(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028464
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】スライドテーブル装置
(51)【国際特許分類】
F16D 1/02 20060101AFI20230224BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230224BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20230224BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F16D1/02 100
F16H25/22 Z
F16B35/00 C
F16B7/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134176
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】水野 浩司
【テーマコード(参考)】
3J039
3J062
【Fターム(参考)】
3J039AA01
3J039BB01
3J039GA02
3J039GA03
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA14
3J062CD04
3J062CD22
(57)【要約】
【課題】ロストモーションが小さく、位置決めの精度が高いスライドテーブル装置を提供することである。
【解決手段】スライドテーブル装置は、スクリューシャフトと、前記スクリューシャフトに対して移動可能に連結されたテーブルと、モータと、前記モータの回転軸と前記スクリューシャフトとを連結するカップリング部材と、前記スクリューシャフトを支持するベアリングと、を備える。前記カップリング部材の側壁には、軸方向に対して垂直に、第1の貫通孔が形成される。前記カップリング部材に挿入された前記スクリューシャフトの外周面における、前記カップリング部材の前記第1の貫通孔に対応する位置には、軸方向に対して垂直に円錐形状の凹部が形成される。前記第1の貫通孔を貫通し、前記凹部に到達する第1の止めねじが取り付けられて、前記第1の止めねじと前記凹部の壁面とが圧接される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューシャフトと、
前記スクリューシャフトに対して移動可能に連結されたテーブルと、
前記スクリューシャフトを回転させるモータと、
前記モータの回転軸と前記スクリューシャフトとを連結するカップリング部材と、
前記スクリューシャフトを支持するベアリングと、
を備え、
前記モータを駆動して前記スクリューシャフトを回転させ、前記スクリューシャフトの回転によって前記スクリューシャフトの軸方向に前記テーブルを移動させるスライドテーブル装置であって、
前記カップリング部材は、軸方向における両端面のそれぞれから軸方向に延びる空洞部を有し、
前記スクリューシャフトは、ねじ溝が形成された第1部分と、前記ベアリングの内輪に少なくとも一部が貫通された第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間にあるフランジ部と、を含み、
前記ベアリングは、前記カップリング部材と前記スクリューシャフトの前記フランジ部との間に挟持されており、
前記スクリューシャフトの第2部分および前記モータの回転軸は、それぞれ前記カップリング部材の前記空洞部に挿入された状態で固定されており、
前記カップリング部材の側壁には、軸方向に対して垂直に、前記カップリング部材の外周面から前記空洞部に貫通する第1の貫通孔が形成され、
前記カップリング部材の前記空洞部に挿入された前記スクリューシャフトの前記第2部分の外周面における、前記カップリング部材の前記第1の貫通孔に対応する位置には、軸方向に対して垂直に円錐形状の凹部が形成されており、
前記第1の貫通孔を貫通し、前記凹部に到達する第1の止めねじが取り付けられて、前記第1の止めねじと前記凹部の壁面とが圧接されている、
スライドテーブル装置。
【請求項2】
前記スクリューシャフトに形成された前記凹部の中心は、前記カップリング部材に形成された前記第1の貫通孔の中心よりも、軸方向において、前記ベアリングに近い位置にある、請求項1に記載のスライドテーブル装置。
