(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028478
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】電力変換装置、分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230224BHJP
【FI】
H02M7/48 R
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134201
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】松田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 樹
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA15
5H770AA19
5H770AA28
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA04
5H770CA05
5H770CA06
5H770GA11
5H770GA19
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770HA04Y
5H770KA01Z
(57)【要約】
【課題】電力変換装置で高精度で堅牢に電力量を計量する。
【解決手段】電力変換装置(10)において、電力変換部(12)は、分散型電源(20)から供給される電力の電圧または電流を変換して、電力系統(2)に出力する。電力変換制御部(15a)は、電力変換部(12)から出力される電圧および電流をもとに、電力変換部(12)を制御するための指令値を生成する。特定計量演算部(15b)は、電力変換部(12)から出力される電圧および電流をもとに、特定計量用の電力量を演算する。電力変換部(12)から出力される電圧および電流を検出して指令値を演算するまでのハードウェア系統と、電力変換部(12)から出力される電圧および電流を検出して特定計量用の電力量を演算するまでのハードウェア系統の一部または全部が、独立に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源から供給される電力の電圧または電流を変換して、電力系統に出力する電力変換部と、
前記電力変換部から出力される電圧および電流をもとに、前記電力変換部を制御するための指令値を生成する電力変換制御部と、
前記電力変換部から出力される電圧および電流をもとに、特定計量用の電力量を演算する特定計量演算部と、を備え、
前記電力変換部から出力される電圧および電流を検出して前記指令値を演算するまでのハードウェア系統と、前記電力変換部から出力される電圧および電流を検出して前記特定計量用の電力量を演算するまでのハードウェア系統の一部または全部が、独立に設けられている、電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換部から出力される電圧を検出して、前記電力変換制御部に出力する第1電圧検出部と、
前記電力変換部から出力される電流を検出して、前記電力変換制御部に出力する第1電流検出部と、
前記電力変換部から出力される電圧を検出して、前記特定計量演算部に出力する第2電圧検出部と、
前記電力変換部から出力される電流を検出して、前記特定計量演算部に出力する第2電流検出部と、
をさらに備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記電力変換制御部は、前記電力変換部から出力される電圧および電流をもとに電力量を演算し、
前記電力変換装置は、
前記電力変換制御部により演算された電力量と、前記特定計量演算部により演算された前記特定計量用の電力量を比較し、両者の誤差が所定の範囲を超える場合、異常と判定するシステム制御部をさらに備える、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換制御部は、第1AD変換部を含み、
前記特定計量演算部は、第2AD変換部を含み、
前記第2AD変換部は、前記第1AD変換部より分解能が高い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換制御部は、
前記電力変換部から出力される電圧および電流を、それぞれアナログ値からデジタル値に変換する第1AD変換部と、
電圧値の調整値と電流値の調整値を保持する第1調整値保持部と、
前記第1AD変換部によりデジタル値に変換された電圧値を前記第1調整値保持部に保持された電圧値の調整値を使用して調整し、前記第1AD変換部によりデジタル値に変換された電流値を前記第1調整値保持部に保持された電流値の調整値を使用して調整する第1誤差調整部と、を含み、
前記特定計量演算部は、
検出された前記電力変換部から出力される電圧および電流を、それぞれアナログ値からデジタル値に変換する第2AD変換部と、
電圧値の調整値と電流値の調整値を保持する第2調整値保持部と、
前記第2AD変換部によりデジタル値に変換された電圧値を前記第2調整値保持部に保持された電圧値の調整値を使用して調整し、前記第2AD変換部によりデジタル値に変換された電流値を前記第2調整値保持部に保持された電流値の調整値を使用して調整する第2誤差調整部と、を含み、
前記第1調整値保持部に保持されている電流値の調整値は、出荷前の校正において、直流電流が印加された状態で前記第1AD変換部によりデジタル値に変換された電流値をもとに設定された値であり、
前記第2調整値保持部に保持されている電流値の調整値は、出荷前の校正において、交流電流が印加された状態で前記第2AD変換部によりデジタル値に変換された電流値をもとに設定された値である、請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第2調整値保持部に保持されている電流値の調整値は、前記第2AD変換部によりデジタル値に変換された後の電流値に、ハイパスフィルタが適用された値をもとに設定された値である、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第2AD変換部は、前記第1AD変換部より分解能が高い、
