(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002841
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】高血圧症及び/又は線維症を処置するための組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 241/04 20060101AFI20221227BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20221227BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20221227BHJP
C07D 403/06 20060101ALI20221227BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20221227BHJP
C07D 405/04 20060101ALI20221227BHJP
C07D 409/04 20060101ALI20221227BHJP
C07D 413/04 20060101ALI20221227BHJP
C07D 417/04 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221227BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20221227BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221227BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221227BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221227BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221227BHJP
C07D 233/64 20060101ALN20221227BHJP
A61K 31/4174 20060101ALN20221227BHJP
A61K 31/4178 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
C07D241/04 CSP
C07D401/04
C07D403/04
C07D403/06
C07D403/12
C07D405/04
C07D409/04
C07D413/04
C07D417/04
A61K31/495
A61K31/496
A61P9/12
A61P9/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P13/12
C07D233/64 103
C07D233/64 106
A61K31/4174
A61K31/4178
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177436
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2019515792の分割
【原出願日】2017-09-21
(31)【優先権主張番号】2016903804
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】506408874
【氏名又は名称】ベクタス・バイオシステムズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュガン,カレン アネット
(57)【要約】
【課題】本出願は、新規化合物及びそれを含む医薬組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】特定の構造式で表される新規化合物を見出し、それを含む医薬組成物、特に高血圧症及び/又は線維症の予防的及び/又は治療的処置を行うための医薬組成物を見出した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物:
【化1】
式中、
Xは、
【化2】
からなる群から選択され、
R
1~R
9は、独立して、C、N、O又はSであり、
R
10は、独立して、C
1~6アルキル、ハロ、C
0~6アルキルカルボン酸、アミノ、ヒドロキシ及びC
1~6アルコキシから選択され、
Yは、A、CH
2-A又はCH=Aであり、
Aは、
【化3】
からなる群から選択され、
Zは、
【化4】
からなる群から選択され、
R
11は、独立して、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、アミノ及び置換アミノから選択され、
R
12、R
14及びR
15は、独立して、C、CH、CH
2、O、N、NH又はSであり、
R
13は、C、CH、CH
2、N、NH、C-CF
3、CH-CF
3又はC=Oであり、
mは、0、1、2、3、4又は5であり、及び
nは、0、1、2、3又は4である、
又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩であって、
前記化合物が、
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
【化5-7】
【化5-8】
【化5-9】
【化5-10】
【化5-11】
【化5-12】
からなる群から選択される、
化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項4】
対象における高血圧症又は高血圧前症の治療的処置のための、請求項3に記載の医薬組
成物。
【請求項5】
対象における線維症の予防的処置のための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
対象における線維症の治療的処置のための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
対象における高血圧症及び線維症の治療的処置のための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象における高血圧前症及び線維症の処置のための、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記線維症が、心筋線維症、腎線維症、肝線維症及び肺線維症から選択される、請求項5~8の何れか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、オーストラリア仮特許出願第2016903804号(2016年9月21日出願)の優先権を主張し、その内容は全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規化合物並びに心血管疾患の予防的及び/又は治療的処置、特に高血圧前症、高血圧症及び/又は線維症状態の処置におけるその使用に関する。
【0003】
本発明は、主に心血管疾患の予防的及び/又は治療的処置のために開発されたものであり、本願に関して以下に記載する。しかしながら、本発明はこの特定の使用分野に限定されないことが理解されよう。
【背景技術】
【0004】
明細書全体にわたる従来技術のいかなる議論も決して、そのような従来技術が周知であること又は当該分野における一般常識の一部を形成することを認めるものと考慮されるべきではない。
【0005】
高血圧症(高血圧)は世界中の成人人口の26%が罹患しており、その発生率は西欧諸国では30~33%である。高血圧症の世界的に見た発生率は、インド及び中国の西洋化の結果として、2025年までに29%に達すると予想されている。現在の研究では、高血圧症の患者の20%未満が推奨される血圧(BP)目標を達成し、これらの目標を達成するためには75%超の患者が複数の降圧剤による治療を必要とすることが示されている。高血圧前症(若干高い血圧)は米国成人の31%が罹患しており、処置しないと高血圧症になる可能性がある。
【0006】
高血圧症及び高血圧前症は、様々な臓器における血管損傷の発生の主な要因であり、結果として正常な機能性組織が瘢痕組織又は線維症によって置換される。現在の降圧剤のいくつかは、線維症による機能性組織の置換の進行を遅らせることができるが、存在している線維症を逆行(reverse)させ、正常な組織構造を回復させることは示されていない。したがって、BPを有意に低下し、そしてより多くの割合の患者が単剤療法でBP標的を達成すること及び/若しくは存在している線維症を逆行させること、並びに/又は正常な組織構造を回復することを可能にする効力を有する薬剤が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点のうちの少なくとも1つを克服若しくは改善すること、又は有用な代替物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、ある特定の化合物が降圧及び/又は抗線維化作用を有することを見出した。これらの作用は静脈内及び/又は経口投与研究において見ることができる。
【0009】
一態様によれば、本発明は、下記式の化合物:
【化1】
[式中、
Xは、
【化2】
からなる群から選択され、
R
1~R
9は、独立して、C、N、O又はSであり、
R
10は、独立して、C
1~6アルキル、ハロ、C
0~6アルキルカルボン酸、アミノ、ヒドロキシ及びC
1~6アルコキシから選択され、
Yは、A、CH
2-A又はCH=Aであり、
Aは、任意選択により置換された飽和、部分飽和若しくは不飽和5又は6員ヘテロシクリル、任意選択により置換されたC
1~6アルコキシルアミン、任意選択により置換されたC
1~6アルキルアミン、任意選択により置換されたC
0~6アルキルカルボン酸、任意選択により置換されたC
1~6アルキルヒドロキシル、任意選択により置換された飽和又は不飽和C
0~6アルキル二環式ヘテロシクリル、及び任意選択により置換された飽和又は不飽和C
1~6アルコキシル二環式ヘテロシクリルから選択され、
Zは、
【化3】
からなる群から選択され、
R
11は、独立して、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、アミノ及び置換アミノから選択され、
R
12、R
14及びR
15は、独立して、C、CH、CH
2、O、N、NH又はSであり、
R
13は、C、CH、CH
2、N、NH、C-CF
3、CH-CF
3又はC=Oであり、
mは、0、1、2、3、4又は5であり、及び
nは、0、1、2、3又は4である、
又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
一実施形態において、R10は、独立して、-CH3、-C(O)OH、-F、-NH2、-OH及び-OCH3から選択される。
【0011】
一実施形態において、R5~R9は、独立して、C又はNである。
【0012】
一実施形態において、C0~6アルキルカルボン酸はカルボン酸である。
【0013】
一実施形態において、飽和、部分飽和若しくは不飽和5又は6員ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、C1~6アルキル、アミノ、ヒドロキシル又はハロ置換基で任意選択により置換された、N、S又はOのうちの1つ以上を含む。
【0014】
