(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028462
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】断熱材の取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134173
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】520030844
【氏名又は名称】ディーディーピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA21
2E001GA12
2E001HD09
2E001LA13
(57)【要約】
【課題】地盤上の構造物に断熱材を容易かつ簡易に取り付ける取付構造を提供すること。
【解決手段】建物が上部に固定される基礎Fに設置される断熱材10の取付構造であって、基礎の地盤Eから立ち上がる外側面Fsに断熱材を接近対面状態に維持する壁板15と、壁板を基礎に平行方向にスライド可能に位置決め保持する取付器20とを備え、壁板は、断熱材の基礎に対する背面側に位置して当該基礎の外側面との間に挟み込んで当該断熱材の対面状態を維持する構造に形成され、取付器は、壁板上部を基礎上部に離脱不能に保持する上保持部21と、壁板下部を基礎の外側面に離隔方向に離脱不能に保持する下保持部23とを有し、下保持部は、壁板下部を載置状態に受け取る受け構造に形成され、上保持部は、壁板上部の断熱材に対する背面側に対面して当該壁板上部の離隔方向への移動を制限する構造に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体が上部に載置状態に固定される基礎に設置される断熱材の取付構造であって、
前記基礎の地盤から立ち上がる壁面に対して前記断熱材を接近して対面する状態に維持する維持部材と、前記維持部材を前記基礎に対して位置決め保持する保持部材と、を備え、
前記維持部材は、前記断熱材の前記基礎に対する背面側に位置して当該基礎の壁面との間に挟み込むようにして当該断熱材の対面状態を維持する構造を有し、
前記保持部材は、前記維持部材の上部を前記基礎の壁面に対する平行方向にスライド可能で離隔方向には離脱不能に保持する上保持部と、前記維持部材の下部を前記基礎の壁面に対する平行方向にスライド可能で離隔方向には離脱不能に保持する下保持部と、を有し、
前記保持部材の下保持部は、前記維持部材の下部を載置状態に受け取る受け構造に形成され、
前記保持部材の上保持部は、前記維持部材の上部の前記断熱材に対する背面側に対面して当該維持部材の上部の離隔方向への移動を制限する構造に形成されている、
ことを特徴とする断熱材の取付構造。
【請求項2】
前記保持部材は、前記断熱材に対する背面側の前記上保持部の下端部および前記下保持部の上端部の離隔間隔が前記維持部材の高さ方向の幅よりも狭く形成されているとともに、該上保持部は該下保持部が保持する前記維持部材の上方への移動を許容する構造に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱材の取付構造。
【請求項3】
前記断熱材は、高さ方向に積み重ねる複数に分割されて、最上位よりも下位が前記基礎の壁面に近接対面する状態で固定されており、
前記保持部材の上保持部は、前記基礎の上部に固定され、
前記保持部材の下保持部は、前記断熱材の固定されている下位に固定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の断熱材の取付構造。
【請求項4】
前記保持部材は、前記上保持部および前記下保持部の一方または双方が複数部品に分割されて、前記維持部材の横方向の複数箇所を保持する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の断熱材の取付構造。
【請求項5】
前記保持部材の下保持部は、前記基礎側に直接に、または間接的に位置決め固定される固定部と、前記固定部よりも下位に位置して前記維持部材の下部を受けて位置決め保持する受け部と、前記固定部および前記受け部の間に延長されて当該固定部に当該受け部を釣り下げ支持させる延長部と、を備え、
