(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028600
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】栽培施設の遮光システム
(51)【国際特許分類】
A01G 9/22 20060101AFI20230224BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
A01G9/22
E06B9/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134406
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】521167659
【氏名又は名称】株式会社オムニア・コンチェルト
(71)【出願人】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029KB05
2B029LA01
2B029RA06
2B029RB21
2B029RB25
(57)【要約】
【課題】遮光率を調節可能で、かつ、暖められた空気を上方に通気することが可能な栽培施設の遮光システムを提供する。
【解決手段】
栽培施設の遮光システムは、作物の上方を覆う複数の遮光カーテンであって、上下方向に並べて配置された複数の遮光カーテンと、複数の遮光カーテンを各々独立して開閉可能な開閉手段と、開閉手段を制御する制御部とを備え、複数の遮光カーテンは互いに高さ位置を異にし、各遮光カーテンは、太陽光を遮断する遮光部と、太陽光を遮断しないか、又は遮光部よりも光透過率が高い透光部であって、通気性を備えた透光部とを備え、複数の遮光カーテンは互いに高さ位置を異にし、制御部は、開閉手段を制御して、複数の遮光カーテンの相対位置を変化させることにより、遮光率を調節可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の上方を覆う複数の遮光カーテンであって、上下方向に並べて配置された複数の前記遮光カーテンと、
複数の前記遮光カーテンを各々独立して開閉可能な開閉手段と、
前記開閉手段を制御する制御部とを備え、
複数の前記遮光カーテンは互いに高さ位置を異にし、
各前記遮光カーテンは、太陽光を遮断する遮光部と、
太陽光を遮断しないか、又は前記遮光部よりも光透過率が高い透光部であって、通気性を備えた前記透光部とを備え、
複数の前記遮光カーテンは互いに高さ位置を異にし、
前記制御部は、前記開閉手段を制御して、複数の前記遮光カーテンの相対位置を変化させることにより、遮光率を調節可能に構成されたことを特徴とする栽培施設の遮光システム。
【請求項2】
作物に照射される光量が、その作物の光飽和点を上回る場合には、制御部は、遮光率を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の栽培施設の遮光システム。
【請求項3】
さらに、複数の照度計を備え、
複数の前記照度計が、栽培施設の各栽培区画に照射される光の量を測定可能に配置され、
いずれかの栽培区画の光量が、設定値を上回る場合に、前記制御部は、その栽培区画へ照射される光の遮光率を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の栽培施設の遮光システム。
【請求項4】
前記設定値として、栽培区画ごとに、異なる値を設定可能に構成されたことを特徴とする請求項3に記載の栽培施設の遮光システム。
【請求項5】
前記遮光部の少なくとも一部が太陽電池モジュールにより構成されたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の栽培施設の遮光システム。
【請求項6】
さらに、複数の照度計と、複数の前記遮光カーテンの下方に設けられた照明装置であって、LED管を有する前記照明装置とを備え、
複数の前記照度計が、栽培施設の各栽培区画に照射される光の量を測定可能に配置され、
少なくとも一つの栽培区画に照射される光量が所定値以下である場合には、光量が所定値以下である栽培区画に、前記照明装置により光を照射することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の栽培施設の遮光システム。
【請求項7】
前記照明装置は、栽培施設の栽培区画の場所に合わせて移動可能に構成されたことを特徴とする請求項6に記載の栽培施設の遮光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培施設内を遮光する遮光システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遮光カーテンを用いて、ビニルハウスなどの栽培施設内で栽培される作物に照射される太陽光を遮断し、葉焼けなどの品質の低下を防止できる遮光システムが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、作物の上方に設けられた遮光シートを、モータの駆動により開閉可能に構成したものが開示されている。
【0004】
このような遮光システムに用いられる遮光カーテンの遮光率は、通常、およそ20%ないし50%ほどであり、中には100%近く遮光可能な遮光カーテンが使用されている場合もある。また、栽培施設内へ照射される光の総量は、遮光カーテンの閉じ具合(閉じ量)により、調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、遮光カーテンを部分的に閉じた場合でも、特に夏場において、遮光カーテンにより覆われなかった作物には、太陽光が大量に照射されるため、葉焼けなどの品質の低下や、水枯れが生じることがあった。
【0007】
すなわち、遮光カーテンの閉じ具合により、栽培施設内へ照射される光の総量は調節可能であるが、遮光カーテンの遮光率は各遮光カーテンによって一定であり、遮光カーテンの閉じ具合によって、作物に照射される光量を調節することは困難であった。
【0008】
また、遮光カーテンを作物の上方に広げる(閉じる)と、暖められた空気が、遮光カーテンに妨げられて上昇せず、遮光カーテンの下方、すなわち、作物の近傍に熱が籠ってしまうという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、遮光率を調節可能で、かつ、暖められた空気を上方に通気することが可能な栽培施設の遮光システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のかかる目的は、
作物の上方を覆う複数の遮光カーテンであって、上下方向に並べて配置された複数の前記遮光カーテンと、
複数の前記遮光カーテンを各々独立して開閉可能な開閉手段と、
前記開閉手段を制御する制御部とを備え、
複数の前記遮光カーテンは互いに高さ位置を異にし、
各前記遮光カーテンは、太陽光を遮断する遮光部と、
太陽光を遮断しないか、又は前記遮光部よりも光透過率が高い透光部であって、通気性を備えた前記透光部とを備え、
複数の前記遮光カーテンは互いに高さ位置を異にし、
前記制御部は、前記開閉手段を制御して、複数の前記遮光カーテンの相対位置を変化させることにより、遮光率を調節可能に構成されたことを特徴とする栽培施設の遮光システムによって達成される。
【0011】
本発明によれば、高さ位置を異にする複数の遮光カーテンがそれぞれ、透光部と遮光部とを有しているため、制御部の制御に基づき、複数の遮光カーテンの相対位置を変化させることにより、複数の遮光カーテンによる遮光率を調節することができる。
【0012】
また、本発明によれば、高さ位置を異にする複数の遮光カーテンの各透光部が、通気性を備えているため、作物を遮光しながらも、複数の遮光カーテンの下方の暖められた空気を、各透光部を介して複数の遮光カーテンの上方へ通気させることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、
作物に照射される光量が、その作物の光飽和点を上回る場合には、制御部は、遮光率を上昇させる。
【0014】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作物に照射される光量が、その作物の光飽和点を上回る場合には、遮光率を上昇させるように構成されているから、栽培施設内の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様においては、
さらに、複数の照度計を備え、
複数の前記照度計が、栽培施設の各栽培区画に照射される光の量を測定可能に配置され、
いずれかの栽培区画の光量が、設定値を上回る場合に、前記制御部は、その栽培区画へ照射される光の遮光率を上昇させる。
【0016】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、作物の光合成を促進しつつ、各栽培区画へ照射される光の量を最小限に抑えることができるから、栽培施設内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記設定値として、栽培区画ごとに、異なる値を設定可能に構成されている。
【0018】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、制御部により遮光率が上昇されるか否かの光量の閾値を、栽培区画ごとに設定することができるから、同一の栽培施設内において、作物の種類ごとに、照射される光の量をコントロールすることができる。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記遮光部の少なくとも一部が太陽電池モジュールにより構成されている。
【0020】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、遮光部が太陽電池モジュールにより形成されているから、遮光カーテンの下方の作物を遮光しながらも、発電を行うことができる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
さらに、複数の照度計と、複数の前記遮光カーテンの下方に設けられた照明装置であって、LED管を有する前記照明装置とを備え、
複数の前記照度計が、栽培施設の各栽培区画に照射される光の量を測定可能に配置され、
少なくとも一つの栽培区画に照射される光量が所定値以下である場合には、光量が所定値以下である栽培区画に、前記照明装置により光を照射する。
【0022】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、複数の遮光カーテンにより太陽光を遮り、栽培施設内の温度上昇の防止を図った場合に、光量が不足したときでも、照明装置により、光量が不足した栽培区画の光量を補うことができる。また、照明装置がLED管を有するものであるため、栽培施設内の温度上昇を抑制することができる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、
前記照明装置は、栽培施設の栽培区画の場所に合わせて移動可能に構成されている。
