(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028569
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】米粉の保管方法、粉状食材の保管方法及び粉状食材保管装置
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230224BHJP
A23L 3/005 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L3/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134359
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】505223964
【氏名又は名称】株式会社舞昆のこうはら
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】鴻原 森蔵
【テーマコード(参考)】
4B021
4B023
【Fターム(参考)】
4B021LA24
4B021LA25
4B021LP10
4B021LW09
4B021MP10
4B023LC08
4B023LE07
4B023LP19
4B023LP20
4B023LT60
(57)【要約】
【課題】冷蔵装置を使用せずに米粉等の酸化を防ぐことができる方法を提案する。
【解決手段】絶縁性を備え少なくとも一面に開放部を有する外郭体2と、絶縁材で被覆された面状の電極23と、カーテン状又は暖簾状の開閉部材5と、金属壁6とを有し、前記外郭体2の内部であって、高さ方向の一部の領域の3側面が前記電極で覆われ、前記外郭体の内部であって、高さ方向の他の領域の少なくとも一部と天面に前記金属壁6が配され、前記外郭体2のいずれかの開放部に前記開閉部材5が配され、且つ前記開閉部材5の筐体内部側に導電性のシートが装着されていることを特徴とする粉状食材保管装置1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉を袋及び/又は箱に入れた状態で、常温且つ静電場雰囲気中に置いて保管することを特徴とする米粉の保管方法。
【請求項2】
米粉を袋に入れ、さらに当該袋を箱に入れた状態で、常温且つ静電場雰囲気中に置いて保管することを特徴とする米粉の保管方法。
【請求項3】
少なくとも2側面が面状の電極で囲まれ、当該電極に給電されて静電場雰囲気が形成された空間に米粉を置くことを特徴とする請求項1又は2に記載の米粉の保管方法。
【請求項4】
側面の一部に被覆された電極が配置され、同じ側面に導電体で形成された壁部材が配置されており、前記電極に給電されて静電場雰囲気が形成された空間に米粉を置くことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の米粉の保管方法。
【請求項5】
少なくとも一面が金属面である空間に米粉を置くことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の米粉の保管方法。
【請求項6】
粉状食材を袋及び/又は箱に入れた状態で、常温且つ静電場雰囲気中に置いて保管することを特徴とする粉状食材の保管方法。
【請求項7】
絶縁性を備え少なくとも一面に開放部を有する外郭体と、絶縁材で被覆された面状の電極と、カーテン状又は暖簾状の開閉部材と、金属壁とを有し、
前記外郭体の内部であって、高さ方向の一部の領域の3側面が前記電極で覆われ、
前記外郭体の内部であって、高さ方向の他の領域の少なくとも一部と天面に前記金属壁が配され、
前記外郭体のいずれかの開放部に前記開閉部材が配され、且つ前記開閉部材の筐体内部側に導電性のシートが装着されていることを特徴とする粉状食材保管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を保管する方法に関するものである。また本発明は、米粉その他の粉状食材を保管する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米粉は、米を製粉した粉状食材である。米粉は、団子、餅、煎餅等の原料として古くから使用されている。
また近年では、小麦粉の代わりにパンや菓子の材料として使用されることもある。米粉は、小麦アレルギーを引き起こす原因とされているグルテンを含まず、小麦アレルギーの人も食することができる。
