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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028215
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】密封装置および密封構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20230224BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20230224BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20230224BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20230224BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20230224BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F02F11/00 J
F02P13/00 303B
F02P15/00 303E
F16J15/10 U
F16J15/10 L
F16J15/3232 101
F16J15/3232 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133781
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】稀代 昌道
(72)【発明者】
【氏名】森 達也
(72)【発明者】
【氏名】山口 優
(72)【発明者】
【氏名】目黒 直樹
(72)【発明者】
【氏名】宮川 佳奈
【テーマコード(参考)】
3G019
3J006
3J040
【Fターム(参考)】
3G019KA14
3G019KC10
3J006AB04
3J006AB05
3J006AE12
3J006AE23
3J006AE30
3J006AE34
3J006AE41
3J006CA01
3J040AA11
3J040EA02
3J040EA16
3J040EA17
3J040EA25
3J040FA05
3J040HA09
3J040HA19
(57)【要約】
【課題】被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、円筒部材に被挿入部材が挿入される時、泥水の侵入を防止するリップのめくれを防止する密封装置および密封構造を提供する。
【解決手段】密封装置は、孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、孔に挿入される剛性材料製の円筒部材の間に配置される。密封装置は、孔に嵌め入れられる円筒部と、弾性材料から形成され、円筒部に連結され、円筒部の径方向内側に配置されており、円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、弾性材料から形成され、円筒部に連結され、円筒部から孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、円筒部材に挿入される剛性材料製の被挿入部材に形成されたフランジに接触するアキシャルリップと、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、前記孔に挿入される剛性材料製の円筒部材の間に配置される密封装置であって、前記円筒部材はプラグチューブまたはインジェクターチューブであって、
前記孔に嵌め入れられる円筒部と、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部の径方向内側に配置されており、前記円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部から前記孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、前記円筒部材に挿入される剛性材料製の被挿入部材に形成されたフランジに接触するアキシャルリップと、
前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部と
を有する密封装置。
【請求項2】
前記めくれ防止部は、弾性材料から形成され、前記アキシャルリップの前記フランジに接触する環状部分から前記フランジと反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びる円錐台形状の傾斜環状部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記円筒部に連結され、前記円筒部から径方向外側に広がり、前記ヘッドカバーの前記孔の縁に接触するフランジ部をさらに有し、
前記めくれ防止部は、弾性材料から形成され、前記アキシャルリップの外周面と前記フランジ部を連結する複数のリブを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記アキシャルリップは、前記フランジに接触する先端を有し、前記先端は前記フランジに面接触する端面を有し、
前記めくれ防止部は、前記端面に形成され、前記フランジに対する前記端面の滑りを防止する凹凸であり、前記端面の表面粗さは前記アキシャルリップの他の部分の表面粗さより大きい
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の密封装置。
【請求項5】
孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、
