(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028553
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A61M25/00 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134328
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木佐 俊哉
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB02
4C267BB37
4C267BB40
4C267BB52
4C267CC19
4C267EE03
4C267HH03
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】カテーテル遠位部を湾曲させる際に、牽引部材であるワイヤー及び湾曲部材である板バネに対する筒状部の干渉を防止しつつ、カテーテル遠位部の湾曲のねじれやキンクを防止することにより、所期の湾曲形状を容易に実現できるカテーテルを提供する。
【解決手段】シャフト2と、シャフト2の内腔に配置されているコイル50と、コイル50の外側に配置されている筒状部60と、1つ以上のワイヤー30と、近位端部がコイル50の遠位端部に接続している第1接続部41と遠位端部がシャフト2の遠位端部に直接又は間接的に固定されている第2接続部42とを有している板バネ40と、を有しており、筒状部60の遠位端はコイル50の遠位端と同じかコイル50の遠位端よりも近位側に位置しており、コイル50の遠位端から筒状部60の遠位端までの長さはコイル50の30巻き分以下であるカテーテル1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端とを有しかつ前記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、
前記長手軸方向に延在している内腔を有しており前記シャフトの内腔に配置されているコイルと、
前記シャフトの内腔において前記コイルの外側に配置されている筒状部と、
前記シャフトの内腔において前記コイルの内腔又は前記コイルと前記筒状部の外側に延在しているワイヤーであって、前記コイルの遠位端よりも遠位側で前記ワイヤーの遠位側が直接又は間接的に前記シャフトの遠位端部に接続されている1つ以上のワイヤーと、
前記シャフトの内腔に延在している板バネであって、前記板バネの近位端部が前記コイルの遠位端部に直接又は間接的に接続されている第1接続部と、前記板バネの遠位端部が前記シャフトの遠位端部に直接又は間接的に固定されている第2接続部とを有している板バネと、を有しており、
前記長手軸方向において、前記筒状部の遠位端は前記コイルの遠位端と同じか前記コイルの遠位端よりも近位側に位置しており、前記コイルの遠位端から前記筒状部の遠位端までの長さは前記コイルの30巻き分以下であるカテーテル。
【請求項2】
前記筒状部の内壁の少なくとも一部が前記コイルの外側面に当接している請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記長手軸方向において、前記筒状部の遠位端は前記コイルの遠位端よりも近位側に位置している請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記長手軸方向において、前記第1接続部は前記筒状部の内側に配されていない請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記長手軸方向において、前記筒状部の近位端は前記コイルの近位端よりも遠位側に位置しており、前記コイルは前記筒状部の近位端よりも近位側で前記シャフトと固定されている第1固定部を有している請求項1~4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記長手軸方向において、前記第1固定部の遠位端から前記筒状部の近位端までの長さは前記コイルの20巻き分以下である請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記筒状部は前記シャフトと固定されている第2固定部を有している請求項1~6のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記長手軸方向において、前記第2固定部の遠位端から前記コイルの遠位端までの長さは前記板バネの長さの2倍以下である請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記長手軸方向において、前記第2固定部の遠位端は前記第1接続部の近位端よりも近位側に位置しており、前記第2固定部の遠位端から前記第1接続部の近位端までの長さは前記板バネの長さの1/4以上である請求項7又は8に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠位部が湾曲可能なカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患の検査や治療に際し、動脈を通して心臓内部まで挿入されるカテーテルが用いられる。このとき、カテーテルの先端を心臓内の所望の部位に送達するためにカテーテル遠位部を心臓内の血管に沿うよう湾曲させる必要があり、カテーテルの近位端側に配置されたハンドル操作によってカテーテル遠位部が湾曲可能なカテーテルが考案されている。湾曲可能なカテーテルは、一般的にカテーテルの先端内部に固定されたワイヤーをハンドル操作により引くことでカテーテル遠位部を湾曲させることができる。
【0003】
このようなカテーテルとして、カテーテルの遠位端に、カテーテル遠位部を湾曲させる部材である板バネの遠位端とワイヤーの遠位端とが固定され、板バネの近位端がカテーテルの内腔に配置されたチューブに接続されているカテーテルが提案されている。
【0004】
ところで、心臓の大きさや目的に合わせて所望の部位へカテーテルの先端を送達するためには、カテーテル遠位部がワイヤー操作により所期の方向へ自在に湾曲し、曲がりくねった血管内に追随して進行できる能力(トラッカビリティ)が求められる。また、カテーテル遠位部が所望しない方向へ進行して生体の内腔壁を傷つけることを防止したり、近位側からの操作による力がカテーテル遠位部まで伝達される能力(プッシャビリティ)を向上したりするために、カテーテル遠位部が湾曲する際にカテーテル遠位部のねじれや折れ曲り(キンク)等の不具合を抑える必要がある。このため、カテーテル遠位部に配置され、カテーテル遠位部を湾曲させる部材である板バネの近位側の固定について種々の形態が提案されている。
【0005】
