(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028459
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】含窒素炭素材料及びその製造方法、並びに、酸素還元電極触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 31/22 20060101AFI20230224BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230224BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20230224BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230224BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230224BHJP
【FI】
B01J31/22 M
H01M4/86 B
H01M4/90 Y
B01J37/08
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134165
(22)【出願日】2021-08-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和2年度~令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発/十四員環型活性点の高活性化・高密度化による革新的非白金触媒の研究開発」)、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】小島 綾一
(72)【発明者】
【氏名】難波江 裕太
(72)【発明者】
【氏名】早川 晃鏡
(72)【発明者】
【氏名】守谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】大山 順也
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC31A
4G169BC50A
4G169BC54A
4G169BC58A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169BE39A
4G169BE39B
4G169CC32
4G169DA05
4G169FB29
4G169FC07
5H018AA06
5H018AS03
5H018BB01
5H018EE05
5H018HH00
5H018HH05
5H018HH08
5H126BB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い酸素還元活性と、高い触媒安定性を示す含窒素炭素材料及びその製造方法、並びに酸素還元電極触媒を提供する。
【解決手段】下記式で表される窒素含有金属錯体と、該窒素含有金属錯体を担持するカーボン担体とを含み、リニアスイープボルタンメトリーの測定方法による活性保持率が、40%以上である、含窒素炭素材料。
(式中、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される窒素含有金属錯体と、該窒素含有金属錯体を担持するカーボン担体とを含み、
リニアスイープボルタンメトリーの測定方法による活性保持率が、40%以上である、
含窒素炭素材料。
【化1】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【請求項2】
XAFSスペクトルにより測定される、前記金属原子Mと前記窒素原子Nの結合距離(M-N)が、1.95Å以下である、
請求項1に記載の含窒素炭素材料。
【請求項3】
1.44ű0.30Åにおけるピーク強度χ(R)が、1.30以下である、
請求項1又は2に記載の含窒素炭素材料。
【請求項4】
前記金属原子Mの価数が、2~3価である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料。
【請求項5】
前記金属原子Mが、遷移金属である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料。
【請求項6】
前記金属原子Mが、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、V、Ti、及びCrからなる群より選ばれる少なくともひとつの遷移金属である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料を含む、
酸素還元電極触媒。
【請求項8】
下記式(1)で表される窒素含有金属錯体と、カーボン担体と、を300~900℃で加熱処理する加熱工程を含む、
含窒素炭素材料の製造方法。
【化2】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含窒素炭素材料及びその製造方法、並びに、酸素還元電極触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電池内で水素やメタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すものであり、地球環境への悪影響の少ないクリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質膜を用いる固体高分子形燃料電池は、他の手法と比較して低温で作動することから、自動車用途としての代替動力源や家庭用コジェネレーションシステムの電源として期待されている。
【0003】
