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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028251
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】光学測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/02 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
G01B11/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133836
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 英人
(72)【発明者】
【氏名】大川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】杉野 公彦
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065BB05
2F065FF02
2F065FF42
2F065GG07
2F065HH03
2F065HH15
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065LL10
2F065MM02
2F065MM07
2F065PP22
2F065QQ01
2F065QQ21
2F065QQ24
2F065QQ33
(57)【要約】
【課題】視野範囲を超えるワークの寸法等を測定する場合に、ユーザの使い勝手を良好にしながら、高い測定精度を得る。
【解決手段】光学測定装置は、ワークの一の部分及び他の部分のそれぞれに対応する第一の画像401及び第二の画像402を取得し、表示する。ユーザ操作に基づいて、第一の画像401に含まれる第一の輪郭306を指定し、第二の画像402に含まれる第二の輪郭308を指定する。第一の画像401が取得されたときの受光用筐体と第二の画像402が取得されたときの受光用筐体との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータを設定する。設定されたオフセットパラメータを用いて、ワークに対する寸法測定を行う。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが配置される空間に投射される平行光を生成する投光側テレセントリックレンズが取り付けられ、投光窓を有する投光用筐体と、前記空間を通過した平行光が入射する受光側テレセントリックレンズ及び前記受光側テレセントリックレンズを通過した光を受光する二次元撮像素子が取り付けられ、受光窓を有する受光用筐体とを含む測定ヘッドを有し、前記投光窓と前記受光窓とが対向するように設置された状態で、前記空間に配置される前記ワークに対する寸法測定を行う光学測定装置において、
前記測定ヘッドを用いて、前記二次元撮像素子の撮像視野よりも大きなワークの一の部分及び当該一の部分とは異なる他の部分を撮像させて、当該一の部分及び当該他の部分のそれぞれに対応する第一の画像及び第二の画像を生成させ、生成した前記第一の画像及び前記第二の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記第一の画像及び前記第二の画像を表示する表示部と、
ユーザ操作に基づいて、前記第一の画像に含まれる第一の輪郭を指定し、前記第二の画像に含まれる第二の輪郭を指定する指定部と、
前記指定部により指定された前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭の相対的な位置関係を特定するための幾何情報を取得する情報取得部と、
前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭の相対的な位置関係を示す値を入力する入力部と、
前記情報取得部によって取得された幾何情報と、前記入力部により入力された前記値とに基づいて、前記第一の画像を取得した前記受光用筐体と前記第二の画像を取得した前記受光用筐体との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータを設定するパラメータ設定部と、
前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータを用いて、前記ワークに対する寸法測定を行う測定部と、を備える光学測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学測定装置において、
前記情報取得部は、前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭を通る直線を前記幾何情報として取得するように構成され、
前記入力部は、前記情報取得部で取得された前記直線に沿った前記ワークの基準長さを入力するように構成されている光学測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学測定装置において、
前記画像取得部で取得された前記第一の画像及び前記第二の画像上で測定領域を設定する領域設定部をさらに備え、
前記測定部は、前記領域設定部により設定された前記測定領域から抽出したエッジと前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータとを用いて、前記ワークに対する寸法測定を行うように構成されている光学測定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の光学測定装置において、
前記測定ヘッドは、第一の測定ヘッドと、第二の測定ヘッドとを含んでおり、
前記画像取得部は、前記第一の測定ヘッドを用いて前記第一の画像を生成させ、前記第二の測定ヘッドを用いて前記第二の画像を生成させる光学測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学測定装置において、
前記画像取得部は、互いに異なる第一の座標系及び第二の座標系をそれぞれ有する前記第一の画像及び前記第二の画像を取得し、
前記測定部は、前記画像取得部で取得された前記第一の画像上で複数の測定領域が指定されると前記第一の座標系で寸法測定を行う一方、前記画像取得部で取得された前記第二の画像上で複数の測定領域が指定されると、前記第二の座標系で寸法測定を行い、前記オフセットパラメータを用いて前記第一の座標系と前記第二の座標系との対応関係を算出して、前記ワークの寸法測定を行うように構成されている光学測定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の光学測定装置において、
前記表示部は、前記情報取得部が前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭を通る直線を前記幾何情報として取得した場合、前記第一の輪郭と前記第二の輪郭とが前記直線上に並ぶように、前記第一の画像と前記第二の画像とを表示するように構成されている光学測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光学測定装置において、
前記表示部は、前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータを用いて前記第一の画像に対して前記第二の画像をオフセットした状態で表示するとともに、前記画像取得部で取得された前記第一の画像上で指定された測定領域から前記画像取得部で取得された前記第二の画像上で指定された測定領域に渡って測定ツールを表示するように構成されている光学測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の光学測定装置において、
前記表示部は、前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータに従って前記第一の画像から前記第二の画像を離間させて表示するように構成されている光学測定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の光学測定装置において、
前記パラメータ設定部は、前記情報取得部によって取得された幾何情報と、前記入力部により入力された前記値とに基づいて前記オフセットパラメータを設定する第一の設定モードと、前記入力部により入力された前記ワークの基準長さに基づいて前記オフセットパラメータを設定する第二の設定モードとを実行可能に構成されている光学測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光学測定装置において、
前記入力部は、前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭の相対的な位置関係を示す前記値として、前記第一の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置と前記第二の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置との高さ方向の差と、前記第一の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置と前記第二の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置との水平方向の差と、前記第一の画像が取得されたときの前記受光用筐体と前記第二の画像が取得されたときの前記受光用筐体とのなす角度とを算出可能に構成され、
前記パラメータ設定部は、前記第一の設定モードにおいて、前記高さ方向の差と、前記水平方向の差と、前記角度とに基づいて前記オフセットパラメータを設定する光学測定装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の光学測定装置において、
前記パラメータ設定部は、前記光学測定装置の設定時に前記オフセットパラメータを設定する第一の設定処理と、前記光学測定装置の運用時に前記オフセットパラメータを再度設定する第二の設定処理とを実行可能に構成されている光学測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークが配置される空間に測定光を投射してワークを測定する光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの寸法等を測定する透過型の光学測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている光学測定装置は、ワークを挟むように設置される投光ユニットと受光ユニットを有している。投光ユニットの光源から照射された平行光は受光ユニットの画像センサに投影される。画像センサで取得された画像に基づいて、ワークの外形寸法や変位等を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-7898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように平行光を照射する場合、視野範囲は狭くなりがちであり、視野範囲を広くしようとすると、光学系が大型化し、実際は難しい。
【0005】
一方、例えば長尺ワークのように視野範囲を超えるワークの外形寸法や変位を測定したい場合がある。この場合、ワークの一部が光学測定装置の視野範囲外に位置してしまい、視野範囲外の寸法検査が行えなくなるので、例えば、ユーザが2台の光学測定装置を用意して各々の視野範囲にワークの異なる部位が入るように2台の光学測定装置を設置する方法や、1台の光学測定装置を移動させてワークの2箇所の画像を取得する方法などにより、視野範囲を超えるワークの外形寸法や変位を測定することが考えられる。
【0006】
