(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028514
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】家畜の繋留用のスタンチョン
(51)【国際特許分類】
A01K 1/062 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A01K1/062
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134263
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】521368234
【氏名又は名称】株式会社 おおいし牧場
(74)【代理人】
【識別番号】100108545
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 元廣
(72)【発明者】
【氏名】大石 秀男
(57)【要約】 (修正有)
【課題】乳牛などの家畜が、スタンチョンに繋留されて、飼料を食べている時、寝込んでしまっても、簡単な作業で、短時間で、家畜をスタンチョンから引き出して、自由な状態に解放してやることができる、構造の簡単な、家畜の繋留用のスタンチョンを提供する。
【解決手段】上部・下部フレームパイプ2、3の間に、左右一対の固定縦柵杆4、5が、それらの上下端部をそれらのパイプにそれぞれ固着して、設けられ、左右一対の固定縦柵杆の間に、回動縦柵杆6が、第1の補助横柵杆7の先端部に回動自在に枢支されて、設けられている。また、回動縦柵杆が、垂直に起立した位置にある時、この位置でこれをロックするロック手段が設けられている。第1の補助横柵杆は、一方の固定縦柵杆に水平に、かつ、第1の補助横柵杆とは反対向きに取り付けられた第2の補助横柵杆13の内部に、進退移動可能に嵌合されて取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜に飼料を食べさせる時などに、家畜を繋留するために使用され、
上部フレームパイプと下部フレームパイプとの間に、所定の間隔を隔てて、左右一対の固定縦柵杆が、それらの上下端部を前記上部フレームパイプと前記下部フレームパイプとにそれぞれ固着して、設けられ、
これら左右一対の固定縦柵杆の間に、回動縦柵杆が、垂直に起立した位置と、前記左右一対の固定縦柵杆のうちのいずれか一方の固定縦柵杆側に倒れた位置との間で、回動可能に設けられ、
前記回動縦柵杆は、その略中央部もしくはそれよりもわずかに下方の部分が、前記一方の固定縦柵杆に水平に取り付けられた比較的短い第1の補助横柵杆の先端部に、回動自在に枢支されており、
前記回動縦柵杆が、前記垂直に起立した位置にある時、前記回動縦柵杆を、この位置でロックすることができるロック手段が設けられている家畜の繋留用のスタンチョンにおいて、
前記第1の補助横柵杆は、前記一方の固定縦柵杆に水平に、かつ、前記第1の補助横柵杆とは反対向きに、固着されて取り付けられた第2の補助横柵杆の内部に、進退移動可能に嵌合されて取り付けられている
ことを特徴とする家畜の繋留用のスタンチョン。
【請求項2】
前記第1の補助横柵杆の先端部には、比較的短い補助縦柵杆が、下向きに固着して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の家畜の繋留用のスタンチョン。
【請求項3】
前記上部フレームパイプと前記下部フレームパイプとの間に、前記一方の固定縦柵杆に隣接して、少なくとももう1本の固定縦柵杆が、その上下端部を前記上部フレームパイプと前記下部フレームパイプとにそれぞれ固着して、設けられ、
前記第2の補助横柵杆の左端側が、前記もう1本の固定縦柵杆に固着されて支持されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の家畜の繋留用のスタンチョン。
【請求項4】
少なくとも前記一方の固定縦柵杆、前記第1の補助横柵杆及び前記第2の補助横柵杆は、それらの横断面形状が、四角形にされて、強度の向上が図られていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の家畜の繋留用のスタンチョン。
【請求項5】
前記第1の補助横柵杆は、前記第2の補助横柵杆の内部に、その進退位置を複数段階に切り替えることができるようにして、進退移動可能に嵌合されて取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の家畜の繋留用のスタンチョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、家畜の繋留用のスタンチョンに関し、特に乳牛などの家畜が、供給された飼料を食べるために、スタンチョンに繋留されて、飼料を食べている時に、寝込んでしまって、頚部をスタンチョンに繋留されたまま、頭部及び頚部をスタンチョンから抜き出し得ない状況に至った場合でも、スタンチョンを分解することなく、簡単な操作で、頭部及び頚部をスタンチョンから抜き出して、家畜をスタンチョンから引き出し、自由な状態に解放してやることができるようにした、家畜の繋留用のスタンチョンに関する。
