(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028198
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法
(51)【国際特許分類】
B60J 11/04 20060101AFI20230224BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B60J11/04 G
E04H6/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133755
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】521366920
【氏名又は名称】有限会社マルゴオートサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100137327
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 勝義
(72)【発明者】
【氏名】グェン ホン タイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴ ティ フォン
(72)【発明者】
【氏名】ハ タン フック
(57)【要約】
【課題】車両全体を容易かつ確実に密閉して、水害から車両を守ることのできる冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法を提供する。
【解決手段】車両90全体を包み込み、水害から車両90を守ることのできる冠水防止カバー1である。略長方形状かつ同一外形の上面防水シート10と下面防水シート20とを有し、上面防水シート10と下面防水シート20とは、外縁部10a、20a全体に亘り密着されている。上面防水シート10には、ファスナー11によりコ字状に開く車両待避口30が設けられ、車両待避口30より車両90を上面防水シート10と下面防水シート20との間に形成される待避空間に入れることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両全体を包み込み、水害から該車両を守ることのできる冠水防止カバーであって、
略長方形状かつ同一外形の上面防水シートと下面防水シートとを有し、
該上面防水シートと該下面防水シートとは、外縁部全体に亘り密着され、
該上面防水シートには、ファスナーによりコ字状に開く車両待避口が設けられ、
該車両待避口より、該車両を該上面防水シートと該下面防水シートとの間に形成される待避空間に入れることができることを特徴とする冠水防止カバー。
【請求項2】
前記待避空間は、
前記上面防水シートの中央部分である上面中央部が該車両の上面部分となり、該上面中央部を除いた部分である上面外側部が該車両の側面部分の上側となり、
前記下面防水シートの中央部分である下面中央部が前記車両の下面部分となり、該下面中央部を除いた部分である下面外側部が該車両の側面部分の下側となって形成されることを特徴とする請求項1記載の冠水防止カバー。
【請求項3】
前記下面防水シートの前記下面中央部には、前記車両による摩耗、損傷を防止する摩耗防止シートが貼付されていることを特徴とする請求項1又は2記載の冠水防止カバー。
【請求項4】
前記摩耗防止シートには、前記車両の停車位置を示す着色がされていることを特徴とする請求項3記載の冠水防止カバー。
【請求項5】
前記上、下面防水シートの頂点には、該上、下面防水シートの斜めの頂点同士を結んで該上、下面防水シートを前記車両に締め付けて留める2組の締付ベルトが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の冠水防止カバー。
【請求項6】
前記上、下面防水シートの頂点には、前記車両が水に流されるのを防止するために該上、下面防水シートと樹木や建造物とを繋ぐロープを固定するループ状の係留ベルトが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の冠水防止カバー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の前記冠水防止カバーを用いた冠水防止カバーの使用方法であって、
該冠水防止カバーを駐車場や地面に敷き広げ、前記ファスナーを開き前記車両待避口を開く敷設工程と、
該車両待避口から前記車両を移動して載せる車両載置工程と、