一実施形態において、飽和、部分飽和若しくは不飽和5又は6員ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、C1~6アルキル、アミノ、ヒドロキシル又はハロ置換基で任意選択により置換された、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イミダゾリジニル、ピロリジニル、ピロリジニリデン、ジヒドロピロリル、イソオキサゾリル、ジヒドロオキサゾリル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル及びオキサゾリルから選択される。
【0015】
一実施形態において、C1~6アルコキシルアミンは、アミノオキシメチルである。
【0016】
一実施形態において、C1~6アルキルアミンは、C1~6アルキル、C1~6ハロアルキル、ヒドロキシル又はハロのうちの1つ以上、好ましくは一置換、二置換又は三置換されたハロアルキル、最も好ましくはトリフルオロメタンで任意選択により置換されている。
【0017】
一実施形態において、C1~6アルキルヒドロキシルは、メチルヒドロキシル又はプロパン-2-オールである。
【0018】
一実施形態において、C0~6アルキル二環式ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、好ましくはジオキソで任意選択により置換された、インドリル、イソインドリル、インソリニル及びイソインドリニルである。
【0019】
一実施形態において、C1~6アルコキシル二環式ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソで任意選択により置換されたインドリル、イソインドリル、インソリニル及びイソインドリニルから選択され、C1~6アルコキシルはメトキシ又はエトキシである。
【0020】
一実施形態において、Aは、
【化4】
から選択される。
【0021】
一実施形態において、R11は、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されるハロである。
【0022】
一実施形態において、R11は式-NHR16の置換アミノであり、
R16は、-CN、-SO2(R17)aR18及び-CO(R17)aR18から選択され、
aは、0又は1であり、
R17は、-NH-及び-O-から選択され、及び
R18は、-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2OH及び-CH2CH2OHから選択される。
【0023】
一実施形態において、R11は、-NHSO2CH3、-NHCOH、-NHCONHCH3、-NHCONHCH2CH3、-NHSO2NHCH3、-NHSO2NHCH2CH3、-NHCOCH3、-NHCOOCH3、-NHCOOCH2CH2OH、-NHCONH2及び-NHCNからなる群から選択される置換アミノである。
【0024】
一実施形態において、R11は、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びペンチルからなる群から選択されるアルキルである。
【0025】
一実施形態において、化合物は、
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【化5-5】
【化5-6】
【化5-7】
【化5-8】
【化5-9】
【化5-10】
【化5-11】
【化5-12】
【化5-13】
【化5-14】
【化5-15】
【化5-16】
【化5-17】
【化5-18】
【化5-19】
【化5-20】
【化5-21】
【化5-22】
【化5-23】
【化5-24】
【化5-25】
【化5-26】
【化5-27】
【化5-28】
【化5-29】
【化5-30】
【化5-31】
【化5-32】
【化5-33】
【化5-34】
【化5-35】
からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態において、化合物は、
【化6】
から選択される。
【0027】
別の態様によれば、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0028】
別の態様によれば、本発明は、対象における高血圧症又は高血圧前症の治療的処置方法であって、本発明による化合物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0029】
別の態様によれば、本発明は、対象における線維症の治療的処置方法であって、本発明による化合物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0030】
別の態様によれば、本発明は、対象における線維症の予防的処置方法であって、本発明による化合物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、対象における高血圧症及び線維症の治療的処置方法であって、本発明による化合物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、対象における高血圧前症及び線維症の治療的処置方法であって、本発明による化合物を対象に投与することを含む方法に関する。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、高血圧症又は高血圧前症の治療的処置に使用するための本発明の化合物に関する。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、線維症の治療的処置に使用するための本発明の化合物に関する。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、線維症の予防的処置に使用するための本発明の化合物に関する。
【0036】
別の態様によれば、本発明は、高血圧症及び線維症の治療的処置に使用するための本発明の化合物に関する。
【0037】
別の態様によれば、本発明は、高血圧前症及び線維症の治療的処置に使用するための本発明の化合物に関する。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、高血圧症又は高血圧前症の治療的処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用に関する。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、線維症の治療的処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用に関する。
【0040】
別の態様によれば、本発明は、線維症の予防的処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用に関する。
【0041】
別の態様によれば、本発明は、高血圧症及び線維症の治療的処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用に関する。
【0042】
別の態様によれば、本発明は、高血圧前症及び線維症の治療的処置のための医薬の製造のための本発明の化合物の使用に関する。
【0043】
一実施形態において、線維症は心筋線維症である。
【0044】
一実施形態において、線維症は腎線維症である。
【0045】
一実施形態において、線維症は肝線維症である。
【0046】
一実施形態において、線維症は肺線維症である。
【0047】
文脈が明らかに別段の定めを必要としない限り、発明の詳細な説明及び請求項を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などの語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的である包含的な意味、すなわち「限定するものではないが、含む」との意味で解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、2-[4-ベンジル-1-(3-ヒドロキシベンジル)-1H-イミダゾール-5-イル]アセトアミド(VB0002)の合成を示す。
【
図2】
図2は、3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルイソチオシアネート(化合物B)の合成を示す。
【
図3】
図3は、3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]-フェノール(VB0003)の合成を示す。
【
図4】
図4は、α-トシルベンジルイソシアニド(化合物C)の合成を示す。
【
図5】
図5は、3-(ベンジルオキシ)ベンジルアミン(化合物D)の合成を示す。
【
図6】
図6は、3,3-エチレンジオキシ-1-ブタナール(化合物E)の合成を示す。
【
図7】
図7は、(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパンアミド(VB0005)の合成を示す。
【
図8】
図8は、20pmol/kg/分の用量のVB0002(20%DMSO中)又はビヒクル対照(20%DMSO)を浸透圧ミニポンプにより4週間静脈内投与した、2.2%塩分食を与えたSHRの収縮期血圧を示す。*p<0.005対18週目の対照。
【
図9】
図9は、20pmol/kg/分の用量のVB0003(5%エタノール中)、20pmol/kg/分の用量のVB0005(5%エタノール中)又はビヒクル対照(5%エタノール)を飲料溶液中において4週間投与した、2.2%塩分食を与えたSHRの収縮期血圧を示す。
*p<0.0005対18週目の対照。
【
図10】
図10は、20pmol/kg/分の用量のVB0002(20%DMSO中)又はビヒクル対照(20%DMSO)を浸透圧ミニポンプにより4週間静脈内投与した、2.2%塩分食を与えたSHRの心筋線維症を示す。
*p<0.005対18週目の対照、
**p<0.0005対18週目の対照。
【
図11】
図11は、10、100及び500pmol/kg/分の投与量のVB0003(5%エタノール中)又はビヒクル対照(5%エタノール)を飲料溶液中において4週間投与した、2.2%塩分食を与えたSHRの心筋線維症を示す。
*p<0.005対18週の対照、
**p<0.0005対18週目の対照、#p<0.01対14週目の対照。
【
図12】
図12は、100pmol/kg/分の投与量のVB0005(5%エタノール中)又はビヒクル対照(5%エタノール)を飲料溶液中において4週間投与した、2.2%塩分食を与えたSHRの心筋線維症を示す。
*p<0.001対18週目の対照、
**p<0.0005対18週目の対照、#p<0.01対14週目の対照。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、実験動物モデルの経口投与研究において降圧及び抗線維化作用を示すある特定の化合物に関する。抗線維化活性に関して、本発明の化合物は、線維症の予防、既成の(established)線維症の進行の遅延及び/又は既成の線維症の程度の軽減(逆行)に有効である。これらは、本発明の化合物で処置することができる状態の範囲及び重症度に関する重要な発見である。
【0050】
本発明の化合物は、下記式によって表され:
【化7】
[式中、
Xは、
【化8】
からなる群から選択され、
R
1~R
9は、独立して、C、N、O又はSであり、
R
10は、独立して、C
1~6アルキル、ハロ、C
0~6アルキルカルボン酸、アミノ、ヒドロキシ及びC