【請求項3】
前記第1の止めねじは、先端にテーパ部を有する止めねじであり、
前記テーパ部の側面と前記凹部の壁面とが圧接されている、
請求項1または請求項2に記載のスライドテーブル装置。
【請求項4】
前記カップリング部材には、軸の断面方向に見て前記第1の貫通孔と垂直である位置に、第2の貫通孔が形成されており、
前記第2の貫通孔を貫通し、前記スクリューシャフトの外周面に圧接する第2の止めねじが取り付けられている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスライドテーブル装置。
【請求項5】
さらに、前記スクリューシャフトと平行であるレールを備え、
前記テーブルは、前記レール上を移動可能である、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスライドテーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドテーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドテーブル装置として、レールと、レール上を摺動するテーブルと、レールに平行に配置され、テーブルと連結されたスクリューシャフトと、モータと、を備えており、モータのシャフトとスクリューシャフトとがカップリング部材を介して連結された装置が知られている。この装置では、モータの出力がスクリューシャフトに伝達され、スクリューシャフトの回転に従ってテーブルがレール上を直線的に摺動する。このような装置において、スクリューシャフトのモータ側の端部近傍をベアリングで支持することが公知である。
【0003】
例えば特許文献1に記載された小型スライドテーブル装置では、スクリューシャフトが、ねじ溝が形成されたねじ部と、ねじ部より大径の丸棒からなる支持部と、ねじ部と支持部の間に設けられたフランジ部と、を含む。スクリューシャフトの支持部は、アンギュラベアリングの内輪に貫通されている。アンギュラベアリングの内輪は、スクリューシャフトのフランジ部とカップリング部材の間に挟持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スライドテーブル装置において、ロストモーションが小さく、位置決めの精度が高いものが望まれる。そこで、スライドテーブル装置において、ロストモーションが小さく、位置決めの精度が高いものを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うスライドテーブル装置は、スクリューシャフトと、前記スクリューシャフトに対して移動可能に連結されたテーブルと、前記スクリューシャフトを回転させるモータと、前記モータの回転軸と前記スクリューシャフトとを連結するカップリング部材と、前記スクリューシャフトを支持するベアリングと、を備える。前記スライドテーブル装置は、前記モータを駆動して前記スクリューシャフトを回転させ、前記スクリューシャフトの回転によって前記スクリューシャフトの軸方向に前記テーブルを移動させる。前記カップリング部材は、軸方向における両端面のそれぞれから軸方向に延びる空洞部を有する。前記スクリューシャフトは、ねじ溝が形成された第1部分と、前記ベアリングの内輪に少なくとも一部が貫通された第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間にあるフランジ部とを含む。前記ベアリングは、前記カップリング部材と前記スクリューシャフトの前記フランジ部との間に挟持されている。前記スクリューシャフトの第2部分および前記モータの回転軸は、それぞれ前記カップリング部材の前記空洞部に挿入された状態で固定されている。前記カップリング部材の側壁には、軸方向に対して垂直に、前記カップリング部材の外周面から前記空洞部に貫通する第1の貫通孔が形成されている。前記カップリング部材の空洞部に挿入された前記スクリューシャフトの第2部分の外周面における、前記カップリング部材の前記第1の貫通孔に対応する位置には、軸方向に対して垂直に円錐形状の凹部が形成されている。前記第1の貫通孔を貫通し、前記凹部に到達する第1の止めねじが取り付けられて、前記第1の止めねじと前記凹部の壁面とが圧接されている。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、位置決めの精度が高いスライドテーブル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るスライドテーブル装置1の断面図である。