該ファスナーを閉じ該車両待避口を閉じて、該車両全体を前記待避空間に包み込む車両密閉工程と、を備えることを特徴とする冠水防止カバーの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害時に冠水、浸水から車両を守る冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水、津波等の水害が発生した場合、人命優先であり、誰もが高台や高い建造物にいち早く避難する必要がある。しかし、避難する際に車両を移動させる時間的余裕がなく、車両が放置されてしまうことが多い。そのため、洪水、津波等により車両が冠水、浸水してしまうと、エンジンを始動させることができなくなり車両を使用することが不可能になってしまう。これを防止するため、特許文献1に示す洪水、津波用車両浮上シートが提案されている。
【0003】
この洪水、津波用車両浮上シートは、駐車場に設置され、洪水、津波の場合に自動車の下に設置した防水シートの紐を引っ張り、紐の先端を自動車の左右のセンターピラーに縛り付け、防水シートで自動車を概ね窓下位置までお椀状に包み込むものである。この洪水、津波用車両浮上シートによれば、防水シートで自動車をお椀状に包み込むため、自動車を水面に浮上させることができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の洪水、津波用車両浮上シートでは、常に駐車場に設置されているため、通常時において車両の移動により損傷を受け易いだけでなく、直射日光や風雨に晒されて劣化しやすいという欠点を有する。また、防水シートの紐を引っ張り、紐の先端を自動車の左右のセンターピラーに縛り付けて密閉性を確保するのは困難であり、紐の引っ張り具合やセンターピラーへの縛り付け具合により、防水シートと自動車との間に隙間を生じやすい。そして、降雨時においては車両の上部を風雨が直接打ちつけるため、この隙間から車両の上部に降った雨が進入してしまう。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、車両全体を容易かつ確実に密閉して、水害から車両を守ることのできる冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る冠水防止カバーは、車両全体を包み込み、水害から該車両を守ることのできる冠水防止カバーであって、略長方形状かつ同一外形の上面防水シートと下面防水シートとを有し、該上面防水シートと該下面防水シートとは、外縁部全体に亘り密着され、該上面防水シートには、ファスナーによりコ字状に開く車両待避口が設けられ、該車両待避口より、該車両を該上面防水シートと該下面防水シートとの間に形成される待避空間に入れることができることである。
【0008】
請求項2に係る冠水防止カバーの特徴は、前記待避空間は、前記上面防水シートの中央部分である上面中央部が該車両の上面部分となり、該上面中央部を除いた部分である上面外側部が該車両の側面部分の上側となり、前記下面防水シートの中央部分である下面中央部が前記車両の下面部分となり、該下面中央部を除いた部分である下面外側部が該車両の側面部分の下側となって形成されることである。
【0009】
請求項3に係る冠水防止カバーの特徴は、前記下面防水シートの前記下面中央部には、前記車両による摩耗、損傷を防止する摩耗防止シートが貼付されていることである。
【0010】
請求項4に係る冠水防止カバーの特徴は、前記摩耗防止シートには、前記車両の停車位置を示す着色がされていることである。
【0011】
請求項5に係る冠水防止カバー場の特徴は、前記上、下面防水シートの頂点には、該上、下面防水シートの斜めの頂点同士を結んで該上、下面防水シートを前記車両に締め付けて留める2組の締付ベルトが設けられていることである。
【0012】
請求項6に係る冠水防止カバーの特徴は、前記上、下面防水シートの頂点には、前記車両が水に流されるのを防止するために該上、下面防水シートと樹木や建造物とを繋ぐロープを固定するループ状の係留ベルトが設けられていることである。
【0013】