1~6アルコキシから選択され、
Yは、A、CH
2-A又はCH=Aであり、
Aは、任意選択により置換された飽和、部分飽和若しくは不飽和5又は6員ヘテロシクリル、任意選択により置換されたC
1~6アルコキシルアミン、任意選択により置換されたC
1~6アルキルアミン、任意選択により置換されたC
0~6アルキルカルボン酸、任意選択により置換されたC
1~6アルキルヒドロキシル、任意選択により置換された飽和又は不飽和C
0~6アルキル二環式ヘテロシクリル、及び任意選択により置換された飽和又は不飽和C
1~6アルコキシル二環式ヘテロシクリルから選択され、
Zは、
【化9】
からなる群から選択され、
R
11は、独立して、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、アミノ及び置換アミノから選択され、
R
12、R
14及びR
15は、独立して、C、CH、CH
2、O、N、NH又はSであり、
R
13は、C、CH、CH
2、N、NH、C-CF
3、CH-CF
3又はC=Oであり、
mは、0、1、2、3、4又は5であり、及び
nは、0、1、2、3又は4である、
又はその立体異性体若しくは薬学的に許容される塩である。
【0051】
以下の化合物は、本発明の化合物の具体的な、しかし非限定的な例である:
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【化10-4】
【化10-5】
【化10-6】
【化10-7】
【化10-8】
【化10-9】
【化10-10】
【化10-11】
【化10-12】
【化10-13】
【化10-14】
【化10-15】
【化10-16】
【化10-17】
【化10-18】
【化10-19】
【化10-20】
【化10-21】
【化10-22】
【化10-23】
【化10-24】
【化10-25】
【化10-26】
【化10-27】
【化10-28】
【化10-29】
【化10-30】
【化10-31】
【化10-32】
【化10-33】
【化10-34】
【化10-35】
。
【0052】
本明細書で使用する場合、「ハロ」との用語は、-F、-CI、-Br又は-Iを表し、「ヒドロキシ」との用語は-OHを意味し、「アミノ」との用語は-NH2を意味し、「置換アミノ」との用語は-NHWを含み、ここで、Wは-CN、-SO2(X)aY及び-CO(X)aYから選択され、aは0又は1であり、Xは-NH-及び-O-から選択され、Yは-H、-CH3、-CH2CH3、-CH2OH及び-CH2CH2OHから選択される。
【0053】
本明細書で使用する場合、略語Me、Et、Ph、Msはそれぞれ、メチル、エチル、フェニル、及びメタンスルホニルを表す。有機化学の当業者によって利用される略語のより包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の初号に載っており、このリストは典型的には、Standard List of Abbreviationsというタイトルの表中に提示されている。該リストに含まれる略語、及び有機化学の当業者によって利用される全ての略語は
、参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明の化合物は、特定の幾何学的形態又は立体異性形態で存在し得る。本発明は、シス-及びトランス-異性体、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(d)-異性体、(l)-異性体、それらのラセミ混合物、及び他のそれらの混合物を含む全てのそのような化合物を企図し、これらは本発明の範囲内に含まれる。全てのそのような異性体及びそれらの混合物は、本発明に含まれることを意図している。
【0055】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが所望される場合、該エナンチオマーは、不斉合成により調製することができ、又はキラル補助剤を用いた誘導体化により調製することができ、ここでは得られたジアステレオマー混合物が分離され、補助剤基が切断されて純粋な所望のエナンチオマーが得られる。あるいは、ジアステレオマーの塩を適切な光学活性な酸又は塩基を用いて形成し、続いてこのようにして形成されたジアステレオマーを当技術分野で周知の分別結晶法又はクロマトグラフィー手段によって分割し、続いて純粋なエナンチオマーを回収することができる。
【0056】
一般に、本発明の化合物は、容易に入手可能な出発物質、試薬及び従来の合成手順を用いて、例えば下記に記載される一般反応スキームに例示される方法により、又はその改変により調製することができる。これらの反応において、それ自体既知であるが本明細書で言及されていない変形を利用することも可能である。
【0057】
本発明はまた、化合物の薬学的に許容される塩を企図する。「薬学的に許容される塩」との用語は、酸付加塩及び塩基付加塩の両方を含み、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない塩を指す。薬学的に許容される塩は、無機若しくは有機の酸又は塩基で形成され、化合物の最終単離及び精製の間にインサイチュで調製するか、あるいは遊離塩基又は酸形態の精製した化合物を好適な有機若しくは無機の酸又は塩基と別々に反応させて、このようにして形成された塩を単離することによって調製することができる。
【0058】
本発明に文脈において使用される「線維症」との用語には、限定するものではないが、心筋線維症、腎線維症、肝線維症及び/又は肺線維症が含まれる。
【0059】
既成の線維症の処置に加えて、本発明の化合物は、線維症を発症するリスクがある対象において予防的に使用してもよい。線維症を発症するリスク分類の対象の例には、高血圧症、糖尿病、心筋炎、虚血性心疾患、コン症候群、褐色細胞腫、遺伝的素因、高塩分食を有する対象、及び/又は癌化学療法で使用される薬物(ダウノルビシンなど)を摂取している対象である。本発明の文脈において使用される「予防的」との用語は、とりわけ、リスク群における線維症の発症を予防する又は遅延させるために使用される処置を包含することを意図している。予防的処置を受ける可能性がある対象は、心エコー検査で早期心不全の徴候を既に示している可能性がある。
【0060】
本発明の文脈において使用される「高血圧症」との用語は、収縮期血圧が約139mmHgを上回る及び/又は拡張期血圧が約89mmHgを上回る成人血圧を指す。
【0061】
本発明の文脈において使用される「高血圧前症」との用語は、収縮期血圧が約120~139mmHg及び/又は拡張期血圧が約80~89mmHgの範囲である成人血圧を指す。
【0062】
本発明はまた、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて本発明の化合物を含む医薬組成物を企図する。本発明の文脈において使用される「薬学的に許容される賦形剤」との用
語は、組成物の任意の薬学的に許容される不活性成分を意味する。当該技術分野において周知のように、賦形剤には、希釈剤、緩衝剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、酸化防止剤/防腐剤、pH調整剤などが含まれる。賦形剤は、最終形態の所望の物理的態様、例えば、素早く分散可能で容易に飲み込こめるなどの所望の硬さ及び破砕性を有する錠剤を得ることに基づいて選択される。摂取後における組成物からの活性物質の所望の放出速度はまた、賦形剤の選択において役割を果たす。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、液体製剤、遅延放出剤又は徐放剤、パッチ剤、嗅剤(snuffs)、点鼻薬(nasal sprays)などの任意の種類の剤形を含み得る。企図される医薬組成物の物理的形態及び含有量は、医薬製剤分野の当業者によって製剤化することができる従来の調製であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,1995;British Pharmacopoeia 2000に記載されている十分に確立された原理及び組成、並びに類似の製剤化テキスト及びマニュアルに基づく。
【0063】
例えば、化合物又は組成物を経口投与する場合、それらは錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤又はシロップ剤として製剤化することができ、あるいは非経口投与のために、それらは注射剤(静脈内、筋肉内若しくは皮下)、点滴注入用製剤又は坐剤として製剤化することができる。眼粘膜経路による適用のために、それらは点眼剤又は眼軟膏剤として製剤化することができる。これらの製剤は従来の手段により調製することができ、所望の場合、活性成分を賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、可溶化剤、懸濁化助剤、乳化剤又はコーティング剤などの従来の添加剤と混合することができる。
【0064】
本発明の化合物を医薬としてヒト及び動物に投与する場合、該化合物はそれ自体で、又は例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせて0.1~99.5%(より好ましくは0.5~90%)の活性成分を含有する医薬組成物として投与することができる。
【0065】
使用すべき化合物の投与量及び投与頻度はまた、所望の反応を生じさせるために熟練した医師によって容易に決定することができる。
【0066】
投与量は、患者の症状、年齢及び体重、処置又は予防される障害の性質及び重症度、投与経路並びに薬物の形態に応じて変わるが、一般的には、0.0001mg~200mgの本発明の化合物の1日投与量が成人ヒト患者に好適な有効量であり得、これは単回投与又は分割投与で投与され得る。
【0067】
本方法によって処置される「患者」又は「対象」は、ヒト又は非ヒト対象のいずれかを意味することができる。
【0068】
処置方法に関する対象化合物の「有効量」とは、所望の投与計画の一部として適用されたときに、特定の疾患の処置又は予防のための臨床的に許容される基準に従った利益を提供する製剤中の治療薬の量を指す。
【0069】
本発明は次に、特定の組成物及び使用方法を記載する特定の、しかし非限定的な例を参照して、より詳細に記載される。しかしながら、特定の手順、組成物及び方法の詳細な説明は単に本発明を例示する目的のために含まれることを理解すべきである。それは、上記の本発明の概念の広範な説明に対する制限するものとして決して理解されるべきではない。
【実施例0070】
実施例1-化合物の合成
2-[4-ベンジル-1-(3-ヒドロキシベンジル)-1H-イミダゾール-5-イル]アセトアミド(VB0002)の調製に使用する合成経路を
図1に示す。1,1’-
カルボニルジイミダゾール(CDI)により促進されるBoc-フェニルアラニンとマロン酸メチルカリウム塩との間の縮合反応により、中間体4を得た。次いでBoc基を除去することにより、塩酸塩として化合物5を得た。塩5をイソチオシアネートBと反応させて、環状チオ尿素6を低収率で得た。環状チオ尿素6のイミダゾール7への変換を酸化条件下で達成した。イミダゾール7をアンモニア水で処理することにより、VB0002を得た。
【0071】
化合物Bは市販されておらず、
図2に示すように調製した。3-シアノフェノールを最初にtert-ブチルジメチルシリルエーテルとして保護し、続いてシアノ基を対応するアミンに還元し、これをチオホスゲンと反応させて、化合物Bを形成した。
【0072】