【0024】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、照明装置を栽培区画の場所に合わせて移動させることができるから、栽培区画ごとに照明装置を設ける必要がなく、照明装置の設備本数を大幅に減らすことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、遮光率を調節可能で、かつ、暖められた空気を上方に通気することが可能な栽培施設の遮光システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる遮光システムおよび遮光システムが適用された栽培施設を示す構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された遮光システムの遮光カーテンが閉じられた状態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された遮光システムの遮光カーテンが開かれた状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された遮光システムの制御系、検出系、入力系、駆動系、及び表示系のブロックダイアグラムである。
【
図5】
図5は、制御部Cによる遮光カーテンの移動制御を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、日射量が多いときの遮光カーテンの配置を示す模式図である。
【
図7】
図7は、日射量が少ないときの遮光カーテンの配置を示す模式図である。
【
図8】
図8は、東側の栽培ベッドの作物のみが複数の遮光カーテンの遮光部により遮光される様子を示す模式図である。
【
図9】
図9は、西日を遮断するように3つの遮光カーテンが配置された状態を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる遮光システムの制御部による遮光カーテンの移動制御を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる遮光システムの遮光カーテンが閉じられた状態を示す模式的平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の好ましい実施態様にかかる照明システムおよび照明システムが適用された栽培施設の全体を示す略正面図である。
【
図14】
図14は、
図13に示されたA-A線に沿った移動機構の近傍を右側から見た部分断面図である。
【
図15】
図15は、
図12に示された照明システムの制御系、通信系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図16】
図16は、照明装置の停止位置間の移動と光の照射にかかるフローチャートである。
【
図17】
図17は、本発明の他の好ましい実施態様に係る照明システムの制御系、通信系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【
図18】
図18は、
図17に示された照明システムが設けられた栽培施設の内部の略斜視図である。
【
図19】
図19は、栽培ベッドの配置と、照明装置および筐体の移動順序を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる遮光システム1および遮光システム1が適用された栽培施設2を示す構成図である。
【0029】
栽培施設2は、全体を覆うハウジング3と、ハウジング3の上部に設けられた開閉式の天窓10を備え、栽培施設2内には、作物4が収容された栽培区画としての栽培ベッド45が設けられている。
【0030】
ハウジング3は、光透過性のシート、板材等から構成された一般的なものであって、太陽光Lを屋内に取り込み可能となっている。
【0031】
本実施態様にかかる遮光システム1は、各栽培ベッド5の近傍に設けられたセンサユニット17と、作物4の上方に設けられた巻取り式の3つの遮光カーテン5ないし7と、3つの遮光カーテン5ないし7を東西方向に開閉及び移動する3組の開閉機構14と、栽培施設2の近傍に設けられ、炭酸ガスを貯留するボンベ39並びにボンベ39から炭酸ガスを作物4の近傍へ定量的に供給する炭酸ガス供給管31と、炭酸ガス供給管31を開閉する電磁弁46(
図4参照)と、3つの遮光カーテン5ないし7の開閉及び移動並びに炭酸ガスの供給を制御する制御部C(
図2参照)を備えている。
【0032】
本実施態様においては、遮光カーテン5ないし7は、互いに高さ位置を異にして配置されている点を除き、同一に構成されており、それぞれに設けられた同一の構成の開閉機構14によって、東西方向に開閉し、又は単に移動することができる。なお、
図1には、遮光カーテン5,6が閉じられ、遮光カーテン7が開かれた状態が示されている。
【0033】
以下に、遮光カーテン5と、遮光カーテン5に設けられた開閉機構14を例に、3つの遮光カーテン5ないし7及びその開閉について説明を加える。
【0034】
図2は、
図1に示された遮光システム1の遮光カーテン5が閉じられた状態を示す平面図であり、
図3は、
図1に示された遮光システム1の遮光カーテン5が開かれた状態を示す平面図である。
【0035】
なお、
図3には、遮光カーテン5およびその開閉機構14の下方に位置する作物4が破線により示されているが、遮光カーテン6,7およびそれらの開閉機構14については便宜上省かれている。
【0036】
遮光カーテン5は、水平方向に広げられた状態で略矩形枠状に形成された枠部11と、枠部11に東西方向に並ぶように取り付けられた4つの遮光部12と、遮光部12同士の間に形成された空隙(スリット)である透光部13を備えている。すなわち、透光部13は、枠部11と、複数の遮光部12により画定された空隙である。遮光部12は、
図2において、細かい点々が施された箇所を参照されたい。
【0037】
本実施態様においては、各遮光部12はポリエチレンにより形成されており、太陽光Lを30%遮光(遮断)する生地である。東西方向両端に位置する2つの遮光部12は、東西方向中央部に位置する2つの遮光部12よりも、東西方向に大幅に長く構成されている(
図9参照)。
【0038】
一方、すべての透光部13は東西方向に0.75mの幅に構成されており、透光部13同士の間隔は、栽培ベッド45の東西方向の間隔と略同一の幅に構成されている。
【0039】
遮光カーテン5の開閉機構14は、栽培施設2内の西側の端部に設けられた始端側巻取り軸8と、東側の端部に設けられた終端側巻取り軸9と、始端側巻取り軸8を回転駆動する始端側モータ15と、終端側巻取り軸9を回転駆動する終端側モータ16と、始端側モータ15及び終端側モータ16によって巻き取られる2本のワイヤー18を備えている。
【0040】
遮光カーテン5は、開閉機構14の2本のワイヤー18に、複数の紐19により取り付けられている(
図2参照)。
【0041】
2本のワイヤー18はそれぞれ、始端側巻取り軸8及び終端側巻取り軸9の外周部に取り付けられており、始端側モータ15及び終端側モータ16が同期して駆動されることにより、2本のワイヤー18が、始端側巻取り軸8又は終端側巻取り軸9に巻取られる。
【0042】
すなわち、遮光カーテン5が開かれた状態では、遮光カーテン5は始端側巻取り軸8に2本のワイヤー18とともに巻き付けられており、各遮光カーテン5,6が閉じられる(作物4の上方に広げられる)ときに、制御部Cの出力信号に基づき、始端側モータ15及び終端側モータ16が同期して駆動される。
【0043】
その結果、始端側巻取り軸8及び終端側巻取り軸9が
図1において反時計回りに回転され、2本のワイヤー18が始端側巻取り軸8から解放されるとともに、終端側巻取り軸9に巻き取られる。同時に、始端側巻取り軸8に巻き付けられていた遮光カーテン5が2本のワイヤー18とともに東側へ引き出され、上面視において、
図2に示されるように、始端側巻取り軸8と終端側巻取り軸9との間に広げられる(遮光カーテン5が閉じられる)。
【0044】
一方、遮光カーテン5が開かれる(作物4の上方から退避される)ときには、制御部Cの出力信号に基づき、始端側モータ15及び終端側モータ16が同期して駆動される。
【0045】
その結果、始端側巻取り軸8及び終端側巻取り軸9が
図1において時計回りに回転され、2本のワイヤー18が終端側巻取り軸9から解放されるとともに、始端側巻取り軸8に巻き取られる。同時に、始端側巻取り軸8と終端側巻取り軸9との間に広げられていた遮光カーテン5が、2本のワイヤー18とともに始端側巻取り軸8に巻き取られる。本実施態様においては、遮光カーテン5が紐19によりワイヤー18に取り付けられており、遮光カーテン5が始端側巻取り軸8に巻き取られるときにも、紐19によりワイヤー18と遮光カーテン5とが南北方向に離間されるので、ワイヤー18が遮光カーテン5に絡んでしまう事態を防止できる。
【0046】
なお、実際には、遮光カーテン5の4つの遮光部12のうち、東西方向外側に位置する2つの幅広の遮光部12のうちの一方が、始端側巻取り軸8又は終端側巻取り軸9から解放された(軸に巻き取られていない)ときには、遮光カーテン5の東西方向の全幅が2本の巻取り軸8,9間の距離より広いため、
図9に示されるように、他方の幅広の遮光部12が、終端側巻取り軸9又は始端側巻取り軸8に巻き取られていることとなるが、
図2においては、枠部11およびすべての遮光部12の形状を明らかにするため、東西方向外側に位置する2つの幅広の遮光部12が、いずれも始端側巻取り軸8又は終端側巻取り軸9から解放された状態が示されている。
【0047】
以上、遮光カーテン5の開閉について説明を加えたが、他の遮光カーテン6,7についても、遮光カーテン5と同様にして、東西方向に開閉することができる。
【0048】
なお、制御部Cは、3つの遮光カーテン5ないし7を作物4の上方に広げ(閉じた状態、
図2参照)、又は作物4の上方から退避させる(開いた状態、
図3参照)のみならず、始端側モータ15及び終端側モータ16の駆動により、各遮光カーテン5,6を微細に(ごく短い距離だけ)東西方向にずらし(移動させ)、3つの遮光カーテン5ないし7全体としての遮光率を調節することも可能に構成されている。
【0049】
すなわち、本実施態様にかかる遮光システム1においては、3つの遮光カーテン5ないし7の各遮光部12に、遮光率が30%の素材が用いられているため、3つの遮光カーテン5ないし7がいずれも閉じられている状態においても、3つの遮光カーテン5ないし7の互いの(東西方向の)相対位置を変化させることにより、以下の4つの遮光率のレベルの状態(場所)をそれぞれ部分的に形成することができる。
(1)0%
太陽SN側から見たときに、3つの遮光カーテン5ないし7の透光部13が重なるように、各遮光カーテン5ないし7が配置(移動)された場合。この場合には、3つの遮光カーテン5ないし7の下方に、100%の太陽光Lが照射される部分が形成される。
(2)30%
太陽SN側から見たときに、3つの遮光カーテン5ないし7のうち、1つの遮光カーテンの遮光部12と、他の2つの遮光カーテンの透光部13が重なるように、各遮光カーテン5ないし7が配置された場合。この場合には、3つの遮光カーテン5ないし7の下方に、約70%の太陽光Lが照射される部分が形成される。
