(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028278
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及び構造体
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133880
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中木 恭兵
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA02
4J036AD01
4J036AD03
4J036AF06
4J036CD07
4J036DB06
4J036DB15
4J036DB22
4J036FA12
4J036FB07
4J036FB11
4J036HA12
4J036JA05
4J036JA07
4J036KA03
4J036KA05
(57)【要約】
【課題】耐変色性を向上できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、酸無水物と、潜在性架橋剤と、を含み、潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
酸無水物と、
潜在性架橋剤と、を含み、
前記潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物を含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物が、以下の一般式(I)の構造を有する化合物を含む、樹脂組成物。
(Ra)m-P-(NRbRc)n ・・一般式(I)
(上記一般式(I)中、Ra、Rb、及びRcは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかであり、Ra、Rb、及びRcのいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環を形成していてもよく、Rb及びRcは窒素元素を含んでもよく、nは1~3の整数であり、mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、m及びnの総和は3である。)
【請求項3】
請求項2に記載の樹脂組成物であって、
上記一般式(I)中、nが2である前記化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の潜在性架橋剤であって、
上記一般式(I)中、mが1、かつRaがフェニル基である前記化合物を含む、樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物が、分子内に存在する全てのN原子がP原子に直接結合した構造を有する、樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を厚み300mmtのフィルムに成形し、JIS K 7373に準拠して求められる前記フィルムの作成直後におけるイエローインデックスをYI0とし、前記フィルムを180℃4h加熱処理した後のイエローインデックスをYI180としたとき、|YI180-YI0|が20.0以下となるように構成される、樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物を厚み300mmtのフィルムに成形し、前記フィルムの作成直後における400nmでの前記フィルムの透過率をI0とし、180℃4h加熱処理した後における400nmでの透過率をI180としたとき、|I180-YI0|が50%以下となるように構成される、樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記酸無水物が、分子内に環状構造を有する酸無水物を含む、樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでエポキシ樹脂組成物について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、エポキシ樹脂組成物において、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール型潜在性硬化剤を使用することが記載されている(特許文献1の請求項1、5、段落0043等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物において、耐変色性向上の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記事情を踏まえて鋭意検討した結果、エポキシ樹脂と酸無水物とを含む樹脂組成物において、潜在性架橋剤として、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物を用いることにより、その樹脂組成物における耐変色性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
エポキシ樹脂と、
酸無水物と、
潜在性架橋剤と、を含み、
前記潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物を含む、
樹脂組成物が提供される。
【0007】
また本発明によれば、
上記の樹脂組成物の硬化物を含む、構造体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐変色性を向上できる樹脂組成物、及びそれを用いた構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る光半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物を概説する。
【0012】
本実施形態の樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、酸無水物と、潜在性架橋剤と、を含み、潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物を含むものである。