固体高分子形燃料電池では、カソードで起こる酸素還元反応を促進するために、一般に白金又は白金合金が触媒として用いられるが、白金の資源量が極めて少なく、また高価であるために実用化への大きな障壁となっている。
【0004】
そこで白金等の貴金属を必要としない燃料電池用電極触媒として、コバルトフタロシアニンや鉄テトラアザアヌレン等の大環状金属錯体を導電性担体に担持した触媒、又はそれらを熱処理した触媒が知られている(非特許文献1、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E. Claude et al, J. Appl. Electrochem., 28, 57-64, (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような触媒の酸素還元活性は十分ではなく、燃料電池のエネルギー効率を低下させる要因となっている。また、燃料電池の運転によって触媒が劣化し、酸素還元活性が大きく低下するため触媒の安定性が求められる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高い酸素還元活性と、高い触媒安定性を示す含窒素炭素材料及びその製造方法、並びに、酸素還元電極触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、14員環錯体とカーボン担体とを所定の条件下で用いることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下記式(1)で表される窒素含有金属錯体と、該窒素含有金属錯体を担持するカーボン担体とを含み、
リニアスイープボルタンメトリーの測定方法による活性保持率が、40%以上である、
含窒素炭素材料。
【化1】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
〔2〕
XAFSスペクトルにより測定される、前記金属原子Mと前記窒素原子Nの結合距離(M-N)が、1.95Å以下である、
〔1〕に記載の含窒素炭素材料。
〔3〕
1.44ű0.30Åにおけるピーク強度χ(R)が、1.30以下である、
〔1〕又は〔2〕に記載の含窒素炭素材料。
〔4〕
前記金属原子Mの価数が、2~3価である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料。
〔5〕
前記金属原子Mが、遷移金属である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料。
〔6〕
前記金属原子Mが、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、V、Ti、及びCrからなる群より選ばれる少なくともひとつの遷移金属である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料。
〔7〕
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の含窒素炭素材料を含む、
酸素還元電極触媒。
〔8〕
下記式(1)で表される窒素含有金属錯体と、カーボン担体と、を300~900℃で加熱処理する加熱工程を含む、
含窒素炭素材料の製造方法。
【化2】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い酸素還元活性と、高い触媒安定性を示す含窒素炭素材料及びその製造方法、並びに、酸素還元電極触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
1.含窒素炭素材料
本実施形態の含窒素炭素材料は、下記式(1)で表される窒素含有金属錯体と、該窒素含有金属錯体を担持するカーボン担体とを含み、リニアスイープボルタンメトリーの測定方法による活性保持率が、40%以上である。
【化3】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【0014】
本実施形態の含窒素炭素材料は窒素含有金属錯体と該窒素含有金属錯体を担持するカーボン担体とを含むことにより、酸素還元活性及び触媒安定性に優れるものとなる。この理由は定かではないが、まず、窒素含有金属錯体においては、式(1)で表されるような14員環構造の配位子を形成する2つのフェナントロリン骨格によって中心金属Mの電子状態が変化し、これが活性点となって酸素の4電子還元を安定して促進される。そして、さらにカーボン担体を含むことで、含窒素炭素材料に導電性が付与され、酸素還元活性が向上するとともに、窒素含有金属錯体の活性点が有効に利用され、酸素還元活性と触媒安定性がさらに向上するものと考えられる。しかし、酸素還元活性と触媒安定性が向上する理由は上記に限定されない。
【0015】
なお、本実施形態において、式(1)において、「M-(X)n」を除いた部分を「14員環構造の配位子」という。一方、単に「配位子」というときはXを指すものとする。
【0016】
1.1.電気化学測定
本実施形態の含窒素炭素材料のリニアスイープボルタンメトリーの測定方法による活性保持率は、40%以上であり、好ましくは45%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは55%以上であり、よりさらに好ましくは60%以上であり、さらにより好ましくは65%以上であり、特に好ましくは70%以上である。また、活性保持率の上限は、好ましくは100%であり特に制限されないが、95%以下であってもよいし、90%以下であってもよい。活性保持率が40%以上であることにより、触媒安定性がより向上する。
【0017】
活性保持率の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、カーボン担体を共に熱処理をすることや、その熱処理の温度及び時間によって制御する方法が挙げられる。