【背景技術】
【0002】
フリーストール方式の牛舎などにおいては、乳牛が自由に往き来することができる通路に沿って給飼場が設けられており、これら通路と給飼場とを仕切る位置に、スタンチョンと呼ばれる、乳牛が供給された飼料を食べる時などのために使用される繋留装置が、通路に沿って一連に連ねられて設けられている。
そして、乳牛が、給飼場に供給された飼料を食べる際しては、乳牛は、通路に立ちながら、スタンチョンに設けられた窓部から頭部を出して、隣り合う乳牛に係わり合うことなく、静粛にして、飼料を食べることができるようになっている。
【0003】
このスタンチョンには、いろいろなタイプのものがあるが、基本的には、複数のスタンチョンを連ねて連結するための上部フレームパイプと下部フレームパイプとの間に、一対の固定縦柵杆が、それらの上下端部をこれらのフレームパイプに固着して、設けられており、これら一対の固定縦柵杆の間に、例えば、くの字状に折り曲げられた折曲柵杆が1本、左右いずれかの固定縦柵杆側に寄せて設けられ、このくの字状の折曲柵杆の折曲部に、回動縦柵杆が、その長さ方向の中央部もしくはそれよりもわずかに下方の位置において、回動可能に枢支されて、1台のスタンチョンが構成されるようになっている。
【0004】
この場合、くの字状の折曲柵杆の上辺は、その上端部が、寄せられた側の一方の固定縦柵杆の上端部もしくは上端部近くに接して、そこもしくはそこの近傍の上部フレームパイプに固着されるのに対して、くの字状の折曲柵杆の下辺は、垂直に立てられるかもしくは該一方の固定縦柵杆側に傾斜させられて、その下端部が、下部フレームパイプもしくは該一方の固定縦柵杆の下端部に接して、そこに固着されるようになっている構造のものが多い(特許文献1~4)。
【0005】
これに対して、本出願人が、従来、使用してきたスタンチョンにあっては、本願添付の
図8に示されるように、前記くの字状の折曲柵杆に代えて、その高さが、固定縦柵杆04、05の高さの略半分程度に短くされた逆L字状の折曲柵杆07が用いられており、この逆L字状の折曲柵杆07の折曲部に設けられた枢軸08に、回動縦柵杆06が、その長さ方向の中央部よりもわずかに下方の位置において、回動可能に枢支されて、1台のスタンチョン01が構成されるようになっている。
この場合において、逆L字の横辺「一」の先端部側は、折曲柵杆07が寄せて設けられた側の一方の固定縦柵杆05に固着され、逆L字の縦辺「1」の下端部は、下部フレームパイプ03に固着されている。02は、上部フレームパイプである。
【0006】
特許文献5に記載されたものも、逆L字状の折曲柵杆を用いた点で、本出願人の従来例と共通する。また、特許文献6に記載されたものは、逆L字の縦辺「1」を欠いた点で、本出願人の従来例と異なるが、これに近く、また、本願の発明の先行技術の水準を示す例となる回動縦柵杆の枢支手段を開示している。
なお、これら従来のスタンチョンについて、ここで、「柵杆」と呼んだものは、特許文献1、6では、「仕切柱」とされ、特許文献2~4では、「柵棒」とされ、また、ある文献では、「柵杆」、「柵パイプ」とされているが、「仕切柱」や「柵棒」、「柵杆」とされたものでも、実際は、軽量化とコスト面から、多くの場合、金属製の「柵パイプ」が用いられるものと考えられる。
本願の発明の説明においては、これら全てを含み得る表現として、「柵杆」を用いることとしている。
【0007】
このような従来のスタンチョンにおいては、回動縦柵杆が、何らかの理由(その自重、乳牛の頭部や頚部による押圧、人為的な操作など)により、くの字状の折曲柵杆の上辺に添うように回動して倒された場合(特許文献1~4)、もしくはその上端部が、前記一方の固定縦柵杆の上端部に衝突するように回動して倒された場合(特許文献5、6、本出願人の従来例)には、該回動縦柵杆と他方の固定縦柵杆との間に、上方に拡開された倒立三角形状の比較的大きな空間(窓部)が形成されることになる。
【0008】
そこで、乳牛が、この倒立三角形状の空間の上方拡開部から頭部を挿入して、前方に突出させ、前方下方の給飼場の床面上に供給された飼料を食べようとして、その頭部及び頚部を下げると、頚部が、倒されていた回動縦柵杆の下方部を押すことにより、回動縦柵杆が、起立する方向に回動させられ、垂直の姿勢を保つようになる。多くのスタンチョンにおいては、回動縦柵杆は、この姿勢でロックされる(例えば、特許文献1の第2図、特許文献2の
図1、特許文献4の
図3参照)。よって、乳牛は、このような回動縦柵杆のロック状態において、飼料を食べる動作を続けることになる。
【0009】
このようにして、回動縦柵杆が、垂直の姿勢を保ってロックされた状態においては、該回動縦柵杆は、他方の固定縦柵杆と平行に並ぶことになるので、乳牛が、当初、その頭部を出し入れすることができていた、上方に拡開された倒立三角形状の空間(窓部)は、最早、失われている。
