IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 筑波大学の特許一覧 ▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-モルヒナン誘導体及びその医薬用途 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028184
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】モルヒナン誘導体及びその医薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 489/12 20060101AFI20230224BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230224BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20230224BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
C07D489/12 CSP
A61P43/00 111
A61P25/04
A61P9/00
A61P1/00
A61P7/00
A61P11/00
A61P13/00
A61P25/00
A61P1/16
A61P11/14
A61P17/04
A61P9/10
A61P25/36
A61K31/485
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133729
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 博
(72)【発明者】
【氏名】河合 孝治
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA06
4C086ZA01
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZA51
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZC39
4C086ZC41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オピオイドκ受容体結合性を有し、かつ、副作用が低減した、疼痛をはじめとするオピオイドκ受容体に関連する様々な疾患の治療剤、改善剤又は予防剤を提供する。
【解決手段】本発明は、下記に代表されるモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)で示される、モルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
[式中、Rは、炭素数4~7のシクロアルキルアルキルを表し、
は、水素、ヒドロキシ又は炭素数1~5のアルコキシを表し、
は、水素又は炭素数1~5のアルキルを表し、
は、炭素数1~5のアルキルを表し、
Arは、フェニル、ピリジル、フラニル又はチオフェニル(ただし、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のアルコキシで置換されていてもよい。)を表す。]
【請求項2】
以下の一般式(Ia)で示される、請求項1に記載のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
[式中、Rは、炭素数4~7のシクロアルキルアルキルを表し、
は、水素、ヒドロキシ又は炭素数1~5のアルコキシを表し、
は、水素又は炭素数1~5のアルキルを表し、
は、炭素数1~5のアルキルを表し、
Arは、フェニル、ピリジル、フラニル又はチオフェニル(ただし、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル又は炭素数1から5のアルコキシで置換されていてもよい)を表す]
【請求項3】
(4R,4aS,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミドである、請求項1記載のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
(4R,4aS,6R,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミドである、請求項2記載のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、オピオイドκ受容体に作用する医薬。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する、心血管系障害、消化器系疾患、血液系疾患、呼吸器系疾患、肝疾患、神経系障害、泌尿器系障害、疼痛、咳嗽、掻痒、虚血性脳疾患及び薬物依存からなる群から選択される、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤。
【請求項7】
前記オピオイドκ受容体に関連する疾患は、疼痛である、請求項6記載の治療剤、改善剤又は予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オピオイドκ受容体結合性を有するモルヒナン誘導体及びその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
オピオイド受容体はμ受容体、δ受容体、κ受容体の3つのタイプに分類される。モルヒネやフェンタニルに代表されるオピオイドμ受容体作動薬は、古くから鎮痛薬として使用されている。しかしながら、薬物依存や呼吸抑制等の重篤な副作用を引き起こすことから、これら副作用を有さない鎮痛薬の開発が望まれている。
【0003】
オピオイドκ受容体作動薬は、オピオイドμ作動薬と同じく鎮痛作用を有するが、オピオイドμ作動薬で見られる重篤な副作用には関与しないことが報告されている(非特許文献1)。したがって、オピオイドκ受容体作動薬は、オピオイドμ受容体作動薬に比べ、安全な治療薬となることが期待されている。
【0004】
現在までに、多くのκ受容体作動薬が知られている。例えば、特許文献1には、一般式(A)で表される化合物が報告されている。この化合物はオピオイドκ受容体選択的な結合及び鎮痛作用を有するとの記載がある。しかし、その鎮痛活性は満足のいくものではなかった。
【0005】
【化1】
【0006】
κ受容体作動薬は、鎮静、薬物嫌悪等の副作用を有することが知られている。これまでに知られている多くのκ受容体作動薬は鎮痛作用を有しているものの、鎮痛作用を発現する投与量と副作用が発現する投与量に十分な乖離がないことから、鎮痛薬として承認されたものはない。実際、下記(B)で示されるナルフラフィン塩酸塩(特許文献2)は、κ受容体作動薬として唯一上市され、止痒薬として使用されているが、鎮痛用量において副作用が高頻度に発現するため、鎮痛薬として臨床使用する事はできなかった。
【0007】
【化2】
【0008】
すなわち鎮痛作用を発現する投与量と副作用が発現する投与量に十分な乖離があるκ作動薬が、優れた治療薬となり得る。
【0009】
ところで、特許文献3には、一般式(C)で表される化合物が、オピオイドε受容体活性を有すること、鎮痛作用を有することが開示されている。
【0010】
【化3】
【0011】
しかしながら、これらの化合物の中に、副作用が十分に分離されたオピオイドκ作動薬が含まれていることは、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009-196933号
【特許文献2】国際公開第93/015081号
【特許文献3】国際公開第98/043978号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Millan、Trends in Pharmacological Sciences、1990年、第11巻、p.70-76
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、鎮静作用や薬物嫌悪作用等の副作用が抑制された、オピオイドκ受容体に関連する様々な疾患、症状の治療又は改善、予防に有効な医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
斯かる状況の下、本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定のモルヒナン誘導体がオピオイドκ受容体結合性を有し、高い副作用分離が達成されていることを見出し、下記(1)~(7)の発明を完成するに至った。
(1) 以下の一般式(I)で示される、モルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【0016】
【化4】
【0017】
[式中、Rは、炭素数4~7のシクロアルキルアルキルを表し、