【0018】
また、活性保持率は実施例に記載のリニアスイープボルタンメトリーの測定条件により測定することができる。当該測定には、乾燥後の回転電極を作用極とし、可逆水素電極(RHE)を参照極として、白金電極を対極とし、0.5M硫酸水溶液を電解液とし、その電解液に酸素を30分間バブリングしたものを使用して、下記式により算出することができる。
活性保持率=耐久試験前の電流値@0.75V/耐久試験後の電流値@0.75V
耐久試験前の電流値@0.75V:耐久試験前の0.75Vにおける電流値であって、掃引速度10mV/s、回転速度2500rpmで0.05Vから1.2Vまで掃引してリニアスイープボルタンメトリー測定により得られる電流値。
耐久試験後の電流値@0.75V:耐久試験後の0.75Vにおける電流値であって、掃引速度10mV/s、回転速度2500rpmで0.05Vから1.2Vまで掃引してリニアスイープボルタンメトリー測定により得られる電流値。
耐久試験:掃引速度50mV/sで0Vから1.0Vの間で電位掃引サイクルを50サイクル行う試験
【0019】
1.2.XAFS解析
XAFSスペクトルにより測定される金属原子Mと窒素原子Nの結合距離(M-N)は、好ましくは1.95Å以下であり、より好ましくは1.93Å以下であり、さらに好ましくは1.91Å以下である。M-Nの結合距離が1.95Å以下であることにより、触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0020】
また、結合距離(M-N)は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1.65Å以上であり、より好ましくは1.70Å以上であり、さらに好ましくは1.75Å以上であり、よりさらに好ましくは1.80Å以上であり、さらにより好ましくは1.85Å以上である。M-Nの結合距離が1.65Å以上であることにより、酸素還元活性がより向上する傾向にある。
【0021】
本実施形態の含窒素炭素材料は、EXAFSスペクトルの1.44±0.30Åにおけるピーク強度χ(R)が小さいことが好ましい。具体的には、1.44±0.30Åにおけるピーク強度χ(R)は、好ましくは1.30以下であり、より好ましくは1.25以下であり、さらに好ましくは1.20以下であり、よりさらに好ましくは1.15以下であり、さらにより好ましくは1.10以下である。1.44±0.30Åにおけるピーク強度χ(R)は、Fe-O由来のピークの強度を示すものであり、これが1.30以下であることにより、酸素還元活性及び触媒安定性がより向上する傾向にある。なお、Fe-O由来のピークは、式(1)においてXの少なくとも一部が酸素原子を含むこと、及びその量を示唆する。
【0022】
また、1.44±0.30Åにおけるピーク強度χ(R)は、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.60以上であり、さらに好ましくは0.70以上であり、よりさらに好ましくは0.80以上である。また、ピーク強度χ(R)が0.50以上であることにより、酸素還元活性がより向上する傾向にある。
【0023】
XAFSスペクトルにより測定される金属原子Mと窒素原子NのM-Nの結合距離と、1.44±0.3Åにおけるピーク強度χ(R)の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、カーボン担体を共に熱処理をすることや、その熱処理の温度及び時間によって制御する方法が挙げられる。
【0024】
また、XAFSスペクトルにより測定される金属原子Mと窒素原子NのM-Nの結合距離と、1.44±0.3Åにおけるピーク強度χ(R)は、実施例に記載に記載の方法により測定することができる。
【0025】
1.3.窒素含有金属錯体
窒素含有金属錯体は、下記式(1)で表される構造を有するものであり、2つのフェナントロリン骨格により形成された窒素原子を有する14員環構造の配位子と、その中心に配位する中心金属Mを含み、必要に応じて、中心金属Mに対して配位する配位子Xを有するものである。これにより、中心金属Mは14員環構造の配位子によりその電子状態が変化し、これが活性点となって酸素の4電子還元を安定して促進することができる。
【化4】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【0026】
式(1)中、Mは金属原子である。以下、金属原子Mを「中心金属M」ともいう。窒素含有金属錯体の金属原子Mとしては、特に限定されないが、例えば、遷移金属又は典型金属が挙げられる。このなかでも、遷移金属が好ましく、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、V、Ti、又はCrがより好ましく、Fe又はCoがさらに好ましい。このような金属原子Mを用いることにより、酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0027】
金属原子Mの価数は、好ましくは1~5価であり、より好ましくは2~4価であり、さらに好ましくは2~3価である。Mの価数が上記範囲内であることにより、酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。Mの価数は実施例に記載のXAFS解析により測定することができる。なお、窒素含有金属錯体は、価数の異なる金属原子を有する窒素含有金属錯体を複数含むものであってもよい。
【0028】