特許文献1及び2に開示されているカテーテルでは、ワイヤーがワイヤー用チューブ内に配置されており、板バネはその近位端がコイルチューブに固定されてカテーテルチューブ内に配置されている。このうち特許文献2に開示されているカテーテルでは、ワイヤー用チューブが接着層を介して板バネの表面に固定されている。特許文献3には、板バネがコイル止めを介してコイルチューブに固定されているカテーテルが開示されている。特許文献4に開示されているカテーテルでは、ワイヤーと板バネは遠位側チューブ内に配置され、板バネの近位端が近位側チューブに固定されている。さらに、近位側チューブの外側に保護チューブが配置されており、遠位側チューブの近位端は保護チューブの遠位端よりも遠位側にあることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-61350号公報
【特許文献2】特開2012-200445号公報
【特許文献3】特開2014-64614号公報
【特許文献4】国際公開第2019/156059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のカテーテルでは、湾曲の基端となる部分の剛性を確保するために板バネの近位端部に接続されるコイルを設けると、ワイヤーの牽引によってコイルが圧縮されて半径方向へ膨らむように変形してコイルに接続された板バネが回転してしまい、カテーテル遠位部がねじれて湾曲する問題があった。これを防止するためにはコイルと板バネの接続部をカテーテルチューブに固定することが考えられるが、固定した部分は剛性が高くなるため、カテーテルチューブの長手軸方向において固さが急激に変わる剛性段差が生じることとなる。このため、カテーテル遠位部を湾曲させた際に剛性段差の生じた箇所でカテーテル遠位部が折れるキンクが生じることがあり、改善の余地があった。さらに、牽引部材であるワイヤーや湾曲部材である板バネが他部材から干渉され、カテーテル遠位部の湾曲形状に悪影響を与える点において改善の余地があった。
【0008】
カテーテル遠位部を湾曲させる際の牽引部材や湾曲部材への他部材の干渉、さらにはカテーテル遠位部のねじれやキンクはプッシャビリティの低下に繋がり、所期の湾曲形状が得られずトラッカビリティの低下したカテーテルとなる虞がある。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、カテーテル遠位部を湾曲させる際に、牽引部材であるワイヤー及び湾曲部材である板バネに対する筒状部の干渉を防止しつつ、カテーテル遠位部の湾曲のねじれやキンクを防止することにより、所期の湾曲形状を容易に実現できるカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決できたカテーテルは、長手軸方向に遠位端と近位端とを有しかつ長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、長手軸方向に延在している内腔を有しておりシャフトの内腔に配置されているコイルと、シャフトの内腔においてコイルの外側に配置されている筒状部と、シャフトの内腔においてコイルの内腔又はコイルと筒状部の外側に延在しているワイヤーであって、コイルの遠位端よりも遠位側でワイヤーの遠位側が直接又は間接的にシャフトの遠位端部に接続されている1つ以上のワイヤーと、シャフトの内腔に延在している板バネであって、板バネの近位端部がコイルの遠位端部に直接又は間接的に接続されている第1接続部と、板バネの遠位端部がシャフトの遠位端部に直接又は間接的に固定されている第2接続部を有している板バネと、を有しており、長手軸方向において、筒状部の遠位端はコイルの遠位端と同じかコイルの遠位端よりも近位側に位置しており、コイルの遠位端から筒状部の遠位端までの長さはコイルの30巻き分以下である。このような構成により、カテーテル遠位部を湾曲させる際に、カテーテル遠位部を湾曲させるために牽引するワイヤー及びカテーテル遠位部の湾曲形状を決める板バネに対する筒状部の干渉を防止できる。これにより、手元側からの力がカテーテル遠位部に配されているワイヤーに伝達されやすく、ワイヤーの牽引に伴う板バネの湾曲が筒状部の影響を受けにくくキンクしにくいカテーテルとすることができる。また、ワイヤーの牽引に伴ってコイルが圧縮されても半径方向に膨らむように変形することを防止でき、コイルに接続された板バネが回転することによるカテーテル遠位部の湾曲のねじれを抑制できる。コイルの膨らみやすさはコイルの巻き数に依存するため、コイルの遠位端から筒状部の遠位端までの長手軸方向の長さがコイルの所定の巻き分以下であることで上記効果を奏することができる。その結果、カテーテル遠位部の所期の湾曲形状を実現することが容易となる。
【0010】
筒状部の内壁の少なくとも一部がコイルの外側面に当接していることが好ましい。
【0011】
長手軸方向において、筒状部の遠位端はコイルの遠位端よりも近位側に位置していることが好ましい。
【0012】
長手軸方向において、第1接続部は筒状部の内側に配されていないことが好ましい。
【0013】
長手軸方向において、筒状部の近位端はコイルの近位端よりも遠位側に位置しており、コイルは筒状部の近位端よりも近位側でシャフトと固定されている第1固定部を有していることが好ましい。この場合、長手軸方向において、第1固定部の遠位端から筒状部の近位端までの長さはコイルの20巻き分以下であることが好ましい。
【0014】
筒状部はシャフトと固定されている第2固定部を有していることが好ましい。この場合、長手軸方向において、第2固定部の遠位端からコイルの遠位端までの長さは板バネの長さの2倍以下であることが好ましい。さらにこの場合、長手軸方向において、第2固定部の遠位端は第1接続部の近位端よりも近位側に位置しており、第2固定部の遠位端から第1接続部の近位端までの長さは板バネの長さの1/4以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明よれば、カテーテル遠位部が湾曲可能なカテーテルにおいて、カテーテル遠位部を湾曲させる際に、ワイヤー及び板バネに対する筒状部の干渉を防止できる。これにより、手元側からの力がカテーテル遠位部に配されているワイヤーに伝達されやすく、ワイヤーの牽引に伴う板バネの湾曲が筒状部の影響を受けにくくキンクしにくいカテーテルとすることができる。また、カテーテル遠位部の湾曲のねじれを防止できる。その結果、ワイヤー操作によりカテーテル遠位部の所期の湾曲形状を実現し、カテーテル遠位部を所望の位置へ容易に送達できるカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカテーテルの平面図を表す。
【
図2】
図1に示すカテーテルの遠位部の長手軸方向の断面図を表す(一部平面図)。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ったカテーテルの断面図を表す。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿ったカテーテルの断面図を表す。