請求項7に係る冠水防止カバーの使用方法の特徴は、請求項1乃至6のいずれか1項記載の前記冠水防止カバーを用いた冠水防止カバーの使用方法であって、該冠水防止カバーを駐車場や地面に敷き広げ、前記ファスナーを開き前記車両待避口を開く敷設工程と、該車両待避口から前記車両を移動して載せる車両載置工程と、該ファスナーを閉じ該車両待避口を閉じて、該車両全体を前記待避空間に包み込む車両密閉工程と、を備えることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る冠水防止カバーは、略長方形状かつ同一外形の上面防水シートと下面防水シートとが外縁部全体に亘り密着され、上面防水シートにはファスナーによりコ字状に開く車両待避口が設けられている。この車両待避口から車両を上面防水シートと下面防水シートとの間に形成される待避空間に入れて、ファスナーを閉じれば、車両全体が冠水防止カバーに完全に被包されるため、風雨が車両を直接打ち付けることがないうえ、車両と冠水防止カバーとの間に水が入り込むこともない。このように、ファスナーを用いているため、容易かつ確実に車両を冠水防止カバーに包み込むことができる。また、この冠水防止カバーは、折りたたんで保管して、必要な場合に広げて使用することができるため、直射日光や風雨による劣化の心配がない。したがって、この冠水防止カバーによれば、車両全体を容易かつ確実に密閉して、水害から車両を守ることができる。なお、「略長方形状」には、完全な長方形状だけでなく、車両の形状に合わせて多少変形したものも含まれる。また、上面防水シートと下面防水シートとは外縁部全体に亘り密着されて完全に密閉されていればよく、その製造方法は問わない。例えば、別体として製造された上面防水シートと下面防水シートとの四辺の外縁部を溶着や接着剤により密着して製造してもよい。また、一枚の防水シートを半分に折り曲げて重ねて上面防水シートと下面防水シートとし、折り曲げによりできた辺以外の三辺の外縁部を溶着や接着剤により密着して製造してもよい。さらに、車両の大きさに対応した数種類の大きさの冠水防止カバーを用意しておくことが望ましい。
【0015】
請求項2に係る冠水防止カバーにおいては、待避空間が同一形状で重なり合う上面防水シートと下面防水シートとにより立体的に形成される。すなわち、上面防水シートの上面中央部が車両の上面部分となり、上面外側部が車両の側面部分の上側となる。また、下面防水シートの下面中央部が車両の下面部分となり、下面外側部が車両の側面部分の下側となる。このように待避空間が形成されるため、上面防水シートと下面防水シートとを単純な形状とすることができ、保管が容易で安価に製造することができる。
【0016】
請求項3に係る冠水防止カバーにおいては、下面防水シートの下面中央部に車両による摩耗、損傷を防止する摩耗防止シートが貼付されているため、繰り返し使用することができ経済的である。なお、摩耗防止シートは、下面防水シートと同一の材質のもであっても別の材質のものであってもよい。また、車両のタイヤを載せる位置に、さらに摩耗防止シートを重ねてもよい。
【0017】
請求項4に係る冠水防止カバーにおいては、摩耗防止シートには車両の停車位置を示す着色がされているため、運転者は容易に停車位置を把握することができる。なお、摩耗防止シート全体に着色されていてもよく、車両のタイヤを載せる位置だけに着色されていてもよい。さらには、車両のタイヤを載せる位置と残りの摩耗防止シートの部分とで2色に色分けしてもよい。
【0018】
請求項5に係る冠水防止カバーにおいては、2組の締付ベルトにより上、下面防水シートの斜めの頂点同士を結んで、上、下面防水シートを車両に締め付けて留めることができる。これにより、水流や水圧の変化により上、下面防水シートが車両のボディーに擦れて、塗装が脱落するのを防止することができる。
【0019】
請求項6に係る冠水防止カバーにおいては、上、下面防水シートの頂点にループ状の係留ベルトが設けられている。この係留ベルトにロープを通して、ロープを樹木や建造物に繋ぐことにより、車両が水に流されるのを防止することができる。
【0020】
請求項7に係る冠水防止カバーの使用方法においては、敷設工程において、冠水防止カバーを駐車場や地面に敷き広げ、ファスナーを開き車両待避口を開く。この冠水防止カバーは、略長方形状かつ同一外形の下面防水シートと上面防水シートとが外縁部全体に亘り密着されている。また、コ字状に開くファスナーが上面防水シートに設けられ、ファスナーを開くことにより車両待避口を簡単に開くことができる。
【0021】
また、車両載置工程において、車両待避口から車両を移動して下面防水シートの所定の位置に載せる。この車両待避口はコ字状に大きく開口するため、車両を下面防水シートの所定の位置に容易に載せることができる。
【0022】
さらに、車両密閉工程において、ファスナーを閉じ車両待避口を閉じて、車両全体を上面防水シートと下面防水シートとの間に形成される待避空間に包み込む。これにより、車両全体が冠水防止カバーに完全に被包されるため、風雨が車両を直接打ち付けることがないうえ、車両と冠水防止カバーとの間に水が入り込むこともない。また、この冠水防止カバーは、折りたたんで保管して、必要な場合に拡げて使用することができるため、直射日光や風雨による劣化の心配がない。したがって、この冠水防止カバーの使用方法によれば、車両全体を密閉して、水害から車両を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法にかかり、冠水防止カバーの斜視図。
