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特開2023-28285水処理システム及び水処理システムの殺菌方法
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  • 特開-水処理システム及び水処理システムの殺菌方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028285
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理システムの殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20230224BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20230224BHJP
   A61L 2/26 20060101ALI20230224BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20230224BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20230224BHJP
   C02F 1/48 20230101ALI20230224BHJP
【FI】
C02F1/44 A
A61L2/04
A61L2/26
B01D61/46
B01D61/58
C02F1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133897
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】神野 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元
(72)【発明者】
【氏名】重岡 健太
【テーマコード(参考)】
4C058
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4C058AA24
4C058BB03
4C058DD11
4C058EE26
4D006GA03
4D006GA17
4D006JA57A
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KB12
4D006KC24
4D006KE03P
4D006KE04P
4D006KE16Q
4D006PA01
4D006PB06
4D006PC11
4D006PC41
4D061DA03
4D061DB18
4D061EA09
4D061EB04
4D061EB13
4D061EB19
4D061FA08
4D061FA09
4D061GA20
4D061GC18
(57)【要約】
【課題】熱水殺菌を短時間で終了できる水処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る水処理システムは、原水中の殺菌剤を不活化することにより不活化水を得る不活化手段と、逆浸透膜によって不活化水を透過水と膜濃縮水とに分離する逆浸透膜装置と、不活化手段から流出する不活化水を逆浸透膜装置に案内し、不活化水を遮断する不活化水遮断弁を有する不活化水ラインと、不活化手段を含む第1循環流路を形成するよう、不活化水ラインの不活化水遮断弁よりも上流側と不活化手段の上流側の流路とを接続する第1還流ラインと、第1循環流路に配置され、水温を調節する第1温度調節装置と、逆浸透膜装置を含む第2循環流路を形成するよう、逆浸透膜装置の下流側の流路と不活化水ラインの不活化水遮断弁よりも下流側とを接続する第2還流ラインと、第2循環流路に配置され、水温を調節する第2温度調節装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水中の殺菌剤を不活化することにより不活化水を得る不活化手段と、
逆浸透膜によって前記不活化水を透過水と膜濃縮水とに分離する逆浸透膜装置と、
前記不活化手段から流出する前記不活化水を前記逆浸透膜装置に案内し、前記不活化水を遮断する不活化水遮断弁を有する不活化水ラインと、
前記不活化手段を含む第1循環流路を形成するよう、前記不活化水ラインの前記不活化水遮断弁よりも上流側と前記不活化手段の上流側の流路とを接続する第1還流ラインと、