前記延長部は、前記固定部側から延長されている上延長部と、前記受け部側から延長されている下延長部と、前記上延長部および前記下延長部の間を連結するとともに当該連結箇所を変更して前記固定部および前記受け部の離隔間隔を調整する連結部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の断熱材の取付構造。
【請求項6】
前記連結部は、前記上延長部および前記下延長部の連結箇所を変更可能に複数配置されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の断熱材の取付構造。
【請求項7】
前記連結部は、前記上延長部および前記下延長部の一方に形成されている引っ掛け穴と、前記上延長部および前記下延長部の他方に形成されている引っ掛け部材と、を備え、
前記引っ掛け穴は、上下方向に延長されている長穴形状に形成されるとともに、
前記引っ掛け部材は、前記引っ掛け穴の短手方向の幅よりも狭く長手方向の長さよりも短い当該引っ掛け部材の相似形状の長尺形状に形成されており、
前記引っ掛け部材を前記引っ掛け穴内に合わせるようにして嵌め込んだ後に相対回転させることにより引き抜き不能かつ当該引っ掛け穴内を相対移動可能に連結する、
ことを特徴とする請求項5に記載の断熱材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤上の構造物に設置する断熱材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内の温度環境および暖冷房負荷の低減を目的として、建物の外壁に断熱材を使用することが多用されており、近年には、建物を支持する基礎部からの熱損失を防止するように、その基礎の側面に断熱材が設置される場合がある。
【0003】
この基礎などの断熱材の取付構造では、一般的に、その壁面に断熱材を固着する状態に設置することから、その基礎と断熱材との間または断熱材の内部を確認することができず、例えば、シロアリなどの通り道ができていても気が付くことができずに被害が拡大してしまう可能性がある。
【0004】
このことから、その断熱材を外すことを実現する取付構造を採用することが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の断熱材の取付構造にあっても、容易に断熱材が外れてしまうことがないように、U字釘状の止め具で止められており、その釘状の止め具を外す作業が必要になって面倒かつ困難である。
【0007】
また、その特許文献1には、基礎に取り付け用の穴を穿孔して、その穴に嵌め込む棒状部材を備える板部材との間に断熱材を挟み込む取付構造も提案されているが、この構造では、基礎に穴を穿孔する必要があり、また、その着脱作業も煩雑かつ困難であることが推察される。
【0008】
そこで、本発明は、地盤上の基礎などの構造物全周囲に渡り、断熱材を容易かつ簡易に取り付けおよび取り外すことのできる取付・取外構造、すなわち脱着可能な構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する断熱材の取付構造の発明の一態様は、建物の躯体が上部に載置状態に固定される基礎に設置される断熱材の取付構造であって、前記基礎の地盤から立ち上がる壁面に対して前記断熱材を接近して対面する状態に維持する維持部材と、前記維持部材を前記基礎に対して位置決め保持する保持部材と、を備え、前記維持部材は、前記断熱材の前記基礎に対する背面側に位置して当該基礎の壁面との間に挟み込むようにして当該断熱材の対面状態を維持する構造を有し、前記保持部材は、前記維持部材の上部を前記基礎の壁面に対する平行方向にスライド可能で離隔方向には離脱不能に保持する上保持部と、前記維持部材の下部を前記基礎の壁面に対する平行方向にスライド可能で離隔方向には離脱不能に保持する下保持部と、を有し、前記保持部材の下保持部は、前記維持部材の下部を載置状態に受け取る受け構造に形成され、前記保持部材の上保持部は、前記維持部材の上部の前記断熱材に対する背面側に対面して当該維持部材の上部の離隔方向への移動を制限する構造に形成されている、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明の一態様によれば、基礎の壁面に近接対面する断熱材を間に挟み込む維持部材を、その基礎の壁面に対して平行方向にスライドさせるだけで、その維持部材の下部が保持部材の受け構造の下保持部に離脱不能に載置されて保持されつつ、その下部側を中心に維持部材の上部が回転しようとしても保持部材の移動制限構造の上保持部に突き当たって離脱不能に保持される。