プラグチューブまたはインジェクターチューブであって、前記孔に挿入される剛性材料製の円筒部材と、
前記円筒部材に挿入される被挿入部分と、前記ヘッドカバーに対向するフランジを有する剛性材料製の被挿入部材と、
前記ヘッドカバーと前記円筒部材の間に配置される密封装置とを有する密封構造であって、
前記密封装置は、
前記孔に嵌め入れられる円筒部と、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部の径方向内側に配置されており、前記円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部から前記孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、前記被挿入部材の前記フランジに接触するアキシャルリップとを有し、
前記密封構造は、
前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部をさらに有する
ことを特徴とする密封構造。
【請求項6】
前記めくれ防止部は、前記被挿入部材の前記フランジの前記アキシャルリップに接触する面に形成され、前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップを径方向外側に押し広げる環状溝を有する
ことを特徴とする請求項5に記載の密封構造。
【請求項7】
前記環状溝は、径方向外側に向かうほど小さくなる深さを有する
ことを特徴とする請求項6に記載の密封構造。
【請求項8】
前記めくれ防止部は、前記アキシャルリップの径方向内側に嵌め込まれる弾性材料製の嵌め込み部材を有し、前記嵌め込み部材は前記孔から離れるほど大きい外径を有する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の密封構造。
【請求項9】
前記嵌め込み部材は、前記被挿入部材の前記被挿入部分が挿入される貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記被挿入部分が前記円筒部材に挿入されることを案内する
ことを特徴とする請求項8に記載の密封構造。
【請求項10】
前記密封装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載の密封装置である
ことを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の密封構造。
【請求項11】
前記めくれ防止部は、前記アキシャルリップの先端の端面に面接触する前記被挿入部材の前記フランジの面に形成され、前記フランジに対する前記端面の滑りを防止する凹凸を有し、
前記フランジの前記面は、前記凹凸が形成された領域を有し、前記領域の表面粗さは前記フランジの前記面の他の部分の表面粗さより大きいことを特徴とする請求項5に記載の密封構造。
【請求項12】
前記密封装置は、請求項4に記載の密封装置である
ことを特徴とする請求項11に記載の密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置および密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2の各々は、エンジンのシリンダーヘッドに設けられた点火装置のプラグチューブと、エンジンのヘッドカバーとの間の環状の隙間を密封する密封装置を開示する。密封装置は、シリンダーヘッドに嵌め込まれ、プラグチューブの外周面に接触する。特許文献2に開示された密封装置は、点火装置の上部に設けられた部材に接触するリップをさらに有する。このリップは、外部からのプラグチューブへの泥水の侵入を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-133068号公報
【特許文献2】国際公開第2021/065129号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
点火装置は、点火プラグに電力を供給する給電装置を有し、給電装置はプラグチューブに挿入される。給電装置にはフランジが設けられる場合がある。泥水の侵入を防止するリップを有する、点火装置のプラグチューブのための密封装置においては、プラグチューブに給電装置が挿入されると、泥水の侵入を防止するリップが給電装置のフランジに接触することが好ましい。また、この場合、プラグチューブに挿入される給電装置がプラグチューブに対して横方向に移動しても、プラグチューブに給電装置が挿入される時、そのリップがリップに接触するフランジの横方向に移動によって、めくれないことが好ましい。
【0005】
本発明は、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、円筒部材に被挿入部材が挿入される時、泥水の侵入を防止するリップのめくれを防止する密封装置および密封構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、前記孔に挿入される剛性材料製の円筒部材の間に配置される密封装置が提供される。前記円筒部材はプラグチューブまたはインジェクターチューブである。密封装置は、前記孔に嵌め入れられる円筒部と、弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部の径方向内側に配置されており、前記円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部から前記孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、前記円筒部材に挿入される剛性材料製の被挿入部材に形成されたフランジに接触するアキシャルリップと、前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部とを有する。
