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特開2023-28507半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028507
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/22 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
H01S5/22 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134248
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】萩元 将人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 忠嗣
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AD04
5F173AF12
5F173AF20
5F173AG05
5F173AK21
5F173AK22
5F173AP23
5F173AP32
5F173AP33
5F173AP37
5F173AR72
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】結晶品質の低下を抑制しつつ、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体発光素子を提供する。
【解決手段】一態様に係る半導体発光素子によれば、半導体基板と、前記半導体基板上に積層され、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層とを備え、前記半導体基板の面方向において離間した領域に2以上のレーザ光出射部を持ち、前記レーザ光出射部の形成された領域に配置された前記複数の活性層のうち発光層として用いられる少なくともいずれか1つの活性層は、非発光層として用いられる活性層上に積層されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に積層され、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層とを備え、
前記半導体基板の面方向において離間した領域に2以上のレーザ光出射部を持ち、前記レーザ光出射部の形成された領域に配置された前記複数の活性層のうち発光層として用いられる少なくともいずれか1つの活性層は、非発光層として用いられる活性層上に積層されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記複数の活性層のうち発光層として用いられる少なくともいずれか1つの活性層上には、更に非発光層として用いられる活性層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層は、前記半導体基板の表面からの前記活性層の積層位置が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層は、前記半導体基板の表面方向の位置が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記光学特性は、発光波長、偏光、およびビーム広がり角のいずれか少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層は、独立駆動可能であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記半導体基板は、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層について、前記半導体基板の裏面からの距離を互いに一致させる段差を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層に電流を注入する電流注入領域上に形成される電極のトップ面について、前記半導体基板の裏面からの距離が前記電流注入領域間で互いに等しくなるように前記電極の厚さが設定されることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層の積層構造を半導体基板上に積層する工程と、
前記半導体基板の表面方向の位置が互いに異なるように前記活性層へ電流を注入する電流注入領域を形成する工程と、
前記半導体基板の表面からの積層位置が互いに異なる活性層に電流が注入されるように、前記電流注入領域上に電極を形成する工程と備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記積層構造の前記活性層の積層位置の差異に応じた段差を前記半導体基板に形成する工程をさらに備え、
前記電流注入領域は、前記段差で区切られていることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記段差の位置が高い方から低い方に前記段差で区画される素子領域を一つずつ増やしながら前記素子領域の活性層を上層から一層分ずつ除去する工程をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザを用いたプロジェクタなどのディスプレイ装置の市場が拡大し、その高性能化を図るため、高解像度および広視野角が求められている。ディスプレイ装置の高解像度および広視野角を図るために、半導体レーザのマルチビーム化が有効である。
【0003】
しかし、全ビームの光学特性が揃っていると、レーザ光の特徴である干渉性による画質低下を引き起こす。レーザ光の干渉性を低減するために、発振波長等の光学特性の異なる複数のレーザ光を出射可能なマルチビーム半導体レーザが用いられることがある。
【0004】
特許文献1には、CD用レーザダイオード(発光波長780nm)とDVD用レーザダイオード(発光波長650nm)を1チップ上に搭載するモノリシックレーザダイオードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-016881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された半導体レーザでは、異なる発振波長の発光部を同一基板上に形成するため、第1発振波長の活性層を形成した後、第2発振波長の活性層を形成する領域から第1発振波長の活性層を除去し、その除去した領域に第2発振波長の活性層を形成する。このため、複雑な積層構造を持つ半導体層を除去した後に、第2発振波長の活性層を再形成することになり、第2発振波長の活性層が汚染されたり欠陥を有したりすることで、結晶品質が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、結晶品質の低下を抑制しつつ、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、半導体基板と、前記半導体基板上に積層され、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層とを備え、前記半導体基板の面方向において離間した領域に2以上のレーザ光出射部を持ち、前記レーザ光出射部の形成された領域に配置された前記複数の活性層のうち発光層として用いられる少なくともいずれか1つの活性層は、非発光層として用いられる活性層上に積層されている。
【0009】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層を半導体基板上に連続して積層した後、非発光層として用いられる活性層を除去することなく、その上の活性層を発光層として用いることが可能となる。このため、活性層が形成される結晶面の汚染や、欠陥の発生を防止しつつ、半導体基板上に活性層を積層することができる。その結果として、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体レーザの特性の低下を抑制しつつ、モノリシック集積化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記複数の活性層のうち発光層として用いられる少なくともいずれか1つの活性層上には、更に非発光層として用いられる活性層が積層されている。
