている。
【0026】
<プロセッサ50による制御>
図8に示すように、プロセッサ50は、上昇指示ボタン71、下降指示ボタン72、姿勢変更指示ボタン73、電磁ロック解除操作部74、上限センサ61、下限センサ62、車輪拘束センサ64からの信号を受け、昇降電動部60、姿勢変更用電動部63、及び電磁ロック機構4(ロック用電動部41)の駆動を制御するように構成されている。電磁ロック解除操作部74は、補助対象者が操作しないように目立たない場所(例えば上部フレーム21の裏側など)に配置することが好ましい。
【0027】
具体的な処理の一例を、図14を用いて説明する。まず電源がオンになると、ステップST100において、プロセッサ50は、胴体支持部30の姿勢を離脱許容姿勢P2に変更する。この処理は、胴体支持部30の姿勢が支持姿勢P1である状態で電源がオフされ、電源が再投入されたことを想定した処理である。次のステップST101において、プロセッサ50は、上部フレーム21を所定下降位置まで下降させる。この処理は、上部フレーム21が上昇した状態で電源がオフされ、電源が再投入されたことを想定した処理である。
【0028】
次のステップST102において、プロセッサ50は、車輪拘束センサ64の検出結果に基づき車輪1が拘束状態であるかを判定する。ステップST102において車輪1が拘束状態でないと判定された場合(ST102:NO)には、ステップST103において、プロセッサ50は、スピーカ、発光装置、通信ネットワークを介したサーバへの通信などの報知部65を用いて外部に車輪が非拘束状態であることを報知する。この処理は、電磁ロック機構4の非励磁状態で車輪1の拘束状態が検知されることは、電磁ロック機構4が第2位置P4に移動している状態であることを想定しているためである。電磁ロック機構4を第1位置P3に移動させるガイダンスを報知してもよい。ステップST103の報知処理は、ステップST104において車輪拘束センサ64の検出結果に基づき車輪1が拘束状態であると判定されるまで(ST104:YES)、継続する。
【0029】
ステップST102又はST104において、プロセッサ50が、車輪が拘束状態であると判定した場合には、次のステップST105において、プロセッサ50は、上昇指示ボタン71が操作されたか否かを判定する。上昇指示ボタン71が操作されていないと判定した場合(ST105:NO)には、ステップST102の処理に戻る。ステップST105において上昇指示ボタン71が操作されたと判定した場合(ST105:YES)には、プロセッサ50は、ステップST106において、上部フレーム21を所定の上昇位置まで上昇させる。次のステップST107において、プロセッサ50は、姿勢変更指示ボタン73が操作されたか否かを判定する。この操作は所定第1操作に相当する。姿勢変更指示ボタン73が操作されていないと判定した場合(ST107:NO)には、ステップST106の処理に戻る。ステップST107において姿勢変更指示ボタン73が操作されたと判定した場合(ST107:YES)には、次のステップST108において、プロセッサ50は、胴体支持部30の姿勢を支持姿勢P1に切り替えると共に電磁ロック機構4を励磁してロック部材40を非ロック位置LP2に移動させる。
【0030】
次のステップST109において、プロセッサ50は、姿勢変更指示ボタン73が操作されたか否かを判定する。この操作は所定第2操作に相当する。ステップST109において姿勢変更指示ボタン73が操作されたと判断されるまで(ST109:YES)、処理ST109を継続する。ステップST109において姿勢変更指示ボタン73が操作されたと判定した場合には、プロセッサ50は、次のステップST110において、胴体支持部30の姿勢を離脱許容姿勢P2に切り替えると共に電磁ロック機構4を励磁状態から非励磁状態に変更してロック部材40をロック位置LP1に移動させる。
【0031】
次のステップST111において、電磁ロック解除操作部74が操作されてか否かを判定する。この操作は所定第3操作に相当する。ステップST111において電磁ロック解除操作部74が操作されたと判断されるまで(ST111:YES)、処理ST111を継続する。ステップST111において電磁ロック解除操作部74が操作されたと判定された場合には、プロセッサ50は、次のステップST112において、電磁ロック機構4を励磁状態にしてロック部材40を非ロック位置LP2に移動する。なお、図14では、ステップST111、ST112の処理は、ステップST110の後に記載しているが、これに限定されず、常時又は任意のタイミングで判定してもよい。
【0032】
<支持部3の位置調整>
胴体支持部30は、図4に示すように、ボルトなどの締結具V1により上部フレーム21に固定されており、上部フレーム21に対する取付位置を変更することで高さを調整可能に構成されている。また、図4に示すボルトなどの締結具V2により、胴体支持部30は上部フレーム21に固定されており、図13に示すように、胴体支持部30が上部フレーム21に対する左右方向の取付位置を変更することで胴体支持部30同士の間隔W1を調整可能に構成されている。また、胴体支持部30(第1胴体パッド30a)は、図3に示す回転軸C1を中心に上下方向に首振り可能に構成されている。また、アームレスト31は、上部フレーム21に対する取付位置を変更することで、上部フレーム21に対する前後位置を変更可能に構成されている。また、アームレスト31は、図5に示すボルトなどの締結具V3により前後方向に対する傾斜角度α1を変更可能に構成されており、これにより、図13に示すように、胴体支持部30の水平方向の首振り調整が可能となっている。また、第1把手部32は、図3に示す締結具V4により上部フレーム21に対する取付位置を変更することで、水平方向を回転中心とした回転位置(握る部分の角度)が調整可能であり、更に図5に示すように前後方向の位置を調整可能に構成されている。