ところが、上記前者の方法、即ち2台の光学測定装置を用いた方法において、それぞれの画像センサの視野範囲には、ワークの一部しか現れない。そのため、各視野範囲に現れた特徴部分の相対的な位置関係を知るためには、事前に、ユーザが2台の光学測定装置の相対的な位置関係を治具やスケールなどにより把握しておき、測定毎に、その位置関係を反映した補助線に頼って測定を行わなければならず、使い勝手が良好であるとは言い難い。
【0007】
また、上記後者の方法、即ち1台の光学測定装置を移動させる方法においても、前者の方法と同様に、移動前後の相対的な位置関係を治具やスケールなどにより把握しておき、測定毎に補助線に頼る必要があるので、同様な問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、視野範囲を超えるワークの寸法等を測定する場合に、ユーザの使い勝手を良好にしながら、高い測定精度を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、ワークが配置される空間に投射される平行光を生成する投光側テレセントリックレンズが取り付けられ、投光窓を有する投光用筐体と、前記空間を通過した平行光が入射する受光側テレセントリックレンズ及び前記受光側テレセントリックレンズを通過した光を受光する二次元撮像素子が取り付けられ、受光窓を有する受光用筐体とを含む測定ヘッドを有し、前記投光窓と前記受光窓とが対向するように設置された状態で、前記空間に配置される前記ワークに対する寸法測定を行う光学測定装置を前提とすることができる。光学測定装置は、前記測定ヘッドを用いて、前記二次元撮像素子の撮像視野よりも大きなワークの一の部分及び当該一の部分とは異なる他の部分を撮像させて、当該一の部分及び当該他の部分のそれぞれに対応する第一の画像及び第二の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された前記第一の画像及び前記第二の画像を表示する表示部とを備えている。光学測定装置は、さらに、ユーザ操作に基づいて、前記第一の画像に含まれる第一の輪郭を指定し、前記第二の画像に含まれる第二の輪郭を指定する指定部と、前記指定部により指定された前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭の相対的な位置関係を特定するための幾何情報を取得する情報取得部と、前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭の相対的な位置関係を示す値を入力する入力部と、前記情報取得部によって取得された幾何情報と、前記入力部により入力された値とに基づいて、前記第一の画像を取得した前記受光用筐体と前記第二の画像を取得した前記受光用筐体との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータを設定するパラメータ設定部と、前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータを用いて、前記ワークに対する寸法測定を行う測定部と、を備えている。
【0010】
この構成によれば、例えば測定ヘッドが2組ある場合、一の測定ヘッドの二次元撮像素子の撮像視野に入るようにワークの一の部分が配置されると、ワークの一の部分に対応する第一の画像が取得される。また、他の測定ヘッドの二次元撮像素子の撮像視野に入るようにワークの他の部分が配置されると、ワークの他の部分に対応する第二の画像が取得される。また、測定ヘッドが1組の場合、ワークの一の部分が測定ヘッドの二次元撮像素子の撮像視野に入るように当該測定ヘッドが配置されると、ワークの一の部分に対応する第一の画像が取得される。また、ワークの他の部分が測定ヘッドの二次元撮像素子の撮像視野に入るように当該測定ヘッドまたはワークを移動させると、ワークの他の部分に対応する第二の画像が取得される。
【0011】
第一の画像が取得されるとユーザ操作に基づいて第一の輪郭が指定され、また、第二の画像が取得されるとユーザ操作に基づいて第二の輪郭が指定される。各輪郭の指定後、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な位置関係を特定するための幾何情報が取得される。幾何情報としては、例えば第一の輪郭及び第二の輪郭を通る直線や、第一の輪郭上に位置する点、第二の輪郭上に位置する点等である。
【0012】
測定ヘッドが2組の場合であっても、1組の場合であっても、第一の画像が取得されたときの受光用筐体と第二の画像が取得されたときの受光用筐体とは異なる位置にある。本構成によれば、前記幾何情報と、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な位置関係を示す値とに基づいて、第一の画像が取得されたときの受光用筐体と第二の画像が取得されたときの受光用筐体との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータが設定される。設定されたオフセットパラメータを用いて、ワークに対する寸法測定が行われるので、ユーザが補助線に頼ることなく、正確な測定結果を得ることができる。
【0013】
本開示の第2の側面では、前記情報取得部は、前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭を通る直線を前記幾何情報として取得することができる。前記入力部は、前記取得部で取得された前記直線に沿った前記ワークの基準長さを入力するように構成されているので、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な離間距離を正確に設定することができる。
【0014】
本開示の第3の側面に係る光学測定装置は、前記画像取得部で取得された画像上で測定領域を設定する領域設定部をさらに備えている。これにより、運用時に、ユーザが測定領域を任意に設定できる。そして、前記測定部は、前記領域設定部により設定された前記測定領域から抽出したエッジと前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータとを用いて、前記ワークに対する寸法測定を行うことができる。
【0015】
本開示の第4の側面に係る前記測定ヘッドは、第一の測定ヘッドと、第二の測定ヘッドとを含んでいる。前記画像取得部は、前記第一の測定ヘッドを用いて前記第一の画像を生成させ、前記第二の測定ヘッドを用いて前記第二の画像を生成させ、生成した第一の画像及び第二の画像を取得する。第一の測定ヘッド及び第二の測定ヘッドを用いることで、測定ヘッドを移動させることなく、第一の画像及び第二の画像を生成できるので、両画像の生成時間を短縮できる。
【0016】
本開示の第5の側面に係る前記画像取得部は、互いに異なる第一の座標系及び第二の座標系をそれぞれ有する前記第一の画像及び前記第二の画像を取得することができる。前記測定部は、前記画像取得部で取得された前記第一の画像上で複数の測定領域が指定されると前記第一の座標系で寸法測定を行うことができ、また、前記画像取得部で取得された前記第二の画像上で複数の測定領域が指定されると、前記第二の座標系で寸法測定を行い、前記オフセットパラメータを用いて前記第一の座標系と前記第二の座標系との対応関係を算出して、前記ワークの寸法測定を行うことができるので、各々の座標系で正確な寸法測定が可能になる。
【0017】
本開示の第6の側面に係る表示部は、前記情報取得部が前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭を通る直線を前記幾何情報として取得した場合、前記第一の輪郭と前記第二の輪郭とが前記直線上に並ぶように、前記第一の画像と前記第二の画像とを表示するように構成されている。これにより、実際のワークの形状に対応するように、第一の画像と第二の画像とが表示されるので、ユーザが測定箇所を直感的に把握し易くなる。
【0018】
本開示の第7の側面に係る表示部は、前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータを用いて前記第一の画像に対して前記第二の画像をオフセットした状態で表示することができるので、ユーザがワークを直感的に把握し易くなる。さらに、前記表示部は、前記画像取得部で取得された前記第一の画像上で指定された測定領域から前記画像取得部で取得された前記第二の画像上で指定された測定領域に渡って測定ツールを表示することができるので、測定箇所についてもユーザが直感的に把握し易くなる。
【0019】
本開示の第8の側面に係る表示部は、前記パラメータ設定部により設定されたオフセットパラメータに従って前記第一の画像から前記第二の画像を離間させて表示することができる。
【0020】
本開示の第9の側面に係るパラメータ設定部は、前記情報取得部によって取得された幾何情報と、前記入力部により入力された前記値とに基づいて前記オフセットパラメータを設定する第一の設定モードと、前記入力部により入力された前記ワークの基準長さに基づいて前記オフセットパラメータを設定する第二の設定モードとを実行可能に構成されている。第一の設定モードでは、幾何情報と、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な位置関係を示す値とに基づくことで、オフセットパラメータを高精度に設定できる。一方、第二の設定モードでは、幾何情報を利用せずに、ワークの基準長さに基づくことで、オフセットパラメータを簡易に設定できる。
【0021】
本開示の第10の側面に係る入力部は、前記第一の輪郭及び前記第二の輪郭の相対的な位置関係を示す前記値として、前記第一の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置と前記第二の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置との高さ方向の差と、前記第一の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置と前記第二の画像が取得されたときの前記受光用筐体の位置との水平方向の差と、前記第一の画像が取得されたときの前記受光用筐体と前記第二の画像が取得されたときの前記受光用筐体とのなす角度とを算出可能に構成されている。つまり、第一の画像が取得されたときの受光用筐体の位置と第二の画像が取得されたときの受光用筐体の位置との2方向の差と、第一の画像が取得されたときの受光用筐体と第二の画像が取得されたときの受光用筐体とのなす角度とを入力することができるので、第一の設定モードにおいて、オフセットパラメータをより一層高精度に設定できる。
【0022】
本開示の第11の側面に係るパラメータ設定部は、設定時に前記オフセットパラメータを設定する第一の設定処理と、運用時に前記オフセットパラメータを再度設定する第二の設定処理とを実行可能に構成されている。例えば、運用開始時から時間の経過に伴って周囲の温度が上昇した場合、第一の画像が取得されたときの受光用筐体と、第二の画像が取得されたときの受光用筐体との相対的な位置関係が変化することが考えられる。このような場合に、パラメータ設定部が第二の設定処理を実行することで、第一の画像が取得されたときの受光用筐体と、第二の画像が取得されたときの受光用筐体との相対的な位置関係を正確に維持できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、ワークの一の部分及び他の部分のそれぞれに対応する第一の画像及び第二の画像を取得し、第一の画像に含まれる第一の輪郭及び第二の画像に含まれる第二の輪郭の相対的な位置関係を特定するための幾何情報と、両輪郭の相対的な位置関係を示す値とに基づいて、第一の画像が取得されたときの受光用筐体と第二の画像が取得されたときの受光用筐体との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータを設定し、設定されたオフセットパラメータを用いてワークに対する寸法測定を行うことができるので、視野範囲を超えるワークの寸法等を測定する場合に、ユーザの使い勝手を良好にしながら、高い測定精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る光学測定装置の模式図である。
図2】測定ヘッドが1組の場合の設置例を示す斜視図である。
図3】測定ヘッドが1組の場合の設置例を示す側面図である。