よって、乳牛が、飼料を食べ終えて、スタンチョンの窓部から頭部を抜き出し、自由に動き回ろうとしても、乳牛は、これら2本の平行に並んだ回動縦柵杆と他方の固定縦柵杆との間に形成される縦に細長い空間内で、その頚部を上下に動かすことができるのみであり、人間が、そのロック状態を解除してやらない限り、乳牛は、スタンチョンの窓部から頭部を抜き出して、自由な、解放された状態に戻ることができない。
【0010】
ところで、このように、回動縦柵杆が、垂直の姿勢を保ってロックされて、乳牛が、供給された飼料を食べることができる状態に置かれている時であっても、乳牛は、時として、スタンチョン内で寝込んでしまうことがある。
また、乳牛が飼料を食べることができる時間(給飼時間)が終了して、人間が、回動縦柵杆のロックを解いてやるべき時間が到来しても、解くことを忘れて牛舎から離れてしまうなどの人為ミスで、これを怠ることが間々あり、このような場合にも、乳牛は、同じ姿勢から抜け出すことができないままに、時として、スタンチョン内で寝込んでしまうことがある。
【0011】
このようなことが起こると、乳牛の生命にも関わりかねず、怪我の元にもなるので、人間が、回動縦柵杆のロック状態を解除して、当初の、上方に拡開された倒立三角形状の空間が形成可能な状態に戻した上で、乳牛の頭部及び頚部を抱えて、該倒立三角形状の空間の上方の広い空間部に移動してやることが必要となるが、体重が800Kgにも及ぶ乳牛の頭部や頚部を抱えて、そのようにすることは、不可能であるので、止む無く、特許文献2に記載されているように、回動縦柵杆をくの字状折曲柵杆の折曲部に回動可能に枢支している部分のボルト・ナット締結構造を解くなどして、回動縦柵杆を取り外さなければならず、このようにして、乳牛の頭部及び頚部を囲んでいる空間を横方向に広げて、それらをスタンチョンの窓部の左右、前後方向に移動させることができるようにして、やっと、それらをスタンチョンから抜き出し、乳牛をスタンチョンから引き出して、自由な状態に解放してやることができていた。
よって、乳牛が、供給された飼料を食べることができる状態に置かれている時、あるいは、そのような状態に置かれていなくても、人為ミスで、回動縦柵杆のロックが解かれないことにより、同じ姿勢から抜け出すことができないままに、スタンチョン内で寝込んでしまうと、乳牛の頭部や頚部をスタンチョンから抜き出し、乳牛をスタンチョンから引き出して、自由な状態に解放してやる作業が容易でなく、時間を要するものとなっていた。
【0012】
そこで、特許文献3では、このような問題点を解決するために、回動縦柵杆と協働して、上方に拡開された倒立三角形状の空間(窓部)を形成していた他方の固定縦柵杆に、コの字状の補助縦柵杆を回動可能に取り付け、回動縦柵杆は、この補助縦柵杆と協働して、上方に拡開された倒立三角形状の空間(窓部)を形成するようにするとともに、乳牛が、2本の平行に並んだ回動縦柵杆と補助縦柵杆との間に形成される縦に細長い空間内にその頚部を突っ込んで、飼料を食べるなどしながら、寝込んでしまった場合には、補助縦柵杆を他方の固定縦柵杆の周りに90度回動させて、前記縦に細長い空間の横方向幅を広げ、これにより、乳牛の頭部及び頚部が、スタンチョンの窓部で左右、前後方向に移動することができるようにしてから、乳牛をスタンチョンから引き出し、自由な状態に解放してやるようにしている。
【0013】
しかしながら、このものにあっては、補助縦柵杆を他方の固定縦柵杆の周りに90度回動させるために、補助縦柵杆を一旦上方に持ち上げ、ピンcと切り欠きdとの係合を解いてから、乳牛の姿勢を見計らいながら、いずれかの方向に90度回動させ、次いで、この状態で補助縦柵杆を持ち下げて、ピンcともう1つの切り欠きd’とを係合させるようにしなければならず、コの字状の補助縦柵杆という、特殊な形状の縦柵杆を用意しなければならない上に、縦に細長い空間の横方向幅を広げるのに、なお煩瑣な作業を解消し切れたとは言い難い。
なお、以上のような問題は、家畜が、乳牛である場合のみならず、肉牛や馬である場合でも起こり得る問題であり、その解決が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特公昭52-46869号公報
【特許文献2】特許第3548174号公報
【特許文献3】実用新案登録第3130199号公報
【特許文献4】実用新案登録第3135759号公報
【特許文献5】米国特許第4037566号明細書
【特許文献6】実用新案登録第3148926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願の発明は、従来の家畜の繋留用のスタンチョンが有する前記のような問題点を解決して、乳牛などの家畜が、スタンチョンの窓部に頭部及び頚部を挿入して、飼料を食べている時、寝込んでしまっても、簡単な作業で、短時間で、家畜をスタンチョンから引き出して、自由な状態に解放してやることができる、構造の簡単な、家畜の繋留用のスタンチョンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記のような課題は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載された次のような発明により解決される。