(3)51%
太陽SN側から見たときに、3つの遮光カーテン5ないし7のうち、2つの遮光カーテンの遮光部12と、他の1つの遮光カーテンの透光部13が重なるように、各遮光カーテン5ないし7が配置された場合。
この場合には、100%の太陽光Lが、1つの遮光カーテンの遮光部12により30%遮光(遮断)され、70%の光量となった太陽光Lが、さらに、他の1つの遮光カーテンの遮光部12により30%遮光された状態(元々の太陽光Lの光量のうちの21%がさらに遮断された状態)で、作物4へ照射されるため、3つの遮光カーテン5ないし7の下方に、元々の太陽光Lの光量のうちの約49%が照射される部分が形成される。
(4)65.7%
太陽SN側から見たときに、3つの遮光カーテン5ないし7の遮光部12が重なるように、各遮光カーテン5ないし7が配置(移動)された場合。
この場合には、100%の太陽光Lが、2つの遮光カーテンの遮光部12により51%遮光(遮断)され、元々の太陽光Lのうちの49%となった光が、さらに、他の1つの遮光カーテンの遮光部12により30%遮光された状態(元々の太陽光Lの光量のうちの14.7%がさらに遮断された状態)で、作物4へ照射されるため、3つの遮光カーテン5ないし7の下方に、元々の太陽光Lの光量のうちの約34.3%が照射される部分が形成される。
【0050】
図4は、
図1に示された遮光システム1の制御系、検出系、入力系、駆動系、及び表示系のブロックダイアグラムである。
【0051】
図4に示されるように、遮光システム1の制御系は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部23と、主記憶装置及び補助記憶装置を有する記憶部24と、現在時刻を示す時刻情報を取得する計時部20を備えている。
【0052】
記憶部24には、遮光システム1を制御する種々のプログラムと、栽培施設1の緯度・経度を含む位置情報、日の出、日の入り時刻を含む日時情報、太陽SNの方位及び高度(以下、「太陽SNの位置」という。)との情報を含む天文情報、各遮光カーテン5ないし7の高さ位置や、遮光部12及び透光部13の幅、ワイヤー18のうち、遮光カーテン5ないし7が取り付けられた部分の(
図2参照)位置についての情報、栽培対象となる作物にかかる照度情報(光飽和点等)などの種々の情報が格納されている。
【0053】
これらの情報は、遮光率を調節するため各遮光カーテン5ないし7を東西方向に移動(スライド)させる際の各始端側モータ15、終端側モータ16の制御量の算出に用いられる。
【0054】
図4に示されるように、遮光システム1の検出系は、各開閉機構14の始端側モータ15の回転位置により各遮光カーテン5ないし7の東西方向の位置(開閉量)を検出する開閉センサ28ないし30と、栽培区画としての各栽培ベッド45の炭酸ガス濃度を検出する複数の炭酸ガス濃度センサ25と、栽培区画としての各栽培ベッド45に照射される光の量を計測する複数の照度計26と、各栽培ベッド45の温度を検出する複数の温度センサ27を備えている。
【0055】
炭酸ガス濃度センサ25、照度計26及び温度センサ27は、作物4の各栽培ベッド45に設けられたセンサユニット17(
図1参照)を構成している。
【0056】
図4に示されるように、遮光システム1の入力系及び表示系として、制御部Cを内蔵する制御盤に設けられた制御開始スイッチ38と、開スイッチ32ないし34及び閉スイッチ35ないし37と、入力スイッチ21と、液晶ディスプレイ40を備えている。
【0057】
各開スイッチ32ないし34は、(作業者が)押圧操作している間に限り、各遮光カーテン5ないし7を、各々独立して、西側(始端側巻取り軸8の側)へ移動させるものである。また、各閉スイッチ35ないし37は、(作業者が)押圧操作している間に限って、各遮光カーテン5ないし7を、各々独立して、東側(終端側巻取り軸9の側)へスライドさせるものである。
【0058】
作業者は、入力スイッチ21を用いて、栽培対象となる作物にかかる照度情報や、作物4の配置位置についての情報を記憶部24に格納することができる。
【0059】
図4に示されるように、遮光システム1の駆動系は、各遮光カーテン5,6に設けられた開閉機構14の始端側モータ15及び終端側モータ16と、炭酸ガス供給管31を開閉する電磁弁46を備えている。
【0060】
以上のように構成された本実施態様にかかる遮光システム1においては、午前に制御開始スイッチ38が押圧操作され、制御部Cによる各遮光カーテン5ないし7の移動の制御が開始されると、以下のようにして、記憶部24に格納された太陽SNの位置および作物4の位置と、各栽培ベッド45の近傍にて照度計26により計測される積算光量並びに炭酸ガス濃度センサ25により検出される炭酸ガス濃度とに基づき、遮光カーテン5ないし7が各々独立して東西方向に微細に移動され、作物4および栽培施設2内に照射される太陽光Lの光量が調節される。
【0061】
図5は、制御部Cによる遮光カーテン5ないし7の移動制御を示すフローチャートである。
【0062】
図6は、日射量が多いときの遮光カーテン5ないし7の配置を示す模式図であり、
図7は、日射量が少ないときの遮光カーテン5ないし7の配置を示す模式図である。
【0063】
また、
図8は、東側の栽培ベッド45の作物4のみが複数の遮光カーテンの遮光部12により遮光される様子を示す模式図であり、
図9は、西日を遮断するように3つの遮光カーテン5ないし7が配置された状態を示す模式図である。
【0064】
なお、
図1、
図6及び
図7においては、太陽光Lの照射量の多少が、矢印の大きさ(線の太さ)で示されており、矢印の大きさが大きい位置では、照射量(遮光カーテンの透過量)が多い。
【0065】
制御開始スイッチ38が押圧操作されると、まず、制御部Cは、3つの遮光カーテン5ないし7が開けられた状態で、各栽培ベッド45に設けられた照度計26(
図4参照)により検出された栽培施設2内の照度が、所定の値以上であるか否かを判定する(ステップs1)。
【0066】
判定の結果、所定の値以上である場合には、
図6に示されるように、制御部Cは、作物4に照射される太陽光Lが、1つの遮光カーテン6のみによって遮光され、かつ、栽培施設2内の作物4以外の場所に照射される太陽光Lが、2つ又は3つの遮光カーテン5ないし7の各遮光部12によって遮光されるように、各遮光カーテン5ないし7を移動させ、その状態を保持する(ステップs2)。なお、ここにおける「状態を保持する」とは、「各遮光カーテン5ないし7をその場に保持する」という意味ではなく、太陽の位置の変化に合わせて、3つの遮光カーテン5ないし7をそれぞれ定期的に、又は連続的に移動させ続け、「作物4に照射される太陽光Lが、1つの遮光カーテン6のみによって遮光され、かつ、栽培施設2内の作物4以外の場所に照射される太陽光Lが、2つ又は3つの遮光カーテン5ないし7の遮光部12によって遮光される状態を保持する」という意味である。
【0067】
このように、日差しが強い(照度が高い)場合には、1つの遮光カーテン6を通過した光L(約70%の太陽光L)が各栽培ベッド45の作物4に照射されるため、特に夏場の作物4の水枯れや葉焼けを防止することができる。
【0068】
また、栽培施設2内の作物4以外の場所に照射される太陽光Lは、2枚又は3つの遮光カーテン5ないし7により、約51%又は65.7%遮光(遮断)された状態で、栽培施設2内の床等に届くため、栽培施設2内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0069】
さらに、高さ位置を異にして配置された3つの遮光カーテン5ないし7にはそれぞれ、空隙(スリット)により形成された透光部13が設けられているため、遮光カーテン7の下方に存在する、暖められた空気を、3つの遮光カーテン5ないし7の透光部13から上方へ逃がし、
図1に示される天窓10から栽培施設2の外へ排出することができる。したがって、栽培施設2内の温度を下げることができ、ヒートポンプなどの空調機器の使用を省くことができる。
【0070】
一方、判定の結果、栽培施設2内の照度が、所定の値未満である場合には、制御部Cは、
図7に示されるように、作物4に照射される太陽光Lが、3つの遮光カーテン5ないし7の各透光部13を通過して作物4に100%照射され、かつ、栽培施設2内の作物4以外の場所に照射される太陽光Lが、3つの遮光カーテン5ないし7の各遮光部12によって遮光(遮断)されるように、3つの遮光カーテン5ないし7を移動させ(を配置し)、その状態を保持する(ステップs3)。
【0071】
なお、上記と同様に、ここにいう「状態を保持する」とは、「作物4に照射される太陽光Lが、3つの遮光カーテン5ないし7の各透光部13を通過して作物4に100%照射され、かつ、栽培施設2内の作物4以外の場所に照射される太陽光Lが、3つの遮光カーテン5ないし7の各遮光部12によって遮光(遮断)される」状態を保持するという意味である。
【0072】
このように、曇りなどにより日差しが弱い(照度が低い)場合には、太陽光Lがダイレクトに作物4に照射されるから、3つの遮光カーテン5ないし7が上方に広げられた状態でも、作物4の光合成が阻害されることがない。
【0073】
図7に示されるように、栽培施設2内の作物4以外の場所に照射される太陽光Lは、3つの遮光カーテン5ないし7の遮光部12により3度にわたって遮光され、約65.7%が遮断された状態で、栽培施設2内の床等に届くため、栽培施設2内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0074】
こうして、3つの遮光カーテン5ないし7を配置する(移動させる)と、制御部Cは、各栽培ベッド45の積算光量又は炭酸ガス濃度に基づき、各栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達しているか否かを判定する(ステップs4)。
【0075】
具体的には、各栽培ベッド45の近傍に設けられた照度計26により検出された各栽培ベッド45の照度の積算値である積算光量がそれぞれ、作物4の光飽和点である所定の値以上であるか否かを判定し、積算光量が所定の値以上である栽培ベッド45の作物4は光飽和点に達していると判定する。
【0076】
たとえば、作物4としてイチゴが栽培されている場合には、イチゴの光飽和点が3万ないし4万ルクスほどであるため、積算光量が3万5千ルクス以上であるか否かを判定するように構成することができる。
【0077】
また、積算光量が所定の値未満である栽培ベッド45については、制御部Cは、さらに、かかる栽培ベッド45に設けられた炭酸ガス濃度センサ25により検出される栽培ベッド45の炭酸ガス濃度がそれぞれ、所定時間前の濃度に比して増加しているか否かを判定する。炭酸ガス濃度が増加している栽培ベッド45の作物4は、炭酸ガスの吸収量が減少しており、すでに光飽和点に達していると認められるので、そのように判定する。
【0078】
積算光量または炭酸ガス濃度に基づき、光飽和点に達していると判定された栽培ベッド45(の作物4)については、その旨が記憶部24に格納される。
【0079】