【
図5】
図2のV-V線に沿ったカテーテルの断面図を表す。
【
図6】
図2のVI-VI線に沿ったカテーテルの断面図を表す。
【
図7】本発明の一実施形態に係るコイルの平面図を表す。
【
図8】
図7に示すコイルの最大圧縮時の平面図を表す。
【
図9】本発明の他の実施形態に係るカテーテルの遠位部の長手軸方向の断面図を表す(一部平面図)。
【
図10】
図9のX-X線に沿ったカテーテルの断面図を表す。
【
図12】本発明のさらに他の実施形態に係るカテーテルの遠位部の長手軸方向の断面図を表す(一部平面図)。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿ったカテーテルの断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態に基づき本発明を説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0018】
本発明の実施形態に係るカテーテルは、長手軸方向に遠位端と近位端とを有しかつ長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、長手軸方向に延在している内腔を有しておりシャフトの内腔に配置されているコイルと、シャフトの内腔においてコイルの外側に配置されている筒状部と、シャフトの内腔においてコイルの内腔又はコイルと筒状部の外側に延在しているワイヤーであって、コイルの遠位端よりも遠位側でワイヤーの遠位側が直接又は間接的にシャフトの遠位端部に接続されている1つ以上のワイヤーと、シャフトの内腔に延在している板バネであって、板バネの近位端部がコイルの遠位端部に直接又は間接的に接続されている第1接続部と、板バネの遠位端部がシャフトの遠位端部に直接又は間接的に固定されている第2接続部を有している板バネと、を有しており、長手軸方向において、筒状部の遠位端はコイルの遠位端と同じかコイルの遠位端よりも近位側に位置しており、コイルの遠位端から筒状部の遠位端までの長さはコイルの30巻き分以下である。
【0019】
上記構成を有することにより、本発明の実施形態に係るカテーテルは、コイルによりカテーテル遠位側の基端側の剛性を確保しつつシャフト遠位端部に接続された板バネをワイヤーの牽引により湾曲させることで、コイルの遠位端部から遠位側のカテーテル遠位部を湾曲させることができる。作用の観点から、ワイヤーは牽引部材、板バネは湾曲部材ということができる。筒状部の遠位端がコイルの遠位端と同じかコイルの遠位端よりも近位側に位置していることにより、牽引部材であるワイヤー及び湾曲部材である板バネに対する筒状部の干渉を防止できる。これにより、手元側からの力がカテーテル遠位部に配されているワイヤーに伝達されやすく、ワイヤーの牽引に伴う板バネの湾曲が筒状部の影響を受けにくくキンクしにくいカテーテルとすることができる。また、コイルの外側に筒状部が配置されており、コイルの遠位端から筒状部の遠位端までの長手軸方向の長さがコイルの30巻き分以下であることから、湾曲の基端となるコイルの遠位端近傍まで筒状部を配置できることにより、ワイヤーの牽引に伴ってコイルが圧縮されても半径方向に膨らむように変形することを防止でき、コイルに接続された板バネが回転することによるカテーテル遠位部の湾曲のねじれを防止できる。コイルの膨らみやすさはコイルの巻き数に依存するため、コイルの遠位端から筒状部の遠位端までの長手軸方向の長さがコイルの所定の巻き分以下であることで上記効果を奏することができる。その結果、カテーテル遠位部の所期の湾曲形状を実現してカテーテル遠位部を所望の位置へ容易に送達できるカテーテルとすることができ、カテーテルによる検査や治療を容易とし、カテーテル遠位部が生体の内腔壁を傷つけたり所望しない方向へ進行したり等の事故を防止できる。
【0020】
図1~
図8を参照しながら、本発明の実施形態に係るカテーテルを説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るカテーテルの平面図を表し、点線はシャフトの半径方向において板バネの一方面側にカテーテル遠位部が湾曲したときの様子を表している。
図2は
図1に示すカテーテルの遠位部が湾曲していないときの長手軸方向の断面図を表し、コイルのみ平面図である。
図3~
図6はそれぞれ
図2に示すカテーテルの長手軸方向において異なる箇所における断面図を表し、
図3~
図6は、
図2のIII-III線に沿った断面図、
図2のIV-IV線に沿った断面図、
図2のV-V線に沿った断面図、
図2のVI-VI線に沿った断面図をそれぞれ表す。
図7は本発明の一実施形態に係るコイルの平面図を表し、
図8は
図7に示すコイルの最大圧縮時の平面図を表す。
【0021】
本発明において、近位側とはカテーテル1の延在方向において使用者の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象者側の方向を指す。カテーテル1の延在方向はシャフト2の長手軸方向dLと同じであることが好ましい。長手軸方向dLに垂直な断面において、シャフト2の中心とシャフト2の外接円上の点とを結ぶ方向を半径方向dRと称する。本明細書中の図において、図の下側が近位側であり図の上側が遠位側である。
【0022】
図1に示すように、カテーテル1は、長手軸方向d
Lに遠位端と近位端とを有しかつ長手軸方向d
Lに延在している内腔を有するシャフト2を有している。シャフト2は、遠位端側が体内へ挿入され、近位端側を操作することで遠位端部が治療部位まで送達される。このため可撓性があることが好ましく、材料として金属や樹脂を用いることができる。体内に挿入されるため、シャフト2は生体適合性のある材料で構成されていることが好ましい。
【0023】
シャフト2を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;PET等のポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂;ポリエーテルポリアミド系樹脂;ポリウレタン系樹脂;PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂;塩化ビニル系樹脂;シリコーン系樹脂等の合成樹脂や天然ゴム等が挙げられる。シャフト2は、単層構造であっても複層構造であってもよい。シャフト2が複層構造である場合、例えば、シャフト2を構成する樹脂チューブの中間層として、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属編組を用いた構造とすることができる。
【0024】