請求項5または6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
1または複数の分散型電源と、
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置と、
を備えることを特徴とする分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分散型電源から供給される電力を変換するための電力変換装置、分散型電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーへの注目が集まる中、太陽光発電システムや蓄電システムの普及が拡大している。日本では2020年6月にエネルギー供給強靭化法が成立した。エネルギー供給強靭化法には、分散型リソースの活用促進に向けた環境整備のため、特定計量制度が盛り込まれた。
【0003】
特定計量制度は、一定の条件の下、計量法に基づく検定を受けない計量器の使用を特例として許可する制度である。事前に届出を行った事業者(アグリゲータなど)は、家庭などの分散リソース(例えば、太陽光発電、EV)を活用した新たな取引に限り、その届け出た取引に対して、計量法の規定の適用除外を受けることができる。事業者は、適切な計量の実施を確保し、需要家(家庭など)を保護する観点から、使用する計量器の精度の確保、需要家への説明責任が求められる。
【0004】
パワーコンディショナは特例計量器の対象となる。商用電力系統に連系したパワーコンディショナ(例えば、特許文献1参照)では、既に電流検出および電圧検出を行っているため、電流検出部、電圧検出部、およびマイクロコントローラを電力変換制御と特定計量用の電力量演算で共用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電流検出部、電圧検出部、およびマイクロコントローラを共用する場合、検出した電圧値や電流値にズレが生じても、そのズレを認識することが難しい。
【0007】
パワーコンディショナの製造時の校正では、直流流出を検出するために、交流電流ではなく直流電流を印加して、電流検出部のオフセット誤差やゲイン誤差を検出し、それらの誤差を補償するための調整値を算出することが一般的である。しかしながら、直流電流を印加して得られる調整値は、交流電流を印加して得られる調整値より精度が低くなる。
【0008】
特定計量制度では、電力量の演算値が金銭的取引に使用されるため、高精度で堅牢な電力量の演算値が求められる。
【0009】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、高精度で堅牢に電力量を計量することができる電力変換装置、分散型電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力変換装置は、分散型電源から供給される電力の電圧または電流を変換して、電力系統に出力する電力変換部と、前記電力変換部から出力される電圧および電流をもとに、前記電力変換部を制御するための指令値を生成する電力変換制御部と、前記電力変換部から出力される電圧および電流をもとに、特定計量用の電力量を演算する特定計量演算部と、を備える。前記電力変換部から出力される電圧および電流を検出して前記指令値を演算するまでのハードウェア系統と、前記電力変換部から出力される電圧および電流を検出して前記特定計量用の電力量を演算するまでのハードウェア系統の一部または全部が、独立に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電力変換装置で、高精度で堅牢に電力量を計量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る分散型電源システムを説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係る電力変換制御部および特定計量演算部の第1実施例を示す図である。
【
図3】第1実施例に係る電力変換装置による特定計量用の電力量の計量精度判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る電力変換制御部および特定計量演算部の第2実施例を示す図である。
【
図5】電力変換制御用のハードウェア系統の校正工程の流れを示すフローチャートである。
【
図6】特定計量用のハードウェア系統の校正工程の流れを示すフローチャートである。
【
図7】変形例1に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
【
図8】変形例2に係る電力変換装置の構成を説明するための図である。
【
図9】
図9(a)-(b)は、実施の形態に係る分散型電源システムのシステム構成と、従来の分散型電源システムのシステム構成を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係る分散型電源システム1を説明するための図である。実施の形態に係る分散型電源システム1は、分散型電源20、電力変換装置10、および外部接続管理装置30を備える。分散型電源20は、太陽電池、定置型蓄電池、車載蓄電池、燃料電池などが該当する。
【0014】
以下、本実施の形態では、分散型電源20として太陽電池を想定する。太陽電池は光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池として、ヘテロ接合太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを使用することができる。分散型電源20に太陽電池が使用される場合、分散型電源システム1は太陽光発電システムであり、電力変換装置10は太陽電池用のパワーコンディショナである。
【0015】
実施の形態に係る電力変換装置10は、特定計量制度に対応した電力量の計量機能を内蔵するパワーコンディショナである。電力変換装置10は、DC/DCコンバータ11、インバータ12、第1CTセンサ131a、第2CTセンサ131b、第1電流検出部13a、第2電流検出部13b、第1電圧検出部14a、第2電圧検出部14b、電力変換制御部15a、特定計量演算部15b、システム制御部15c、および外部通信部16を備える。
