(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000285
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】赤外線透過ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 4/10 20060101AFI20221222BHJP
C03C 3/062 20060101ALI20221222BHJP
C03C 3/253 20060101ALI20221222BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C03C4/10
C03C3/062
C03C3/253
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101022
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩永 基志
(72)【発明者】
【氏名】松下 佳雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史雄
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
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4G062NN15
(57)【要約】
【課題】 赤外域における優れた光透過特性を有する赤外線透過ガラスを提供する。
【解決手段】 モル%で、S+Se+Te 20%~90%、Ge 0%超~40%、Al+Si 0%超~50%、Mg+Ca 0.01%~20%を含有する、赤外線透過ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モル%で、S+Se+Te 20%~90%、Ge 0%超~40%、Al+Si 0%超~50%、Mg+Ca 0.01%~20%を含有する、赤外線透過ガラス。
【請求項2】
モル%で、Al 0%超~50%を含有する、請求項1に記載の赤外線透過ガラス。
【請求項3】
モル%で、Te 0%超~90%を含有する、請求項1または2に記載の赤外線透過ガラス。
【請求項4】
モル%で、Zn+Ga+In+Sn+Sb+Bi 0%~40%、Cu+Ag 0%~40%、F+Cl+Br+I 0%~40%、B+C+Cr+Mn+Ti+Fe 0%~40%を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラス。
【請求項5】
Asの含有量が30%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラス。
【請求項6】
13族元素の含有量とS+Se+Teの含有量の比(B+Al+Ga+In)/(S+Se+Te)が0.7以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラス。
【請求項7】
14族元素の含有量と、S+Se+Teの含有量の比(C+Si+Ge+Sn)/(S+Se+Te)が0.7以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の赤外線透過ガラスを用いた光学素子。
【請求項9】
請求項8に記載の光学素子を用いた赤外線センサ。
【請求項10】
請求項8に記載の光学素子を用いた赤外線カメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線透過ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車載ナイトビジョンやセキュリティシステム等で用いる赤外線カメラの開発が進んでいる。赤外線カメラは、赤外線を透過するフィルターやレンズ等の光学素子を組み合わせて設計される。
【0003】
上記光学素子には、ゲルマニウム(Ge)やカルコゲナイドガラス、シリコン(Si)等の材料がしばしば用いられる。しかし、Geは高価な材料であり、光学素子の低コスト化に不利である。また、一般にカルコゲナイドガラスやSiは赤外域における光透過率がGeよりも低く、赤外線カメラの性能向上に不利である。
【0004】
そこで、赤外域における光透過率に優れたカルコゲナイドガラスが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/105719号
【特許文献2】国際公開第2017/086227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カルコゲナイドガラスに酸素が混入すると、ガラスの構成元素と酸素とが結合して酸化不純物が生じ、赤外吸収が生じることがある。当該赤外吸収は光学素子の光学特性を著しく低下させる恐れがある。
【0007】
酸化不純物に起因する赤外吸収を抑制する方法として、例えば、特許文献2にはカルコゲナイドガラスにTiを添加する方法が開示されている。しかしながら、Tiでは赤外吸収を十分に抑制しにくい酸化不純物も存在するため、赤外吸収を抑制する他の手段が求められていた。
【0008】
以上に鑑み、本発明は赤外域における優れた光透過特性を有する赤外線透過ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、S+Se+Te 20%~90%、Ge 0%超~40%、Al+Si 0%超~50%、Mg+Ca 0.01%~20%を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Al 0%超~50%を含有することが好ましい。