【0007】
この態様においては、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、外部から円筒部材への泥水の侵入を防止するアキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部が設けられている。したがって、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、円筒部材に被挿入部材が挿入される時、めくれ防止部が泥水の侵入を防止するリップのめくれを防止する。
【0008】
本発明の他の態様によれば、孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、前記孔に挿入される剛性材料製の円筒部材と、前記円筒部材に挿入される被挿入部分と、前記ヘッドカバーに対向するフランジを有する剛性材料製の被挿入部材と、前記ヘッドカバーと前記円筒部材の間に配置される密封装置とを有する密封構造が提供される。前記密封装置は、前記孔に嵌め入れられる円筒部と、弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部の径方向内側に配置されており、前記円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部から前記孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、前記被挿入部材の前記フランジに接触するアキシャルリップとを有する。前記密封構造は、前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部をさらに有する。
【0009】
この態様においては、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、外部から円筒部材への泥水の侵入を防止するアキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部が設けられている。したがって、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、円筒部材に被挿入部材が挿入される時、めくれ防止部が泥水の侵入を防止するリップのめくれを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る密封装置を有する密封構造の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る密封装置の断面図である。
図3】円筒状の部材に被挿入部材が挿入される時の第1実施形態に係る密封装置の断面図である。
図4】円筒状の部材に被挿入部材が挿入される時の第1実施形態に係る密封装置の断面図である。
図5】比較例に係る密封装置の断面図である。
図6】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の比較例に係る密封装置の断面図である。
図7】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の比較例に係る密封装置の断面図である。
図8】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の比較例に係る密封装置の断面図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る密封装置の断面図である。
図10】第2実施形態に係る密封装置の斜視図である。
図11】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の第2実施形態に係る密封装置の断面図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る密封構造の断面図である。
図13】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の第3実施形態に係る密封構造の断面図である。
図14】本発明の第4実施形態に係る密封装置の断面図である。
図15】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の第4実施形態に係る密封装置の断面図である。
図16】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の第4実施形態に係る密封装置の断面図である。
図17】本発明の第5実施形態に係る密封構造の断面図である。
図18】円筒部材に被挿入部材が挿入される時の第5実施形態に係る密封構造の断面図である。
図19】第5実施形態の変形例に係る密封構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0012】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る密封装置を有する密封構造1は、エンジンのシリンダーヘッドのヘッドカバー2と、円筒状のプラグチューブ(円筒部材)3と、給電装置ケース(被挿入部材)4と、密封装置10を有する。
【0013】
ヘッドカバー2は、剛性材料、例えば金属製であり、孔2aを有する。プラグチューブ3は、剛性材料、例えば金属製であり、ヘッドカバー2の孔2aに挿入されている。
【0014】