3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]-フェノール(VB0003)の調製に使用する合成経路を
図3に示す。最初に、イミダゾール8を、α-トシルベンジルイソシアニドC、ベンジルアミンD及び保護アルデヒドEの3成分結合反応によって好都合に組み立てた。続いて、チオアニソール-トリフルオロ酢酸(TFA)系を用いて両方の保護基を除去することにより、化合物9を得て、これを還元してVB0003を得た。
【0073】
化合物Cを
図4に示すように調製した。対応するナトリウム塩から調製した4-トルエンスルフィン酸をベンズアルデヒド及びホルムアミドとの3成分反応に関与させて中間体を形成し、該中間体を脱水すると化合物Cが得られた。
【0074】
化合物Dは市販されておらず、
図5に示すように調製した。これは、ジフェニルホスホリルアジドを用いて3-(ベンジルオキシ)ベンジルアルコールを対応するアジドに変換し、続いて還元してベンジルアミンDを得ることにより達成した。
【0075】
化合物Eは市販されておらず、
図6に示すように調製した。アセト酢酸エチルを最初にアセタールとして保護し、次いでエステル基を1級アルコールに還元し、続いてこれをSwern酸化に供して保護アルデヒドEを形成した。
【0076】
(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパンアミド(VB0005)の調製に使用する合成経路を
図7に示す。標準的なアミド結合形成方法において、Fmoc-L-グルタミン酸5-tert-ブチルエステルをアニリンと反応させて対応するアミドを形成し、これをトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)で脱保護して、化合物14を得た。遊離アミン14を、3-(ベンジルオキシ)フェニルボロン酸と銅媒介によるクロスカップリング反応を行い、N-アリール化生成物15を得た。続いて、この化合物をブロモアセチルブロミドと反応させて、化合物16を形成し、これをケト-ピペラジン17に変換した。この化合物の選択的還元により、ピペラジン18を得た。続いて、チオアニソール-TFA系を用いた二重脱保護工程により化合物19を得て、これをアンモニア水及び1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)を用いたアミノリシス反応に供して、VB0005を得た。
【0077】
4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-オキソ-5-フェニルペンタン酸メチル(4)。塩化マグネシウム(6.96g、73.0mmol)及びマロン酸メチルカリウム塩(17.66g、113.2mmol)の懸濁液を、窒素雰囲気下、THF(280mL)中で50℃で6時間撹拌した。別のフラスコ中のTHF(200mL)中のN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-フェニルアラニン(20.0g、75.4mmol)の溶液に、窒素下、0℃で、1,1’-カルボニルジイミダゾール(18.34g、113.1mmol)を何回かに分けて加え、反応混合物を周囲温度で2時間撹拌し、次いで冷却したマロン酸塩懸濁液に加えた。次いで反応混合物を室温で17時間撹拌した。大部分のTHFを真空中で除去した。残渣に飽和硫酸水素カリウム(300mL)及び酢酸エチル(300mL)を加えた。層を分離し、次いで水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム(2×300mL)及び食塩水(300mL)で洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮して、4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-オキソ-5-フェニルペンタン酸メチル(22.22g、92%)を淡い粘性油として得て、これを固化した。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.33-7.08(m、5H)、5.20-4.80(m、1H)、4.62-4.48(m、1H)、3.69(s、3H)、3.52(d、J=16.0Hz、1H)、3.45(d、J=16.0Hz、1H)、3.25-2.88(m、2H)、1.39(s、9H)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ201.8、167.3、155.2、136.1、129.2、128.6、126.9、80.1、60.4、52.3、46.5、36.7、28.2。EIMS:m/z321[M]+。C17H23NO5のHRMS計算値321.1576、実測値321.1555。
【0078】
4-アミノ-3-オキソ-5-フェニルペンタン酸メチル塩酸塩(5)。4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-オキソ-5-フェニルペンタン酸メチル(22.20g、69.2mmol)を塩化水素で飽和した酢酸エチルとともに2日間撹拌した。得られた固体を濾過により回収し、ジエチルエーテルで洗浄し、空気中で乾燥して、4-アミノ-3-オキソ-5-フェニルペンタン酸メチル塩酸塩(16.25g、92%)を不安定なクリーム色の固体として得た。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ8.58(brs、3H)、7.37-7.20(m、5H)、4.49(t、J=6.6Hz、1H)、3.83(d、J=17.1Hz、1H)、3.74(d、J=17.1Hz、1H)、3.62(s、3H)、3.22(dd、J=14.4、6.4Hz、1H)、3.11(dd、J=14.4、7.0Hz、1H)。
【0079】
2-{5-ベンジル-3-[3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル]-2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル}酢酸メチル(6)。トルエン(100mL)中の4-アミノ-3-オキソ-5-フェニルペンタン酸メチル塩酸塩(7.15g、27.9mmol)、3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルイソチオシアネート(9.34g、33.5mmol)、トリエチルアミン(5.8mL、41.9mmol)及び4-トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.70g、2.8mmol)の混合物を、窒素下で5時間穏やかに還流しながら加熱した。反応混合物を室温に冷却し、次いで水(150mL)と酢酸エチル(150mL)とに分配した。層を分離し、水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。合わせた有機層を水(2×150mL)で洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮して、黄褐色(tan)の油状物を得た。粗物質をジエチルエーテルに溶解し、種晶添加し(seeded)、20時間結晶化させた。2-{5-ベンジル-3-[3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル)]-2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル}酢酸メチル(2.14g、13%)をクリーム色の針状物として濾過により回収した;融点154.0~156.0℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ9.68(brs、1H)、7.34-7.22(m、2H)、7.19-7.14(m、3H)、6.83-6.71(m、3H)、5.32(s、2H)、3.79(s、2H)、3.61(s、3H)、3.33(s、2H)、0.96(s、9H)、0.18(s、6H)。13C NMR(125MHz、CDCl3)δ169.1、161.5、156.1、137.4、136.3、129.9、128.9、128.6、127.2、125.8、119.8、119.5、119.4、118.6、52.4、47.9、30.1、29.6、25.7、18.2、-4.4。EIMS:m/z482[M]+。C26H34N2O3SSiのHRMS計算値482.2054、実測値482.2039。
【0080】
2-{4-ベンジル-1-[3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル
]-1H-イミダゾール-5-イル}酢酸メチル(7)。酢酸(3.4mL)中の2-{5-ベンジル-3-[3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル]-2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル}酢酸メチル(1.00g、2.1mmol)に、窒素下、30%過酸化水素(941μL)をゆっくり加えた。10分後、反応溶液を氷浴中で冷却し、次いで10%炭酸ナトリウム(20mL)でクエンチした。pHを1M水酸化ナトリウムで9~10に調整し、次いで酢酸エチル(3×20mL)で抽出し、乾燥し、真空中で濃縮して、2-{4-ベンジル-1-[3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル]-1H-イミダゾール-5-イル}酢酸メチル(0.86g、91%)を黄褐色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.50(s、1H)、7.27-7.10(m、6H)、6.80-6.74(m、1H)、6.69-6.60(m、1H)、6.50-6.47(m、1H)、5.06(s、2H)、3.93(s、2H)、3.55(s、3H)、3.38(s、2H)、0.95(s、9H)、0.14(s、6H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ170.0、156.3、139.9、139.6、137.3、136.2、130.1、128.6、128.4、126.0、120.4、119.8、118.4、117.4、52.2、48.9、33.5、29.1、25.6、18.0、-4.5。EIMS:m/z450[M]+。C26H34N2O3SiのHRMS計算値450.2333、実測値450.2323。
【0081】
2-[4-ベンジル-1-(3-ヒドロキシベンジル)-1H-イミダゾール-5-イル]アセトアミド(VB0002)。メタノール(2mL)中の2-{4-ベンジル-1-[3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジル]-1H-イミダゾール-5-イル}酢酸メチル(0.86g、1.9mmol)の溶液に、25%アンモニア水溶液を加えた。フラスコに栓をし、反応混合物を室温で3日間撹拌した。さらにメタノール及びジエチルエーテルを加え、反応混合物を2時間撹拌した。微細な沈殿物を濾過により回収し、ジエチルエーテルでよく洗浄し、次いで空気乾燥して、2-[4-ベンジル-1-(3-ヒドロキシベンジル)-1H-イミダゾール-5-イル]アセトアミド(0.193g、32%)を無色の固体として得た;融点249℃(分解)。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)δ9.44(s、1H)、7.52(s、1H)、7.37(brs、1H)、7.24-7.07(m、5H)、6.95(brs、1H)、6.66(m、1H)、6.53-6.49(m、1H)、6.45-6.43(m、1H)、5.10(s、2H)、3.76(s、2H)、3.30(s、2H)。13C NMR(50MHz、DMSO-d6)δ170.8、157.7、141.1、138.9、137.9、136.9、129.7、128.5、127.9、125.5、112.0、117.3、114.5、113.5、47.7、32.8、29.6。EIMS:m/z321[M]+。C19H19N3O2のHRMS計算値321.1477、実測値321.1470。