【
図2】
図2は、スライドテーブル装置1の、
図1におけるA-A断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、スライドテーブル装置1の一部断面斜視図である。
【
図4】
図4は、スライドテーブル装置1の一部断面斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係るスライドテーブル装置101の一部平面図である。
【
図6】
図6は、スライドテーブル装置101の一部断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のスライドテーブル装置は、スクリューシャフトと、前記スクリューシャフトに対して移動可能に連結されたテーブルと、前記スクリューシャフトを回転させるモータと、前記モータの回転軸と前記スクリューシャフトとを連結するカップリング部材と、前記スクリューシャフトを支持するベアリングと、を備える。本開示のスライドテーブル装置は、前記モータを駆動して前記スクリューシャフトを回転させ、前記スクリューシャフトの回転によって前記スクリューシャフトの軸方向に前記テーブルを移動させる。前記カップリング部材は、軸方向における両端面のそれぞれから軸方向に延びる空洞部を有する。前記スクリューシャフトは、ねじ溝が形成された第1部分と、前記ベアリングの内輪に少なくとも一部が貫通された第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間にあるフランジ部と、を含む。前記ベアリングは、前記カップリング部材と前記スクリューシャフトの前記フランジ部との間に挟持されている。前記スクリューシャフトの第2部分および前記モータの回転軸は、それぞれ前記カップリング部材の前記空洞部に挿入された状態で固定されている。前記カップリング部材の側壁には、軸方向に対して垂直に、前記カップリング部材の外周面から前記空洞部に貫通する第1の貫通孔が形成されている。前記カップリング部材の前記空洞部に挿入された前記スクリューシャフトの前記第2部分の外周面における、前記カップリング部材の前記第1の貫通孔に対応する位置には、軸方向に対して垂直に円錐形状の凹部が形成されている。前記第1の貫通孔を貫通し、前記凹部に到達する第1の止めねじが取り付けられて、前記第1の止めねじと前記凹部の壁面とが圧接されている。
【0011】
従来、モータの回転をボールねじのスクリューシャフトに伝達し、ボールねじ機構によってテーブルを所定の位置に移動させるスライドテーブル装置が公知である。このようなスライドテーブル装置において、ボールねじのスクリューシャフトをベアリングで支持することが知られている。ベアリングの内輪にスクリューシャフトが貫通され、ベアリング内輪とスクリューシャフトが一体に回転する構造である。
【0012】
このような構造において、ベアリングのがたつきを押さえるために、スクリューシャフトの途中にフランジ部を設けてベアリングの一方の端面を当接させるとともに、ベアリングの他方の端面にはカラーを当接させて、ベアリングを保持することが知られている(例えば、特許文献1[
図3]、[
図4])。また、スライドテーブル装置の小型化を図るために、カラーを用いることなく、スクリューシャフトとモータシャフトとを連結するためのカップリング部材を、ベアリング支持部材として利用することも知られている(例えば、特許文献1[
図1]、[
図2])。
【0013】
一方で、スライドテーブル装置の中でも、スライド距離が数センチメートル程度であるような小型の装置には、ロストモーションを低減し、極めて高い位置決め精度が求められることがある。ロストモーションを低減するための検討が重ねられた結果、ベアリングとカップリングの間の軸方向における隙間を可能な限り低減するという課題が見出された。従来、カップリングとスクリューシャフトとの間の固定は、カップリングの側壁に形成された貫通孔に止めねじを挿入し、止めねじの先端をスクリューシャフトの外周面に圧接させることによって行われていた。この構造が着目され、スクリューシャフトに対してカップリングを固定する際に、スクリューシャフトのフランジ部とカップリングの間にベアリングを確実に締め込むことができる構造が検討された。
【0014】