図4】測定ヘッドが2組の場合の第1の設置例を示す斜視図である。
図5】測定ヘッドが2組の場合の第2の設置例を示す側面図である。
図6】投光用ユニット及び受光用ユニットの光軸に沿った縦断面図である。
図7】光学測定装置の設定時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】2組の測定ヘッドが互いに間隔をあけ、かつ、角度を持って設置された場合を示す説明図である。
図9】2組の測定ヘッドとワークとの位置関係を示す図である。
図10】設定時の詳細処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】設定用ユーザーインターフェース画面の一例を示す図である。
図12】第一の画像と第二の画像との相対的な位置関係を示す模式図である。
図13】オフセットパラメータの自動算出処理を示すフローチャートである。
図14】オフセットパラメータを自動算出する例を示す設定用ユーザーインターフェース画面である。
図15A】第一の輪郭と第二の輪郭とのなす角度を0゜にした場合の第一の画像及び第二の画像の模式図である。
図15B】第一の輪郭と第二の輪郭とを同一直線上に位置付けた場合の第一の画像及び第二の画像の模式図である。
図15C】基準長さを反映させた場合の第一の画像及び第二の画像の模式図である。
図16】光学測定装置の運用時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図17】1つの画像上で複数の測定領域が設定された例を示す図である。
図18】測定領域の位置補正を説明する図である。
図19A】別形状のワークを撮像した画像を示す図である。
図19B】別形状のワークに係る図15A相当図である。
図20A】別形状のワークの貫通孔の中心と円弧部分の中央部を設定した状態を示す図である。
図20B】貫通孔の中心と円弧部分の中央部との距離を基準長さとした場合を示す図である。
図21A】2つの貫通孔の中心を通る直線を設定した場合を示す図である。
図21B】円弧部分の中央部を通る直線を設定した場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る光学測定装置1の概略構成を模式的に示すものである。光学測定装置1は、ワークWが配置される空間Sに測定光を投射して測定対象物であるワークWを測定する装置であり、測定ヘッド2と、制御装置70と、キーボード80及びマウス81と、表示装置(表示部)82と、記憶装置83とを備えている。また、制御装置70にはプログラマブルコントローラ90が接続されている。キーボード80及びマウス81は、光学測定装置1を操作するための操作手段、入力手段の一例であり、例えばタッチパネル式の操作手段等であってもよい。操作手段、入力手段を用いて、光学測定装置1に各種情報の入力や、光学測定装置1の各種設定等を行うことが可能になっている。
【0027】
表示装置82は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等で構成されており、制御装置70に接続され、制御装置70によって制御されるようになっている。記憶装置83は、例えばハードディスクドライブやSSD(ソリッドステートドライブ)等で構成されており、制御装置70に接続され、制御装置70との間で各種データのやり取りが可能になっている。プログラマブルコントローラ90は、外部制御機器の一例であり、制御装置70から出力される所定の制御信号を受信し、外部に接続された各種機器を制御する装置である。
【0028】
測定ヘッド2は、1つの投光用ユニット10と1つの受光用ユニット30とを有している。投光用ユニット10は、ワークWが配置される空間Sに投射する平行光である測定光を生成する光源11と、光源11を保持する光源ホルダ12と、拡散手段13と、投光側反射体14と、投光側テレセントリックレンズ15と、投光用筐体20とを備えている。
【0029】
受光用ユニット30は、二次元撮像素子31と、二次元撮像素子31を保持する撮像素子ホルダ37と、受光レンズ33と、絞り34と、受光側反射体35と、受光側テレセントリックレンズ36と、撮像制御部39と、受光用筐体40とを備えている。撮像制御部39は、受光用ユニット30に設けることができるが、投光用ユニット10に設けられていてもよい。
【0030】
また、制御装置70は、画像取得部71と、DSP72と、CPU73と、メモリ74と、入出力回路75とを備えている。制御装置70は、例えばパーソナルコンピュータ等で構成することができる。画像取得部71で取得された設定用の画像や測定用の画像のデータは、DSP72で信号処理された後、CPU73に出力される。CPU73では、例えば測定用の画像のエッジを抽出し、抽出されたエッジを用いて測定部73aが寸法測定を実行する。測定用の画像のエッジ抽出処理は従来から周知の手法を用いることができる。寸法測定としては、例えば2つのエッジ間の距離等である。メモリ74には、RAM及びROMが含まれており、CPU73に所定の機能を実行させるプログラムの記憶や、測定用の画像、設置用の画像、測定結果の一時的な記憶のために利用される部分である。入出力回路75は、測定用の画像、設定用の画像や測定結果、制御信号を外部へ出力するとともに、キーボード80やマウス81の操作状態の入力を受け付ける回路である。測定用の画像、設定用の画像や測定結果は、入出力回路75から記憶装置83に出力することができる。また、制御信号は、入出力回路75からプログラマブルコントローラ90に出力することができる。さらに、測定用の画像、設定用の画像や測定結果は、所定のユーザーインターフェース画面を示すデータとともに表示装置82に出力して表示させることができる。ユーザーインターフェース画面は、CPU73で生成することができる。
【0031】
(光学測定装置1の使用形態)
図2及び図3は、1組の測定ヘッド2を使用してワークWを測定する場合を示している。投光用ユニット10と受光用ユニット30との間に空間Sが形成される。また、投光用ユニット10と受光用ユニット30との距離(ワーキングディスタンス)は予め設定された距離以内とされている。
【0032】
投光用ユニット10及び受光用ユニット30は、共通の固定部材60に固定して使用することができるが、固定部材60を用いることなく、測定を行う現場にある各種部材(図示せず)等に投光用ユニット10及び受光用ユニット30を別々に固定して使用することもできる。固定部材60は、光学測定装置1の一部を構成する部材であり、所定方向に長い金属製の板材で構成され、高い剛性を持っている。固定部材60の長手方向一側に投光用ユニット10を取り付け、固定部材60の長手方向他側に受光用ユニット30を取り付けて使用する。固定部材60の形状は、図示した形状に限られるものではなく、例えば中空状の部材であってもよい。
【0033】
また、この実施形態の説明では、図3に示すように、投光用ユニット10と受光用ユニット30とが水平方向に離れていて、両ユニット10、30の光軸が水平方向に延び、かつ互いに一致する場合について説明するが、光軸が斜めに延びるように両ユニット10、30を配置してもよいし、光軸が上下方向に延びるように両ユニット10、30を配置してもよい。つまり、両ユニット10、30を互いに向き合わせたとき斜め方向や上下方向となるように配置してもよい。
【0034】
ワークWは、その全体が受光用ユニット30の撮像視野に入る大きさのものであってもよいし、受光用ユニット30の撮像視野よりも大きなものであってもよい。後者の測定方法の詳細については後述するが、例えば測定ヘッド2の撮像視野にワークWの一の部分が入るように測定ヘッド2を設置して撮像した後、測定ヘッド2またはワークWを移動させて当該ワークWの一の部分とは異なる他の部分が測定ヘッド2の撮像視野に入るように、当該測定ヘッド2を設置して撮像する。測定ヘッド2またはワークWを移動させる移動装置は、図示しないが例えばモータや流体圧シリンダ等の動力源を備えた装置を使用できる。
【0035】
図4及び図5は、測定ヘッド2が、第一の測定ヘッド2Aと、第二の測定ヘッド2Bとを含んでいる場合を示している。第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとは同じものである。第一の測定ヘッド2Aは、第一の投光用ユニット10Aと、第一の受光用ユニット30Aとを有しており、第一の固定部材60Aに固定されている。第二の測定ヘッド2Bは、第二の投光用ユニット10Bと、第二の受光用ユニット30Bとを有しており、第二の固定部材60Bに固定されている。第一の固定部材60A及び第二の固定部材60Bの一方または両方を用いることなく、測定を行う現場にある各種部材(図示せず)等を用いてもよい。
【0036】
図4は、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとが水平方向に所定の間隔をあけて並ぶように配置されている使用形態を示しているが、図5に示すように、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとは鉛直方向または斜め方向に所定の間隔をあけて並ぶように配置されて使用することもできる。第一の投光用ユニット10Aと第一の受光用ユニット30Aとの間、及び第二の投光用ユニット10Bと第二の受光用ユニット30Bとの間に、空間Sが形成される。図5では、ワークWが例えば円形の板状ワークの場合を示しているが、長尺状ワークであってもよく、ワークWの形状は特に限定されない。
【0037】
図4及び図5の使用形態は、ワークWが第一の測定ヘッド2A(または第二の測定ヘッド2B)の撮像視野よりも大きなものの場合である。つまり、1つのワークWの一の部分が第一の測定ヘッド2Aの撮像視野に入るように第一の測定ヘッド2Aを設置し、そのワークWの他の部分が第二の測定ヘッド2Bの撮像視野に入るように第二の測定ヘッド2Bを設置している。
【0038】
図2、3に示す測定ヘッド2と、図4、5に示す第一の測定ヘッド2A及び第二の測定ヘッド2Bとは同じものである。以下、測定ヘッド2を構成する投光用ユニット10と受光用ユニット30を順に説明する。尚、測定ヘッドを3組以上有していてもよい。
【0039】
(投光用ユニット10の構成)
図6にも示すように、投光用ユニット10の光源11は、例えばInGaNグリーンLED等の発光ダイオード等で構成されており、基板11aに実装されている。基板11aにはマイクロコンピュータ等からなる撮像制御部39(図1に示す)が接続されており、この撮像制御部39により、光源11が制御される。
【0040】
基板11aは、光源ホルダ12に固定されている。光源11は上方へ向けて光を投射する姿勢となっている。光源ホルダ12には、平行光が得られるように収差補正されたコリメートレンズ12aと、光拡散ユニット12bと、1つまたは2つの投光レンズ12cとが設けられている。コリメートレンズ12a、光拡散ユニット12b及び投光レンズ12cによって拡散手段13(図1にも示す)が構成されている。光源11の中心を通って当該光源11の光放射面に垂直な線上に、コリメートレンズ12a、光拡散ユニット12b及び投光レンズ12cの光軸が位置するように、コリメートレンズ12a、光拡散ユニット12b及び投光レンズ12cが配置されている。
【0041】
コリメートレンズ12aは、光源11の上方に位置しており、光源11の光がコリメートレンズ12aに直接入射するようになっている。コリメートレンズ12aに入射した光は、平行光に変換されて上方へ出射する。コリメートレンズ12aの光出射面の上方には、光拡散ユニット12bが位置している。光拡散ユニット12bは入射した光を拡散させるための部材であり、光拡散ユニット12bに入射した光は、光拡散ユニット12bを通過することで、拡散されて上方へ出射する。
【0042】
投光用筐体20は、受光用筐体40と対向する面が前面であり、前面は上下方向にのびている。投光用筐体20の後面は、受光用筐体40と対向する面と反対に位置する面であり、この後面は、上端に近づくほど前に位置するように傾斜しており、この傾斜角度は、後述する投光側反射体14の設置角度と対応している。後面の下側からは受光用ユニット30と接続される信号ケーブルC(図2等に示す)が外部へ出ている。また、投光用筐体20の両側面は互いに平行に上下方向に延びている。投光用筐体20の下面は、固定部材60への取付面となっている。