【0033】
以上のように、本実施形態の歩行補助車は、
車輪1を有する本体フレーム2と、
本体フレーム2に設けられ、補助対象者の胴体を左右側方から支持するための胴体支持部30と、
車輪1をロックするためのロック部材40をロック位置LP1又は非ロック位置LP2のいずれかに電磁的に移動可能に構成された電磁ロック機構4と、を備える。
胴体支持部30は、補助対象者の胴体を支持するための支持姿勢P1と、補助対象者の離脱を許容する離脱許容姿勢P2とを切り替え可能に構成されている。
所定第1操作(姿勢変更指示ボタン73)に応じて胴体支持部30の姿勢を支持姿勢P1に切り替えると共にロック部材40を非ロック位置LP2に移動させ、
所定第2操作(姿勢変更指示ボタン73)に応じて胴体支持部30の姿勢を離脱許容姿勢P2に切り替えると共にロック部材40をロック位置LP1に移動させるように構成されている。
【0034】
この構成によれば、胴体支持部30の姿勢が支持姿勢P1に切り替わる歩行開始時に、自動的に車輪1のロックが解除され、胴体支持部30の姿勢が離脱許容姿勢P2に切り替わる歩行終了時に、自動的に車輪1のロックがなされるので、安全性を確保可能となる。それでいて、車輪1のロックに関する操作をしなくても胴体支持部30の姿勢を変更するための操作を行うだけで車輪がロック又はロック解除されるので、1つの操作で2つの動作を実現でき、利便性を向上させることが可能となる。
したがって、安全性と利便性との双方を向上可能となる。
【0035】
図1~14の実施形態のように、本体フレーム2は、車輪1を有する下部フレーム20と、胴体支持部30を有する上部フレーム21と、を有し、上部フレーム21は下部フレーム20に昇降自在に支持されており、所定第1操作(姿勢変更指示ボタン73)による胴体支持部30の支持姿勢P1への切り替え及びロック部材40の非ロック位置LP2への移動は、上部フレーム21が所定の上昇位置にある状態においてのみ有効になるように構成されていることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、上部フレーム21が上昇しきっていない場合などの不完全な状態で所定第1操作(姿勢変更指示ボタン73)がなされたとしても、所定第1操作(姿勢変更指示ボタン73)に応じて胴体支持部30の姿勢変更及び車輪ロック解除が有効とならないので、安全性をより向上させることが可能となる。
【0037】
図1~14の実施形態のように、胴体支持部30は、補助対象者の胴体を前後方向からも支持可能に構成されており、離脱許容姿勢P2は、補助対象者の前後方向のいずれかの方向(実施例では後方)に沿った離脱を許容する姿勢であることが好ましい。
【0038】
この構成によれば、胴体支持部30が補助対象者の胴体を左右側方だけではなく前後方向からも支持可能であるので、転倒の可能性をより一層低減可能となる。それでいて、胴体支持部30が離脱許容姿勢であれば、前後方向いずれかの方向に沿って離脱可能となり、利便性を損なうことがない。
【0039】
図1~14の実施形態のように、電磁ロック機構4は、所定第3操作(電磁ロック解除操作部74)に基づきロック部材40を非ロック位置LP2に移動させるように構成されていることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、所定第3操作(電磁ロック解除操作部74)を行うことで車輪1のロックが解除されるので、例えば補助対象者以外の介護者や病院関係者などの人が歩行補助車を移動させることが可能となり、利便性を向上させることが可能となる。
【0041】
図1~14の実施形態のように、電磁ロック機構4は、励磁状態でロック部材40が非ロック位置LP2に移動し、非励磁状態でロック部材40がロック位置LP1に移動するように構成されていることが好ましい。
【0042】
この構成によれば、ロック部材40の電磁的な移動は、電源が投入されているときにしかできず、歩行補助車の電源が入っていない場合には、ロック部材40がロック位置LP1に移動するので、原則、ロック状態となる。したがって、電源が失われて車輪1がロックされずに動き続けるといった事態を回避でき、安全性を向上させることが可能となる。
【0043】
図1~14の実施形態のように、ロック部材40を含む電磁ロック機構4は、ロック位置LP1にあるロック部材40が車輪1の拘束を引き起こす第1位置P3と、ロック位置LP1にあるロック部材40が車輪1の拘束を引き起こさない第2位置P4とのいずれかに移動可能に構成されており、電磁ロック機構4に連結された所定第4操作部75を動かすことで電磁ロック機構4の位置を第1位置P3又は第2位置P4に移動可能に構成されていることが好ましい。
【0044】
この構成によれば、手動レバーなどの所定第4操作部75が電磁ロック機構4に連結されており、所定第4操作部75を動かすことで、電磁ロック機構4の位置を第2位置P4に移動させ、歩行補助車を移動可能にすることができる。例えば電源喪失時でも任意に車体を動かすことができ、利便性を向上させることが可能となる。
【0045】
図14の実施形態のように、電源投入時に車輪1が拘束状態であるか否かを判定し(ST102)、車輪1が拘束状態であると判定された場合に、報知部65を介して外部に報知する(ST103)、ように構成されていることが好ましい。
【0046】
この構成によれば、電磁ロック機構4が第1位置P3にない状態で使用されることを防止することが可能となる。
【0047】
図1~14の実施形態では、電磁ロック解除操作部74の操作を通じて手動でロック状態を解除することができるが、手動でロック状態にする手段を設けていない。これは、原則、車輪1を拘束するロック状態が基本コンセプトであるため、手動でのロックする必要がなく、そのため、システム全体での操作数を減らすことができ、ユーザの混乱を防ぎ、逆に利便性を向上させることが可能となる。