シャフト2の表面には、電極やセンサなど検査や治療のための部材を配置することができる。また、シャフト2の内腔には、カテーテル遠位部1Dを湾曲させるための内部構造や、電極やセンサと接続する導線などの部材を配置することができる。導線の遠位側をシャフト2の表面に備えられた電極と接続し、導線の近位側をカテーテル1の近位側を通って検出器や電源に接続することにより、電極からの電気信号を受信したり電極に通電したりすることができる。このような構成により、カテーテル1は、心電位を測定する電極カテーテルや、組織を焼灼するアブレーションカテーテルとして用いることができる。シャフト2の長手軸方向dLの長さ、外径、厚み等は使用目的に応じ適切なサイズを選択することができる。
【0025】
シャフト2の遠位端部には、先端部20が配置されていることが好ましい。先端部20はシャフト2とは別の部材であってもよいし、同じ部材の一部として形成されていてもよい。先端部20がシャフト2とは別の部材である場合、先端部20は、シャフト2の内腔に挿入される部分やシャフト2の遠位端より遠位側に突出する部分を備えていてもよい。先端部20がシャフト2の一部として形成されている場合、シャフト2の遠位端部が熱融着等されることによってシャフト2の遠位端の開口が塞がれることにより、先端部20が形成されていてもよい。
【0026】
シャフト2の近位側にハンドル7が配置されることが好ましく、シャフト2の近位端はハンドル7の内部に固定されていることが好ましい。ハンドル7内には、シャフト2の内腔から延びる導線や後述するワイヤー30の近位端部が配置されることが好ましい。ワイヤー30を操作しやすいように、ハンドル7はワイヤー操作部70を備えていてもよい。ワイヤー30の近位端部をワイヤー操作部70に固定することにより、ワイヤー操作部70を操作してワイヤー30を牽引したり解放したりしてカテーテル遠位部1Dを湾曲させたり元に戻したりすることができる。
【0027】
図2に示すように、カテーテル1は、シャフト2の内腔に延在しているワイヤー30と、板バネ40と、長手軸方向d
Lに延在している内腔を有しているコイル50と、を有している。ワイヤー30は牽引部材であり、板バネ40は湾曲部材であり、コイル50は湾曲の基端側に配置されている部材であり、ワイヤー30を牽引することにより板バネ40が湾曲し、コイル50の遠位端部から遠位側のカテーテル遠位部1Dを湾曲させることができる。
【0028】
図2、
図5、及び
図6に示すように、板バネ40は、長手軸方向d
Lに延在し、一方面40a及び他方面40bを有する板状の形状を有することが好ましい。板バネ40が板状の形状を有することでカテーテル遠位部1Dの湾曲方向を規定することができ、カテーテル遠位部1Dを板バネ40の一方面40a側及び/又は他方面40b側へ湾曲させることができる。板バネ40は、板バネ40の近位端部がコイル50の遠位端部に直接又は間接的に接続されている第1接続部41を有している。板バネ40の近位端部は、
図5に示すように接着剤やハンダ、レーザー溶接等によりコイル50の遠位端部に固定されることにより第1接続部41を形成していてもよい。或いは、図示していないが、板バネ40の近位端部がコイル50の遠位端部に突き当たるように当接して、特に固定手段を用いずに第1接続部41を形成していてもよい。板バネ40の近位端部とコイル50の遠位端部とが接続される第1接続部41は、それぞれの端部が直接当接又は固定されておらず、それぞれの端部の近傍が当接又は固定されることにより間接的に形成されていてもよい。
【0029】
第1接続部41における板バネ40とコイル50との位置関係は任意であってよく、例えば、板バネ40の近位端がコイル50の内腔に配置されていてもよいし、コイル50の外側に配置されていてもよい。或いは、板バネ40の近位端がコイル50の遠位端に当接又は固定されていてもよい。このような位置関係の中でも特に、第1接続部41において、板バネ40の近位端部の一部がコイル50の内腔に配置され、コイル50が板バネ40の近位端部を受け入れた状態となっていることが好ましい。これにより、板バネ40とコイル50とを安定して接続することができる。
【0030】
また、板バネ40は、板バネ40の遠位端部がシャフト2の遠位端部に直接又は間接的に固定されている第2接続部42を有している。第2接続部42において、板バネ40の遠位端部はシャフト2の遠位端部に直接固定されていてもよい。或いは、板バネ40とシャフト2のそれぞれの端部が直接固定されておらず、それぞれの端部の近傍が固定されることにより形成されていてもよい。例えば、シャフト2の遠位端に先端部20が設けられており先端部20に板バネ40の遠位端部が固定されるなど、板バネ40の遠位端部がシャフト2の遠位端部に間接的に固定されていてもよい。板バネ40の遠位端部とシャフト2の遠位端部とを固定する方法は特に限定されないが、例えば、接着剤やハンダ、レーザー溶接等の固定方法が挙げられる。
【0031】
板バネ40は板材で構成されたバネであり、板バネ40を構成する材料としては、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属が挙げられる。或いは、板バネ40を構成する材料は、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂や、繊維強化樹脂等の合成樹脂であってもよい。また或いは、板バネ40は、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の合成ゴムや天然ゴムで構成されていてもよい。中でも、板バネ40の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0032】
ワイヤー30は、カテーテル遠位部1Dを湾曲操作するための牽引部材である。ワイヤー30を近位側に牽引することにより板バネ40が一方面40a側又は他方面40b側へ湾曲し、カテーテル遠位部1Dを一方面40a側又は他方面40b側へ湾曲させることができる。ワイヤー30を近位側へ牽引する力の加減により板バネ40の湾曲の程度を調整することができ、ワイヤー30の牽引を解放すると板バネ40の湾曲が元に戻り、カテーテル遠位部1Dを湾曲前の元の状態に戻すことができる。例えば、ワイヤー30を板バネ40の一方面40a側に配置することで板バネ40を一方面40a側へ湾曲させることができ、ワイヤー30を板バネ40の他方面40b側に配置することで板バネ40を他方面40b側へ湾曲させることができる。ワイヤー30は複数配置されていてもよく、例えば、板バネ40の一方面40a側と他方面40b側にそれぞれワイヤー30を配置することで、一方面40a側と他方面40b側の両方に湾曲可能なカテーテル1とすることも可能である。
【0033】
ワイヤー30は、