給電装置ケース4は、剛性材料、例えば繊維強化プラスチック製であり、内部に図示しない給電装置(イグニッションコイルまたはマグネトー)を有する。給電装置は点火プラグに電力を供給する。点火プラグは、図1において、給電装置ケース4の下方に配置され、図示されていない。点火プラグは、図示しないシリンダーヘッドに取り付けられている。給電装置ケース4は、プラグチューブ3に挿入される円筒部(被挿入部分)4aと、ヘッドカバー2に対向するフランジ4bを有する。
【0015】
密封装置10は、ヘッドカバー2とプラグチューブ3の間に配置されて、ヘッドカバー2の孔2aの内周面とプラグチューブ3の外周面の間の隙間を封止する。具体的には、密封装置10は、孔2aに締まり嵌め方式で嵌め入れられ、プラグチューブ3の外周面に周方向全体にわたって接触する。また、密封装置10は、給電装置ケース4に形成されたフランジ4bに接触する部分を有しており、密封構造1の外部からプラグチューブ3への泥水の侵入を防止する。
【0016】
図2以降の図は、密封構造の左側部分のみを示す。図2から図4に示すように、第1実施形態に係る密封装置10は、円筒部11、円環部12、連結円環部13、ラジアルリップ14、フランジ部15、およびアキシャルリップ16を有する。密封装置10は、弾性材料、例えばエラストマーで形成された弾性環と、弾性環に埋設された剛性環18と、弾性環に埋設されたガータースプリング19を有する複合構造である。剛性環18は、剛性材料、例えば金属から形成されており、弾性環を補強する。剛性環18は、ほぼL字形の断面形状を有する。
【0017】
円筒部11は、ヘッドカバー2の孔2aに締まり嵌め方式で嵌め入れられる。剛性環18は、円筒部11を孔2aの内周面に密に接触させる。
【0018】
円環部12は、円筒部11の径方向内側に配置されており、連結円環部13によって、円筒部11の下端に連結されている。
【0019】
ラジアルリップ14は、連結円環部13から上方に向けて延びる円環部49に形成された隆起である。密封装置10が孔2aに嵌め込まれていない初期状態では、この隆起は図2に示すように三角形の断面を有する。図3および図4に示すように、密封装置10が孔2aに嵌め込まれた後、ラジアルリップ14は、プラグチューブ3の外周面に周方向全体にわたって接触する。したがって、密封装置10は、ヘッドカバー2の孔2aの内周面とプラグチューブ3の外周面の間の隙間を封止する。
【0020】
フランジ部15は、円筒部11の上端に連結され、円筒部11から径方向外側に広がり、ヘッドカバー2の孔2aの縁に接触する。剛性環18は、円筒部11をヘッドカバー2の上面に密に接触させる。
【0021】
アキシャルリップ16は、円筒部11とフランジ部15の連結箇所に連結され、この連結箇所から孔2aと反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びる。図3および図4に示すように、アキシャルリップ16は、プラグチューブ3に挿入される給電装置ケース4に形成されたフランジ4bに接触する。したがって、アキシャルリップ16は、密封構造1の外部からプラグチューブ3への泥水の侵入を防止する。
【0022】
円筒部11とフランジ部15が剛性環18で補強されているのに対して、円環部12、連結円環部13、ラジアルリップ14、およびアキシャルリップ16は剛性環18で補強されていない。ラジアルリップ14を含む円環部12の大部分は弾性材料のみから形成されているが、円環部12に埋設されたガータースプリング19がラジアルリップ14をプラグチューブ3に向けて押圧する緊縛力を与える。連結円環部13とアキシャルリップ16は弾性材料のみから形成されている。
【0023】
密封構造1は、給電装置ケース4の円筒部4aがプラグチューブ3に挿入される時に、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部を有する、この実施形態では、めくれ防止部は、アキシャルリップ16のフランジ4bに接触する環状部分16aからフランジ4bと反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びる円錐台形状の傾斜環状部17である。傾斜環状部17は、アキシャルリップ16の材料と同一の弾性材料のみから形成されている。見方を変えれば、傾斜環状部17はアキシャルリップ16の一部であって、アキシャルリップ16がほぼL字形の断面形状を有すると考えることもできる。
【0024】
図5から図8に示す比較例を参照して、傾斜環状部(めくれ防止部)17の効果を説明する。図5から図8に示す比較例に係る密封装置20は、傾斜環状部17を有しないことを除いて、密封装置10と同じ構成を有する。
【0025】
図6は、プラグチューブ3に給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される時の比較例に係る密封装置20を示す。この時、給電装置ケース4は、横方向に拘束されていないので、ヘッドカバー2およびプラグチューブ3に対して横方向に移動する可能性がある。「横方向」とはプラグチューブ3および密封装置の軸線方向に直交する方向である。
【0026】
図7は、図6の状態から給電装置ケース4が矢印Aで示すように横方向(この例では右方向)に移動した状態を示す。アキシャルリップ16は給電装置ケース4のフランジ4bに接触するので、給電装置ケース4が右方向に移動した場合、フランジ4bの移動に伴ってアキシャルリップ16の左側部分が径方向内側へ向けて変形する。
【0027】
図7の状態から、給電装置ケース4を下方に向けて(円筒部4aをプラグチューブ3の奥に向けて)、さらに進めると、図8に示すように、アキシャルリップ16の左側部分が屈曲する(つまり、径方向内側へめくれる)。この状態では、図示しないアキシャルリップ16の右側部分はめくれていないが、めくれた左側部分とめくれていない右側部分の間で、アキシャルリップ16のねじれが生じ、そのねじれの箇所では、アキシャルリップ16とフランジ4bの間に隙間が生ずる。したがって、アキシャルリップ16の泥水に対する封止性能が低下する。
