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2023-28520プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028520
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20230224BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H05K3/18 E
H05K3/46 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134270
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 智章
【テーマコード(参考)】
5E316
5E343
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA32
5E316BB15
5E316CC04
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD02
5E316DD25
5E316DD33
5E316EE02
5E316EE09
5E316EE12
5E316EE31
5E316FF15
5E316GG16
5E316GG17
5E316GG19
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH11
5E343AA02
5E343AA13
5E343AA17
5E343AA19
5E343BB44
5E343BB62
5E343CC01
5E343CC73
5E343DD32
5E343EE21
5E343ER02
5E343ER11
5E343FF16
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】形成精度に優れ、高い密着性を有する回路パターンを形成でき、作業環境に優れるプリント配線板の製造方法及び該製造方法で得られるプリント配線板を用いる半導体パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】特定の工程1~6をこの順で含むプリント配線板の製造方法及び該製造方法で得られるプリント配線板を用いる半導体パッケージの製造方法である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1~6をこの順で含むプリント配線板の製造方法。
工程1:ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材、及び、前記複合材の表面に接着補助層を形成してなる接着補助層付き複合材、から選択される基板の表面(S1)上に、絶縁材料パターンと、該絶縁材料パターン同士の間隙に相当する空間であって前記表面(S1)が露出する絶縁材料パターン非形成部と、を設ける工程
工程2:前記絶縁材料パターンの表面と、前記絶縁材料パターン非形成部において露出している表面(S1)の部分と、から構成される表面(S2)上に第一の触媒を付着させて、第一の触媒付着処理表面(S3)を形成する工程
工程3:前記第一の触媒付着処理表面(S3)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液を接触させて、少なくともニッケルを含有する第二の触媒を付着させた第二の触媒付着処理表面(S4)を形成する工程
工程4:前記第二の触媒付着処理表面(S4)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液を接触させて、前記第二の触媒付着処理表面(S4)上に、シード層を形成する工程
工程5:前記シード層の表面に電解銅めっきを行い、前記シード層上に銅層を形成する工程
工程6:前記絶縁材料パターンの上面に付着している前記銅層、前記シード層、前記第一の触媒及び前記第二の触媒を除去することによって、前記絶縁材料パターン非形成部に形成された回路パターンを得る工程
【請求項2】
さらに、下記工程7を含む、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
工程7:前記絶縁材料パターン及び回路パターンに絶縁樹脂材料を積層する工程
【請求項3】
前記無電解ニッケルめっき液のpHが、7~10である、請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記第二の触媒中のリン含有量が、6質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記シード層の厚さが、0.4μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のプリント配線板の製造方法によってプリント配線板を製造し、該プリント配線板に半導体素子を搭載する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の発展は目覚しく、民生機器としては、パソコン及び携帯電話等の小型化、軽量化、高性能化及び高機能化が進められている。一方、産業用機器としては、無線基地局、光通信装置、サーバ及びルータ等のネットワーク関連機器などにおいて、大型又は小型を問わずに機能の向上が求められている。また、情報伝達量の増加に伴い、扱う信号の高周波化が年々進む傾向にあり、高速処理及び高速伝送技術の開発が進められている。例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processing)及び各種メモリ等のLSI(Large Scale Integration)の高速化及び高機能化と共に、新たな高密度実装技術としてシステムオンチップ(SoC)、システムインパッケージ(SiP)等の開発が盛んに行われている。このため、半導体チップ搭載用基板及びマザーボードも、高周波化、高密度配線化及び高機能化に対応するために、配線幅/スペース(L/S)の小さい微細配線を形成したビルドアップ方式の多層配線基板が使用されるようになってきた。