すなわち、その請求項1に記載された発明は、家畜に飼料を食べさせる時などに、家畜を繋留するために使用され、上部フレームパイプと下部フレームパイプとの間に、所定の間隔を隔てて、左右一対の固定縦柵杆が、それらの上下端部を前記上部フレームパイプと前記下部フレームパイプとにそれぞれ固着して、設けられ、これら左右一対の固定縦柵杆の間に、回動縦柵杆が、垂直に起立した位置と、前記左右一対の固定縦柵杆のうちのいずれか一方の固定縦柵杆側に倒れた位置との間で、回動可能に設けられ、前記回動縦柵杆は、その略中央部もしくはそれよりもわずかに下方の部分が、前記一方の固定縦柵杆に水平に取り付けられた比較的短い第1の補助横柵杆の先端部に、回動自在に枢支されており、前記回動縦柵杆が、前記垂直に起立した位置にある時、前記回動縦柵杆を、この位置でロックすることができるロック手段が設けられている家畜の繋留用のスタンチョンにおいて、前記第1の補助横柵杆は、前記一方の固定縦柵杆に水平に、かつ、前記第1の補助横柵杆とは反対向きに、固着されて取り付けられた第2の補助横柵杆の内部に、進退移動可能に嵌合されて取り付けられていることを特徴とする家畜の繋留用のスタンチョンである。
【0017】
また、その請求項2に記載された発明は、前記第1の補助横柵杆の先端部には、比較的短い補助縦柵杆が、下向きに固着して取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の家畜の繋留用のスタンチョンである。
【0018】
また、その請求項3に記載された発明は、前記上部フレームパイプと前記下部フレームパイプとの間に、前記一方の固定縦柵杆に隣接して、少なくとももう1本の固定縦柵杆が、その上下端部を前記上部フレームパイプと前記下部フレームパイプとにそれぞれ固着して、設けられ、前記第2の補助横柵杆の左端側が、前記もう1本の固定縦柵杆に固着されて支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の家畜の繋留用のスタンチョンである。
【0019】
また、その請求項4に記載された発明は、少なくとも前記一方の固定縦柵杆、前記第1の補助横柵杆及び前記第2の補助横柵杆は、それらの横断面形状が、四角形にされて、強度の向上が図られていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の家畜の繋留用のスタンチョンである。
【0020】
さらに、その請求項5に記載された発明は、前記第1の補助横柵杆は、前記第2の補助横柵杆の内部に、その進退位置を複数段階に切り替えることができるようにして、進退移動可能に嵌合されて取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の家畜の繋留用のスタンチョンである。
【発明の効果】
【0021】
本願の発明は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
本願の発明の、家畜の繋留用のスタンチョンは、上部フレームパイプと下部フレームパイプとの間に、所定の間隔を隔てて、左右一対の固定縦柵杆が、それらの上下端部を上部フレームパイプと下部フレームパイプとにそれぞれ固着して、設けられ、これら左右一対の固定縦柵杆の間に、回動縦柵杆が、垂直に起立した位置と、左右一対の固定縦柵杆のうちのいずれか一方の固定縦柵杆側に倒れた位置との間で、回動可能に設けられ、回動縦柵杆は、その略中央部もしくはそれよりもわずかに下方の部分が、一方の固定縦柵杆に水平に取り付けられた比較的短い第1の補助横柵杆の先端部に、回動自在に枢支されており、回動縦柵杆が、垂直に起立した位置にある時、回動縦柵杆を、この位置でロックすることができるロック手段が設けられているスタンチョンにおいて、第1の補助横柵杆は、一方の固定縦柵杆に水平に、かつ、第1の補助横柵杆とは反対向きに、固着されて取り付けられた第2の補助横柵杆の内部に、進退移動可能に嵌合されて取り付けられている。
これにより、回動縦柵杆が、一方の固定縦柵杆側に回動して倒れた時、回動縦柵杆と他方の固定縦柵杆との間に形成される、上方が拡開された空間部に、乳牛などの家畜が、供給された飼料を食べるために、その頭部及び頚部を挿入して下ろすと、その頚部が、回動縦柵杆の下方部を押すことにより、回動縦柵杆が、垂直に起立する方向に回動して、その位置でロックされるとともに、この状態で、家畜が、飼料を食べながら、寝込んでしまった場合、あるいは、家畜が飼料を食べることができる時間(給飼時間)が終了して、家畜が、飼料を食べていなくても、人為ミスで、回動縦柵杆のロックが解かれないことにより、家畜が、同じ姿勢から抜け出すことができないままに、寝込んでしまった場合には、前記ロックを解いて、第1の補助横柵杆を、第2の補助横柵杆の内部に後退させるとともに、この後退の動きに連動して、回動縦柵杆を、一方の固定縦柵杆側に後退させることにより、家畜の頚部を囲む空間を横方向に拡大して、家畜の頭部及び頚部を、この空間から抜き出し、家畜を、この空間から引き出して、自由な状態に解放してやることができる。