【0016】
DC/DCコンバータ11は、分散型電源20と直流バスBdとの間に接続され、分散型電源20から供給される直流電力の電圧または電流を制御可能なコンバータである。分散型電源20が太陽電池の場合、DC/DCコンバータ11は、昇圧チョッパで構成することができる。昇圧チョッパの制御回路(不図示)は、太陽電池の出力電力が最大になるように昇圧チョッパをMPPT(Maximum Power Point Tracking) 制御する。
【0017】
具体的には当該制御回路は、太陽電池の発電電力が入力される昇圧チョッパの入力電圧および入力電流を計測して太陽電池の発電電力を推定する。当該制御回路は、計測した太陽電池の出力電圧と推定した発電電力をもとに、太陽電池の発電電力を最大電力点(最適動作点)で発電させるための電圧指令値を生成する。当該制御回路は例えば、山登り法にしたがい、動作点電圧を所定のステップ幅で変化させて最大電力点を探索し、最大電力点を維持するように電圧指令値を生成する。当該制御回路は、生成した電圧指令値をもとに、昇圧チョッパのデューティ比を制御する。
【0018】
なお、分散型電源20が蓄電池の場合、DC/DCコンバータ11は双方向DC/DCコンバータで構成される。双方向DC/DCコンバータの制御回路(不図示)は、双方向DC/DCコンバータを使用して、定電流(CC)放電、定電圧(CV)放電、定電流充電、定電圧充電などの充放電制御を行う。
【0019】
なお、分散型電源システム1がハイブリッド蓄電システム(創蓄連携システムとも呼ばれる)である場合、分散型電源20として太陽電池と蓄電池が使用され、太陽電池と直流バスBdとの間に太陽電池用のDC/DCコンバータ11が接続され、蓄電池と直流バスBdとの間に蓄電池用のDC/DCコンバータ11が接続される。さらに電力変換装置10は、電動車に搭載された車載蓄電池を充放電制御するための車載蓄電池用のDC/DCコンバータを備えていてもよい。
【0020】
インバータ12は、直流バスBdと分電盤3との間に接続される。インバータ12は、直流バスBdを介してDC/DCコンバータ11から供給される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を分電盤3に出力する。その際、インバータ12は、出力する交流電力の電圧または電流を変換することができる。なお、分散型電源20が蓄電池の場合、インバータ12は、分電盤3を介して商用電力系統2から供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力をDC/DCコンバータ11に出力することもできる。分電盤3には、商用電力系統2と負荷4が接続される。負荷4は宅内の負荷の総称である。
【0021】
インバータ12の制御回路(不図示)は、電力変換制御部15aから供給される電流指令値、電圧指令値、または電力指令値をもとに、インバータ12の出力電流、出力電圧、または出力電力を制御する。
【0022】
インバータ12と分電盤3との間の配電線PLに第1CTセンサ131aと第2CTセンサ131bが設置される。第1CTセンサ131aと第2CTセンサ131bには、同じ仕様のものが使用されてもよいし、異なる仕様のものが使用されてもよい。異なる仕様のものが使用される場合、第2CTセンサ131bに第1CTセンサ131aより高精度なものが使用される。なお、応答性は、第2CTセンサ131bのほうが第1CTセンサ131aより低くてもよい。
【0023】
第1電流検出部13aは、第1CTセンサ131aにより生成される二次電流をもとに、配電線PLに流れる電流を示す値を生成し、アナログ値で電力変換制御部15aに出力する。例えば、第1電流検出部13aは、第1CTセンサ131aの磁気コアに巻かれたコイルに接続されたシャント抵抗を含み、シャント抵抗の両端電圧を、配電線PLに流れる電流を示す値として電力変換制御部15aに出力する。なお、CT方式の代わりに、ホール素子方式、ロゴスキーコイル方式などを用いてもよい。また、配電線PLに第1CTセンサ131aの代わりにシャント抵抗を直接接続し、シャント抵抗の両端電圧をもとに、配電線PLに流れる電流を示す値を生成してもよい。
【0024】
第2電流検出部13bは、第2CTセンサ131bにより生成される二次電流をもとに、配電線PLに流れる電流を示す値を生成し、アナログ値で特定計量演算部15bに出力する。第1電流検出部13aと第2電流検出部13bには、同じ仕様のものが使用されてもよいし、異なる仕様のものが使用されてもよい。異なる仕様のものが使用される場合、第2電流検出部13bに第1電流検出部13aより高精度なものが使用される。なお、応答性は、第2電流検出部13bのほうが第1電流検出部13aより低くてもよい。
【0025】
第1電圧検出部14aは、配電線PLの電圧を示す値を生成し、アナログ値で電力変換制御部15aに出力する。例えば、第1電圧検出部14aは、分圧抵抗と誤差増幅器を含み、配電線PLの電圧(通常、200V程度)を、分圧抵抗と誤差増幅器で小さな電圧に変換した値を電力変換制御部15aに出力する。
【0026】
第2電圧検出部14bは、配電線PLの電圧を示す値を生成し、アナログ値で特定計量演算部15bに出力する。第1電圧検出部14aと第2電圧検出部14bには、同じ仕様のものが使用されてもよいし、異なる仕様のものが使用されてもよい。異なる仕様のものが使用される場合、第2電圧検出部14bに第1電圧検出部14aより高精度なものが使用される。なお、応答性は、第2電圧検出部14bのほうが第1電圧検出部14aより低くてもよい。
【0027】
電力変換制御部15aは、第1電流検出部13aから入力される配電線PLに流れる電流(インバータ12の出力電流)を示す値と、第1電圧検出部14aから入力される配電線PLの電圧(インバータ12の出力電圧)を示す値をもとに、インバータ12を制御するための指令値を生成する。
【0028】
特定計量演算部15bは、第2電流検出部13bから入力される配電線PLに流れる電流(インバータ12の出力電流)を示す値と、第2電圧検出部14bから入力される配電線PLの電圧(インバータ12の出力電圧)を示す値をもとに、特定計量用の電力量を演算する。
【0029】