は、水素、ヒドロキシ又は炭素数1~5のアルコキシを表し、
は、水素又は炭素数1~5のアルキルを表し、
は、炭素数1~5のアルキルを表し、
Arは、フェニル、ピリジル、フラニル又はチオフェニル(ただし、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のアルコキシで置換されていてもよい。)を表す。]
(2) 以下の一般式(Ia)で示される、(1)記載のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【0018】
【化5】
【0019】
[式中、Rは、炭素数4~7のシクロアルキルアルキルを表し、
は、水素、ヒドロキシ又は炭素数1~5のアルコキシを表し、
は、水素又は炭素数1~5のアルキルを表し、
は、炭素数1~5のアルキルを表し、
Arは、フェニル、ピリジル、フラニル又はチオフェニル(ただし、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のアルコキシで置換されていてもよい。)を表す。]
【0020】
(3) (4R,4aS,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミドである、(1)記載のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【0021】
(4) (4R,4aS,6R,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミドである、(2)記載のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【0022】
(5) (1)~(4)のいずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、オピオイドκ受容体に作用する医薬。
(6) (1)~(4)のいずれか記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、心血管系障害、消化器系疾患、血液系疾患、呼吸器系疾患、肝疾患、神経系障害、泌尿器系障害、疼痛、咳嗽、掻痒、虚血性脳疾患及び薬物依存からなる群から選択される、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤。
(7) 上記オピオイドκ受容体に関連する疾患は、疼痛である(6)記載の治療剤、改善剤又は予防剤。
【発明の効果】
【0023】
本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩は、オピオイドκ受容体に関連する疾患を治療、改善又は予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の化合物による鎮痛作用(酢酸ライジング試験)と鎮静作用(ロータロッド試験)の十分な分離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、以下の一般式(I)で示される、モルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩を特徴とする。
【0026】
【化6】
【0027】
上記一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体若しくはその薬学的に許容される塩、又はそれらの溶媒和物のうち、好ましくは次のものが挙げられる。
【0028】
は、炭素数4~7のシクロアルキルアルキルを表し、炭素数4~5のシクロアルキルアルキルが好ましく、特にシクロプロピルメチルが好ましい。
【0029】
は、水素、ヒドロキシ又は炭素数1~5のアルコキシを表し、ヒドロキシ又は炭素数1~3のアルコキシが好ましく、特にヒドロキシ又はメトキシが好ましい。
【0030】
は、水素又は炭素数1~5のアルキルを表し、水素又はメチルが好ましい。
【0031】
は、炭素数1~5のアルキルを表し、メチル、エチル又はプロピルが好ましく、特にメチルが好ましい。
【0032】
Arは、フェニル、ピリジル、フラニル又はチオフェニル(ただし、ハロゲン、炭素数1~5のアルキル又は炭素数1~5のアルコキシで置換されていてもよい。)を表し、フェニル又はピリジルが好ましく、特にフェニルが好ましい。
【0033】
上記一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩において、薬学的に許容される塩としては、好ましくは酸付加塩が挙げられ、酸付加塩としては、例えば(イ)塩酸、硫酸若しくはリン酸等の鉱酸との塩、(ロ)ギ酸、酢酸、クエン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸若しくはマレイン酸等の有機カルボン酸との塩又は(ハ)メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸若しくはナフタレンスルホン酸等のスルホン酸との塩が挙げられる。
【0034】
上記一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩は、水和物又は溶媒和物としても存在することができる。従って、本発明の化合物は、その全ての結晶型及び水和物若しくは溶媒和物を含むものである。
【0035】
溶媒和物としては、薬理学的に許容される溶媒和物が好ましい。薬理学的に許容される溶媒和物は、水和物又は非水和物のいずれであっても構わない。溶媒和物を構成する溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール若しくはn-プロパノール等のアルコール系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF)又はジメチルスルホキシド(以下、DMSO)、アセトニトリルが挙げられる。
【0036】
上記の一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体は、光学異性体が存在するが、単一異性体のみならず、ラセミ体及びジアステレオマー混合物も包含する。
【0037】
上記の一般式(I)で示される化合物の中で、(4R,4aS,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミドが好ましく、特に(4R,4aS,6R,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(実施例4の化合物10)が好ましい。
【0038】
本発明の別の態様として、オピオイドκ受容体に関連する疾患を治療、改善又は予防するための上記一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0039】
さらに、別の態様として、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤を製造するための、上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0040】
さらに、別の態様として、オピオイドκ受容体に関連する疾患を治療、改善又は予防する方法であって、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療、改善又は予防が必要な患者に対し、上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む方法を提供する。
【0041】
上記の一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体は、その基本骨格や置換基の種類に由来する特徴に基づいた適切な方法で製造することができる。なお、これらの化合物の製造に使用する出発物質と試薬は一般に購入することができるか又は公知の方法若しくはそれらに準じた方法で製造することができる。
【0042】
上記の一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体並びにその製造に使用する中間体及び出発物質は、公知の手段によって単離精製することができる。単離精製のための公知の手段としては、例えば、溶媒抽出、結晶化又はクロマトグラフィーが挙げられる。
【0043】
上記の一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体が、光学異性体又は立体異性体を含有する場合には、公知の方法により、それぞれの異性体を単一化合物として得ることができる。公知の方法としては、例えば、結晶化、酵素分割又はキラルクロマトグラフィーが挙げられる。
【0044】
上記の一般式(I)で示されるモルヒナン誘導体は、例えば、以下のスキーム1又は2に記載の方法により得ることができる。
【0045】
【化7】
【0046】
(工程1-1)