この結果、従来構造のスタンチョンと比べて、第1の補助横柵杆及び回動縦柵杆を、一体として、一方の固定縦柵杆側に後退させるという、単純で簡単な作業で、短時間で、寝込んだ家畜をスタンチョンから引き出して、自由な状態に解放してやることができ、しかも、大小2本の補助横柵杆の嵌合構造を利用するのみであるので、構造の簡単なスタンチョンを得ることができ、その効果はきわめて大きい。
【0022】
また、第1の補助横柵杆の先端部には、比較的短い補助縦柵杆が、下向きに固着して取り付けられているので、簡単な構造により、第1の補助横柵杆及び回動縦柵杆の下方の空間から、乳牛が、その頭部及び頚部を出し入れするのを防止することができる。
【0023】
また、上部フレームパイプと下部フレームパイプとの間に、一方の固定縦柵杆に隣接して、少なくとももう1本の固定縦柵杆が、その上下端部を上部フレームパイプと下部フレームパイプとにそれぞれ固着して、設けられ、第2の補助横柵杆の左端側が、このもう1本の固定縦柵杆に固着されて、支持されているので、回動縦柵杆、第1の補助横柵杆及び第2の補助横柵杆を支持する構造部(一方の固定縦柵杆)の補強を図ることができる。
【0024】
また、少なくとも一方の固定縦柵杆、第1の補助横柵杆及び第2の補助横柵杆は、それらの横断面形状が、四角形にされているので、それらの強度を向上させることができる。
【0025】
さらに、第1の補助横柵杆は、第2の補助横柵杆の内部に、その進退位置を複数段階に切り替えることができるようにして、進退移動可能に嵌合されて取り付けられているので、家畜の年齢に応じた頚部の大きさなどに応じて、家畜が、供給された飼料を食べている時の、家畜の頚部を囲む、回動縦柵杆と他方の固定縦柵杆との間に形成される空間部の大きさを適切な大きさとすることができ、子供の家畜であっても、予定時間外に、その空間部に頭部と頚部を挿入したり、その空間部から頭部と頚部を抜き出したりして、想定外の行動をするのを防止することができ、作業のスケジュールに従った家畜の給飼管理ができ、作業効率を向上させることができる。
また、市販のスタンチョンは、子牛用、親牛用と、異なるサイズで作られており、飼育者の都合で、牛の部屋替えや飼育牛サイズの変更が自由にできないが、本願の発明のスタンチョンは、前記のように構成されているので、この問題も解決することができ、和牛の育成農家にとって、スタンチョン自体の交換なしで対応することができる点で、大きな利点がある。
しかも、子供の家畜を含めて、家畜が寝込んでしまった場合には、前記のとおりの、きわめて大きな効果を同じように発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本願の発明の一実施例の家畜の繋留用のスタンチョンの正面図である。
【
図2】
図1のスタンチョンにおいて、家畜が、前記スタンチョンの窓部から頭部を出して、飼料を食べている状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の状態において、家畜が、寝込んでしまった状態を示す正面図である。
【
図4】
図3の状態において、回動縦柵杆のロックを解いて、同回動縦柵杆を一方の固定縦柵杆側に倒した状態を示す正面図である。
【
図5】
図3の状態において、第1の補助横柵杆及び回動縦柵杆を、一体として、一方の固定縦柵杆側に退避させた状態を示す正面図である。
【
図6】
図1の部分拡大図であって、第1の補助横柵杆が、第2の補助横柵杆の内部に、進退移動可能に嵌合されて取り付けられている状態を示す図である。
【
図7】
図6において、第1の補助横柵杆が、第2の補助横柵杆の内部に、最大量奥方に後退させられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例)
次に、本願の発明の、家畜の繋留用のスタンチョンの一実施例を、図面を参照して、詳細に説明する。
本実施例においては、家畜として、乳牛が例として取り上げられている。そして、本実施例の乳牛の繋留用のスタンチョン(以下、単に「スタンチョン」という。)は、牛舎において、乳牛が、供給された飼料を食べる時に、乳牛を繋留しておくために主として使用される。このように、乳牛が飼料を食べる時に、乳牛を繋留しておくことにより、複数の乳牛は、隣り合う乳牛に係わり合うことなく、互いに静粛にして、飼料を食べることができる。
ここで、複数の乳牛のためには、このようなスタンチョンを複数台、一列に連結して、各スタンチョンが備える回動縦柵杆のロック機構の操作を、1個所で、一度の操作で、同時に行うことができるようにした連動スタンチョンと呼ばれるものも、多く使用されている。本実施例のスタンチョンも、このような連動スタンチョンの一部である。
【0028】
(全体構成)
先ず、本実施例のスタンチョンの全体構成を、
図1を参照して、詳細に説明する。
本実施例のスタンチョン1は、
図1に示されるように、連動スタンチョンの上下フレームの役目を果たしている上部フレームパイプ2と下部フレームパイプ3との間に、乳牛の頭部が出入りするのに十分な所定の間隔を隔てて、左右一対の固定縦柵杆4、5が、それらの上下端部を上部フレームパイプ2と下部フレームパイプ3とにそれぞれ固着して、設けられている。