こうして、栽培ベッド45の積算光量又は炭酸ガス濃度に基づき、光飽和点に達した否かを判定した結果、光飽和点に達していると判定された栽培ベッド45の作物4がある場合には、制御部Cは、かかる(該当する)栽培ベッド45の作物4に照射される太陽光Lが、複数の遮光カーテンの各遮光部12で遮光されるように、3つの遮光カーテン5ないし7を移動させ、太陽SNの位置の変化に合わせてその状態を保持する(ステップs5)。換言すれば、制御部Cは、該当する栽培ベッド45の作物4に照射される太陽光Lが、複数の遮光カーテンの各遮光部12で遮光されるように、3つの遮光カーテン5ないし7の相対位置を変化させ、該当する栽培ベッド45の作物4に照射される光量を下げる方向に調節する。
【0080】
たとえば、日差しが強く、3つの遮光カーテン5ないし7が
図6に示されるように配置された状態で、判定の結果、最も東側(図面右側)に位置する栽培ベッド45の作物4のみが光飽和点に達している場合には、遮光カーテン7が西側にスライド(移動)され、
図8に示されるように、最も東側の栽培ベッド45の作物4が2つの遮光カーテン6,7の各遮光部12により遮光され、かつ、他の栽培ベッド45の作物4が1つの遮光カーテン6の遮光部12により遮光されるように、3つの遮光カーテン5ないし7が配置され、太陽の位置の変化に合わせてその状態が保持される。この場合には、最も東側の栽培ベッド45の作物4は、2つの遮光カーテン6,7の各遮光部12により遮光されるので、元々の太陽光Lの光量のうちの51%がカットされた光が照射されることとなる。
【0081】
こうして、栽培ベッド45の積算光量又は炭酸ガス濃度に基づき、光飽和点に達したと認められる栽培ベッド45の作物4を複数の遮光カーテンの遮光部12で遮光すると(
図8参照)、制御部Cは、記憶部24に格納された、すでに光飽和点に達している栽培ベッド45(の作物4)に関する情報を読み出し、すべての栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達したか否かを判定する(ステップs6)。
【0082】
判定の結果、作物4が光飽和点に達していない栽培ベッド45が残っている場合には、すべての栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達するまで、(積算光量又は炭酸ガス濃度に基づく)各栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達したか否かの判定と、光飽和点に達した栽培ベッド45の作物4の複数の遮光カーテンの遮光部12による遮光と、すべての栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達したか否かの判定とが繰り返される。
【0083】
これに対して、すべての栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達している場合には、制御部Cは、各遮光カーテン5ないし7の遮光部12により作物4の上方が覆われる面積(始端側巻取り軸8と終端側巻取り軸9との間に広がる面積)がそれぞれ最大となるように、3つの遮光カーテン5ないし7を配置する(ステップs7)。
【0084】
具体的には、3つの遮光カーテン5ないし7の4つの遮光部12のうち、東西方向外側に位置する幅広の遮光部12が、各開閉機構14の巻取り軸8又は9から完全に解放されるように、3つの遮光カーテン5ないし7が配置される。
【0085】
ここに、本実施態様においては、光飽和点に達した時間が午後であれば、太陽光Lが西側から射すため、
図9に示されるように、3つの遮光カーテン5ないし7のうちの2つの遮光カーテンの西側の端部に位置する幅広の遮光部12(
図2参照)が、始端側巻取り軸8から解放され、他の1つの遮光カーテンの東側の端部に位置する幅広の遮光部12が、終端側巻取り軸9から解放されるように、3つの遮光カーテン5ないし7が配置(移動)される。
【0086】
一方、光飽和点に達した時間が午前であれば、太陽光Lが東側から射すため、3つの遮光カーテン5ないし7のうちの2つの遮光カーテンの東側の端部に位置する幅広の遮光部12(
図2参照)が、終端側巻取り軸9から解放され、他の1つの遮光カーテンの西側の端部に位置する幅広の遮光部12が、始端側巻取り軸8から解放されるように、3つの遮光カーテン5ないし7が配置(移動)される。さらに、その後に、午後になると、
図9に示される配置に変更される。
【0087】
なお、本実施態様においては、各遮光カーテン5ないし7の4つの遮光部12のうち、東西方向外側に位置する2つの幅広の遮光部12の一方が全面的に巻取り軸8又は9から解放された状態においても、各ワイヤー18において少なくとも1つの透光部13の南北方向に位置する部分が、巻取り軸8又は9から解放された状態となるように(換言すれば、透光部13のすべてが巻取り軸8又は9に巻かれた状態でなく、作物4の上方にも一部の透光部13が位置するように)3つの遮光カーテン5ないし7の各幅広の遮光部12の幅が設計されている。
【0088】
したがって、東西一方の幅広の遮光部12が全面的に巻取り軸8又は9から解放された状態においても、3つの遮光カーテン5ないし7の下方の暖められた空気を、3つの遮光カーテン5ないし7の透光部13から上方へ逃がし、
図1に示される天窓10から栽培施設2の外へ排出することができる。したがって、栽培施設2内の温度を下げることができ、ヒートポンプなどの空調機器の仕様を省くことができる。
【0089】
以上のように構成された本実施態様にかかる遮光システム1においては、制御部Cは、さらに、温度センサ27に基づき、栽培施設2内の温度が所定の温度以上である場合にも、
図9に示されるように、各遮光カーテン5ないし7の遮光部12により覆われる面積(始端側巻取り軸8と終端側巻取り軸9との間に遮光部12が延びる面積)がそれぞれ最大となるように、3つの遮光カーテン5ないし7を配置するように構成されている。
【0090】
このように構成することにより、日射量や作物4の光合成量に拘わらず、作物4の上方を最大限に覆うことができるから、暑い日に、栽培施設内の温度を低下させることができる。
【0091】
本実施態様によれば、互いに高さ位置を異にする3つの遮光カーテン5ないし7がそれぞれ、透光部13と遮光部12とを有しているため、制御部Cの制御に基づき、3つの遮光カーテン5ないし7の(遮光部12と透光部13とが並べられた方向である)東西方向の相対位置を変化させることにより、各栽培ベッド45へ照射される太陽光Lの遮光率を調節することができる。
【0092】
また、遮光ネットや遮光シートと呼ばれるものを含む従来の遮光カーテンにおいては、スリットが形成されているものでも、スリットの大きさが数mm程度と通気性の悪い素材が用いられており、栽培施設内の作物の近傍に暖められた空気が滞ってしまうという問題があったが、本実施態様によれば、高さ位置を異にする3つの遮光カーテン5ないし7の各透光部13が、東西方向の幅0.75mの空隙からなり、通気性が良好であるため、作物4を遮光しながらも、3つの遮光カーテン5ないし7の下方の暖められた空気を、各透光部13を介して3つの遮光カーテン5ないし7の上方へ通気させることができる。
【0093】
さらに、本実施態様によれば、各遮光カーテン5ないし7の透光部13が、空隙により形成されているから、各遮光カーテン5ないし7の重量を大幅に軽くすることができるとともに、安価に製作することが可能である。また、各遮光カーテン5ないし7を開いたとき(始端側巻取り軸8に巻き取ったとき)に、空隙からなる透光部13の存在により、巻き取られた各遮光カーテン5ないし7の容積を小さく抑えることができるから、巻き取られた各遮光カーテン5ないし7による影の形成を大幅に抑制することができる。
【0094】
図10は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる遮光システム1の制御部Cによる遮光カーテン5ないし7の移動制御を示すフローチャートである。
【0095】
図10に示されるように、日差しの強さに応じて、3つの遮光カーテン5ないし7が配置されると(ステップs2またはs3)、制御部Cは、各栽培ベッド45の作物4に照射される光量が、設定値(作物4の光飽和点)を上回るか否かを判定する(ステップs4)。
【0096】
具体的には、制御部Cは、照度計26により測定される各栽培ベッド45に照射される光の量(積算光量ではない)が、各栽培ベッド45ごとに予め設定された値を上回るか否かを判定する(ステップs4)。
【0097】
本実施態様においては、制御開始スイッチ38が押圧操作されて制御部Cによる各遮光カーテン5ないし7の移動の制御が開始されるのに先立って、入力スイッチ21が操作されることにより、各栽培ベッド45ごとに、異なる値(光飽和点の値であり、照度情報)を設定可能に構成されている。
【0098】
具体的には、作業者は、入力スイッチ21を操作することにより、栽培ベッド45ごとに、栽培される作物4の種類を設定可能に構成されており、作物4の種類を指定すると、各栽培ベッド45のそのときどきの炭酸ガス濃度に対応するその作物4の光飽和点の値が閾値として設定され、照度計26により測定される各栽培ベッド45に照射される光の量が、各栽培ベッド45のそのときの炭酸ガス濃度に対応するその作物4の光飽和点の値(設定値)を上回るか否かが、ステップs4において制御部Cにより判定される。すなわち、本実施態様においては、各栽培ベッド45ごとに作物の種類を指定することにより設定された値が、そのときどきの炭酸ガス濃度により自動的に変動される。なお、炭酸ガス濃度に対応する各作物の光飽和点の値は、記憶部24に格納されている他、入力スイッチ21を用いて、新たに記憶部24に格納することもできる。
【0099】
しかしながら、作業者が入力スイッチ21を操作することにより、光飽和点の値(固定の値)を直接設定可能に構成してもよい。すなわち、たとえば、(別実施例ではあるが)
図6において、最も東側に位置する栽培ベッド45に作物4としてイチゴが栽培され、西側の2つの栽培ベッド45に作物4としてトマトが栽培されている場合に、最も東側に位置する栽培ベッド45に、イチゴの光飽和点である3万5千(ルクス)という固定値を設定し、西側の2つの栽培ベッド45にそれぞれ、トマトの光飽和点である7万(ルクス)という固定値を設定することができる。
【0100】
判定の結果、各栽培ベッド45に照射される光量が、各栽培ベッド45ごとに設定された値を上回る栽培ベッド45がある場合には、かかる(該当する)栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達していると認められるので、制御部Cは、かかる(該当する)栽培ベッド45に照射される光量を下げるように3つの遮光カーテン5ないし7を配置し、太陽SNの位置の変化に合わせて、その状態を保持する(ステップs5)。
【0101】
たとえば、最も東側に位置する栽培ベッド45に作物4としてイチゴが栽培され、西側の2つの栽培ベッド45にトマトが栽培されている場合(
図6参照)で、最も東側に位置する栽培ベッド45のみに、予め設定された値を上回る光量の光が照射されている場合には、制御部Cは、最も東側に位置する栽培ベッド45に照射される光量を下げるように、3つの遮光カーテン5ないし7を移動させる(
図6参照)。
【0102】