スキーム1中のアミド誘導体(b)は、H.Nagase,Tetrahedron.65,2009,4808-4813に記載の公知の方法で得られるエステル誘導体(a)を加水分解した後、アミド化することにより得ることができる。
【0047】
加水分解は、酸性条件又は塩基性条件で行うことができるが、酸性条件が好ましい。用いる酸としては、塩酸、硫酸又はリン酸等を用いることができるが、塩酸を溶媒として用いることが好ましい。塩酸は、1~12規定が好ましく、4~8規定がより好ましい。反応温度は、0℃~110℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.25時間~30時間が好ましく、0.5~5時間がより好ましい。
【0048】
アミド化には、ベンゼン、トルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、THF)、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類:塩化メチレン、クロロホルム又は四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類:メタノール又はエタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はリグロイン等の脂肪族炭化水素類;DMF又はDMSO等の非プロトン性極性溶媒中、N,N-ジメチルアミノピリジン,トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン又はプロカイン等の有機塩基;炭酸カリウム又は炭酸リチウム等の無機塩基の存在下、アミン(g)をO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、N,N’-ジシクロへキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルフォリニウムクロライドn水和物等の縮合剤を用い、0℃~加熱還流下、好ましくは0℃~50℃で1~12時間、より好ましくは、1~5時間反応させることにより、化合物(b)を合成することができる。
【0049】
(工程1-2)
化合物(b)から化合物(c)への変換は、フェノール性メチルエーテルの一般的な脱メチル化反応によって行うことができる。具体的には、(1)三臭化ホウ素を用いる方法、又は(2)塩基性条件下アルキルチオールを用いる方法のいずれかで行うことができる。
【0050】
(1)の方法では、三臭化ホウ素の使用量は、1~20当量が好ましく、1~10当量がより好ましい。反応溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム又は1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。反応温度は、-70℃~50℃が好ましく、-50℃~40℃がより好ましい。反応時間は、10分~10時間が好ましく、30分~5時間がより好ましい。
【0051】
(2)の方法では、反応剤としてエタンチオール、プロパンチオール又はブタンチオール等のアルキルチオール類が好ましく、プロパンチオールがより好ましい。反応剤の使用量は、1~20当量が好ましく、1~7当量がより好ましい。塩基としてカリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム又は水素化カリウム等が好ましく、カリウムtert-ブトキシドがより好ましい。塩基を使用する量は、1~20当量が好ましく、1~7当量で満足のいく結果が得られる。反応溶媒は、DMF若しくはジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒又はテトラヒドロフラン(以下、THF)若しくはジメチルエーテル(以下、DME)等のエーテル系溶媒が好ましく、非プロトン性溶媒のDMFがより好ましい。反応温度は、50℃~200℃が好ましく、80℃~150℃がより好ましい。反応時間は1時間~15時間が好ましく、2時間~8時間がより好ましい。
【0052】
(工程2-1)
原料(d)及び2-クロロアクリロニトリルをベンゼン、トルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、THF、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類;メタノール又はエタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はリグロイン等の脂肪族炭化水素類;DMF又はDMSO等の非プロトン性極性溶媒中、80~190℃で3~24時間反応させた後、あるいは封管内で、マイクロウェーブ合成装置によりマイクロウェーブを照射して反応させた後、加水分解により化合物(e)を合成することができる。加水分解反応は、公知の酸や塩基を用いて行うことができるが、塩基の方が好ましく、例えば、THF又はジオキサン等のエーテル類;メタノール又はエタノール等のアルコール溶媒中に、1~10mol/lの水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液等の無機塩基性水溶液を1~5当量加え、加熱還流下で1~24時間反応させることによって行われる。
【0053】
なお、出発原料(d)は、一般公知の方法により合成することができる。例えばJ.Chem.Soc.C,1966,617、J.Chem.Soc.C,1969,2569、J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,1994,911記載の方法により合成することができる。
【0054】
(工程2-2)
続く還元工程は、水素雰囲気下、化合物(e)をジエチルエーテル、THF、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類;メタノール又はエタノール等のアルコール類等の溶媒中、金属触媒、例えばニッケル(ラネーニッケル等)、パラジウム(パラジウム-活性炭素(Pd/C)、パールマン触媒(Pearlman‘s catalyst:Pd(OH)等))又は白金(アダムス触媒(PtO)等)の存在下、室温~加熱還流下で1~24時間反応させることにより、化合物(f)を合成することができる。
【0055】
(工程2-3)
Tfエーテル化は、不活性ガス雰囲気下、化合物(f)にジエチルエーテル、THF、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム又は四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等の溶媒中、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド又はリチウムジイソプロピルアミド等の塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン又はプロカイン等の有機塩基;炭酸カリウム又は炭酸リチウム等の無機塩基の存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物又はN-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)等を-78℃~室温で30分~5時間反応させることにより化合物(g)を合成することができる。
【0056】
(工程2-4)
カップリング反応は、パラジウム等の金属を触媒として行うことができる。不活性ガス雰囲気下、化合物(g)にジエチルエーテル、THF、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類;ベンゼン、トルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素類等の溶媒中、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム等の0価のパラジウム触媒又は酢酸パラジウム、(ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン))パラジウム等の2価のパラジウム触媒と、4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル又は(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル等のホスフィン配位子及びトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、シクロヘキシルアミン又はプロカイン等の有機塩基;炭酸カリウム又は炭酸リチウム等の無機塩基の存在下、2,4,6-トリクロロフェニルホルメートを0℃~加熱還流下で1~24時間反応させることにより、化合物(h)を合成することができる。
【0057】
(工程2-5)