【0003】
近年では、微細配線の形成には、一般的にセミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process、以下「SAP法」ともいう)が有用とされている。セミアディティブ法の場合、まず、絶縁樹脂上にシード層といわれる無電解銅めっき層を設け、該銅めっき層上にドライフィルムレジスト層を設ける。そして、フォトマスクを介して露光する方法(フォトリソグラフィー)又はレーザー光で直接描写して露光する方法でレジストパターンを形成する。次いで、必要に応じてプラズマ処理を行った後に、レジストパターンが無い部分に電解銅めっきによって回路パターンを形成し、レジストパターンを除去してから、最後に不要な部分のシード層をエッチングして除去する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-208471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のSAP法では、シード層としての機能を十分に発揮させるため、例えば、0.5μm以上のある程度の厚さを有するシード層を形成する必要があった。しかしながら、シード層が厚いと、不要なシード層を除去する際のエッチング量が増加し、これにより回路パターンの縮小化の度合いが大きくなるという問題がある。また、回路パターンの縮小化を逆算して、エッチングする前の回路パターンの幅を厚く設計する方法も考えられるが、この場合、レジストパターンの幅を小さくする必要があり、レジストパターンの密着不良等の問題が生じる。この問題は、L/Sが小さくなるにつれてより顕在化する。更には、L/Sが小さくなるにつれて、シード層を完全に除去することは困難になり、シード層の残渣によって絶縁信頼性が損なわれる問題が生じていた。
一方、単純にシード層の厚さを薄くすると、シード層にピンホール、ボイド等が発生する等、均一なシード層の形成が困難であった。
また、シード層を厚くする際のエッチング量の増加、及びシード層を薄くする際のピンホールの発生は、回路パターンのアンダーカット、剥がれ等の発生原因となり、回路パターンの密着性低下を招く。特に、従来の方法で形成された無電解銅めっきによるシード層は、近傍に存在する無電解銅めっきの触媒であるパラジウムによって酸化が促進されるため、より一層アンダーカット及び回路パターンの剥がれの問題が顕著になる。
更には、シード層をエッチングして回路パターンを形成した後、回路パターン上に、例えば、ソルダーレジスト、ビルドアップ材等の絶縁樹脂を形成するための前処理として、一般的にCZ処理が行われている。CZ処理は、例えば、1.0~1.5μm程度のエッチングによって粗化する処理である。該処理によって、アンダーカット及び回路パターンの剥がれがさらに促進される。
また、従来のSAP法において、シード層の形成に用いられていた無電解銅めっき液には、毒性が高いホルマリン、シアン化合物等が使用されており、作業環境及び安全性改善の観点から、これらの化合物を使用しない方法が望まれている。
【0006】
そこで、本実施形態は、形成精度に優れ、高い密着性を有する回路パターンを形成でき、作業環境に優れるプリント配線板の製造方法及び該製造方法で得られるプリント配線板を用いる半導体パッケージの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の本実施形態によって、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本実施形態は、下記[1]~[6]に関する。
[1]下記工程1~6をこの順で含むプリント配線板の製造方法。
工程1:ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材、及び、前記複合材の表面に接着補助層を形成してなる接着補助層付き複合材、から選択される基板の表面(S1)上に、絶縁材料パターンと、該絶縁材料パターン同士の間隙に相当する空間であって前記表面(S1)が露出する絶縁材料パターン非形成部と、を設ける工程
工程2:前記絶縁材料パターンの表面と、前記絶縁材料パターン非形成部において露出している表面(S1)の部分と、から構成される表面(S2)上に第一の触媒を付着させて、第一の触媒付着処理表面(S3)を形成する工程
工程3:前記第一の触媒付着処理表面(S3)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液を接触させて、少なくともニッケルを含有する第二の触媒を付着させた第二の触媒付着処理表面(S4)を形成する工程
工程4:前記第二の触媒付着処理表面(S4)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液を接触させて、前記第二の触媒付着処理表面(S4)上に、シード層を形成する工程
工程5:前記シード層の表面に電解銅めっきを行い、前記シード層上に銅層を形成する工程
工程6:前記絶縁材料パターンの上面に付着している前記銅層、前記シード層、前記第一の触媒及び前記第二の触媒を除去することによって、前記絶縁材料パターン非形成部に形成された回路パターンを得る工程
[2]さらに、下記工程7を含む、上記[1]に記載のプリント配線板の製造方法。
工程7:前記絶縁材料パターン及び回路パターンに絶縁樹脂材料を積層する工程
[3]前記無電解ニッケルめっき液のpHが、7~10である、上記[1]又は[2]に記載のプリント配線板の製造方法。