【0011】
これにより、光学特性が互いに異なるマルチビーム半導体レーザのモノリシック集積化を図りつつ、各発光層に対応する電流注入領域上の電極のトップ面の高さを一致させることができる。このため、光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザのジャンクションダウン実装の安定化を図ることができ、放熱性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層は、前記半導体基板の表面からの前記活性層の積層位置が互いに異なる。
【0013】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層を半導体基板上の全面に連続して積層した後、非発光層として用いられる活性層を除去することなく、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な活性層を発光層として用いることが可能となる。このため、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体レーザの特性の低下を抑制しつつ、モノリシック集積化を図ることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層は、前記半導体基板の表面方向の位置が互いに異なる。
【0015】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層の積層化を図りつつ、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層にそれぞれに電流を注入する電流注入領域を別個に形成することが可能となる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記光学特性は、発光波長、偏光、およびビーム広がり角のいずれか少なくとも1つを含む。
【0017】
これにより、レーザ光の用途、レーザ光の干渉性またはレーザ光の集光性などの変更を可能としつつ、光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザのモノリシック集積化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層は、独立駆動可能である。
【0019】
これにより、モノリシック集積化された光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザをCD/DVD/Blu-ray(登録商標) Discなどの各種メディア、スマートグラスやディスプレイ装置または通信用などの様々な用途に用いることが可能となる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記半導体基板上に積層される活性層の積層数は、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層間で互いに等しい。
【0021】
これにより、光学特性が互いに異なるマルチビーム半導体レーザのモノリシック集積化を図りつつ、半導体基板に対して水平方向に配置される発光層の間隔を狭くすることが可能となる。更には、各発光層に対応する電流注入領域上の電極のトップ面の高さを一致させることができる。このため、光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザのチップサイズの小型化を図りつつ、ジャンクションダウン実装の安定化を図ることができ、放熱性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記半導体基板は、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層について、前記半導体基板の裏面からの距離を互いに一致させる段差を備える。
【0023】
これにより、レーザチップの実装面からの高さ方向の発光層の位置を一致させることができ、光学特性が互いに異なる複数のレーザ光の取り扱いを容易化することができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記半導体基板上に積層される活性層の積層数は、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層について、前記活性層に電流を注入する電流注入領域の形成面からの距離が互いに等しくなるように設定される。
【0025】
これにより、光学特性が互いに異なるマルチビーム半導体レーザのモノリシック集積化を図りつつ、各発光層に対応する電流注入領域上の電極のトップ面の高さを一致させることができる。このため、光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザのジャンクションダウン実装の安定化を図ることができ、放熱性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子によれば、前記光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層に電流を注入する電流注入領域上に形成される電極のトップ面について、前記半導体基板の裏面からの距離が前記電流注入領域間で互いに等しくなるように前記電極の厚さが設定される。
【0027】
これにより、発光層として用いられる活性層上に積層される非発光層として用いられる活性層を除去することなく、各発光層に対応する電流注入領域上の電極のトップ面の高さを一致させることができる。このため、光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザのジャンクションダウン実装の安定化を図ることができ、放熱性を向上させることができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層の積層構造を半導体基板上に積層する工程と、前記半導体基板の表面方向の位置が互いに異なるように前記活性層へ電流を注入する電流注入領域を形成する工程と、前記半導体基板の表面からの積層位置が互いに異なる活性層に電流が注入されるように、前記電流注入領域上に電極を形成する工程と備える。
【0029】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層を半導体基板上に連続して積層した後、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層のそれぞれに電流を注入する電流注入領域を別個に形成することが可能となる。このため、活性層が形成される結晶面の汚染や、欠陥の発生を防止しつつ、複数の活性層を半導体基板上に積層することができる。その結果、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体レーザの特性の低下を抑制しつつ、モノリシック集積化を図ることができる。
【0030】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、前記積層構造の前記活性層の積層位置の差異に応じた段差を前記半導体基板に形成する工程をさらに備え、前記電流注入領域は、前記段差で区切られている。
【0031】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層を半導体基板上に連続して積層した場合においても、レーザチップの実装面からの高さ方向の発光層の位置を一致させることができ、光学特性が互いに異なる複数のレーザ光の取り扱いを容易化することができる。
【0032】
また、本発明の一態様に係る半導体発光素子の製造方法によれば、前記段差の位置が高い方から低い方に前記段差で区画される素子領域を一つずつ増やしながら前記素子領域の活性層を上層から一層分ずつ除去する工程をさらに備える。