【0028】
他方、図3は、プラグチューブ3に給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される時のこの実施形態に係る密封装置10を示す。図3において、給電装置ケース4のフランジ4bのヘッドカバー2とプラグチューブ3に対する高さは、図6図7のフランジ4bと同じである。給電装置ケース4が矢印Aで示すように横方向(この例では右方向)に移動しても、この実施形態では、傾斜環状部17が、アキシャルリップ16のフランジ4bに接触する環状部分16aからフランジ4bと反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びるので、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0029】
図3の状態から、給電装置ケース4を下方に向けて(円筒部4aをプラグチューブ3の奥に向けて)、さらに進めても、図4に示すように、アキシャルリップ16にめくれは生じない。図4の状態で、給電装置ケース4が横方向に移動しても、アキシャルリップ16にめくれはやはり生じない。したがって、アキシャルリップ16の泥水に対する封止性能が確保される。
【0030】
この後、給電装置ケース4はヘッドカバー2に図示しない手段によって固定される。
【0031】
第2実施形態
図9から図11は、本発明の第2実施形態に係る密封装置30を示す。密封装置30は、傾斜環状部17を持たない密封装置20に複数のリブ31を設けたものに相当する。リブ31はめくれ防止部として機能する。
【0032】
各リブ31は、アキシャルリップ16の材料と同じ弾性材料のみから形成され、アキシャルリップ16の外周面とフランジ部15を連結する。リブ31の数は限定されないが、好ましくは3以上である。リブ31は、アキシャルリップ16の周囲に、等角間隔をおいて配置されるが、リブ31の角間隔は必ずしも等しくなくてもよい。
【0033】
図11は、プラグチューブ3に給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される時のこの実施形態に係る密封装置10を示す。図11において、給電装置ケース4のフランジ4bのヘッドカバー2とプラグチューブ3に対する高さは、図6図7のフランジ4bと同じである。給電装置ケース4が矢印Aで示すように横方向(この例では右方向)に移動し、フランジ4bの移動に伴ってアキシャルリップ16の左側部分が径方向内側へ向けて変形しようとしても、この実施形態では、アキシャルリップ16の左側に配置されたリブ31がアキシャルリップ16に引っ張られて抵抗する。つまり、アキシャルリップ16が径方向内側へめくれようとする時、複数のリブ31のいずれかに張力が働き、アキシャルリップ16の径方向内側への変形を抑制する。したがって、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0034】
第3実施形態
図12図13は、本発明の第3実施形態に係る密封構造40を示す。密封構造40は、傾斜環状部17もリブ31も持たない密封装置20を有する。
【0035】
この実施形態では、給電装置ケース4のフランジ4bの下面(アキシャルリップ16に接触する面)に環状溝41が形成されている。給電装置ケース4がヘッドカバー2に固定されると、環状溝41は、ヘッドカバー2の孔2aおよびプラグチューブ3と同心になるよう配置されている。好ましくは、環状溝41の外径D1と内径D2は、初期状態のアキシャルリップ16の先端が環状溝41に収まるように設計されている。環状溝41は、径方向外側に向かうほど小さくなる深さを持つ傾斜面41aを有する。この実施形態では、傾斜面41aの深さは、径方向外側に向かうほど直線状に小さくなるが、傾斜面41aの深さは、径方向外側に向かうほど曲線状に小さくなってもよい。
【0036】
環状溝41は、給電装置ケース4の円筒部4aがプラグチューブ3に挿入される時に、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部として機能する。給電装置ケース4の円筒部4aがプラグチューブ3に挿入される時、フランジ4bがアキシャルリップ16の先端に接触する。図12に示すように、一旦、フランジ4bの環状溝41にアキシャルリップ16の先端が収まれば、給電装置ケース4が矢印Aで示すように横方向(この例では右方向)に移動し、フランジ4bの移動に伴ってアキシャルリップ16の左側部分が径方向内側へ向けて変形しようとしても、この実施形態では、アキシャルリップ16の先端が環状溝41から脱出しにくい。
【0037】
図12の状態から給電装置ケース4が右方向に移動した状態を想定する。その状態から、給電装置ケース4を下方に向けて(円筒部4aをプラグチューブ3の奥に向けて)、さらに進めると、図13に示すように、アキシャルリップ16の先端が接触した環状溝41の傾斜面41aがアキシャルリップ16を径方向外側に押し広げる。環状溝41は、径方向外側に向かうほど小さくなる深さを有するので、環状溝41がアキシャルリップ16を円滑に径方向外側に押し広げる。また、給電装置ケース4の横方向への移動量が大きい場合、環状溝41の内側端縁42がアキシャルリップ16の途中部分に接触し、アキシャルリップ16の径方向内側への変形を抑制する。したがって、アキシャルリップ16のめくれを防止することができ、アキシャルリップ16の泥水に対する封止性能が確保される。
【0038】
環状溝41の外径D1は、給電装置ケース4がヘッドカバー2に固定された後、つまりアキシャルリップ16が最も大きく変形させられた後、アキシャルリップ16の先端が環状溝41の傾斜面41aに接触するよう設計されていてよい。傾斜面41aの深さは、径方向外側に向かうほど小さいので、アキシャルリップ16は傾斜面41aに十分な接触圧を与えることができる。