本開示の構造によれば、カップリングの貫通孔に対応する位置におけるスクリューシャフトの外周面に、軸方向と垂直に円錐形状の凹部を設け、その凹部を構成する壁面に、貫通孔を貫通した止めねじの先端部の一部が圧接する構造とされている。この構造によれば、止めねじを締め込むに従って、スクリューシャフト全体がカップリングに近づく方向に軸方向に相対的に移動し、スクリューシャフトのフランジ部とカップリングの間の距離が短くなる。このため、フランジ部とカップリングの間に挟み込まれたベアリングは、軸方向の隙間を生じることなく、確実に挟持されることとなる。
【0015】
本開示のスライドテーブル装置によれば、簡易な構成を用いながらも、スクリューシャフトのフランジ部とカップリングの間にベアリングを隙間なく確実に挟持できる。このため、ベアリングのわずかな動きに由来するロストモーションが抑制され、位置決め精度の高いスライドテーブル装置が実現される。
【0016】
前記スクリューシャフトに形成された前記凹部の中心は、前記カップリング部材に形成された前記第1の貫通孔の中心よりも、軸方向において、前記ベアリングに近い位置とすることができる。スクリューシャフトに形成された凹部の中心とは、円錐形状の凹部の頂点に当たる部分である。言い換えると、凹部の最も深い場所である。この場所を、軸方向においてカップリングの貫通孔の中心よりもベアリングに近い位置とする場合、カップリングの貫通孔から止めねじを挿入した時に、スクリューシャフトがカップリングに近づく方向に確実に移動する。このため、スクリューシャフトのフランジ部とカップリングの間にベアリングを隙間なく確実に挟持できる。
【0017】
前記第1の止めねじは、先端にテーパ部を有する止めねじであり、前記テーパ部の側面と前記凹部の壁面とが圧接されているものとできる。このような形状の止めねじを用いることによって、止めねじをスクリューシャフトに対して確実に当接させて、スクリューシャフトを軸方向に動かすことができる。
【0018】
前記カップリング部材には、軸の断面方向に見て前記第1の貫通孔と垂直である位置に、第2の貫通孔が形成されており、前記第2の貫通孔を貫通し、前記スクリューシャフトの外周面に圧接する第2の止めねじが取り付けられているものとできる。この構成によれば、カップリング部材をスクリューシャフトに対して、より確実に固定できる。
【0019】
さらに、前記のスライドテーブル装置は、前記スクリューシャフトと平行であるレールを備え、前記テーブルは、前記レール上を移動可能であってもよい。レールを備えるスライドテーブル装置として、極めて高い位置決め精度を有するスライドテーブル装置を提供できる。
【0020】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のスライドテーブル装置の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本開示の一実施の形態におけるスライドテーブル装置であるスライドテーブル装置1の構造を示す断面模式図である。
図2は、スライドテーブル装置1の、
図1におけるA-A断面を示す断面図である。なお、
図1では、一部の部材は断面ではなく側面を示している。また、
図1および
図2ではスライドテーブル装置1のうち、一部の構成部材を省略している。
【0022】
図1を参照して、スライドテーブル装置1は、ボールねじ機構2と、モータ部7と、基台11と、レール21と、テーブル31とを含む。ボールねじ機構2は、スクリューシャフト4と、ボールナット51と、を含む。モータ部7は、モータシャフト71を含む。スクリューシャフト4は、第1部分としてのねじ部41と、第2部分としての支持部42と、ねじ部41と支持部42との間に形成されたフランジであるフランジ部43と、を含む。テーブル31はボールナット51に固定されている。スクリューシャフト4の支持部42と、モータシャフト71とが、カップリング61を介して連結されている。モータが動作してモータシャフト71が回転すると、スクリューシャフト4も回転する。スクリューシャフト4の回転に従って、ボールナット51およびテーブル31が、スクリューシャフト4のねじ部41の上を直線的に移動する。
【0023】
レール21は、基台11上に敷設されている。レール21とねじ部41は平行である。テーブル31は、スライダ32に連結されている。スライダ32はレール21に摺動自在に跨架されている。テーブル31が移動する時、スライダ32はレール21上を摺動する。レール21およびスライダ32は、公知の直動案内ユニットを適用できる。