【0029】
そして、これら左右一対の固定縦柵杆4、5の間には、回動縦柵杆6が、垂直に起立した位置(
図2参照)と、左右一対の固定縦柵杆4、5のうちのいずれか一方(本実施例においては、
図1において左方の固定縦柵杆5)側に倒れた位置との間で、回動可能に設けられている。
この場合、一方(左方)の固定縦柵杆5は、円管からなる他方(右方)の固定縦柵杆4に対して、断面四角形の管からなるものとされて、強度が向上されている。
【0030】
ここで、回動縦柵杆6は、その長さ方向の略中央部もしくはそれよりもわずかに下方の部分が、一方の固定縦柵杆5に水平に取り付けられた比較的短い第1の補助横柵杆7の先端部に通された枢軸8に、回動自在に枢支されている。なお、この第1の補助横柵杆7も、一方の固定縦柵杆5と同様に、断面四角形の管からなるものとされている。
そして、この回動縦柵杆6が、垂直に起立した位置にある時には、回動縦柵杆6を、この位置でロックすることができるロック手段(後述)が設けられている。
【0031】
(第1の補助横柵杆の取付け、第2の補助横柵杆)
次に、前記した第1の補助横柵杆7の取付け手段を、
図1、
図6を参照して、詳細に説明する。
第1の補助横柵杆7は、
図6により良く示されるように、一方の固定縦柵杆5に水平に、かつ、第1の補助横柵杆7とは反対向きに、固着されて取り付けられた第2の補助横柵杆13の内部に、進退移動可能に嵌合されて、取り付けられている。この第2の補助横柵杆13は、第1の補助横柵杆7と同様に、断面四角形の管からなり、寸法は、それよりもわずかに(その壁厚分だけ)大きい。
なお、この第2の補助横柵杆13が、一方の固定縦柵杆5に固着されて取り付けられるのには、実際には、一方の固定縦柵杆5が上下に2分割された位置に、第2の補助横柵杆13を水平に差し込んで、これら3つの部品を溶接により接合することによっている。
【0032】
このようにして、第1の補助横柵杆7が、第2の補助横柵杆13の内部に、進退移動可能に嵌合されて取り付けられるに際しては、なお、第1の補助横柵杆7は、第2の補助横柵杆13の内部に、その進退位置を複数段階(本実施例においては、4段階)に切り替えることができるようにして、取り付けられるのが好都合である。
そのために、第1の補助横柵杆7には、その長さ方向の3個所に、適宜間隔を空けて、杆(四角パイプ)の中心を通るようにして、貫通孔14が設けられ、また、第2の補助横柵杆13には、その長さ方向の所定の1個所に、同様にして、貫通孔15が設けられている。
そして、これら3個の貫通孔14のうちのいずれかと貫通孔15とが合致した時には、両孔にボルト16を貫通させて、第1の補助横柵杆7を、その位置で固定することができるようになっている。
【0033】
図6には、これら3個の貫通孔14のうちの中央に位置する貫通孔14と貫通孔15とが合致した場合が示されており、この場合には、第1の補助横柵杆7は、平常の位置に、固定、設置されている。
これに対して、これら3個の貫通孔14のうちの図において左端に位置する貫通孔14と貫通孔15とを合致させて、この位置で、第1の補助横柵杆7を固定すれば、第1の補助横柵杆7は、平常の位置よりも右側に寄った位置に設置されることになる。そして、枢軸8と他方の固定縦柵杆4との間の距離は、最短となり、このスタンチョン1が、子牛の乳牛が飼料を食べるのに適した寸法を有するものとされる。
同様にして、平常よりも体格の大きい乳牛に対応するためには、これら3個の貫通孔14のうちの図において右端に位置する貫通孔14と貫通孔15とを合致させて、この位置で、第1の補助横柵杆7を固定するようにすれば良い。
【0034】
さらに、
図7には、第1の補助横柵杆7が、第2の補助横柵杆13の内部に、最大量奥方(最奥部)に後退させられた場合が示されており、この場合には、第1の補助横柵杆7を、この位置に固定するための貫通孔14は、特に設けられていない。しかし、枢軸8と他方の固定縦柵杆4との間の距離は、最大に維持されて、
図5に示されるように、スタンチョン1に寝込んでしまった乳牛を、スタンチョン1から容易に引き出すことができるようになり、便利である。
【0035】
(ロック手段)
次に、回動縦柵杆6を垂直に起立した位置でロックするロック手段について説明する。
このロック手段は、
図1に示されるように、上部フレームパイプ2の直ぐ上の位置に、これと平行に配設されたロック操作棒9の外表面上に所定間隔を置いて設けられた係止ピン10と、回動縦柵杆6側に設けられているU字状のブラケット11の上端部に回動自在に枢支された係合板12とにより構成されている。
ここで、U字状のブラケット11は、回動縦柵杆6の上端部に、これと所定の角度をなして、一体に固着されていて、そのU字状の部分が、上部フレームパイプ2とロック操作棒9とを下から上向きに跨いで、これらと相対移動可能にセットされている。
【0036】
そして、回動縦柵杆6が、
図1に示される、一方の固定縦柵杆5側に倒れた位置から、図において時計方向に回動して、