【0082】
3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾニトリル。DMF(100mL)中の3-シアノフェノール(10.34g、86.8mmol)及びイミダゾール(14.77g、217mmol)の攪拌溶液に、窒素下、0℃で、塩化tert-ブチルジメチルシリル(13.74g、91mmol)を5分間にわたり何回かに分けて加えた。反応物を周囲温度に温め、さらに2時間撹拌した。反応混合物を分液漏斗に移し、ジエチルエーテル(150mL)と水(150mL)との間で分配した。層を分離し、水層をジエチルエーテルでさらに2回抽出した。合わせた有機抽出物を水(2×100mL)で洗浄し、乾燥し、濃縮して、3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾニトリル(20.38g、定量的)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.35-7.29(m、1H)、7.27-7.22(m、1H)、7.11-7.04(m、2H)、0.98(s、9H)、0.21(s、6H)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ156.0、130.4、125.0、124.9、123.3、118.5、113.2、25.5、18.1、-4.6。EIMS:m/z233[M]+。C13H19NOSiのHRMS計算値233.1236、実測値233.1227。
【0083】
3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルアミン。水素化アルミニウムリチウム(4.97g、131mmol)及びジエチルエーテル(400mL)の混合物を1時間加熱還流し、次いで周囲温度に冷却した。穏やかな還流が維持されるように、ジエチルエーテル(50mL)中の3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾニトリル(15.25g、65.5mmol)の溶液を滴下して加えた。次いで反応物を3時間加熱還流し、次いで氷浴中で冷却した。水(5mL)を注意深く滴下して加え、続いて15%水酸化ナトリウム溶液(5mL)、次いで水(15mL)を滴下して加えた。固体を濾別し、ジエチルエーテルで十分に洗浄した。濾液を水で洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮して、淡黄色の油状物(14.68g、95%)を得た。粗物質をセライトに予め吸着させ(pre-absorbed)、次いでPE中の酢酸エチル(5%~100%酢酸エチル)の勾配で溶出するDCVCによりクロマトグラフィー処理して、3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルアミン(11.85g、77%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.13(t、J=7.7Hz、1H)、6.84(d、J=7.7Hz、1H)、6.79-6-75(m、1H)、6.68(dd、J=8.0、2.4Hz、1H)、3.75(s、2H)、0.97(s、9H)、0.18(s、6H)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ155.5、144.7、129.1、119.7、118.5、118.0、46.0、25.4、17.9、-4.7。EIMS:m/z237[M]+。C13H23NOSiのHRMS計算値237.1543、実測値237.1545。
【0084】
3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルイソチオシアネート(B)。3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルアミン(13.0g、54.8mmol)、炭酸カルシウム(5.65g、56.4mmol)、チオホスゲン(8.5mL、111mmol)、水(41mL)及びクロロホルム(356mL)の混合物を、栓をしたフラスコ中で、室温で20時間激しく撹拌した。反応混合物を水(2×250mL)で洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮して、3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)ベンジルイソチオシアネート(14.29g、93%)を淡黄褐色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.27-7.21(m、1H)、6.92-6.88(m、1H)、6.83-6.79(m、2H)、4.65(s、2H)、1.00(s、9H)、0.22(s、6H)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ156.1、135.7、132.4、129.9、120.0、119.6、118.5、48.4、25.6、18.2、-4.4。EIMS:m/z279[M]+。C14H21NOSiのHRMS計算値279.1108、実測値279.1105。
【0085】
1-(3-ベンジルオキシベンジル)-5-(2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル-メチル)-4-フェニル-1H-イミダゾール(8)。乾燥メタノール(60mL)中の3,3-エチレンジオキシ-1-ブタナール(1.37g、10.5mmol)の溶液に、3-ベンジルオキシベンジルアミン(2.10g、10.5mmol)を加え、透明な溶液を25℃で90分間撹拌した。α-トシルベンジルイソシアニド(2.86g、10.5mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(2.93mL、21.1mmol)を加え、反応混合物を65℃で4時間攪拌し加熱した。次いで溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解し、水(50mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し(20~80%酢酸エチル/PEを使用する勾配溶出)、1-(3-ベンジルオキシベンジル)-5-(2-メチル-[1,3]-ジオキサラン-2-イル-メチル)-4-フェニル-1H-イミダゾール(2.05g、44%)を粘着性のある淡オレンジ色の油状物として得た。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ7.89(m、2H)7.58(s、1H)、7.21-7.7.44(m、9H)、6.90(m、1H)、6.65(m、2H)、5.31(s、2H)、5.01(s、2H)、3.83(m、2H)、3.59(m、2H)、3.02(s、2H),1.33(s、3H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ159.2、138.5、137.6、136.6、135.3、130.0、128.6、128.3、128.0、127.4、127.2、126.5、119.0、114.0、113.1、109.9、69.9、65.0、48.8、33.9、29.7、25.5。ESIMS:m/z441[M+H]+。C28H28N2O3のHRMS計算値440.2094、実測値440.2075。
【0086】
1-[3-(3-ヒドロキシベンジル)-5-フェニル-3H-イミダゾール-4-イル]-プロパン-2-オン(9)。TFA(5mL)中の1-(3-ベンジルオキシベンジル)-5-(2-メチル-[1,3]-ジオキソラン-2-イル-メチル)-4-フェニル-1H-イミダゾール(1.12g、2.54mmol)の撹拌溶液に、チオアニソール(598μL、5.09mmol)を加え、反応物を25℃で15時間撹拌した。次いで反応混合物を0℃に冷却し、水(30mL)をゆっくり加え、続いて酢酸エチル(50mL)を加えた。混合物を分液漏斗に移し、水層を除去した。有機相を水(2×50mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。次いで残渣をシリカゲルの小プラグ(90%酢酸エチル/PE)に通し、溶媒を減圧下で除去し、クロロホルム/PEから再結晶化して、1-[3-(3-ヒドロキシベンジル)-5-フェニル-3H-イミダゾール-4-イル]-プロパン-2-オン(419mg、54%)を白色の固体として得た;融点173.7~175.5℃。1H NMR(200MHz、CD3CN)δ8.52(s、1H)、7.48(s、5H)、7.25(t、1H、J=7.8Hz)、6.79(m、3H)、5.16(s、2H)、3.94(s、2H)、2.14(s、3H)。13C NMR(50MHz、CD3OD)δ204.6、159.6、136.7、136.0、134.5、131.7、131.1、130.5、129.2、128.3、126.0、120.0、117.1、116.0、52.1、38.7、29.5。ESIMS:m/z307[M+H]+。C19H18N2O2のHRMS計算値306.1363、実測値306.1365。
【0087】
3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]-フェノール(VB0003)。乾燥メタノール(50mL)中の1-[3-(3-ヒドロキシベンジル)-5-フェニル-3H-イミダゾール-4-イル]プロパン-2-オン(419mg、1.37mmol)の氷冷溶液に水素化ホウ素ナトリウム(155mg、4.10mmol)を加え、混合物を25℃で15時間撹拌した。次いでアセトン(20mL)を加え、反応混合物をさらに2時間撹拌した。次いで溶媒を真空中で除去し、残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解し、水(50mL)で洗浄し、有機相を乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた固体をメタノールから再結晶化し、回収し、冷アセトニトリル(4×)で洗浄して、3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]-フェノール(210mg、50%)を白色の固体として得た;融点193~194℃。1H NMR(200MHz、CD3OD)δ7.72(s、1H)、7.62(m、2H)、7.39(m、2H)、7.28(d、1H、J=7.4Hz)、7.18(m、1H)、6.72(m、1H)、6.65(d、2H、J=7.6Hz)、6.54(s、1H)、5.34(d、1H、J=16.0Hz)、5.24(d、1H、J=16.0Hz)、3.90(六重項、1H)、2.82(d、2H、J=6.4Hz)、1.05(d、3H、J=6.2Hz)。13C NMR(50MHz、CD3OD)δ159.3、140.2、139.8、138.7、136.4、131.1、129.5、128.7、127.9、127.4、118.9、115.9、114.6、68.4、34.1、23.3。ESIMS:m/z309[M+H]+。C19H20N2O2のHRMS計算値308.1519、実測値308.1517。HPLC純度=98%。