[4]前記第二の触媒中のリン含有量が、6質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[5]前記シード層の厚さが、0.4μm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法によってプリント配線板を製造し、該プリント配線板に半導体素子を搭載する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によると、形成精度に優れ、高い密着性を有する回路パターンを形成でき、作業環境に優れるプリント配線板の製造方法及び該製造方法で得られるプリント配線板を用いる半導体パッケージの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の製造方法の工程を示す断面模式図である。
図2】本実施形態の製造方法の続きの工程を示す断面模式図である。
図3】本実施形態の製造方法の続きの工程を示す断面模式図である。
図4】本実施形態の製造方法の続きの工程を示す断面模式図である。
図5】本実施形態の製造方法の続きの工程を示す断面模式図である。
図6】本実施形態の製造方法の続きの工程を示す断面模式図である。
図7】本実施形態の製造方法の続きの工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上、Y以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味する。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態の効果を奏する機序を限定するものではない。
【0013】
本明細書において「層」とは、一部が欠けているもの、ビア又はパターンが形成されているものも含む。
【0014】
本明細書において、「プリント配線板」とは「多層プリント配線板」も含む概念である。
【0015】
本明細書の記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0016】
[プリント配線板の製造方法及びプリント配線板]
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、下記工程1~6をこの順で含むプリント配線板の製造方法である。
工程1:ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材、及び、前記複合材の表面に接着補助層を形成してなる接着補助層付き複合材、から選択される基板の表面(S1)上に、絶縁材料パターンと、該絶縁材料パターン同士の間隙に相当する空間であって前記表面(S1)が露出する絶縁材料パターン非形成部と、を設ける工程
工程2:前記絶縁材料パターンの表面と、前記絶縁材料パターン非形成部において露出している表面(S1)の部分と、から構成される表面(S2)上に第一の触媒を付着させて、第一の触媒付着処理表面(S3)を形成する工程
工程3:前記第一の触媒付着処理表面(S3)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液を接触させて、少なくともニッケルを含有する第二の触媒を付着させた第二の触媒付着処理表面(S4)を形成する工程
工程4:前記第二の触媒付着処理表面(S4)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液を接触させて、前記第二の触媒付着処理表面(S4)上に、シード層を形成する工程
工程5:前記シード層の表面に電解銅めっきを行い、前記シード層上に銅層を形成する工程
工程6:前記絶縁材料パターンの上面に付着している前記銅層、前記シード層、前記第一の触媒及び前記第二の触媒を除去することによって、前記絶縁材料パターン非形成部に形成された回路パターンを得る工程
【0017】
本実施形態のプリント配線板の製造方法によると、回路パターンの形成に用いられる絶縁材料パターンは、除去されることなく絶縁層として用いられる。そのため、本実施形態のプリント配線板の製造方法によると、レジストパターンの除去及びレジストパターンを除去した後のシード層のエッチングが不要になり、回路パターンの側面における縮小化、回路パターンのアンダーカット等の問題が発生しない。そのため、本実施形態の製造方法によって製造されたプリント配線板は形成精度に優れるものとなる。
【0018】
また、本実施形態のプリント配線板の製造方法では、回路パターンを、ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材、及び、前記複合材の表面に接着補助層を形成してなる接着補助層付き複合材、から選択される基板の表面(S1)上に形成する。ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材は、剛性が高いため、本実施形態の製造方法によって製造されるプリント配線板は、反りの発生が抑制されたものとなる。
【0019】
また、従来の方法によると、高い剛性を有するガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材の表面上に回路パターンを形成すると、十分な回路パターンとの密着性が得られないことがあった。これは、上記複合材は剛性を高めることを目的とした材料設計がされており、回路パターンとの密着性を高めるための材料設計との両立が困難であったことが原因と考えられる。一方、本実施形態のプリント配線板の製造方法は、シード層を形成する前、第一の触媒を付着させた後、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液と接触させて、少なくともニッケルを含有する第二の触媒を付着させる工程を有する。これによって、シード層の付き回り性が向上し、基板が高い剛性を有する複合材である場合においても優れた密着性を有するものとなる。
また、従来のSAP法によって形成された回路パターンは、シード層がパラジウム触媒及び銅から形成されるため、配線を形成する銅はシード層よりも電気化学的に卑となり腐食され易い状態にあった。一方、本実施形態のプリント配線板が有する回路パターンは、シード層に銅よりも電気化学的に卑であるニッケルが含まれるため、シード層と配線を形成する銅との電位差が小さくなることによって、配線を形成する銅が腐食され難くなり、高いHAST耐性が得られる。