図2の左側のスタンチョン1に示される、垂直に起立した位置まで来る過程で、係合板12は、ロック操作棒9の外表面上を摺動して、係止ピン10を乗り越える。そうすると、係合板12は、反時計方向には、その先端部が係止ピン10と係合するので、回動縦柵杆6は、最早、反時計方向に回動できなくなり、その位置でロックされる(
図2、
図3参照)。
このロックを解くには、ロック操作棒9を、その左端に設けられたハンドル17(
図2参照)を用いて、90度回転させて、係止ピン10を右方に向けさせるか、ロックを解く必要が生じたスタンチョン1について、個別に、その係合板12を手で摘まんで、上方に持ち上げ、係止ピン10を反時計方向に乗り越えるようにする(
図4参照)。
【0037】
(もう1本の固定縦柵杆)
なお、上部フレームパイプ2と下部フレームパイプ3との間には、一方の固定縦柵杆5に左方に隣接して、少なくとももう1本の固定縦柵杆18が、その上下端部を上部フレームパイプ2と下部フレームパイプ3とにそれぞれ固着して、設けられており、このもう1本の固定縦柵杆18には、第2の補助横柵杆13の左端側が固着されて、第2の補助横柵杆13の支持が更に強化されるようになっている。
【0038】
ここで、このもう1本の固定縦柵杆18としては、一方の固定縦柵杆5と同じ構造のものであっても良いし、上下に2分割された円管とされても良い。さらには、第2の補助横柵杆13を前後で挟んで、その位置でこれに固着される2枚の細長い帯状平板とされても良い。本実施例のスタンチョン1では、最後に挙げた、2枚の細長い帯状平板が採用されている。この2枚の細長い帯状平板は、強度が確保されるのであれば、1枚とされても良い。
なお、前記「一方の固定縦柵杆5と同じ構造のもの」とは、前記のとおり、断面が四角形で、上下に2分割されていて、その2分割された位置に、第2の補助横柵杆13を水平に差し込んで、これら3つの部品を溶接により接合することができるようになっている構造のものを指している。
【0039】
(補助縦柵杆)
また、第1の補助横柵杆7の先端部には、比較的短い補助縦柵杆19が、下向きに固着して取り付けられている。これにより、簡単な構造で、第1の補助横柵杆7及び回動縦柵杆6の下方の空間から、乳牛が、その頭部及び頚部を出し入れするのを防止することができる。
【0040】
(本実施例の作用、効果)
本実施例のスタンチョン1は、前記のように構成されているので、次のような作用、効果を奏することができる。
牛舎において、朝夕、乳牛に飼料を与える時間が到来すると、乳牛の通路に隣接する給飼場には、自動給配車により飼料が供給されるとともに、連動スタンチョンにおける各スタンチョン1は、その回動縦柵杆6が、
図1に示されるように、一方の固定縦柵杆5側に回動して倒れた状態にされている。
そうすると、回動縦柵杆6と他方の固定縦柵杆4との間に形成される、上方が拡開された倒立三角形状の空間部(窓部)に、
図2に示されるように、乳牛が、供給された飼料を食べるために、その頭部及び頚部を挿入して、次いで、下ろす。その時、その頚部は、回動縦柵杆6の下方部を押すので、これにより、回動縦柵杆6は、垂直に起立する方向(時計方向)に回動して、係合板12は、係止ピン10を乗り越える。これにより、係合板12は、反時計方向には、最早、係止ピン10により係止されるので、回動縦柵杆6は、
図2に示されるように、その位置でロックされる。
【0041】
この状態で、乳牛は、垂直に起立した回動縦柵杆6と他方の固定縦柵杆4との間に形成される縦に細長い空間にその頚部を挟まれたままに、飼料を食べる動作を続けることになるが、その過程で、乳牛は、
図3に示されるように、スタンチョン1内で寝込んでしまうことが間々ある。あるいは、乳牛が飼料を食べることができる時間(給飼時間)が終了して、乳牛が、飼料を食べていなくても、人為ミスで、回動縦柵杆6のロックが解かれないことにより、家畜が、同じ姿勢から抜け出すことができないままに、スタンチョン1内で寝込んでしまうことが間々ある。
【0042】
このようなことが起こると、乳牛の生命にも関わりかねず、怪我の元にもなるので、このようなことが起こった場合には、
図4に示されるように、人間が、係合板12を持ち上げ(曲線矢印参照)、回動縦柵杆6を反時計方向に回動して、係止ピン10との係合を解き、回動縦柵杆6のロックを解く。次いで、第1の補助横柵杆7を、第2の補助横柵杆13の内部の最大量奥方(最奥部)にまで後退させる(下方の水平矢印参照)とともに、この後退の動きに連動して、回動縦柵杆6を、一方の固定縦柵杆5側に最大量後退させて(上方の水平矢印参照)、
図5に示される状態にする。
【0043】
このようにすることにより、乳牛の頚部を囲む空間は、横方向に拡大されて、乳牛の頭部及び頚部を、この空間から抜き出し、乳牛を、この空間から引き出して、自由な状態に解放してやることが容易に行えるようになる。
乳牛は、一般に、立ち上がる時、先ず、頭部を前方に1mに達する程に突き出し、次いで、前足を立て、後ろ足を立てて、前後に体を揺すりながら、立ち上がるが、スタンチョン1を
図5に示される状態にすることにより、寝込んでしまっていた乳牛が、起きようとした時、そのような動作をするのに十分な空間が得られる。