【0039】
但し、環状溝41の外径D1は、給電装置ケース4がヘッドカバー2に固定された後、つまりアキシャルリップ16が最も大きく変形させられた後、アキシャルリップ16の先端が環状溝41の外のフランジ4bの下面に接触するよう設計されていてもよい。
【0040】
第4実施形態
図14は、本発明の第4実施形態に係る密封装置45を示す。密封装置45は、密封装置20に類似するが、アキシャルリップ16の先端の端面には、凹凸(めくれ防止部)46が形成されている。凹凸46が形成されているため、アキシャルリップ16の端面の表面粗さはアキシャルリップ16の他の部分の表面粗さより大きい。凹凸46は、不規則に形成されていてもよいし、規則的に形成されていてもよい。
【0041】
図15図16は、第4実施形態に係る密封構造47を示す。密封構造47において、給電装置ケース4のフランジ4bの下面には、アキシャルリップ16の端面が面接触する。フランジ4bの下面には、凹凸(めくれ防止部)4cが形成された円環状の領域4dがある。凹凸4cが形成されているため、領域4dの表面粗さはフランジ4bの下面の他の部分の表面粗さより大きい。給電装置ケース4がヘッドカバー2に固定されると、領域4dは、ヘッドカバー2の孔2aおよびプラグチューブ3と同心になるよう配置されている。
【0042】
アキシャルリップ16の先端の端面の凹凸46と、フランジ4bの下面の凹凸4cは、フランジ4bに対するアキシャルリップ16の先端の端面の滑りを防止する。すなわち、凹凸46は凹凸4cに噛み合って、相互の摩擦により、フランジ4bに対するアキシャルリップ16の先端の移動を規制する。このようにして、給電装置ケース4の円筒部4aがプラグチューブ3に挿入される時に、凹凸46と凹凸4cは、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部として機能する。
【0043】
具体的には、給電装置ケース4の円筒部4aがプラグチューブ3に挿入される時、フランジ4bの下面の領域4dの凹凸4cがアキシャルリップ16の先端の凹凸46に接触する。図15に示すように、一旦、凹凸4cが凹凸46に噛み合うと、給電装置ケース4が矢印Aで示すように横方向に移動しようとしても、アキシャルリップ16の先端の端面が周方向全体にわたってフランジ4bの下面に面接触し続ける。
【0044】
図15の状態から給電装置ケース4が右方向に移動した状態を想定する。その状態から、給電装置ケース4を下方に向けて(円筒部4aをプラグチューブ3の奥に向けて)、さらに進めても、図16に示すように、凹凸4cが凹凸46に噛み合いを維持し、フランジ4bに対するアキシャルリップ16の滑りが防止され、アキシャルリップ16の先端の端面が周方向全体にわたってフランジ4bの下面に面接触し続ける。この結果、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止することができる。アキシャルリップ16が予期しない形状に変形したとしても、アキシャルリップ16のめくれが防止されるので、アキシャルリップ16とフランジ4bの間に隙間が生ずることがなく、アキシャルリップ16の泥水に対する封止性能が維持される。
【0045】
この実施形態では、アキシャルリップ16の先端の端面に凹凸46が設けられ、フランジ4bの下面に凹凸4cが設けられている。しかし、凹凸46だけで十分な摩擦力が得られて、アキシャルリップ16の先端の端面が周方向全体にわたってフランジ4bの下面に面接触し続けることができる限り、凹凸4cを省略してもよい。同様に、凹凸4bだけで十分な摩擦力が得られて、アキシャルリップ16の先端の端面が周方向全体にわたってフランジ4bの下面に面接触し続けることができる限り、凹凸46を省略してもよい。
【0046】
第5実施形態
図17図18は、本発明の第5実施形態に係る密封構造50を示す。密封構造50は、傾斜環状部17もリブ31も持たない密封装置20を有する。
【0047】
この実施形態では、密封構造50は、アキシャルリップ16の径方向内側に嵌め込まれる弾性材料製の嵌め込み部材51を有する。嵌め込み部材51は、ヘッドカバー2の孔2aから離れるほど大きい外径を有する。例えば、嵌め込み部材51は、円錐台形状を有していてもよい。
【0048】
嵌め込み部材51の中央には、給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される貫通孔52が形成されている。貫通孔52は、嵌め込み部材51の外径の円錐台と同心である。
【0049】
この実施形態において、嵌め込み部材51はめくれ防止部として機能する。すなわち、給電装置ケース4がプラグチューブ3に対して横方向に移動しても、プラグチューブ3に給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される時、図18に示すように、アキシャルリップ16の径方向内側に嵌め込まれた嵌め込み部材51は、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止することができる。したがって、アキシャルリップ16の泥水に対する封止性能が確保される。
【0050】
嵌め込み部材51は、給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される貫通孔52を有する。貫通孔52の直径は、円筒部4aの外径よりも僅かに大きい。貫通孔52は、給電装置ケース4の円筒部4aをプラグチューブ3に挿入されるよう案内する。したがって、給電装置ケース4が円筒状のプラグチューブ3に対して横方向に移動することが規制される。
【0051】