これに対し、判定の結果、各栽培ベッド45に照射される光量が各栽培ベッド45ごとに設定された値を上回る栽培ベッド45がない場合には、照度計26の出力信号に基づく判定が繰り返される。
【0103】
なお、本実施態様においては、上述のように、照度計26により測定される各栽培ベッド45の作物4に照射される光の量が、設定された光飽和点の値に達している場合には、その栽培ベッド45の作物4が(実際に)光飽和点に達している(必要量よりも太陽光Lが多く照射されている)とみなして、その栽培ベッド45に照射される光量を下げるように構成されているが、炭酸ガス濃度センサ25により検出される各栽培ベッド45の作物4の炭酸ガス吸収量に基づき、各栽培ベッド45の作物4に照射される光量が、作物4の光飽和点を上回っているか否か(各栽培ベッド45の作物4が光飽和点に達しているか否か)を判定し、照射される光量が上回っている栽培ベッド45に照射される光量を下げるように構成してもよい。照度計26、炭酸ガス濃度センサ25のいずれの出力信号によっても、作物4が光飽和点に達しているか否かを判定することができる。なお、照射される光量が光飽和点を上回る栽培ベッド45の光量を下げる理由は、光飽和点を上回る量の光が作物4に照射されても、光合成速度、すなわち、作物4に吸収される炭酸ガスの量が増加しないためである。
【0104】
本実施態様によれば、いずれかの栽培区画(栽培ベッド45)へ照射される光量が、予め設定された作物4の光飽和点を上回る場合に、前記制御部は、その栽培区画へ照射される光の遮光率を上昇させる
また、本実施態様によれば、各栽培区画(栽培ベッド45)ごとに照射される光量を照度計26により測定し、いずれかの栽培区画(栽培ベッド45)の光量が、設定値を上回る場合に、制御部Cは、各遮光カーテン5ないし7を移動させ、その栽培区画(栽培ベッド45)へ照射される光の遮光率を上昇させるように構成されているから、各栽培区画(栽培ベッド45)へ照射される光の量を最小限(最低限)に抑えることができ、栽培施設2内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0105】
さらに、本実施態様によれば、制御部Cにより遮光率が上昇されるか否かの光量の閾値を、栽培区画(栽培ベッド45)ごとに設定することができるから、同一の栽培施設2内において、複数の種類の作物4を栽培する場合に、作物4の種類ごとに、照射される光の量をコントロールすることができる。
【0106】
さらに、本実施態様によれば、各遮光カーテン5ないし7の透光部13が、空隙により形成されているから、各遮光カーテン5ないし7の重量を軽くすることができるとともに、各遮光カーテン5ないし7の下方の暖められた空気を、透光部13を介して、上方に逃がすことができる(前記実施態様ではあるが
図1参照)。
【0107】
図11は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる遮光システム1の遮光カーテン5が閉じられた状態を示す模式的平面図である。
【0108】
図11に示される実施態様においては、以下に記載された事項を除き、
図1ないし
図9に示された実施態様と同様に構成されている。
【0109】
本実施態様にかかる遮光カーテン5は、複数の遮光部12と、略矩形に形成された枠体42と、複数の遮光部12同士、または複数の遮光部と枠体42とによって画定される空隙である複数の透光部13と、枠体42を2本のワイヤー18に連結する連結部材44と、6本の支持部材43を備えている。枠体42、連結部材44および支持部材43はそれぞれ、ワイヤーにより構成されている。
【0110】
本実施態様においては、遮光カーテン5の各遮光部12が、複数の太陽電池モジュール41により形成されており、各遮光部12が略矩形に形成された枠体42に取り付けられている。枠体42には、南北方向に延びる2辺を結ぶように、計6本の支持部材43が延ばされており、各遮光部12は、6本の支持部材43により下方から支持されている。
【0111】
複数の太陽電池モジュール41は、それらの境目部分で折り曲げ可能に互いに連結されており、発電可能な太陽電池モジュールにより形成された遮光部12であっても、
図1ないし
図9に示された前記実施態様と同様に、始端側巻取り軸8または終端側巻取り軸9に巻き取ることができる。
【0112】
また、他の2つの遮光カーテン6,7においては、遮光カーテン5の遮光部12の配置等は同一の状態で、各遮光部12が太陽電池モジュール41に代えて、30%遮光可能に構成されたポリエチレン製の生地のシートによって形成されている。
【0113】
本実施態様においては、
図1ないし
図10に示された各実施態様と同様に、各遮光カーテン5ないし7を東西方向に移動させて開閉することができるとともに、制御部Cの制御に基づき、3つの遮光カーテン5ないし7の東西方向における相対位置を変化させることにより、下方に遮光率(光量)の異なる光の濃淡を形成し、作物4へ照射される太陽光Lの量を調節することができる。
【0114】
また、本実施態様においても、幅数十cmの空隙である透光部13が形成されているから、遮光カーテン5ないし7の下方の暖められた空気を、各遮光カーテン5ないし7の上方へ逃がし、栽培施設内の温度上昇を防止することができる。
【0115】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0116】
例えば、
図1ないし
図11に示された各実施態様においては、遮光システム1は3つの遮光カーテン5ないし7を備えているが、遮光カーテンの数は、2つでも4つ以上でもよい。また、各実施態様において、各遮光カーテン5ないし7の透光部13と遮光部12の大きさは固定であるが、透光部と、遮光部の幅をモータにより調整可能としてもよい。このように構成することにより、季節に応じて、作物の近傍の照度や温度、湿度を調節できる。
【0117】
加えて、
図1ないし
図10に示された各実施態様においては、各遮光カーテン5ないし7が枠部11を備え、各遮光部12がこの枠部11に取り付けられているが、各遮光カーテンが枠部を備えることは必ずしも必要でない。したがって、たとえば、複数の遮光部12を、互いに(東西方向に)間隔を空けた状態で、紐19により2本のワイヤー18に取付けることにより、容易に、遮光部12と透光部13とを有する遮光カーテンを形成することができる。この場合には、複数の遮光部12同士の間の部分(空隙、スリット)が、透光部となる。すなわち、遮光部12同士が連結されていることは必ずしも必要でない。
【0118】
さらに、
図1ないし
図11に示された各実施態様においては、透光部13が空隙により形成されているが、透光部を完全な空隙により形成することは必ずしも必要でなく、遮光部12に比して、透光部の透光率(光透過率)が高く、かつ、通気性を有する素材であればよい。したがって、たとえば、遮光カーテンを、通気性を有する不織布により形成し、透光部の生地を遮光部よりも薄く設計してもよい。なお、透光部を空隙により形成する場合には、その大きさが少なくとも10cm以上あることが望ましい。また、遮光部12については、ポリエチレン等の種々の布や、木、プラスチックシート、薄膜の太陽光パネルなど、様々な素材や部材を用いることができ、また、遮光シートや遮光ネットと呼ばれるものにより形成されてもよい。太陽光パネルを用いる場合には、シースルー型の太陽光パネルを採用してもよい。
【0119】
また、
図1および
図10に示された各実施態様においては、各遮光カーテン5ないし7が、遮光部12と透光部13とが東西方向に連なる連子状に構成されているが、各遮光カーテン5ないし7を連子状に構成することは必ずしも必要でなく、たとえば、市松模様状に透光部と遮光部とを配置した格子を動かすようにしてもよい。
【0120】
さらに、
図1ないし
図11に示された各実施態様においては、遮光カーテン5ないし7をそれぞれ、作物4の上方に、略水平に延びるように構成されているが、各遮光カーテンを、略水平でなく、斜め上方に延びるように配置してもよい。
【0121】
加えて、
図1ないし
図11に示された各実施態様においては、3つの遮光カーテン5ないし7を各々独立して移動させることにより、遮光率を調節し、栽培施設2内の温度を調節することができるが、たとえば、
図9に示されるように各遮光カーテンにより最大限に覆うことによって、冬場に栽培施設2内を保温することもできる。さらに、以下のようにして、遮光システムにより湿度を調節可能に構成してもよい。
【0122】
具体的には、センサユニット17に別途、湿度計を加え、栽培ベッド5の近傍の湿度を検出可能とし、湿度が所定値を下回る場合には、3つの遮光カーテン5ないし7により覆われる面積を増やすことにより(
図9参照)、栽培ベッド5の近傍の湿度を上昇方向に調節することができる。加えて、3つの遮光カーテン5ないし7の配置によって、湿度を保ちつつ、温度を低下させることにより、作物に適した飽差バランスを維持することができる。
【0123】
また、
図1および
図10に示された各実施態様においては、記憶部24に、栽培施設1の緯度・経度を含む位置情報、日の出、日の入り時刻を含む日時情報、太陽SNの方位及び高度との情報を含む天文情報、各遮光カーテン5ないし7の高さ位置や、遮光部12及び透光部13の幅、ワイヤー18のうち、遮光カーテン5ないし7が取り付けられた部分の(
図2参照)位置についての情報、栽培対象となる作物にかかる照度情報(光飽和点等)などの種々の情報が格納されているが、たとえば、制御部を、さらに、天気予報の情報を取得可能に構成し、午後に曇り又は雨の予報であれば、午前中に太陽光Lを作物4に多めに照射可能に各遮光カーテンを配置するように構成してもよい。
【0124】
加えて、
図1ないし
図11に示された各実施態様においては、温度センサ27により検出された栽培施設2内の温度が所定の温度以上である場合に、各遮光カーテン5ないし7を
図9に示されるように配置し(遮光部12により最大限に覆い)、栽培施設2内の温度を下げるように構成されているが、サーモグラフィカメラにより、栽培施設2内の温度を検出し、温度が所定の温度以上である場合に、
図9に示されるように各遮光カーテン5ないし7を配置し、栽培施設2内の温度を下げるように構成してもよい。
【0125】
ここに、炭酸ガス濃度センサ25により検出される各栽培ベッド45の近傍の炭酸ガス濃度が、(光合成量に合わせて炭酸ガスが定量的に供給されているにも拘らず)上昇し始めたときには、光合成の効率が低下し始めたことが認められるので、制御部Cが、遮光カーテン5ないし7を移動させ、少なくとも炭酸ガス濃度が上昇し始めた栽培ベッド5の近傍(姿勢内全体でもよい)の温度を低下させるように構成してもよい。このように構成することにより、作物4の葉の温度を下げ、果実への転流を促進することができる。また、サーモグラフィカメラを配置する場合には、葉と果実の温度差を、サーモグラフィカメラにより検出し、転流に適した温度差となるように遮光カーテン5ないし7を配置して栽培施設内の温度を調節することによって、果実への転流を効果的に促進することができる。
【0126】
さらに、
図1ないし