図2に示すようにコイル50の内腔に延在していてもよいし、図示していないがコイル50と後述する筒状部60の外側に延在していてもよい。ワイヤー30の遠位側は、コイル50の遠位端よりも遠位側で直接又は間接的にシャフト2の遠位端部に接続されている。これにより、ワイヤー30を牽引することでカテーテル遠位部1Dを湾曲させることができる。ワイヤー30の遠位側のうち、ワイヤー30の遠位端部がシャフト2の遠位端部に接続されていることが好ましく、ワイヤー30の遠位端がシャフト2の遠位端部に接続されていてもよい。ワイヤー30の遠位側は、シャフト2の遠位端部に直接固定されることにより接続されていてもよいし、先端部20やシャフト2の遠位端部に配置されているその他の部材、例えば板バネ40等に固定されることで間接的にシャフト2の遠位端部に接続されていてもよい。ワイヤー30の遠位側のどの部分がシャフト2の遠位端部に接続されているか、また、シャフト2の遠位端部のどの部分にワイヤー30が接続されているかは、カテーテル遠位部1Dの所期の湾曲形状により適宜選択することができる。
【0034】
ワイヤー30としては、ステンレス鋼等の金属線材や、フッ素樹脂等の合成樹脂から形成された線材を用いることができ、1つのワイヤー30は1本の線材であってもよく複数の線材からなる構造を有していてもよい。ワイヤー30とシャフト2とは、板バネ40とシャフト2とを固定する方法に記載した固定方法と同様の方法で固定することにより接続されていてもよいし、或いはワイヤー30の遠位端部がシャフト2の遠位端部又はその周辺に突っ張るように当接することにより特に固定手段を用いずに接続されていてもよい。
【0035】
カテーテル1がコイル50を有することにより、カテーテル遠位部1Dの湾曲の基端側の剛性を確保し、長手軸方向d
Lにおいてコイル50の遠位端部から遠位側のカテーテル遠位部1Dを湾曲させることができる。カテーテル遠位部1Dの湾曲の基端側の剛性を一定程度以上とするために、コイル50は非圧縮な、いわゆる密巻きコイルであることが好ましい。コイル50が非圧縮であれば、コイル50の遠位端部を起点としてカテーテル遠位部1Dが湾曲することが容易となる。
図7及び
図8に示すように、非圧縮なコイルとは、厳密にいうとコイルに外力を付加しない自然状態におけるコイルの全長Lと最大圧縮時のコイルの全長L
cとの比L
c/Lが1のものであるが、L
c/Lが0.95以上、0.9以上の場合も実質的に非圧縮なコイルに含まれる。コイル50がこのような非圧縮なコイルであれば、カテーテル遠位部1Dの湾曲の基端側の剛性を容易に確保でき、コイル50の遠位端部から遠位側のカテーテル遠位部1Dを湾曲させることができる。コイル50は、シャフト2の近位端まで延在していてもよく、シャフト2の近位端を越えて延在していてもよく、コイル50の近位端はシャフト2の途中に配されていてもよい。コイル50は、長手軸方向d
Lにおいてシャフト2の途中で異なるチューブに切り替わっていてもよい。
【0036】
コイル50は可撓性があることが好ましく、材料として金属や樹脂を用いることができ、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金等の金属ワイヤーや、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ワイヤーで構成することができる。コイル50を形成するコイルワイヤー55の断面形状は、円形、四角形、又はそれらの組み合わせとすることができる。中でも、コイル50は金属ワイヤーが巻回されたコイルであることが好ましく、コイル50はステンレス鋼製で断面が円形のコイルワイヤー55が巻回されたコイルであることが好ましい。コイル50を形成するコイルワイヤー55の直径は、0.1mmから0.5mmであることが好ましい。コイル50を断面が四角形のコイルワイヤー55で形成する場合、四角形の一辺は0.05mmから1mmとすることができる。本発明の実施形態に係るカテーテル1は長手軸方向dLにおいてコイル50の遠位端で内部構造が切り替わるため、コイル50の遠位端より遠位側と近位側とでカテーテル1の剛性が大きく異なり過ぎないようにコイル50の材料、サイズ、可撓性を選択することが好ましい。
【0037】
図2に示すように、カテーテル1は、シャフト2の内腔においてコイル50の外側に配置されている筒状部60を有している。筒状部60は、樹脂で形成されたチューブであってもよい。或いは、筒状部60は、コイル50の外周面に塗布された接着剤層やコイル50の外周面に樹脂材料等で形成された皮膜等であってもよい。
【0038】
チューブや皮膜を構成する樹脂としては、シャフト2を構成する材料のうち合成樹脂の説明を参照することができるが、中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂からなるエラストマーが好ましい。接着剤としては、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、シリコーン系接着剤等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0039】
図2に示すように、長手軸方向d
Lにおいて、筒状部60の遠位端はコイル50の遠位端と同じかコイル50の遠位端よりも近位側に位置しており、コイル50の遠位端から筒状部60の遠位端までの長さdがコイル50の30巻き分以下である。すなわち、本発明の実施形態に係るカテーテル1は、長手軸方向d
Lにおいて、コイル50の遠位端部よりも近位側では
図3に示すようにコイル50の外側に筒状部60が配置されているが、コイル50の遠位端部の長さdの区間およびコイル50の遠位端よりも遠位側では
図4~
図6に示すようにワイヤー30及び板バネ40の周りに筒状部60が存在しない構成を有している。これにより、牽引部材であるワイヤー30や湾曲部材である板バネ40に対する筒状部60の干渉を防止できる構成とすることができる。その結果、手元側からの力がカテーテル遠位部1Dに配されているワイヤー30に伝達されやすく、ワイヤー30の牽引に伴う板バネ40の湾曲が筒状部60の影響を受けにくいため、カテーテル遠位部1Dの所期の湾曲形状を実現することが容易となる。
【0040】
図2及び
図3に示すように、長手軸方向d
Lにおいてコイル50の30巻き分以下の長さdの区間よりも近位側においては、コイル50の外側に筒状部60が配置されている。これにより、筒状部60が外側に配置された部分においては、カテーテル遠位部1Dを湾曲させる際にワイヤー30の牽引に伴ってコイル50が圧縮されてもコイル50が半径方向d
Rに膨らむように変形することを防止でき、コイル50に接続された板バネ40が回転することによるカテーテル遠位部1Dの湾曲のねじれを抑制できる。コイル50の膨らみやすさはコイル50の巻き数に依存するため、コイル50の遠位端から筒状部60の遠位端までの長手軸方向d
Lの長さdがコイル50の所定の巻き分以下であることで上記効果を奏することができる。
【0041】
ここで、コイル50の1巻き分とは、
図7に示すように、コイル50に外力を付加しない自然状態において、コイル50を形成するコイルワイヤー55の1巻き分のコイル50の長手軸方向の長さである。コイル50が非圧縮なコイルであり自然状態におけるコイルの全長Lと最大圧縮時のコイルの全長L
cとの比L
c/Lが1のときは、コイル50の1巻き分はコイル50を形成するコイルワイヤー55のワイヤー径と一致する。コイル50が完全には非圧縮なコイルではないときは、