図18に示すように、嵌め込み部材51は、給電装置ケース4のフランジ4bによって密封装置20の軸線方向に圧縮される。しかも、アキシャルリップ16と円筒部4aによって、嵌め込み部材51の径方向の変形が規制される。したがって、嵌め込み部材51は、非圧縮性材料よりも、発泡ゴムまたは発泡樹脂から形成することが好ましい。
【0052】
図19は、第5実施形態の変形例に係る密封構造60を示す。この密封構造60では、嵌め込み部材51と類似のめくれ防止部として機能する嵌め込み部材61を有する。嵌め込み部材61は、弾性材料製であって、アキシャルリップ16の径方向内側に嵌め込まれる。嵌め込み部材61は、ヘッドカバー2の孔2aから離れるほど大きい外径を有する。例えば、嵌め込み部材61は、円錐台形状を有していてもよい。
【0053】
嵌め込み部材51と同様に、アキシャルリップ16の径方向内側に嵌め込まれた嵌め込み部材61は、アキシャルリップ16の径方向内側へのめくれを防止することができる。したがって、アキシャルリップ16の泥水に対する封止性能が確保される。
【0054】
嵌め込み部材61の中央には、給電装置ケース4の円筒部4aが挿入される貫通孔62が形成されている。貫通孔62は、嵌め込み部材61の外径の円錐台と同心である。但し、貫通孔62のサイズは、円筒部4aの外径よりもはるかに大きい。したがって、貫通孔62は、給電装置ケース4の円筒部4aをプラグチューブ3に挿入されるよう案内することはできない。
【0055】
しかし、嵌め込み部材61が給電装置ケース4のフランジ4bによって密封装置20の軸線方向に圧縮されても、貫通孔62が大きいので、嵌め込み部材61は径方向内側に大きく変形することができる。したがって、嵌め込み部材61は、非圧縮性のエラストマー材料から形成することができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0057】
例えば、上記の実施形態および変形例は、矛盾しない限り組み合わせることが可能である。
【0058】
上記の実施形態では、密封構造は、エンジンのシリンダーヘッドのヘッドカバー2と、円筒状のプラグチューブ(円筒部材)3と、給電装置ケース(被挿入部材)4と、密封装置を有する。密封装置は、ヘッドカバー2とプラグチューブ3の間に配置されて、ヘッドカバー2の孔2aの内周面とプラグチューブ3の外周面の間の隙間を封止する。
【0059】
しかし、上記の実施形態を修正し、ヘッドカバーと、円筒状のインジェクターチューブ(インジェクションパイプ、円筒部材)と、インジェクター(被挿入部材)と、密封装置を有する密封構造に、本発明を適用してもよい。この場合、密封装置は、ヘッドカバーとインジェクターチューブの間に配置されて、ヘッドカバーの孔の内周面とインジェクターチューブの外周面の間の隙間を封止し、密封装置のアキシャルリップ16は、インジェクターに形成されたフランジに接触し、密封構造の外部からインジェクターチューブへの泥水の侵入を防止する。
【0060】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
【0061】
条項1. 孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、前記孔に挿入される剛性材料製の円筒部材の間に配置される密封装置であって、前記円筒部材はプラグチューブまたはインジェクターチューブであって、
前記孔に嵌め入れられる円筒部と、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部の径方向内側に配置されており、前記円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部から前記孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、前記円筒部材に挿入される剛性材料製の被挿入部材に形成されたフランジに接触するアキシャルリップと、
前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部と
を有する密封装置。
【0062】
条項2. 前記めくれ防止部は、弾性材料から形成され、前記アキシャルリップの前記フランジに接触する環状部分から前記フランジと反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びる円錐台形状の傾斜環状部を有する
ことを特徴とする条項1に記載の密封装置。
【0063】
この条項によれば、円錐台形状の傾斜環状部は、アキシャルリップのフランジに接触する環状部分からフランジと反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びるので、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0064】
条項3. 前記円筒部に連結され、前記円筒部から径方向外側に広がり、前記ヘッドカバーの前記孔の縁に接触するフランジ部をさらに有し、
前記めくれ防止部は、弾性材料から形成され、前記アキシャルリップの外周面と前記フランジ部を連結する複数のリブを有する
ことを特徴とする条項1または2に記載の密封装置。
【0065】
この条項によれば、アキシャルリップが径方向内側へめくれようとする時、複数のリブのいずれかに張力が働き、アキシャルリップの径方向内側への変形を抑制する。したがって、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0066】
条項4. 前記アキシャルリップは、前記フランジに接触する先端を有し、前記先端は前記フランジに面接触する端面を有し、
前記めくれ防止部は、前記端面に形成され、前記フランジに対する前記端面の滑りを防止する凹凸であり、前記端面の表面粗さは前記アキシャルリップの他の部分の表面粗さより大きい