得られた活性エステル体(h)を用いるエステル-アミド交換は、塩基の存在下、対応する1級アミンを反応させることで行うことができる。アミド交換に用いるアミン誘導体の量は、活性エステル体(h)に対して1当量~10当量が好ましく、3当量~7当量がより好ましい。反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、THF、1,4-ジオキサン、エチレングリコール、DME若しくはジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン若しくはトルエン等の芳香族炭化水素溶媒、DMF若しくはDMSO等の非プロトン性溶媒、アセトン若しくはメチルエチルケトン等のケトン系溶媒又はアセトニトリル若しくはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒が挙げられるが、THFが好ましい。用いる塩基としては、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン又はそれらの組み合わせが用いられるが、トリエチルアミンとジメチルアミノピリジンの組み合わせが好ましい。塩基の量は適宜選択されるが、1~20当量、より好ましくは1-10当量のトリエチルアミンに0.001~2当量、より好ましくは0.05~0.5当量のジメチルアミノピリジンを用いて行うことができる。反応温度は、0℃~200℃が好ましく、30℃~70℃がより好ましい。反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5~30時間が好ましく、1~5時間がより好ましい。
【0058】
(工程2-6)
続く還元工程は、水素雰囲気下、化合物(i)をジエチルエーテル、THF、ジオキサン、モノグライム又はジグライム等のエーテル類;メタノール又はエタノール等のアルコール類等の溶媒中、金属触媒、例えばニッケル(ラネーニッケル等)又はパラジウム(パラジウム-活性炭素(Pd/C)、パールマン触媒(Pearlman‘s catalyst:Pd(OH))、パラジウム-フィブロイン、パラジウム-エチレンジアミン等)、白金(アダムス触媒(PtO)等)の存在下で行うことができるが、特にパラジウム-フィブロインを用いることが好適である。室温~加熱還流下で反応は可能であるが、室温~70℃が好ましい。反応は、1~24時間、より好ましくは5~18時間で化合物(j)を合成することができる。
【0059】
(工程2-7)
アミドのアルキル化には、塩基の存在下、ハロゲン化アルキル又はアルキルトシレートを反応させることで行うことができる。用いる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウム又はt-ブトキシナトリウム等を用いることができるが、水素化ナトリウムを用いることが好ましい。アルキル化剤としては、ヨウ化アルキル又は臭素化アルキルを用いることができるが、特に、ヨウ化アルキルを用いることが好ましい。反応溶媒としては、用いる試薬の種類に応じて適宜選択されるが、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、THF、1,4-ジオキサン、エチレングリコール、DME若しくはジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン若しくはトルエン等の芳香族炭化水素溶媒、DMF若しくはDMSO等の非プロトン性溶媒又はアセトニトリル若しくはプロピオニトリル等のニトリル系溶媒が挙げられるが、THFが好ましい。反応温度は、-20℃~加熱還流温度、好ましくは0℃~50℃で行うことができる。反応時間は、0.5~24時間、好ましくは1~18時間で化合物(k)を得ることができる。
【0060】
(工程2-8)
化合物(k)から化合物(l)への変換は、フェノール性メチルエーテルの一般的な脱メチル化反応によって行うことができる。具体的には、(1)三臭化ホウ素を用いる方法、又は(2)塩基性条件下アルキルチオールを用いる方法のいずれかで行うことができる。
【0061】
(1)の方法では、三臭化ホウ素の使用量は1~20当量が好ましく、1~10当量がより好ましい。反応溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム又は1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。反応温度は、-70℃~50℃が好ましく、-50℃~40℃がより好ましい。反応時間は、10分~10時間が好ましく、30分~5時間がより好ましい。
【0062】
(2)の方法では、反応剤としてエタンチオール、プロパンチオール又はブタンチオール等のアルキルチオール類が好ましく、プロパンチオールがより好ましい。反応剤の使用量は、1~20当量が好ましく、1~7当量がより好ましい。塩基としてカリウムtert-ブトキシド、水素化ナトリウム又は水素化カリウム等が好ましく、カリウムtert-ブトキシドがより好ましい。塩基の使用量は、1~20当量が好ましく、1~7当量がより好ましい。反応溶媒は、DMF若しくはジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒又はTHF等のエーテル系溶媒が好ましく、非プロトン性溶媒のDMFがより好ましい。反応温度は、50℃~200℃が好ましく、80℃~150℃がより好ましい。反応時間は、1時間~15時間が好ましく、2時間~8時間がより好ましい。
【0063】
上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤として用いることができる。上記オピオイドκ受容体に関連する疾患としては、以下に挙げるものに限定されるものではないが、例えば、心血管系障害、消化器系疾患、血液系疾患、呼吸器系疾患、肝疾患、神経系障害、泌尿器系障害、疼痛、咳嗽、掻痒、虚血性脳疾患又は薬物依存が挙げられる。
【0064】
本明細書において、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤とは、オピオイドκ受容体に関連する疾患を治療する目的で患者に投与される医薬品を意味する。また、オピオイドκ受容体に関連する疾患の改善剤とは、オピオイドκ受容体に関連する疾患を改善する目的で患者に投与される医薬品を意味する。また、オピオイドκ受容体に関連する疾患の予防剤とは、オピオイドκ受容体に関連する疾患を未然に防ぐ目的で患者に投与される医薬品を意味する。
【0065】
上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩が、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療、改善又は予防に有効であることは、例えば、オピオイドκ受容体に関連する疾患のモデル動物を用いて、オピオイドκ受容体に関連する疾患の特徴的な症状に対する改善効果を指標に評価することができる。例えば、オピオイドκ受容体に関連する疾患である鎮痛作用の評価は、マウス酢酸ライジングモデル(AcademicPress、1977年、第6章、p.83-99)、ラットホルマリンテスト(Pain、1992年、第51巻、p.5-17)、ラットカラゲニン誘発炎症モデル(Japanese Jounal of Pharmacology、1970年、第20巻、p.337-348)、がん性疼痛モデル(European Journal of Pharmacology、2002年、第441巻、p.185-191)急性疼痛のためのラットホットプレートテスト(Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、1975年、第192巻、p.497-505)又はテールフリックテスト(Journal of Pharmaceutical Sciences、1962年、第51巻、p.185-186)、等を用いて実施することができる。
【0066】
上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ又はサル等)に対するオピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤として用いることができる。
【0067】
上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤として臨床で使用する際には、一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩をそのまま用いてもよいし、例えば、賦形剤、カプセル皮膜、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤、等張化剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、可塑剤又は着色剤等の添加剤等を薬理学的に許容される担体として適宜混合して、薬理学的に許容される担体を含有する医薬組成物として提供してもよい。薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物の場合、経口的又は非経口的に投与することができる。