システム制御部15cは、電力変換制御部15a、特定計量演算部15b、および外部通信部16と連携し、システム全体を制御する。電力変換制御部15a、特定計量演算部15b、およびシステム制御部15cは、それぞれ一つのマイクロコントローラで構成される。
【0030】
図2は、実施の形態に係る電力変換制御部15aおよび特定計量演算部15bの第1実施例を示す図である。第1実施例では、電力変換制御部15aは、第1AD変換部151a、第1換算部152a、第1電力量演算部153a、および指令値生成部154aを含む。
【0031】
第1AD変換部151aは、第1電流検出部13aから入力されるインバータ12の出力電流を示す値を、アナログ値からデジタル値に変換して第1換算部152aに出力する。第1AD変換部151aは、第1電圧検出部14aから入力されるインバータ12の出力電圧を示す値を、アナログ値からデジタル値に変換して第1換算部152aに出力する。
【0032】
第1AD変換部151aは、インバータ12の出力電流を示す値をアナログ値からデジタル値に変換するAD変換器と、インバータ12の出力電圧を示す値をアナログ値をデジタル値に変換するAD変換器をそれぞれ独立に設けてもよいし、一つのAD変換器を時分割共有してもよい。
【0033】
第1換算部152aは、第1AD変換部151aから入力されるインバータ12の出力電流を示す値を、インバータ12の出力電流値に換算して、指令値生成部154aと第1電力量演算部153aに出力する。第1換算部152aは、第1AD変換部151aから入力されるインバータ12の出力電圧を示す値を、インバータ12の出力電圧値に換算して、指令値生成部154aと第1電力量演算部153aに出力する。
【0034】
指令値生成部154aは、インバータ12の出力電流値および出力電圧値の少なくとも一方をもとに、インバータ12を制御するための指令値を生成する。系統連系モードにおいて、電力変換装置10から定電流を出力する場合、指令値生成部154aは、計測されたインバータ12の出力電流値と目標電流値との差分をゼロに近づけるための電流指令値を生成する。
【0035】
系統連系モードにおいて、電力変換装置10から定電力を出力する場合、指令値生成部154aは、インバータ12の出力電流値と出力電圧値を乗算してインバータ12の出力電力値を演算する。指令値生成部154aは、演算したインバータ12の出力電力値と目標電力値との差分をゼロに近づけるための電力指令値を生成する。系統連系モードにおいて、電力変換装置10から太陽電池の最大電力を出力し続ける場合、指令値生成部154aは、直流バスBdの電圧値と目標電圧値との差分をゼロに近づけるための電圧指令値を生成する。
【0036】
自立運転モードでは、指令値生成部154aは、インバータ12の出力電圧値と目標電圧値との差分をゼロに近づけるための電圧指令値を生成する。自立運転モードにおける目標電圧値は、通常、系統電圧値に設定される。
【0037】
第1電力量演算部153aは、インバータ12の出力電流値と出力電圧値を乗算してインバータ12の出力電力を演算する。第1電力量演算部153aは、各時刻で演算した電力値を積算して、所定期間の電力量を演算する。第1電力量演算部153aは、演算した電力量をシステム制御部15cに出力する。
【0038】
特定計量演算部15bは、第2AD変換部151b、第2換算部152b、および第2電力量演算部153bを含む。第2AD変換部151bは、第2電流検出部13bから入力されるインバータ12の出力電流を示す値を、アナログ値からデジタル値に変換して第2換算部152bに出力する。第2AD変換部151bは、第2電圧検出部14bから入力されるインバータ12の出力電圧を示す値を、アナログ値からデジタル値に変換して第2換算部152bに出力する。
【0039】
第2AD変換部151bは、インバータ12の出力電流を示す値をアナログ値からデジタル値に変換するAD変換器と、インバータ12の出力電圧を示す値をアナログ値からデジタル値に変換するAD変換器をそれぞれ独立に設けてもよいし、一つのAD変換器を時分割共有してもよい。
【0040】
第2換算部152bは、第2AD変換部151bから入力されるインバータ12の出力電流を示す値を、インバータ12の出力電流値に換算して第2電力量演算部153bに出力する。第2換算部152bは、第2AD変換部151bから入力されるインバータ12の出力電圧を示す値を、インバータ12の出力電圧値に換算して第2電力量演算部153bに出力する。
【0041】
第2電力量演算部153bは、インバータ12の出力電流値と出力電圧値を乗算してインバータ12の出力電力値を演算する。第2電力量演算部153bは、各時刻で演算した電力値を積算して所定期間の電力量を演算する。第2電力量演算部153bは、演算した電力量をシステム制御部15cに出力する。
【0042】
第1AD変換部151aと第2AD変換部151bには、異なる仕様のものが使用される。第2AD変換部151bに第1AD変換部151aより高精度のものが使用される。第2AD変換部151bには、第1AD変換部151aより分解能が高いものが使用される。例えば、第1AD変換部151aには10~12ビットの分解能のものが使用され、第2AD変換部151bには20~24ビットの分解能のものが使用されてもよい。
【0043】
なお、インバータ12のフィードバック制御と比較して、特定計量用の電力量の演算はリアルタイム性の要求が低いため、第2AD変換部151bは、第1AD変換部151aより応答性が低いものが使用されてもよい。
【0044】
以上の観点から本実施の形態では、第1AD変換部151aに逐次比較型のAD変換器が使用され、第2AD変換部151bにΔΣ型のAD変換器が使用される。ΔΣ型のAD変換器は、逐次比較型のAD変換器より変換精度が高い。逐次比較型のAD変換器は、ΔΣ型のAD変換器より高速動作が可能である。
【0045】
以上の説明において、第1CTセンサ131a、第1電流検出部13a、第1電圧検出部14a、および電力変換制御部15aは、電力変換制御用の系統の構成要素である。第2CTセンサ131b、第2電流検出部13b、第2電圧検出部14b、および特定計量演算部15bは、特定計量用の系統の構成要素である。
図1、
図2に示す構成例では、電力変換制御用のハードウェア系統と、特定計量用のハードウェア系統の全てが独立に設けられている。
【0046】