【0043】
投光用筐体20の内部には、投光レンズ12cから出射した光を反射する投光側反射体14が収容されている。この投光側反射体14は、例えば平板状のミラー等で構成されている。投光側反射体14は、光源ホルダ12の投光レンズ12cから出射した光が当該投光側反射体14の中央部に向けて入射するように配置されている。投光側反射体14の角度は、投光レンズ12cから入射した光を水平方向に出射するように設定されている。投光側反射体14は、光路を折りたたむことで投光用筐体20のサイズを小型化するものであり、投光用筐体20のサイズを許容するのであれば必ずしも必要ではない。
【0044】
投光側テレセントリックレンズ15は、投光用筐体20における受光用筐体40と対向する側に取り付けられている。投光用筐体20における受光用筐体40と対向する側の壁部には、投光側テレセントリックレンズ15が嵌め込まれる投光側レンズ取付孔22が当該壁部を貫通するように形成されている。投光側レンズ取付孔22の奥側の内周面には、径方向内方へ突出するとともに、周方向に延びる突出部で構成された投光側レンズ取付座22aが一体成形されている。この投光側レンズ取付座22aに投光側テレセントリックレンズ15の奥側(光入射側)の端面の周縁部が当接することにより、投光側テレセントリックレンズ15が投光用筐体20に対して位置決めされる。
【0045】
投光側テレセントリックレンズ15は、光軸が水平となるように配置されている。投光側反射体14から出射した光は、投光側テレセントリックレンズ15に入射すると、投光側テレセントリックレンズ15が空間Sに向けた平行光に変換して出射する。空間Sにおいて投光側テレセントリックレンズ15により形成される光像は、投光側テレセントリックレンズ15の光軸に沿ってその大きさが一定となる。投光側テレセントリックレンズ15は、投光用筐体20内に形成された光像を空間S内にピントのあった光像として結像させる。ピントのあった光像は、投光側テレセントリックレンズ15の光軸に沿って所定の範囲に形成されるが、これは投光用筐体20内に形成された光像から投光側テレセントリックレンズ15までの光路長に応じており、光路長が長いほど光像のピントのあう範囲は広くなる。
【0046】
コリメートレンズ12aから平行光が入射されて光拡散ユニット12bにおいて円形の光像を形成する場合、光拡散ユニット12bを通過した平行光は、光像の各点において平行成分をピークとする角度特性の拡散光として光拡散ユニット12bから出射される。このような角度特性を有する光像を、投光側テレセントリックレンズ15を介して空間Sに照射することで、場所や角度によらず光が略均一な照明光を実現することができる。また、2つの投光レンズ12cにより、光拡散ユニット12bから出射した光の広がり角を狭い角度に調整することで、投光側テレセントリックレンズ15を通過する光の光密度を高めるようにしてもよい。
【0047】
投光用筐体20には、投光側テレセントリックレンズ15から出射された平行光を空間Sへ投射するための投光窓23が設けられている。投光窓23は、投光側テレセントリックレンズ15の光出射面を覆うように形成された略円形の投光側カバーガラス23aと、投光側カバーガラス23aが取り付けられた投光側枠体23bとを有している。投光側枠体23bは、投光側レンズ取付孔22における投光側テレセントリックレンズ15の光出射面側に嵌め込まれて投光用筐体20に固定されている。
【0048】
(受光用ユニット30の構成)
受光用ユニット30の二次元撮像素子31は、例えばCMOSイメージセンサー等で構成されていて、画素がX方向とY方向の二次元に配列されている。二次元撮像素子31は、基板31aに実装されている。基板31aには、撮像制御部39(図1に示す)が設けられている。撮像制御部39によって二次元撮像素子31が制御される。例えば撮像の間隔が数ミリ秒~数十ミリ秒であって各撮像における露光時間が100マイクロ秒となるように撮像制御部39によって二次元撮像素子31が制御される。露光時間が1ミリ秒以下、例えば100マイクロ秒とすることで、光学測定装置1は高速搬送ワークも止めずに測定可能となる。露光時間は、光源11の点灯制御と二次元撮像素子31のシャッター制御とを同期制御してもよい。基板31aは、撮像素子ホルダ37に固定されている。基板31aを撮像素子ホルダ37に固定することで、二次元撮像素子31を撮像素子ホルダ37に保持することができる。
【0049】
撮像素子ホルダ37には、受光側レンズユニット38が固定されている。受光側レンズユニット38の光軸の延長線が二次元撮像素子31の中央部に対して垂直に交わるように、受光側レンズユニット38と二次元撮像素子31との相対的な位置関係が設定されている。受光側レンズユニット38の上部には、絞り34(図1に示す)が設けられている。
【0050】
絞り34は、受光側テレセントリックレンズ36を介して受光した平行な光を通過させ、平行な光以外の外乱光を阻止する。これにより外乱光の影響を低減することができる。受光側レンズユニット38は、像側テレセントリックレンズであってもよい。像側テレセントリックレンズにより、受光側レンズユニット38と二次元撮像素子31との間の距離が変化しても、二次元撮像素子31上に結像される像の大きさは変化しない。例えば撮像素子ホルダ37が熱膨張することで受光側レンズユニット38と二次元撮像素子31との間の距離が変化しても、二次元撮像素子31上に結像される像の大きさは変化しないため温度変化の影響を低減することができる。投光側テレセントリックレンズ15を物体側テレセントリックレンズとし、受光側レンズユニット38を像側テレセントリックレンズとすることで、両側テレセントリックの光学系とすることができる。
【0051】
受光用筐体40は、投光用筐体20と対向する面が前面であり、前面は上下方向にのびている。受光用筐体40の後面は、投光用筐体20と対向する面と反対に位置する面であり、この後面は、上端に近づくほど前に位置するように傾斜しており、この傾斜角度は、後述する受光側反射体35の設置角度と対応している。後面の下側からは投光用ユニット10と接続される信号ケーブルC及び制御装置70と接続される接続ケーブルD(図2等に示す)が外部へ出ている。また、受光用筐体40の両側面は互いに平行に上下方向に延びている。受光用筐体40の下面は、固定部材60への取付面となっている。
【0052】
図6に示すように、受光側テレセントリックレンズ36は、受光用筐体40における投光用筐体20と対向する側に取り付けられており、その光軸が投光側テレセントリックレンズ15と同じ光軸上に位置するように配置されている。受光用筐体40における投光用筐体20と対向する側の壁部には、受光側テレセントリックレンズ36が嵌め込まれる受光側レンズ取付孔42が当該壁部を貫通するように形成されている。受光側レンズ取付孔42の奥側の内周面には、径方向内方へ突出するとともに、周方向に延びる突出部で構成された受光側レンズ取付座42aが一体成形されている。この受光側レンズ取付座42aに受光側テレセントリックレンズ36の奥側(光出射側)の端面の周縁部が当接することにより、受光側テレセントリックレンズ36が受光用筐体40に対して位置決めされる。
【0053】
受光用筐体40には、投光側テレセントリックレンズ15から出射されて空間Sを通過した平行光を受光側テレセントリックレンズ36へ入射させるための受光窓43が設けられている。受光窓43は、受光側テレセントリックレンズ36の光入射面を覆うように形成された略円形の受光側カバーガラス43aと、受光側カバーガラス43aが取り付けられた受光側枠体43bとを有している。受光側枠体43bは、受光側レンズ取付孔42における受光側テレセントリックレンズ36の光入射面側に嵌め込まれて受光用筐体40に固定されている。
【0054】
受光用筐体40には、受光側反射体35が嵌め込まれる受光側反射体取付孔44が開口している。受光側反射体取付孔44の奥側の内周面には、径方向内方へ突出するとともに、周方向に延びる突出部で構成された受光側反射体取付座44aが一体成形されている。この受光側反射体取付座44aに受光側反射体35の奥側の端面の周縁部が当接することにより、受光側反射体35が受光用筐体40に対して位置決めされる。受光用筐体40には、反射体取付孔44を受光用筐体40の外から覆うカバー44dが取り付けられている。
【0055】
受光側反射体35は、例えば平板状のミラー等で構成されている。受光側反射体35は、受光側テレセントリックレンズ36の光出射面から出射した光が当該受光側反射体35の中央部に向けて入射するように配置されている。受光側反射体35の角度は、受光側テレセントリックレンズ36を通過した光を反射して折り返し、受光側レンズユニット38へ向けて出射するように設定されている。受光側反射体35によって光を折り返すようにしているので、発熱源である二次元撮像素子31と受光側テレセントリックレンズ36とを離すことができる。
【0056】
(制御装置70の構成)
図1に示すように、受光用ユニット30に設けられている撮像制御部39は、接続ケーブルDを介して制御装置70の画像取得部71によって制御されて、所定のタイミングで光源11に光を照射させるとともに、二次元撮像素子31により撮像させる。受光用ユニット30を駆動する電力は、接続ケーブルDを介して制御装置70から供給される。接続ケーブルDには、耐屈曲ケーブルを用いることができ、受光用ユニット30及び投光用ユニット10をロボットアーム等の可動部に設置し、制御装置70を非可動に設置する等、分離して配置することができる。光源11と二次元撮像素子31との同期は、信号ケーブルCによってとることができる。例えば撮像の間隔が数ミリ秒~数十ミリ秒であって各撮像における露光時間が100マイクロ秒となるように撮像制御部39によって二次元撮像素子31に撮像タイミング及び露光タイミングを定義するタイミング信号が供給され、撮像制御部39によって光源11に信号ケーブルCを介して発光タイミングを定義するタイミング信号が供給される。光源11を駆動する電力は信号ケーブルCを介して受光用ユニット30から供給される。
【0057】
空間Sを通過した平行光は、受光窓43を通過して受光側テレセントリックレンズ36に入射した後、受光側反射体35で反射して折り返されてから絞り34、受光レンズ33を通過する。そして、ワークWの影像が二次元撮像素子31の撮像面で結像する。制御装置70の画像取得部71は、二次元撮像素子31を制御して当該二次元撮像素子31により撮像させてワークWの画像を生成させ、生成された画像を取得する。取得されたワークWの画像は略円形の画像となる。DSP72は、画像取得部71により取得された測定用の画像にフィルタ処理等の画像処理を実行する。CPU73は、DSP72から出力された測定用の画像のエッジを抽出し、抽出されたエッジを用いて寸法測定を実行する。測定用の画像や測定結果等は一時的にメモリ74に記憶することができる。測定用の画像や測定結果等は入出力回路75から記憶装置83、プログラマブルコントローラ90及び表示装置82に出力される。
【0058】
(光学測定装置の設定時)
光学測定装置1は、当該光学測定装置1の運用前に各種設定を行うことができる。以下、図7に示すフローチャートに基づいて光学測定装置1の設定時の処理手順の一例を説明する。図7に示すフローチャートは、ユーザによる設定処理開始の操作が行われたことを検出するとスタートする。例えば、設定開始ボタン等をユーザが操作すると、ステップSA1に進み、測定設定の元になる基準画像を設定する。
【0059】
まず、図8に示すように、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとを用いて、図9に示すように配置されたワークWの測定を行う場合について説明する。ワークWは、長尺状のワークであり、その長さ寸法A1を光学測定装置1で測定するものとする。また、このワークWは、受光用ユニット30が有する二次元撮像素子31の撮像視野よりも大きなものであり、固定された1つの測定ヘッド2では、一方の端部しか撮像視野に入らないので、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとを用いている。第一の測定ヘッド2Aの撮像視野には、ワークWの一方の端部(一の部分)W1が少なくとも入り、第二の測定ヘッド2Bの撮像視野には、ワークWの他方の端部(他の部分)W2が少なくとも入るように、第一の測定ヘッド2A及び第二の測定ヘッド2Bと、ワークWとを配置する。