【0024】
図1を参照して、モータ部7は、モータシャフト71と、モータ本体を収容するモータハウジング72と、を含む。モータシャフト71は、ベアリングで支持されていてもよい。モータにはモータブラケットが取り付けられていてもよい。モータシャフト71のスライドテーブル側の端部は、カップリング部材61に固定されている。
【0025】
図1,
図2を参照して、ボールねじ機構2は、全体が、基台11およびカバー12で覆われている。カバー12の上面の一部には、軸方向に延びる開口19(
図3)が形成されており、開口19を通じてテーブル31の上部が外部に露出している。
【0026】
基台11上の、レール21のモータ側末端よりもモータ側に、ベアリングハウジング14が配置されている。ベアリングハウジング14は、基台11に対して固定されている。ベアリングハウジング14のモータ側の端面は、ベアリング16の外輪に当接している。また、ベアリングハウジング14のモータ側の端面は、カップリング部材61の径よりも大径の開口52(
図4)が形成されており、カップリング部材61の一部がベアリングハウジング14に進入している。ベアリングハウジング14は、ベアリング15,16の外輪を保持するよう、ベアリング15,16の外輪の外径に対応する中空部を有する。ベアリングハウジング14のテーブル側の端面には、ベアリング押さえ13がベアリングハウジング14に対して固定されている。ベアリング押さえ13は、ベアリング15の外輪の端面に当接している。ベアリング押さえ13は、スクリューシャフト4のフランジ部43よりも大径の開口53(
図3)を有する。フランジ部43とベアリング押さえ13とは、軸方向における同位置に配置される。
【0027】
図1,
図3,
図4を参照して、ねじ部41,支持部42,フランジ部43を含むスクリューシャフト4は、一体として形成された鋼材からなるものであってもよく、複数の部品が組み合わされてなるものであってもよい。支持部42は、ねじ部41よりも大径の丸棒である。フランジ部43は、支持部42よりも大径の円板状の部分である。フランジ部43はベアリング15の内輪に当接している。支持部42は、ベアリング15、16の内輪に貫通されている。支持部42のモータ側の端部はカップリング部材61に挿入され、カップリング部材61に対して固定されている。支持部42のカップリング部材61に挿入される部分には、軸方向に対して垂直に、円錐状の凹部45が形成されている。
【0028】
カップリング部材61は、軸方向に延びる中空円筒形の部材である。カップリング部材61は、軸方向における両端面のそれぞれから軸方向に延びる空洞部を有している。カップリング部材61の空洞部には両端からそれぞれ、モータシャフト71とスクリューシャフト4の支持部42とが挿入された状態で固定されている。なお、空洞部は、
図1に示されるように一方の端面から他方の端面へ軸方向に貫通していてもよいし、両端面のそれぞれから軸方向に延びる2つの空洞部が形成されていてもよい。
【0029】
カップリング部材とシャフトとの固定構造を以下に具体的に説明する。
図1,
図2を参照して、カップリング部材61の側壁には、軸方向に対して垂直に、外周面から空洞部に貫通する貫通孔65、66、67、68が設けられている。第1の貫通孔としての貫通孔65と、第2の貫通孔としての貫通孔67とは、軸方向における同位置に形成されている。また、
図2を参照して、軸の断面方向に見て(つまり、軸方向に垂直な断面を見るとき)貫通孔65と貫通孔67とは、互いに垂直に位置している。貫通孔65、67は、カップリング部材61のテーブル側の端部近く、スクリューシャフト4が挿入される位置にある。貫通孔66,68は、互いに軸方向における同位置に形成されている。また、貫通孔66,68は、軸の断面方向に見て互いに垂直に位置している。貫通孔66、68は、カップリング部材61のモータ側の端部近く、モータシャフト71が挿入される位置にある。貫通孔65、66、67、68は互いに同一の径を有する貫通孔であってよい。
【0030】
図2を参照して、貫通孔65には、第1の止めねじとしての、とがり先の止めねじ(先端に円錐状の尖部が形成されたねじ)62が挿入される。貫通孔67には、第2の止めねじとしての、先端が平坦な止めねじ64が挿入される。止めねじ64の先端は、スクリューシャフト4の支持部42の外周面に圧接している。一方、貫通孔65に挿入される止めねじ62の先端は、スクリューシャフト4の支持部42に形成された凹部45の壁面に圧接している。止めねじ62の先端のテーパ面と凹部45の壁面とが当接しているため、止めねじ62を締め込むに従って、スクリューシャフト4の全体がカップリング部材61に近づく方向に移動する(