【0011】
したがって、地盤上の基礎に断熱材を容易かつ簡易に取り付けることができ、また、必要に応じて断熱材を基礎から容易に取り外すことができる。
【0012】
その結果、地盤上の基礎の壁面を効果的に断熱しつつ、その壁面を容易かつ簡易に確認するなど必要な作業を負担なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る断熱材の取付構造を示す図であり、その概略全体構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、その保持部材の下保持部を構成する1部品を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る断熱材の取付構造を示す図であり、その保持部材の下保持部を構成する部品を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、その下保持部を構成する2部品を示す図であり、(a)はそのうちの上延長部を構成する部品を示す立面正面図、(b)はそのうちの下延長部を構成する部品を示す立面正面図である。
【
図6】
図6は、その組み立て状態を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態に係る断熱材の取付構造を示す図であり、その保持部材の下保持部を構成する部品を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、その下保持部を構成する2部品を示す図であり、(a)はそのうちの下延長部を構成する部品を示す立面正面図、(b)はそのうちの上延長部を構成する部品を示す立面側面図である。
【
図9】
図9は、その組み立て状態を示す立面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1~
図3は本発明の第1実施形態に係る断熱材の取付構造を示す図である。
【0015】
図1および
図2において、地盤E上に設置される建物は、安定した支持構造として機能する基礎F上に建築されるのが一般的であり、その建物の躯体の土台Bfが基礎Fの上面Fu上で載置状態になるように固定されて支持されている。その建物は、室内において外気温度が影響してしまうことを低減するために壁材の内側に断熱材を設置することにより、その室内が空調により効率よく、かつ安価に快適環境に維持可能にすることが実現されている。
【0016】
そして、基礎Fにおいても、地盤Eから立ち上がる外側面(壁面)Fsに、例えば、押出法ポリスチレンフォームなどの断熱材10が設置されており、外気温度が基礎Fの側面側から床下側に侵入(熱交換)して室内の快適環境を損なうことを抑制することが行われている。
【0017】
断熱材10は、地盤Eの地表面Egから建物の土台Bfを設置する基礎Fの上面Fuまでの外側面Fsの全面を覆う面積の板形状に形成されており、本実施形態においては、上下方向に2分割された上断熱材11および下断熱材13の2部材に作製されて、その基礎Fの外側面Fsに取り付けられている。
【0018】
この断熱材10は、2部材の上断熱材11および下断熱材13が基礎Fの外側面Fsに背面側を対面接触させて立てた状態で積み重ねられており、且つ、下断熱材13は、基礎Fの外側Fsに接着剤等により強固に固定されている。前面側の壁板(Siding)15によりその基礎Fの外側面Fsから離隔しないように押さえられている。
【0019】
壁板15は、断熱材10(11、13)の縦姿勢を維持するように取付器20によって基礎Fに取り付けられており、その基礎Fの外側面Fsに対する背面側(外側前面側)に位置して間に下断熱材13上部と共に上断熱材11を挟み込むように取り付けられることによって、その上断熱材11の外側面に近接対面する状態を維持する維持部材として機能する。なお、壁板15は、基礎Fの外側面Fsの外面を美的にする化粧板として機能するように作製されている。
【0020】