【0068】
上記の賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、エリスリトール、乳糖又はマクロゴール等が挙げられる。上記のカプセル皮膜としては、ゼラチン又はコハク化ゼラチン等が挙げられる。上記の安定化剤としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム水和物等が挙げられる。上記の崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム又はカルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。上記の滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム又はショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。上記のコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール等が挙げられる。上記の可塑剤としては、例えば、濃グリセリン又はマクロゴール400等が挙げられる。上記の着色剤としては、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄又はタルク等が挙げられる。
【0069】
また、上記のオピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤は、上記の担体を適宜用いて、通常の方法によって製造することができる。上記の一般式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物についても、同様に製造することができる。
【0070】
上記の一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩を、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤として経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、口腔内崩壊剤、散剤又は顆粒剤等が挙げられ、非経口的な投与としては静脈内急速注入、静脈内持続注入、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、吸入剤、座剤、軟膏剤、クリーム剤又は貼付剤等が挙げられる。また、公知の持続型製剤としても構わない。
【0071】
上記のオピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤中の上記一般式(I)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩の含量は、特に制限されないが、一服用あたり通常0.01μg~100mgが含有されるように調製されうる。また、投与量は、患者の症状、年齢、性別、体重又は投与方法等に応じて適宜選択することができるが、通常、成人一日当り、一般式(I)で示される化合物又はその薬理学的に許容される塩の量として、0.01μg~20mgが好ましく、0.1μg~10mgがより好ましく、0.1μg~100μgがさらに好ましく、それぞれ1回又は数回に分けて投与することができる。
【0072】
上記のオピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤は、その治療効果、改善効果又は予防効果の補完若しくは増強又は投与量低減のために、オピオイドκ受容体に関連する疾患の治療、予防、症状の減少又は抑制に対して用いられるさらに他の一種類又はそれ以上の薬剤と組み合わせて投与することができる。組み合わせる薬剤は、低分子化合物であってもよく、また、高分子の蛋白、ポリペプチド、抗体又はワクチン等であってもよい。この際、組み合わせる薬剤と同時又は時間差をおいて投与することもできる。なお、組み合わせる方法は、それぞれの薬剤を併用すればよく、合剤とすることも可能である。組み合わせる薬剤の投与量は、それぞれ臨床上用いられる用量を基準として適宜選択することができる。また、上記のオピオイドκ受容体に関連する疾患の治療剤、改善剤又は予防剤と組み合わせる薬剤との配合比は、投与対象、投与対象の年齢、体重、症状、投与時間、剤形又は投与方法等により、適宜選択することができる。
【実施例0073】
以下の実施例、試験例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0074】
なお、実施例化合物の合成に使用される化合物で合成法の記載のないものについては、市販の化合物を使用した。NMRデータ中に示される溶媒名は、測定に使用した溶媒を示している。また、400MHzNMRスペクトルは、高分解能フーリエ変換型核磁気共鳴装置JNM-ECS 400(JEOL社)を用いて測定した。ケミカルシフトは、テトラメチルシランを基準として、δ(単位:ppm)で表し、シグナルはそれぞれs(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、m(多重線)、br(幅広)で表した。ESI-MSスペクトルは、JMS-T100LP(JEOL社)を用いて測定した。元素分析には、マイクロコーダー JM10(J-SCIENCE LAB社)を用いて測定した。シリカゲルは、PSQ60B-CHROMATOREX(富士シリシア化学社製)、分取TLCは、Silica gel 60 F254(0.25mm,0.5mm)(メルク社製)を用いた。
【0075】
(参考例1)
(4R,4aR,7S,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-14-オン(以下、化合物1)の合成:
【0076】
【化8】
【0077】
(4R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-2,3,4,7a-テトラヒドロ-1H-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン(J.Chem.Soc.C,1966,617、J.Chem.Soc.C,1969,2569及びJ.Chem.Soc.Perkin Trans.I,1994,911の記載の方法で合成)(2.0g,5.63mmol)の1,2-ジクロロエタン溶液(10mL)をマイクロウェーブ反応用のバイアルに入れ、2-クロロアクリロニトリル(4.5mL,56.6mmol)を加えて密封したものを3本用意した。マイクロフェーブ合成装置にて、それぞれマイクロウェーブを照射し、180℃、10barの条件下で30分間反応させた。放冷後、3本のバイアルの内容物を合わせ、減圧下にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(25-50%酢酸エチル/ヘキサン)にて精製した。得られた2-クロロアクリロニトリル付加体をエタノール(144mL)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(36mL)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、水(200mL)を加え、ジエチルエーテルで2回抽出した。有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下にて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(25-50%酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、化合物1(2.5g,44%)を無色アモルファスとして得た。
【0078】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.08-0.20(m,2H),0.45-0.60(m,2H),0.77-0.91(m,1H),1.87(dd,J=2.8,12.8Hz,1H),2.07(ddd,J=5.4,12.8,12.8Hz,1H),2.17(d,J=18.8Hz,1H),2.32-2.55(m,4H),2.77(dd,J=5.4,11.9Hz,1H),3.17(d,J=18.3Hz,1H),3.32(d,J=18.8Hz,1H),3.63(s,3H),3.65(d,J=6.9Hz,1H),3.83(s,3H),4.68(d,J=1.4Hz,1H),5.70(d,J=8.7Hz,1H),5.88-5.93(m,1H),6.57(d,J=7.8Hz,1H),6.66(d,J=7.8Hz,1H).