【0020】
また、本実施形態のプリント配線板の製造方法では、シード層の形成に次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液を用いるため、毒性が高いホルマリン、シアン化合物等を使用する必要がなく、作業環境及び安全性改善に優れる。
【0021】
以下、各工程について、図面を参照しながら本実施形態について詳細に説明する。
以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
<工程1:絶縁材料パターンの形成>
工程1は、ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材、及び、前記複合材の表面に接着補助層を形成してなる接着補助層付き複合材、から選択される基板(以下、単に「基板」ともいう)の表面(S1)上に、絶縁材料パターンと、該絶縁材料パターン同士の間隙に相当する空間であって前記表面(S1)が露出する絶縁材料パターン非形成部と、を設ける工程である。
【0023】
基板の表面(S1)上に絶縁材料パターンを形成する方法としては、基板の表面(S1)上に感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光及び現像する方法が好ましい。
【0024】
図1(a)には、基板1の表面S1に感光性樹脂層2を形成する工程が示されている。
【0025】
基板1は、ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材、及び、前記複合材の表面に接着補助層を形成してなる接着補助層付き複合材、から選択される基板である。
なお、基板1が、接着補助層付き複合材である場合、感光性樹脂層2は、接着補助層の表面上に形成される。
【0026】
基板1として用いられる複合材としては、プリント配線板に使用される公知の材料を用いることができ、例えば、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を含浸してなるプリプレグを硬化してなるものであることが好ましい。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シアネート化合物、ビスマレイミド化合物、ビスマレイミド化合物とモノアミン化合物及びジアミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種との反応物、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の他にも、熱可塑性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材、難燃剤、増粘剤、紫外線吸収剤、密着性付与剤、着色剤等を含有していてもよい。
ガラスクロスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いたガラスクロス又は短繊維を有機バインダーで接着したガラスクロス;ガラス繊維とセルロース繊維とを混沙したもの等が挙げられる。
【0028】
接着補助層は、絶縁材料パターン及び回路パターンとの接着強度を向上させることを目的として、複合材の表面に設けられる層であって、プライマー層とも称される。
接着補助層は、接着強度の向上という目的を達成できるものであれば特に限定されないが、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物から形成されるものが好ましい。
接着補助層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.5~20μm、より好ましくは0.7~15μm、さらに好ましくは1~10μmである。
【0029】
基板1の厚さは、特に限定されないが、プリント配線板の薄型化及び機械強度の観点から、好ましくは1~500μm、より好ましくは2~300μm、さらに好ましくは3~100μm、特に好ましくは5~50μmである。
【0030】
基板1としては、例えば、昭和電工マテリアルズ株式会社製の商品「GEA-700G(R)」、「GEA-795G」、「GEA-770G(R)」、「GEA-770G(F)」、「GEA-705G」、「GEA-705G(F)」、「GH-200」、「GH-100」、「GWA-900」、「GWA-910」等が商業的に入手可能である。
また、接着補助層付き基板1としては、例えば、昭和電工マテリアルズ株式会社製の商品「PF-EL」、「PF-EL(SP)」、等が商業的に入手可能である。
【0031】
感光性樹脂層2は、感光性樹脂組成物によって形成することが好ましい。
感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層2を形成する方法は、例えば、ワニス状の感光性樹脂組成物を基板1の表面S1に塗布する方法であってもよく、フィルム状の感光性樹脂組成物(以下、「感光性樹脂フィルム」ともいう)を基板1の表面S1に貼付する方法であってもよい。
【0032】
感光性樹脂フィルムは、例えば、支持体の表面に感光性樹脂組成物から形成されてなるフィルムであり、絶縁層形成用の感光性樹脂フィルムとして公知のものを使用することができる。このような感光性樹脂フィルムとしては、例えば、昭和電工マテリアルズ株式会社製の商品の感光性ビルドアップフィルムPV-Fシリーズとして「PV-F008」等が商業的に入手可能である。
【0033】
感光性樹脂層2は、感光性樹脂フィルムを、基板1の表面S1側になるように配置してから、例えば、ロールラミネーター等のラミネーターを用いて熱ラミネートすることによって形成することができる。
【0034】