【0013】
本発明者の知見によれば、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物(以下、単に「アミノホスフィン化合物」と称することもある。)は、エポキシ樹脂の重合反応における潜在性架橋剤として機能するだけでなく、エポキシ樹脂および酸無水物を含む樹脂組成物における耐変色性を向上できることが見出された。
【0014】
詳細なメカニズムは定かではないが、エポキシ/酸無水物系の樹脂組成物において、アミノホスフィン化合物が、酸無水物やエポキシ基の開環を促進し、開環化合物が成長反応を促進することにより、硬化反応を促進できると考えられる。
また、エポキシ/酸無水物系の樹脂組成物において、アミノホスフィン化合物が樹脂と反応し、酸化を受けにくい安定構造として樹脂骨格に組み込まれることにより耐変色性が向上すると考えられる。
【0015】
本実施形態によれば、アミノホスフィン化合物を潜在性架橋剤に用いることにより、樹脂組成物における耐変色性と硬化促進性とを向上できる。
【0016】
また、本実施形態の樹脂組成物において、当該樹脂組成物を厚み300mmtのフィルムに成形し、JIS K 7373に準拠して求められるフィルムの作成直後におけるイエローインデックスをYI0とし、フィルムを180℃4h加熱処理した後のイエローインデックスをYI180とする。当該樹脂組成物を厚み300mmtのフィルムに成形し、分光光度計を用いて求められる、フィルムの作成直後における400nmでの前記フィルムの透過率をI0とし、フィルムを180℃4h加熱処理した後の400nmでの透過率をI400とする。
【0017】
樹脂組成物の一例は、|YI180-YI0|が20.0以下となるように構成されてもよい。
|YI180-YI0|の上限は、例えば、20.0以下、好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。これにより、樹脂組成物の硬化物における耐変色性を向上できる。
|YI180-YI0|の下限は、とくに限定されないが、0以上としてもよい。
【0018】
樹脂組成物の一例は、|I180-YI0|が50%以下となるように構成されてもよい。
|I180-YI0|の上限は、例えば、50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは15%以下である。これにより、樹脂組成物の硬化物における透明性を向上できる。
|I180-YI0|の下限は、とくに限定されないが、0以上としてもよい。
【0019】
また、I180の下限は、例えば、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
一方、I180の上限は、特に限定されないが、100%以下、99%以下でもよい。
【0020】
樹脂組成物は、例えば、LED素子やLEDディスプレイ等の光半導体装置を構成する部材、具体的には光学部品やリフレクター等の透明性材料に用いることができる。
【0021】
以下、本実施形態の樹脂組成物について詳述する。
【0022】
(エポキシ樹脂)
樹脂組成物は、エポキシ樹脂を含む、熱硬化性エポキシ樹脂組成物である。
エポキシ樹脂は、1分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール基メタン型ノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂およびイソシアヌル酸骨格含有エポキシ樹脂からなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよく、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0024】
エポキシ樹脂の含有量は、用途に応じて適切に選択可能である。
【0025】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂の他に、他の熱硬化性樹脂を含んでもよいが、含まなくてもよい。
他の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、アクリル樹脂、またフェノール誘導体これらの誘導体等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1分子内に反応性官能基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(硬化剤)
樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤を含む。
このような硬化剤は、少なくとも酸無水物を含む。
【0027】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ-3-メチルフタル酸無水物、ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族酸無水物や、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族酸無水物、等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この中でも、耐変色性のさらなる向上の観点から、分子内に環状構造を有する酸無水物を用いることが好ましい。
【0028】
硬化剤は、必要に応じて、酸無水物以外の他の硬化剤を含んでもよく、他の硬化剤として、重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤などの公知のものを用いてもよい。
【0029】
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂の含有量に応じて適切に設定できる。
【0030】
(潜在性架橋剤)
潜在性架橋剤は、アミノホスフィン化合物を含む。
【0031】
アミノフェニルホスフィン化合物は、分子内において、3価のP元素と、N原子含有基のN原子と3価のP元素とが直接結合するN-P結合と、フェニル基とを有する。3価のP元素は、フェニル基と直接または連結基を介して結合してもよい。