式(1)中、R1~R12は、各々独立して、水素原子又は置換基を示す。置換基とは14員環構造の配位子の各位置における水素原子と置換可能な基であればよい。このような置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)、ヒドロキシ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、カルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルホン酸基、スルホニル基、スルファモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、シリル基、ボロノ基、カルボキシル基、スルホ基及びホスホノ基等が挙げられる。これらの置換基群はさらに置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基から選択される基を挙げることができる。
【0029】
このなかでも、R1~R12は、酸素還元活性と安定性をより向上させる観点から、水素原子であることが好ましい。
【0030】
配位子Xは、中心金属Mに対する配位子であり、具体的には、14員環構造の配位子の面とは交差する方向から中心金属Mに対して配位するものである。このような配位子Xとしては、特に限定されないが、例えば、アクア、ヒドロキソ、オキソ、スルフィド、トリフルオロメタンスルホナート、トシラート等のスルホナート、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドリド、シアナト、アジド、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、カルボキシラト、カルボニル、ジメチルホルムアミド、及びアンミン等が挙げられる。これらの中でも、酸素還元活性に一層優れる観点から、ブロモであることが好ましく、触媒の安定性に一層優れる観点から、スルホナートであることが好ましく、トリフルオロメタンスルホナートであることがより好ましい。
【0031】
配位子の数nは、0~2の整数であり、0であってもよい。
【0032】
式(1)で表される窒素含有金属錯体は、例えば、公知の方法により調製できる。公知の方法としては、例えば、J.C.S.PerkinI.1974.1.976に記載の方法、Electrochemica. Acta. vol.27 no.9 1315-1319, 1982に記載の方法が挙げられる。
【0033】
より具体的には、14員環構造の配位子と、中心金属を含む金属塩とを100~200℃で反応させることで、中心金属に14員環構造の配位子が配位した錯体が得られる。当該錯体を、水中で60~100℃で加熱し、得られた水溶液から当該水を除去することで、式(1)で表される窒素含有金属錯体を得ることができる。
【0034】
ここで、14員環構造の配位子は、例えば、2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンと、アンモニアとを150~300℃で反応させることで得られる。なお、当該反応は不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0035】
また、中心金属を含む金属塩としては、特に限定されないが、有機溶剤に溶解する塩が好ましく、例えば、硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、シアン化物、及びカルボニル化合物等が挙げられる。
【0036】
1.4.カーボン担体
カーボン担体としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック(ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等)、活性炭、黒鉛等の炭素質材料が挙げられる。このなかでも、導電性に優れ、比表面積が大きいことから、カーボンブラックが好ましく、ケッチェンブラックがより好ましい。
【0037】
このようなカーボンブラックの代表例としては、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ECP600JD、キャボット社製VULCAN XC-72、東海カーボン株式会社製トーカブラック#5500等が挙げられる。
【0038】
カーボン担体の含有量は、窒素含有金属錯体100質量部に対して、好ましくは100~350質量部であり、より好ましくは125~300質量部であり、さらに好ましくは150~250質量部である。カーボン担体の含有量が上記範囲内であることにより、酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0039】
2.含窒素炭素材料の製造方法
本実施形態の含窒素炭素材料の製造方法は、下記式(1)で表される窒素含有金属錯体と、カーボン担体とを300~900℃で加熱処理する加熱工程を含み、必要に応じて、加熱工程前に、窒素含有金属錯体とカーボン担体と水を混合してスラリーを調製する混合工程と、スラリーを乾燥して乾燥体とする乾燥工程を含んでいてもよい。なお、乾燥体は、「カーボン担持窒素含有金属錯体」ともいう。
【化5】
(式中、Mは、金属原子であり、R
1~R
12は、各々独立して、水素原子又は置換基であり、Xは、各々独立して、配位子であり、nは0~2の整数である。)
【0040】
3.1.混合工程
混合工程は、窒素含有金属錯体とカーボン担体と水を混合してスラリーを調製する工程である。混合手段は特に制限されず、従来公知の手法を用いることができる。
【0041】
窒素含有金属錯体とカーボン担体の総固形分量は、水100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~5.0質量部であり、さらに好ましくは1.0~3.0質量部である。窒素含有金属錯体とカーボン担体の総固形分量が上記範囲内であることにより、窒素含有金属錯体とカーボン担体が均一に分散しやすくなる傾向にある。