【0011】
本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Te 0%超~90%を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、Zn+Ga+In+Sn+Sb+Bi 0%~40%、Cu+Ag 0%~40%、F+Cl+Br+I 0%~40%、B+C+Cr+Mn+Ti+Fe 0%~40%を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の赤外線透過ガラスは、Asの含有量が30%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の赤外線透過ガラスは、13族元素の含有量とS+Se+Teの含有量の比(B+Al+Ga+In)/(S+Se+Te)が0.7以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の赤外線透過ガラスは、14族元素の含有量と、S+Se+Teの含有量の比(C+Si+Ge+Sn)/(S+Se+Te)が0.7以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の光学素子は、上述した赤外線透過ガラスを用いたことを特徴とする。
【0017】
本発明の赤外線センサは、上述した光学素子を用いたことを特徴とする。
【0018】
本発明の赤外線カメラは、上述した光学素子を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、赤外域における優れた光透過特性を有する赤外線透過ガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の赤外線透過ガラスは、 モル%で、S+Se+Te 20%~90%、Ge 0%超~40%、Al+Si 0%超~50%、Mg+Ca 0.01%~20%を含有することを特徴とする。このようにガラス組成を規定した理由及び各成分の含有量について以下で説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り「%」は「モル%」を意味する。
【0021】
S、Se及びTeはガラス骨格を形成する成分である。S+Se+Teの含有量(S、Se及びTeの合量)は、20%~90%であり、30%~89%、40%~89%、50%~85%、50%~80%、特に50%~75%であることが好ましい。S+Se+Teの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。S+Se+Teの含有量が多すぎると、S系、Se系またはTe系の結晶が析出して、光透過率が低下しやすくなる。なお、各成分の含有量の好ましい範囲は以下の通りである。
【0022】
Sの含有量は、0%~90%、10%~90%、20%~89%、30%~89%、40%~88%、50%~88%、50%~80%、特に50%~75%であることが好ましい。ただし、Sは波長10μm以上における光透過率を低下させやすい成分である。そのため、赤外域における光透過率を向上させるという観点からは、Sの含有量は30%以下、20%以下、10%以下、特に5%以下であることが好ましい。
【0023】
Seの含有量は、0%~90%、10%~90%、20%~89%、30%~89%、40%~88%、50%~88%、50%~80%、特に50%~75%であることが好ましい。ただし、Seは毒性成分である。そのため、環境への負荷を低減するという観点からは、Seの含有量は40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、特に実質的に含有しないことが好ましい。本明細書において、「実質的に含有しない」とは、意図的に原料中に含有させないという意味であり、不純物レベルの混入を排除するものではない。客観的には、各成分の含有量が0.1%未満を指す。
【0024】
Teの含有量は、0%~90%、0%超~90%、10%~90%、20%~89%、30%~89%、40%~88%、50%~88%、50%~80%、特に50%~75%であることが好ましい。Teの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。また、Te系結晶が析出して光透過率が低下しやすくなる。
【0025】
なお、S、Se及びTeのうち、少なくとも一種の成分を含有していればよいが、波長8μm~14μmにおける光透過率への影響を小さくしやすいという点では、Teを含有していることが特に好ましい。
【0026】
Geはガラス骨格を形成する成分である。Geの含有量は、0%超~40%であり、0.1%~39%、1%~30%、2%~25%、3%~20%、特に4%~20%であることが好ましい。Geの含有量が少なすぎると、ガラス化しにくくなる。Geの含有量が多すぎると、Ge系の結晶が析出して、光透過率が低下しやすくなる。また、原料コストが高くなりやすくなる。
【0027】
Al及びSiはガラス骨格を形成する成分である。また、ガラスのアッベ数を低下させやすい成分でもある。Al+Siの含有量(Al及びSiの合量)は、0%超~50%であり、0.1%~50%、3%~45%、5%~35%、特に8%~25%であることが好ましい。Al+Siが少なすぎると、ガラス化しにくくなる。Al+Siが多すぎると、Al系またはSi系結晶が析出し、光透過率が低下しやすくなる。なお、各成分の含有量の好ましい範囲は以下の通りである。