前記第1循環流路に配置され、水温を調節する第1温度調節装置と、
前記逆浸透膜装置を含む第2循環流路を形成するよう、前記逆浸透膜装置の下流側の流路と前記不活化水ラインの前記不活化水遮断弁よりも下流側とを接続する第2還流ラインと、
前記第2循環流路に配置され、水温を調節する第2温度調節装置と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
電気再生式脱塩により前記透過水からイオンを除去した純水と前記イオンの含有量を増大した電気濃縮水とを得るEDI装置をさらに備え、
前記第2還流ラインは、前記逆浸透膜装置から流出する前記膜濃縮水の流路、前記EDI装置から流出する前記純水の流路、及び前記EDI装置から流出する前記電気濃縮水の流路に接続される、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記不活化水ラインにおける前記第1還流ラインの接続点と前記不活化水遮断弁との距離及び前記第2還流ラインの接続点と前記不活化水遮断弁との距離は、前記不活化水ラインの内径の6倍以下である、請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
原水中の殺菌剤を不活化することにより不活化水を得る不活化手段と、逆浸透膜によって前記不活化水を透過水と膜濃縮水とに分離する逆浸透膜装置と、前記不活化手段から流出する前記不活化水を前記逆浸透膜装置に案内する不活化水ラインと、を備える水処理システムの殺菌方法であって、
前記不活化水ラインと前記不活化手段よりも上流側の流路とを接続することにより、前記不活化手段と水温を調節する第1温度調節装置とを含み、水を循環させる第1循環流路を形成し、前記不活化手段の温度を目標温度に近付けるよう前記第1温度調節装置の出力を調整する工程と、
前記逆浸透膜装置よりも下流側の流路と前記不活化水ラインの第1循環流路よりも下流側の部分とを接続することにより、前記逆浸透膜装置と水温を調節する第2温度調節装置とを含み、水を循環させる第2循環流路を形成し、前記逆浸透膜装置の温度を目標温度に近付けるよう前記第2温度調節装置の出力を調整する工程と、
を備える、水処理システムの殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム及び水処理システムの殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原水中の殺菌剤を不活化する活性炭濾過装置等の不活化装置と、水を逆浸透膜を用いて膜分離する逆浸透膜装置と、を備える水処理システムが利用されている。このような水処理システムを用いて医薬品、食品等の製造用水を製造する場合、水処理システムにおいて微生物が繁殖することを防止するために、水処理システムに熱水を通水して装置内の殺菌を行うことが知られている。
【0003】
一般的には、タンク内で水を加熱して水処理システムを殺菌するための熱水を製造するが、熱水を製造するためのエネルギーを節約するために、熱交換器等のインラインで水を加熱して熱水を生成する加熱装置と水処理システムとの間で熱水を循環させる技術も知られている。例えば特許文献1には、直列に接続された不活化装置、逆浸透膜装置及びEDI装置と、熱交換器との間で熱水を循環させる循環系を形成することで、タンクを使用せずに熱水殺菌を行い得る装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5459704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
活性炭濾過装置は、保水量が大きく、供給する水の温度変化に対する流出する水の温度変化の応答性が低い場合が少なくない。このため、特許文献1の構成では、活性炭濾過装置に供給する水の温度を上昇させてから逆浸透膜装置及びEDI装置の温度が上昇するまでに遅れが生じる。また、一般的に逆浸透膜は急激な温度変化に弱いため、温度変化率を例えば2℃/min程度に制限する必要がある。逆浸透膜装置における水温の変化率が大きくなり過ぎないようにするためには、活性炭濾過装置の熱応答性の低さを考慮して、活性炭濾過装置に供給する水の温度変化率を十分に小さくすることが必要となる。この結果、特許文献1の構成では、熱水殺菌に要する時間が長くなる。
【0006】