【
図2】実施形態の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法にかかり、上面防水シートの平面図。
【
図3】実施形態の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法にかかり、下面防水シートの平面図。
【
図4】実施形態の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法にかかり、車両待避口が開けられた冠水防止カバーの平面図。
【
図5】実施形態の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法にかかり、車両を下面防水シート上に停車した状態を示す斜視図。
【
図6】実施形態の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法にかかり、車両待避口を閉じて車両を待避空間に入れた状態を示す斜視図。
【
図7】実施形態の冠水防止カバーの使用方法のフローチャート。
【
図8】実施形態の冠水防止カバーの使用方法に係り、保管バッグに収納された冠水防止カバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法を具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、実施形態の冠水防止カバー1の斜視図である。
図1に示すように、この冠水防止カバー1は、別体として製造された略長方形状かつ同一外形の上面防水シート10と下面防水シート20とがぴったりと重ね合わされ、四辺の外縁部10a、20aの全体に亘り溶着により密着されている。上面防水シート10にはファスナー11がコ字状に設けられ、このファスナー11により開閉シート12を開けると後述する車両待避口30(
図4参照)が現れるようになっている。そして、車両待避口30(
図4参照)から車両を上面防水シート10と下面防水シート20との間に形成される後述する待避空間35(
図6参照)に入れて、ファスナー11を閉じれば、車両全体が冠水防止カバー1に完全に被包されるようになっている。このように、ファスナー11により、容易かつ確実に車両90を冠水防止カバー1に包み込むことができる。なお、上、下面防水シート10、20は防水性を有するものであればよく、本実施形態においてはポリ塩化ビニル(PVC)を採用している。また、
図1においては、冠水防止カバー1は上面防水シート10の長手方向に開閉可能になっているが、長手方向と直角方向に開閉できるようになっていてもよい。
【0025】
また、上、下面防水シート10、20の頂点には、上、下面防水シート10、20の斜めの頂点同士を結んで上、下面防水シート10、20を車両に締め付けて留める2組の締付ベルト2が設けられている。このベルト2は、バックル2bにタングプレート2aを差し込むことにより簡単に締結することができるようになっている。さらに、上、下面防水シート10、20の頂点にループ状の係留ベルト3が設けられている。この係留ベルト3にロープを通して、ロープを樹木や建造物に繋ぐことができる。
【0026】
図2は、上面防水シート10の平面図である。ただし、以下、
図2から
図5においては、ベルト2、及び係留ベルト3が取り付けられていない状態を示している。上面防水シート10は、中央部分であり車両の上面部分と当接する部分である上面中央部10bと、上面中央部10bを除いた部分である上面外側部10cとからなっている。この上面外側部10cには車両の側面部分の略上半分が当接する。そして、ファスナー11は上面外側部10cに設けられ、テープ部11aにより外から見えないようにされている。テープ部11aは黄色に着色され、ファスナー11の位置を簡単に見つけることができるようになっている。また、ファスナー11は、車両の窓より少し下に位置するように取り付けられている。したがって、開閉シート12は、車両の上面部分と当接するだけでなく、車両の側面部分とも当接するようになっている。
【0027】