【0079】
(参考例2)
(4R,4aS,7S,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6(5H)-オン(以下、化合物2)の合成:
【0080】
【化9】
【0081】
化合物1(2.43g,6.18mmol)をエタノール(100mL)に溶解し、5%パラジウム-活性炭素(2.01g)を加えた。水素雰囲気下、60℃で12時間撹拌し、放冷後にセライトろ過した。ろ液を減圧下にて濃縮し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加え、クロロホルムで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮した。残渣をメタノールに溶解後ろ過し、再結晶により精製し、化合物2(2.25g,92%)を無色板状晶(融点:164-165℃)として得た。
【0082】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.06-0.16(m,2H),0.43-0.56(m,2H),0.73-0.86(m,1H),1.01(dddd,J=3.2,3.2,12.8,12.8Hz,1H),1.26(ddd,J=6.0,12.8,12.8Hz,1H),1.49-1.61(m,1H),1.68(dd,J=3.7,13.3Hz,1H),1.76(ddd,J=6.0,12.8,12.8Hz,1H),2.01(ddd,J=5.8,12.8,12.8Hz,1H),2.22(d,J=19.7Hz,1H),2.29-2.42(m,4H),2.70(dd,J=5.8,11.9Hz,1H),3.07(d,J=18.3Hz,1H),3.13(d,J=6.4Hz,1H),3.46-3.55(m,1H),3.53(s,3H),3.89(s,3H),4.60(s,1H),6.63(d,J=8.2Hz,1H),6.76(d,J=8.2Hz,1H).
【0083】
(参考例3)
(4R,4aS,7S,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-イル トリフルオロメタンスルホネート(以下、化合物3)の合成
【0084】
【化10】
【0085】
アルゴン雰囲気下、11%KHMDSトルエン溶液(5.5mL,2.75mmol)を無水THF(4mL)に加え、-78℃に冷却した。化合物2(885mg,2.24mmol)の無水THF(4mL)溶液及びN-フェニル-ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(1.1g,3.36mmol)の無水THF(2mL)溶液を順次加え、1時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(5mL)を加え、室温に昇温した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(30mL)を加え、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15-25%ジエチルエーテル/ヘキサン)で精製し、化合物3(1.17g,99%)を無色油状物として得た。
【0086】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.08-0.20(m,2H),0.46-0.61(m,2H),0.76(ddd,J=2.8,9.6,12.8Hz,1H),0.80-0.92(m,1H),1.03(ddd,J=5.6,12.4,12.4Hz,1H),1.43(dddd,J=2.4,2.4,12.4,12.4Hz,1H),1.65(dd,J=2.4,13.3Hz,1H),1.79(ddd,J=5.6,9.6,12.4Hz,1H),1.91(ddd,J=5.6,12.8,12.8Hz,1H),2.26-2.45(m,4H),2.62(dd,J=5.6,12.0Hz,1H),3.09(d,J=18.3Hz,1H),3.42(d,J=6.4Hz,1H),3.58(s,3H),3.90(s,3H),4.62(d,J=2.4Hz,1H),6.54(s,1H),6.61(d,J=8.2Hz,1H),6.76(d,J=8.2Hz,1H).
【0087】
(参考例4)
2,4,6-トリクロロフェニル(4R,4aS,7R,7aR,12bS)-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキシレート(以下、化合物4)の合成
【0088】
【化11】
【0089】
化合物3(1.07g,2.03mmol)をトルエン(15mL)に溶解し、ぎ酸2,4,6-トリクロロフェニル(564mg,2.50mmol)、酢酸パラジウム(46mg,0.205mmol)及び4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(234mg,0.404mmol)を加えた。アルゴン雰囲気下、トリエチルアミン(0.34mL)をゆっくりと滴下し、室温で10時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)を加え、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:6)で精製し、化合物4(1.1g,90%)を無色アモルファスとして得た。
【0090】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.09-0.21(m,2H),0.47-0.62(m,2H),0.74-0.84(m,1H),0.85-0.96(m,1H),0.98(ddd,J=5.5,12.8,12.8Hz,1H),1.43-1.54(m,1H),1.66-1.76(m,2H),1.81(ddd,J=5.5,12.8,12.8Hz,1H),2.28-2.51(m,4H),2.63(dd,J=4.6,11.9Hz,1H),3.12(d,J=18.3Hz,1H),3.51(d,J=6.9Hz,1H),3.56(s,3H),3.90(s,3H),4.65(d,J=1.4Hz,1H),6.63(d,J=8.0Hz,1H),6.77(d,J=8.0Hz,1H),7.40(s,2H),8.07(s,1H)
【0091】
(参考例5)
(4R,4aS,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-1,2,3,4,7,7a-ヘキサヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物5)の合成
【0092】
【化12】
【0093】
化合物4(31.7mg,0.0525mmol)をTHF(2mL)に溶解し、ベンジルアミン(13μL,0.119mmol)、トリエチルアミン(19μL,0.136mmol)及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(1.0mg,0.0082mmol)を加え、50℃で2.5時間撹拌した。反応混合物を減圧下にて濃縮し、残渣を分取薄層クロマトグラフィー(28%アンモニア水:メタノール:クロロホルム=1:9:400)で精製した。化合物5(20mg,74%)を無色油状物として得た。
【0094】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.08-0.18(m,2H),0.46-0.58(m,2H),0.67-0.77(m,1H),0.85-0.98(m,2H),1.26(dddd,J=2.3,2.3,11.9,11.9Hz,1H),1.59(dd,J=2.3,12.8Hz,1H),1.72-1.90(m,2H),2.25-2.44(m,4H),2.60(dd,J=5.0,11.9Hz,1H),3.08(d,J=18.3Hz,1H),3.46(d,J=6.4Hz,1H),3.49(s,3H),3.89(s,3H),4.47(d,J=2.3Hz,1H),4.53(dd,J=5.5,14.7Hz,1H),4.60(dd,J=5.5,14.7Hz,1H),6.61(d,J=8.0Hz,1H),6.75(d,J=8.0Hz,1H),7.25-7.39(m,5H),7.85(s,1H),8.12(br t,J=5.5Hz,1H).