N原子含有基は、エポキシ樹脂や硬化剤と反応性を有する反応性官能基であればよい。
【0032】
アミノホスフィン化合物は、以下の一般式(I)の構造を有する化合物を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(Ra)m-P-(NRbRc)n ・・一般式(I)
【0034】
上記一般式(I)中、Ra、Rb、及びRcは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかの基であり、Ra、Rb、及びRcのいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環を形成していてもよく、nは1~3の整数であり、mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、m及びnの総和は3である。
【0035】
脂肪族基としては、例えば、炭素数1~20の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれかの、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、基中に窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
【0036】
芳香族基(アリール基)としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0037】
置換とは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基等の置換基の一または二以上を基中のいずれかの原子に結合させてもよいが、基中の原子の一または二以上を窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子に置き換えてもよい。
【0038】
Rb及びRcは、それぞれ、基中に、環、不飽和結合、窒素元素、及び酸素原子の少なくとも一つを含んでもよいが、互いに結合して環を形成してもよい。
【0039】
環は、脂環式環、芳香族環、及び複素環の一または二以上を含んでもよい。2以上の環を含む場合、単結合やアルキル基を介して結合してもよいが、互いに縮合して縮合環を形成してもよい。また、環は、無置換でも、置換されてもよい。
脂環式環には、シクロアルカン等の単環、デカヒドロナフタレン等の二環等が挙げられる。
芳香族環には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
複素環には、飽和、不飽和のいずれでもよく、窒素原子や酸素原子などの1個または2個以上のヘテロ原子を含む三員環、四員環、五員環、六員環などが挙げられる。
【0040】
アミノフェニルホスフィン化合物は、上記一般式(I)中、nが1~3のいずれかの化合物を1または2種以上含んでもよいが、好ましくはnが2である化合物を含んでもよい。nを2以上とすることにより、硬化性を高めることができる。nを2以下とすることにより、安定性を高められる。
【0041】
アミノホスフィン化合物は、上記一般式(I)中、mが1、かつRaがフェニル基である化合物を含んでもよい。これによって、4-メチルピペリジンなどのN-P結合を有しない化合物を使用した場合と比べて、分子内に樹脂組成物中における潜在性架橋剤の耐酸化性を高めることができる。
このとき、Rb及びRcの2基が互いに結合してなる環は、それぞれ、同一でもよく、異なってもよい。環は、硬化性の観点から、内部に2以上の窒素原子を有することが好ましい。
【0042】
アミノホスフィン化合物は、以下の一般式(II)の構造を有する化合物を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
【0044】
上記一般式(II)中の、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかの基である。
R1及びR2、またはR3及びR4のいずれか一方は、2基が互いに結合して環を形成していてもよい。一般式(II)の脂肪族基、芳香族基、環の例示については、一般式(I)と同様のものを用いてもよい。
【0045】
また、上記一般式(II)中の-NR1R2、及び-NR3R4は、それぞれ、同一または異なる官能基で構成されてもよく、互いに一つの官能基を構成してもよい。
【0046】
官能基は、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも一つは、それぞれの基中に環を有してもよいが有さなくてもよい。環を有するとき、R2及びR4の少なくとも一方は、R1及びR3と同一構造の基を有してもよいが、異なる基を有してもよく、異なる基として、水素原子、メチル基などのアルキル基でもよい。R1、R2、R3、及びR4の基中に含まれる環は、上記一般式(II)中のN原子を含むように構成されてもよく、そのN原子とメチル基やエチル基などのアルキル基等を介して結合するように構成されてもよい。
【0047】
また、官能基は、R1及びR2の2基、R3及びR4の2基のそれぞれが互いに結合してなる環を有してもよい。
【0048】
官能基の一例を以下に示す。
例示中、-NR1R2、及び-NR3R4中のN元素については、結合手に波線を記す。
【0049】
【0050】
上記のアミノホスフィン化合物の中でも、耐変色性のさらなる向上の観点から、上記に例示した官能基のように、分子内に存在する全てのN原子がP原子に直接結合した構造を有するアミノホスフィン化合物を用いることが好ましい。
【0051】
樹脂組成物中のアミノホスフィン化合物の含有量の下限は、酸無水物の含有量100mol%に対して、例えば、0.3mol%以上、好ましくは0.5mol%以上、より好ましくは1.0mol%以上である。これにより、樹脂組成物における耐変色性を向上できる。
一方、樹脂組成物中のアミノホスフィン化合物の含有量の下限は、酸無水物の含有量100mol%に対して、例えば、12mol%以下、好ましくは10mol%以下である。これにより、樹脂組成物における耐熱性の低下を抑制できる。
【0052】
樹脂組成物は、必要に応じて、アミノホスフィン化合物に加えて、有機塩基を含んでもよい。