【0033】
これにより、光学特性が互いに異なるマルチビーム半導体レーザのモノリシック集積化を図りつつ、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な発光層として用いられる活性層に電流を注入する電流注入領域上の電極のトップ面の高さを一致させることができる。このため、光学特性が異なるマルチビーム半導体レーザのジャンクションダウン実装の安定化を図ることができ、放熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一態様においては、結晶品質の低下を抑制しつつ、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体発光素子よび半導体発光素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】第1実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。
図1B】第1実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す平面図である。
図1C】第1実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す図1Aの一部拡大図である。
図2A】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2B】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2C】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2D】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2E】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2F】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2G】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2H】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2I】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図2J】第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図3A】第2実施形態に係る半導体基板の傾斜面の形成方法の一例を示す断面図である。
図3B】第2実施形態に係る半導体基板の傾斜面の形成方法の一例を示す断面図である。
図3C】第2実施形態に係る半導体基板の傾斜面の形成方法の一例を示す断面図である。
図3D】第2実施形態に係る半導体基板の傾斜面の形成方法の一例を示す断面図である。
図4A】第3実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。
図4B】第3実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す平面図である。
図5A】第4実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。
図5B図5Aの半導体発光素子の一部を拡大して示す断面図である。
図6】第5実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。
図7】第6実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。
図8A】第7実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図8B】第7実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図8C】第7実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図8D】第7実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0037】
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図、図1Bは、第1実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す平面図である。また、図1Cは、図1Aの一部拡大図である。なお、以下の説明では、互いに異なる波長のレーザ光を放射する4層分の活性層が設けられたモノリシック多波長半導体レーザを例にとるが、互いに異なる波長のレーザ光を放射するm(mは2以上の整数)層分の活性層が設けられたモノリシック多波長半導体レーザであってもよい。
【0038】
このモノリシック多波長半導体レーザは、波長780nm帯の赤外レーザ光を出射可能なAlGaAs系半導体レーザであってもよいし、波長650nm帯の赤色レーザ光を出射可能なAlGaInP系半導体レーザであってもよい。更には、波長405nm帯の青色レーザ光を出射可能なAlGaInN系半導体レーザであってもよいし、波長1.55μm帯の通信用レーザ光を出射可能なInGaAsP系半導体レーザであってもよい。
【0039】
図1Aおよび図1Bにおいて、半導体レーザZ1は、N型半導体層1B~4B、活性層1CA、1CB、1CC、1CD(以下、単に1CA~1CDとも記載する)、2CB、2CC、2CD(以下、単に2CB~2CDとも記載する)、3CC、3CD、4CD、P型半導体層1D、2D、3D、4D(以下、単に1D~4Dとも記載する)および半導体基板SBを備える。このとき、半導体レーザZ1は、半導体基板SBの面方向において離間した領域に2以上のレーザ光出射部を持つ。例えば、半導体基板SBは、それぞれが独立してレーザ光を出射可能なレーザダイオードが形成される素子領域RA、RB、RC、RD(以下、同様にRA~RDとも記載)に区画される。各素子領域RA~RDは、半導体基板SBの表面上の位置が異なる。各素子領域RA~RDは、半導体基板SBの互いに対向する端面M1、M2(図1B参照)に渡って形成される。この端面M1、M2は、例えば、半導体基板SBの劈開面である。この端面M1、M2は、全ての素子領域RA~RDで共通に用いることができる。このとき、端面M1、M2間には、素子領域RA~RDごとにファブリペロー共振器を形成することができる。各素子領域RA~RDに形成されるレーザダイオードは、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能である。この光学特性は、発光波長、偏光およびビーム広がり角のいずれか少なくとも1つを含むことができる。各素子領域RA~RDのレーザダイオードの発光波長を異ならせる場合、同色領域の範囲内で発光波長を異ならせてもよいし、異なる色領域間に渡って発光波長を異ならせてもよい。
【0040】
各素子領域RA~RDには、発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDが設けられる。半導体レーザZ1の動作時では、発光点P1、P2、P3、P4(P1~P4とも記載)は、発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDに位置する。各活性層1CA、2CB、3CC、4CDは、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能である。このとき、活性層2CBを発光層として用いる領域においては、非発光層として用いられる活性層1CB上に積層される。同様に、活性層3CCを発光層として用いる領域においては、非発光層として用いられる活性層1CC、2CC上に積層される。活性層4CDを発光層として用いる領域においては、非発光層として用いられる活性層1CD~3CD上に積層される。このとき、発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDは、半導体基板SBの表面からの積層位置が互いに異なる。一方、発光層として用いられる各活性層1CA、2CB、3CC、4CDの発光点P1~P4について、半導体基板SB表面に段差を設けることにより半導体基板SBの裏面からの距離を等しくすることができる。