【0095】
(参考例6)
(4R,4aS,6R,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物6)
【0096】
【化13】
【0097】
参考例5の方法で得られた化合物5(0.252g,0.492mmol)をエタノール(20mL)に溶解し、2.5%パラジウム-フィブロイン(0.423g)を加えた。水素雰囲気下、50℃で14時間加熱撹拌し、放冷後に綿栓ろ過した。ろ液を減圧下にて濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(7.0mL)を加え、クロロホルム(50mL,30mL,20mL)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(15mL)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%アセトン/ヘキサン)で精製し、化合物6(0.250g、99%)を無色アモルファス物質として得た。
【0098】
H―NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.06-0.13(m,2H),0.42-0.52(m,2H),0.75-0.91(m,2H),1.14(ddd,J=5.8,12.5.12.5Hz,1H),1.20-1.31(m,1H),1.44-1.52(m,1H),1.61(dd,J=1.5,13.3Hz,1H),1.72(ddd,J=6.2,12.5,12.5Hz,1H),2.18-2.33(m、4H)2.64-2.76(m,3H),3.00(d,J=13.7Hz,1H),3.03(d,J=1.8Hz,1H),3.35(ddd,J=4.6,4.6,13.7Hz,1H),3.44(s,3H),3.87(s,3H),4.42(dd,J=5.5,14.9Hz,1H),4.60(dd,J=5.5,14.9Hz,1H),4.91(d,J=2.3Hz,1H),6.56(d,J=8.0Hz,1H),6.70(d,J=8.0Hz,1H),6.87(t,J=5.5Hz,1H),7.23-7.31(m、1H),7.32-7.37(m,4H).
HRMS-ESI(m/z):[M+H] calcd for C3239:515.2910,found:515.2899.
【0099】
(実施例1)
(4R,4aS,6S,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物7)
【0100】
【化14】
【0101】
特許文献(国際公開第98/043978号)に記載の方法で得られたエステル体であるエチル(4R,4aS,6S,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキシレート(0.158g,0.349mmol)を6M塩酸水溶液(10mL)に溶解し、90℃で2時間加熱攪拌し、反応混合液を減圧下にて濃縮した。得られた残渣をDMF(10mL)に溶解し、N-メチルベンジルアミン(0.102mL,0.698mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.182mL,1.05mmol)及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(0.201g,0.558mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10.0mL)と精製水(30mL)にあけ、ヘキサンと酢酸エチルの1:1の混合溶液(100mL、60L、30mL)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10-15%アセトン/ヘキサン)で精製し、化合物7(0.161g、87%)を橙色アモルファス物質として得た。
【0102】
H―NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.05-0.14(m、2H),0.42-0.54(m、2H),0.71-0.88(m、2H),1.25-1.33(m、2H),1.43-1.74(m、2H),2.00-2.14(m,2H),2.19-2.38(m、4H),2.50-2.73(m、1H),2.81-2.88(m,2H),2.94-3.06(m,4H),3.10-3.14(m,1H),3.40(s,1.2H),3.43(s,1.8H),3.87(s,1.2H),3.88(s,1.8H),4.27-4.34(m,14.9Hz,1H),4.38-4.40(m,1H),4.96-5.14(m,1H),6.54-6.58(m,1H),6.69-6.73(m,1H),7.21-7.35(m,5H).
HRMS-ESI(m/z):[M+H] calcd for C3341:529.3066,found:529.3069.
【0103】
(実施例2)
(4R,4aS,6S,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物8)
【0104】
【化15】
【0105】
実施例1で得られた化合物7(0.159g,0.301mmol)をジクロロメタン(6mL)に溶解し、-20℃下で撹拌しつつ1.0M三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(1.82mL,1.82mmol)を加えた。-20℃で3.0時間撹拌した後、氷冷下で28%アンモニア水溶液(3.0mL)を加え、さらに室温で1時間撹拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)及びクロロホルム(5mL)を加え、クロロホルム(50,30,20mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮した。残渣を分取薄層クロマトグラフィー(メタノール:クロロホルム=1:20)にて精製し、化合物8のフリー体(128.6mg,85%)を無色アモルファス物質として得た。このフリー体を酢酸エチルに溶解し、氷冷下で1M塩化水素--ジエチルエーテル溶液を加えた。室温でジエチルエーテルを加え、30分間攪拌した後、生じた白色沈殿をろ取し、化合物8の塩酸塩を得た。
【0106】
(フリー体)
H―NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.04-0.18(m,2H),0.41-0.55(m,2H),0.63-0.85(m,2H),1.17-1.41(m,2H),1.57-1.75(m,2H),1.76-1.93(m,0.6H),1.91-2.07(m,0.4H),2.15-2.40(m,4H),2.50-2.69(m,1H),2.83-3.10(m7H),4.00-4.12(m,1H),4.20-4.34(m,1H),4.49-4.50(m,2H),6.48-6.56(m,1H),6.68-6.74(m,1H),7.17-7.35(m、5H).
二つの水酸基水素は観測されなかった。
HRMS-ESI(m/z):[M+H] calcd for C3137:501.2753,found:501.2737.
(塩酸塩)
元素分析 calcd for C3134・HCl・1.1HO:C,66.86;H,7.10;N,5.03. found C,67.05,;H,7.38;N,5.10.
【0107】
(実施例3)
(4R,4aS,6R,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジメトキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物9)
【0108】
【化16】
【0109】
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウム(55% in oil,70.5mg,1.56mmol)を無水THF(5.0mL)で懸濁して氷冷し、化合物6(0.250g,0.468mmol)の無水THF(10.0mL)溶液を加えた。その後遮光下で、ヨードメタン(32.0μL,0.515mmol)を加えた後、室温に戻し13時間攪拌した。この反応混合物を氷冷下で、飽和塩化アンモニウム水溶液(6.0mL)をゆっくり加え、続いて精製水(7.0mL)を加えた後、クロロホルム(40mL,30mL,20mL)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5-10%アセトン/ヘキサン)で精製し、化合物9(0.187g,73%)を無色アモルファス物質として得た。
【0110】
H―NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.06-0.13(m,2H).0.42-0.52(m,2H),0.75-0.91(m,2H),1.10-1.26(m,2H),1.44-.180(m,3H),2.18-2.33(m,4H),2.63-2.72(m,1H),2.92-3.10(m,7H),3.16-3.23(m,0.5H),3.32-3.36(m,0.5H),3.45(s,3H),3.86(s,1.2H),3.87(s,1.8H),4.33-4.41(m,1H),4.93-5.10(m,1H),5.45(s,1H)6.50-6.58(m,1H),6.65-6.71(m,1H),7.23-7.31(m,1H),7.32-7.37(m、4H).