【0042】
また、水は加温されているものが好ましく、水の温度は、好ましくは30~90℃であり、より好ましくは40~85℃であり、さらに好ましくは50~80℃である。水の温度が上記範囲内であることにより、窒素含有金属錯体とカーボン担体が均一に分散しやすくなる傾向にある。
【0043】
3.2.乾燥工程
乾燥工程は、スラリーを乾燥して乾燥体とする工程である。また、乾燥前にスラリーをろ過して、粗大粒子を除いてもよい。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は、好ましくは40~95℃であり、より好ましくは50~95℃であり、さらに好ましくは60~90℃である。また、乾燥時間は、水分が揮発するまでとすることができる。さらに、乾燥効率を向上する観点から乾燥工程を減圧下で行ってもよい。
【0044】
3.3.加熱工程
加熱工程は、窒素含有金属錯体とカーボン担体とを300~900℃で加熱処理する工程である。具体的には上記のようにして得られた乾燥体を炉内で加熱する。加熱温度は、300~900℃であり、好ましくは350~850℃であり、より好ましくは400~800℃であり、さらに好ましくは450~750℃であり、よりさらに好ましくは500~700℃である。加熱温度が上記範囲内であることにより、得られる含窒素炭素材料の酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0045】
上記加熱温度における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、好ましくは0.1~5.0時間であり、より好ましくは0.3~3.0時間であり、さらに好ましくは0.5~2.0時間である。加熱時間が上記範囲内であることにより、得られる含窒素炭素材料の酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0046】
加熱工程において、常温から上記加熱温度への昇温速度は、好ましくは2.5~25℃/分であり、より好ましくは5.0~20℃/分であり、さらに好ましくは7.5~15℃/分である。昇温速度が上記範囲内であることにより、得られる含窒素炭素材料の酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0047】
乾燥工程においては、窒素ガスなどの不活性ガスを流通しておいてもよい。不活性ガスの流通量は、好ましくは0.1~4.0NL/分であり、より好ましくは0.3~3.0NL/分であり、さらに好ましくは0.5~2.0NL/分である。不活性ガスの流通量が上記範囲内であることにより、得られる含窒素炭素材料の酸素還元活性と触媒安定性がより向上する傾向にある。
【0048】
4.酸素還元電極触媒
本実施形態の酸素還元電極触媒は、上記含窒素炭素材料を含む。このような酸素還元電極触媒の実施態様の一つとしては、本実施形態の含窒素炭素材料を触媒として含む膜電極接合体が挙げられる。本実施形態の膜電極接合体は、酸素還元活性等の電池特性、及び、安定性に優れ、燃料電池用として好適に用いることができる。
【0049】
本実施形態の膜電極接合体は、例えば、電解質膜と、当該電解質膜の両面にアノード電極触媒層及びカソード電極触媒層を備える。アノード電極触媒層及びカソード電極触媒層のさらに外側に一対のガス拡散層を備えていてもよい。アノード電極触媒層及びカソード電極触媒層はプロトン伝導性を有する。
【0050】
アノード電極触媒層は、燃料(例えば、水素)を酸化して容易にプロトンを生ぜしめる触媒を含有し、カソード電極触媒層は、プロトン及び電子と酸化剤(例えば、酸素)を反応させて水を生成させる触媒を含有する。本実施形態に係る酸素還元電極触媒は、アノード電極触媒層及びカソード電極触媒層のいずれにも用いることができ、特にカソード電極触媒層に好適に用いることができる。
【0051】
本実施形態のMEAの製造方法は特に限定されず、前記窒素含有金属錯体を含む酸化還
元電極触媒、アイオノマー、及び溶剤からなるインクを調製し、そのインクを転写シート
又はガス拡散電極に塗布し、乾燥した後、塗布面を向かい合わせにして、その間に電解質
膜を挟み込み、熱プレスするといった一般的な方法を用いることができる。
【0052】
5.燃料電池
本実施形態の燃料電池は、本実施形態の酸素還元電極触媒を含む膜電極接合体を備え、燃料電池を構成するガス等の構成成分を含むものであってもよい。本実施形態の燃料電池は、本実施形態の酸素還元電極触媒を有する膜電極接合体を備えるものであるため、酸素還元活性等の電池特性、及び安定性に優れる。
【0053】
本実施形態の燃料電池は、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。また、本実施形態の燃料電池は、本実施形態の膜電極接合体と、バイポーラプレートとを備えることが好ましい。バイポーラプレートとは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトと樹脂との複合材料、又は金属製のプレート等を意味する。バイポーラプレートは、電子を外部負荷回路へ伝達する機能の他、燃料や酸化剤を電極触媒近傍に供給する流路としての機能を持っている。こうしたバイポーラプレートの間に膜電極接合体を挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池が製造される。本実施形態の燃料電池は、上述の他、バッキングプレート等の一般的な燃料電池に用いられる構成を有していてもよい。
【実施例0054】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができる。
【0055】
(1mA/cm2到達電圧の測定)