感光性樹脂層2の厚さは、形成する回路パターンの厚さ及び形状に応じて適宜決定すればよいが、好ましくは5~100μm、より好ましくは7~50μm、さらに好ましくは10~30μmである。
【0035】
図1(b)には、感光性樹脂層2の一部を露光及び現像することによって、絶縁材料パターン3と、該絶縁材料パターン3同士の間隙に相当する空間であって前記表面S1が露出する絶縁材料パターン非形成部4を設ける工程が図示されている。
【0036】
感光性樹脂層2の露光条件は特に限定されず、感光性樹脂層2の形成に用いた感光性樹脂組成物の種類等に応じて適宜決定すればよい。
感光性樹脂層を露光した後、未露光部を希アルカリ水溶液で溶解除去して現像し、さらに必要に応じて、酸素プラズマ灰化処理によって残渣を除去、加熱処理等を施し、デスミア処理を実施して、絶縁材料パターン3と、絶縁材料パターン非形成部4とが形成される。
【0037】
<工程2:第一の触媒の付着>
工程2は、前記絶縁材料パターンの表面と、前記絶縁材料パターン非形成部において露出している表面(S1)の部分と、から構成される表面(S2)上に第一の触媒を付着させて、第一の触媒付着処理表面(S3)を形成する工程である。
【0038】
図2(a)及び(b)には、絶縁材料パターン3の表面Sαと、前記絶縁材料パターン非形成部4において露出している表面S1の部分Sβと、から構成される表面S2上に第一の触媒を付着させて、第一の触媒付着処理表面S3を形成する工程が図示されている。
なお、図2(b)では、便宜上、第一の触媒付着処理表面S3を層のように示しているが、第一の触媒は、層状に形成されていなくてもよく、通常は、表面S2上に点在している。第一の触媒が点在している場合、第一の触媒付着処理表面S3は、第一の触媒が付着している部分のみを指すのではなく、第一の触媒を付着させる処理を施した表面全体を意味し、第一の触媒が付着していない部分も含む。
【0039】
第一の触媒は、後述する無電解ニッケルめっきを促進するための触媒である。
第一の触媒としては、パラジウム触媒が好ましく用いられるが、後述する無電解ニッケルめっきを促進するための触媒であれば特に限定されるものではない。以下の説明においては、主に、第一の触媒としてパラジウム触媒を使用する態様について説明する。
【0040】
第一の触媒は、例えば、無電解めっき用触媒(第一の触媒)によって表面S2を処理する工程によって、表面S2上に付着させることができる。具体的には、表面S2に対して、クリーナー処理工程、ソフトエッチング処理工程、中和処理工程、無電解めっき用触媒(第一の触媒)による処理工程、還元処理工程等の工程をこの順に施して付着させることが好ましい。
【0041】
上記クリーナー処理工程は、例えば、アルカリ性のクリーナー処理液を用いて、好ましくは40~70℃で、好ましくは1~10分間処理を施した後、湯洗、水洗して実施することができる。
【0042】
ソフトエッチング処理工程は、例えば、硫酸-過酸化水素水混合溶液及び過硫酸ナトリウム溶液等を含む処理液を用いて、好ましくは15~30℃で、好ましくは0.5~2分間処理を施した後、水洗して実施することができる。
【0043】
上記中和処理工程は、例えば、硫酸水溶液等を用いて、好ましくは20~30℃で、好ましくは0.5~1分間処理を施し、水洗して実施することができる。
【0044】
上記無電解めっき用触媒(第一の触媒)による処理工程には、例えば、パラジウム塩を含むめっき触媒液等を用いることができる。なお、無電解めっき用触媒付与の前処理として、プリディップ処理液を用いて、好ましくは20~40℃で、好ましくは0.5~2分間処理を施し、更に、アルカリ性パラジウム付与液を用いて、好ましくは30~50℃で、好ましくは3~7分間処理を施し、水洗する操作を行ってもよい。
【0045】
上記還元処理工程は、例えば、パラジウム還元処理液を用いて、好ましくは20~40℃で、好ましくは3~7分間処理を施し、水洗して実施することができる。
【0046】
工程2における第一の触媒の付着量は、工程3における第二の触媒の付着を適度に進行させるという観点から、好ましくは0.5~50mg/m、より好ましくは1~30mg/m、さらに好ましくは5~20mg/mである。
【0047】
<工程3:第二の触媒の付着>
工程3は、前記第一の触媒付着処理表面(S3)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液を接触させて、少なくともニッケルを含有する第二の触媒を付着させた第二の触媒付着処理表面(S4)を形成する工程である。
【0048】
図3には、第一の触媒付着処理表面S3に、第二の触媒を付着させて、第二の触媒付着処理表面S4を形成する工程が図示されている。
なお、図3では、便宜上、第二の触媒付着処理表面S4を層のように示しているが、第二の触媒は、層状に形成されていなくてもよく、通常は、第一の触媒付着処理表面S3上に点在している。第二の触媒が点在している場合、第二の触媒付着処理表面S4は第二の触媒が付着している部分のみを指すのではなく、第二の触媒を付着させる処理を施した表面全体を意味し、第二の触媒が付着していない部分も含む。
【0049】
第二の触媒は、主にニッケルを含むものであるが、還元剤由来のリンを含んでいてもよい。その場合、本工程は無電解ニッケルリンめっきを実施しているとも言える。但し、本明細書中、第二の触媒を付着させる工程を便宜上「無電解ニッケルめっき」と称する場合がある。
【0050】
第二の触媒中のリン含有量は、エッチングを容易にする観点から少ないほど好ましく、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。一方、製造容易性の観点から、第二の触媒中のリン含有量は1質量%以上であってもよい。
【0051】
無電解ニッケルめっき液は、硫酸ニッケル等のニッケル供給源、還元剤である次亜リン酸塩の他、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;有機酸塩等の錯化剤;有機酸、無機酸等のpH緩衝剤;硫化物等の促進剤;安定剤;界面活性剤などを含有していてもよい。