【0003】
一方、米粉は、脂肪を含むので酸化しやすく、酸化によって食味が悪くなるという問題がある。
そのため、米粉は、冷蔵保存されることが多い。即ち、米粉を長期保管する場合には、冷蔵庫に入れておかれる場合が多い。
【0004】
また近年注目されている冷蔵技術として、冷蔵庫内を静電場雰囲気とする方法がある。この技術は、食材を製電場雰囲気中に置くことにより、食材中の水分が凍結することを防ぐことができることを利用したものである。
冷蔵庫内を静電場雰囲気とすることにより、食材の細胞を破壊することなく氷点下の環境に食材をおき、細菌の増殖を抑え、食材の鮮度を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の保管方法は、いずれも冷蔵庫を使用するものであり、大掛かりな設備が必要である。
本発明は、冷蔵装置を使用せずに米粉等の酸化を防ぐことができる方法を提案するものである。また本発明は、新たな粉状食材を保管する装置を提案することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための態様は、米粉を袋及び/又は箱に入れた状態で、常温且つ静電場雰囲気中に置いて保管することを特徴とする米粉の保管方法である。
【0008】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、米粉を袋に入れ、さらに当該袋を箱に入れた状態で、常温且つ静電場雰囲気中に置いて保管することを特徴とする米粉の保管方法である。
【0009】
上記した各態様の米粉の保管方法によると、冷蔵装置を使用することなく米粉の酸化を抑制することができる。
【0010】
上記した各態様において、少なくとも2側面が面状の電極で囲まれ、当該電極に給電されて静電場雰囲気が形成された空間に米粉を置くことが望ましい。
【0011】
本態様によると、米粉を強い静電場雰囲気中に置くことができ、米粉の酸化を抑制することができる。
【0012】
上記した各態様において、側面の一部に被覆された電極が配置され、同じ側面に導電体で形成された壁部材が配置されており、前記電極に給電されて静電場雰囲気が形成された空間に米粉を置くことが望ましい。
【0013】
本態様によると、米粉を強い静電場雰囲気中に置くことができ、米粉の酸化を抑制することができる。
【0014】
上記した各態様において、少なくとも一面が金属面である空間に米粉を置くことが望ましい。
【0015】
本態様によると、米粉を強い静電場雰囲気中に置くことができ、米粉の酸化を抑制することができる。
【0016】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、粉状食材を袋及び/又は箱に入れた状態で、常温且つ静電場雰囲気中に置いて保管することを特徴とする粉状食材の保管方法。
【0017】
粉状食材は、例えば穀粉と称されるものであり、米粉の他、小麦粉、大麦粉、はったい粉、ライ麦粉等の麦粉が含まれる。また粉状食材には、トウモロコシ粉、コーンスターチ等のトウモロコシを原料とするものが含まれる。さらに、豆や芋、葛、片栗等を原料とする粉も、粉状食材に含まれる。
【0018】
粉状食材保管装置に関する態様は、絶縁性を備え少なくとも一面に開放部を有する外郭体と、絶縁材で被覆された面状の電極と、カーテン状又は暖簾状の開閉部材と、金属壁とを有し、前記外郭体の内部であって、高さ方向の一部の領域の3側面が、前記電極で覆われ、前記外郭体の内部であって、高さ方向の他の領域の少なくとも一部と天面に前記金属壁が配され、前記外郭体のいずれかの開放部に前記開閉部材が配され、且つ前記開閉部材の筐体内部側に導電性のシートが装着されていることを特徴とする。
【0019】
本態様の粉状食材保管装置によると、粉状食材が配置される空間を、強い静電場雰囲気にすることができる。
またカーテン状又は暖簾状の開閉部材を有し、当該開閉部材を開いて粉状食材保管装置から粉状食材を出し入れすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粉状食材の保管方法及び粉状食材の保管方法によると、冷蔵装置を使用せずに米粉等の酸化を防ぐことができる。