このため、本発明は、熱水殺菌を短時間で終了できる水処理システム及び水処理システムの殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る水処理システムは、原水中の殺菌剤を不活化することにより不活化水を得る不活化手段と、逆浸透膜によって前記不活化水を透過水と膜濃縮水とに分離する逆浸透膜装置と、前記不活化手段から流出する前記不活化水を前記逆浸透膜装置に案内し、前記不活化水を遮断する不活化水遮断弁を有する不活化水ラインと、前記不活化手段を含む第1循環流路を形成するよう、前記不活化水ラインの前記不活化水遮断弁よりも上流側と前記不活化手段の上流側の流路とを接続する第1還流ラインと、前記第1循環流路に配置され、水温を調節する第1温度調節装置と、前記逆浸透膜装置を含む第2循環流路を形成するよう、前記逆浸透膜装置の下流側の流路と前記不活化水ラインの前記不活化水遮断弁よりも下流側とを接続する第2還流ラインと、前記第2循環流路に配置され、水温を調節する第2温度調節装置と、を備える。
【0008】
上述の水処理システムは、電気再生式脱塩により前記透過水からイオンを除去した純水と前記イオンの含有量を増大した電気濃縮水とを得るEDI装置をさらに備え、前記第2還流ラインは、前記逆浸透膜装置から流出する前記膜濃縮水の流路、前記EDI装置から流出する前記純水の流路、及び前記EDI装置から流出する前記電気濃縮水の流路に接続されてもよい。
【0009】
上述の水処理システムにおいて、前記不活化水ラインにおける前記第1還流ラインの接続点と前記不活化水遮断弁との距離及び前記第2還流ラインの接続点と前記不活化水遮断弁との距離は、前記不活化水ラインの内径の6倍以下であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る水処理システムの殺菌方法は、原水中の殺菌剤を不活化することにより不活化水を得る不活化手段と、逆浸透膜によって前記不活化水を透過水と膜濃縮水とに分離する逆浸透膜装置と、前記不活化手段から流出する前記不活化水を前記逆浸透膜装置に案内する不活化水ラインと、を備える水処理システムの殺菌方法であって、前記不活化水ラインと前記不活化手段よりも上流側の流路とを接続することにより、前記不活化手段と水温を調節する第1温度調節装置とを含み、水を循環させる第1循環流路を形成し、前記不活化手段の温度を目標温度に近付けるよう前記第1温度調節装置の出力を調整する工程と、前記逆浸透膜装置よりも下流側の流路と前記不活化水ラインの第1循環流路よりも下流側の部分とを接続することにより、前記逆浸透膜装置と水温を調節する第2温度調節装置とを含み、水を循環させる第2循環流路を形成し、前記逆浸透膜装置の温度を目標温度に近付けるよう前記第2温度調節装置の出力を調整する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱水殺菌を短時間で終了できる水処理システム及び水処理システムの殺菌方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る水処理システム100の構成を示す模式図である。
【0014】
水処理システム100は、原水タンク1と、不活化手段2と、逆浸透膜装置3と、EDI装置4と、純水タンク5と、第1温度調節装置6と、第2温度調節装置7と、を備える。水処理システム100は、さらに、原水ライン10と、不活化水ライン20と、透過水ライン30と、膜濃縮水ライン40と、純水ライン50と、電気濃縮水ライン60と、第1還流ライン70と、第2還流ライン80と、制御装置90と、を備える。
【0015】
原水タンク1は、原水を貯留する。原水としては、例えば水道水等、浄水処理され、殺菌剤を含有する水を用いることができる。
【0016】
不活化手段2は、原水中の殺菌剤を不活化することにより不活化水を得るものであり、無人で不活化する不活化装置、作業者が不活化処理を行うために原水へのアクセスを提供する薬注設備等とされ得る。不活化装置としては、例えば活性炭濾過装置、薬注装置を備える薬注システム等が例示される。薬注設備としては作業者が薬品を注入可能な水槽等が例示される。
【0017】
逆浸透膜装置3は、逆浸透膜によって不活化水を、逆浸透膜を透過した透過水と逆浸透膜を透過しなかった膜濃縮水とに分離する。
【0018】
EDI装置4は、電気再生式脱塩により透過水からイオンを除去した純水と、透過水のイオンの含有量を増大した電気濃縮水とを得る。
【0019】
純水タンク5は、EDI装置4が生成した純水を貯留する。