【0048】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0050】
<変形例>
図1~14に示す実施形態では、上部フレーム21が下部フレーム20に昇降自在に支持され、昇降電動部の動力で上部フレーム21が昇降するように構成されているが、これに限定されない。例えば、歩行リハビリ専用の歩行補助車であれば、上部フレーム21が下部フレーム20に固定されていてもよい。勿論、上部フレーム21と下部フレーム20とを昇降自在に構成して、ねじやボルトなどの固定具で高さ調整可能にしてもよい。
【0051】
図1~14に示す実施形態では、支持部3として、胴体支持部30、アームレスト31、把手部32、33が設けられているが、これに限定されず、胴体支持部30が設けられていれば、適宜変更可能である。また、アームレスト31には第2把手部33が一体に形成されているが、第2把手部33を設けずにアームレスト31のみを設けてもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、操作部70をボタンで構成しているが、これに限定されない。例えば、ボタンやつまみ、レバーなどの機械的動作による操作部に限定されず、音声認識による操作を採用可能である。
【0053】
図1~14の実施形態では、第2胴体パッド30bが回転移動することにより、胴体支持部30の姿勢が変更されるが、これに限定されない。例えば、胴体支持部30を、第1胴体パッド30aと第2胴体パッド30bとの位置関係を固定した構造にし、胴体支持部30の前部の回転軸とした首振りにより姿勢を変更するように構成してもよい。
【0054】
胴体支持部30は、第1胴体パッド30aが前方に向かうにつれて左右方向内側に延びており、且つ、第2胴体パッド30bが存在するので、補助対象者の脇下胴体を左右側方及び前後方向から支持可能に構成されているが、これに限定されない。例えば、胴体支持部30を第1胴体パッド30aのみとし、第1胴体パッド30aを平面視直線状の形状にし、胴体支持部30が補助対象者の脇下胴体を左右側方のみから支持するように構成することも可能である。
【0055】
図1~14に示す実施形態では、所定第1操作、所定第2操作、所定第3操作と説明しているが、これに限定されない。第1~第3と述べているが、全て異なる操作部であることを限定するものではない。ボタンやつまみなどの機械的なスイッチ機構以外にも、種々の方式により操作部を構成可能である。例えば、第1把手部32に接触センサ(静電センサ等)を設けて、接触センサの検知を所定第1操作としてもよい。また、姿勢センサ(赤外線センサ等)を設けて、歩行補助車の足場空間に起立したことを検出し、姿勢センサの検出結果に基づき、上部フレーム21を上昇させるように構成してもよい。その他、音声認識により所定のキーワードを認識した場合に、操作がなされたとしてもよい。
【0056】
<歩行バランス調整機能>
図1~8に示す実施形態では、中車輪1Cには、3相ブラシレスモータ等の走行電動部が接続されており、補助対象者の歩行速度に応じた速度制御、左右の速度調整による斜行抑制制御などの走行制御がプロセッサ50(図8参照)により実行される。左右それぞれの中車輪1Cは走行電動部(モータ等)が独立しており、別々の駆動量で制御可能である。図1~8に示す実施形態に歩行バランス調整機能を実装してもよい。歩行者を補助するための駆動輪である中車輪1Cのアシスト力は、予め操作によって設定された設定値となる。図示しない操作パネルには、「直進できる」、「左に曲がりやすい」及び「右に曲がりやすい」に対応する操作を入力可能な操作部(操作ボタン等)が設けられている。「直進できる」が設定されている場合には、左右の駆動輪である中車輪1Cのアシスト力が設定値となる。「右に曲がりやすい」が設定されている場合には、左の駆動輪である中車輪1Cのアシスト力が設定値となり、右の駆動輪である中車輪1Cのアシスト力が(設定値+1)となる。「左に曲がりやすい」が設定されている場合には、右の駆動輪である中車輪1Cのアシスト力が設定値となり、左の駆動輪である中車輪1Cのアシスト力が(設定値+1)となる。
【0057】
<緊急停止スイッチ>
緊急停止スイッチを設けてもよい。緊急停止スイッチが押されると、駆動輪である中車輪1Cを動かす走行電動部(モータ等)を止める。例えば、緊急停止スイッチが押された場合に歩行補助車全体の電源を遮断するように構成すると、第2胴体パッド30bが支持姿勢P1のまま動かなくなり、不具合が生じる。走行電動部を止めることで、その不具合を回避するためである。
【0058】
<第2実施形態>
第2実施形態の歩行補助車について説明する。第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0059】
図15に示すように、第2実施形態の歩行補助車は、補助対象者に関するデータを収集して記憶部66に記憶し、所定のタイミングで外部のサーバに通信部67を介して送信するように構成されている。通信部67は省略可能である。
【0060】
例えば、補助対象者に関するデータの一例として、支持部3の位置パラメータが挙げられる。支持部3(胴体支持部30、アームレスト31、第1把手部32の少なくとも1つ)の位置パラメータを取得する支持部位置パラメータ取得部68aを設け、支持部3の位置パラメータを記憶部66に記憶する。位置パラメータとしては、胴体支持部30の高さ位置、胴体支持部30同士の間隔W1、アームレスト31の前後方向の取付位置、アームレスト31の傾斜角度α1、第1把手部32の前後方向の取付位置、第1把手部32の回転位置の少なくとも1つが挙げられる。これらパラメータの少なくとも1つを一組として、複数組記憶可能にし、各支持部3の位置を電動で変更可能に構成し、選択操作に応じて対応する位置パラメータとなるように各支持部3の位置を電動で変更するように構成することが挙げられる。
【0061】