HRMS-ESI(m/z):[M+H] calcd for C3341:529.3066,found:529.3051.
【0111】
(実施例4)
(4R,4aS,6R,7R,7aR,12bS)-N-ベンジル-3-(シクロプロピルメチル)-7,9-ジヒドロキシ-N-メチル-1,2,3,4,5,6,7,7a―オクタヒドロ-4a,7-エタノ-4,12-メタノベンゾフロ[3,2-e]イソキノリン-6-カルボキサミド(以下、化合物10)
【0112】
【化17】
【0113】
化合物9(0.183g,0.347mmol)をジクロロメタン(7mL)に溶解し、-20℃下で撹拌しつつ1.0M三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(2.10mL,2.10mmol)を加えた。-20℃で4時間撹拌した後、氷冷下で28%アンモニア水溶液(3.5mL)を加え、さらに室温1時間撹拌した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)及びクロロホルム(7mL)を加え、クロロホルム(50mL,40mL,30mL)で抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下にて濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1-5%メタノール/クロロホルム)で精製し、化合物10のフリー体(0.135g,77%)を無色アモルファス物質として得た。このフリー体を酢酸エチルに溶解し、氷冷下で1M塩化水素-ジエチルエーテル溶液を加えた。室温でジエチルエーテルを加え、30分間攪拌した後、生じた白色沈殿をろ取し、化合物10の塩酸塩を得た。
【0114】
(フリー体)
H―NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.02-0.18(m,2H),0.41-0.52(m,2H),0.70-0.90(m,2H),1.17-1.41(m,2H),1.02-1.33(m,2H),1.45-1.63(m,2H),1.64-1.89(m,1H),2.18-2.38(m,4H),2.50-2.70(m,1H),2.77-3.05(m,6H),2.09-3.28(m,1H),4.31(bs、1H),4.40-4.80(m,2H),5.75-5.76(d,J=6.9Hz,1H),6.46-6.54(m,1H),6.66-6.74(m、1H),7.17-7.35(m、5H).
HRMS-ESI(m/z):[M+H] calcd for C3137:501.2753,found:501.2768.
(塩酸塩)
元素分析 calcd for C3134・HCl・1.4HO:C,66.22;H,7.13;N,4.98. found C,66.19,;H,7.12;N,4.91.
【0115】
(試験例1)ヒトオピオイドκ受容体結合試験
受容体結合試験における細胞膜分画は、オピオイド受容体を安定発現させたHEK293細胞から採取した。実験では、最終濃度を2nMに調製した[3H]U-69593(κオピオイド受容体リガンド)を対応する受容体の細胞膜分画に加え、これに被験化合物として、化合物8及び化合物10(共に10-15~10-6M)を加えてインキュベーションした。受容体上で起こる放射性リガンドと被験化合物の競合置換反応から得られる放射活性の変化を元に、被験化合物の受容体結合親和性(Ki値)を算出した。
【0116】
Ki値 化合物8 122pM
化合物10 115pM
【0117】
(試験例2)鎮痛作用(酢酸ライジング試験)
実験室環境に馴化したICR系雄性マウス(25~30g)を測定用のアクリル製オープンフィールドケージへ移し10分間馴化させた。馴化後、サンプル化合物又は生理食塩水をマウスの体重当たり10mL/kgの投与量で皮下投与し、測定用ケージへ戻した。化合物投与30分後、それぞれのマウスに0.6%酢酸水溶液をマウス体重当たりの投与量で腹腔内処置した。酢酸水溶液投与10分後、マウスにおいて誘発されるライジング反応回数を10分間計測し、このライジング反応回数を対照群(生理食塩水投与群)と比較して、被験化合物の鎮痛効果を評価した。
【0118】
鎮痛作用ED50値 化合物8 1.29μg/kg
化合物10 3.32μg/kg
【0119】
(試験例3)鎮静作用(ロータロッド試験)
実験開始前、ICR系雄性マウスがロータロッド装置の回転軸棒上を歩き続けられるように、5rpm120秒間、6rpm180秒間、及び8rpm300秒間の歩行を達成出来るように休息を設けながら繰り返し訓練した。なお、一定速度のトレーニング下において、20回以上繰り返し回転軸棒上から落下するマウスにおいては、実験前に棄却することとした。歩行訓練を達成したマウスは2-3時間の十分な休息の後、化合物8(100~3000μg/kg)、化合物10(300~30000μg/kg)又は生理食塩水をマウスの体重当たり10mL/kgの投与量で皮下投与した。ロータロッド試験における回転軸棒からのマウスの落下回数と初回落下までの滞在時間は、投与後30分間隔で8rpm300秒間の測定を行い、薬物処置後120分まで評価した。
【0120】
図1に、化合物8及び10の鎮痛作用と鎮静作用の評価結果を示す。化合物8は、用量依存的な総落下回数の増加を示したが、そのED50値は531μg/kgであり、試験例2で求めた鎮痛作用のED50値1.29μg/kgとは400倍の乖離があった。また、化合物10は落下回数の増加が試験した範囲では全く認められず、その乖離は9000倍以上であった。これらの結果から、化合物8及び10はナルフラフィンに比較して副作用が著しく弱いことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のモルヒナン誘導体又はその薬学的に許容される塩は、オピオイドκ受容体に結合し、かつ、副作用が著しく低減されているため、オピオイドκ受容体に関連する疾患に対する治療薬、改善薬又は予防薬として、医薬分野に有用である。
図1