【0060】
図8に示すように、第一の測定ヘッド2Aの受光用ユニット30Aの受光用筐体40Aと、第二の測定ヘッド2Bの受光用ユニット30Bの受光用筐体40Bとは、水平方向に距離Xだけ離れ、鉛直方向に距離Yだけ離れている。距離X,Yは、例えば第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aに点P1を設定し、第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bにおいて、上記点P1に対応する部分に点P2を設置した時、点P1と、点P2の水平方向の距離、鉛直方向の距離とすることができる。
【0061】
また、本明細書においては便宜上、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとの位置のずれの観点から説明しているが、以下で説明の方法に基づいて、第一の測定ヘッド2Aの撮像視野と第二の測定ヘッド2Bの撮像視野同士の距離X、距離Y、角度θを算出しても良い。この場合、第一の測定ヘッド2Aの撮像視野と第二の測定ヘッド2Bの撮像視野はそれぞれ独立した座標系を有しているため、後述のオフセットパラメータを用いて、両座標系を対応させることで、二つの撮像視野にまたがるワークWの寸法を測定することができる。
【0062】
さらに、第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bは、第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aに対して角度θだけ回動している。角度θは、例えば第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aの上面と、第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bの上面とのなす角度とすることができる。尚、距離Xと距離Yの一方が0であってもよい。また、角度θが0゜であってもよい。
【0063】
図7に示すフローチャートのステップSA1の詳細を図13に示している。図13は、設定時の詳細処理手順の一例を示しており、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとの相対的な位置関係を設定、すなわちオフセットパラメータを算出する手順の一例である。具体的には、下記の手順に従って距離X、Y及び角度θを算出する。算出された距離X、Y及び角度θは、メモリ74や記憶装置83に記憶させておくことができる。
【0064】
ステップSC1では、図1に示す画像取得部71が、第一の測定ヘッド2A及び第二の測定ヘッド2Bを用いて、それぞれにワークWの一方の端部W1及び他方の端部W2を撮像させて、ワークWの一方の端部W1及び他方の端部W2にそれぞれに対応する第一の画像401及び第二の画像402を生成させ、生成した第一の画像401及び第二の画像402を取得する。画像取得部71が取得した第一の画像401及び第二の画像402は、メモリ74に記憶させておくことができる。
【0065】
第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40Aの位置と、第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40Bの位置とは、図8に示すように相違している。第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40Aの位置と第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40Bの位置との高さ方向の差は、距離Xで表される。また、第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40Aの位置と第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40Bの位置との水平方向の差は、距離Yで表される。さらに、第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40Aと第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40Bとのなす角度は、角度θで表される。
【0066】
ステップSC2では、画像取得部71により取得された第一の画像401及び第二の画像402をCPU73が受け取り、入出力回路75を介して表示装置82に出力し、表示装置82に表示させる。具体的には、制御装置70が図14に示すような設定用ユーザーインターフェース画面300を生成して表示装置82に表示させる。設定用ユーザーインターフェース画面300には、第一の測定ヘッド2Aの二次元撮像素子31で撮像された第一の画像401を表示するための第一画像表示領域301と、第二の測定ヘッド2Bの二次元撮像素子31で撮像された第二の画像402を表示するための第二画像表示領域302とが表示装置82の左右に並ぶように設けられている。本例では、図9に示すようにワークWの長手方向が水平に近い方向に向いているので、ワークWの長手方向に対応するように、第一画像表示領域301と第二画像表示領域302とを左右方向に並べることで、ユーザが両表示領域301、302に表示されているワークWを直感的に把握できる。尚、ワークWの長手方向が上下方向に向いているときには、第一画像表示領域301と第二画像表示領域302とを表示装置82の上下に並ぶように配置してもよい。
【0067】
本発明では、取得した幾何情報に基づいて角度θを算出し、ユーザによる入力値により距離X,Yを算出する。すなわち、本発明においては、角度θを算出するための幾何情報及び、距離X,Yを算出するための入力値が必要となる。幾何情報は、角度θが特定できれば良く、直線や円などである。下記では幾何情報として直線を取得する場合について説明する。
【0068】
ステップSC3では、ユーザによるキーボード80やマウス81等の操作に基づいて、第一画像表示領域301に表示されている第一の画像401に含まれる第一の輪郭306を指定し、第二画像表示領域302に表示されている第二の画像402に含まれる第二の輪郭308を指定する。このとき、図9に示すように、ワークWの輪郭が、一方の端部W1から他方の端部W2まで連続する直線部分Waを含んでいる場合には、図14に示すように、第一の画像401上で領域305をワークWにおける一方の端部W1寄りの直線部分Waを含むように指定し、また、第二の画像402上で領域307をワークWにおける他方の端部W2寄りの直線部分Waを含むように指定する。そうすると、指定部73bは、領域305内のエッジ情報を元にして、直線部分Waの一部を第一の輪郭306として指定するとともに、領域307内のエッジ情報を元にして、直線部分Waの別の部分を第二の輪郭308として指定する。第一の輪郭306及び第二の輪郭308の指定処理は、図1に示すCPU73によって構成される指定部73bで実行される。
【0069】
具体的には、設定用ユーザーインターフェース画面300には、第一の輪郭306の指定方法を教示する第一指定方法教示領域303と、第二の輪郭308の指定方法を教示する第二指定方法教示領域304とが設けられている。第一指定方法教示領域303には、マウス81のポインタを第一の画像401上で一の点から他の点までドラッグ操作することで、第一の画像401において第一の輪郭306として指定したい領域が自動的に指定されることが記載されている。同様に、第二指定方法教示領域304には、マウス81のポインタを第二の画像402上で一の点から他の点までドラッグ操作することで、第二の画像402において第二の輪郭308として指定したい領域が自動的に指定されることが記載されている。
【0070】
ユーザがマウス81のポインタを操作して第一の輪郭306として指定したい領域305を指定すると、指定部73bはその領域305内のエッジ情報を元にして、第一の画像401に含まれる第一の輪郭306を指定する。また、ユーザがマウス81のポインタを操作して第二の輪郭308として指定したい領域307を指定すると、指定部73bはその領域307内のエッジ情報を元にして、第二の画像402に含まれる第二の輪郭308を指定する。領域305、307の形状は矩形状に限られるものではなく、例えば円形であってもよい。指定された領域305及び領域307は、後述する運用時におけるオフセットパラメータ自動更新に用いるため、図18におけるサーチ領域と併せてメモリ74や記憶装置83に記憶される。
【0071】
ステップSC4では、図1に示すCPU73によって構成される情報取得部73cが、指定部73bにより指定された第一の輪郭306及び第二の輪郭308の相対的な角度関係、すなわち角度θを特定するための幾何情報を取得する。本例では、第一の輪郭306及び第二の輪郭308が共通の直線部分Wa上の一部であるため、第一の輪郭306及び第二の輪郭308を通る直線Lを特定し、特定した直線Lを幾何情報として取得する。どのような幾何形状を幾何情報として取得するかは予め設定されているか、ユーザによって指定を受け付けても良い。
【0072】
ステップSC5では、図15Aに簡略化して示すように、ステップSC3で指定された第一の輪郭306と第二の輪郭308とが直線状に並ぶ、すなわち、第一の輪郭306と第二の輪郭308とのなす角度が0゜となるように、第一の画像401を固定したままで第二の画像402を回転させる。尚、第二の画像402を固定したままで第一の画像401を回転させることによって第一の輪郭306と第二の輪郭308とのなす角度が0゜となるようにしてもよい。また、第一の画像401と第二の画像402の両方を回転させることによって第一の輪郭306と第二の輪郭308とのなす角度が0゜となるようにしてもよい。この時の回転角度が角度θとしてメモリ74や記憶装置83に記憶される。なお、本例では便宜のため、幾何情報として直線が取得された場合に、第一の輪郭306と第二の輪郭308とのなす角が0°となるように自動調整される例を説明したが、ユーザのワークに応じて、0°以外の角度に自動調整されるようにしても良い。自動調整される角度については、予めユーザによって入力されても良く、情報取得部73cに取得される幾何情報に含めても良い。
【0073】
ステップSC6では、図15Bに簡略化して示すように、第一の輪郭306及び第二の輪郭308が同一直線L上に配置されるように、第一の画像401を固定したままで第二の画像402を移動させる。尚、第二の画像402を固定したままで第一の画像401を移動させることによって第一の輪郭306と第二の輪郭308とが同一直線L上に配置されるようにしてもよい。また、第一の画像401と第二の画像402の両方を移動させることによって第一の輪郭306と第二の輪郭308とが同一直線L上に配置されるようにしてもよい。
【0074】
ステップSC7では、図15Cに簡略化して示すように、ワークWの基準長さを指定するために領域320、321を指定する。具体的には、ユーザがマウス81のポインタを操作して第一の画像401上でワークWの一方の端部W1が含まれるように領域320を指定するとともに、第二の画像402上でワークWの他方の端部W2が含まれるように領域321を指定する。CPU73は、領域320内のエッジ情報を元にしてワークWの一方の端部W1に対応する直線322を特定し、また、領域321内のエッジ情報を元にしてワークWの他方の端部W2に対応する直線323を特定する。
【0075】
本発明では、幾何情報を取得することで角度θを求めた後、距離X,Yを算出するための値の入力を受け付ける。すなわち、この入力値は、幾何情報によって画像401及び402の角度関係が特定された状態で、一定方向にどれだけ離間しているのかを特定するための値である。
【0076】