図3の矢印を参照)。このため、フランジ部43とカップリング部材61との間隔が狭くなる。この構成によって、ベアリング15,16を、フランジ部43とカップリング部材61との間に確実に挟持できる。
【0031】
貫通孔66には、先端が平坦な止めねじ63が挿入される。同様に、貫通孔68にも先端が平坦な止めねじが挿入される。止めねじ63および貫通孔68に挿入された止めねじが締め込まれ、止めねじの先端がモータシャフト71に圧接することによって、カップリング部材61とモータシャフト71とが固定される。
【0032】
図3はスライドテーブル装置1の一部の断面斜視図である。
図4も同様にスライドテーブル装置1の一部の断面斜視図である。なお、
図3、
図4ともに、一部の構成部材を省いて示している。
【0033】
図3、
図4を参照して、ベアリング15,16は、2個並列して配置されたアンギュラベアリングである。ベアリング15の外輪のテーブル側の端面は、ベアリング押さえ13に当接している。ベアリング16の外輪のモータ側の端面は、ベアリングハウジング14の端面に当接している。ベアリング押さえ13とベアリングハウジング14とは、ねじ18によって固定されている。すなわち、ベアリング15,16の外輪は、ベアリング押さえ13とベアリングハウジング14との間に挟持されている。また、ベアリング15の内輪のテーブル側の端面は、スクリューシャフト4のフランジ部43に当接している。ベアリング16の内輪のモータ側の端面は、カップリング部材61の端面に当接している。カップリング部材61の貫通孔65に止めねじ62を挿入して締め込んでいくと、止めねじ62の先端部のテーパ面が、支持部42の凹部45の斜面をモータの方向に押す。このため、スクリューシャフト4の全体がモータに近づく方向(
図3中の矢印方向)に引っ張られることとなり、フランジ部43とカップリング部材61の間隔が狭くなる。この構成によって、ベアリング15,16と、フランジ部43およびカップリング部材61との間の隙間を無くすことができる。
【0034】
凹部45の頂点45aは、貫通孔65の中心よりも、軸方向にベアリング側に近い位置にある。この構成によれば、汎用的なとがり先の止めねじを用いて確実にスクリューシャフト4をカップリング部材61の方向に引き寄せることができる。なお、凹部45は、円錐形状の凹部であるところ、止めねじ63の先端部におけるモータ側の斜面が、凹部45のモータ側の斜面に当接するようにすればよく、円錐形状について高い精度は求められない。また、止めねじ63は必ずしも先端が円錐形状のとがり先でなくてもよく、先端にテーパ状の尖部を有する止めねじを用いることができる。
【0035】
(実施の形態2)
図5は、本開示の実施の形態2に係るスライドテーブル装置101の一部平面図である。
図6は、
図5の一部の拡大断面図である。以下では、スライドテーブル装置101がスライドテーブル装置1と異なる点を中心に、説明する。
【0036】
図5を参照して、スライドテーブル装置101は、モータ部170と、移動可能なテーブルとボールねじとを含むテーブル部120と、が組み合わされたスライドテーブル装置である。テーブル部120は、スクリューシャフト140と、ボールねじハウジング151とを含む。テーブル部120に、スライドテーブル(不図示)が取り付けられている。モータ部170は、モータ本体を収容するモータハウジング172と、モータアタッチメント174と、モータブラケット173と、を含む。スライドテーブル装置101では、モータブラケット173の内部に、スクリューシャフト140とモータシャフト171(
図6)との連結部が収容されている。
【0037】
図6を参照して、スクリューシャフト140とモータシャフト171とは、カップリング部材161を介して連結されている。スクリューシャフト140は、第1部分としてのねじ部141と、第2部分としての支持部142と、ねじ部141と支持部142との間に形成されたフランジ部143と、を含む。ねじ部141と支持部142は、互いに同じ径に形成されている。モータが動作し、モータシャフト171が回転すると、スクリューシャフト140も回転し、スクリューシャフト140のねじ部141に対して移動可能に連結されたスライドテーブル(不図示)が、ねじ部141に沿って移動する。