実施例及び比較例で用いた、電極作製法及び回転電極法によるリニアスイープボルタンメトリーの測定方法(回転リングディスク電極装置「RRDE-1」(製品名、有限会社日厚計測)、ポテンショスタット「HZ-7000」(製品名、北斗電工株式会社)を使用。)を以下に示す。
【0056】
まず、バイアル瓶に、実施例及び比較例で得られたカーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)2.5mgを秤取し、そこに、ケッチェンブラック「ECP600JD」(製品名、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)を2.5mg、ガラスビーズをスパチュラ一杯、5質量%ナフィオン(登録商標)分散液(シグマアルドリッチジャパン社製)を50μL、並びにイオン交換水及びエタノールをそれぞれ150μLずつ添加し、それらの混合物に20分間超音波を照射してスラリーを作製した。このスラリーを4μL秤取し、回転電極のガラス状炭素上(0.2827cm2)に塗布し、飽和水蒸気下で乾燥した。
【0057】
乾燥後の回転電極を作用極とし、可逆水素電極(RHE)を参照極として、炭素電極を対極とした。0.5M硫酸水溶液を電解液とし、その電解液に酸素を30分間バブリングした後、掃引速度10mV/s、回転速度1500rpmで0Vから1.0Vまで掃引して電気化学測定を行った。当該電気化学測定において、1mA/cm2に達する電圧V値が大きいほど、触媒の酸素還元活性が高いと判定した。
【0058】
(活性保持率の測定)
実施例及び比較例で用いた、電極作製法及び回転電極法によるリニアスイープボルタンメトリーの測定方法(回転ディスク電極装置「HR-301」(製品名、北斗電工株式会社)、ポテンショスタット「HZ-7000」(製品名、北斗電工株式会社)を使用。)を以下に示す。
【0059】
まず、バイアル瓶に、実施例及び比較例で得られた含窒素炭素材料5.8mgを秤取し、ジルコニアビーズをスパチュラ一杯加えた。そして、5質量%ナフィオン(登録商標)分散液(シグマアルドリッチジャパン社製)4mL、超純水8mL、エタノール16mLの割合で混合した混合溶液から875μL採取し、上記のバイアルに加えた。この混合物を卓上型ビーズ式破砕機 シェイクマン6(製品名、バイオメディカルサイエンス)によって45分間超音波を照射してスラリーを作製した。このスラリーを6μL秤取し、回転電極のガラス状炭素上(0.1964cm2)に塗布し乾燥した。
【0060】
乾燥後の回転電極を作用極とし、可逆水素電極(RHE)を参照極として、白金電極を対極とした。0.5M硫酸水溶液を電解液とし、その電解液に酸素を30分間バブリングした後、掃引速度10mV/s、回転速度2500rpmで0.05Vから1.2Vまで掃引してリニアスイープボルタンメトリー測定を行い、耐久試験前の0.75Vにおける電流値(以下「耐久試験前の電流値@0.75V」ともいう)を得た。その後、耐久試験として掃引速度50mV/sで0Vから1.0Vの間で電位掃引サイクルを50サイクル行った。そして、掃引速度10mV/s、回転速度2500rpmで0.05Vから1.2Vまで掃引してリニアスイープボルタンメトリー測定を行い、耐久試験後の0.75Vにおける電流値(以下「耐久試験後の電流値@0.75V」ともいう)を得た。
【0061】
耐久試験前後での0.75Vでの電流値の保持率(耐久試験前の電流値@0.75V/耐久試験後の電流値@0.75V)を求め、その値が大きいほど触媒の耐久性が高いと判定した。なお、当該保持率は下記表にて「活性保持率」として示す。
【0062】
(XAFS解析)
XAFSスペクトルの測定では、あいちシンクロトロン光センターのBL5S1を利用し、Fe K-edge XAFSスペクトルを測定した。具体的には、実施例及び比較例で得られた含窒素炭素材料並びに下記標準試料の所定量を直径7mmのペレットに成形したものを試料として、以下の条件でFe K-edge XAFSスペクトルを測定した。データ解析にはDemeterパッケージのAthenaおよびArtemisを用いた。
【0063】
中心金属Mの価数評価では、まず、標準試料として、FeO、Fe3O4、a-Fe2O3、g-Fe2O3、シュウ酸鉄II(Fe(C2O4))、シュウ酸鉄III(Fe2(C2O4)3)、鉄フタロシアニン(FePc)、鉄テトラフェニルポルフィリン(軸配位子にClを持つ。FeTPPCl)、水酸化鉄(FeO(OH))、Fe foilのFe K-edge XAFSスペクトルを測定した。
【0064】
各種Fe標準試料について、Fe K-edge XANESスペクトルのAbs=0.5におけるX線のエネルギー(E
abs0.5)を評価し、E
abs0.5とFeの形式価数の関係を示すプロットを得た(Moriya, M.; Takahama, R.; Kamoi, K.; Ohyama, J.; Kawashima, S.; Kojima, R.; Okada, M.; Hayakawa, T.; Nabae, Y., J. Phys. Chemi. C 2020, 124, 20730-20735.の
図2参照)。この関係を基に、サンプルのE
abs0.5からその価数を評価した。
【0065】
XAFSスペクトルにより測定される金属原子Mと窒素原子Nの結合距離(M-N)は、フーリエ変換後のEXAFSペクトルについて、1~2Åの範囲でカーブフィッティング解析することで求めた。カーブフィッティングにおいては、Fe-Nの配位数は4、Fe-Oの配位数は2と固定し、また、Fe-NとFe-OともにEXAFS振動の開始エネルギーは同一とした。
【0066】