図1に戻る。システム制御部15cは、電力変換制御部15aにより演算された電力量と、特定計量演算部15bにより演算された特定計量用の電力量を比較する。システム制御部15cは、両者の誤差が所定の範囲を超える場合、異常が発生していると判定する。両者の誤差が所定の範囲内の場合、システム制御部15cは、特定計量演算部15bにより演算された特定計量用の電力量を外部通信部16に出力する。
【0047】
外部通信部16は、システム制御部15cから入力される特定計量用の電力量を、所定の通信フォーマットで外部接続管理装置30に送信する。
【0048】
外部接続管理装置30は、電力検出ユニットであってもよいし、リモコン設定器であってもよい。外部接続管理装置30と電力変換装置10との間は有線(例えば、RS-485規格に準拠したケーブル)で接続されてもよいし、無線(例えば、Wi-Fi(登録商標)、小電力無線)で接続されてもよい。外部接続管理装置30はルータ装置5に接続される。外部接続管理装置30とルータ装置5との間は有線(例えば、LANケーブル)または無線(例えば、Wi-Fi)で接続される。
【0049】
外部接続管理装置30にはモニタ(不図示)を接続することができる。外部接続管理装置30とモニタは直接接続されてもよいし、ルータ装置5を介して接続されてもよい。モニタには、太陽光発電システムの発電量、買電量、売電量、使用電力量、時間帯別の電気料金などを表示させることができる。なお、これらの情報は、ルータ装置5に無線または有線で接続されたユーザが所持する情報端末(例えば、スマートフォンやPCなど)の画面に表示させることもできる。
【0050】
外部接続管理装置30またはモニタは記録媒体を含み、電力量の計測データをログデータとして記録媒体に保存することができる。記録媒体は、内蔵式でもよいし、着脱式のリムーバブル記録媒体であってもよい。
【0051】
外部接続管理装置30は、外部のネットワーク6に接続するためのゲートウェイとしての機能を担う。ネットワーク6は、インターネット、専用線、VPN(Virtual Private Network)などの通信路の総称であり、その通信媒体やプロトコルは問わない。通信媒体として例えば、光ファイバ網、ADSL網、CATV網、モバイル通信網、無線LAN、有線LANなどを使用することができる。通信プロトコルとして例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)/IP、イーサネット(登録商標)などを使用することができる。
【0052】
外部接続管理装置30は、電力変換装置10の外部通信部16から受信した計量用の電力量を、ネットワーク6を経由して外部のサーバ7に送信する。外部のサーバ7は、小売電気事業者、アグリゲータ、送配電事業者などにより管理・運営されるサーバである。これらの事業者は、電力変換装置10により計量された電力量をベースに、電気料金を算出することができる。
【0053】
なお、外部接続管理装置30がリモコン設定器の場合、外部接続管理装置30は、電力変換装置10を操作するための操作端末としての機能も担う。なお、電力変換装置10の本体に操作部が設けられていてもよい。
【0054】
図3は、第1実施例に係る電力変換装置10による特定計量用の電力量の計量精度判定処理の流れを示すフローチャートである。電力変換装置10が稼働中(S10のY)、電力変換制御部15aは、インバータ12が出力する電力量P1を演算し(S11)、特定計量演算部15bは、インバータ12が出力する電力量P2を演算する(S12)。システム制御部15cは、電力変換制御部15aで演算された電力量P1と、特定計量演算部15bで演算された電力量P2の誤差を算出する(S13)。
【0055】
システム制御部15cは、誤差が許容範囲内であるか否か判定する(S14)。日本では、資源エネルギー庁の計量専門委員会において、特定計量に使用する計量器は、新たな電力取引を行おうとする届出者が、取引当事者間のニーズや取引規模や使用用途などを踏まえて、使用中の公差を0.9%~10%の7段階の中から柔軟に選択できることとされた。公差とは、計量値から真値を減じた値の真値に対する割合の絶対値で表される許容差をいう。例えば、n3階級が選択される場合、検査時の公差が2.0%、使用中の公差が3.0%と規定されている。n3階級は、一般送配電事業者の送電網を介した取引において、取引規模に関わらず、取引の相手方に対して説明責任を負わずに取引が可能な階級である。
【0056】
例えば、電力変換制御部15aで演算される電力量P1の最大公差が8%の場合で、特定計量演算部15bで演算される電力量P2の公差が3%以内に収まっている場合、電力量P1と電力量P2の比率は、約0.893~約1.119の範囲に収まる。この例では、電力量P1と電力量P2との間に約12%以上のズレが発生している場合、電力変換制御用の系統と特定計量用の系統の少なくとも一方に異常が発生していると推定することができる。設計者は、電力変換制御部15aで演算される電力量P1の最大公差と、特定計量演算部15bで演算される電力量P2の目標とする公差をもとに、電力量P1と電力量P2の誤差の許容範囲を設定することができる。
【0057】
ステップS14において、電力量P1と電力量P2の誤差が許容範囲内である場合(S14のY)、システム制御部15cは、特定計量演算部15bで演算される電力量P2を外部通信部16に通知する(S15)。電力量P1と電力量P2の誤差が許容範囲外である場合(S14のN)、システム制御部15cは、エラー処理を実行する(S16)。
【0058】
例えば、システム制御部15cは電力変換装置10を自動で再起動し、電力量P1と電力量P2の誤差が許容範囲内に収まるか検査する。所定の回数、再起動しても、電力量P1と電力量P2の誤差が許容範囲内に収まらない場合、システム制御部15cはモニタまたはユーザが所持する情報端末に、計量機能のエラーを表示させる。モニタまたは情報端末を見たユーザは、メンテナンス担当者に連絡して修理を依頼する。なお、システム制御部15cは、ネットワーク6を介して、電力変換装置10のメーカのサービスセンタに設置された端末装置に直接、修理依頼を送信してもよい。
【0059】
以上に説明したステップS11-ステップS16の処理が、電力変換装置10が停止するまで(S10のN)、常時実行される。なお、電力量P1と電力量P2の比較判定処理は、常時ではなく定期的に実行されてもよい。