【0038】
カップリング部材161は、軸方向に延びる円筒形の部材である。カップリング部材161は、軸方向における両端面のそれぞれから軸方向に延びる2つの空洞部を有している。カップリング部材161の2つの空洞部にはそれぞれ、モータシャフト171とスクリューシャフト140の支持部142とが挿入され、固定されている。カップリング部材161の側壁には、軸方向に対して垂直に、外周面から空洞部に貫通する複数の貫通孔165、166、167、168が設けられている。第1の貫通孔としての貫通孔165と、第2の貫通孔としての貫通孔167とは、軸方向における同位置に形成されている。貫通孔165と貫通孔167とは、軸の断面方向に見て(つまり、軸方向に垂直な断面を見るとき)互いに垂直に位置している。貫通孔165、167は、カップリング部材161のテーブル側の端部近く、スクリューシャフト140が挿入される位置にある。スクリューシャフト140の、カップリング部材161の貫通孔165に対応する位置には、スクリューシャフト140の軸方向に垂直に円錐形状の凹部145が形成されている。貫通孔166、168は軸方向における同位置に、互いに垂直に位置している。貫通孔166,168は、カップリング部材161のモータ側の端部近く、モータシャフト171が挿入される位置にある。
【0039】
スクリューシャフト140のモータ側の端部近傍は、ベアリング115,116によって支持されている。ベアリング115,116は2個並列して配置されたアンギュラベアリングである。ベアリング115の外輪のテーブル側の端面は、ベアリング押さえ117に当接している。ベアリング押さえ117とモータブラケット173は、ボルト118によって固定されている。ベアリング116の外輪のモータ側の端面は、モータブラケット173に形成された段部の面173aに当接している。すなわち、ベアリング115,116の外輪は、ベアリング押さえ117とモータブラケット173との間に挟持されている。
【0040】
ベアリング115の内輪のテーブル側の端面は、スクリューシャフト140のフランジ部143に当接している。ベアリング116の内輪のモータ側の端面は、カップリング部材161の端面に当接している。カップリング部材161の貫通孔165に止めねじ162を挿入して締め込んでいくと、止めねじ162の先端部のテーパ面が、支持部142の凹部145の斜面をモータの方向に押す。このため、スクリューシャフト140の全体がモータに近づく方向(
図6における下方)に引っ張られることとなり、フランジ部143とカップリング部材161の間隔が狭くなる。この構成によって、ベアリング115,116と、フランジ部143およびカップリング部材161との間の隙間を無くすことができる。
【0041】
(変形例)
本開示にかかるスライドテーブル装置において、スクリューシャフトに設けられる凹部は1箇所に限られず、2箇所以上としてもよい。例えば、スクリューシャフトにおいて、止めねじが当接する2箇所の両方に凹部を設けることもできる。また、カップリング部材の貫通孔の配置は、例示した以外の形態であってもよい。例えば、軸方向の異なる位置に2つの貫通孔を配置して、スクリューシャフトまたはモータシャフトを固定してもよい。また、2つの貫通孔が、互いに垂直な位置以外の位置に設けられてもよい。スクリューシャフトまたはモータシャフトを、3つ以上の止めねじで固定する構造としてもよい。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1,101 スライドテーブル装置、11 基台、15,16,115,116, ベアリング、118 ボルト、12 カバー、2 ボールねじ機構、120 テーブル部、13、117 ベアリング押さえ、14 ベアリングハウジング、4,140 スクリューシャフト、41,141 ねじ部、42,142 支持部、43,143 フランジ部、45,145 凹部、151 ボールねじハウジング、61,161 カップリング部材、65,66,67,68,165,166,167,168 貫通孔、7,170 モータ部、71,171 モータシャフト、72,172 モータハウジング、173 モータブラケット、174 モータアタッチメント、19、52,53 開口、21 レール、31 テーブル、32 スライダ、51 ボールナット。