【0088】
4-トルエンスルフィン酸。500mLの三角フラスコに4-トルエンスルフィン酸ナトリウム塩四水和物(26.82g、0.11mol)及び水(134mL)を入れ、すべての固体が溶解するまで30分間撹拌した。tert-ブチルメチルエーテル(134mL)を攪拌溶液に加え、続いて32%HCl(12.2mL、0.11mol)を5分間にわたりゆっくり加えた。反応物を30分間撹拌し、分液漏斗に移し、有機相を分離し、トルエン(134mL)で希釈した。溶媒をロータリーエバポレーターで約50mLに濃縮した後、ヘプタン(40mL)を加えて固体を得て、これをブフナー漏斗を用いて回収した。続いてヘプタン(50mL)で洗浄し、真空下で乾燥して、4-トルエンスルフィン酸(15.48g、93%)を白色の固体として得た。
【0089】
N-(α-トシルベンジル)ホルムアミド。還流コンデンサーを備えた500mL三口フラスコに、アセトニトリル(35mL)、トルエン(35mL)、ベンズアルデヒド(6.74mL、66mmol)、ホルムアミド(6.57mL、166mmol)及びTMSCl(9.18mL、72mmol)を入れた。反応混合物を50℃(内部温度)で4時間加熱した後、4-トルエンスルフィン酸(15.48g、99mmol)を撹拌しながら加えた。1時間以内に固体が形成し、反応物をテフロン撹拌棒で30分毎に4時間撹拌した。次いで反応物を室温に冷却し、tert-ブチルメチルエーテル(35mL)を加え、撹拌を5分間続けた後、水(170mL)を加えた。固体をブフナー漏斗に回収し、tert-ブチルメチルエーテル(2×50mL)で洗浄し、真空中で乾燥して、N-(α-トシルベンジル)ホルムアミド(16.73g、82%)を得た。1H NMR(200MHz、DMSO-d6)δ9.77(d、1H、J=10.6Hz)7.96(s、1H)、7.71(d、2H、J=8.2Hz)、7.54(m、2H)、7.42(m、5H)、6.38(d、1H、J=10.6Hz)、2.41(s、3H)。
【0090】
α-トシルベンジルイソシアニド(C)。温度計を備えた500mL三口フラスコに、N-(α-トシルベンジル)ホルムアミド(16.73g、57.8mmol)及び乾燥THF(120mL)を入れた。オキシ塩化リン(10.78mL、116.0mmol)をシリンジにより加え、得られた溶液を25℃で5分間撹拌した。溶液を氷/塩浴を用いて約0℃に冷却した後、内部温度を10℃未満に保ちながら、トリエチルアミン(48.4mL、347.0mmol)を滴下漏斗によって45分間にわたり加えた。トリエチルアミンの添加が完了した後、反応物を5~10℃(氷浴)で45分間撹拌した。酢酸エチル(85mL)、次いで水(85mL)を反応物に加え、混合物を5分間撹拌し、混合物を分液漏斗に移した後、水層を除去した。有機相を水(2×85mL)、飽和重炭酸ナトリウム溶液(85mL)、食塩水(50mL)で洗浄し、スラリーが残るまで減圧下で濃縮した。残渣をn-プロパノール(85mL)で希釈し、元の体積の半分に濃縮した。沈殿物を15分間0℃に冷却し、ブフナー漏斗に回収し、n-プロパノール(2×50mL)で洗浄し、真空中で乾燥した。これにより、α-トシルベンジルイソシアニド(7.47g、48%)をベージュ色の固体として得た。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ7.60(d、2H、J=8.2Hz)7.30-7.52(m、7H)、5.61(s、1H)、2.47(s、3H)。
【0091】
3-(ベンジルオキシ)ベンジルアジド。乾燥トルエン(40mL)中の3-ベンジルオキシベンジルアルコール(5.0g、23.3mmol)及びジフェニルホスホリルアジド(6.03mL、28.0mmol)の攪拌溶液に、アルゴン雰囲気下、0℃で1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(3.83mL、25.6mmol)を加えた。得られた混合物を周囲温度に温め、18時間撹拌した。反応混合物を水(2×)及び5%HCl溶液(1×)で洗浄し、次いで乾燥し、減圧下で濃縮した。粗物質を4/96酢酸エチル/ペンタンで溶出するシリカの短いカラムを通して濾過して、3-(ベンジルオキシ)ベンジルアジド(5.28g、95%)を無色透明の油状物として得た。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ7.48-7.22(m、6H);6.99-6.86(m、3H);5.07(s、2H);4.30(s、2H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ159.4、137.2、137.0、130.1、128.8、128.3、127.7、120.9、114.9、114.9、70.3、54.9。UN=N=N/cm-12101。
【0092】
3-(ベンジルオキシ)ベンジルアミン(D)。3-(ベンジルオキシ)ベンジルアジド(1.0g、4.2mmol)を無水THF(20mL)に溶解し、溶液を-70℃に冷却した。THF(6mL)中の固体水素化アルミニウムリチウム(238mg、6.3mmol)をアルゴン雰囲気下で滴下により加えた。添加後、反応物を0℃に温め、1時間撹拌した。反応物を水で注意深くクエンチし、次いで1.0Mロッシェル塩を加え、ジエチルエーテル(3×)で抽出した。合わせた有機抽出物を食塩水(1×)で洗浄し、次いで乾燥し、濃縮して、3-(ベンジルオキシ)ベンジルアミン(787mg、88%)を透明な淡黄色の油状物として得た。さらなる精製は必要ではなかった。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ7.48-7.17(m、6H);6.98-6.79(m、3H);5.06(s、2H);3.83(s、2H)、1.43(brs、2H)。
【0093】
3,3-エチレンジオキシブタン酸エチル。ベンゼン(125mL)中のアセト酢酸エチル(9.72mL、76.84mmol)、エチレングリコール(7.50mL、134.50mmol)及びp-トルエンスルホン酸(15mg、0.08mmol)の混合物を、ディーンスターク(Dean-Stark)条件下で24時間加熱還流した。反応混合物を冷却し、次いで5%NaHCO3溶液(1×)及び水(2×)で洗浄し、乾燥し、濃縮して、3,3-エチレンジオキシ-ブタン酸エチル(11.67g、87%)を無色透明の油として得た。さらなる精製は必要ではなかった。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ4.16(q、2H、J=7.2Hz);3.97(s、4H);2.66(s、2H);1.50(s、3H);1.26(t、3H、J=7.2Hz)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ169.7、107.9、65.0、60.8、44.5、24.7、14.4。UC=O/cm-11741。
【0094】
3,3-エチレンジオキシ-1-ブタノール。無水THF(10mL)中の3,3-エチレンジオキシブタン酸エチル(5.0g、28.70mmol)の溶液を、THF(50mL)中の水素化リチウムアルミニウム(1.10g、28.70mmol)の懸濁液にアルゴン雰囲気下、-10℃で滴下して加えた。反応物を0℃で1.5時間撹拌し、次いでロッシェル塩の1.0M溶液(75mL)でクエンチした。混合物をジエチルエーテル(3×)で抽出し、次いで合わせた有機抽出物を食塩水(1×)で洗浄し、次いで乾燥し、濃縮して、3,3-エチレンジオキシ-1-ブタノール(3.43g、90%)を透明な淡黄色の液体として得た。さらなる精製は必要ではなかった。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ3.99(s、4H)、3.76(q、2H、J=5.6Hz)、2.78(t、1H、J=5.6Hz)、1.95(m、2H)、1.36(s、3H)。
【0095】
3,3-エチレンジオキシ-1-ブタナール(E)。滴下漏斗に、乾燥DMSO(4.42mL、62.3mmol)及び乾燥ジクロロメタン(25mL)を加えた。この溶液を、乾燥ジクロロメタン(75mL)中の塩化オキサリル(2.64mL、31.14mmol)の撹拌溶液に-78℃で10分間にわたり滴下して加えた。10分後、乾燥ジクロロメタン(25mL)中の2-(2-メチル)-1,3-ジオキソラン-2-イル)エタノール(3.43g、26.0mmol)の溶液を10分間にわたり(滴下漏斗を用いて)滴下して加えた。得られた溶液を-78℃で15分間撹拌し、次いでトリエチルアミン(14.47mL、103.8mmol)をシリンジにより滴下して加えた。冷却浴を取り除き、反応混合物をさらに30分間撹拌した。次いで水(70mL)を加え、さらに10分間撹拌を続けた。有機相を分離し、水相をジクロロメタン(70mL)で洗浄した。合わせた有機物を水(4×70mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。残渣をシリカゲルの小プラグ(ジクロロメタン)を通して濾過することにより精製して、2-(2-メチル-[1,3]-ジオキソラン-2-イル)アセトアルデヒド(1.40g、42%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(200MHz、CDCl3)δ9.75(t、1H、J=2.8Hz)、4.04-3.98(m、4H)、2.71(d、2H、J=2.8Hz)、1.43(s、3H)。
【0096】