図3は、下面防水シート20の平面図である。下面防水シート20は、中央部分であり車両が載る部分である下面中央部20bと、下面中央部20bを除いた部分である下面外側部20cとからなっている。この下面外側部20cには車両の側面部分の略下半分が当接する。そして、下面中央部20bには摩耗防止シート21、22が貼付されている。摩耗防止シート21は下面中央部20bと同じ大きさであり、摩耗防止シート21の上面には車両のタイヤを載せる位置を示す摩耗防止シート22が貼付されている。この摩耗防止シート22は黄色に着色され、車両のタイヤを摩耗防止シート22上に載せやすくしている。なお、本実施形態においては、下面中央部20bは下面防水シート20、及び摩耗防止シート21、22が三重になっているが、摩耗防止シート22を設けることなく下面中央部20bと摩耗防止シート21のみが二重になっていてもよい。また、摩耗防止シート21に着色してもよい。
【0028】
図4は、車両待避口30が開けられた冠水防止カバー1の平面図である。
図4に示すように、上面防水シート10のファスナー11により開閉シート12を開けるとコ字状の車両待避口30が現れる。そして、開閉シート12を開けることにより摩耗防止シート21、22が現れる。
【0029】
図5は、車両を下面防水シート20の摩耗防止シート21、22上に車両90を停車した状態を示す斜視図である。摩耗防止シート22は黄色に着色されているため、運転者は車両90のタイヤを載せる位置を容易に把握することができる。
【0030】
図6は、開閉シート12を車両90に被せた後、ファスナー11により車両待避口30を閉じて車両90を待避空間35に入れた状態を示す斜視図である。
図6に示すように、待避空間35は、同一形状で重なり合う平面的な上、下面防水シート10、20により形成される。すなわち、上面防水シート10の上面中央部10bが車両90の上面部分となり、上面外側部10cが車両90の側面部分の上側となる。また、下面防水シート20の下面中央部20bが車両90の下面部分となり、下面外側部20cが車両90の側面部分の下側となる。このように平面的な上、下面防水シート10、20全体で立体的な待避空間35が形成されるため、上、下面防水シート10、20を単純な形状とすることができる。なお、ファスナー11の位置は、車内の様子の把握が容易であるように、サイドガラスの下端よりわずかに下であることが望ましい。
【0031】
また、2組の締付ベルト2により上、下面防水シート10、20の斜めの頂点同士を結んで、上、下面防水シート10、20を車両90に締め付けて留めている。これにより、水流や水圧の変化により上、下面防水シート10、20が車両90のボディーに擦れて、塗装が脱落するのを防止している。さらに、係留ベルト3にロープ91を通して樹木や建造物に繋ぎ、車両90が水に流されるのを防止している。また、車両90が水に流されてきた樹木等に当り損傷を受けるのを防止するため、車両90と上、下面防水シート10、20との間に発泡スチロール等からなる図示しない衝撃吸収物を配置してもよい。
【0032】
以上の構成をした冠水防止カバー1を用いた冠水防止カバー1の使用方法について、
図7に示すフローチャートを用いて説明する。まず、ステップS1において、
図8に示す保管バッグ95から冠水防止カバー1を取り出して、
図1に示すように敷き広げる。この冠水防止カバー1は、折り畳んで保管バッグ95等に収納できるため、保管、運搬等に便利であるだけでなく、直射日光や風雨による劣化の心配がない。そして、
図4に示すように、上面防水シート10のファスナー11により開閉シート12を開ける。これにより、コ字状の車両待避口30、及び摩耗防止シート21、22が現れる。このステップS1が敷設工程である。
【0033】
ステップS2においては、車両90を車両待避口30から冠水防止カバー1上に移動させて、
図5に示すように、摩耗防止シート21、22上に停車させる。この際、摩耗防止シート22が黄色に着色されているため、運転者は車両90のタイヤを載せる位置を容易に把握することができる。このステップS2が車両載置工程である。
【0034】
ステップS3においては、開閉シート12を車両90に被せた後、ファスナー11により車両待避口30を閉じる。これにより、待避空間35ができると同時に、この待避空間35に車両90が包み込まれる。このように、ファスナー11により、容易かつ確実に車両90を冠水防止カバー1に包み込むことができる。そして、上、下面防水シート10、20の斜めの頂点を結ぶ2組の締付ベルト2のバックル2bにタングプレート2aを差し込んで、上、下面防水シート10、20を車両90に締め付けて留める。さらに、係留ベルト3にロープ91を通して樹木や建造物に繋ぐ。これにより、
図6に示す状態になる。この締付ベルト2により、水流や水圧の変化で上、下面防水シート10、20が車両90のボディーに擦れて、塗装が脱落するのを防止できる。また、係留ベルト3により車両90が水に流されるのを防止できる。このステップS3が車両密閉工程である。