【0020】
第1温度調節装置6は、通過又は一時的に保留する水の温度を調節する。具体例として、第1温度調節装置6としては、外部から供給される水蒸気等の温熱源流体と熱交換することにより系内の水の温度を調節する熱交換器、例えば電気ヒータ、バーナ等の熱源を有するボイラなど用いることができる。第1温度調節装置6は、水を加熱する機能のみを有してもよいが、水を冷却する機能をさらに有してもよい。例えば第1温度調節装置6は、系内の水と冷却水等の冷熱源流体との間で熱交換可能な熱交換器とすることができる。
【0021】
第2温度調節装置7は、第1温度調節装置6と同様に、通過又は一時的に保留する水の温度を調節する。
【0022】
原水ライン10は、原水タンク1から不活化手段2に原水を供給する。原水ライン10は、原水を加圧する原水ポンプ11と、原水を遮断する原水遮断弁12と、をこの順番に有する構成とされ得る。
【0023】
不活化水ライン20は、不活化手段2から流出する不活化水を逆浸透膜装置3に案内する。不活化水ライン20は、不活化水を遮断する不活化水遮断弁21と、不活化水を加圧する不活化水ポンプ22と、をこの順番に有する構成とされ得る。不活化水ライン20は、少なくとも第1還流ライン70の接続点と第2還流ラインの接続点との間が直線状であることが好ましい。
【0024】
透過水ライン30は、逆浸透膜装置3から流出する透過水をEDI装置4に案内する。透過水ライン30は、透過水の流量を検出する透過水流量計31と、透過水を系外に排出する透過水排出弁32と、透過水を加圧する透過水ポンプ33と、をこの順番に有する構成とされ得る。
【0025】
膜濃縮水ライン40は、逆浸透膜装置3から流出する膜濃縮水の一部を不活化水ライン20の不活化水ポンプ22の上流側に還流させる戻り部41と、逆浸透膜装置3から流出する膜濃縮水の一部を系外に排出する膜濃縮水排出部42と、を有する構成とされ得る。戻り部41には、不活化水ライン20から膜濃縮水ライン40に水が流入することを防止する逆止弁43が設けられ得る。膜濃縮水排出部42には、膜濃縮水排出部42に流入する膜濃縮水の流量を検出する膜濃縮水流量計44と、系外に排出される膜濃縮水の流量を調節する膜濃縮水調節弁45が設けられ得る。
【0026】
戻り部41は直線状に配設されることが好ましい。また、逆止弁43の弁体から戻り部41の両端までの距離がそれぞれ戻り部41の内径の6倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましい。これにより、第2循環流路L2を循環する水が逆止弁43の弁体にまで達し得るため、熱水を第2循環流路L2に循環させることにより戻り部41も殺菌することができる。
【0027】
純水ライン50は、EDI装置4から流出する純水を純水タンク5に案内する。純水ライン50は、純水を系外に排出する純水排出弁51を有する構成とされてもよい。
【0028】
電気濃縮水ライン60は、EDI装置4から流出する電気濃縮水を系外に排出する。
【0029】
第1還流ライン70は、不活化水ライン20の不活化水遮断弁21よりも上流側と、不活化手段2の上流側の流路、具体的には原水ライン10の原水遮断弁12よりも下流側と、を第1温度調節装置6を介して接続する。第1還流ライン70は、不活化水ライン20側から原水ライン10側への水の流れを形成する第1循環ポンプ71と、不活化水ライン20からの不活化水の流入を防止する第1入口遮断弁72と、原水ライン10からの原水の流入を防止する第1出口遮断弁73と、を有する構成とされ得る。第1還流ライン70は、第1出口遮断弁73の上流側に水を系外に排出する第1循環水排出弁74を有してもよい。
【0030】
第1還流ライン70は、第1入口遮断弁72及び第1出口遮断弁73を開放することによって、原水ライン10の一部及び不活化水ライン20の一部と合わせて、不活化手段2及び第1温度調節装置6を含むループ状の第1循環流路L1を形成する。
【0031】
第1還流ライン70の不活化水ライン20との接続点と、不活化水遮断弁21の弁体との距離は、第1還流ライン70の内径の6倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましい。これにより、第1循環流路L1を循環する水が不活化水遮断弁21の弁体にまで達し得るため、熱水を第1循環流路L1に循環させることにより、不活化水ライン20の第1循環流路L1と不活化水遮断弁21の間の部分まで殺菌することができる。