図7に示すように、コイル50の1巻き分は、コイル50の長手軸方向においてコイルワイヤー55の1巻きの一方端から次の1巻きの一方端までの長さSと決めることができる。コイル50が非圧縮なコイルではないとき、長さSは、コイルワイヤー55のワイヤー径とコイルワイヤー55間の隙間の長さを合わせたものであり、コイル50のピッチと同じである。コイル50の30巻き分の長さは、長さSの30倍の長さとなる。
【0042】
コイル50の遠位端から筒状部60の遠位端までの長さdは、コイル50の25巻き分以下であることが好ましく、20巻き分以下であることがより好ましく、15巻き分以下、12巻き分以下、又は10巻き分以下であってもよい。長手軸方向d
Lにおいて、筒状部60の遠位端はコイル50の遠位端と同じ位置に配されていてもよいため、コイル50の遠位端から筒状部60の遠位端までの長さdはコイル50の0巻き分であってよいことになるが、長さdはコイル50の1巻き分以上が好ましく、3巻き分以上であることがより好ましく、5巻き分以上であることがさらに好ましい。長さdの上限が上記範囲であることで、カテーテル遠位部1Dを湾曲させる際の湾曲の基端となるコイル50の遠位端部近傍まで筒状部60を配置することができ、湾曲の基端となるコイル50の遠位端部が半径方向d
Rに膨らむように変形してコイル50と板バネ40の第1接続部41が回転することによる板バネ40のねじれを防止できる。また、長さdの下限が0以外の上記範囲であれば、本発明の実施形態に係るカテーテル1は長手軸方向d
Lにおいてコイル50の遠位端より遠位側と近位側とで剛性が異なる剛性段差が生じ易いが、
図4及び
図5に示すようにコイル50の遠位端部の外側に筒状部60が配置されていないことで、コイル50の遠位端部において筒状部60によるさらなる剛性段差を生じにくくすることができる。これにより、カテーテル遠位部1Dを湾曲させた際にねじれやキンクを防止できる。
【0043】
筒状部60の内壁は、コイル50の外側面に全面的又は部分的に当接していてもよいし、或いは当接していなくてもよい。筒状部60の内壁がコイル50の外側面に当接していなくても、筒状部60がコイル50の外側に配置されることで上記効果を奏することができる。
図12~
図14に示すように、筒状部60の内壁がコイル50の外側面に当接していないとき、筒状部60の内壁とコイル50の外側面との間には隙間が形成されていてもよい。
【0044】
図3に示すように、筒状部60は長手軸方向d
Lの全般にわたって筒状であることが好ましい。すなわち、筒状部60は、半径方向d
Rにおける断面において連続している断面を有していることが好ましい。これにより、例えば筒状部60の内壁がコイル50の外側面に当接していない場合であっても、コイル50の半径方向d
Rへの膨らみを容易に防止できる。或いは、図示していないが、筒状部60は、長手軸方向d
Lのある領域において切れ目や欠落部を有することにより筒状でない部分を有していてもよい。すなわち、筒状部60は、半径方向d
Rにおける断面において連続していない断面を有していてもよい。筒状部60が切れ目や欠落部を有する位置は特に限定されないが、例えば、筒状部60は、近位側において筒状であり、遠位端部において筒状に切れ目又は欠落部がある形状を有していてもよい。また例えば、筒状部60は、遠位側において筒状であり、近位側のいずれかの部分に筒状に切れ目又は欠落部がある形状を有していてもよい。このように筒状部60が筒状でない部分を有している場合であっても、例えば筒状部60の内壁がコイル50の外側面に全面的又は部分的に当接していることにより、コイル50の半径方向d
Rへの膨らみを防止できる。或いは、筒状部60が筒状でない部分を有している場合に筒状部60の内壁がコイル50の外側面に当接していない場合であっても、後述するように、
図12~
図14に示すような第2固定部61を設けることにより、コイル50の半径方向d
Rへの膨らみを防止できる。
【0045】
長手軸方向dLにおいて、筒状部60はコイル50の近位端まで延在していてもよいし、筒状部60の近位端はコイル50の近位端よりも遠位側に位置していてもよい。筒状部60は、遠位端から近位端まで1つの部材で構成されていてもよいし、長手軸方向dLのいずれかの位置で別の部材に切り替わっていてもよい。長手軸方向dLにおいて、筒状部60は、コイル50の長さの50%以上の区間でコイル50の外側に配置されていることが好ましい。筒状部60がコイル50の外側に配置されている区間は、コイル50の長さの60%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましく、80%以上、90%以上、或いは100%であってもよい。筒状部60が上記範囲でコイル50の外側に配置されていることで、筒状部60によりコイル50の半径方向dRへの膨らみを防止することが容易となる。
【0046】
図2及び
図3等に示すように、筒状部60の内壁の少なくとも一部は、コイル50の外側面に当接していることが好ましい。より好ましくは、筒状部60の内壁全体がコイル50の外側面に当接している。これにより、コイル50の半径方向d
Rへの膨らみの抑制がより容易となる。
【0047】
筒状部60がチューブや皮膜である場合、筒状部60の内壁がコイル50の外側面に当接するように筒状部60を設けるには、例えば、筒状に成形した樹脂の内腔にコイル50を配置し、コイル50の外側に樹脂を熱収縮させることができる。このように筒状部60をコイル50の外側に形成すれば、筒状部60はコイル50の外側面に密着した状態となり、コイル50の半径方向dRへの膨らみの抑制がさらに容易となる。ただし、このように筒状部60をコイル50の外側面に密着するように形成した場合であっても、筒状部60はコイル50の外側面に固定されているわけではなく、筒状部60とコイル50とは長手軸方向dLに互いに摺動可能であってもよい。これにより、コイル50が筒状部60により必要以上に束縛されることがないため、カテーテル1の柔軟性を向上することができる。
【0048】
長手軸方向dLにおいて、筒状部60の遠位端はコイル50の遠位端よりも近位側に位置していることが好ましい。すなわち、長さdは0ではないことが好ましい。これにより、コイル50の遠位端部には筒状部60が配されない構成とすることができ、ワイヤー30や板バネ40に対する筒状部60の干渉をより容易に抑制できる。その結果、手元側からの力が妨害されることなくカテーテル遠位部1Dのワイヤー30に伝達され、ワイヤー30の牽引に伴う板バネ40の湾曲も妨害されないため、カテーテル遠位部1Dの所期の湾曲形状を実現することがより容易となる。さらに、コイル50の遠位端部において筒状部60によるさらなる剛性段差を生じにくくすることができるため、カテーテル遠位部1Dを湾曲させた際にコイル50の遠位端部におけるキンクを防止できる。
【0049】
図2~
図6、及び
図9~