【0035】
実施形態の冠水防止カバー1においては、略長方形状かつ同一外形の上面防水シート10と下面防水シート20とが外縁部10a、20a全体に亘り密着され、上面防水シート10にはファスナー11によりコ字状に開く車両待避口30が設けられている。この車両待避口30から車両90を上面防水シート10と下面防水シート20との間に形成される待避空間35に入れて、ファスナー11を閉じれば、車両90全体が冠水防止カバー1に完全に被包されるため、風雨が車両90を直接打ち付けることがないうえ、車両90と冠水防止カバー1との間に水が入り込むこともない。このように、ファスナー11を用いているため、容易かつ確実に車両90を冠水防止カバー1に包み込むことができる。また、この冠水防止カバー1は、保管バッグ95等に折りたたんで保管して、必要な場合に広げて使用することができるため、直射日光や風雨による劣化の心配がない。したがって、この冠水防止カバー1によれば、車両90全体を容易かつ確実に密閉して、水害から車両90を守ることができる。
【0036】
また、この冠水防止カバー1では、待避空間35が同一形状で重なり合う上面防水シート10と下面防水シート20とにより立体的に形成される。すなわち、上面防水シート10の上面中央部10bが車両90の上面部分となり、上面外側部10cが車両90の側面部分の上側となる。また、下面防水シート20の下面中央部20bが車両90の下面部分となり、下面外側部20cが車両90の側面部分の下側となる。このように待避空間35が形成されるため、上面防水シート10と下面防水シート20とを単純な形状とすることができ、保管が容易で安価に製造することができる。
【0037】
さらに、この冠水防止カバー1では、下面防水シート20の下面中央部20bに車両90による摩耗、損傷を防止する摩耗防止シート21、22が貼付されているため、繰り返し使用することができ経済的である。
【0038】
また、この冠水防止カバー1では、摩耗防止シート22には車両90の停車位置を示す着色がされているため、運転者は容易に停車位置を把握することができる。
【0039】
さらに、この冠水防止カバー1では、2組の締付ベルト2により上、下面防水シート10、20の斜めの頂点同士を結んで、上、下面防水シート10、20を車両90に締め付けて留めることができる。これにより、水流や水圧の変化により上、下面防水シート10、20が車両90のボディーに擦れて、塗装が脱落するのを防止することができる。
【0040】
また、この冠水防止カバー1では、上、下面防水シート10、20の頂点にループ状の係留ベルト3が設けられている。この係留ベルト3にロープ91を通して、ロープ91を樹木や建造物に繋ぐことにより、車両90が水に流されるのを防止することができる。
【0041】
また、この冠水防止カバー1の使用方法においては、敷設工程S1において、冠水防止カバー1を駐車場や地面に敷き広げ、ファスナー11を開き車両待避口30を開く。そして、車両載置工程S2において、車両待避口30から車両90を移動して下面防水シート20の摩耗防止シート21、22に載せる。この車両待避口30はコ字状に大きく開口するため、車両90を下面防水シート20の摩耗防止シート21、22に容易に載せることができる。
【0042】
さらに、車両密閉工程S3において、ファスナー11を閉じ車両待避口30を閉じて、車両90全体を上面防水シート10と下面防水シート20との間に形成される待避空間35に包み込む。これにより、車両90全体が冠水防止カバー1に完全に被包されるため、風雨が車両90を直接打ち付けることがないうえ、車両90と冠水防止カバー1との間に水が入り込むこともない。このように、ファスナー11により、容易かつ確実に車両90を冠水防止カバー1に包み込むことができる。また、この冠水防止カバー1は、折りたたんで保管して、必要な場合に拡げて使用することができるため、直射日光や風雨による劣化の心配がない。したがって、この冠水防止カバー1の使用方法によれば、容易かつ確実に車両90全体を密閉して、水害から車両90を守ることができる。
【0043】
以上、本発明の冠水防止カバー、及びこの冠水防止カバーの使用方法を実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1…冠水防止カバー、2…締付ベルト、3…係留ベルト、10…上面防水シート、10a、20a…外縁部、10b…上面中央部、10c…上面外側部、11…ファスナー、20…下面防水シート、20b…下面中央部、20c…下面外側部、30…車両待避口、35…待避空間、90…車両、S1…敷設工程、S2…車両載置工程、S3…車両密閉工程。