図11に示された各実施態様においては、遮光カーテン5ないし7を、2つの巻取り軸8,9により巻き取ることにより、開閉し、または移動可能に構成されているが、各遮光カーテンの開閉機構、移動機構はこれに限られない。したがって、たとえば、特開2008-263905に記載の開閉機構を用いてもよい。加えて、すべての遮光カーテンが制御部Cの制御により、自動的に開閉及び移動されるものである必要はなく、一部の遮光カーテンが手動により開閉及び移動(スライド)可能に構成されてもよい。
【0127】
また、
図1および
図10に示された各実施態様においては、すべての遮光カーテン5ないし7の遮光部12の遮光率が30%に構成されているが、すべての遮光部12の遮光率をすべて同一に構成することは必ずしも必要でなく、カーテン同士で遮光部の遮光率を異にするように構成してもよい(たとえば遮光カーテン5の遮光部が50%の遮光率、遮光カーテン6の遮光部が30%の遮光率、遮光カーテン7の遮光部が10%の遮光率)。この場合には、遮光率(換言すれば作物4に照射される日射量)を、さらに微細に(緻密に)調整することが可能になる。
【0128】
加えて、
図11に示される実施態様においては、各遮光カーテン5ないし7を東西方向(平面図である
図2、
図11における横方向)にのみ移動可能に構成されているが、各遮光カーテンを南北方向(
図2、
図11における縦方向であり、
図1における奥行き方向)にも移動可能に構成してもよい。市松模様状に遮光部12と透光部13とが配置された各遮光カーテンを、市松模様を構成する各遮光部12と透光部13の南北方向の幅である数十cm程度だけでも南北方向に移動可能とすることにより、遮光カーテンの下方に位置する作物への日射量を、より一層微細に制御することができる。各遮光カーテンを南北方向にも移動させたい場合には、たとえば、モータにより、始端側巻取り軸と終端側巻取り軸とを一体的に(同速度で)南北方向に移動させることにより、各遮光カーテンを、東西方向に加え、南北方向にも移動させることができる。
【0129】
さらに、
図1ないし
図11に示される各実施態様においては、遮光システム1が適用される栽培施設2は、屋根部分を有しているが、本発明に係る遮光システムは、屋根部分のない栽培施設に適用されてもよい。この場合には、制御部を、栽培施設が位置する場所の天気の情報を取得可能に構成するとともに、
図11に示された実施態様の場合と同様に各遮光カーテン5ないし7を構成し、雨が降るときには、太陽光パネルを有しない遮光カーテン6,7により、作物4の上方を覆うように構成してもよい。
【0130】
また、
図1ないし
図11に示される各実施態様においては、照度計26が、本発明にかかる「栽培区画」の一例である各栽培ベッドに照射される光量を測定可能に配置されているが、照度計は、栽培ベッドの他、畝ごとやエリアごと、作物の列ごとに設けられてもよい。すなわち、畝やエリア、作物の列がそれぞれ、本発明にかかる「栽培区画」である。
【0131】
さらに、
図1ないし
図11に示される各実施態様においては、3つの遮光カーテン5ないし7により、各栽培区画(栽培ベッド45)を遮光し、栽培施設2内の温度上昇の防止が図られているが、3つの遮光カーテン5ないし7により遮光された結果、照度計26により測定される各栽培区画の日射量が不足した場合(たとえば少なくとも一つの栽培区画に照射される光量が所定値以下の場合)には、3つの遮光カーテン5ないし7の下方にLED管を有する照明装置を設け、日射量が不足した栽培区画の作物に照射される光の量を補うようにしてもよい。この場合には、たとえば、以下に述べる照明システム1を、3つの遮光カーテン5ないし7の下方に設け、以下に述べる制御装置40が照明システム1の照明装置を移動させることにより、すべての栽培区画の上方に照明装置を設ける必要がなく、照明装置の個数(設備本数)を減らすことができる。また、以下に述べる照明システム1によっても光の量が足りないときには、その次の日に、遮光システムの各遮光カーテンを開き(作物の上方から退避させ)、太陽光を作物に照射させるように構成してもよい。なお、以下に述べる照明システム1と、上述の遮光システムとでは、符号は対応していない。
【0132】
図12は、本発明の好ましい実施態様にかかる照明システム1および照明システム1が適用された栽培施設2の全体を示す構成図である。
【0133】
本実施態様においては、栽培施設2は、ビニルハウスによって構成されており、その内部に、左右方向に並ぶ6列の栽培ベッド4を備えている。栽培ベッド4においては、イチゴ5が高設栽培されている。各栽培ベッド4は、本発明にかかる栽培区画にあたる。
【0134】
図12に示されるように、栽培施設2の上部には、太陽光パネル54が取り付けられている。また、太陽光パネル54の隙間からの太陽光の侵入を防止するための遮光カーテン55も設けられており、栽培施設2内の温度上昇の防止が図られている。
【0135】
図12に示されるように、栽培施設2の内部に設けられた照明システム1は、フレーム3と、LED管10を有する照明装置9と、照明装置9の移動機構8を備え、移動機構8を用いて、照明装置9が各栽培ベッド4の上方の停止位置11ないし16に、順に、移動されることによって、各栽培ベッド4のイチゴ5に、順に、光が照射される。停止位置11ないし16は左右方向に並んでいる。なお、
図12には、照明装置9が停止位置13に停止している状態が示されている。
【0136】
フレーム3は、左右に設けられた立設フレーム6および左右の立設フレーム6に架けられた水平フレーム7を備え、移動機構8は、水平フレーム7の下面に取り付けられている。以下の説明において、特に断りがない限り、
図12の図面手前側を「前」といい、図面奥側を「後」という。
【0137】
図13は、
図12に示された照明システム1の移動機構8の近傍の模式的正面図であり、
図14は、
図13に示されたA-A線に沿った移動機構8の近傍を右側から見た部分断面図である。
【0138】
図13または
図14に示されるように、移動機構8は、左右一対の駆動用筐体23と、左右一対の駆動用筐体23間を結ぶ無端帯ベルト24と、無端帯ベルト24の左右方向中央部を内部に有し、水平フレーム7に取り付けられたガイドレール20と、ガイドレール20の前面に取り付けられ、照明装置9に電力を供給する給電レール21と、給電レール21から照明装置9への電力の供給を仲介する筐体22を備えている。筐体22には、照明装置9が取り付けられている。
【0139】
図13に示されるように、左右一対の駆動用筐体23の内部にはそれぞれ、大型プーリ25および小型プーリ26が設けられており、大型プーリ25に、無端帯ベルト24が巻き付けられている。なお、小型プーリ26は、無端帯ベルト24を強く張るためのものである。
【0140】
右側の大型プーリ25は、モータ27によって回転可能に構成され、右側の大型プーリ25が回転された際に、無端帯ベルト24が走行する。
【0141】
一方、
図14に示されるように、筐体22の上部には、無端帯ベルト24の下部を上下方向に挟む取付部28が設けられており、無端帯ベルト24が走行する際には、無端帯ベルト24に取り付けられた筐体22と、照明装置9とが、左右方向に略水平に移動される。ここに、筐体22の上部には、ガイドレール20内で回転可能な前後一対の車輪29が取り付けられているため、筐体22は、左右方向にスムーズに移動することができる。
【0142】
図14に示されるように、筐体22には、筐体22および照明装置9の移動を停止させるブレーキ機構50が設けられており、モータ27の駆動が停止されたときには、ブレーキ機構50が作動するように構成されている。
【0143】
具体的には、ブレーキ機構50は、可動ブレーキ部材51と、ソレノイド52を備え、可動ブレーキ部材51が、ソレノイド52によって、上方にスライドされた際には、可動ブレーキ部材51の上端部が、ガイドレール20の下面に接触し、筐体22および照明装置9が直ちに停止される。
【0144】
図14に示されるように、給電レール21の内部には、左右方向(
図14の図面奥側および手前側の方向)に延びる接地側電極30および電圧側電極31が設けられている。
【0145】
一方、給電レール21内を左右方向にスライド可能に構成された引っ掛け部材32であって、筐体22の前上部に取り付けられた引っ掛け部材32から前方または後方に延びる接地側電極33および電圧側電極34はそれぞれ、常に、左右方向(
図14の紙面奥側および手前側)に延びる接地側電極30または電圧側電極31に接触し続けるように構成されている。また、本実施態様においては、接地側電極30および電圧側電極31の左右方向の長さは、給電レール21の左右方向の長さと略同一に構成されている。
【0146】
したがって、無端帯ベルト24が走行し、筐体22および照明装置9が左右に移動される間と、筐体22および照明装置9が、いずれの停止位置11ないし16に位置するときのいずれにおいても、給電レール21から、接地側電極30および電圧側電極31ならびに接地側電極33および電圧側電極34と、引っ掛け部材32を介して、筐体22に電力を供給することができる。
【0147】
さらに、
図14に示されるように、筐体22の内部には、接地側電極35および電圧側電極36が設けられており、筐体22の内部から、照明装置9へ延びる接続部材37には、接地側電極35または電圧側電極36に接触する接地側電極38および電圧側電極39が取り付けられている。
【0148】
また、電圧側電極34と、電圧側電極36とは、配線(図示せず)を介して接続されている。
【0149】
したがって、無端帯ベルト24が走行し、筐体22および照明装置9が左右に移動される間においても、接地側電極35および電圧側電極36ならびに接地側電極37および電圧側電極38と、接続部材37を介して、照明装置9に電力を供給することができる。
【0150】
一方、
図14に示されるように、筐体22の前部かつ内部には、照明装置9のLED管10の発光を制御する制御部45が設けられており、制御部45は、電圧側電極34を介して、給電レール21から供給される電力によって作動される。
【0151】
図15は、
図12に示された照明システム1の制御系、通信系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【0152】
図15に示されるように、照明システム1の制御系は、照明システム1の動作を制御する制御装置40と、LED管10の発光素子46を駆動させるドライバ回路47に制御信号を出力する制御部45(
図14参照)を備えている。
【0153】
なお、本実施態様においては、LED管10は、発光素子46として、赤色の発光素子46と白色の発光素子46を備えている。
【0154】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部41と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する記憶部42を備え、記憶部42には、照明システム1を制御する種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0155】
図15に示されるように、照明システム1の通信系は、制御装置40側の通信部48と、制御部45側の通信部45を備えている。
【0156】
図15に示されるように、照明システム1の検出系は、各栽培ベッド4に設けられた照度センサ43と、筐体22および照明装置9の左右方向の位置を検出するポテンショメータ44を備えている。