図14に示すように、長手軸方向d
Lにおいて、ワイヤー30及び板バネ40は、コイル50の遠位端よりも遠位側においてシャフト2の内腔に露出していてもよい。或いは、図示していないが、長手軸方向d
Lにおいて、ワイヤー30及び板バネ40は、コイル50の遠位端よりも遠位側においてシャフト2に設けられたルーメンや別の筒状部材の内腔に配置されていてもよい。いずれの場合であっても、筒状部60の遠位端がコイル50の遠位端よりも近位側に位置していることにより、コイル50の膨らみを防止する筒状部60がワイヤー30及び板バネ40に干渉することを防止できる。
【0050】
長手軸方向d
Lにおいて、第1接続部41は筒状部60の内側に配されていないことが好ましい。すなわち、第1接続部41は、コイル50の遠位端から筒状部60の遠位端までの長さdの区間に配されていることが好ましい。第1接続部41は、
図5に一例を示すように板バネ40がコイル50に接続されている部分であることから剛性が高くなる可能性が高いが、この部分に筒状部60が配されていないことにより、筒状部60によるさらなる剛性段差が生じることを防止できる。
【0051】
図9に示すように、長手軸方向d
Lにおいて、筒状部60の近位端はコイル50の近位端よりも遠位側に位置しており、コイル50は筒状部60の近位端よりも近位側でシャフト2と固定されている第1固定部51を有していることが好ましい。コイル50がシャフト2と固定されている第1固定部51を有していることにより、コイル50のねじれを抑制することがより容易となり、カテーテル遠位部1Dをねじれさせることなく一定の方向へ湾曲させることができる。第1固定部51は、コイル50とシャフト2とが単に密着しているのではなく、接着剤による接着、ハンダ等によるろう付けなど、何らかの固定手段により形成されていることが好ましい。
【0052】
長手軸方向dLにおいて、第1固定部51の遠位端から筒状部60の近位端までの長さL1はコイル50の20巻き分以下であることが好ましい。長さL1はコイル50の15巻き分以下がより好ましく、12巻き分以下がさらに好ましく、10巻き分以下であってもよい。また、第1固定部51は筒状部60の近位端に接するように設けられていてもよいことから、第1固定部51の遠位端と筒状部60の近位端が離隔していない長さL1が0の態様も許容される。或いは、第1固定部51の遠位端と筒状部60の近位端は離隔していてもよく、その場合、長さL1はコイル50の3巻き分以上が好ましく、5巻き分以上がより好ましい。長さL1の上限が上記範囲であることで、第1固定部51を筒状部60の近位端の近傍に設けることができるため、コイル50のねじれをより容易に防止でき、カテーテル遠位部1Dをねじれさせることなく一定の方向へ湾曲させることができる。長さL1の下限が上記範囲であることで、第1固定部51を筒状部60の近位端から長手軸方向dLにおいて一定以上近位側に設けることができるため、筒状部60による剛性変化と第1固定部51による剛性変化が重なり合わないようにすることができ、カテーテル遠位部1Dの柔軟性を向上して所期の湾曲形状とすることがより容易となる。
【0053】
或いは、図示していないが、第1固定部51は長手軸方向dLにおいて筒状部60の近位端を越えて遠位側に延在するように設けられ、第1固定部51の一部が筒状部60とシャフト2とを固定していてもよい。
【0054】
第1固定部51の長手軸方向dLの長さは、例えばコイル50の50巻き分以下が好ましく、30巻き分以下がより好ましく、10巻き分以下がさらに好ましい。第1固定部51の長手軸方向dLの長さが長いと、第1固定部51が設けられている部分のカテーテル遠位部1Dの剛性が高くなり、その剛性段差によるカテーテル遠位部1Dのキンク等の不具合が生じる虞があるが、第1固定部51の長手軸方向dLの長さが上記範囲であれば第1固定部51による剛性段差を低減できる。また、カテーテル1が先端部に配置されている電極等に接続されている導線を有している場合、該導線はシャフト2の内側であってコイル50の外側に配置されることから、第1固定部51の長手軸方向dLの長さが上記範囲であることで導線に対する第1固定部51の影響を抑制でき、導線の引きつれを防止してカテーテル遠位部1Dを所期の形状に容易に湾曲させることが可能となる。第1固定部51の長手軸方向dLの長さの下限は特に制限されないが、例えばコイル50の3巻分以上が好ましく、5巻分以上がより好ましく、7巻き分以上がさらに好ましい。長手軸方向dLにおいて、筒状部60の長さ、第1固定部51の長さ、第1固定部51の遠位端から筒状部60の近位端までの長さL1の順に短くなることが好ましい。このような構成であれば、筒状部60と第1固定部51によりコイル50の膨らみ等の変形やねじれを防止しつつ、各部材による剛性段差の影響を低減でき、カテーテル遠位部1Dを所期の湾曲形状とすることがより容易となる。
【0055】
第1固定部51は、
図10に示すようにコイル50の外側かつシャフト2の内側の空間の周方向360°の全てに設けられていてもよいし、或いは
図11に示すように当該空間の周方向360°のうちの一部に設けられていてもよい。第1固定部51が当該空間の周方向360°のうち一部に設けられる場合は、第1固定部51は1つであってもよいし複数であってもよい。このとき、第1固定部51が周方向に設けられる角度の合計は60°以上が好ましく、90°以上がより好ましい。第1固定部51が上記範囲で設けられていれば、コイル50とシャフト2との固定強度を確保できる。また、第1固定部51が周方向に設けられる角度の合計は240°以下が好ましく、180°以下がより好ましい。第1固定部51が上記範囲で設けられていれば、第1固定部51による剛性段差を抑制できる。また、カテーテル1が先端部に配置されている電極等に接続されている導線を有している場合、コイル50の外側かつシャフト2の内側の第1固定部51が配置されていない空間に導線を挿通させることができる。これにより、導線が第1固定部51により固定されない構成とすることができ、導線の引きつれを防止してカテーテル遠位部1Dを所期の形状により容易に湾曲させることが可能となる。
【0056】
上記のように筒状部60の近位端がコイル50の近位端よりも遠位側に位置している本発明の一実施形態においては、長手軸方向dLにおける筒状部60の長さは板バネ40の長さの1/4以上であることが好ましい。これにより、コイル50の半径方向dRへの膨らみ等の変形の防止効果を向上できるとともに、第1固定部51の長手軸方向dLにおける位置を第1接続部41から十分に離すことができるため、第1接続部41による剛性変化と第1固定部51による剛性変化が重なり合わないようにすることができ、カテーテル遠位部1Dの柔軟性を向上して所期の湾曲形状とすることがより容易となる。
【0057】