また本発明の粉状食材保管装置は、簡単な構造であるにも関わらず、米粉等の酸化を抑制することができ、長期にわたって粉状食材の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態の粉状食材保管装置の斜視図である。
【
図3】
図1の粉状食材保管装置の分解斜視図である。
【
図4】
図1の粉状食材保管装置で使用される電極の一部破断斜視図である。
【
図5】(a)は、
図2のA-A断面図であり、(b)は、
図2のB-B断面図であり、(c)は、(a)の円内の拡大図である。
【
図6】
図1の粉状食材保管装置の電源装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の粉状食材保管装置1は、米粉等の粉状食材を常温で保管する装置である。
本実施形態の粉状食材保管装置1は、
図3の様に、外郭体2と、電極部材3と、開閉部材5及び金属壁6によって構成されている。
【0023】
外郭体2は、木材や樹脂等の絶縁性を備えた素材によって作られた筐体である。外郭体2は、正面側が開口し、他の5面が閉塞されている。
即ち外郭体2は、天面壁10、底面壁11、奥面壁12及び左右側面壁15、16を有し、正面が開口する木製の箱である。天面壁10、底面壁11、奥面壁12及び左右側面壁15、16で囲まれた領域が、米粉を保管する収容空間18となる。
外郭体2は、脚部17を有し、底面壁11は、床面から離れている。
【0024】
電極部材3は、被覆された面状の電極である。電極部材3は、
図4の様に、絶縁性の樹脂シート20、21の間に、網状の金属部材(面状の電極)23が挟み込まれたものである。金属部材(面状の電極)23は、金属板や、金属シートであってもよい。また金属部材(面状の電極)23は、パンチングメタルの様な、孔を有する金属板であってもよい。
要するに、面状の電極は、ある程度の面積を有する導電体であればよい。
電極部材3の幅Wは、外郭体2の収容空間18の高さHの約2分の1である。
【0025】
開閉部材5は、カーテン又は暖簾状の部材であり、
図5(c)の様に、布又はシートからなる基材8の一方の面に、金属シート7が積層されたものである。
【0026】
金属壁6は、アルミニウムや亜鉛引き鉄板、ブリキ等で作られている。
【0027】
粉状食材保管装置1では、外郭体2の内面が、金属壁6で内張りされている。
電極部材3は、
図3の様に、「コ」の字状に折り曲げられ、外郭体2内に配置されている。
具体的には、電極部材3は、外郭体2の奥面壁12及び左右側面壁15、16であって、金属壁6の表面に貼り付けられている。なお電極部材3は、外郭体2の底面壁11とは接していない。
電極部材3の幅Wは、外郭体2の収容空間18の高さHの約2分の1であるから、電極部材3は、収容空間18の下端近傍から収容空間18の高さHの約2分の1程度の領域にある。
また電極部材3は、収容空間18の高さHの約2分の1程度の領域の、3面を囲む様に配置されている。
【0028】
本実施形態では、収容空間18の奥面壁12及び左右側面壁15、16の下部側約2分の1の領域は、電極部材3で覆われている。これに対して、収容空間18の奥面壁12及び左右側面壁15、16の上部側約2分の1の領域及び天面壁10は、金属壁6が露出している。
本実施形態では、奥面壁12及び左右側面壁15、16の一部に被覆された電極が配置され、同じ側面に金属壁(導電体)6で形成された壁部材が配置されている。
【0029】
開閉部材5は、外郭体2の天面壁10から吊り下げられており、外郭体2の正面の開放部を覆っている。
本実施形態では、実際に米粉が収容される空間の一面が開閉部材5で覆われており、当該一面が金属シート7による金属面となっている。
【0030】
粉状食材保管装置1は、電源装置30から給電され、網状の金属部材(面状の電極)23に高電圧が印加される。
電源装置30は、可変抵抗器と、昇圧トランスによって構成され、商用電源の100ボルトを昇圧トランスによって昇圧するものである。出力電圧は、可変抵抗によって調節される。
【0031】
本実施形態では、500ボルトから、1500ボルト程度の電圧が、網状の金属部材(面状の電極)23に印加される。
【0032】
米粉は、
図2の様にビニール等の樹脂製の袋100に入れられ、さらに段ボール箱101に詰め込まれた状態で、粉状食材保管装置1の収容空間18に保管される。具体的には、外郭体2の底面壁11に樹脂製のパレット102が設置され、その上に、段ボール箱101が積み上げられている。
【0033】