【0032】
第2還流ライン80は、逆浸透膜装置3の下流側の流路、具体的には膜濃縮水ライン40、純水ライン50及び電気濃縮水ライン60と、不活化水ライン20の不活化水遮断弁21よりも下流側と、を接続する。第2還流ライン80は、逆浸透膜装置3の下流側から不活化水ライン20側への水の流れを形成する第2循環ポンプ81と、膜濃縮水ライン40から第2還流ライン80に水を流入させる膜濃縮水切換弁82と、純水ライン50から第2還流ライン80に水を流入させる純水切換弁83と、電気濃縮水ライン60から第2還流ライン80に水を流入させる電気濃縮水切換弁84と、不活化水ライン20からの不活化水の流入を防止する第2出口遮断弁85と、を有する構成とされ得る。第2還流ライン80は、第2出口遮断弁85の上流側に水を系外に排出する第2循環水排出弁86を有してもよい。なお、純水切換弁83及び電気濃縮水切換弁84は、それぞれ2つの遮断弁によって構成されてもよい。
【0033】
第2還流ライン80は、膜濃縮水切換弁82により、膜濃縮水ライン40から水を系外に排出せずに第2還流ライン80に導入するよう流路を切り替え、純水切換弁83により、純水ライン50から水を純水タンクに導入せずに第2還流ライン80に導入するよう流路を切り替え、電気濃縮水切換弁84により、電気濃縮水ライン60から水を系外に排出せずに第2還流ライン80に導入するよう流路を切り替え、且つ第2出口遮断弁85を開放することによって、不活化水ライン20の一部、透過水ライン30の全部、膜濃縮水ライン40の一部、純水ライン50の一部、及び電気濃縮水ライン60の一部と合わせて、逆浸透膜装置3、EDI装置4及び第2温度調節装置7を含むループ状の第2循環流路L2を形成する。
【0034】
第2還流ライン80の不活化水ライン20との接続点と、不活化水遮断弁21の弁体との距離は、不活化水ライン20の内径の6倍以下であることが好ましく、5倍以下であることがより好ましい。これにより、第2循環流路L2を循環する水が不活化水遮断弁21の弁体にまで達し得るため、熱水を第2循環流路L2に循環させることにより、不活化水ライン20の第2循環流路L2と不活化水遮断弁21の間の部分まで殺菌することができる。
【0035】
制御装置90は、水処理システム100の他の構成要素の動作を制御することにより、水処理システム100の運転を制御する。制御装置90は、水処理システム100により純水を製造する製造運転と、水処理システム100の殺菌を行う殺菌運転と、EDI装置4を再生する再生運転と、を繰り返し行う。殺菌運転は、本発明に係る水処理システムの殺菌方法を実施する運転である。
【0036】
製造運転は、初期ブロー工程と、通水工程と、フラッシング工程と、を有し得る。初期ブロー工程では、運転状態が安定して十分に清浄な純水が得られるまでの間、EDI装置4から純水ライン50に流出する水を純水タンク5に導入することなく、純水排出弁51から系外に排出する。初期ブロー工程は、純水排出弁51を省略し、純水切換弁83により純水ライン50から第2還流ライン80に水を流入させ、第2還流ライン80に流入した水を第2循環水排出弁86から系外に排出することによって行ってもよい。通水工程では、不活化手段2、逆浸透膜装置3及びEDI装置4を通して純水ライン50に流出する純水を純水タンク5に導入する。フラッシング工程では、膜濃縮水調節弁45の開度を大きくして、逆浸透膜装置3の内部の膜濃縮水側の空間及び膜濃縮水ライン40の内部の水の不純物濃度を低下させるともに、透過水排出弁32から透過水を系外に排出する。
【0037】
殺菌運転は、透過水ライン30。膜濃縮水ライン40、純水ライン50及び電気濃縮水ライン60に滞留する水を系外に排出し、系内の不純物量を低減する準備工程と、不活化手段2及び第1温度調節装置6を含み、水を循環させる第1循環流路L1を形成し、不活化手段2の温度を目標温度に近付けるよう、第1循環流路L1に配置される第1温度調節装置6の出力を調整する第1段殺菌工程と、逆浸透膜装置3、EDI装置4及び第2温度調節装置7とを含み、水を循環させる第2循環流路L2を形成し、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度を目標温度に近付けるよう、第2循環流路L2に配置される第2温度調節装置7の出力を調整する第2段殺菌工程と、を備える。第1段殺菌工程と第2段殺菌工程とは独立して行うことができ、並行して行ってもよい。典型には、第1段殺菌工程と第2段殺菌工程とは同時に開始され、独立して制御される。