【0041】
活性層1CA~1CDは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に形成される活性層1Cのパターニングで形成し、活性層2CB~2CDは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に形成される活性層2Cのパターニングで形成し、活性層3CC、3CDは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に形成される活性層3Cのパターニングで形成し、活性層4CDは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に形成される活性層4Cのパターニングで形成することができる。
【0042】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層1C~4Cを半導体基板SB上に連続して積層した後、非発光層として用いられる活性層1CB、1CC、2CC、1CD~3CDを除去することなく、活性層2CB、3CC、4CDを発光層として用いることが可能となる(図1図2H参照)。このため、活性層2CB、3CC、4CDが形成される結晶面が汚染されたり欠陥が発生したりするのを防止しつつ、半導体基板SB上に活性層2CB、3CC、4CDを積層することができる。結果として、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体レーザZ1の特性の低下を抑制しつつ、モノリシック集積化を図ることができる(図1A図1B参照)。
【0043】
なお、活性層1C~4Cのうち、どの部分を発光層として用い、どの部分を非発光層として用いるかは、電流注入位置で決定することができる。すなわち、発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDは、電流注入位置に配置される。非発光層として用いられる活性層1CB、1CC、1CD、2CC、2CD、3CDは、電流非注入位置に配置される。
【0044】
以下、図1Aおよび図1Bの半導体レーザZ1の構成について具体的に説明する。
素子領域RAでは、接合層T1Aが半導体基板SB上に形成される。接合層T1Aと半導体基板SBとの間には、エッチストップ層1Aを形成してもよい。接合層T1Aは、N型半導体層1B、活性層1CAおよびP型半導体層1Dを備える。N型半導体層1BおよびP型半導体層1Dは、活性層1CAとの間でダブルヘテロ接合を形成することができる。
【0045】
素子領域RBでは、接合層T1B、T2Bが半導体基板SB上に順次積層される。接合層T1Bは、エッチストップ層1Aを介して半導体基板SB上に積層し、接合層T2Bは、エッチストップ層2Aを介して接合層T1B上に積層している。各接合層T1B、T2Bは、N型半導体層1B、2B、活性層1CB、2CBおよびP型半導体層1D、2Dを備える。N型半導体層1BおよびP型半導体層1Dは、活性層1CBとの間でダブルヘテロ接合を形成し、N型半導体層2BおよびP型半導体層2Dは、活性層2CBとの間でダブルヘテロ接合を形成することができる。
【0046】
素子領域RCでは、接合層T1C~T3Cが半導体基板SB上に順次積層される。接合層T1Cは、エッチストップ層1Aを介して半導体基板SB上に積層し、接合層T2Cは、エッチストップ層2Aを介して接合層T1C上に積層し、接合層T3Cは、エッチストップ層3Aを介して接合層T2C上に積層している。各接合層T1C~T3Cは、N型半導体層1B~3B、活性層1CC~3CCおよびP型半導体層1D~3Dを備える。N型半導体層1BおよびP型半導体層1Dは、活性層1CCとの間でダブルヘテロ接合を形成し、N型半導体層2BおよびP型半導体層2Dは、活性層2CCとの間でダブルヘテロ接合を形成し、N型半導体層3BおよびP型半導体層3Dは、活性層3CCとの間でダブルヘテロ接合を形成することができる。
【0047】
素子領域RDでは、接合層T1D~T4Dが半導体基板SB上に順次積層される。接合層T1Dは、エッチストップ層1Aを介して半導体基板SB上に積層し、接合層T2Dは、エッチストップ層2Aを介して接合層T1D上に積層し、接合層T3Dは、エッチストップ層3Aを介して接合層T2D上に積層し、接合層T4Dは、エッチストップ層3Aを介して接合層T3D上に積層している。各接合層T1D~T4Dは、N型半導体層1B~4B、活性層1CD~4CDおよびP型半導体層1D~4Dを備える。N型半導体層1BおよびP型半導体層1Dは、活性層1CDとの間でダブルヘテロ接合を形成し、N型半導体層2BおよびP型半導体層2Dは、活性層2CDとの間でダブルヘテロ接合を形成し、N型半導体層3BおよびP型半導体層3Dは、活性層3CDとの間でダブルヘテロ接合を形成し、N型半導体層4BおよびP型半導体層4Dは、活性層4CDとの間でダブルヘテロ接合を形成することができる。
【0048】
ここで、接合層T1A~T1Dは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に積層されるN型半導体層1B、活性層1CおよびP型半導体層1Dで形成し、接合層T2B~T2Dは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に積層されるN型半導体層2B、活性層2CおよびP型半導体層2Dのパターニングで形成している。同様に、接合層T3C、T3Dは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に積層されるN型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dのパターニングで形成し、接合層T4Dは、図2Bの工程で半導体基板SB上の全面に積層されるN型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dのパターニングで形成することができる。
【0049】
半導体基板SBには、段差S1~S3が設けられる。段差S1は、素子領域RA、RBの境界に位置し、段差S2は、素子領域RB、RCの境界に位置し、段差S3は、素子領域RC、RDの境界に位置している。段差S1の高さは、接合層T1Bの膜厚とエッチストップ層1Aの膜厚の合計に一致させることができる。段差S2の高さは、接合層T1Cの膜厚とエッチストップ層1Aの膜厚の合計に一致させることができる。段差S3の高さは、接合層T1Dの膜厚とエッチストップ層1Aの膜厚の合計に一致させることができる。これにより、レーザチップの実装面からの高さ方向において、発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDの位置を一致させることができ、光学特性が互いに異なる複数のレーザ光の取り扱いを容易にすることができる。
【0050】
各素子領域RA~RDにおいて、N型半導体層1B~4Bの一部が各活性層1CA、2CB、3CC、4CDおよび各P型半導体層1D~4Dから露出されるように、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDおよび各P型半導体層1D~4Dの一部が除去される。このとき、各素子領域RA~RDにおいて、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDおよび各P型半導体層1D~4DがN型半導体層1B~4B上にストライプ状に残るように、N型半導体層1B~4B上の各活性層1CA、2CB、3CC、4CDおよび各P型半導体層1D~4Dの一部を除去することができる。このとき、各N型半導体層1B~4Bには露出面K1~K4が形成される。
【0051】
各素子領域RA~RDにおいて、各P型半導体層1D~4DにはリッジG1~G4が形成されている。各リッジG1~G4は、各活性層1CA~4CDの光導波方向に沿って形成されている。各リッジG1~G4は、例えば、端面M1、M2に渡ってストライプ状に形成することができる。