【0060】
図4は、実施の形態に係る電力変換制御部15aおよび特定計量演算部15bの第2実施例を示す図である。第2実施例では、電力変換制御部15aは、第1AD変換部151a、第1電力量演算部153a、および指令値生成部154aに加えて、第1調整値保持部155aと第1誤差調整部156aをさらに含む。特定計量演算部15bは、第2AD変換部151bおよび第2電力量演算部153bに加えて、第2調整値保持部155bと第2誤差調整部156bをさらに含む。
【0061】
第1調整値保持部155aおよび第2調整値保持部155bは、それぞれマイクロコントローラの不揮発メモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory))内に構築される。
【0062】
電力変換装置10の製造時に、電力変換制御用のハードウェア系統の校正と、特定計量用のハードウェア系統の校正が実施される。それぞれのハードウェア系統を構成する、CTセンサ131、電流検出部13、電圧検出部14、マイクロコントローラには様々な能動素子(例えば、オペアンプ、トランジスタ、ダイオード)と受動素子(例えば、抵抗器、コイル、コンデンサ)が使用されている。これらの素子は、プロセスバラツキなどによる個体差があり、オフセット誤差やゲイン誤差を含んでいる。
【0063】
製造時の校正工程では、電力変換制御用のハードウェア系統の誤差が計測され、当該誤差を補償するための調整値(補正値ともいう)がマイクロコントローラ内の不揮発メモリに設定登録される。同様に、特定計量用のハードウェア系統の誤差が計測され、当該誤差を補償するための調整値がマイクロコントローラ内の不揮発メモリに設定登録される。
【0064】
図5は、電力変換制御用のハードウェア系統の校正工程の流れを示すフローチャートである。校正機器(不図示)は、第1電圧検出部14aに校正用の交流電圧を印加する(S20)。校正機器は、校正用の交流電圧を印加した状態で、第1換算部152aから出力される電圧値を取得する(S21)。校正機器は、印加した電圧値と取得した電圧値をもとに、電力変換制御用のハードウェア系統の電圧値の調整値を算出する(S22)。具体的には、印加した電圧値と取得した電圧値とのゲイン誤差を補償するための調整値を算出する。算出された電圧値の調整値が、電力変換装置10の出荷前に第1調整値保持部155aに設定される(S23)。
【0065】
校正機器は、第1CTセンサ131aに校正用の直流電流を印加する(S24)。校正機器は、校正用の直流電流を印加した状態で、第1換算部152aから出力される電流値を取得する(S25)。校正機器は、印加した電流値と取得した電流値をもとに、電力変換制御用のハードウェア系統の電流値の調整値を算出する(S26)。具体的には、印加した電流値と取得した電流値とのオフセット誤差とゲイン誤差を補償するための調整値を算出する。算出された電流値の調整値が、電力変換装置10の出荷前に第1調整値保持部155aに設定される(S27)。
【0066】
図6は、特定計量用のハードウェア系統の校正工程の流れを示すフローチャートである。校正機器は、第2電圧検出部14bに校正用の交流電圧を印加する(S30)。校正機器は、校正用の交流電圧を印加した状態で、第2換算部152bから出力される電圧値を取得する(S31)。校正機器は、印加した電圧値と取得した電圧値をもとに、特定計量用のハードウェア系統の電圧値の調整値を算出する(S32)。具体的には、印加した電圧値と取得した電圧値とのゲイン誤差を補償するための調整値を算出する。算出された電圧値の調整値が、電力変換装置10の出荷前に第2調整値保持部155bに設定される(S33)。
【0067】
校正機器は、第2CTセンサ131bに校正用の交流電流を印加する(S34)。校正機器は、校正用の交流電流を印加した状態で、第2換算部152bから出力される電流値を取得する(S35)。校正機器は、取得した電流値にハイパスフィルタを適用する(S36)。具体的には、取得した電流値を微分する。これにより、取得した電流値から直流成分がカットされ、オフセット誤差が除去される。
【0068】
校正機器は、印加した電流値とハイパスフィルタ適用後の電流値をもとに、特定計量用のハードウェア系統の電流値の調整値を算出する(S37)。具体的には、印加された電流値とハイパスフィルタ適用後の電流値とのゲイン誤差を補償するための調整値を算出する。算出された電流値の調整値が、電力変換装置10の出荷前に第2調整値保持部155bに設定される(S38)。
【0069】
図4に戻る。電力変換制御部15aの第1誤差調整部156aは、第1換算部152aから出力される電圧値を、第1調整値保持部155aに設定されている電圧値の調整値を使用して調整する。同様に、第1誤差調整部156aは、第1換算部152aから出力される電流値を、第1調整値保持部155aに設定されている電流値の調整値を使用して調整する。
【0070】
特定計量演算部15bの第2誤差調整部156bは、第2換算部152bから出力される電圧値を、第2調整値保持部155bに設定されている電圧値の調整値を使用して調整する。同様に、第2誤差調整部156bは、第2換算部152bから出力される電流値を、第2調整値保持部155bに設定されている電流値の調整値を使用して調整する。
【0071】
図7は、変形例1に係る電力変換装置10の構成を説明するための図である。変形例1に示す電力変換装置10では、
図1に示した第1CTセンサ131aと第2CTセンサ131bが共通化され、一つのCTセンサ131が設置される。この場合、CTセンサ131の冗長性が低下するが、コストを削減することができる。
【0072】
図8は、変形例2に係る電力変換装置10の構成を説明するための図である。変形例2に示す電力変換装置10では、
図1に示した第1CTセンサ131aと第2CTセンサ131bが共通化され、一つのCTセンサ131が設置され、第1電流検出部13aと第2電流検出部13bが共通化され、一つの電流検出部13が設置され、第1電圧検出部14aと第2電圧検出部14bが共通化され、一つの電圧検出部14が設置される。この場合、CTセンサ131、電流検出部13、および電圧検出部14の冗長性が低下するが、コストを削減することができる。なお、電流検出部13と電圧検出部14の一方を冗長化し、他方を共通化した構成でもよい。