有機塩基としては、アミン系硬化促進剤やリン系硬化促進剤を用いてもよい。
有機塩基としては、例えば、窒素原子やリン原子などのヘテロ原子を含む複素環構造を有する化合物や、ヘテロ原子に芳香族基が結合した構造を有する化合物等が使用できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
有機塩基の一例として、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等が挙げられる。
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0054】
有機塩基の一例として、例えば、イミダゾール類やピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の複素環式アミン;その他の1級、2級、3級アミン;等が挙げられる。
イミダゾール類として、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0055】
また、有機塩基の一例として、例えば、リン/窒素含有のホスファゼン誘導体等が挙げられる。
【0056】
樹脂組成物は、充填材を含んでもよい。
充填材として、無機充填材または有機充填材が用いられる。
無機充填材としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカなどのシリカ;アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイトなどの金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(その他の成分)
樹脂組成物は、必要に応じて、カップリング剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、有機塩基以外の硬化促進剤、低応力剤、着色剤及び難燃剤等の各種添加剤のうち1種または2種以上を、適宜含んでもよい。
【0058】
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0059】
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が、樹脂組成物の溶融混練時に反応することを抑制できる。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。
流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0060】
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックスなどの合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩;パラフィン;エルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0061】
上記イオン捕捉剤は、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0062】
硬化促進剤は、たとえば、上記の有機塩基以外の他の硬化促進剤を使用してもよい。
【0063】
低応力剤としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどのシリコーン化合物;ポリブタジエン化合物;アクリロニトリル-カルボキシル基末端ブタジエン共重合化合物などのアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。低応力剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0064】
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0065】
難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン、カーボンブラックなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物は、25℃において、液状の樹脂組成物でもよく、固形状の樹脂組成物でもよい。
なお、固形状の樹脂組成物は、例えば、顆粒形状、粉末形状、タブレット形状、シート形状などが挙げられる。
【0067】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法について説明する。
樹脂組成物の製造方法は、上記の原料成分を混合する混合工程を含む。
【0068】
混合工程において、混合する方法は限定されず、用いられる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。例えば、混合方法として、ミキサーなどを用いてもよい。必要に応じて、混合後に、ロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練してもよい。
【0069】
本実施形態の樹脂組成物を用いた構造体について説明する。
【0070】
本実施形態の構造体は、上記の樹脂組成物の硬化物を備える。
構造体の一例として、
図1を用いて、光半導体装置の例を挙げる。
図1は、光半導体装置100を示す断面図である。
【0071】
光半導体装置100の一例は、搭載部1に搭載された光半導体素子5、半導体素子5と電気的に接続された配線部2、光半導体素子5を封止する透明封止材8、および反射部材3A、3Bを備える。
透明封止材8および/または反射部材3A、3Bが、上記の樹脂組成物の硬化物により構成される。
【0072】
搭載部1は、例えば、リードフレームなどが挙げられる。
搭載部1上に、例えば、ダイアタッチ材6を介して、光半導体素子5が接着されていてもよい。
【0073】
光半導体素子5は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、液晶表示素子、化合物半導体を用いた半導体レーザ素子などの発光素子;フォトカプラなどの受光素子などが挙げられる。
【0074】