無電解ニッケルめっき液中のニッケル濃度は、例えば、0.01~1.0g/Lである。
還元剤である次亜リン酸塩としては、次亜リン酸ナトリウムが好ましい。無電解ニッケルめっき液中の次亜リン酸塩濃度は、例えば、0.1~0.5mol/Lである。
錯化剤である有機酸塩としては、クエン酸塩が好ましい。無電解ニッケルめっき液中の錯化剤の濃度は、例えば、0.01~0.1mol/Lである。
pH緩衝剤である有機酸としては、ほう酸が好ましい。無電解ニッケルめっき液中のpH緩衝剤の濃度は、例えば、0.1~1.0mol/Lである。
次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液としては、市販のめっき液を使用することもできる。
【0052】
第一の触媒付着処理表面S3を無電解ニッケルめっき液と接触させる温度としては、好ましくは20~50℃、より好ましくは25~45℃、さらに好ましくは30~40℃である。上記接触させる温度が上記範囲であると、付着する第二の触媒はリンの含有量が低いものとなり、エッチングによって除去し易いものとなる。
第一の触媒付着処理表面S3を無電解ニッケルめっき液と接触させる時間は、例えば、5~20分間であってもよく、10~15分間であってもよい。
【0053】
無電解ニッケルめっき液のpHは、好ましくは7~10、より好ましくは7.5~9.5、さらに好ましくは8~9である。無電解ニッケルめっき液のpHが上記範囲であると、付着する第二の触媒はリンの含有量が低いものとなり、エッチングによって除去し易いものとなる。
【0054】
工程3における第二の触媒の付着量は、工程4におけるシード層の厚さを適度に調整するという観点から、好ましくは10~300mg/m、より好ましくは20~200mg/m、さらに好ましくは50~150mg/mである。
【0055】
<工程4:シード層の形成>
工程4は、前記第二の触媒付着処理表面(S4)に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液を接触させて、前記第二の触媒付着処理表面(S4)上に、シード層を形成する工程である。
【0056】
図4には、第二の触媒付着処理表面S4上に、シード層5を形成する工程が示されている。
【0057】
第二の触媒付着処理表面S4に接触させる無電解銅めっき液は、硫酸銅等の銅供給源、還元剤である次亜リン酸塩の他、水酸化ナトリウム等のpH調整剤;有機酸塩等の錯化剤;有機酸、無機酸等のpH緩衝剤;金属塩、硫化物等の促進剤;安定剤;界面活性剤などを含有していてもよい。
無電解銅めっき液中の銅濃度は、例えば、0.5~0.7g/Lである。
還元剤である次亜リン酸塩としては、次亜リン酸ナトリウムが好ましい。
無電解銅めっき液中の次亜リン酸塩濃度は、例えば、0.1~0.5mol/Lである。
錯化剤である有機酸塩としては、クエン酸塩が好ましい。無電解銅めっき液中の錯化剤の濃度は、例えば、0.01~0.1mol/Lである。
pH緩衝剤である有機酸としては、ほう酸が好ましい。無電解銅めっき液中のpH緩衝剤の濃度は、例えば、0.1~1.0mol/Lである。
促進剤である金属塩としては、例えば、硫酸ニッケルが挙げられる。
次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液としては、市販のめっき液を使用することもできる。
【0058】
第二の触媒付着処理表面S4を無電解銅めっき液と接触させる温度は、例えば、30~80℃であってもよく、60~70℃であってもよい。
第二の触媒付着処理表面S4を無電解銅めっき液と接触させる時間は、例えば、5~20分間であってもよく、10~15分間であってもよい。
無電解銅めっき液のpHは、好ましくは7~10、より好ましくは7.5~9.5、さらに好ましくは8~9である。
【0059】
シード層5の厚さは、微細配線性及び絶縁信頼性に優れる回路パターンを形成するという観点から、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.35μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下である。また、シード層5の厚さは、シード層としての機能を十分に発揮させるという観点から、0.1μm以上であってもよく、0.12μm以上であってもよい。
なお、本明細書中、シード層の厚さとは、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)によってシード層の断面を形成し、該断面を走査イオン顕微鏡(SIM)でイオン照射角度45度にて観察して測定されたシード層の厚さの平均値(n=10)である。
【0060】
シード層5を形成した後、余分なめっき液を除去するため、必要に応じて、水又は有機溶剤による洗浄、加熱乾燥等を実施してもよい。
【0061】
<工程5:銅層の形成>
工程5は、前記シード層の表面に電解銅めっきを行い、前記シード層上に銅層を形成する工程である。
【0062】
図5には、シード層5上に、電解銅めっきによって銅層6を形成する工程が示されている。
【0063】
電解銅めっき処理に用いる電解銅めっき液としては、硫酸銅を含む電解銅めっき液等、市販の電解銅めっき液を用いることができる。
【0064】
<工程6:シード層及び触媒の除去>
工程6は、前記絶縁材料パターンの上面に付着している前記銅層、前記シード層、前記第一の触媒及び前記第二の触媒を除去することによって、前記絶縁材料パターン非形成部に形成された回路パターンを得る工程である。
【0065】
図6には、絶縁材料パターン3の上面に形成されたシード層5及び銅層6、及び絶縁材料パターン3の上面に付着した第一の触媒及び第二の触媒を除去して、回路パターン7を得る工程が図示されている。
【0066】
銅層6、シード層5、第一の触媒及び第二の触媒は化学エッチングによって除去することが好ましい。