【0044】
この結果、従来構造のスタンチョンと比べて、第1の補助横柵杆7及び回動縦柵杆6を、一体として、第2の補助横柵杆13の内部の最奥部及び一方の固定縦柵杆5側にそれぞれ後退させるという、単純で簡単な作業で、短時間に、寝込んだ乳牛をスタンチョン1から引き出して、自由な状態に解放してやることができ、しかも、大小2本の補助横柵杆7、13の嵌合構造を利用するのみであるので、構造の簡単なスタンチョン1を得ることができ、その効果はきわめて大きい。
【0045】
また、第1の補助横柵杆7の先端部には、比較的短い補助縦柵杆19が、下向きに固着して取り付けられているので、簡単な構造により、第1の補助横柵杆7及び回動縦柵杆6の下方の空間から、乳牛が、その頭部及び頚部を出し入れするのを防止することができる。
【0046】
また、上部フレームパイプ2と下部フレームパイプ3との間に、一方の固定縦柵杆5に隣接して、少なくとももう1本の固定縦柵杆18が、その上下端部を上部フレームパイプ2と下部フレームパイプ3とにそれぞれ固着して、設けられ、第2の補助横柵杆13の左端側が、このもう1本の固定縦柵杆18に固着されて、支持されているので、回動縦柵杆6、第1の補助横柵杆7及び第2の補助横柵杆13を支持する構造部(一方の固定縦柵杆5)の補強を図ることができる。
【0047】
また、少なくとも一方の固定縦柵杆5、第1の補助横柵杆7及び第2の補助横柵杆13は、それらの横断面形状が、四角形にされているので、それらの強度を向上させることができる。
【0048】
さらに、第1の補助横柵杆7は、第2の補助横柵杆13の内部に、その進退位置を複数段階に切り替えることができるようにして、進退移動可能に嵌合されて取り付けられているので、乳牛の年齢に応じた頚部の大きさなどに応じて、乳牛が、供給された飼料を食べている時の、乳牛の頚部を囲む、回動縦柵杆6と他方の固定縦柵杆4との間に形成される空間部の大きさを適切な大きさとすることができ、子牛であっても、予定時間外に、その空間部に頭部と頚部を挿入したり、その空間部から頭部と頚部を抜き出したりして、想定外の行動をするのを防止することができ、作業のスケジュールに従った乳牛の給飼管理ができ、作業効率を向上させることができる。
また、市販のスタンチョンは、子牛用、親牛用と、異なるサイズで作られており、飼育者の都合で、牛の部屋替えや飼育牛サイズの変更が自由にできないが、本実施例のスタンチョン1は、前記のように構成されているので、この問題も解決することができ、和牛の育成農家にとって、スタンチョン自体の交換なしで対応することができる点で、大きな利点がある。
しかも、子牛を含めて、乳牛が、寝込んでしまった場合には、前記のとおりの、きわめて大きな効果を同じように発揮させることができる。
【0049】
以上、本願の発明の、家畜の繋留用のスタンチョンの一実施例について説明したが、本願の発明は、以上の実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
例えば、肉牛や馬などの家畜に対しても、本実施例のスタンチョンを好適に使用することができる。
また、例えば、家畜が、獣医師による診察や種付けを受ける場合にも、本実施例のスタンチョンを好適に使用することができる。これらの場合における本スタンチョンの操作や、得られる効果は、当業者には明らかであるので、詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0050】
1…スタンチョン、2…上部フレームパイプ、3…下部フレームパイプ、4…他方の固定縦柵杆、5…一方の固定縦柵杆、6…回動縦柵杆、7…第1の補助横柵杆、8…枢軸、9…ロック操作棒、10…係止ピン、11…U字状のブラケット、12…係合板、13…第2の補助横柵杆、14…貫通孔(第1の補助横柵杆側)、15…貫通孔(第2の補助横柵杆側)、16…ボルト、17…ハンドル、18…もう1本の固定縦柵杆、19…補助縦柵杆。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本願の発明は、家畜の繋留用のスタンチョンに関し、特に乳牛などの家畜が、供給された飼料を食べるために、スタンチョンに繋留されて、飼料を食べている時などに、寝込んでしまって、頚部をスタンチョンに繋留されたまま、頭部及び頚部をスタンチョンから抜き出し得ない状況に至った場合でも、スタンチョンを分解することなく、簡単な操作で、頭部及び頚部をスタンチョンから抜き出して、家畜をスタンチョンから引き出し、自由な状態に解放してやることができるようにした、家畜の繋留用のスタンチョンに関する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本願の発明は、従来の家畜の繋留用のスタンチョンが有する前記のような問題点を解決して、乳牛などの家畜が、スタンチョンの窓部に頭部及び頚部を挿入して、飼料を食べている時などに、寝込んでしまっても、簡単な作業で、短時間で、家畜をスタンチョンから引き出して、自由な状態に解放してやることができる、構造の簡単な、家畜の繋留用のスタンチョンを提供することを課題とする。