ステップSC8では、ユーザがキーボード80やマウス81等を操作してワークWの長さの実寸を入力する。ワークWの長さの実寸は、一方の端部W1と他方の端部W2との距離であることから、ステップSC7で特定された直線322と直線323との長手方向の相対的な位置関係、即ち、第一の輪郭306と第二の輪郭308との長手方向の相対的な位置関係を示す値である。ワークWの長さの実寸を、第一の輪郭306及び第二の輪郭308を通る直線Lに沿ったワークWの基準長さと呼ぶ。この基準長さをワークWの代表長さと呼んでもよい。入力された基準長さおよびステップSC7で指定された領域320、321は後述する運用時のオフセットパラメータ自動更新に用いるため、図18におけるサーチ領域と併せてメモリ74や記憶装置83に記憶される。
【0077】
ステップSC9では、図14に示す第一の画像401と第二の画像402との相対的な位置関係を図15Cに示す第一の画像401と第二の画像402との相対的な位置関係にするためのパラメータを図1に示すパラメータ設定部73dが算出するとともに、算出したパラメータをオフセットパラメータとして設定する。算出時には、ステップSC5で取得した幾何情報と、ステップSC8でユーザにより入力された値(基準長さ)とに基づいて、第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40Aと第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40Bとの相対的な位置関係を算出する。具体的には、図15Cに示すように、第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aと第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bとの水平方向の距離X、第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aと第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bとの鉛直方向の距離Y、及び第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aに対する第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bの角度θが、オフセットパラメータとして自動的に算出される。このようにして設定されたオフセットパラメータはメモリ74や記憶装置83に記憶しておく。
【0078】
オフセットパラメータは、1枚の第一の画像401及び第二の画像402に基づいて1回だけ算出してもよいし、複数枚の第一の画像401及び第二の画像402を取得し、複数回算出してもよい。オフセットパラメータを複数回算出する場合には、統計処理を施して最終的なオフセットパラメータを設定してもよい。例えば、算出された複数のオフセットパラメータの平均値を運用時に適用する最終的なオフセットパラメータとして設定してもよいし、算出された複数のオフセットパラメータの最頻値を運用時に適用する最終的なオフセットパラメータとして設定してもよい。ステップSC10では、第一の画像401の直線322と第二の画像402の直線323との間隔がステップSC8で入力された基準長さと合うように、第一の画像401を固定したままで第二の画像402を移動させる。尚、第二の画像402を固定したままで第一の画像401を移動させることによって基準長さと合わせるようにしてもよい。また、第一の画像401と第二の画像402の両方を移動させることによって基準長さと合わせるようにしてもよい。オフセットパラメータの設定処理は、図1に示すCPU73によって構成されるパラメータ設定部73dが実行する。
【0079】
上記実施例では、幾何情報として直線を取得し、入力値を入力する際に領域320及び321を指定することで輪郭322及び323を指定する例について説明したが、幾何情報及び入力値の入力方法は上述の方法に限定されない。例えば、第一の画像401及び第二の画像402において、連続する円弧部分が含まれている場合には、幾何形状として円形状を取得しても良い。この場合、第一の輪郭と第二の輪郭が円形状になるように、角度θが算出される。また、第一の画像401及び第二の画像402において、連続する折れ線(たとえば2本の直線が挟角120度となるように繋がった線)が含まれている場合には、幾何形状として折れ線を取得しても良い。この場合、第一の輪郭と第二の輪郭が挟角120度の折れ線上に位置するように視野が回転され、角度θが算出される。なお、ワークのうち、第一の画像401に含まれる部分と、第二の画像402に含まれる部分との間は、必ずしも“連続する”幾何形状である必要はない。例えば、棒状ワークであって、第一の画像401に含まれる部分と、第二の画像402に含まれる部分とは、いずれも直線であるが、それらの間は、波打った曲線であるワークを考えた場合でも、第一の画像401中の第一の輪郭と第二の画像402中の第二の輪郭とのなす角が0°となるように視野を回転させ、角度θを求めればよい。また、L字状ワークについても同様である。具体的には、第一の画像401に含まれる縦線の部分と、第二の画像402に含まれる横線の部分とは、90°の直交関係を有するので、縦線の部分に対応する第一の輪郭と横線に対応する第二の輪郭とのなす角が90°となるように視野を回転させ、角度θを求めればよい。このとき、L字状ワークの角部分は、たとえば面取りされたり丸みを帯びたりしていてもよく、どのような形状であっても構わない。
【0080】
要するに、取得される幾何情報としては、ユーザによって指定された2つの輪郭の相対的な位置関係(少なくともθ回転量)を算出するために使用される幾何的な情報であるといえる。
【0081】
また、上記実施例では、入力値の入力方法について、領域320及び321を指定し、輪郭322及び323を検出して、基準長さを入力する実施例について説明したが、必ずしも領域320及び321を指定する必要はない。例えば、第一の画像と第二の画像それぞれにおいて点を指定し、基準長さを指定する方法もある。ただし、この場合、基準長さをとる方向が多数考えられるため、基準長さをとる方向も併せて指定する必要がある。すなわち、本発明においては、入力値及び基準長さをとる方向を特定するための情報も必要である。一方、上述した輪郭322及び323を指定する方法では、基準長さをとる方向が一意に定まるため、ユーザによる指定を省略することができる。
【0082】
要するに、第一の画像における第一の輪郭と、第二の画像における第二の輪郭とが、どの方向に沿ってどれくらいの距離離れているかを示すXY平面上の相対的な位置関係を入力することが必要である。例えば、幾何情報としてL字(L字状ワークの形状)を採用した場合、第一の画像における第一の輪郭(縦線部分)と、第二の画像における第二の輪郭(横線部分)とが、縦線方向にどれくらいの距離離れているか、横線方向にどれくらいの距離離れているか、をそれぞれユーザに入力させてもよい。また、幾何情報として上述した直線を採用した場合には、“どの方向に沿って”は既に特定されているので、XY平面上の相対的な位置関係として、どれくらいの距離離れているかを示す基準長さを入力すればよい。図15Cに示すように、ユーザが領域320や領域321を指定し、輪郭322及び323を検出して、ユーザに基準長さを入力させるようにしてもよい。
【0083】
なお、幾何情報として、どのような形状を取得すべきか(直線、円弧、L字など。基準幾何情報といってもよい)については、メモリ74又は記憶装置83などに予め記憶されている。CPU73は、第一の画像及び第二の画像から、この基準幾何情報を参照して、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な位置関係を特定するための幾何情報を取得する。
【0084】
以下、オフセットパラメータの設定処理について具体的に説明する。距離X、Y及び角度θについて説明すると、距離X、Y及び角度θは、第一の輪郭306及び第二の輪郭308の相対的な位置関係を示す値である。すなわち、図8に示すように、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとが水平方向に距離Xだけ離れているということは、第二の測定ヘッド2Bで撮像された第二の画像402は、第一の測定ヘッド2Aで撮像された第一の画像401よりも距離Xだけ水平方向に離れているということであり、よって、距離Xは、第一の輪郭306及び第二の輪郭308の水平方向の相対的な位置関係を示す値である。また、第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとが鉛直方向に距離Yだけ離れているということは、第二の測定ヘッド2Bで撮像された第二の画像402は、第一の測定ヘッド2Aで撮像された第一の画像401よりも距離Yだけ鉛直方向に離れているということであり、よって、距離Yは、第一の輪郭306及び第二の輪郭308の鉛直方向の相対的な位置関係を示す値である。さらに、第二の測定ヘッド2Bが第一の測定ヘッド2Aに対して角度θだけ回動しているということは、第二の測定ヘッド2Bで撮像された第二の画像402は、第一の測定ヘッド2Aで撮像された第一の画像401に対して角度θだけ回動しているということであり、よって、角度θは、第一の輪郭306及び第二の輪郭308の回動方向の相対的な位置関係を示す値である。
【0085】
図14に示すように第一の輪郭306及び第二の輪郭308が指定された場合、パラメータ設定部73dは、図12に模式的に示すように、距離X、Y及び角度θを、第一の測定ヘッド2Aの受光用筐体40Aと、第二の画像402が取得されたときの第二の測定ヘッド2Bの受光用筐体40Bとの相対的な位置関係を示すオフセットパラメータとして設定し、メモリ74や記憶装置83に記憶しておく。
【0086】
ステップSC10では、設定用ユーザーインターフェース画面300の表示を更新し、図12に示すように、ステップSC9で設定されたオフセットパラメータに従い、第二の画像402を第一の画像401に対して移動させた状態で表示させる。これにより、ユーザはワークWの形状を直感的に把握できる。
【0087】
なお、図10に示すフローチャートは変形例を示すものである。ステップSB1では、ヘッドの相対的な位置関係を設定する。ステップSB2はステップSC1に、ステップSB3はステップSC2に、ステップSB4はステップSC3に、ステップSB5はステップSC4に、ステップSB6はステップSC9に、ステップSB7はステップSC10にそれぞれ相当している。
【0088】
以上が図7に示すフローチャートのステップSA1における処理である。その後、ステップSA2に進む。ステップSA2では、ユーザが測定方法を選択する。測定方法の選択は、測定ツールの選択のことであり、複数種の測定ツールの中から選択可能になっている。測定ツールとしては、例えば線と線との距離を測定する「線-線」ツール、線と点との距離を測定する「線-点」ツール、点と点との距離を測定する「点-点」ツール、円と円との距離を測定する「円-円」ツール、円の直径を測定する「円径」ツール等があり、これら以外の測定ツールがあってもよい。
【0089】
測定方法の選択が終わると、図7に示すフローチャートの次のステップSA3に進む。ステップSA3ではユーザが画像測定要素の設定を行う。具体的には、設定用ユーザーインターフェース画面300の第一画像表示領域301に表示されている第一の画像401及び第二画像表示領域302に表示されている第二の画像402内で、ステップSA2で選択した測定方法に応じた測定領域の設定を行う。測定領域の設定は、CPU73によって構成される領域設定部73eで実行される。
【0090】
例えば、本例では、測定ツールの一例である「線-線」ツールに応じた測定領域を表示する形態として、図12に示すように、ユーザが第一の画像401上で第一の輪郭306を指定したときと同様に領域335を指定すると、当該領域335が領域設定部73eによって測定領域として設定される。測定領域335内のエッジ情報を元にして第一の輪郭306を一方のエッジとして抽出する。また、ユーザが第二の画像402上で第二の輪郭308を指定したときと同様に領域337を指定すると、当該領域337が領域設定部73eによって測定領域として設定される。測定領域337内のエッジ情報を元にして第二の輪郭308を他方のエッジとして抽出する。