(S)-tert-ブチル-(4-アミノ-5-オキソ-5-フェニルアミノ)ペンタノエート(14)。DMF(150mL)中の(S)-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-5-tert-ブトキシ-5-オキソ-ペンタン酸(25.3g、57mmol)の攪拌溶液に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド(12.08g、63mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(8.51g、63mmol)及びアニリン(5.2mL、57mmol)を加え、反応混合物を周囲温度で2日間撹拌した。水(300mL)を加え、続いて酢酸エチル(300mL)を加えた。混合物を分液漏斗に移し、層を分離した。水層を酢酸エチルでさらに2回抽出した。合わせた有機層を水(2×300mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去して、粗製の(S-tert-ブチル-4-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート)を黄色の油状物として得た。これを精製することなく次の工程に使用した。ジクロロメタン(300mL)中の粗製の(S)-tert-ブチル-4-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエートの撹拌溶液に、トリス(2-アミノエチル)アミン(40mL、267mmol)を加え、反応混合物を周囲温度で1~2時間撹拌した。反応混合物をpH5.5のリン酸緩衝液(2×200mL)、次いで水(200mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。残渣をジクロロメタンに溶解し、不溶性の副生成物を濾過により除去した。溶液をセライトに予め吸着させ、PE中のクロロホルムの勾配、次いでクロロホルム中の酢酸エチルの勾配で溶出するクロマトグラフィー処理(DCVC)を行った。同様の画分を合わせて、(S)-tert-ブチル-(4-アミノ-5-オキソ-5-フェニルアミノ)ペンタノエート(10.85g、68%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ9.41(brs、1H)、7.63-7.55(m、2H)、7.37-7.28(m、2H)、7.12-7.07(m、1H)、3.51(dd、J=7.6、5.0Hz、1H)、2.49-2.34(m、2H)、2.26-2.15(m、1H)、1.96-1.84(m、1H)、1.66(brs、2H)、1.45(s、9H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ172.8、172.6、137.7、129.0、124.1、119.4、80.8、55.2、32.2、30.2、28.1。EIMS:m/z278[M]+。C15H22N2O3のHRMS計算値278.1625、実測値278.1612。
【0097】
(S)-tert-ブチル4-[(3-ベンジルオキシ)フェニルアミノ]-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート(15)。トルエン(150mL)中の3-(ベンジルオキシ)フェニルボロン酸(7.05g、30.0mmol)の溶液を窒素下で2.5時間共沸的に(azeotropically)還流して、2,4,6-トリス(3-ベンジルオキシ)フェニル)-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリボリナンを形成した。トルエンを真空中で除去し、残渣に周囲温度でジクロロメタン(100mL)、ピリジン(2.5mL、30.9mmol)及び無水酢酸銅(II)(4.64g、23.2mmol)中の(S)-t-ブチル-(4-アミノ-5-オキソ-5-フェニルアミノ)ペンタノエート(4.30g、15.5mmol)の溶液を加えた。反応混合物を空気に晒し、周囲温度で2日間撹拌した。次いで反応混合物を、シリカゲルを充填した短いカラムに注ぎ、セライト層を上に載せた。粗生成物をクロロホルムで溶出し、粗生成物を含有する画分を合わせた。粗物質をセライトに予め吸着させ、次いでPE中のクロロホルム(60~100%クロロホルム)の勾配で溶出するシリカゲルDCVCにより精製して、(S)-tert-ブチル4-[(3-ベンジルオキシ)フェニルアミノ]-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート(3.35g、50%)を淡黄褐色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.69(brs、1H)、7.57-7.48(m、2H)、7.46-7.23(m、7H)、7.15-7.06(m、2H)、6.49-6.42(m、1H)、6.33-6.24(m、2H)、5.06-5.02(m、1H)、5.00(s、2H)、3.80-3.72(m、1H)、2.67-2.54(m、1H)、2.49-2.37(m、1H)、2.36-2.24(m、1H)、2.21-2.09(m、1H)、1.46(s、9H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ173.6、171.3、160.0、148.2、137.3、136.9、130.2、128.9、128.5、127.8、127.4、124.4、119.9、106.8、105.5、100.8、81.3、69.8、61.1、32.7、28.0、27.8。EIMS:m/z460[M]+。C28H32N2O4のHRMS計算値460.2357、実測値460.2341。
【0098】
(S)-tert-ブチル4-[N-(3-ベンジルオキシ)フェニル-2-ブロモアセトアミド]-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート(16)。ジクロロメタン(80mL)中の(S)-tert-ブチル4-(3-ベンジルオキシフェニルアミノ)-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート(4.05g、8.80mmol)の攪拌溶液に、窒素雰囲気下、-30℃で、トリエチルアミン(1.22mL、8.80mmol)、N,N-ジメチルアミノピリジン(20mg)及びブロモアセチルブロミド(941μL、10.80mmol)を順次加えた。反応混合物を周囲温度まで温め、次いで30分間撹拌した。反応混合物を分液漏斗に移し、10%クエン酸(50mL)及び食塩水(2×50mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。残渣をセライトに予め吸着し、次いでシリカゲルDCVCにより精製して、(S)-tert-ブチル4-[N-(3-ベンジルオキシ)フェニル-2-ブロモアセトアミド]-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート(4.28g、83%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ8.61(brs、1H)、7.63-7.53(m、2H)、7.49-7.21(m、8H)、7.17-7.09(m、1H)、7.08-7.02(1H)、6.89-6.84(m、2H)、5.21(dd、J=8.8、6.2Hz、1H)、5.04(brs、2H)、3.64(dd、J=19.7、11.2Hz、2H)、2.44-2.19(m、2H)、2.05-1.91(m、1H)、1.80-1.67(m、1H)、1.43(s、9H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ171.8、168.2、167.8、159.4、138.3、137.8、136.1、130.4、128.9、128.5、128.1、127.5、124.3、121.4、119.9、116.6、115.5、80.7、70.2、59.4、31.8、28.0、27.4、23.9。EIMS:m/z581[M]+。C30H33BrN2O5のHRMS計算値580.1567、実測値580.1547。
【0099】
(S)-tert-ブチル3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-3,6-ジオキソ-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパノエート(17)。窒素下、氷浴中で冷却したDMF(70mL)中の(S)-tert-ブチル4-[N-(3-ベンジルオキシ)フェニル-2-ブロモアセトアミド]-5-オキソ-5-(フェニルアミノ)ペンタノエート(4.15g、7.15mmol)の撹拌溶液に、炭酸セシウム(2.33g、7.15mmol)を加えた。反応混合物を周囲温度まで温め、4時間撹拌した。混合物を氷浴中で冷却し、水(100mL)を加え、続いて酢酸エチル(100mL)を加えた。混合物を分液漏斗に移し、層を分離した。水相を酢酸エチルでさらに2回抽出した。合わせた有機層を10%クエン酸(100mL)、飽和重炭酸ナトリウム(100mL)及び食塩水(100mL)で洗浄し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。残渣をセライトに予め吸着させ、次いでシリカゲルDCVCにより精製した。同様の画分を合わせ、次いでジエチルエーテルとともに粉砕して、(S)-tert-ブチル3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-3,6-ジオキソ-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパノエート(4.18g、59%)を無色の固体として得た;融点141.6~143.6℃。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.48-7.29(m、11H)、7.03-6.95(m、3H)、5.08(s、2H)、4.55(dd、J=17.6、17.0Hz、2H)、4.45(dd、J=9.1、5.2Hz、1H)、2.52-2.14(m、4H)、1.37(s、9H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ171.4、165.7、163.8、159.6、139.9、139.8、136.5、130.4、129.3、128.6、128.1、127.6、127.4、125.1、119.3、114.7、113.7、81.0、70.25、63.9、52.9、30.6、28.0、26.9。EIMS:m/z500[M]+。C31H32N2O5のHRMS計算値500.2306、実測値500.2294。
【0100】
(S)-tert-ブチル3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパノエート(18)。無水THF(40mL)中の(S)-tert-ブチル3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-3,6-ジオキソ-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパノエート(2.97g、5.95mmol)の撹拌溶液に、窒素下、ボラン-メチルスルフィド錯体(7.14mL、14.30mmol、THF中2M)を加え、反応物を周囲温度で20時間撹拌した。次いで反応混合物を氷浴中で冷却し、THF(8mL)中のメタノール(2mL)溶液を滴下して加えた。溶媒を真空中で除去してから直ぐに、さらにメタノール(10mL)を加えた。溶媒を真空中で除去し、この手順をもう一度繰り返した。残渣をセライトに予め吸着させ、次いでPE中の酢酸エチル(2%~7%酢酸エチル)の勾配で溶出するシリカゲル(DCVC)によって精製して、(S)-tert-ブチル3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパノエート(2.08g、74%)を淡黄色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.47-7.42(m、2H)、7.42-7.35(m、2H)、7.35-7.25(m、3H)、7.19-7.13(m、1H)、6.97-6.92(m、2H)、6.91-6.85(m、1H)、6.57-6.52(m、2H)、6.48-6.42(m、1H)、5.06(s、2H)、3.97-3.88(m、1H)、3.61-3.50(m、2H)、3.50-3.41(m、1H)、3.38-3.27(m、1H)、3.13-3.04(m、1H)、3.03-2.29(m、1H)、2.33-2.14(m、2H)、2.12-1.90(m、2H)、1.41(s、9H)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ172.6、160.1、151.7、151.2、137.3、13.0、129.2、128.5、127.9、127.6、119.9、116.4、108.8、104.5、103.2、80.4、70.0、55.2、51.8、48.8、43.1、32.7、28.1、22.8。EIMS:m/z472[M]+。C30H36N2O3のHRMS計算値472.2720、実測値472.2710。