補助対象者に関するデータの一例として、姿勢センサ68bによる歩行姿勢、歩行距離計測部68cによる補助対象者の歩行距離、アームレスト31等の支持部3に設けた荷重センサ68dの計測値、ジャイロセンサ等を用いた重心センサ68eの計測値、バイタルセンサ68fが検出した生体情報[心拍、血圧、体温、呼吸、皮膚水分(発汗)]等を取得し、時間ともに記憶部66に記憶することが挙げられる。また、所定のタイミングで通信部67を介して記憶部66に記憶した補助対象者に関するデータを外部サーバに送信するように構成してもよい。
【0062】
<第3実施形態>
第2実施形態では、歩行補助車がデータロガーを有するが、データロガーを設ける対象としては歩行補助車に限定されず、福祉用具であれば採用可能である。福祉用具としては、電動歩行補助車、歩行車、シルバーカー、横押しカート、ショッピングカート、杖、手すり、椅子などが挙げられる。図16は、福祉用具のデータ取得システムを示す。図16に示すシステムは、電動歩行補助車に適用されたデータロガーを示す。データロガーは、各種センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ、回転計、荷重センサ等)又は福祉用具のマイコン(電動歩行補助車のマイコン)から計測値、制御情報等のデータを取得する。データロガーは、ネットワークを介してデータをクラウド等のストレージに保存する。データロガーは、例えば次に記載の少なくとも1つのデータを取得可能に構成されている。
(1)機器の型番又はID:製造時の書き込みから取得可能である。ユーザ本人への価値サービスに利用可能である。
(2)MACアドレス:マイコン情報から取得可能である。器具の識別が可能となり、例えば歩行能力の変化を検知するために利用できる。それにより早期介入を促進可能となる。
(3)時刻:ネットワークから取得可能である。健康状態の変化の検知に利用できる。それにより早期介入を促進可能となる。
(4)加速度:加速度センサから取得可能である。他機器や施設、システムとの連携により、生活、健康などの改善提案が可能となる。
(5)角速度:ジャイロセンサから取得可能である。装着型ロボットとの連携が可能となる。
(6)GPS:スマートフォンのGPSやGPSユニットを搭載することで取得可能である。端末から利用者への情報、サービスの提案に利用可能である。
(7)荷重(利用者が器具へのせる体重):荷重センサ、ロードセル、力覚センサ等から取得可能である。家族や介護者への価値サービスの提供に利用可能である。
(8)血圧、脈拍等のバイタル情報:グリップ内蔵のバイタルセンサ又はカメラから取得可能である。位置情報を提供できる。それにより見守りなどのサービスと連携可能となる。
(9)アシスト情報:電動歩行車のマイコンから取得可能である。移動経路情報を取得できる。それにより見守りなどのサービスと連携可能となる。また、安否確認が可能となる。
(10)歩数、速度、歩幅:駆動輪に取り付けた回転計、駆動輪の回転数(電動アシスト制御情報)、ToFセンサ、距離センサ等から取得可能である。介護事業者への価値サービスの提供に利用可能である。
(11)傾斜情報:加速度センサ又はジャイロセンサから取得可能である。活動情報が取得でき、介入や指導が可能となる。通所以外の時間の活動量を増やして介護度の改善を図ることが可能となる。
(12)転倒情報:加速度センサ又はジャイロセンサから取得可能である。器具のメーカ又はレンタル業者への価値サービスが提供可能となる。
(13)制動又は減速:電動アシスト制御情報から取得可能である。機器の保守に利用可能である。
(14)停止時間:駆動輪に取り付けた回転計から取得可能である。自治体への価値サービスを提供可能となる。
(15)衝突又は段差による振動:加速度センサ又はジャイロセンサからの計算により取得可能である。歩道劣化検知が可能となる。例えば高齢者に危険な歩道を検知して自治体へ共有することが可能になる。
(16)人体又は障害物の検知:カメラまたはToFセンサから取得可能である。
(17)機器や器具の異常、故障検知:電動アシスト制御情報またはロガーユニットの制御情報から取得可能である。
(18)気温:温度センサ、湿度センサ、GPS情報からの気象情報APIから取得可能である。
(19)通信端末:マイコン情報から取得可能である。
(20)移動経路:加速度センサ、ジャイロセンサまたは回転計からの計算により取得可能である。
(21)画像認識(人、物体、行動):カメラから取得可能である。
(22)空間認識(地理、目的地):スマートフォンのアプリからの目的地情報またはカメラから取得可能である。
(23)ナビゲーションからの情報提供:スマートフォンのアプリからの目的地情報
(24)個人認証:IDとパスワード、カメラによる顔認証、指紋センサによる指紋認証などの種々の認証手段から取得可能である。
以下は、上記情報を分析することで得られるデータである。
(25)使用時間(一日あたり、週あたり、月あたり、年あたり)
(26)移動距離(一日あたり、週あたり、月あたり、年あたり)
(27)使用頻度(一日あたり、週あたり、月あたり、年あたり)
(28)健康(変化、傾向、比較)
(29)歩行(能力、速度、頻度、変化、比較)
(30)活動(度合、傾向、変化、比較)
(31)位置情報
(32)移動経路、歩行経路
(33)安否確認
(34)機器情報(不具合、消耗、整備時期の提案)
【0063】
<第4実施形態>
第1実施形態では、上限センサ61が上部フレーム21の高さ位置を検出することで、使用者に応じて設定された上限位置にて上部フレーム21が止まるように構成されている。第4実施形態では、上部フレーム21の上限位置を機械的要素で設定変更可能に構成されている。
【0064】
[昇降動作の上限位置変更構成]