【0091】
測定領域335内のエッジと、測定領域337内のエッジとの距離が「線-線」ツールによって測定される寸法に相当するので、測定ツールの一例である寸法線310が生成されて設定用ユーザーインターフェース画面300に表示される。寸法線310は、第一の画像401上で指定された測定領域335から第二の画像402上で指定された測定領域337に渡って表示される。
【0092】
画像測定要素の設定が終わると、図7に示すフローチャートの次のステップSA4に進む。ステップSA4ではユーザが測定条件として、例えば平均回数等を指定する。測定条件の指定が終わると、図7に示すフローチャートの次のステップSA5に進む。ステップSA5ではユーザが公差を指定する。
【0093】
公差の指定が終わると、図7に示すフローチャートの次のステップSA6に進む。ステップSA6では、画像測定要素の詳細設定の有無を判定する。画像測定要素の詳細設定があればステップSA7に進む一方、画像測定要素の詳細設定がなければステップSA7を飛ばしてステップSA8に進む。ステップSA7では、画像測定要素の詳細設定を行うことができる。その後、ステップSA8に進むと、測定要素が他にもあるか否かを判定する。測定要素が他にもある場合には、ステップSA2に戻り、当該他の測定要素について測定方法を選択する。測定要素が他にもない場合には、ステップSA9に進み、特徴量情報を登録する。特徴量情報の登録とは、位置補正の登録のことである。
【0094】
特徴量情報の登録が終了すると、ステップSA10に進み、測定設定の情報がすべて記憶装置83に保存される。測定設定の情報には、第一の画像401、第二の画像402、測定ツールの情報が含まれる。測定ツールの情報には、エリアの座標とサイズ、平均回数、公差等が含まれる。
【0095】
(第二の設定モード)
距離X、Y及び角度θのうち、距離Xのみを光学測定装置1によって自動算出し、オフセットパラメータとして設定することもでき、この設定モードを第二の設定モードとする。オフセットパラメータの自動算出処理の基本的なフローチャートを図13に示す。本例においては、第一の測定ヘッド2Aの受光用ユニット30Aと、第二の測定ヘッド2Bの受光用ユニット30Bは、図8に示した距離X、距離Y及び角度θのうち、距離Y及び角度θがないものとみなせる相対位置関係にあるものとする。ただし、第二の設定モードでは、距離Y及びθは既知の値であるとして、距離Xのオフセットパラメータのみを自動で算出する。
【0096】
スタート後のステップSC1では、ワークWの一方の端部W1及び他方の端部W2にそれぞれに対応する第一の画像401及び第二の画像402を生成させ、生成した第一の画像401及び第二の画像402を取得する。
【0097】
ステップSC2では、設定用ユーザーインターフェース画面300の第一画像表示領域301及び第二画像表示領域302にそれぞれ第一の画像401及び第二の画像402を表示させる。
【0098】
ステップSC3では、図12に示されるようにユーザによるキーボード80やマウス81等の操作に基づいて、第一画像表示領域301に表示されている第一の画像401に含まれる第一の輪郭306を指定し、第二画像表示領域302に表示されている第二の画像402に含まれる第二の輪郭308を指定する。
【0099】
ステップSC7では、図15Cに簡略化して示すように、距離Xを算出するために領域320と領域330を指定し、両者間の距離340をユーザが入力する。これにより、距離X及び距離Yを算出することができ、距離X,距離Y及び角度θの三つのオフセットパラメータを算出することができる。
【0100】
具体的には、ユーザがマウス81のポインタを操作して第一の画像401上でワークWの一方の端部W1が含まれるように領域320を指定するとともに、第二の画像402上でワークWの他方の端部W2が含まれるように領域321を指定する。CPU73は、領域320内のエッジ情報を元にしてワークWの一方の端部W1に対応する直線322を特定し、また、領域321内のエッジ情報を元にしてワークWの他方の端部W2に対応する直線323を特定する。
【0101】
ステップSC8では、ユーザがキーボード80やマウス81等を操作してワークWの長さの実寸を入力する。ワークWの長さの実寸は、一方の端部W1と他方の端部W2との距離であることから、ステップSC7で特定された直線322と直線323との長手方向の相対的な位置関係、即ち、第一の輪郭306と第二の輪郭308との長手方向の相対的な位置関係を示す値である。ワークWの長さの実寸を、第一の輪郭306及び第二の輪郭308を通る直線Lに沿ったワークWの基準長さと呼ぶ。この基準長さをワークWの代表長さと呼んでもよい。
【0102】
ステップSC10では、図14に示す第一の画像401と第二の画像402との相対的な位置関係を図15Cに示す第一の画像401と第二の画像402との相対的な位置関係にするための距離Xを図1に示すパラメータ設定部73dが算出するとともに、算出したパラメータをオフセットパラメータとして設定する。算出時には、ステップSC5で取得した幾何情報と、ステップSC8でユーザにより入力された値(基準長さ)とに基づいて、第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40Aと第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40Bとの相対的な位置関係を算出する。このようにして設定されたオフセットパラメータはメモリ74や記憶装置83に記憶しておく。
【0103】
ステップSC9では、第一の画像401の直線322と第二の画像402の直線323との間隔がステップSC8で入力された基準長さと合うように、第一の画像401を固定したままで第二の画像402を移動させる。尚、第二の画像402を固定したままで第一の画像401を移動させることによって基準長さと合わせるようにしてもよい。また、第一の画像401と第二の画像402の両方を移動させることによって基準長さと合わせるようにしてもよい。
【0104】
オフセットパラメータは、1枚の第一の画像401及び第二の画像402に基づいて1回だけ算出してもよいし、複数枚の第一の画像401及び第二の画像402を取得し、複数回算出してもよい。オフセットパラメータを複数回算出する場合には、統計処理を施して最終的なオフセットパラメータを設定してもよい。例えば、算出された複数のオフセットパラメータの平均値を運用時に適用する最終的なオフセットパラメータとして設定してもよいし、算出された複数のオフセットパラメータの最頻値を運用時に適用する最終的なオフセットパラメータとして設定してもよい。
【0105】
以上が光学測定装置1の設定時の処理手順の流れである。図13のフローチャートで示すステップSC1~SC10が第一の設定モードであり、この第一の設定モードでは、情報取得部73cによって取得された幾何情報と、ユーザによって入力された入力値とに基づいてオフセットパラメータを設定することができるので、高精度なオフセットパラメータの設定が可能になる。よって、第一の設定モードを高精度モードと呼ぶことができる。一方、距離Xのみを自動算出する設定モードは第二の設定モードであり、この第二の設定モードでは、ユーザがワークWの基準長さのみ入力すればよいので、オフセットパラメータを簡易に設定することができる。よって、第二の設定モードを簡易モードと呼ぶことができる。
【0106】
(光学測定装置の運用時)
次に、光学測定装置1の設定後、光学測定装置1を実際の測定現場で運用する手順について図16に示すフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、ユーザによる所定の測定開始操作が行われた場合のように、制御装置70がトリガ信号を発行するとスタートする(ステップSD1)。トリガ信号は、外部からの入力信号であってもよいし、制御装置70が所定のタイミングで発行するものであってもよい。ステップSD2では、撮像制御部39が投光用ユニット10の光源11を発光させる。光源11が発光したタイミングに合わせて撮像制御部39が、第一の測定ヘッド2A及び第二の測定ヘッド2Bの二次元撮像素子31にそれぞれ撮像処理を実行させる。撮像処理のタイミングは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0107】
その後、ステップSD3に進み、第一の測定ヘッド2A及び第二の測定ヘッド2Bの二次元撮像素子31で撮像された第一の画像401及び第二の画像402を画像取得部71によって取得する。ステップSD3で取得された第一の画像401及び第二の画像402は、測定用の画像であり、第一の画像401にはワークWの一方の端部W1が含まれており、また第二の画像402にはワークWの他方の端部W2が含まれている。
【0108】
ステップSD3で測定用の画像を取得した後、ステップSD4に進む。ステップSD4では、ビニング、即ち取得した測定用の画像の4画素を1画素に結合して、画像サイズを1/4にするとともに、画像フィルタ処理として測定用の画像の平均化処理を行う。平均化処理としては、例えば、複数枚の画像を重ねることで平均化する等の方法を挙げることができる。
【0109】
次いで、ステップSD5に進んで測定用の画像をDSP72に転送する。その後、ステップSD6に進んで測定エリア部画像抽出を行う。設定情報の測定エリアの情報(エリアの座標とサイズ)をもとに、測定用の画像からエッジ処理を行う範囲を切り出す。
【0110】
しかる後、ステップSD7に進んでエッジ処理を行う。ステップSD7では、測定用の画像における測定エリア内でエッジを求めることができ、例えば図15Cに示すように、領域320、321を指定している場合には、ワークWの一方の端部W1に対応する直線322と、他方の端部W2に対応する直線323とを求めることができる。このとき、測定エリアの向き(X方向、Y方向)に対してエッジ処理を行うことでエッジを求めることができる。エッジ処理では例えばガウシアンフィルタと微分処理とが用いられ、微分波形のピークを算出することでエッジが抽出される。また、画素単位からmm単位への変換も行うことができる。
【0111】
エッジ処理の後、ステップSD8に進む。ステップSD8では、図1に示すCPU73によって構成される測定部73aによる測定処理が実行される。まず、設定時にパラメータ設定部73dにより設定されたオフセットパラメータ(距離X、Y、角度θ)を測定部73aが読み込む。測定部73aは、オフセットパラメータを用いて、ワークWの一方の端部W1に対応する直線322と、他方の端部W2に対応する直線323との相対的な位置関係を図15Cに示すように設定する。この状態で、直線322と直線323との距離を算出する。つまり、測定部73aは、オフセットパラメータを用いて、ワークWに対する寸法測定を行うことができる。
【0112】
また、オフセットパラメータを用いることで、図15Cに示すように第一の画像401と第二の画像402との相対的な位置関係を設定することができる。これにより、表示装置82は、第一の画像401に対して第二の画像402をオフセットした状態で表示することができる。第一の画像401と第二の画像402との間隔は予め入力されているワークWの基準長さに応じて変化し、基準長さが長ければ、第一の画像401から第二の画像402を離間させて表示することができる。これにより、実際のワークWに近い直感的な表示形態とすることができる。
【0113】
直線322と直線323との距離を測定するための測定ツール340は、第一の画像401上で指定された測定領域から第二の画像402上で指定された測定領域に渡って表示される。これにより、ユーザは実際のワークWのどの部分の寸法を測定しているのかを把握し易くなる。
【0114】
測定処理の後、ステップSD9に進む。ステップSD9では、判定処理、即ち、設定情報の公差設定値を元にして、測定された数値が良品を示すものであるか、不良品を示すものであるか判定(良否判定)が行われる。
【0115】
(第一の画像と第二の画像の座標系)