【0052】
リッジG1~G4がそれぞれ形成されたP型半導体層1D~4D上および露出面K1~K4がそれぞれ形成されたN型半導体層1B~4B上には、絶縁膜5が形成されている。絶縁膜5は、例えば、シリコン酸化膜を用いることができる。
【0053】
各リッジG1~G4のトップ面には、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDに電流を注入する電流注入領域J1~J4が設けられる(図1B図1C参照)。このとき、絶縁膜5には、電流注入領域J1~J4に対応した開口部が設けられる。各N型半導体層1B~4Bの露出面K1~K4には、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDに注入された電流を流出させる電流流出領域H1~H4が設けられる。このとき、絶縁膜5には、電流流出領域H1~H4に対応した開口部が設けられる。例えば、素子領域RAについては、N型半導体層1Bの露出面K1上に設けられた絶縁膜5の一部を除去した開口部を設ける。その開口部と開口部周辺の絶縁膜5上に下地電極R1が形成される。この下地電極R1とN型半導体層1Bの露出面K1が接触する領域が電流注入領域H1と成っている。この電流注入領域H1上に厚膜電極W1が形成されている。
【0054】
各リッジG1~G4のトップ面上には、下地電極Q1~Q4が形成される。下地電極Q1~Q4は、絶縁膜5に形成された開口部を介して電流注入領域J1~J4に接続される。N型半導体層1B~4Bの露出面K1~K4上には、下地電極R1~R4が形成される。下地電極R1~R4は、絶縁膜5に形成された開口部を介して電流流出領域H1~H4に接続される。各下地電極Q1~Q4上には、厚膜電極U1~U4が形成される。各下地電極R1~R4上には、厚膜電極W1~W4が形成される。各厚膜電極U1~U4、W1~W4の膜厚は、レーザチップの実装面からの高さが一致するように設定することができる。下地電極Q1~Q4、R1~R4、厚膜電極U1~U4、W1~W4の材料は、例えば、Auなどの金属を用いることができる。このとき、発光層として用いられる各活性層1CA、2CB、3CC、4CDは独立駆動可能である。
【0055】
ここで、素子領域RAでは、半導体基板SB上に積層された接合層T1Aを設け、素子領域RBでは、半導体基板SB上に順次積層された接合層T1B、T2Bを設けている。また、素子領域RCでは、半導体基板SB上に順次積層された接合層T1C~T3Cを設け、素子領域RDでは、半導体基板SB上に順次積層された接合層T1D~T4Dを設けている。これらの接合層の厚みを半導体基板SBに設けられた段差S1~S3の高さと合わせることにより、電流注入領域J1~J4、及び各厚膜電極W1~W4の高さを一致させることができる。このため、半導体レーザZ1のジャンクションダウン実装の安定化を図ることができ、放熱性を向上させることができる。
【0056】
また、各N型半導体層1B~4Bに露出面K1~K4を設けることにより、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDに注入された電流を個別に流出させることができる。その結果として、各素子領域RA~RDに形成されたレーザ素子を発光点P1~P4の位置で発光させることができる。
【0057】
また、この半導体レーザZ1では、発光層となる活性層1CA~4CD上のP型半導体層1D~4Dを最上層に配置することができる。このため、各P型半導体層1D~4DにリッジG1~G4を形成することができ、屈折率導波型モノリシック多波長半導体レーザを構成することができる。
【0058】
なお、各活性層1CA~1CD、2CB~2CD、3CC、3CD、4CDは、例えば、バリア層と井戸層が交互に積層された多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造を用いることができる。各活性層1CA~1CD、2CB~2CD、3CC、3CD、4CDは、多重量子井戸構造を導波するレーザ光をガイドするガイド層を備えてもよい。
【0059】
各N型半導体層1B~4Bは、N型クラッド層およびN型コンタクト層を備える。N型コンタクト層は、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDに注入された電流を流出させる下地電極R1~R4との間でオーミック接合を形成することができる。各P型半導体層1D~4Dは、P型クラッド層およびP型コンタクト層を備える。P型コンタクト層は、各活性層1CA、2CB、3CC、4CDに電流を注入する電極Q1~Q4との間でオーミック接合を形成することができる。各P型半導体層1D~4Dは、各P型半導体層1D~4Dに各リッジG1~G4を形成するためのエッチストップ層を備えてもよい。
【0060】
なお、赤色レーザ光を出射可能なAlGaInP系半導体レーザの場合、半導体基板SBはGaAs基板、P型コンタクト層およびNコンタクト層はGaAs層、P型クラッド層、P型ガイド層、N型クラッド層およびN型ガイド層はAlGaInP層、活性層1CA~1CD、2CB~2CD、3CC、3CD、4CDはGaInP/AlGaInP/GaInP多重量子井戸層、エッチストップ層1A~4Aおよびリッジ形成用エッチストップ層はGaInP層を用いることができる。
【0061】
また、活性層1CA、2CB、3CC、4CDの配置周期は、例えば、50μmとすることができる。接合層T1D~T4Dの積層周期は、例えば、4μmとすることができる。P型コンタクト層およびN型コンタクト層のそれぞれの膜厚は、例えば、数100nmに設定することができる。P型クラッド層のリッジの膜厚は、例えば、約1μmに設定することができる。リッジ形成用エッチストップ層の膜厚は、例えば、数nmに設定することができる。P型クラッド層のリッジの両側の膜厚は、例えば、数100nmに設定することができる。P型ガイド層およびN型ガイド層の膜厚は、例えば、数10nmに設定することができる。各活性層1CA~1CD、2CB~2CD、3CC、3CD、4CDの膜厚は、例えば、数10nmに設定することができる。N型クラッド層の膜厚は、例えば、約2μmに設定することができる。各エッチストップ層1A~4Aの膜厚は、例えば、数nmに設定することができる。
【0062】
(第2実施形態)
図2Aから図2Jは、第2実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。この第2実施形態では、図1Aの半導体レーザZ1の製造方法の一例を示す。
図2Aにおいて、半導体基板SBに段差S1~S3を形成する。半導体基板SBに段差S1~S3を形成する方法は、ウェットエッチング等を用いて形成されるが、詳細は以下の図3Aから図3Dで説明する。
【0063】
次に、図2Bに示すように、エピタキシャル成長にてエッチストップ層1A、N型半導体層1B、活性層1C、P型半導体層1Dの順で半導体基板SB上の全面に成膜する。更に、その上にエッチストップ層2A、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2Dを成膜する。その後、エッチストップ層3A、N型半導体層3B、活性層3C、P型半導体層3Dを成膜する。更に、エッチストップ層4A、N型半導体層4B、活性層4C、P型半導体層4Dを半導体基板SB上の全面に順次成膜する。これらの層のエピタキシャル成長は、同一チャンバ内で連続的に行うことができる。エピタキシャル成長は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)であってもよいし、MBE(Molecular Beam Epitaxy)であってもよいし、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)であってもよい。
【0064】