具体的には、図17及び図18に示すように、第4実施形態の福祉用具(歩行補助車)は、使用者の荷重を受ける荷重受部21X(上部フレーム21)と、荷重受部21Xを昇降自在に支持するベース20X(下部フレーム20)と、を有し、荷重受部21Xはベース20Xに昇降自在に支持されている。図17及び図18に示す例では、ベース20Xと荷重受部21Xを互いに昇降自在に接続するガススプリング22と、荷重受部21X(上部フレーム21)の昇降動作を許可するために操作される昇降操作部23(レバー)と、を有する。昇降操作部23を操作している状態ではガススプリング22のロックが解除され、ガススプリング22が伸縮動作可能となり、荷重受部21Xにかかる荷重に応じて昇降動作する。
【0065】
図19及び図20に示すように、福祉用具(歩行補助車)は、第1位置決め部材24及び第2位置決め部材25を有する。第1位置決め部材24及び第2位置決め部材25は、ベース20X及び荷重受部21Xの昇降動作に応じて互いに遠近可能に構成され、互いに接触することで接触状態から荷重受部21Xの更なる上昇を規制する。第1位置決め部材24は、ベース20X及び荷重受部21Xのうちの一方に固定され、第2位置決め部材25は、ベース20X及び荷重受部21Xのうちの他方に位置変更可能に取り付けられている。第2位置決め部材25の取付位置を変更することで、第2位置決め部材25と第1位置決め部材24の接触部位が変更され、それにより荷重受部21Xの上限位置が変更されるように構成されている。図19の示す例では荷重受部21Xが第1上限位置に設定されている。図20に示す例では荷重受部21Xの上限位置が、第1上限位置よりも低い第2上限位置に設定されている。このように構成すれば、利用者に合わせて最初に第2位置決め部材25の取付位置を設定すれば、昇降動作を繰り返しても同じ高さで止めることが可能となり、利用者が都度高さを調整する必要がなくなる。
【0066】
図19及び図20に示す実施形態では、第1位置決め部材24は荷重受部21Xに設けられ、第2位置決め部材25はベース20Xに設けられているが、これに限定されず、第1位置決め部材24はベース20Xに設けられ、第2位置決め部材25は荷重受部21Xに設けられていてもよい。具体的には、第1位置決め部材24及び第2位置決め部材25は、荷重受部21Xを構成する垂下部位21bと、ベース20Xを構成する起立部位20bとの間であって、起立部位20bよりも車体の後方に配置されている。第1位置決め部材24は、遠近方向KD1及び遠近方向KD1に直交する方向DK2に対して傾斜している。第1位置決め部材24は、第2位置決め部材25に対面する第1面24aを有する。第1位置決め部材24を棒などの長尺状部材にして第1面24aを側面視で直線状にしてもよいが、本実施形態では、第2位置決め部材25との接触部位を決めるために第2位置決め部材25に対面する第1面24aが側面視で階段状に形成されている。この構成によれば、第1位置決め部材24と第2位置決め部材25の係わり合いを安定させることができる。第2位置決め部材25は、回転軸25aを中心として回転により取付位置を変更可能に構成されている。具体的には、第2位置決め部材25は、棒状に形成され、回転軸25aを中心に回転可能にベース20X(下部フレーム20の起立部位20b)に取り付けられている。起立部位20bは長孔20cを有する。長孔20cを通る締結具25bによって第2位置決め部材25のうち回転軸25aから偏心した部位と、起立部位20bとが締結される。
【0067】
なお、第2位置決め部材25の構成は図19及び図20に示す構成に限定されない。例えば、第2位置決め部材25を取り付ける部材(ベース20X)に複数の穴を設け、第2位置決め部材25を取り付ける孔を変更することで、第2位置決め部材25の取付位置を変更可能に構成してもよい。
【0068】
図1に示す実施形態のように、使用者の体重を電動部で支持しながら昇降動作する構成は、エネルギーロスが大きく、早期にバッテリがなくなるおそれがあり、電力確保が課題となる。かといって、バッテリの電力消費を抑制するためにガススプリング22を採用すれば、ガススプリング22の可動ストロークがそのまま荷重受部21Xの上限位置となり、使用者の身長によって都度調整が必要となり、介護対象者が利用することが難しい又は利用が煩わしい。そこで、図17及び図18に示すように、モータ等の電動部を用いずにガススプリング22を用い、上記第1位置決め部材24及び第2位置決め部材25を採用すれば、ガススプリング22でも使用者に応じた昇降動作の上限位置を機械的に設定可能となる。
【0069】
なお、ガススプリング22及び昇降操作部23を設けず、図1に示す実施形態のように昇降電動部60で荷重受部21Xを昇降動作させる構成に対して、第1位置決め部材24及び第2位置決め部材25による上限位置変更構成を適用することは可能である。
【0070】
また、図19及び図20に示す昇降動作の上限位置変更構成については、歩行補助車に限定されず、福祉用具であれば採用可能である。福祉用具としては、電動歩行補助車、歩行車、シルバーカー、横押しカート、ショッピングカート、杖、手すり(玄関又は階段などに設置される)、椅子などが挙げられる。
【0071】
[車輪:シーソー支持構成]
図21は、第4実施形態の歩行補助車の左側面図である。図22は、左側の中車輪1C及び後車輪1Rを内側から見た側面図である。歩行補助車は、使用者の荷重を受ける本体フレーム2と、本体フレーム2の左右片側それぞれに配置される3つ以上の車輪1(図中では3つ)と、を有する。左右片側の3つ以上の車輪1は、駆動輪である第1車輪1C(中車輪1C)及び駆動力を持たない従動輪である第2車輪1R(後車輪1R)を有する。第1車輪1C(中車輪1C)及び第2車輪1R(後車輪1R)は、車輪フレーム10に設けられ、車輪フレーム10は、第1車輪1Cが設けられる部位10b(第1車輪1Cの回転軸10b)と第2車輪1Rが設けられる部位10cとの間にあるフレーム回転軸10aを中心として揺動可能に本体フレーム2に支持されている。
【0072】