【0038】
第1段殺菌工程は、不活化手段2の温度を予め設定される第1殺菌温度まで上昇させる第1昇温工程と、不活化手段2の温度を第1殺菌温度に所定の第1殺菌時間の間保持する第1温度保持工程と、不活化手段2の温度を下降させる第1降温工程と、を有し得る。
【0039】
第1昇温工程では、原水遮断弁12及び不活化水遮断弁21を閉鎖し、第1循環ポンプ71により第1循環流路L1内の水を循環させ、第1温度調節装置6によって循環する水を加熱することにより、不活化手段2の温度を第1殺菌温度まで上昇させる。不活化手段2の温度としては、不活化手段2の筐体等の温度を検出してもよく、不活化手段2の出口における循環水の水温を検出してもよい。
【0040】
第1昇温工程における不活化手段2の温度勾配(昇温速度)は、特に制限されないが、第1温度調節装置6の容量などを考慮して、第1殺菌温度を過度にオーバーシュートしないように制御可能な値に設定されることが好ましく、予め設定される一定の温度勾配で第1殺菌温度まで不活化手段2の温度を上昇させることがより好ましい。つまり、第1昇温工程では、終始、第1殺菌温度を不活化手段2の目標温度として第1温度調節装置6の熱量を調整してもよく、予め設定されるプロファイルで第1殺菌温度まで上昇する目標温度に不活化手段2の温度を近づけるよう第1温度調節装置6の熱量を調整してもよい。
【0041】
第1温度保持工程では、第1循環ポンプ71により第1循環流路L1内の水を循環させ、不活化手段2の温度を第1殺菌温度に保持するよう、第1温度調節装置6による循環水の加熱量を調節する。第1殺菌温度は、例えば80℃以上85℃以下の温度とされ得る。第1殺菌時間は、第1殺菌温度にもよるが、例えば30分以上1時間以下の時間とされ得る。
【0042】
第1降温工程では、第1温度調節装置6によって循環水を冷却してもよく、原水遮断弁12を開放して第1循環流路L1に原水を導入することによって循環水の温度を低下させてもよい。原水を導入する場合、第1循環水排出弁74から過剰な循環水を排出してもよく、第2循環流路L2の状態によっては不活化水遮断弁21を開放して下流側に過剰な循環水を流出させてもよい。
【0043】
第2段殺菌工程は、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度を予め設定される第2殺菌温度まで上昇させる第2昇温工程と、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度を第2殺菌温度に所定の第2殺菌時間の間保持する第2温度保持工程と、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度を下降させる第2降温工程と、を有し得る。
【0044】
第2昇温工程では、不活化水遮断弁21を閉鎖し、純水切換弁83を第2還流ライン80側に切り換え、第2循環ポンプ81により第2循環流路L2内の水を循環させ、第2温度調節装置7によって循環する水を加熱することにより、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度を第2殺菌温度まで上昇させる。逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度は、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の筐体温度、循環水の出口温度等として検出してもよい。第2昇温工程における逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度勾配は、逆浸透膜を保護するために、例えば2℃/min程度に設定され得る。
【0045】
第2昇温工程では、EDI装置4に供給される循環水の流量を確保して逆浸透膜装置3とEDI装置4とを同時に昇温するために、逆浸透膜装置3から透過水ライン30に流出する循環水の流量(透過水流量計31の検出値)の膜濃縮水ライン40に流出する循環水の流量(膜濃縮水流量計44の検出値)に対する比率に保つよう、膜濃縮水調節弁45の開度を調整してもよい。
【0046】