取付器20は、壁板15の下部15bを地盤Eに近い基礎Fの下部Fb付近に支持しつつ、壁板15の上部15uを基礎Fの上面Fuに一致させるように支持しており、壁板15を基礎Fに対して位置決め保持する保持部材として機能するように構築されている。
【0021】
この取付器20は、2部品の上保持部21および下保持部23により構成されており、壁板15の上部15uと下部15bとを基礎Fの外側面Fsから離隔不能に位置決め保持するようになっている。
【0022】
取付器20の上保持部21は、基礎Fの上部の外側面Fsに対面するように上下方向に延長されて固定される鉛直部21vと、この鉛直部21vの上縁から基礎Fの上面Fuと平行に断熱材10および壁板15の厚さ分程度に外側に延長されている水平部21hと、この水平部21hの外縁の壁板15に対する離隔位置から降下する方向に延長されている降下部21dとを備える構造に作製されている。
【0023】
この上保持部21は、基礎Fの外側面Fsの横幅全長に亘る長さに形成されて、鉛直部21vの複数個所を基礎Fの外側面Fsに、例えば、ネジ止め固定するようになっており、水平部21hが基礎Fの上面Fuから外側面Fsの外側に突出して降下部21dが降下するオーバーハング形状に形成されて、後述するように移動制限構造に作製されている。ここで、取付器20の上保持部21は、断面円形の弾性長尺ゴム材等21fが壁板15と降下部21dとの間に隙間埋め部材として嵌め込まれることにより、その壁板15が動くことを高品質に抑えて騒音の発生源になってしまうことを未然に防止する。
【0024】
取付器20の下保持部23は、
図3に示すように、下断熱材13の上部の外側面13sに対面するように上下方向に延長されて保持される鉛直部(延長部)23vと、この鉛直部23vの上縁から下断熱材13の上面13uに対面する平行方向の内側に延長されている上水平部23h1と、その鉛直部23vの下縁から水平方向に壁板15の厚さ分程度に外側に延長されている下水平部(受け部)23h2と、この下水平部23h2の外縁から壁板15に対面する上昇方向に延長されている上昇部23uとを備える構造に作製されている。
【0025】
この下保持部23は、基礎Fの外側面Fsの横幅全長内の複数個所に設置される複数部品に作製されて、上水平部23h1の端辺側両端部に降下方向に延長されている先端鋭角形状の突刺部(固定部)23pを備えており、その突刺部23pが押出法ポリスチレンフォームなどの下断熱材13の上面13uに刺し込んで固定する構造として機能する。この状態で、下保持部23は、鉛直部23vが下断熱材13の外側面13sに対面する状態に位置決めされて下水平部23h2を吊り下げ支持するとともに、その下水平部23h2および上昇部23uが下断熱材13の外側面13sの外側に突出する断面L字形状を備える受け構造の部品に形成される。ここで、下保持部23は、突刺部23pを下断熱材13の上面13uに差し込んで基礎F側に間接的に位置決め固定されるが、上保持部21の鉛直部21vと同様に、基礎Fの外側面Fsに直接ネジ止め固定する構造に作製してもよい。
【0026】
そして、この取付器20の上保持部21および下保持部23は、それぞれの降下部21dの下端部および上昇部23uの上端部の離隔間隔が壁板15の高さよりも狭く形成されて離脱方向への移動を制限する構造に作製されているとともに、水平部21hの下面と上昇部23uの上端部の離隔間隔が壁板15の高さよりも広めに形成されて、その壁板15を上方に移動させることで離脱することを許容する構造に作製されている。ここで、取付器20の下保持部23は、本実施形態では下断熱材13の上面13uの複数個所に設置される複数部品に作製されているが、これに限るものではなく、例えば、その下断熱材13の横幅に一致する上水平部23h1を形成して1部品に作製してもよいことは言うまでもない。同様に、取付器20の上保持部21は、1部品に限らず、下保持部23上方の対応位置あるいは無関係な位置に分散設置可能に複数部品に作製してもよいことは言うまでもない。
【0027】
この構造により、取付器20の上保持部21は、基礎Fの上面Fu上に水平部21hを位置させて鉛直部21vをその外側面Fsの上部に対面させつつネジ止め固定することにより取り付けることができる。また、取付器20の下保持部23は、地盤Eの地表面Eg上に位置させつつその外側面Fsに対面接触させる状態で設置する下断熱材13の上面13uに突刺部23pを差し込んで固定しつつ上水平部23h1を被せてその下断熱材13の外側面13sに鉛直部23vを対面させて一体化させた状態に取り付けることができる。