このように、第1車輪1C及び第2車輪1Rが車輪フレーム10を介してシーソーのように本体フレーム2に揺動可能に支持されているので、車が段差を乗り越える際にも第1車輪1C及び第2車輪1Rの両輪を路面Roに接地させることができ、車体を適切に支持可能となる。さらに、駆動輪である第1車輪1Cを常に路面Roに接地させることができる。
【0073】
なお、図21及び図22に示す車輪のシーソー支持構成については、歩行補助車に限定されず、利用者が歩行時に利用する福祉用カートであれば採用可能である。
【0074】
[段差乗り越え容易構成]
図23は、第4実施形態の第1車輪1Cと第2車輪1Rと車輪フレーム10と本体フレーム2との位置関係を示す側面図である。図22及び図23に示すように、荷重が作用するのは、第1車輪1Cの回転軸10b、第2車輪1Rの回転軸10d及びフレーム回転軸10aである。図23に示すように、フレーム回転軸10aは、前後方向及び鉛直方向を通る断面において、第1車輪1Cの回転軸10bと第2車輪1Rの回転軸10dとを結ぶ仮想直線L1よりも下方にあることが好ましい。フレーム回転軸10aが仮想直線L1よりも下方にあれば、前方へ向かう第1車輪1Cが段差に衝突したときに第1車輪1Cに対して上方へ向かおうとする力F1が作用する。この力F1の方向は段差を乗り越えるために第1車輪1Cが動く方向(上方)と一致するため、図24に示す構成に比べて、第1車輪1Cが段差を乗り越えやすくなる。
【0075】
図23に示す構成において、第1車輪1Cの回転軸10bとフレーム回転軸10aとを結ぶ線と、フレーム回転軸10aと第2車輪1Rの回転軸10dとを結ぶ線の間の角度θ1は、180度未満であることが好ましい。
【0076】
図24は、第4実施形態の変形例を示す図23に対応する図。図24に示すようにフレーム回転軸10aが仮想直線L1よりも上方にあれば、前方へ向かう第1車輪1Cが段差に衝突したときに第1車輪1Cに対して下方へ向かおうとする力F2が作用する。この力F2の方向は段差を乗り越えるために第1車輪1Cが動く方向(上方)と逆方向であるため、図23に示す構成に比べて、第1車輪1Cが段差を乗り越えにくくなる。勿論、2つの車輪がシーソー支持される構成に、図24に示す構成を採用してもよい。また、フレーム回転軸10aが仮想直線L1にある構成も採用可能である。
【0077】
[駆動輪のグリップ力及び制動力の向上構成]
図22に示すように、第1車輪1C及び第2車輪1Rが、水平方向に平行な平坦路面Roに接地している状態において、第1車輪1Cの回転軸10bからフレーム回転軸10aまでの水平方向における距離W1は、フレーム回転軸10aから第2車輪1Rの回転軸10dまでの水平方向における距離W2よりも小さいことが好ましい。仮に、W1>W2であれば、第1車輪1Cよりも第2車輪1Rに荷重がかかりやすくなり、第1車輪1Cのグリップ力及び制動力が低下する可能性があるからである。W1<W2であれば、第2車輪1Rよりも第1車輪1Cに荷重がかかりやすくなり、第1車輪1Cのグリップ力及び制動力を向上させることが可能となる。W1=W2であれば、第1車輪1Cと第2車輪1Rの両輪に等しく荷重がかかりやすくなる。図22に示す第4実施系形態では、W1:W2=1:2であるが、この比に限定されない。
【0078】
なお、図21に示すように、第2胴体パッド30bが支持姿勢P1にある状態で、利用者が後方に転倒しそうになる場合でも適切に利用者を支持するためには、最も後方にある車輪1Rの回転軸10dが、支持姿勢P1にある第2胴体パッド30bの最も前方にある支持面30cよりも水平方向において後方にあることが好ましい。
【0079】
[下肢サポータ8]
足腰が弱い補助対象者の転倒の仕方として少なくとも2つ考えられる。1つ目の転倒態様は、足を地面につけた状態で脱力して膝だけが前に折れ曲がり、胴体が下方に沈み込む転倒である。この態様の転倒を防止又は抑制するためには、図17図18及び図21に示すように、歩行補助車が規定する補助対象者が起立すべき起立領域Ar1の前方に、折れ曲がる膝に接触して膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータ80を設けることが好ましい。
【0080】
2つ目の転倒態様は、後方に転倒する場合である。この場合、第2胴体パッド30bで補助対象者の胴体が支持される。しかし、地面につけた足が動かないまま更に後方に転倒しようとする場合には、補助車が後方に動いて足又は下腿が路面と車体の間に挟まれてしまうおそれが考えられる。この事態を防止するためには、車体下侵入禁止ガイド81を設けることが好ましい。
【0081】
膝サポータ80と車体下侵入禁止ガイド81とをそれぞれ別部材にしてもよいが、第4実施形態では、膝サポータ80及び車体下侵入禁止ガイド81を兼ね備える下肢サポータ8を設けている。下肢サポータ8は、クッション材を有し、下肢サポータ8の後面が補助対象者を受け止めるためのサポート面に設定されている。下肢サポータ8は、図21に示すように、補助対象者が起立する位置の前方であって上部フレーム21を後方から覆う位置に配置される。下肢サポータ8は、図25に示すように、側面視で上端部8aと下端部8bと中間部位8cとを有する。中間部位8cが上端部8a及び下端部8bよりも後方に突出する湾曲形状に形成されている。下肢サポータ8のサポート面のうち最も後方となる頂点8dよりも上となる第1サポート面82は、上前方から下後方へ向かって延びている。これにより、上後方から下前方へ向かって折れ曲がる膝を適切に支持可能となる。下肢サポータ8のサポート面のうち最も後方となる頂点8dよりも下となる第2サポート面83は、上後方から下前方へ向かって延びている。これにより、補助車が後方に動いたとしても、頂点8dが一番初めに下腿(すね)に当たって補助車の更なる後方への移動を規制でき、また、第2サポート面83が下腿(すね)又は足にあたることで、複数個所で補助対象者と接触するので、一カ所のみの接触に比べて補助対象者に与える感覚を低減可能となる。