第2温度保持工程では、第2循環ポンプ81により第2循環流路L2内の水を循環させ、逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度を第2殺菌温度に保持するよう、第2温度調節装置7による循環水の加熱量を調節する。第2殺菌温度は、例えば80℃以上85℃以下の温度とされ得る。第2殺菌時間は、第2殺菌温度にもよるが、例えば30分以上1時間以下の時間とされ得る。
【0047】
第2温度保持工程では、第2昇温工程と同様に膜濃縮水調節弁45の開度を調整してもよいが、膜濃縮水調節弁45の開度を第2昇温工程の終了時の開度に保持してもよい。第2温度保持工程では、逆浸透膜装置3の温度が一定に保たれることにより逆浸透膜の透過抵抗が変化しないので、膜濃縮水調節弁45の開度を変えなければ透過水ライン30に流出する循環水の流量も変化しない。
【0048】
第2降温工程では、第2温度調節装置7によって循環水を冷却してもよく、不活化手段2の温度が低い場合には、不活化水遮断弁21を開放して第1循環流路L1の循環水又は原水ライン10から供給されて不活化手段によって不活化された不活化水を導入することによって第2循環流路L2の循環水の温度を低下させてもよい。第2循環水排出弁86から過剰な循環水を排出することができる。第2降温工程における逆浸透膜装置3及びEDI装置4の温度勾配(降温速度)は、逆浸透膜を保護するために、第2昇温工程と同様に、例えば2℃/min程度に設定され得る。
【0049】
第1段殺菌工程と第2段殺菌工程とは同時に開始される場合、上述のように、第2昇温工程及び第2降温工程では温度勾配が制限されるため、第2降温工程よりも先に第1降温工程が進行するため、第2降温工程において上流側から比較的低温の水を第2循環流路L2に導入することができる。
【0050】
再生運転では、EDI装置4に通電し、EDI装置4から純水ライン50に流出する水を純水排出弁51又は第2還流ライン80を介して第2循環水排出弁86から系外に排出する。これにより、EDI装置4が透過水から不純物イオンを除去できる状態に再生され得る。
【0051】
水処理システム100は、不活化手段2を通して第1温度調節装置6によって温度調節される水を循環させる第1循環流路L1を形成する第1還流ライン70と、逆浸透膜装置3及びEDI装置4を通して第2温度調節装置によって温度調節される水を循環させる第2循環流路L2を形成する第2還流ライン80と、を備えるため、一般に保水量が大きくなり得る不活化手段2の熱水殺菌と、急激な温度変化が忌避される逆浸透膜装置3の熱水殺菌とを独立して行うことができる。このため、不活化手段2には温度変化率を気にすることなく大きな熱を供給することできるとともに、逆浸透膜装置3の温度変化を迅速かつ正確に調整することができるので、水処理システム100全体の熱水殺菌を比較的短時間に終了できる。
【0052】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例として、本発明に係る水処理システムにおいて、EDI装置は省略されてもよく、EDI装置に換えて他の装置を設けてもよく、EDI装置の前後に他の装置(例えばEDI前段に脱炭酸装置、EDI後段にUF膜ろ過装置等)を追加してもよい。また、別の例として、第1温度調節装置は第1循環流路内であればどの位置に配置されてもよく、第2温度調節装置も第2循環流路内であればどの位置に配置されてもよい。また、流量計、調節弁等についても、機能を損なわない範囲で異なる位置に配設され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 原水タンク
2 不活化手段
3 逆浸透膜装置
4 EDI装置
5 純水タンク
6 第1温度調節装置
7 第2温度調節装置
10 原水ライン
11 原水ポンプ
12 原水遮断弁
20 不活化水ライン
21 不活化水遮断弁
22 不活化水ポンプ
30 透過水ライン
31 透過水流量計
32 透過水排出弁
33 透過水ポンプ
40 膜濃縮水ライン
41 戻り部
42 膜濃縮水排出部
43 逆止弁
44 膜濃縮水流量計
45 膜濃縮水調節弁
50 純水ライン
51 純水排出弁
60 電気濃縮水ライン
70 第1還流ライン
71 第1循環ポンプ
72 第1入口遮断弁
73 第1出口遮断弁
74 第1循環水排出弁
80 第2還流ライン
81 第2循環ポンプ
82 膜濃縮水切換弁
83 純水切換弁
84 電気濃縮水切換弁
85 第2出口遮断弁
86 第2循環水排出弁
90 制御装置
100 水処理システム
L1 第1循環流路
L2 第2循環流路
図1