図12に示すように、本発明の他の実施形態におけるカテーテル1は、筒状部60がシャフト2と固定されている第2固定部61を有していることが好ましい。筒状部60がシャフト2と固定されている第2固定部61を有していることにより、コイル50のねじれを防いでカテーテル遠位部1Dをねじれさせることなく一定の方向へ湾曲させることが容易となる。第2固定部61は、筒状部60とシャフト2とが単に密着しているのではなく、接着剤による接着、ハンダ等によるろう付けなど、何らかの固定手段により形成されていることが好ましい。ある程度以上の剛性を有するコイル50ではなく筒状部60がシャフト2に固定されていることで、カテーテル遠位部1Dの柔軟性を向上しつつカテーテル遠位部1Dのねじれを防止できる。また、筒状部60とコイル50とが長手軸方向d
Lに互いに摺動可能な態様においては、筒状部60をシャフト2に固定してもコイル50に一定程度の自由度が確保されるため、カテーテル遠位部1Dの柔軟性が損なわれにくい。
【0058】
上記のような態様においては、筒状部60は長手軸方向dLにおいてコイル50の近位端まで延在していてもよい。或いは、筒状部60の近位端は長手軸方向dLにおいてコイル50の近位端よりも遠位側に位置しており、コイル50が筒状部60の近位端よりも近位側でシャフト2と固定されている第1固定部51をさらに有していてもよい。すなわち、カテーテル1は第1固定部51と第2固定部61の両方を有していてもよい。
【0059】
第2固定部61の長手軸方向dLの長さは、例えばコイル50の50巻き分以下が好ましく、30巻き分以下がより好ましく、10巻き分以下がさらに好ましい。第2固定部61の長手軸方向dLの長さが長いと、第2固定部61が設けられている部分のカテーテル遠位部1Dの剛性が高くなり、その剛性段差によるカテーテル遠位部1Dのキンク等の不具合が生じる虞があるが、第2固定部61の長手軸方向dLの長さが上記範囲であれば第2固定部61による剛性段差を低減できる。また、カテーテル1が先端部に配置されている電極等に接続されている導線を有している場合、該導線はシャフト2の内側であってコイル50及び筒状部60の外側に配置されることから、第2固定部61の長手軸方向dLの長さが上記範囲であることで導線に対する第2固定部の影響を抑制でき、導線の引きつれを防止してカテーテル遠位部1Dを所期の形状に容易に湾曲させることが可能となる。第2固定部61の長手軸方向dLの長さの下限は特に制限されないが、例えばコイル50の3巻き分以上が好ましく、5巻き分以上がより好ましく、7巻き分以上がより好ましい。
【0060】
第2固定部61は、
図13に示すように筒状部60の外側かつシャフト2の内側の空間の周方向360°の全てに設けられていてもよいし、或いは
図14に示すように当該空間の周方向360°のうちの一部に設けられていてもよい。第2固定部61が当該空間の周方向360°のうち一部に設けられる場合は、第2固定部61は1つであってもよいし複数であってもよい。このとき、第2固定部61が周方向に設けられる角度の合計は60°以上が好ましく、90°以上がより好ましい。第2固定部61が上記範囲で設けられていれば、筒状部60とシャフト2との固定強度を確保できる。また、第2固定部61が周方向に設けられる角度の合計は240°以下が好ましく、180°以下がより好ましい。第2固定部61が上記範囲で設けられていれば、第2固定部61による剛性段差を抑制できる。また、カテーテル1が先端部に配置されている電極等に接続されている導線を有している場合、筒状部60の外側かつシャフト2の内側の第2固定部61が配置されていない空間に導線を挿通させることができる。これにより、導線が第2固定部61により固定されない構成とすることができ、導線の引きつれを防止してカテーテル遠位部1Dを所期の形状に容易に湾曲させることが可能となる。
【0061】
長手軸方向dLにおいて、第2固定部61の遠位端からコイル50の遠位端までの長さL2は板バネ40の長さの2倍以下であることが好ましい。長さL2は、板バネ40の長さの1.5倍以下がより好ましく、1倍以下がさらに好ましい。また、長さL2は板バネ40の長さの1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、3/4以上がさらに好ましい。長さL2が上記範囲であれば、長手軸方向dLにおいてカテーテル遠位部1Dを湾曲させる際の湾曲の基端となるコイル50の遠位端から近位側に所定以内の位置で筒状部60とシャフト2とを固定できることから、コイル50のねじれをより容易に防止でき、カテーテル遠位部1Dをねじれさせることなく一定の方向へ湾曲させることができる。
【0062】
長手軸方向dLにおいて、第2固定部61の遠位端は第1接続部41の近位端よりも近位側に位置しており、第2固定部61の遠位端から第1接続部41の近位端までの長さL3は板バネ40の長さの1/4以上であることが好ましい。長さL3は板バネ40の1/3以上がより好ましく、1/2以上がさらに好ましい。長さL3の上限は、上記長さL2の好ましい範囲と同等とすることができる。長さL3が上記範囲であれば、第2固定部61の長手軸方向dLにおける位置を第1接続部41から十分に離すことができるため、第1接続部41による剛性変化と第2固定部61による剛性変化が重なり合わないようにすることができ、カテーテル遠位部1Dの柔軟性を向上して所期の湾曲形状とすることがより容易となる。
【0063】
本発明の実施形態に係るカテーテル1は、第2固定部61の近位端よりも近位側でコイル50又は筒状部60がシャフト2に固定されている他の固定部を有していてもよい。第2固定部61の近位端よりも近位側であれば、コイル50の遠位端及び第1接続部41から十分に離れているためカテーテル1の剛性変化に及ぼす影響は少ないが、製造時の工数の低減やカテーテル1が導線を有している場合の導線の摺動性の観点から固定部の数は必要最低限であることが好ましい。長手軸方向dLにおける他の固定部の数は5個以下が好ましく、3個以下がより好ましく、2個以下、1個以下、又は0個であってもよい。
【0064】
本発明の実施形態に係るカテーテル1は、長手軸方向dLにおいて第2固定部61の遠位端よりも遠位側で筒状部60とシャフト2とが固定されていないことが好ましい。これにより、コイル50の遠位端に近い部分で固定部により剛性が高くなる部分が生じないため、カテーテル遠位部1Dの剛性段差を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0065】
1:カテーテル
1D:カテーテル遠位部
2:シャフト
7:ハンドル
20:先端部
30:ワイヤー
40:板バネ
40a:一方面
40b:他方面
41:第1接続部
42:第2接続部
50:コイル
51:第1固定部
55:コイルワイヤー
60:筒状部
61:第2固定部
d:コイルの遠位端から筒状部の遠位端までの長さ
dL:長手軸方向
dR:半径方向
L:自然状態におけるコイルの長さ
LC:最大圧縮時のコイルの長さ
L1:第1固定部の遠位端から筒状部の近位端までの長さ
L2:第2固定部の遠位端からコイルの遠位端までの長さ
L3:第2固定部の遠位端から第1接続部の近位端までの長さ