配線部2は、例えば、金、銀、または銅などを含む金属で構成されるボンディングワイヤ7を通って、光半導体素子5と電気的に接続するように構成されてもよい。
【0075】
反射部材3Aは、搭載部1(光半導体素子5)を囲むように形成されており、搭載部1側の面が外側に向かって傾斜するように形成されてよい。また、反射部材3Bは、搭載部1と配線部2との間を埋めるように形成されてもよい。なお、反射部材3Aと反射部材3Bとは一体的に形成されてもよい。
【0076】
透明封止材8は、必要に応じて、蛍光体や充填材を含んでもよいが、これに限定されない。
【0077】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0078】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0079】
以下、表1中の原料成分の情報を示す。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃で液体)
・エポキシ樹脂2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(25℃で固体)
・エポキシ樹脂3:ノボラック型エポキシ樹脂(25℃で固体)
・エポキシ樹脂4:イソシアヌル酸骨格含有エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート、25℃で固体)
(硬化剤)
・酸無水物1:ヘキサヒドロ-4-メチルフタル酸無水物(25℃で液体)
【0080】
(潜在性架橋剤)
【0081】
・潜在性架橋剤1:下記の化学式で表されるアミノホスフィン化合物(25℃で固体)
【0082】
【0083】
・潜在性架橋剤2:下記の化学式で表されるアミノホスフィン化合物(25℃で液体)
【0084】
【0085】
(有機塩基)
・有機塩基1:2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)
【0086】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1~13、比較例1~3)
エポキシ樹脂または硬化剤のいずれかに液状成分を含む場合、表1の配合比率(重量換算)に従って、配合された原料成分を測量し、自転公転ミキサーを用いて混合し、液状の樹脂組成物を得た。
【0087】
【0088】
得られた樹脂組成物について、下記の評価項目に基づいて評価を行った。
【0089】
(DSC)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製 DSC-6100)を用い、窒素気流下で、昇温速度を5℃/minで0℃から250℃の温度範囲条件にて、10mgの上記の樹脂組成物についてDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線から、発熱開始温度(Onsetを求めた。
【0090】
(流動時間)
潜在性架橋剤を含まない以外は、実施例1、4の樹脂組成物と同様の原料成分および成分比となる参考樹脂組成物を調製した。
上記の樹脂組成物および参考樹脂組成物について、流度計(コーンプレート型粘度計(東亜工業株式会社製、製造番号CV-1S))を用いて、120℃における流動時間(秒)を測定した。
実施例1、4の樹脂組成物は、それぞれ対応する参考樹脂組成物と比べて、流動時間が長くなる結果を示したことから、アミノホスフィン化合物1、2は、潜在性架橋剤として機能することが確認された。
【0091】
[0] 実施例1で得られた樹脂組成物を、金型を用いて120℃で1時間加熱処理した後、離型し、さらに170℃で1時間加熱処理し、評価用サンプルを作製した。
実施例2~13,比較例1~3で得られた樹脂組成物を、金型を用いて120℃で1時間加熱処理した後、離型し、さらに150℃で1時間加熱処理し、評価用サンプルを作製した。
(Td5:5%重量減少温度)
示差熱熱重量同時測定装置(セイコ-インスツルメンツ社製、TG/DTA6200型)を用いて、乾燥窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件により、評価用サンプルを、30℃から800℃まで昇温させることにより、サンプルが5%重量減少する温度(Td5)を算出した。
なお、評価用サンプルは、測定の直前に100℃で1時間の乾燥処理を施したものを用いた。
【0092】
(透過率)
得られた上記の樹脂組成物をPETフィルムの枠内に入れ、120℃30分間、0.3MPaの条件で加圧加熱処理し、離型後、さらに150℃1時間で熱処理して、厚みが300μmを有する作成直後のフィルムを作製した。
作成直後のフィルム1、作成直後のフィルムに対して180℃4時間の加熱処理を施したフィルム2、作成直後のフィルムに対して230℃30分の加熱処理を施したフィルム3のそれぞれについて、分光光度計(島津製作所製UV-2400PC)を用いて、190nm~800nmの波長領域における光吸収スペクトルを測定し、400nm、500nmにおける透過率(%)を算出した。
【0093】
(イエローインデックス:YI)
得られた上記の樹脂組成物をPETフィルムの枠内に入れ、120℃30分間、0.3MPaの条件で加圧加熱処理し、離型後、さらに150℃1時間で熱処理して、厚みが300μmを有する作成直後のフィルムを作製した。
作成直後のフィルム1、作成直後のフィルムに対して180℃4時間の加熱処理を施したフィルム2、作成直後のフィルムに対して230℃30分の加熱処理を施したフィルム3のそれぞれについて、分光光度計(島津製作所製UV-2400PC)を用いてXYZ三刺激値を測定し、JIS K 7373に準拠して、測定されたXYZ三刺激値を、「標準イルミナントD65を使用しXYZ表色系を用いる場合」の算出式であるYI=100(1.2985X-1.1335Z)/Yに導入して、YI(イエローインデックス)を求めた。
【0094】
実施例1~13の樹脂組成物は、比較例1~3と比べて、230℃30分加熱時と作製直後とのYIの変化率が小さいことから、耐変色性を向上できる結果を示した。
また、このような実施例の樹脂組成物は、リフロー後においても光学特性の変動が抑制されるため、光半導体装置を構成する部材に好適に用いることが可能である。