銅層6及びシード層5を除去するための除去液としては、例えば、硫酸-過酸化水素水エッチング液、硝酸-過酸化水素水エッチング液、塩化第二鉄-塩酸エッチング液等の酸性のエッチング液を用いることができる。
第一の触媒及び第二の触媒を除去するための除去液としては、例えば、硝酸-過酸化水素水エッチング液、塩化第二鉄-塩酸エッチング液等の酸性のエッチング液を用いることができる。その他では、第一の触媒及び第二の触媒を除去することができれば、市販のエッチング液を用いることができる。
シード層5、第一の触媒及び第二の触媒は、硝酸-過酸化水素水エッチング液、塩化第二鉄-塩酸エッチング液等の酸性のエッチング液を用いて、同時に除去することも可能である。
なお、銅層6、シード層5、第一の触媒及び第二の触媒を除去する方法は、上記の方法に限られず、例えば、機械研磨、CMP(Chemical Mechanical Planarization)によって除去してもよい。
上記の工程を経て、絶縁材料パターン非形成部4であった部分に回路パターン7が形成される。
【0067】
<工程7:多層化工程>
本実施形態の製造方法は、さらに、下記工程7を含むことが好ましい。
工程7:前記絶縁材料パターン及び回路パターンに絶縁樹脂材料を積層する工程
【0068】
図7には、工程1~6で形成した回路パターン7及び絶縁材料パターン3上に、絶縁樹脂材料8を積層する工程が図示されている。
【0069】
絶縁樹脂材料8は、工程1の感光性樹脂層2の形成の用いた感光性樹脂組成物であってもよく、異なるものであってもよい。
絶縁樹脂材料8を積層する前に、回路パターン7及び絶縁材料パターン3に対して、上記したCZ処理等の表面粗化処理を施してもよい。
【0070】
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、上記各工程を繰り返すことで多層化してもよい。これによって、多層プリント配線板を製造することができる。
【0071】
[半導体パッケージの製造方法]
本実施形態の半導体パッケージの製造方法は、本実施形態のプリント配線板の製造方法によってプリント配線板を製造し、該プリント配線板に半導体素子を搭載する、半導体パッケージの製造方法である。
本実施形態の半導体パッケージの製造方法は、例えば、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止する方法である。
【実施例0072】
次に、下記の実施例により本実施形態をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本実施形態を制限するものではない。以下、図1~6を参照しながら各工程について説明する。
【0073】
実施例1
(工程1:絶縁材料パターンの形成)
基板1として、ガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材である基板(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「GEA-770G(R)」、厚さ30μm)を準備した。
図1(a)に示す通り、上記基板1の表面S1上に、絶縁層形成用の感光性樹脂フィルム(昭和電工マテリアルズ株式会社製、商品名「PV-F008」、厚さ25μm)を感光性樹脂フィルムが複合材と接する面となるように配置した。次いで、常圧ラミネートによって、ロール圧力0.4MPa、処理温度120℃、搬送速度1.0m/sの条件でラミネートし、基板1の表面S1上に感光性樹脂層2を形成した。
【0074】
次に、形成した感光性樹脂層2を、直描露光機「DE-1UH」(ビアメカニクス株式会社製、品番)を用いて55mJ/cmの条件で、L/S=15μm/15μmのパターンで露光した。続いて、濃度1%の炭酸ナトリウムの現像液を用いて、スプレー圧0.17MPa、30℃で50秒間処理を行い、さらに酸素プラズマ灰化処理によって残渣を除去することで現像した。
次いで、現像後の感光性樹脂層を、170℃で60分間加熱した。次いで、デスミア処理として、「スウェリングディップ セキュリガントP」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)に70℃で5分間浸漬後、1分間湯洗し、さらに3分間水洗した。次に、「コンセントレート コンパクトCP」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)に70℃で5分間浸漬後、2分間湯洗し、さらに3分間水洗した。続いて、中和処理工程として、「リダクションソリューション セキュリガント P500」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)に40℃で5分間浸漬後、3分間水洗することで、図1(b)に示されるように、基板1の表面S1上に絶縁材料パターン3と絶縁材料パターン非形成部4とを形成した。
【0075】
(工程2:第一の触媒の付着)
次いで、図2(a)及び(b)に示されるように、絶縁材料パターン3の表面Sαと、絶縁材料パターン非形成部4において露出している表面S1の部分Sβと、から構成される表面S2上に第一の触媒を付着させて、第一の触媒付着処理表面S3を形成した。なお、工程2は以下の手順で行った。
まず、絶縁材料パターン3を形成した基板1を、クリーナー処理工程として、「クリーナーセキュリガント902」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)に60℃で5分間浸漬後、1分間湯洗し、さらに3分間水洗した。