【0028】
この下断熱材13の上面13u上には、上断熱材11を基礎Fの外側面Fsの上部に対面接触させつつ取付器20の上保持部21の水平部21h下に嵌め込むようにして設置することができる。
【0029】
ここで、下断熱材13は、シロアリ防止機能を有する接着剤を基礎Fの外側面Fsの横幅方向に連続する形態で塗布して設置するのが一般的であり、その接着剤は、上断熱材11の着脱を不必要に制限せずに、基礎Fの外側面Fsへの接着状態を維持する程度の接着力を有している。また、上保持部21の降下部21dと基礎Fの外側面Fsに隙間においてもシロアリ防止機能を有する接着剤を基礎Fの外側面Fsの横幅方向に連続する形態で塗布して、シロアリの侵入を防止する。
【0030】
この後には、取付器20は、上保持部21の降下部21dと上断熱材11との間に壁板15の上部を余分に差し込んで、下断熱材13に固定支持されている下保持部23の下水平部23h2上にその壁板15の下部を受けて支持する状態で設置することができる。
【0031】
このとき、壁板15は、取付器20の下保持部23の下水平部23h2上に置かれて上昇部23uにより外れることがないように支持されて、上断熱材11と下断熱材13の外側面11s、13sに対面している。この状態では、壁板15は、上保持部21の降下部21dが外側に離隔しようとする上部に突き当てられて移動制限されている。すなわち、上保持部21の降下部21dおよび下保持部23の上昇部23uは、基礎Fの外側面Fsに対面する平行方向に壁板15をその高さ程度の上下方向にスライド可能に保持しつつ、下保持部23の下水平部23h2上に置かれた状態ではその基礎Fの外側面Fsからの離隔方向へ移動することを制限して離脱不能に支持する移動制限構造として機能している。ここで、上保持部21の降下部21dおよび下保持部23の上昇部23uは、壁板15を側方から基礎Fの外側面Fsに対面する平行方向にスライドさせて、その下保持部23の下水平部23h2上に置いて設置することもできる。なお、上保持部21の水平部21hは、壁板15の上方への移動を許容する開口を形成することにより、その壁板15を上方から基礎Fの外側面Fsに対面する下方の平行方向にスライドさせて、その下保持部23の下水平部23h2上に置いて設置するようにしてもよい。
【0032】
このため、取付器20は、断熱材10(11、13)の外側面11s、13sに壁板15を対面接触する状態に設置して維持することができる。反対に、取付器20は、壁板15を上方に持ち上げて下保持部23の上昇部23uによる制限を解除して、上保持部21の降下部21dから引き抜くことにより、断熱材10の外側面11s、13sを露出させることができ、そのうちの上断熱材11を下断熱材13上から外して基礎Fの外側面Fsを露出させることができる。
【0033】
したがって、基礎Fは、外側面Fsの上部を露出させて目視による検査を容易に行うことができ、例えば、シロアリなどの通り道が確認された場合には除去して防虫処理するなどのメンテナンスを行って、その後に、再度、上断熱材11を下断熱材13上に設置して壁板15を戻すことを実現して容易に復帰させることができる。ここで、使用される断熱材としては、防蟻性を有する断熱材(例えば、デュポン・スタイロ株式会社製スタイロフォームAT)が好ましい。
【0034】
このように、本実施形態の取付器20にあっては、基礎Fの外側面Fsに近接対面して設置される断熱材10(11、13)を間に挟み込む壁板15を、その基礎Fの外側面Fsに対して平行方向上方にスライドさせるだけで、その壁板15の下部15bを下保持部23の上昇部23uから容易に外して所望の基礎Fの外側面Fsのメンテナンス作業を行った後に、再度その壁板15の下部15bを下水平部23h2上に支持させて取り付けることができる。
【0035】
したがって、取付器20は、地盤E上の基礎Fに断熱材10を取り付ける作業を容易かつ簡易にすることができ、また、必要に応じて断熱材10を基礎Fから容易に取り外して所望のメンテナンス作業を行うことを実現する。
【0036】
その結果、地盤E上の基礎Fの外側面Fsを効果的に断熱しつつ、その外側面Fsのシロアリによる汚損状態などを容易かつ簡易に確認して必要な作業を負担なく行うことができる。
【0037】