【0101】
(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパン酸(19)。トリフルオロ酢酸(3.5mL)中の(S)-tert-ブチル3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパノエート(0.82g、1.75mmol)の攪拌溶液にチオアニソール(620μL、5.22mmol)を加え、反応物を周囲温度で3日間撹拌した。次いで反応混合物を0℃に冷却し、水(10mL)をゆっくり加え、続いてEtOAc(15mL)を加えた。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、水相をEtOAcでさらに2回抽出し、乾燥し、溶媒を真空中で除去した。暗黄褐色油状物をセライトに予め吸着させ、次いでクロロホルム中のメタノール(0~5%MeOH)の勾配で溶出するクロマトグラフィー処理(DCVC)を行って、(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパン酸(418mg、70%)を黄褐色の油状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.37-7.31(m、2H)、7.30-7.24(m、2H)、7.17(brs、1H)、7.08-7.00(m、3H)、6.92-6.79(m、2H)、3.99-3.89(m、1H)、3.70-3.37(m、6H)、2.42-2.18(m、2H)、2.02-1.88(m、2H)。13C NMR(50MHz、MeOH-d4)δ175.8、160.6、151.0、144.0、132.6、130.6、123.0、118.5、116.7、112.7、109.3、63.7、55.6、53.7、49.2、30.8、25.0。EIMS:m/z326[M]+。C19H22N2O3のHRMS計算値326.1625、実測値326.1620。
【0102】
(S)-3-[1-(3-ベンジルオキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパン酸(230mg、30%)もこの反応から得て、淡黄褐色の泡状物として単離した。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ10.59(brs、1H)、7.45-7.25(m、8H)、7.17-6.90(m、6H)、5.07(s、2H)、3.99-3.88(m、1H)、3.76-3.41(m、6H)、2.33-2.15(m、2H)。13C NMR(100MHz、CDCl3)δ176.2 160.1、148.9、144.3、136.2、131.1、129.6、128.7、128.2、127.6、122.8、117.8、113.5、112.6、107.5、70.3、60.5、52.7、52.4、48.9、29.9、23.3。EIMS:m/z416[M]+。C26H28N2O3のHRMS計算値416.2094、実測値416.2091。
【0103】
(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパンアミド(VB0005)。THF(20mL)中の(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパン酸(0.76g、2.32mmol)の撹拌溶液に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(0.94g、5.80mmol)を加え、反応物を2時間撹拌した。アンモニア水溶液(25%)(20mL)を加え、反応物をさらに3時間撹拌した。反応混合物を分液漏斗に移し、層を分離した。次いで水相を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。合わせた有機層を食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮した。粗残渣をPE中のEtOAc(50~100%酢酸エチル)の勾配で溶出する短いフロルジル(florsil)カラムに通した。同様の画分を合わせ、ジクロロメタン(20mL)に溶解し、水(3×20mL)で洗浄した。固体が湿ジクロロメタンから晶出した。40~60℃の石油エーテルを加え、混合物を1時間放置した。得られた固体を濾過により回収して、ラセミ体生成物(100mg、13%)を得た。濾液を濃縮乾固して、(S)-3-[1-(3-ヒドロキシ)フェニル-4-フェニルピペラジン-2-イル]プロパンアミド(185mg、21%)を淡黄褐色の泡状物として得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ7.31-7.24(m、2H)、7.13-7.06(m、1H)、6.95-6.84(m、4H)、6.47-6.41(m、2H)、6.35-6.30(m、1H)、5.74(brs、1H)、5.53(brs、1H)、4.00-3.91(m、1H)、3.60-3.41(m、3H)、3.35-3.23(m、1H)、3.10-3.00(m、1H)、3.00-2.90(m、2H)、2.32-1.96(m、4H)。13C NMR(50MHz、CDCl3)δ176.0、157.3、151.6、151.2、130.4、129.2、119.9、116.4、107.5、106.3、102.9、54.7、51.7、48.8、42.9、32.7、23.4。EIMS:m/z325[M]+。C19H23N3O2のHRMS計算値325.1790、実測値325.1776。[α]D=-13.5°(CHCl3、c=0.005)。
【0104】
3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]フェノール塩酸塩(20)。3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]フェノール(14mg、0.05mmol)、濃塩酸(3.6μL、0.05mmol)及びメタノール(1mL)の溶液を周囲温度で20分間撹拌した。次いで溶媒を真空中で除去し、次いで残渣をジエチルエーテル(2mL)に溶解し、溶媒を減圧下で除去し、この手順を繰り返した。得られた白色泡状物を35℃、真空中で乾燥し、水(10mL)に溶解し、ガラス濾紙のプラグを通して濾過し、凍結乾燥して、3-[5-(2-ヒドロキシプロピル)-4-フェニル-イミダゾール-1-イルメチル]フェノール塩酸塩を綿毛状の白色固体として得た;融点84~88℃。1H NMR(400MHz、CD3OD)δ8.84(s、1H)、7.63(m、2H)、7.53(m、3H)、7.25(m、1H)、6.81(m、1H)、6.77(d、1H、J=8.0Hz)、6.70(s、1H)、5.53(d、1H、J=16.0Hz)、5.48(d、1H、J=16.0Hz)、3.92(六重項、1H)、2.85(d、2H、J=8.0Hz)、1.12(d、3H、J=8.0Hz)。13C NMR(125MHz、CD3OD)δ159.8、136.9、136.3、133.3、131.8、131.0、130.5、130.4、129.7、129.0、119.8、117.0、115.7、67.9、52.3、33.3、23.8.
【0105】
本発明の他の化合物を製造するための合成スキーム、方法及び試薬は、上記の情報、市販の試薬、並びに有機化学及び化合物合成分野における日常的な知識に基づいて受け手の当業者に容易に明らかとなろう。
【0106】
実施例2-インビボ実験
2.2%塩分食(Glenn Forrest Stockfeeders、西オーストラリア州(WA))を与えた14週齢の自然発症高血圧ラット(SHR;オーストラリア動物資源センター(Australian Animal Resources Centre)、西オーストラリア州)を以下の処置群に無作為に分けた:14週目の対照、又は4週間のVB0002注入(20%DMSO中20pmol/kg/分)若しくはビヒクル対照注入(20%DMSO)。VB0002及びビヒクル対照の注入は、14週目に全身麻酔下(イソフルラン3%、酸素中)で挿入されたAlzet浸透圧ミニポンプにより行った。
【0107】
2.2%塩分食を与えた14週齢の自然発症高血圧ラットをまた、以下の処置群に無作為に分けた:14週目の対照、又は4週間のVB0003投与(5%エタノール中10、100又は500pmol/kg/分)、VB0005投与(5%エタノール中100pmol/kg/分)若しくは飲料溶液投与(5%エタノール)。
【0108】
酸素中で送達されるイソフルラン(3%)を使用して14週目の対照群を麻酔し、次いで血液を採取し、線維症の定量化のために心臓及び腎臓を採取した。残りの群について体重測定し、さらに4週間、週2回、テールカフプレチスモグラフィー(ADI Instruments)によって血圧を測定した。4週間の処置後、14週目の対照群のようにラットを麻酔して試料を収集した。結果は、1群あたりn=5匹のラットについての平均値±標準誤差である。
【0109】
線維症の定量化のために、組織切片≦厚さ3mmを10%緩衝ホルマリン中で24時間固定し、処理し、パラフィン中に埋め込んだ。3μmの横断切片を、マッソントリクロームを用いて染色した。横断切片(2つのレベルのそれぞれで5つ)から得られる倍率40
倍での最低20のランダムな視野をデジタル化した。線維症の程度は、Image-Pro Plus V.5(Media Cybernetics、メリーランド州ベセスダ、米国)を用いて各デジタル化画像の視野面積のパーセントとして決定し、次いで平均化して、各ラットの線維症のレベルを決定した。
【0110】
VB0002、VB0003及びVB0005で処置したラットの収縮期血圧は18週目の対照と比較して低下し(
図8及び9)、これらの化合物が血圧を低下させるのに有効であることを示している。
【0111】
20pmol/kg/分のVB0002で処置したラットにおける心筋線維症は14週目の対照及び18週目の対照と比較して軽減し(
図10)、この化合物が心筋線維症の発症を軽減し、既成の心筋線維症を逆行させることを示している。
【0112】
10、100及び500pmol/kg/分でのVB0003で処置したラットにおける心筋線維症は18週目の対照と比較して低減し(
図11)、これらの化合物が心筋線維症の発症を軽減することを示している。100及び500pmol/kg/分でのVB0003で処置したラットにおける心筋線維症は14週目の対照と比較して軽減し(
図11)、これらの投与量の化合物が既成の心筋線維症を逆行させることを示している。
【0113】
100pmol/kg/分でのVB0005で処置したラットにおける心筋線維症は14週目の対照及び18週目の対照と比較して軽減し(
図10)、この化合物が心筋線維症の発症を軽減し、既成の心筋線維症を逆行させることを示している(
図12)。