【0073】
上記の説明では、電力変換制御部15a、特定計量演算部15b、およびシステム制御部15cが、それぞれ一つのマイクロコントローラで構成されるとしたが、電力変換制御部15aと特定計量演算部15bが一つのマイクロコントローラに統合されてもよい。また、特定計量演算部15bとシステム制御部15cが一つのマイクロコントローラに統合されてもよいし、電力変換制御部15aとシステム制御部15cが一つのマイクロコントローラに統合されてもよい。また、電力変換制御部15a、特定計量演算部15b、およびシステム制御部15cが一つのマイクロコントローラに統合されてもよい。
【0074】
このように、電力変換制御用のハードウェア系統と、特定計量用のハードウェア系統の一部が共通化され、それ以外が独立に設けられてもよい。
【0075】
以上説明したように本実施の形態によれば、電力変換制御用のハードウェア系統と、特定計量用のハードウェア系統の一部または全部を独立に設けることにより、高精度で堅牢に電力量を計量することができる。
【0076】
図9(a)-(b)は、実施の形態に係る分散型電源システム1のシステム構成と、従来の分散型電源システム1のシステム構成を比較した図である。
図9(b)に示す従来の分散型電源システム1では、電力変換装置10と分電盤3との間に、電力量計8(例えば、スマートメータ)が設置される。
図9(a)に示す実施の形態に係る分散型電源システム1では、電力変換装置10で電力量を計量することで、電力量計8を省略することができる。
【0077】
電力変換装置10に既に設けられている電流検出部、電圧検出部、およびマイクロコントローラを電力量演算用としても使用する場合、検出した電圧値や電流値に真値とのズレが生じていても、そのズレを認識することが難しい。これに対して本実施の形態では、電力変換制御用のハードウェア系統と、特定計量用のハードウェア系統を独立させることにより、それぞれの系統で演算された電力量の比較が可能となる。これにより、堅牢で信頼性の高い電力量の計量が可能となる。
【0078】
電力変換装置10の製造時の校正では、直流流出による不安全を回避する観点から、交流電流ではなく直流電流を印加して、電流検出部のオフセット誤差やゲイン誤差を検出し、それらの誤差を補償するための調整値を算出することが一般的である。しかしながら、DCバイアスで算出された調整値は、オフセット誤差とゲイン誤差を完全に補償できるものではなく誤差が残る。また、非線形性誤差も補償できない。これに対して、ACバイアスでは、ゲイン調整する際に非線形性誤差が丸められる。したがって、ACバイアスで算出された調整値のほうが、DCバイアスで算出された調整値より非線形性誤差の補償精度が高くなる。
【0079】
本実施の形態では、電力変換制御用のハードウェア系統の校正においてDCバイアスで調整値を算出し、特定計量用のハードウェア系統の校正においてACバイアスで調整値を算出する。電力変換制御用のハードウェア系統には直流流出を検出する機能が必要であるため、DCバイアスで調整値を算出する必要がある。これにより、インバータ12の誤作動によりインバータ12から直流成分が流出した場合、電力変換制御部15aがインバータ12を停止させることができ、感電リスクや出力先の機器の故障リスクを抑えることができる。
【0080】
直流流出を検出する機能は、電力変換制御部15aに実装されるため、特定計量演算部15bに実装される必要はない。また、電力量の演算には直流値は不要である。そこで、特定計量用のハードウェア系統の校正ではACバイアスで調整値を算出する。その際、ハイパスフィルタを用いて直流成分をカットする。
【0081】
ハイパスフィルタを第2AD変換部151bより後段に配置することにより、第2AD変換部151bに含まれるオペアンプなどの素子による誤差も補償された調整値を算出することができる。この点、ハイパスフィルタを第2AD変換部151bより前段に配置すると、第2AD変換部151bで発生する誤差を補償できない調整値が算出されることになる。
【0082】
このように、電力変換制御用のハードウェア系統をDCバイアスで調整し、特定計量用のハードウェア系統をACバイアスで調整することにより、安全性を確保しつつ、電力量の計量精度を向上させることができる。
【0083】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に容易に理解されるところである。
【0084】
上記実施の形態では、システム制御部15cで、電力変換制御部15aにより演算された電力量と、特定計量演算部15bにより演算された特定計量用の電力量が比較され、その誤差が所定の範囲に収まっているか否か判定された。この点、第2実施例では、この電力量の比較・判定処理が必須ではない。すなわち、システム制御部15cは、特定計量演算部15bにより演算された特定計量用の電力量をそのまま外部通信部16に出力してもよい。この場合、特定計量用の電力量のズレをリアルタイムに検出することはできないが、電力変換制御用のハードウェア系統をDCバイアスで調整し、特定計量用のハードウェア系統をACバイアスで調整することによるメリットは享受される。
【0085】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0086】
[項目1]
分散型電源(20)から供給される電力の電圧または電流を変換して、電力系統(2)に出力する電力変換部(12)と、
前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流をもとに、前記電力変換部(12)を制御するための指令値を生成する電力変換制御部(15a)と、
前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流をもとに、特定計量用の電力量を演算する特定計量演算部(15b)と、を備え、
前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流を検出して前記指令値を演算するまでのハードウェア系統と、前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流を検出して前記特定計量用の電力量を演算するまでのハードウェア系統の一部または全部が、独立に設けられている、電力変換装置(10)。