ここで、本実施形態は、基礎Fの外側面Fsに断熱材10を設置する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、例えば、基礎Fの内側の壁面に断熱材を設置する場合に用いてもよいことは言うまでもない。
【0038】
次に、
図4~
図6は本発明の第2実施形態に係る断熱材の取付構造を示す図である。ここで、本実施形態は、上述実施形態と略同様に構成されていることから、同様の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略して特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0039】
図4および
図5において、取付器50は、上述実施形態における下保持部23に代えて、下保持部53を上保持部21と共に備えて、断熱材10(11、13)および壁板15を基礎Fの外側面Fsに離隔不能に取り付けて位置決め支持(保持)するように構築されている。
【0040】
この取付器50の下保持部53は、上述実施形態おける1部品にする鉛直部23vに代えて、分割可能な2部品にする上鉛直部(上延長部)55および下鉛直部(下延長部)57を備えている。
【0041】
そして、上鉛直部55は、突刺部23pを備える上水平部23h1が一体に形成されているとともに、下断熱材13の外側面13sに対面するように上下方向に延長されている平面内に台形状で外側に離隔するフック55fが一体形成されている。
【0042】
下鉛直部57は、下水平部23h2および上昇部23uが一体に形成されているとともに、上鉛直部55の外面に対面するように上下方向に延長されつつそのフック55fを差し込み可能に水平方向に延長されているスリット57sが複数形成されている。
【0043】
この構造により、取付器50の下保持部53は、
図6に示すように、下鉛直部57のスリット57sのいずれかを選択して、
図4に2点鎖線で示す上鉛直部55のフック55fに引っ掛けて支持させることにより、下断熱材13の上面13uに合わせる上水平部23h1から下水平部23h2までの長さ(高さ)を調整することができる。
【0044】
このため、取付器50は、断熱材10(11、13)の高さに合わせて作製される壁板15毎に準備することなく、その壁板15の上下方向の長さを上保持部21の水平部21hから下保持部53の下水平部23h2までの、フック55fのスリット57sへの差し込み位置に応じた調整間隔に合わせるだけで、基礎Fに断熱材10(11、13)と共に壁板15を着脱可能に設置することができる。すなわち、上鉛直部55のフック55fおよび下鉛直部57のスリット57sが連結箇所を変更可能にする連結部を構成している。
【0045】
このように、本実施形態の取付器50にあっては、上述実施形態による作用効果に加えて、断熱材10のある程度の高さに応じて作製される壁板15に併せて、下保持部53のフック55fのスリット57sへの引っ掛け位置を選択することで、上保持部21の水平部21hから下保持部53の下水平部23h2までの大きさを調整することができる。
【0046】
したがって、取付器50は、壁板15の大きさに合わせて複数準備することなく、地盤E上の基礎Fへの断熱材10の簡易かつ容易な取付作業を実現しつつ、その断熱材10を取り外してのメンテナンス作業も実現する。
【0047】
次に、
図7~
図9は本発明の第3実施形態に係る断熱材の取付構造を示す図である。
【0048】
図7および
図8において、取付器70は、上述実施形態における下保持部23に代えて、下保持部73を上保持部21と共に備えて、断熱材10(11、13)および壁板15を基礎Fの外側面Fsに離隔不能に取り付けて位置決め支持するように構築されている。
【0049】
この取付器70の下保持部73は、上述実施形態おける1部品にする鉛直部23vに代えて、分割可能な2部品にする上鉛直部75および下鉛直部77を備えている。
【0050】
そして、上鉛直部75には、突刺部23pを備える上水平部23h1が一体に形成されているとともに、下断熱材13の外側面13sに対面するように上下方向に延長されている平面内に上下方向に延長されている矩形の開口(長穴形状の引っ掛け穴)75aが形成されている。
【0051】