1.44ű0.30Åにおけるピーク強度χ(R)は、フーリエ変換後のEXAFSスペクトルの1.44ű0.30Åにおけるピークトップ強度(縦軸の数値)を示す。光電子の波数ベクトルkの2乗で重み付けしたEXAFSスペクトルをk=3~14Å-1でフーリエ変換した。このフーリエ変換後のEXAFSで1.44±0.30Å付近にFe-O由来のピークが観察されたため、そのピーク強度χ(R)を、1.44±0.30Åにおけるピーク強度χ(R)として抽出した。
【0067】
(窒素含有金属錯体の合成)
窒素含有金属錯体を以下の方法で合成した。石英ボートに、2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリン30gを秤取し、管状炉にボートを入れた後、アルゴンで置換した。アルゴンフローで管状炉を200℃まで昇温した後、アンモニアフローに切り替えて10分間熱処理し、さらに管状炉を300℃まで昇温して、そのまま8時間熱処理した。アルゴンフローに切り替えて室温まで放冷後、石英ボートから固体を回収し、ジクロロメタン及びメタノールで洗浄した。得られた粗生成物をメタノール、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミドでそれぞれ熱洗浄し、2つのフェナントロリン骨格によって形成される14員環構造の配位子を得た。
【0068】
次に、窒素置換したグローブボックス内で、上記14員環構造の配位子を2.0g、シュレンク管に入れ、臭化鉄(II)1.12g、脱水N,N-ジメチルホルムアミド40mLを加えて攪拌した。系内を140℃に昇温させた後、10時間保持し、室温まで放冷した。グローブボックス内でろ過し、得られた固体をN,N-ジメチルホルムアミド及びヘキサンで洗浄した後、24時間真空乾燥し、以下の窒素含有金属錯体を得た。
【化6】
【0069】
[実施例1]
(カーボン担体への担持)
上記のようにして得られた窒素含有金属錯体1gとケッチェンブラック(「ECP600JD」(製品名、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製))2gを70℃に熱した200mLの水に添加し、攪拌、混合した。2時間後ろ過を行い、得られた固形物を真空下80℃で12時間乾燥し、カーボン担持窒素含有金属錯体3gを得た。
【0070】
(熱処理)
得られたカーボン担持窒素含有金属錯体1gを石英製ボートに載置し、それを管状炉に収容した。炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で30分間かけて室温から300℃まで昇温し、300℃のまま1時間保持することで熱処理後のカーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0071】
[実施例2]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で40分間かけて室温から400℃まで昇温し、400℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0072】
[実施例3]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で50分間かけて室温から500℃まで昇温し、500℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0073】
[実施例4]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で55分間かけて室温から550℃まで昇温し、550℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0074】
[実施例5]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で60分間かけて室温から600℃まで昇温し、600℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0075】
[実施例6]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で65分間かけて室温から650℃まで昇温し、650℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0076】
[実施例7]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で70分間かけて室温から700℃まで昇温し、700℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0077】
[実施例8]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で80分間かけて室温から800℃まで昇温し、800℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0078】
[実施例9]
熱処理において、炉内を大気圧、1NL/分の窒素流通下で90分間かけて室温から900℃まで昇温し、900℃のまま1時間保持したこと以外は、実施例1と同様にして、熱処理カーボン担持窒素含有金属錯体(含窒素炭素材料)を得た。
【0079】
[比較例1]
上記のようにして得られた窒素含有金属錯体にカーボン担持や熱処理を施さず、得られた窒素含有金属錯体のみをそのまま上記の電気化学測定などの評価に用いた。
【0080】
[比較例2]
カーボン担持や熱処理を施さず、5,10,15,20-Tetraphenyl-21H, 23H-porphine iron(III) chloride(シグマ・アルドリッチ社製)をそのまま上記の電気化学測定などの評価に用いた。
【0081】
下記表1に、実施例及び比較例の製造条件と、XAFS解析結果と電気化学測定の結果を示す。
【0082】