これによれば、高精度で堅牢な電力量の計量を実現することができる。
[項目2]
前記電力変換部(12)から出力される電圧を検出して、前記電力変換制御部(15a)に出力する第1電圧検出部(14a)と、
前記電力変換部(12)から出力される電流を検出して、前記電力変換制御部(15a)に出力する第1電流検出部(13a)と、
前記電力変換部(12)から出力される電圧を検出して、前記特定計量演算部(15b)に出力する第2電圧検出部(14b)と、
前記電力変換部(12)から出力される電流を検出して、前記特定計量演算部(15b)に出力する第2電流検出部(13b)と、
をさらに備える、項目1に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、電圧検出部と電流検出部を冗長化することにより、堅牢なシステムを構築することができる。
[項目3]
前記電力変換制御部(15a)は、前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流をもとに電力量を演算し、
前記電力変換装置(10)は、
前記電力変換制御部(15a)により演算された電力量と、前記特定計量演算部(15b)により演算された前記特定計量用の電力量を比較し、両者の誤差が所定の範囲を超える場合、異常と判定するシステム制御部(15c)をさらに備える、項目1または2に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、特定計量用の電力量の真値とのズレが発生しているか否かを認識することができる。
[項目4]
前記電力変換制御部(15a)は、第1AD変換部(151a)を含み、
前記特定計量演算部(15b)は、第2AD変換部(151b)を含み、
前記第2AD変換部(151b)は、前記第1AD変換部(151a)より分解能が高い、
項目1から3のいずれか1項に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、コストを抑制しつつ、特定計量用の電力量の計量精度を向上させることができる。
[項目5]
前記電力変換制御部(15a)は、
前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流を、それぞれアナログ値からデジタル値に変換する第1AD変換部(151a)と、
電圧値の調整値と電流値の調整値を保持する第1調整値保持部(155a)と、
前記第1AD変換部(151a)によりデジタル値に変換された電圧値を前記第1調整値保持部(155a)に保持された電圧値の調整値を使用して調整し、前記第1AD変換部(151a)によりデジタル値に変換された電流値を前記第1調整値保持部(155a)に保持された電流値の調整値を使用して調整する第1誤差調整部と、を含み、
前記特定計量演算部(15b)は、
検出された前記電力変換部(12)から出力される電圧および電流を、それぞれアナログ値からデジタル値に変換する第2AD変換部(151b)と、
電圧値の調整値と電流値の調整値を保持する第2調整値保持部(155b)と、
前記第2AD変換部(151b)によりデジタル値に変換された電圧値を前記第2調整値保持部(155b)に保持された電圧値の調整値を使用して調整し、前記第2AD変換部(151b)によりデジタル値に変換された電流値を前記第2調整値保持部(155b)に保持された電流値の調整値を使用して調整する第2誤差調整部と、を含み、
前記第1調整値保持部(155a)に保持されている電流値の調整値は、出荷前の校正において、直流電流が印加された状態で前記第1AD変換部(151a)によりデジタル値に変換された電流値をもとに設定された値であり、
前記第2調整値保持部(155b)に保持されている電流値の調整値は、出荷前の校正において、交流電流が印加された状態で前記第2AD変換部(151b)によりデジタル値に変換された電流値をもとに設定された値である、項目1または2に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、安全性を確保しつつ、特定計量用の電力量の計量精度を向上させることができる。
[項目6]
前記第2調整値保持部(155b)に保持されている電流値の調整値は、前記第2AD変換部(151b)によりデジタル値に変換された後の電流値に、ハイパスフィルタが適用された値をもとに設定された値である、項目5に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、特定計量用の調整値の精度を向上させることができる。
[項目7]
前記第2AD変換部(151b)は、前記第1AD変換部(151a)より分解能が高い、
項目5または6に記載の電力変換装置(10)。
これによれば、コストを抑制しつつ、特定計量用の電力量の計量精度を向上させることができる。
[項目8]
1または複数の分散型電源(20)と、
項目1から7のいずれか1項に記載の電力変換装置(10)と、
を備えることを特徴とする分散型電源システム(1)。
これによれば、高精度で堅牢な電力量の計量を実現することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 分散型電源システム、 2 商用電力系統、 3 分電盤、 4 負荷、 5 ルータ装置、 6 ネットワーク、 7 サーバ、 8 電力量計、 10 電力変換装置、 Bd 直流バス、 PL 配電線、 11 DC/DCコンバータ、 12 インバータ、 13a 第1電流検出部、 13b 第2電流検出部、 131a 第1CTセンサ、 131b 第2CTセンサ、 14a 第1電圧検出部、 14b 第2電圧検出部、 15a 電力変換制御部、 15b 特定計量演算部、 15c システム制御部、 151a 第1AD変換部、 151b 第2AD変換部、 152a 第1換算部、 152b 第2換算部、 153a 第1電力量演算部、 153b 第2電力量演算部、 154a 指令値生成部、 155a 第1調整値保持部、 155b 第2調整値保持部、 156a 第1誤差調整部、 156b 第2誤差調整部、 16 外部通信部、 20 分散型電源、 30 外部接続管理装置。