次に、図2Cに示すように、フォトリソグラフィー技術を用いることにより、素子領域RAに対応した開口部を有するレジストパターンF1をP型半導体層4D上に形成する。そして、レジストパターンF1を介してウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAのN型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dを除去する。このとき、N型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dのウェットエッチングは、エッチストップ層4Aの位置で停止させることができる。
【0065】
次に、図2Dに示すように、レジストパターンF1を介してウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAのエッチストップ層4Aを除去する。このとき、エッチストップ層4Aのウェットエッチングは、P型半導体層3Dの位置で停止させることができる。ここで、N型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dのウェットエッチングと、エッチストップ層4Aのウェットエッチングとで薬液を変更することで、N型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dのウェットエッチングのエッチングレートと、エッチストップ層4Aのウェットエッチングのエッチングレートを異ならせることができる。
【0066】
なお、N型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dを除去するため、ドライエッチングを用いてもよい。ドライエッチングは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)を用いることができる。このとき、エッチストップ層4Aはなくてもよい。
【0067】
次に、図2Eに示すように、図2DのレジストパターンF1を除去する。そして、フォトリソグラフィー技術を用いることにより、素子領域RA、RBに対応した開口部を有するレジストパターンF2をP型半導体層4D上に形成する。そして、レジストパターンF2を介してウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAのN型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dと、素子領域RBのN型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dを除去する。このとき、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dのウェットエッチングは、エッチストップ層3Aの位置で停止させ、N型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dのウェットエッチングは、エッチストップ層4Aの位置で停止させることができる。
【0068】
次に、図2Fに示すように、レジストパターンF2を介してウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAのエッチストップ層3Aと、素子領域RBのエッチストップ層4Aを除去する。このとき、素子領域RAのエッチストップ層3Aのウェットエッチングは、P型半導体層2Dの位置で停止させ、素子領域RBのエッチストップ層4Aのウェットエッチングは、P型半導体層3Dの位置で停止させることができる。
【0069】
次に、図2Gに示すように、図2FのレジストパターンF2を除去する。そして、フォトリソグラフィー技術を用いることにより、素子領域RA~RCに対応した開口部を有するレジストパターンF3をP型半導体層4D上に形成する。そして、レジストパターンF3を介してウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAのN型半導体層2B、活性層2CおよびP型半導体層2Dと、素子領域RBのN型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dと、素子領域RCのN型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dを除去する。このとき、N型半導体層2B、活性層2CおよびP型半導体層2Dのウェットエッチングは、エッチストップ層2Aの位置で停止させ、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dのウェットエッチングは、エッチストップ層3Aの位置で停止させ、N型半導体層4B、活性層4CおよびP型半導体層4Dのウェットエッチングは、エッチストップ層4Aの位置で停止させることができる。
【0070】
次に、図2Hに示すように、図2GのレジストパターンF3を介してウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAのエッチストップ層2Aと、素子領域RBのエッチストップ層3Aと、素子領域RCのエッチストップ層4Aを除去する。このとき、素子領域RAのエッチストップ層2Aのウェットエッチングは、P型半導体層1Dの位置で停止させ、素子領域RBのエッチストップ層3Aのウェットエッチングは、P型半導体層2Dの位置で停止させることができる。同様に、素子領域RCのエッチストップ層4Aのウェットエッチングは、P型半導体層3Dの位置で停止させることができる。
【0071】
次に、レジストパターンF3を除去する。そして、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることにより、P型半導体層1D~4Dおよび活性層1C~4Cをパターニングし、発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDと、非発光層として用いられる活性層1CB、1CC、2CC、1CD、2CD、3CDを形成するとともに、各N型半導体層1B~4Bに露出面K1~K4を形成する。このとき、活性層1CAは素子領域RAに位置し、活性層1CB、2CBは素子領域RBに位置する。同様に、活性層1CC~3CCは素子領域RCに位置し、活性層1CD~4CDは素子領域RDに位置する。なお、P型半導体層1D~4Dおよび活性層1C~4Cのパターニング時に、各露出面K1~K4のN型半導体層1B~4Bが薄膜化されてもよい。
【0072】
次に、図2Iに示すように、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いることにより、各P型半導体層1D~4Dをパターニングし、各P型半導体層1D~4DにリッジG1~G4を形成する。
【0073】
次に、図2Jに示すように、プラズマCVDなどの方法により、リッジG1~G4がそれぞれ形成されたP型半導体層1D~4Dの表面および露出面K1~K4がそれぞれ形成されたN型半導体層1B~4Bの表面にシリコン酸化膜などからなる絶縁膜5を形成する。
次に、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いることにより絶縁膜5をパターニングし、各リッジG1~G4のトップ面を露出させる開口部と、各P型半導体層1D~4Dの露出面K1~K4を露出させる開口部を絶縁膜5に形成する。
【0074】
次に、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いることにより、各リッジG1~G4のトップ面に接続された下地電極Q1~Q4と、露出面K1~K4に下地電極R1~R4を形成する。
次に、フォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術を用いることにより、各下地電極Q1~Q4に接続された厚膜電極U1~U4と、各下地電極R1~R4に接続された厚膜電極W1~W4を形成する。
さらに、厚膜電極U1~U4、W1~W4が形成された半導体基板SBをバー状に劈開する。そして、スパッタなどの方法により、各発光層として用いられる活性層1CA、2CB、3CC、4CDの端面となる劈開面に端面保護膜を成膜し、端面保護膜が形成されたバーを個片化することにより、半導体レーザZ1を形成する。