下鉛直部77には、下水平部23h2および上昇部23uが一体に形成されているとともに、上鉛直部75の外面に対面するように上下方向に延長されつつその開口75a内に離脱不能かつ上下動自在に差し込んで引っ掛けた状態を維持する矩形の平板(引っ掛け部材)77pが一体に形成されている。この下鉛直部77の平板77pは、上鉛直部75の開口75a内に差し込み可能に小さめに相似する矩形(長尺形状)に形成されており、この平板77pは、下鉛直部77自体に平行姿勢で対面しつつ上鉛直部75の厚さ程度で離隔される位置に連結部75jを介して下鉛直部77の上縁77uに一体に形成されて連結されている。この平板77pは、相対的に90°回転させた上鉛直部75の開口75aよりも小さめとなる長手幅W3・短手高さW4の矩形(W3>W4)に形成されており、この平板77pを下鉛直部77の上縁77uに連結する連結部75jは、その上鉛直部75の開口75a幅よりも狭い幅W2(≦W4)に形成されている。ここで、上鉛直部75および下鉛直部77は、開口75aおよび平板77pの位置関係をこれに限るものではなく、逆の位置関係にレイアウトしてもよいことは言うまでもない。
【0052】
この構造により、取付器70の下保持部73は、
図9に2点鎖線で示すように、下鉛直部77を横姿勢になるように相対回転させて平板77pを上鉛直部75の開口75a内に差し込んだ後に鉛直姿勢になるように逆回転させることにより、上鉛直部75の背面側に下鉛直部77の平板77pを引き抜き離脱不能かつ上下方向に相対移動可能に位置させつつ連結部75jを介して連結支持することができる。
【0053】
また、下鉛直部77は、下水平部23h2の下面側に、地盤Eの地表面Eg上からの離隔位置に位置決め支持する調整ポール78が取り付けられており、調整ポール78は、下水平部23h2側の雌ネジ連結部78f内に地盤E側の雄ネジ台座部78mのねじ込む量を調整することにより下水平部23h2の地盤Eの地表面Eg上からの離隔支持位置を調整することができる。
【0054】
この構造により、取付器70の下保持部73は、壁板15の大きさに応じて、上鉛直部75の背面側に平板77pを位置させて離脱不能かつ上下動自在に連結支持されている下鉛直部77を高さ方向に、言い換えると、下断熱材13の上面13uに合わせる上水平部23h1から下水平部23h2までの長さを自在に調整するとともに、その下水平部23h2下の調整ポール78の長さを調整して地盤Eの地表面Eg上に位置決め支持する高さを調整することができる。
【0055】
このため、取付器70は、断熱材10(11、13)の高さに合わせて壁板15を任意の大きさに作製して、その壁板15を上保持部21の水平部21hから下保持部73の下水平部23h2の間に設置可能に調整することができ、基礎Fに断熱材10(11、13)を着脱可能に壁板15を設置することができる。
【0056】
このように、本実施形態の取付器70にあっては、上述実施形態による作用効果に加えて、上述実施形態におけるスリット57sの間隔に合わせるなどの制限なく、壁板15を作製することができる。
【0057】
したがって、取付器70は、壁板15の作製の自由度を向上させて断熱材10の取付構造を簡素化し、また、その取付構造の作製を容易化することができる。
【0058】
ここで、本実施形態では、取付器70の下保持部73に調整ポール78を設置する場合を一例にして説明するが、これに限るものではなく、高さの調整機能を有しない部材に代えてもよく、また、その下保持部73の下水平部23h2を地盤Eの地表面Eg上に直接支持させるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0059】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0060】
10……断熱材
11……上断熱材
11s、13s……外側面
13……下断熱材
15……壁板
20、50、70……取付器
21……上保持部
21d……降下部
21h……水平部
21v……鉛直部
23、53、73……下保持部
23h1……上水平部
23h2……下水平部
23p……突刺部
23u……上昇部
23v……鉛直部
55、75……上鉛直部
55f……フック
57、77……下鉛直部
57s……スリット
75a……開口
75j……連結部
77p……平板
78……調整ポール
Bf……土台
E……地盤
Eg……地表面
F……基礎
Fs……外側面