次に、中和処理工程として、5%硫酸溶液に30℃で0.5分間浸漬後、1分間水洗した。続いて、無電解めっき用触媒による処理工程として、「プリディップネオガントB」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)20ml/L、98%硫酸1ml/Lの混合液に30℃で1分間浸漬し、更に、「アクチベーターネオガント834」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)40ml/L、ほう酸水溶液5g/L、水酸化ナトリウム水溶液4g/Lの混合液に40℃で5分間浸漬後、1分間水洗した。その後、還元処理工程で、「リデュサーネオガントWA」(アトテックジャパン株式会社製、商品名)5ml/L、ほう酸5g/Lの混合液に30℃で5分間浸漬後、0.5分間水洗した。
なお、工程2における第一の触媒の付着量は、10mg/mであった。
【0076】
(工程3:第二の触媒の付着)
次に、図3に示されるように、第一の触媒付着処理表面S3に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液を接触させて、少なくともニッケルを含有する第二の触媒を付着させた第二の触媒付着処理表面S4を形成した。なお、工程3は以下の手順で行った。
まず、還元剤を次亜リン酸ナトリウムとする無電解ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル・6水和物0.2g/L、次亜リン酸ナトリウム・1水和物30.0g/L、クエン酸三ナトリウム25g/L、ほう酸30g/Lの水溶液を準備した。なお、無電解ニッケルめっき液のpHは水酸化ナトリウムで9に調整した。
上記無電解ニッケルめっき液に、工程2で第一の触媒を付着させた基板1を、35℃で10分間浸漬して、第一の触媒を付着させた基板1に第二の触媒を付着させた。
なお、工程3における第二の触媒の付着量は、100mg/mであった。
【0077】
(工程4:シード層の形成)
次に、図4に示されるように、第二の触媒付着処理表面S4に対して、次亜リン酸塩を還元剤とする無電解銅めっき液を接触させて、第二の触媒付着処理表面S4上に、シード層5を形成した。なお、工程4は以下の手順で行った。
まず、還元剤を次亜リン酸ナトリウムとする無電解銅めっき液として、硫酸銅・5水和物2.4g/L、次亜リン酸ナトリウム・1水和物30.0g/L、クエン酸三ナトリウム25g/L、ほう酸30g/Lの水溶液を準備した。なお、無電解銅めっき液のpHは、水酸化ナトリウムで9に調整した。
上記で調製した無電解銅めっき液に、工程3で第二の触媒を付着させた基板1を65℃で浸漬させ、無電解銅めっきを行った後、水洗及び乾燥を行って、第二の触媒付着処理表面S4上にシード層5(厚さ0.30μm)を形成した。
【0078】
(工程5:銅層の形成)
次に、図5に示されるように、シード層5上に、電解銅めっきによって銅層6を形成した。なお、工程5は以下の手順で行った。
工程4でシード層5を形成した基板1を、5%硫酸溶液に30℃で10秒間浸漬させた。次いで、電解銅めっき液(硫酸銅五水和物200g/L、98%硫酸50g/L、塩化物イオン40mg/L、「Cu-Brite VF-IIA」(株式会社JCU製、商品名)20ml/L、「Cu-Brite VF-IIB」(株式会社JCU製、商品名)1ml/L)を用いて、23℃、1.0A/dmで、電解銅めっき処理を行い、銅層6(厚さ10μm)を形成した。
【0079】
(工程6:シード層及び触媒の除去)
次に、図6に示されるように、絶縁材料パターン3の上面に形成されたシード層5及び銅層6、及び絶縁材料パターン3の上面に付着した第一の触媒及び第二の触媒を除去して、回路パターン7を形成した。なお、工程6は以下の手順で行った。
工程5で銅層6を形成した基板1に対して、硫酸-過酸化水素水エッチング液(98%硫酸100ml/L、DL-りんご酸100g/L、過酸化水素水30ml/L、1,2,3-ベンゾトリアゾール1g/L)を用いて、30℃、スプレー圧力0.14MPaの条件でエッチングを行い、銅層6及びシード層5を除去した。
次に、硝酸-過酸化水素水エッチング液(硝酸100ml/L、DL-りんご酸100g/L、過酸化水素水10ml/L、1,2,3-ベンゾトリアゾール1g/L)を用いて、30℃、スプレー圧力0.14MPaの条件で、第一の触媒及び第二の触媒を除去した。このようにして絶縁材料パターン非形成部4に回路パターン7を形成した。
【0080】
比較例1
実施例1において、工程3を実施しなかった以外は、実施例1と同様の手順で回路パターンを形成した。
【0081】
[銅層の引き剥がし強さの評価]
実施例1において、基板1上に絶縁材料パターンを形成することなく、工程2~5を実施し、基板1上に銅層(厚さ20μm)を形成したものを試験片1とした。
また、比較例1において、基板1上に絶縁材料パターンを形成することなく、工程2、工程4及び工程5を実施し、基板1上に銅層(厚さ20μm)を形成したものを試験片2とした。
上記試験片1及び2における銅層をエッチングによって5mm幅の直線ライン状に加工し、該直線ライン状の銅箔をオートグラフAC-100C(株式会社島津製作所製、品番)に取り付けた。次いで、引き剥がし速度50mm/minの条件で直線ライン状の銅層を90°方向に引き剥がすことによって銅層引き剥がし強さを測定した。
その結果、試験片1の銅層引き剥がし強さは0.55kN/m、試験片2の銅層引き剥がし強さは0.10kN/mであった。このことから、本実施形態のプリント配線板の製造方法は、第二の触媒の付着工程を行うことで、基板がガラスクロス及び熱硬化性樹脂の硬化物を含有する複合材である場合においても、銅層との高い密着性が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0082】
1 基板
2 感光性樹脂層
3 絶縁材料パターン
4 絶縁材料パターン非形成部
5 シード層
6 銅層
7 回路パターン
8 絶縁樹脂材料
S1 基板1の表面
Sα 絶縁材料パターン3の表面
Sβ 絶縁材料パターン非形成部4において露出している表面S1の部分
S2 Sα及びSβから構成される表面
S3 第一の触媒付着処理表面
S4 第二の触媒付着処理表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7