収容空間18内は、網状の金属部材(面状の電極)23に高電圧が印加されることによって、静電場雰囲気となっている。
特に本実施形態では、
図5(b)の様に、米粉が収容された袋100及び段ボール箱101の周囲3面が網状の金属部材(面状の電極)23で覆われており、米粉が収容された袋100及び段ボール箱101は、強い静電場に置かれることとなる。そのため段ボール箱101及び袋100が帯電し、米粉の周囲がイオン雰囲気となり、米粉の酸化が抑制される。
特に本実施形態では、
図2、
図5(a)の様に、収容空間18内であって、電極部材3が存在しない面の全てに金属壁6又は金属シート7で覆われているので、静電気が収容空間18内に閉じ込められ、高い電界強度が維持され、米粉が酸化しにくい。
また粉状食材保管装置1は、米粉を常温で保管することができるため、消費電力も低い。
【0034】
米粉を粉状食材保管装置1から出し入れする際には、電源を落とし、カーテン状又は暖簾状の開閉部材5をめくって収容空間18の一面を開放する。
【0035】
以上説明した実施形態では、収容空間18の3面であって、その下部領域に電極部材3を配置したが、高さ方向の全領域に電極部材3を配置してもよい。また天面に電極部材3を配置してもよい。
以上説明した実施形態では、収容空間18の3面に電極部材3を配置したが、2面だけに電極部材3を配置してもよい。2面だけに電極部材3を配置する場合には、電極部材3が対向面にあることが望ましい。
【0036】
本実施形態の粉状食材保管装置1によって米粉を保管すると、米粉が酸化しにくく、長期間にわたって品質を維持することができる。また本実施形態の粉状食材保管装置1によって米粉以外の粉状食材を保管することができる。
【0037】
次に、本実施形態の粉状食材保管装置1の効果を確認するために行った実施例について説明する。
【実施例0038】
ビニール製の袋100に米粉1kgを入れて密封した。この米粉入りの袋100を段ボール箱101に入れた。この段ボール箱101をパレット102の上に置き、粉状食材保管装置1の収容空間18に設置した。金属部材23に1000ボルトの電圧を印加し、常温で、米粉を1か月間保管した。対照として、粉状食材保管装置1を使用せずに、常温で1か月間保管したものを設定した。
【0039】
米粉の品質変化の指標として脂肪酸度を採用した。そして、保管開始前と1か月間保管後の米粉について、脂肪酸度を測定した。脂肪酸度の測定は「大坪ら、食品総合研究所研究報告(Report of National Food Research Institute)、第51号、p.59-65、1987年11月発行」に記載の方法(比色法)に準じて行った。詳細には、米粉1gを栓付き試験管に入れ、トルエンを5mL加え、30℃恒温水槽内で30分間抽出した。抽出物をろ紙を用いてろ過し、新たな栓付き試験管に移した。クロロホルム4mLを添加し、さらに銅試薬(1Mトリエタノールアミン9容、1N酢酸1容、6.45%硝酸銅水溶液10容の混合液)2.5mLを添加し、強く攪拌した。3000rpmで5分間遠心分離した。上部の青色の水相をピペットで慎重に除去し、下部の無色のクロロホルム層から3mLを試験管に採取した。0.1%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムのイソブタノール溶液を0.5mL添加し、強く攪拌した。その後、440nmにおける吸光度を分光光度計にて測定した。別途、10μM、50μM、100μMのリノール酸溶液を用いて同様の操作を行って検量線を作製した。この検量線を用いて、各試料のリノール酸換算脂肪酸量を算出した。なお、米粉の含水率m(%)を水分計にて予め測定したところ、11.1%であった。
【0040】
トルエン5mL中のリノール酸換算脂肪酸量をX(μM)とし、下記式にて脂肪酸度を算出した。
脂肪酸度〔mg・KOH/100g〕=561X/(100-m)
【0041】
その結果、まず、保管開始前の米粉の脂肪酸度は42.0であった。そして、粉状食材保管装置1を用いて1か月間常温で保管した米粉の脂肪酸度は42.1であり、保管開始前とほとんど変わらず、脂肪の酸化が抑えられていた。一方、粉状食材保管装置1を用いずに常温で1カ月保管した米粉の脂肪酸度は43.9であり、脂肪の酸化が進んでいた。これにより、粉状食材保管装置1を用いて米粉を保管することにより、常温であっても、米粉の品質変化が長期的に抑えられることが示された。