【0082】
図21に示すように、車体下侵入禁止ガイド81(下肢サポータ8)の下端は、U字部位20aよりも下方に位置する。
【0083】
下肢サポータ8が形成するサポート面は、側面視で第1曲面84と、第1曲面84よりも下方に配置される第2曲面85と、を有する。第1曲面84の曲率半径R1は、第2曲面85の曲率半径R2よりも大きい。このような曲率半径の関係であれば、膝を適切に支持可能であると共に歩行時に足が下肢サポータ8に当たりにくくなり、歩行時の邪魔になりにくい。勿論、この効果を追求しない場合には、第1曲面84及び第2曲面85の曲率半径が等しくてもよいし、R1<R2でもよい。
【0084】
[下肢サポータ8の姿勢変更]
図26は、下部フレーム20を構成する一部の部材(樹脂カバー及び金属フレームの一部)を隠した左側面図である。図26に示すように、下肢サポータ8は、下肢サポータ8の上端部8aの位置を前後方向に変更可能に、水平方向に平行な回転軸8eを中心として回転可能に下部フレーム20に支持されている。この構成により、補助対象者に応じて適切な設定が可能となる。支点86aを中心に回転可能に下部フレーム20に支持されるアーム86が設けられている。下肢サポータ8には波状長孔87aを有する一対の板材87が設けられている。アーム86の先端に設けられたピンが波状長孔87aに挿通され、締結具87bを操作することで締結又は開放される。波状長孔87aは複数の変曲部及び端部を有し、複数の変曲部及び端部のうちのいずれかに係る位置にピンを配置することで複数の候補位置のうちの所望の位置に位置決め可能である。
【0085】
図27は、下肢サポータ8を隠した歩行補助車を示す後方下方から見た斜視図である。図28は、対面部材と、起立領域と、下肢サポータ8との位置関係を示す平面図である。図17及び図18に示すように、第4実施形態の歩行補助車は、本体フレーム2を備える。本体フレーム2は、第1U字部位21aと、第2U字部位20aと、を有する。第1U字部位21aは、補助対象者の荷重を受ける荷重受部材(アームレスト31、胴体支持部30)を有する。第2U字部位20aは、複数の車輪1を有する。図28に示すように、荷重受部材(アームレスト31又は胴体支持部30など)は、補助対象者が起立すべき起立領域Ar1を規定する。図28に示すように、本体フレーム2は、起立領域Ar1の前方であって路面Roに対面する対面部材26を有する。対面部材26は、本体フレーム2を構成する部材のうち、路面Roからの高さが所定高さH1(図21参照)以下にある部材である。所定高さH1は、例えば30cmが挙げられる。図27及び図28に示す例では、対面部材26は、第2U字部位20aを構成するパイプ及び樹脂カバーであるが、これは例示である。対面部材26は、起立領域Ar1の前方にあって所定高さH1以下にあるので、対面部材26と路面Roとの間に足が侵入し得る空間がある。図21及び図28に示すように、対面部材26を後方から覆う位置に下肢サポータ8が設けられている。
【0086】
図29は、図28に対応する図であって第4実施形態の変形例を示す図である。第4実施形態では、胴体支持部30が設けられているが、下肢サポータ8を特徴とする場合には省略可能である。胴体支持部30を省略した構成において、図29に示すように、荷重受部材(アームレスト31)は、補助対象者が起立すべき起立領域Ar1を規定する。
【0087】
[第4実施形態のまとめ]
以上のように、第4実施形態のように、歩行補助車は、本体フレーム2は、車輪1を有する下部フレーム20と、補助対象者の荷重を受ける上部フレーム21と、を有し、上部フレーム21は下部フレーム20に昇降自在に支持されており、歩行補助車は、下部フレーム20及び上部フレーム21の昇降動作に応じて互いに遠近可能に構成され、互いに接触することで上部フレーム21の更なる上昇を規制する第1位置決め部材24及び第2位置決め部材25を有し、第1位置決め部材24は、下部フレーム20及び上部フレーム21のうちの一方に固定され、第2位置決め部材25は、下部フレーム20及び上部フレーム21のうちの他方に位置変更可能に取り付けられ、第2位置決め部材25の取付位置を変更することで、第2位置決め部材25と第1位置決め部材24の接触部位が変更され、それにより上部フレームの上限位置が変更されるように構成されていることが好ましい。
【0088】
この構成によれば、利用者に合わせて最初に第2位置決め部材25の取付位置を設定すれば、昇降動作を繰り返しても同じ高さで止めることが可能となり、利用者が都度高さを調整する必要がなくなる。
【0089】
第4実施形態のように、第2位置決め部材25は、回転軸25aを中心とした回転により取付位置を変更可能に構成されていることが好ましい。
【0090】
この構成によれば、第2位置決め部材25の姿勢を回転により変更するだけで、取付位置を変更できるので、操作が容易となる。
【0091】
第4実施形態のように、第1位置決め部材24は、第2位置決め部材25に対面する第1面24aを有し、第1面24aは、階段状に形成されていることが好ましい。
【0092】
この構成によれば、第1位置決め部材24と第2位置決め部材25の係わり合いを安定させることができる。
【0093】
第4実施形態のように、本体フレーム2の左右片側それぞれに配置される3つ以上の車輪1を備え、片側の3つ以上の車輪1は、駆動輪である第1車輪1C及び駆動力を持たない従動輪である第2車輪1Rを含み、第1車輪1C及び第2車輪1Rは、車輪フレーム10に設けられ、車輪フレーム10は、第1車輪1Cが設けられる部位10bと第2車輪1Rが設けられる部位10cとの間にあるフレーム回転軸10aを中心として揺動可能に本体フレーム2に支持されていることが好ましい。
【0094】