第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとは異なるものなので、第一の測定ヘッド2Aの二次元撮像素子31で撮像された第一の画像401は、第一の座標系を有しており、また、第二の測定ヘッド2Bの二次元撮像素子31で撮像された第二の画像402は、第一の座標系とは異なる第二の座標系を有している。したがって、画像取得部71は、互いに異なる第一の座標系及び第二の座標系をそれぞれ有する第一の画像401及び第二の画像402を取得することになる。上記では、第一の測定ヘッド2A及び第二の測定ヘッド2Bの物理的な離間距離X,Y及び角度θをオフセットパラメータとして算出する例を示したが、第一の測定ヘッド2Aの撮像視野と第二の測定ヘッド2Bの撮像視野とを対応させる、すなわち第一の座標系と第二の座標系とを対応させるオフセットパラメータを算出することで2つの撮像視野に亘ってワークWの寸法を測定することができる。
【0116】
図17に示すように、ユーザが第一の画像401上で例えば2つの測定領域350、351を指定した場合、一方の測定領域350内のエッジ情報に基づいて輪郭352を指定することができ、他方の測定領域351内のエッジ情報に基づいて別の輪郭353を指定することができる。このように第一の画像401上で2つの測定領域350、351が指定されると、測定部73aは、一方の測定領域350内の輪郭352と、他方の測定領域351内の輪郭353との距離を示す測定ツールである寸法線354を生成する。生成された寸法線354は第一の画像401に表示される。そして、測定部73aは、第一の座標系を用いて輪郭352、353の距離を算出する。
【0117】
同様に、ユーザが第二の画像402上で例えば2つの測定領域355、356を指定した場合、測定部73aは、第二の画像402における一方の測定領域355内の輪郭357と、他方の測定領域356内の輪郭358との距離を示す測定ツールである寸法線359を生成する。生成された寸法線359は第二の画像402に表示される。そして、測定部73aは、第二の座標系を用いて輪郭357、358の距離を算出する。
【0118】
つまり、測定部73aは、第一の画像401上で複数の測定領域350、351が指定されると第一の座標系で寸法測定を行う一方、第二の画像402上で複数の測定領域355、356が指定されると、第二の座標系で寸法測定を行うように構成されている。各画像401、402上で設定可能な測定領域の数は2つに限られるものではない。
【0119】
(オフセットパラメータの再設定機能)
光学測定装置1は、その運用時にオフセットパラメータを再設定(更新)することができるように構成されている。例えば第一の測定ヘッド2Aや第二の測定ヘッド2Bが固定されている部材の温度変化による熱膨張等に起因して、光学測定装置1の運用開始時と比較して第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとの相対的な位置関係が変化する場合が考えられる。第一の測定ヘッド2Aと第二の測定ヘッド2Bとの相対的な位置関係が設定時から変化した場合、設定時のオフセットパラメータを用いて測定していると、測定誤差が大きくなるおそれがあるので、オフセットパラメータを、現在の相対的な位置関係を反映させたものに更新し、更新したオフセットパラメータを用いて測定する必要がある。
【0120】
このことに対応した機能として、本実施形態のパラメータ設定部73dは、光学測定装置1の設定時にオフセットパラメータを設定する第一の設定処理と、光学測定装置1の運用時にオフセットパラメータを再度設定する第二の設定処理とを実行可能に構成されている。第一の設定処理は、上述した図10図13に示すフローチャートに従った設定処理である。この設定が完了した後、光学測定装置1の運用に移行する。光学測定装置1が運用に移行した後、任意のタイミングで、一時的に運用を停止し、図10図13に示すフローチャートに従った設定処理を再び実行する。第二の設定処理を開始するタイミングは、光学測定装置1が運用開始されてから所定時間経過したタイミングであってもよいし、所定回数の測定が完了したタイミングであってもよいし、時刻に基づいて設定されるタイミングであってもよい。オフセットパラメータを更新することで、長時間に渡って正確な測定を行うことができる。なお、上記の説明において設定時とはワークWを用いてオフセットパラメータを算出する工程を指し、運用時とは、設定時に用いたワークWとは異なるワークの寸法を測定する時を指す。
【0121】
(オフセットパラメータ算出用領域の位置補正機能)
第一の測定ヘッド2Aや第二の測定ヘッド2Bの位置関係が変わると、光学測定装置1の設定時に設定した算出したオフセットパラメータでは、正確にワークの寸法を測定することができない。
【0122】
このことに対応した機能として、本実施形態の領域設定部73eは、第一の測定ヘッド2Aや第二の測定ヘッド2Bの位置の変化に対応するように、運用時に自動でオフセットパラメータを更新することが可能に構成されている。
【0123】
具体的には、図18に示すように、図13におけるステップSC7にてオフセットパラメータの算出用に設定した領域320よりも大きなサーチ領域345を設定するとともに、ワークWの一方の端部W1を含む形状をサーチ形状として登録しておく。また、ワークWの一方の端部W1を含む形状と、領域320との相対的な位置関係も特定しておく。その後、第一の測定ヘッド2Aや第二の測定ヘッド2Bの位置関係が再設定されると、サーチ領域345内に対してパターンサーチを実行する。これにより、ワークWの一方の端部W1を含む形状の位置や姿勢を特定することができるので、領域320をワークWの一方の端部W1に対して当初の位置関係となるように配置できる。また、図13のステップSC3にて幾何情報を取得するために設定した領域305についても、これらよりも大きなサーチ領域を設定し記憶しておくことで、ワークWに対して当初の位置関係で配置することができる。
【0124】
第二の画像402についても同様であり、領域321よりも大きなサーチ領域347を設定するとともに、ワークWの他方の端部W2を含む形状をサーチ形状として登録しておく。また、ワークWの他方の端部W2を含む形状と、測定領域337との相対的な位置関係も特定しておく。また、領域306についても、これらよりも大きなサーチ領域を設定し記憶しておくことで、ワークWに対して当初の位置関係で配置することができる。その後、第一の測定ヘッド2Aや第二の測定ヘッド2Bの位置関係が変化又は再設定されると、サーチ領域347内に対してパターンサーチを実行する。これにより、ワークWの他方の端部W2を含む形状の位置や姿勢を特定することができるので、測定領域337をワークWの他方の端部W2に対して当初の位置関係となるように配置できる。これにより、オフセットパラメータX,Y,θを算出するために設定した各領域を当初の位置関係で配置できるため、オフセットパラメータを自動で算出することができる。
【0125】
(1組の測定ヘッドによる測定)
図2に示すように、1組の測定ヘッド2を使用してワークWを測定することもできるが、ワークWが撮像視野よりも大きな場合には、図示しないが移動装置によって測定ヘッド2を移動させ、第一の位置と第二の位置とに切替可能とする。第一の位置は、ワークWの一方の端部W1が二次元撮像素子31の撮像視野に入る位置であり、また、第二の位置は、ワークWの他方の端部W2が二次元撮像素子31の撮像視野に入る位置である。
【0126】
第一の位置にある測定ヘッド2により、ワークWの一方の端部W1が含まれる第一の画像401を取得することができる。また、第二の位置にある測定ヘッド2により、ワークWの他方の端部W2が含まれる第二の画像402を取得することができる。この場合、パラメータ設定部73dは、第一の位置にある受光用筐体40と第二の位置にある受光用筐体40との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータを設定することになる。
【0127】
(別形状のワーク)
図19Aは、図9に示すワークWとは形状の異なるワークWAを撮像した画像を示すものである。第一の画像401において領域305を指定すると、領域305内のエッジ情報に基づいて直線状の第一の輪郭306が指定される。また、第二の画像402において領域307を指定すると、領域307内のエッジ情報に基づいて直線状の第二の輪郭308が指定される。図19Bは、図15Aに相当する図であり、第一の輪郭306と第二の輪郭308とのなす角度が予め定められた所定の角度となるように、第二の画像402を回転させている。上述したように所定の角度は幾何情報に含まれて情報取得部に取得されても良い。
【0128】
図20Aは、ワークWAの一方の端部近傍に形成された円形の第1貫通孔W3の輪郭(第一の輪郭)を指定した場合を示しており、その輪郭の中心点W3aと、ワークWAの他方の端部近傍に形成された円弧状の輪郭(第二の輪郭)の周方向の中央の点W5とを示している。中心点W3aは、円形の輪郭が特定されると自動で算出される。
【0129】
図20Bは、第1貫通孔W3の中心点W3aと円弧部分の中央の点W5との距離、即ち、第1貫通孔W3の円形の輪郭と円弧状の輪郭との相対的な位置関係を示す値を基準長さとしており、この基準長さをユーザが入力することで、第1貫通孔W3の中心W3aと円弧部分の中央の点W5との距離が基準長さとなるように、第二の画像402を移動させる。基準長さをとる方向、つまり移動させる方向は基準長さを入力する際にユーザに指定させても良いし、予め定められていても良い。このように、情報取得部73cが取得する幾何情報は、直線に限られるものではなく、例えば、円形の輪郭の中心点であってもよいし、円弧状の輪郭の周方向の中央の点であってもよい。
【0130】
また、図21Aは、ワークWAの一方の端部近傍に形成された円形の第2貫通孔W6の中心点W6aと、第1貫通孔W3の中心点W3a及び第2貫通孔W6の中心点W6aを通る直線360とを示している。図21Bは、円弧部分の周方向の中央の点W5を通って直線360に平行な直線370を示している。情報取得部73cはこのようにして幾何情報としての直線360、370を取得することができる。
【0131】
直線360と直線370との相対的な位置関係を示す値として距離Eをユーザが入力することで、直線360と直線370との距離が距離Eとなるように、第二の画像402を移動させる。これにより、柱状や棒状以外の複雑な形状のワークWAについても、円や円弧状の輪郭を指定することで、オフセットパラメータを設定することができる。
【0132】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、ワークW、WAの一部に対応する第一の画像401が取得されるとユーザ操作に基づいて第一の輪郭を指定することができ、また、ワークW、WAの他の部分に対応する第二の画像402が取得されるとユーザ操作に基づいて第二の輪郭を指定することができる。各輪郭の指定後、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な位置関係を特定するための幾何情報として直線や点を取得し、この幾何情報と、第一の輪郭及び第二の輪郭の相対的な位置関係を示す値とに基づいて、第一の画像401が取得されたときの受光用筐体40と第二の画像402が取得されたときの受光用筐体40との相対的な位置関係を示すオフセットパラメータを自動で設定できる。この設定されたオフセットパラメータを用いて、ワークW、WAに対する寸法測定を行うことができるので、ユーザは容易にかつ正確な測定結果を得ることができる。
【0133】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、本発明に係る光学測定装置は、ワークが配置される空間に測定光を投射してワークを測定する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0135】
1 光学測定装置
10 投光用ユニット
11 光源
15 投光側テレセントリックレンズ
20 投光用筐体
23 投光窓
30 受光用ユニット
31 二次元撮像素子
36 受光側テレセントリックレンズ
40 受光用筐体
43 受光窓
71 画像取得部
73a 測定部
73b 指定部
73c 情報取得部
73d パラメータ設定部
73e 領域設定部
W、WA ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B