【0028】
Alの含有量は、0%~50%、0%超~50%、0.1%~40%、3%~40%、特に3%~30%であることが好ましい。
【0029】
Siの含有量は、0%~50%、0%超~50%、0.1%~40%、3%~40%、特に3%~30%であることが好ましい。
【0030】
なお、Al及びSiの酸化不純物は、いずれも赤外域に光吸収を有する。具体的に述べると、Si酸化不純物(Si-O)は波長約9μm前後の光を吸収する。また、Al不純物(Al-O)は波長約16μm前後の光を吸収する。そのため、これらの酸化不純物が存在すると、赤外域における光透過率へ影響が生じる。例えば、Si酸化不純物は赤外線センサ等に用いられることが多い波長域(例えば、波長8μm~14μm)における光透過率への影響が大きくなりやすい。また、AlはSiよりも酸化されやすい。そのため、Al酸化不純物は生じやすく、かつ除去が難しい。なお、SiとAlを同時にガラスに導入した場合は、熱力学の観点から、AlがSiより優先的に酸化されやすい。これらの酸化不純物による赤外吸収は、後述するMg及びCaの導入により抑制することができる。
【0031】
Mg及びCaは、酸化不純物に起因する赤外吸収を抑制する効果が大きい成分である。詳述すると、Mg及びCaは上述した構成成分(Al、Si、Ge、S、Se及びTe)より優先的に酸化されやすいため、これらの酸化不純物に起因する赤外吸収を抑制しやすくなる。その一方で、Mg酸化不純物及びCa酸化不純物は、上述した赤外波長域における吸収がない。よってMgやCaを添加することにより、上記波長域における光透過率への影響を低減しやすい。Mg+Caの含有量(Mg及びCaの合量)は、0.01%~20%であり、0.01%~15%、0.01%~10%、0.01%~8%、0.01%~5%、0.05%~5%、0.1%~5%、特に0.3%~5%であることが好ましい。Mg+Caが少なすぎると、赤外吸収を十分に抑制できない恐れがある。Mg+Caが多すぎると、Mg系またはCa系結晶が析出し、光透過率が低下しやすくなる。
【0032】
なお、熱力学の観点では、酸素と反応しやすく、赤外吸収の抑制効果が特に大きいことから、MgよりCaを用いることが好ましい。
【0033】
本発明の赤外線透過ガラスは、上記成分以外に、以下の任意成分を含有してもよい。
【0034】
Zn、Ga、In、Sn、Sb、Biは、ガラス化範囲を広げ、ガラスの熱的安定性を高めやすい成分である。Zn+Ga+In+Sn+Sb+Biの含有量(Zn、Ga、In、Sn、Sb及びBiの合量)は、0%~40%、0%超~40%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、特に0.1%~5%であることが好ましい。Zn+Ga+In+Sn+Sb+Biの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。なお、Zn、Ga、In、Sn、Sb、Biの各成分の含有量は、0%~40%、0%~40%、0%~40%、0%~30%、0%~20%、0%~10%、0%~5%、特に0.1%~5%であることが好ましい。
【0035】
Cu及びAgは、ガラス化範囲を広げ、ガラスの熱的安定性を高めやすい成分である。Cu+Agの含有量(Cu及びAgの合量)は、0%~40%、0%超~40%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、特に0.1%~10%であることが好ましい。Cu+Agの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。なお、Cu及びAgの各成分の含有量は、0%~40%、0%~40%、0%~40%、0%~30%、0%~20%、0%~10%、特に0.1%~10%であることが好ましい。
【0036】
F、Cl、Br及びIは、ガラス化範囲を広げ、ガラスの熱的安定性を高めやすい成分である。F+Cl+Br+Iの含有量(F、Cl、Br及びIの合量)は、0%~40%、0%~30%、0%~20%、特に0%~10%であることが好ましい。F+Cl+Br+Iの含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなる。また、耐候性が低下しやすくなる。なお、F、Cl、Br及びIの各成分の含有量は、0%~40%、0%~30%、0%~20%、特に0%~10%であることが好ましい。
【0037】
上記成分以外に、B、C、Cr、Mn、Ti、Fe等を含有してもよい。B+C+Cr+Mn+Ti+Feの含有量(B、C、Cr、Mn、Ti及びFeの合量)は、0%~40%、0%~30%、0%~20%、0%~10%、0%~5%、0%~1%、特に0%~1%未満であることが好ましい。これらの成分の含有量が多すぎると、所望の光学特性が得づらくなる恐れがある。なお、B、C、Cr、Mn、Ti、Feの各成分の含有量は、0%~10%、0%~5%、0%~1%、特に0%~1%未満であることが好ましい。
【0038】