このように、第1車輪1C及び第2車輪1Rが車輪フレーム10を介してシーソーのように本体フレーム2に揺動可能に支持されているので、車が段差を乗り越える際にも第1車輪1C及び第2車輪1Rの両輪を路面Roに接地させることができ、車体を適切に支持可能となる。さらに、駆動輪である第1車輪1Cを常に路面Roに接地させることができる。
【0095】
第4実施形態のように、フレーム回転軸10aは、第1車輪1Cの回転軸10bと第2車輪1Rの回転軸10dとを結ぶ仮想直線L1よりも下方にあることが好ましい。
【0096】
このように、フレーム回転軸10aが仮想直線L1よりも下方にあれば、前方へ向かう第1車輪1Cが段差に衝突したときに第1車輪1Cに対して上方へ向かおうとする力F1が作用する。この力F1の方向は段差を乗り越えるために第1車輪1Cが動く方向(上方)と一致するため、第1車輪1Cが段差を乗り越えやすくなる。
【0097】
第4実施形態のように、第1車輪1C及び第2車輪1Rが、水平方向に平行な平坦路面Roに接地している状態において、第1車輪1Cの回転軸10bからフレーム回転軸10aまでの水平方向における距離W1は、フレーム回転軸10aから第2車輪1Rの回転軸10dまでの水平方向における距離W2よりも小さいことが好ましい。
【0098】
第4実施形態のように、本体フレーム2は、補助対象者が起立する位置の前方に配置される下肢サポータ8を有し、下肢サポータ8は、側面視で上端部8aと下端部8bと中間部位8cとを有し、中間部位8cが上端部8a及び下端部8bよりも後方に突出する湾曲形状に形成されていることが好ましい。
【0099】
この構成によれば、上後方から下前方へ向かって折れ曲がる膝を適切に支持可能となる。さらに、補助車が後方に動いたとしても、頂点8dが一番初めに下腿(すね)に当たって補助車の更なる後方への移動を規制でき、また、第2サポート面83が下腿(すね)又は足にあたることで、複数個所で補助対象者と接触するので、一カ所のみの接触に比べて補助対象者に与える感覚を低減可能となる。
【0100】
第4実施形態のように、下肢サポータ8が形成するサポート面は、側面視で第1曲面84と、第1曲面84よりも下方に配置される第2曲面85と、を有し、第1曲面84の曲率半径R1は、第2曲面85の曲率半径R2よりも大きいことが好ましい。
【0101】
このような曲率半径の関係であれば、膝を適切に支持可能であると共に歩行時に足が下肢サポータ8に当たりにくくなり、歩行時の邪魔になりにくい。
【0102】
第4実施形態のように、下肢サポータ8は、下肢サポータ8の上端部8aの位置を前後方向に変更可能に、回転軸8eを中心として回転可能に下部フレーム20に支持されていることが好ましい。
【0103】
この構成によれば、補助対象者に応じて適切な設定が可能となる。
【0104】
第4実施形態のように、本体フレーム2は、補助対象者の荷重を受ける荷重受部材を有する第1U字部位21aと、複数の車輪1を有する第2U字部位20aと、を備え、荷重受部材は、補助対象者が起立すべき起立領域Ar1を規定し、本体フレーム2は、起立領域Ar1の前方であって路面Roに対面する対面部材26を有し、対面部材26を後方から覆う位置に下肢サポータ8が設けられていることが好ましい。
【0105】
この構成によれば、上後方から下前方へ向かって折れ曲がる膝を適切に支持可能となる。さらに、補助車が後方に動いたとしても、頂点8dが一番初めに下腿(すね)に当たって補助車の更なる後方への移動を規制でき、また、第2サポート面83が下腿(すね)又は足にあたることで、複数個所で補助対象者と接触するので、一カ所のみの接触に比べて補助対象者に与える感覚を低減可能となる。
【0106】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。
【0107】
各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 車輪
2 本体フレーム
20 下部フレーム
21 上部フレーム
30 胴体支持部
4 電磁ロック機構
40 ロック部材
65 報知部
73 姿勢変更指示ボタン(所定第1操作、所定第2操作)
74 電磁ロック解除操作部(所定第3操作)
P1 支持姿勢
P2 離脱許容姿勢
LP1 ロック位置
LP2 非ロック位置
P3 第1位置
P4 第2位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
【手続補正書】
【提出日】2022-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行する補助対象者が腕を置くためのアームレストと、前記アームレストに置いた腕で握ることが可能な把手部と、を有する上部フレームと、
前記補助対象者の前方において上下方向に延びる接続部を介して、前記上部フレームを支持し、車輪を有する下部フレームと、
前記補助対象者の胴体を左右側方から支持可能な第1胴体パッドと、
前記第1胴体パッドよりも少なくとも一部が上方に位置し、後方へ転倒しそうなった前記補助対象者の胴体を後方から支持可能な第2胴体パッドと、
前記補助対象者の膝が前に折り曲がり胴体が下方に沈み込む転倒動作の際に、前記補助対象者の折り曲げた膝に接触して当該膝のそれ以上の折れ曲がりを防止する膝サポータと、
前記膝サポータよりも下方に位置し、前記補助対象者が後方に転倒しようとする場合にその足又は下腿が路面と前記下部フレームの間に挟まれてしまうことを防止する車体下侵入禁止ガイドと、
を備え
前記膝サポータが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第1曲面を有し、
前記車体下侵入禁止ガイドが形成するサポート面は、側面視で後方に突出する第2曲面を有し、
前記第1曲面の曲率半径は、前記第2曲面の曲率半径よりも小さい、歩行補助車。
【請求項2】
前記第2胴体パッドは、前記補助対象者の胴体を支持するための支持姿勢と、前記補助対象者の離脱を許容する離脱許容姿勢と、を切り替え可能に構成されている、請求項1に記載の歩行補助車。