【0075】
図3Aから図3Dは、第2実施形態に係る半導体基板の傾斜面の形成方法の一例を示す断面図である。なお、図3Aから図3Dでは、図1Aの半導体レーザZ1が複数(図3Aから図3Dの例では2個)まとめて形成される半導体ウェハの表面に傾斜面を形成する方法を例にとる。
【0076】
図3Aにおいて、半導体ウェハWFは、レーザ形成領域V1、V2に区画される。そして、フォトリソグラフィー技術を用いることにより、素子領域RAをマスクするレジストパターンF11を半導体ウェハWF上に形成する。
次に、レジストパターンF11を残した状態で半導体ウェハWFのウェットエッチングを行うことにより、素子領域RAの位置を規定する段差S1を半導体ウェハWFに形成する。
【0077】
次に、図3Bに示すように、レジストパターンF11を除去する。そして、フォトリソグラフィー技術を用いることにより、素子領域RA、RBをマスクするレジストパターンF12を半導体ウェハWF上に形成する。
次に、レジストパターンF12を残した状態で半導体ウェハWFのウェットエッチングを行うことにより、素子領域RBの位置を規定する段差S2を半導体ウェハWFに形成する。
【0078】
次に、図3Cに示すように、レジストパターンF12を除去する。そして、フォトリソグラフィー技術を用いることにより、素子領域RA~RCをマスクするレジストパターンF13を半導体ウェハWF上に形成する。
次に、レジストパターンF13を残した状態で半導体ウェハWFのウェットエッチングを行うことにより、素子領域RCの位置を規定する段差S3を半導体ウェハWFに形成する。
【0079】
次に、図3Dに示すように、レジストパターンF13を除去する。ここで、段差S1~S3が形成された半導体ウェハWFに対して、図2A図2Jの工程、および図1Aに示される電極形成を行った後、半導体ウェハWFからレーザ形成領域V1を切り出すことにより、図1Aの半導体レーザZ1を形成することができる。
【0080】
(第3実施形態)
図4Aは、第3実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図、図4Bは、第3実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す平面図である。なお、以下の実施形態では、図1Aの半導体レーザZ1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0081】
図4Aにおいて、この半導体レーザZ2は、図1Aの半導体レーザZ1の電流流出領域H1~H4、下地電極R1~R4および厚膜電極W1~W4の代わりに、電流流出領域H1´~H4´、下地電極R12、R34および厚膜電極W12、W34を備える。下地電極R12は、素子領域RAと素子領域RBとの共通の電極となっている。また、下地電極R34は、素子領域RCと素子領域RDとの共通の電極となっている。半導体レーザZ2のそれ以外の点については、半導体レーザZ1と同様に構成することができる。
【0082】
電流流出領域H1´、H2´は半導体基板SBに設けられた段差S1を挟んだ位置に設けられ、電流流出領域H3´、H4´は半導体基板SBに設けられた段差S3を挟んだ位置に設けられている。下地電極R12は、各N型半導体層1B、2Bの露出面K1、K2上にまたがるように形成され、開口部を介して電流流出領域H1´、H2´に接続され、下地電極R12上には厚膜電極W12が形成される。下地電極R34は、各N型半導体層3B、4Bの露出面K3、K4上にまたがるように形成され、電流流出領域H3´、H4´に接続される。下地電極R34上には厚膜電極W34が形成される。各厚膜電極W12、W34の膜厚は、レーザチップの実装面からの高さが一致するように設定することができる。
【0083】
ここで、下地電極R1~R4および厚膜電極W1~W4の代わりに下地電極R12、R34および厚膜電極W12、W34を設けている。二つの素子領域に共通する下地電極R12、R34および厚膜電極W12、W34を設けることにより、光学特性の異なる発光層の独立駆動を可能としつつ、半導体レーザZ2からの電極の引き出し数を減らすことができる。
【0084】
(第4実施形態)
図5Aは、第4実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図、図5Bは、図5Aの半導体発光素子の一部を拡大して示す断面図である。
図5Aにおいて、この半導体レーザZ3は、図1Aの半導体レーザZ1の段差S1~S3の代わりに溝Z1~Z3を備える。このとき、各溝Z1~Z3の幅WZは、先に示した図1の半導体レーザZ1における段差S1~S3に相当する部分に形成され、段差S1~S3が除去されるように設定することができる。溝Z1~Z3は、素子領域RA~RDを分離する。半導体レーザZ3のそれ以外の点については、半導体レーザZ1と同様に構成することができる。
【0085】
溝Z1は素子領域RA、RB間に位置し、溝Z2は素子領域RB、RC間に位置し、溝Z3は素子領域RC、RD間に位置する。各溝Z1~Z3の表面は絶縁膜5で覆われる。なお、素子領域RA~RDの放熱性を向上させるため、CuまたはAlなどの金属を溝Z1~Z3に埋め込むようにしてもよい。
【0086】
ここで、溝Z1~Z3の形成には、RIEなどのドライエッチングを用いることができる。溝Z1~Z3により、素子領域RA~RD間の電気的分離性を向上させることができる。
【0087】
なお、活性層1CA、2CB、3CC、4CDの配置周期LVは、例えば、50μmとすることができる。各溝Z1~Z3の幅WZは、例えば、6μmとすることができる。各溝Z1~Z3の深さFZは、例えば、15μmとすることができる。各リッジG1~G4の厚さは、例えば、1.5μmとすることができる。各リッジG1~G4の幅は、例えば、2μmとすることができる。各リッジG1~G4のトップ面から各露出面K1~K4までの距離は、例えば、3μmとすることができる。絶縁膜5の膜厚および下地電極R1~R4の膜厚は、例えば、0.3μmとすることができる。厚膜電極U1~U4の膜厚は、例えば、1μmとすることができる。厚膜電極W1~W4の膜厚は、例えば、4μmとすることができる。厚膜電極U1~U4、W1~W4の幅は、例えば、6μmとすることができる。
【0088】
(第5実施形態)
図6は、第5実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。なお、以下の説明では、互いに異なる波長のレーザ光を放射する3層分の活性層が設けられたモノリシック多波長半導体レーザを例にとるが、互いに異なる波長のレーザ光を放射するm(mは2以上の整数)層分の活性層が設けられたモノリシック多波長半導体レーザであってもよい。
【0089】
図6において、この半導体レーザZ4では、各素子領域RA~RCは、半導体基板SBの平坦面MB上に位置する。このとき、図1Aの段差S1~S3を半導体基板SBに形成する必要はなく、図3A図3Dの工程は不要である。
【0090】
半導体基板SBの平坦面MB上には、N型半導体層1B、活性層1C、P型半導体層1D、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dが順次積層されている。ここで、素子領域RAでは、発光層として活性層1Cが用いられ、非発光層として活性層2C、3Cが用いられる。素子領域RBでは、発光層として活性層2Cが用いられ、非発光層として活性層1C、3Cが用いられる。素子領域RCでは、発光層として活性層3Cが用いられ、非発光層として活性層1C、2Cが用いられる。
【0091】
また、素子領域RAでは、絶縁膜5P1、5N1をそれぞれ介して電極6P1、6N1が形成される。電極6P1は、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、P型半導体層1Dに接続される。電極6N1は、活性層1C、P型半導体層1D、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、N型半導体層1Bに接続される。これにより、素子領域RAでは、電極6P1を介して活性層1Cに電流を注入可能となり、活性層1Cを発光層として、発光点P1で発光させることができる。