【0157】
図15に示されるように、照明システム1の入力系は、電源スイッチ(図示せず)を含む操作パネル53を備えている。
【0158】
図15に示されるように、照明システム1の駆動系は、右側の大型プーリ25を回転駆動するモータ27と、ブレーキ機構50(
図14参照)のソレノイド52を備えている。
【0159】
モータ27は、両方向駆動型に構成され、大型プーリ25を、正面視(
図13参照)において、時計回りと反時計回りの両方の方向に回転させることができる。
【0160】
以上のように構成された栽培施設2の照明システム9においては、照明装置9は、制御装置40の制御に基づき、以下のようにして、停止位置11ないし16間を移動されながら、各栽培ベッド4に光を照射する。
【0161】
図16は、照明装置9の停止位置11ないし16間の移動と光の照射にかかるフローチャートである。
【0162】
図16に示されるように、操作パネル53の電源スイッチが操作され、制御装置40による照明装置9の移動と点灯の制御が開始されると、制御装置40は、まず、ポテンショメータ44によって、筐体22および照明装置9の左右方向の位置を検出する(ステップS1)。
【0163】
次いで、制御装置40は、検出された筐体22および照明装置9の位置が、
図12に示される停止位置11であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0164】
判定の結果、筐体22および照明装置9の位置が停止位置11である場合には、制御装置40は、照明装置9のLED管10の点灯を開始させる(ステップS3)。
【0165】
一方、判定の結果、筐体22および照明装置9の位置が、停止位置11でない場合には、制御装置40は、モータ27の駆動を開始させ、筐体22および照明装置9を停止位置11に移動させた後に(ステップS4)、LED管10の点灯を開始させる。
【0166】
このとき、制御装置40は、ポテンショメータ44の出力信号に基づき、筐体22および照明装置9が停止位置11に移動されたときに、モータ27の駆動を停止し、ブレーキ機構50を作動させる。
【0167】
LED管10の点灯が開始されると、制御装置40は、停止位置11の下方に位置する栽培ベッド4(最も左方に位置する栽培ベッド4)に設けられた照度センサ43(最も左方に位置する照度センサ43)の検出信号に基づき、制御装置40による照明装置9の移動と点灯の制御が開始されたときからの積算光量(積算照度)が、35,000ルクスを超えたか否かを判定する(ステップS5)。なお、35,000ルクスという数値は、イチゴの光飽和点が3万ルクスないし4万ルクスであることから設定されたものである。
【0168】
判定の結果、積算光量が35,000ルクスを超えていない場合には、積算光量が35,000ルクスを超えるまで、判定を続ける。
【0169】
一方、判定の結果、積算光量が35,000ルクスを超えている場合には、制御装置40は、ポテンショメータ44の検出信号に基づき、筐体22および照明装置9の現在の位置が、停止位置16であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0170】
判定の結果、筐体22および照明装置9の現在の位置が停止位置16である場合には、制御装置40は、LED管10の点灯を終了させ(ステップS7)、照明装置9の移動と点灯の制御を終了する。
【0171】
これに対して、判定の結果、筐体22および照明装置9の現在の位置が、停止位置16でない場合には、制御装置40は、モータ27を駆動させ、筐体22および照明装置9の現在の停止位置に隣り合う右方の停止位置12、13、14、15または16に、筐体22および照明装置9を移動させる(ステップS8)。
【0172】
こうして、筐体22および照明装置9を、停止位置12、13、14または15に移動させた後に、制御装置40は、その停止位置12、13、14または15の下方の栽培ベッド4に設けられた照度センサ43からの出力信号に基づき、照明装置9の移動と点灯の制御が開始されたときからの積算光量(積算照度)が、35,000ルクスを超えたか否かを判定する。
【0173】
判定の結果、積算光量が35,000ルクスを超えている場合には、制御装置40は、ポテンショメータ44の検出信号に基づき、筐体22および照明装置9の現在の位置が、停止位置16であるか否かを判定する。
【0174】
以後、積算光量が35,000ルクスを超えたときに、筐体22および照明装置9の現在の位置が、停止位置16にあるまで、筐体22および照明装置9の移動と、積算光量の判定と、停止位置16にあるか否かの判定とが繰り返される。そして、積算光量が35,000ルクスを超えたときに、筐体22および照明装置9の現在の位置が、停止位置16にあるときには、制御装置40は、上述のように、LED管10の点灯を終了させ、制御装置40による照明装置9の移動と点灯の制御が終了される。
【0175】
以上のように、各栽培ベッド4の積算光量が35,000ルクスを超えた時点で、隣り合う右側の栽培ベッド4の上方の停止位置に、筐体22および照明装置9を自動的に移動させることができるから、照明装置9を効率的に移動させることができ、放熱量や消費電力を効果的に抑制することができる。
【0176】
さらに、本実施態様においては、操作パネル53を用いて、任意の停止位置11、12、13、14、15または16に、照明装置9および筐体22を移動可能に構成されている。
【0177】
具体的には、操作パネル53上で、停止位置11、12、13、14、15または16が選択されると、制御装置40は、まず、ポテンショメータ44に基づき、現在の照明装置9および筐体22の位置を判定する。
【0178】
こうして、照明装置9および筐体22の位置を判定した後に、制御装置40は、照明装置9および筐体22が、選択された停止位置11、12、13、14、15または16に位置するまで、照明装置9および筐体22が選択された停止位置に近づくように、モータ27によって右側の大型プーリ25を時計回り又は反時計回りに回転させ、選択された停止位置11、12、13、14、15または16に位置した時点で、モータ27の駆動を停止させるとともに、ブレーキ機構50を作動させ、LED管10による光の照射を開始させる。
【0179】
したがって、栽培施設2の作業者は、例えば夜間に、イチゴ5の生育状態が芳しくない栽培ベッド4の上方の停止位置(11ないし16のいずれ)に、照明装置9および筐体22を移動させることによって、イチゴ5の生長を促進させることができ、栽培施設2内のイチゴの品質や大きさを均一にすることができる。
【0180】
本実施態様によれば、LED管10を有する照明装置9が、無端帯ベルト24を有する移動機構8によって、左右方向に移動されるから、各栽培ベッド4の上方の位置にそれぞれ、照明装置を設ける必要がなく、したがって、栽培施設2内に設けられる照明装置9の数を大幅に減らすことができる。
【0181】
さらに、本実施態様においては、作業者によって、操作パネル53上で選択された停止位置(11ないし16のいずれ)に、照明装置9および筐体22を移動させることができるから、生育状態が芳しくない栽培ベッド4内のイチゴ5の生育を促進させ、栽培施設2内のイチゴ5の品質や大きさを均一にすることができる。
【0182】
また、本実施態様においては、上述のように、栽培施設2内に設けられる照明装置9の数を大幅に減らすことができるから、照明システムからの放熱量を低減させ、栽培施設2内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0183】
さらに、本実施態様においては、各栽培ベッド4の近傍の積算光量(積算照度)が所定の光量(本実施態様においては、35,000ルクス)を超えた時点で、筐体22および照明装置9を、隣り合う停止位置(12ないし16のいずれかであり、現在の停止位置の下方に位置する栽培ベッド4の右側の栽培ベッド4の上方の位置)に自動的に移動させることができるから、照明装置9を効率的に移動させることができ、放熱量や消費電力を効果的に抑制することができる。
【0184】
図17は、本発明の他の好ましい実施態様に係る照明システム1の制御系、通信系、検出系、入力系および駆動系のブロックダイアグラムである。
【0185】
図17に示されるように、本実施態様においては、照明システム1の制御系は、照明システム1の動作を制御する制御装置40と、紫外線LED管17の発光素子57を駆動させるドライバ回路47に制御信号を出力する制御部45(
図14参照)と、時間を計測するタイマー18を備えている。
【0186】
図17に示されるように、照明システム1の検出系は、各栽培ベッド4の照度を検出する照度センサ43と、照明装置9および筐体22の左右方向の位置を検出するポテンショメータ44に加え、照明装置9および筐体22の前後方向の位置を検出するポテンショメータ56を備えている。
【0187】
図17に示されるように、照明システム1の駆動系は、右側の大型プーリ25を回転駆動し、照明装置9および筐体22を左右方向に移動させるモータ27と、ブレーキ機構50(
図14参照)のソレノイド52に加え、照明装置9および筐体22を前後方向に移動させるためのモータ77を備えている。
【0188】
一方、通信系および入力系は、
図15に示されたものと同一である。
【0189】
図18は、
図17に示された照明システム1の略斜視図であり、
図19は、栽培ベッド4の配置と、照明装置9および筐体22の移動順序を示す模式的平面図である。
【0190】
図18には、栽培施設2の内部に設けられた照明システム1が図示されている。
図18に示されるように、本実施態様にかかる照明システム1は、栽培施設2に設けられるフレーム74と、紫外線を照射する紫外線LED管17を有する照明装置9と、照明装置9の前後方向移動機構70および左右方向移動機構60を備えている。また、
図19に示されるように、本実施態様においては、栽培施設2内に設けられる栽培ベッド4は、計18個設けられており、前後方向に3行、左右方向に6列にわたって配置されている。
【0191】
本実施態様においては、紫外線を照射する紫外線LED管17を有する照明装置9を、前後方向移動機構70または左右方向移動機構60を用いて、左右方向または前後方向に移動させ、
図19に示される各栽培ベッド4の上方の停止位置に、順に停止し、紫外線を照射可能に構成されている。
【0192】
前後方向移動機構70は、公知の遮光シートの開閉機構(例えば、特開2008-263905号に記載の折り畳み伸長自在の天井可動枠体)を応用した物である。
【0193】
すなわち、前後方向に並ぶ複数のパイプ79および82であって、それぞれ左右一対の案内レール83上を移動可能に構成されたベアリング84が取り付けられた複数のパイプ79および82と、モータ77によって回転される駆動軸78とがワイヤ68で結ばれており、モータ77が駆動され、ワイヤ68が駆動軸78に巻き取られることによって、最前部に位置するパイプ82が後方に移動され、また、モータ77が駆動され、ワイヤが駆動軸78から解かれることによって、最前部に位置するパイプ82が前方に移動させる構成である。
【0194】