ことを特徴とする条項1から3のいずれか1項に記載の密封装置。
【0067】
この条項によれば、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、被挿入部材のフランジに対するアキシャルリップの滑りが防止され、アキシャルリップの先端の端面が周方向全体にわたってフランジに面接触し続ける。この結果、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0068】
条項5. 孔を有する剛性材料製のエンジンのヘッドカバーと、
プラグチューブまたはインジェクターチューブであって、前記孔に挿入される剛性材料製の円筒部材と、
前記円筒部材に挿入される被挿入部分と、前記ヘッドカバーに対向するフランジを有する剛性材料製の被挿入部材と、
前記ヘッドカバーと前記円筒部材の間に配置される密封装置とを有する密封構造であって、
前記密封装置は、
前記孔に嵌め入れられる円筒部と、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部の径方向内側に配置されており、前記円筒部材の外周面に周方向全体にわたって接触するラジアルリップと、
弾性材料から形成され、前記円筒部に連結され、前記円筒部から前記孔と反対の方向かつ径方向外側に向けて斜めに延びており、前記被挿入部材の前記フランジに接触するアキシャルリップとを有し、
前記密封構造は、
前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止するめくれ防止部をさらに有する
ことを特徴とする密封構造。
【0069】
条項6. 前記めくれ防止部は、前記被挿入部材の前記フランジの前記アキシャルリップに接触する面に形成され、前記被挿入部材が前記円筒部材に挿入される時に、前記アキシャルリップを径方向外側に押し広げる環状溝を有する
ことを特徴とする条項5に記載の密封構造。
【0070】
この条項によれば、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、被挿入部材のフランジの環状溝がアキシャルリップを径方向外側に押し広げる。したがって、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0071】
条項7. 前記環状溝は、径方向外側に向かうほど小さくなる深さを有する
ことを特徴とする条項6に記載の密封構造。
【0072】
この条項によれば、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、被挿入部材のフランジの環状溝がアキシャルリップを円滑に径方向外側に押し広げる。
【0073】
条項8. 前記めくれ防止部は、前記アキシャルリップの径方向内側に嵌め込まれる弾性材料製の嵌め込み部材を有し、前記嵌め込み部材は前記孔から離れるほど大きい外径を有する
ことを特徴とする条項5から7のいずれか1項に記載の密封構造。
【0074】
この条項によれば、アキシャルリップの径方向内側に嵌め込み部材が嵌め込まれるので、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、円筒部材に被挿入部材が挿入される時、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0075】
条項9. 前記嵌め込み部材は、前記被挿入部材の前記被挿入部分が挿入される貫通孔を有し、前記貫通孔は、前記被挿入部分が前記円筒部材に挿入されることを案内する
ことを特徴とする条項8に記載の密封構造。
【0076】
この条項によれば、嵌め込み部材の貫通孔が被挿入部材の被挿入部分を円筒部材に挿入されるよう案内する。したがって、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動することが規制される。
【0077】
条項10. 前記密封装置は、条項1から3のいずれか1項に記載の密封装置である
ことを特徴とする条項6から9のいずれか1項に記載の密封構造。
【0078】
条項11. 前記めくれ防止部は、前記アキシャルリップの先端の端面に面接触する前記被挿入部材の前記フランジの面に形成され、前記フランジに対する前記端面の滑りを防止する凹凸を有し、
前記フランジの前記面は、前記凹凸が形成された領域を有し、前記領域の表面粗さは前記フランジの前記面の他の部分の表面粗さより大きいことを特徴とする条項5に記載の密封構造。
【0079】
この条項によれば、被挿入部材が円筒部材に挿入される時に、被挿入部材が円筒部材に対して横方向に移動しても、被挿入部材のフランジに対するアキシャルリップの滑りが防止され、アキシャルリップの先端の端面が周方向全体にわたってフランジに面接触し続ける。この結果、アキシャルリップの径方向内側へのめくれを防止することができる。
【0080】
条項12. 前記密封装置は、条項4に記載の密封装置である
ことを特徴とする条項11に記載の密封構造。
【符号の説明】
【0081】
1 密封構造
2 ヘッドカバー
2a 孔
3 プラグチューブ(円筒部材)
4 給電装置ケース(被挿入部材)
4a 円筒部(被挿入部分)
4b フランジ
4c 凹凸(めくれ防止部)
4d 領域
10,20,30,45 密封装置
11 円筒部
14 ラジアルリップ
15 フランジ部
16 アキシャルリップ
16a 環状部分
17 傾斜環状部(めくれ防止部)
31 リブ(めくれ防止部)
40,47,50,60 密封構造
41 環状溝(めくれ防止部)
41a 傾斜面
46 凹凸(めくれ防止部)
51,61 嵌め込み部材(めくれ防止部)
52 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19