【0092】
また、素子領域RBでは、絶縁膜5P2、5N2をそれぞれ介して電極6P2、6N2が形成される。電極6P2は、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、P型半導体層2Dに接続される。電極6N2は、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、N型半導体層2Bに接続される。これにより、素子領域RBでは、電極6P2を介して活性層2Cに電流を注入可能となり、活性層2Cを発光層として、発光点P2で発光させることができる。
【0093】
また、素子領域RCでは、絶縁膜5P3、5N3をそれぞれ介して電極6P3、6N3が形成される。電極6P3は、P型半導体層3Dに接続される。電極6N3は、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、N型半導体層3Bに接続される。これにより、素子領域RCでは、電極6P3を介して活性層3Cに電流を注入可能となり、活性層3Cを発光層として、発光点P3で発光させることができる。
【0094】
これにより、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な複数の活性層1C~3Cを半導体基板SB上に連続して積層した後、活性層1C、2C、3Cを各素子領域で独立した発光層として用いることが可能となる。このように連続して活性層1C、2C、3Cが形成できるため、結晶面が汚染されたり欠陥が発生したりするのを防止することができる。更には、半導体基板SB上に活性層1C、2C、3Cを同一チャンバ内で積層することができ、光学特性が互いに異なるレーザ光を出射可能な半導体レーザZ4の特性の低下を抑制しつつ、モノリシック集積化を図ることができる。
【0095】
また、半導体レーザZ4では、各活性層1C~3Cにおいて、電極6P1、6N1、6P2、6N2、6P3、6N3の位置によって利得領域を設定することができ、発光点P1~P3の位置を規定することができる。このとき、発光点P1~P3の位置を規定するために、素子領域RA~RCを分離する溝を不要とすることができ、素子領域RA~RCの間隔を狭くすることができる。
【0096】
なお、半導体レーザZ4の実装時の発光点P1~P3の水平方向の位置を一致させるため、半導体レーザZ4が実装されるサブマウントの実装面に傾斜を持たせてもよい。
【0097】
(第6実施形態)
図7は、第6実施形態に係る半導体発光素子の概略構成例を示す断面図である。
図6の半導体レーザZ4では、素子領域RA~RCが半導体基板SBの平坦面MB上に設けられるのに対し、図7の半導体レーザZ5では、段差S1、S2が設けられた半導体基板SB上に素子領域RA~RCが設けられる。このとき、素子領域RA、RB間には、段差S1に対応した段差S1´が設けられ、素子領域RB、RC間には、段差S2に対応した段差S2´が設けられる。半導体レーザZ5では、発光層として用いられる活性層1C~3Cについて、レーザチップの実装面からの高さ方向の位置を一致させることができ、光学特性が互いに異なる複数のレーザ光の取り扱いを容易化することができる。
【0098】
(第7実施形態)
図8Aから図8Dは、第7実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の一例を示す断面図である。
図8Aにおいて、半導体基板SBには段差S1、S2が形成されている。そして、エピタキシャル成長にてN型半導体層1B、活性層1C、P型半導体層1D、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを半導体基板SB上の全面に順次成膜する。これらの層のエピタキシャル成長は、同一チャンバ内で連続的に行うことができる。
【0099】
次に、図8Bに示すように、プラズマCVDなどの方法により、P型半導体層3D上の全面に平坦化膜7を堆積する。この平坦化膜7は、シリコン酸化膜であってもよいし、窒化アルミニウム膜であってもよいし、ノンドープ多結晶半導体膜であってもよい。
【0100】
次に、図8Cに示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などの方法により、平坦化膜7を薄膜化し、平坦化膜7を平坦化する。なお、平坦化膜7の薄膜化は、P型半導体層3Dが露出された時点で停止してもよいし、P型半導体層3Dが露出される前に停止してもよい。また、平坦化膜7としては、PSG(Phosphorus Silicon Glass)膜またはBPSG(Boronic Phosphoric Silicon Glass)膜を用い、PSG膜またはBPSG膜のリフローで平坦化してもよい。
【0101】
次に、図8Dに示すように、絶縁膜5P1´、5N1´をそれぞれ介して電極6P1´、6N1´をP型半導体層3D上に形成するとともに、絶縁膜5P2´、5N2´、5P3´、5N3´をそれぞれ介して電極6P2´、6N2´、6P3´、6N3´を平坦化膜7上に形成する。
【0102】
このとき、電極6P1´は、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、P型半導体層1Dに接続される。電極6N1´は、活性層1C、P型半導体層1D、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3CおよびP型半導体層3Dを貫通し、N型半導体層1Bに接続される。電極6P2´は、N型半導体層3B、活性層3C、P型半導体層3Dおよび平坦化膜7を貫通し、P型半導体層2Dに接続される。電極6N2´は、N型半導体層2B、活性層2C、P型半導体層2D、N型半導体層3B、活性層3C、P型半導体層3Dおよび平坦化膜7を貫通し、N型半導体層2Bに接続される。電極6P3´は、平坦化膜7を貫通し、P型半導体層3Dに接続される。電極6N3´は、活性層3C、P型半導体層3Dおよび平坦化膜7を貫通し、N型半導体層3Bに接続される。
【0103】
これにより、発光層として用いられる活性層1C~3Cについて、レーザチップの実装面からの高さ方向の位置を一致させることができ、光学特性が互いに異なる複数のレーザ光の取り扱いを容易にすることができる。また、段差S1、S2が設けられた半導体基板SB上に素子領域RA~RCが設けられている場合においても、電極6P1´、6N1、6P2´、6N2´、6P3´、6N3´の高さを一致させることができ、半導体レーザZ1のジャンクションダウン実装の安定化を図ることができる。
【0104】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、主に発振波長がビーム位置毎に異なるマルチビーム半導体レーザについて説明したが、ビーム位置毎に異なる光学特性は発振波長に限定されない。発光層の積層構造では、組成、膜厚などがビーム位置毎に異なる発光層を配置することができ、リッジ幅もビーム位置毎に異なるようにできるため、発振波長以外にも、発光層の設計により調整可能な光学特性(例えば、偏光およびビーム広がり角)がビーム位置毎に異なるマルチビーム半導体レーザを実現することができる。
【0105】
例えば、GaInP活性層の場合は、In組成を概ね0.5を境として、TEモードとTMモードの光学利得の大きさが入れ替わる。各ビーム位置に対応する活性層毎にIn組成を調整することで、異なる偏光を持ったレーザ光を出射するマルチビーム半導体レーザを実現することができ、干渉性の抑制により画質低下を抑制することができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0107】
Z1~Z6 半導体レーザ
RA~RD 素子領域
T1A~T1D、T2B~T2D、T3C、T3D、T4D 接合層
SB 半導体基板
1A~4A エッチストップ層
1B~4B N型半導体層
1CA~1CD、2CB~2CD、3CC、3CD、4CD 活性層
1D~4D P型半導体層
J1~J4 電流注入領域
H1~H4 電流流出領域
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D