上述した任意成分の合量Zn+Ga+In+Sn+Sb+Bi+Cu+Ag+F+Cl+Br+I+B+C+Cr+Mn+Ti+Feの含有量は、0%~40%、0%~30%、0%~20%、0%~10%、特に0.1%~5%が好ましい。なお本発明において、「Zn+Ga+In+Sn+Sb+Bi+Cu+Ag+F+Cl+Br+I+B+C+Cr+Mn+Ti+Fe X%~Y%」は、例えば「Fe=0%、Ga+In+Sn+Sb+Bi+Cu+Ag+F+Cl+Br+I+B+C+Cr+Mn+Ti+Fe X%~Y%」や「Fe=0%、Ti=0%、In+Sn+Sb+Bi+Cu+Ag+F+Cl+Br+I+B+C+Cr+Mn+Ti+Fe X%~Y%」の場合を含む。
【0039】
Asは、ガラスの熱的安定性を高める成分である。ただし、Asは毒性成分であるため、環境への負荷を低減するという観点からは、Asの含有量は30%以下、25%以下、20%以下、10%以下、5%以下、特に実質的に含有しないことが好ましい。
【0040】
Cd、Tl及びPbは実質的に含有しないことが好ましい。このようにすれば、環境面への影響を最小限に抑えることができる。
【0041】
13族元素(B、Al、Ga、In)の含有量の合量(モル%)と、カルコゲン元素(S、Se、Te)の含有量の合量(モル%)の比(B+Al+Ga+In)/(S+Se+Te)は、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、特に0.2以下であることが好ましい。下限は、例えば0.01以上であることが好ましい。13族元素とカルコゲン元素の含有量の比が上記を満たすことにより、ガラス化しやすくなる。
【0042】
14族元素(C、Si、Ge、Sn)の含有量と、カルコゲン元素(S、Se、Te)の含有量の比(C+Si+Ge+Sn)/(S+Se+Te)は、0.7以下、0.6以下、0.5以下、特に0.4以下であることが好ましい。下限は、例えば0.01以上であることが好ましい。14族元素とカルコゲン元素の含有量の比が上記を満たすことにより、ガラス化しやすくなる。
【0043】
本発明の赤外線透過ガラスは、赤外吸収端波長が15μm以上、16μm以上、特に17μm以上であることが好ましい。赤外吸収端波長が大きいほど、より長波長側の赤外線を透過することができる。ここで、赤外吸収端波長とは、波長1μm以上の赤外域において、厚み2mmで光透過率が10%となる、最も長波長側の波長を意味する。
【0044】
本発明の赤外線透過ガラスは、例えば、以下のように作製することができる。はじめに、所望の組成となるように原料を調合する。次に、加熱しながら真空排気を行った石英ガラスアンプルに調合した原料を入れ、真空排気を行いながら酸素バーナーで封管する。次に、封管された石英ガラスアンプルを650℃~1000℃程度で6時間~12時間保持する。その後、室温まで急冷することにより、赤外線透過ガラスを得ることができる。
【0045】
原料には、元素原料(Ge、Ga、Si、Te、Ag、I等)を用いてもよく、化合物原料(GeTe4、Ga2Te3、AgI等)を用いても良い。また、これらを併用してもよい。
【0046】
得られた赤外線透過ガラスを所定形状(円盤状、レンズ状等)に加工することにより、光学素子を作製することができる。
【0047】
透過率の向上を目的として、光学素子の片面又は両面に、反射防止膜を形成させても構わない。反射防止膜の形成方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0048】
赤外線透過ガラスに反射防止膜を形成した後、所定形状に加工してもよい。ただし、加工工程において反射防止膜の剥離が生じやすくなるため、特段の事情がない限り、赤外線透過ガラスを所定形状に加工した後に、反射防止膜を形成することが好ましい。
【0049】
このように、本発明の赤外線透過ガラスは、モル%で、S+Se+Te 20%~90%、Ge 0%超~40%、Al+Si 0%超~50%、Mg+Ca 0.01%~20%を含有する構成を有する。当該構成を有する赤外線透過ガラスは、酸化不純物による赤外吸収を抑制しやすく、赤外域において優れた光透過特性を示しやすい。
【実施例0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
表1~4は本発明の実施例1~26及び比較例27、28を示している。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
実施例、比較例の試料は以下のように作製した。はじめに、石英ガラスアンプルを加熱しながら真空排気した後、表1~4に示すガラス組成となるよう原料を調合し、石英ガラスアンプルに入れた。次に、石英ガラスアンプルを酸素バーナーで封管した。次に、封管された石英ガラスアンプルを溶融炉に入れ、10℃~40℃/時間の速度で650℃~1000℃まで昇温後、6時間~12時間保持した。保持時間中、石英ガラスアンプルの上下を反転し、溶融物を攪拌した。最後に、石英ガラスアンプルを溶融炉から取り出し、室温まで急冷することにより試料を得た。得られた試料について赤外域における光透過率を測定し、赤外吸収の有無を調べた。
【0057】
厚み2mmtの試料を用いて、波長8μm~14μmの赤外域における光透過率を測定した。得られた透過率スペクトルにおいて、波長10μmにおける光透過率から透過率が10%以上低下する波長域が酸化吸収であると判断し、表1~4の該当箇所に「あり」と記載した。上記波長域が13μm~14μmであればGeの酸化吸収、14μm~18μmであればAlの酸化吸収であると判断した。吸収が見られない場合は「なし」と記載した。
【0058】
表1~4から明らかなように、Mg又はCaを添加することで、Ge、Alと酸素の結合に起因する赤外吸収を抑制することができる。