ここに、最前部に位置するパイプ82には、その下方に、左右方向移動機構60が取り付けられており、前後方向移動機構70の作動によって、パイプ82が前後方向に移動されたときには、左右方向移動機構60および照明装置9が、一体的に、前後方向に略水平に移動される。
【0195】
照明システム1の左右方向移動機構60は、ガイドレール20が、最前部に位置するパイプ82に取り付けられている点を除き、前記実施態様の移動機構8と同一に構成されており、同様にして、左右方向に照明装置9および筐体22を移動させることができる。
【0196】
また、本実施態様においては、筐体22および照明装置9は、
図19に矢印付きの一点鎖線で示される順序で移動され、各栽培ベッド4の上方の位置に、所定の時間(照射継続時間であり、タイマー18に基づく)にわたって停止し、紫外線を、各栽培ベッド4のイチゴ5(
図19には図示せず)に照射し続けるため、イチゴ5の病気の発生を予防することができる。
【0197】
具体的には、まず、左右方向の位置が61であって、前後方向の位置が73の栽培ベッド4(図面左上の栽培ベッド4)の上方の位置に、筐体22および照明装置9が移動され、紫外線LED管17が点灯される。
【0198】
次いで、紫外線LED管17が点灯された状態で、所定の時間が経過すると、隣り合う栽培ベッド4(左右方向の位置が62であって、前後方向の位置が73の栽培ベッド4)の上方の位置に、モータ27の駆動によって、筐体22および照明装置9が移動され、再び、所定の時間が経過するまで、かかる栽培ベッド4に紫外線が照射される。
【0199】
このように、順番に、所定の時間にわたる紫外線の照射と、右方への移動が繰り返され、左右方向の位置が66であって、前後方向の位置が73の栽培ベッド4の上方の位置まで紫外線の照射が終了すると、モータ77が駆動され、ポテンショメータ56の検出信号に基づき、筐体22および照明装置9が、左右方向の位置が66で前後方向の位置が72の栽培ベッド4の上方の位置まで移動され、この位置で、再び、所定の時間にわたって紫外線が照射される。
【0200】
図19に示されるように、前後方向の位置が72の行においては、筐体22および照明装置9が左方に移動されるように構成されており、72の行の各栽培ベッド4の上方の位置での所定の時間にわたる紫外線の照射と、モータ27の駆動による左隣りの栽培ベッド4への移動とが繰り返され、左右方向の位置が61で、前後方向の位置が72の栽培ベッド4の上方の位置における所定の時間にわたる紫外線の照射まで終了すると、モータ77の駆動(前後方向移動機構70)によって、筐体22および照明装置9が、左右方向の位置が61で前後方向の位置が71の栽培ベッド4の上方の位置に移動され、この位置で、再び、所定の時間にわたって紫外線が照射される。
【0201】
図19に示されるように、前後方向の位置が71の行においては、筐体22および照明装置9が右方に移動されるように構成されており、71の行の各栽培ベッド4の上方の位置での所定の時間にわたる紫外線の照射と、モータ27の駆動による右隣りの栽培ベッド4への移動とが繰り返され、
図19の図面右下の栽培ベッド4(左右方向の位置が66であり、前後方向の位置が71の栽培ベッド4)まで筐体22および照明装置9が移動すると、所定の時間にわたって紫外線が照射された後に、制御装置40による照明装置9の移動と点灯の制御が終了する。
【0202】
このように、本実施態様においては、紫外線LED17を有する照明装置9を、栽培施設2内で、左右方向と前後方向に移動させ、各栽培ベッド4に紫外線を照射させることができるから、各栽培ベッド4のイチゴ5の病原菌を殺菌し、イチゴ5の病気の発生を予防し、または治療することができる。また、各栽培ベッド4の上方にそれぞれ、照明装置9を設ける場合に比して、大幅に照明装置9の数を減少させることができる。
【0203】
さらに、本実施態様においては、各栽培ベッド4の上方の位置に移動されてから、所定の時間が経過すると、左右方向または前後方向に隣り合う栽培ベッド4の上方の位置に移動されるように構成されているから、各栽培ベッド4に、紫外線を効率的に照射することができるとともに、長時間にわたって単一のイチゴ5に紫外線が照射されることを防止し、イチゴ5の葉などが痛むという事態を防ぐことができる。
【0204】
一方、本実施態様においては、操作パネル53を用いて、任意の栽培ベッド4の上方の位置に、照明装置9および筐体22を移動可能に構成されている。
【0205】
具体的には、栽培施設2の作業者によって、操作パネル53上で、左右方向の位置(61ないし66のいずれか)と前後方向の位置(71ないし73のいずれか)が指定されると、制御装置40は、まず、ポテンショメータ44の検出信号に基づき、現在の照明装置9および筐体22の左右方向の位置を判定する。
【0206】
次いで、制御装置40は、照明装置9および筐体22が、選択された左右方向の位置(61ないし66のいずれか)に位置するまで、照明装置9および筐体22が選択された左右方向の停止位置に近づくように、左右方向移動機構60のモータ27によって右側の大型プーリ25を時計回り又は反時計回りに回転させ、選択された左右方向の位置61、62、63、64、65または66に位置した時点で、モータ27の駆動を停止させるとともに、ブレーキ機構50を作動させる。
【0207】
こうして、照明装置9および筐体22が、選択された左右方向の位置に移動された後に、制御装置40は、ポテンショメータ56の検出信号に基づき、現在の照明装置9および筐体22の前後方向の位置を判定する。
【0208】
次いで、制御装置40は、照明装置9および筐体22が、選択された前後方向の位置(71ないし73のいずれか)に位置するまで、モータ77を駆動させ、駆動軸78を回転させた後に、紫外線LED管17から紫外線を照射させる。
【0209】
したがって、栽培施設2の作業者は、イチゴ5に病気が発生した栽培ベッド4の上方の位置に、照明装置9および筐体22を移動させることによって、病原菌を殺菌することができる。
【0210】
本発明(照明システムについての発明)は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0211】
例えば、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、右側の大型プーリ25(
図13参照)を回転させ、無端帯ベルト24を走行させる移動機構8を用いて、照明装置9を左右方向に移動可能に構成されており、一方、
図17ないし
図19に示された実施態様においては、移動機構8と略同様に構成された左右方向移動機構60と、複数のパイプ79および82を移動させて遮光シートを開閉する公知の機構を応用した前後方向移動機構70とを用いて、照明装置9を左右方向および前後方向に移動可能に構成されているが、照明装置を、各栽培区画(栽培ベッド4)の場所に合わせて移動させることができれば、照明装置の移動機構(移動手段)は、これらに限定されるものではない。したがって、たとえば、ビニルハウスなどで用いられる、遮光カーテンや保温カーテンを開閉する他の機構を用いて、照明装置を移動可能に構成してもよい。
【0212】
また、
図12ないし
図19に示された各実施態様においては、栽培施設2は、ビニルハウスによって構成されているが、栽培施設をビニルハウスとして構成することは必ずしも必要でなく、本発明にかかる照明システム1が設けられる栽培施設は、植物工場などであってもよい。
【0213】
加えて、
図12ないし
図19に示された各実施態様においては、栽培区画の一例として、栽培ベッド4を挙げているが、栽培施設内の栽培区画として、栽培ベッドを用いることは必ずしも必要でなく、たとえば、照明装置9を、栽培施設内の畝の位置に合わせて移動させるように構成してもよく、栽培施設内のエリアごとに移動させるように構成してもよい。
【0214】
さらに、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、1本のLED管10を左右方向にスライド可能に構成されているが、図面奥側(後方)にさらに、複数のLED管10と、複数のLED管10を左右方向に移動させるためのフレーム3および移動機構8を別途設け、より多くの栽培ベッド4に光を照射可能に構成してもよい。
【0215】
また、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、ポテンショメータ44の検出信号に基づき、筐体22および照明装置9を、左右方向における目的の位置まで移動させるように構成されているが、ポテンショメータ44を設けることは必ずしも必要でなく、モータ27の駆動量(駆動時間)と駆動方向(右側の大型プーリ25の回転量と回転方向)から、筐体22および照明装置9の左右方向の位置を算出するように構成してもよい。
【0216】
さらに、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、遮光カーテン55を閉めた状態で、各栽培ベッド4の積算光量が、3万5千ルクスに達するまで、照明装置9から光を照射するように構成されているが、たとえば、水平方向に並ぶ複数の遮光カーテン55を設けて開けておき、積算光量が3万5千ルクスに達した栽培ベッド4の上方に位置する遮光カーテン55を自動的に閉めるように構成してもよい。
【0217】
また、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、左端部の停止位置11から、右端部の停止位置16に至るまで、照明装置9および筐体22を移動させ、光を照射するように構成されているが、栽培施設2内において、太陽光パネル54の存在によって、光が当たらない栽培ベッド4の上方の位置のみに照明装置9および筐体22を停止させ、光を照射するように構成してもよい。さらに、照明装置9を、栽培区画(栽培ベッド4)ごとに逐次停止させることは必ずしも必要でなく、複数の栽培区画の上方または近傍の位置を、低速で、連続的に移動させるように構成してもよい。
【0218】
さらに、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、各栽培ベッド4における積算光量に基づき、LED管10を有する照明装置9を、左右方向に移動させるように構成し、
図17ないし
図19に示された実施態様においては、各栽培ベッド4の上方の位置における照射継続時間に基づき、紫外線LED管17を有する照明装置9を、左右方向および前後方向に移動させるように構成しているが、各停止位置(11ないし16のいずれか)において、所定の時間(照射継続時間)が経過した時点で、LED管10を有する照明装置9を移動させてもよく、また、紫外線LED管17を有する照明装置9を、各栽培ベッド4における積算光量が所定の量を超えた時点で、移動させるように構成してもよく(この場合には、照度検出手段として積算光量計を用いてもよい)、紫外線LED管17を左右方向のみに移動させるように構成し、LED管10を左右方向および前後方向に移動させるように構成してもよい。
【0219】
さらに、各停止位置(11ないし16のいずれか)において、所定の時間(照射継続時間)が経過した時点で、LED管10を有する照明装置9を移動させるように構成する場合には、すべての栽培ベッド4への照射継続時間(照射時間)を同一に構成することは必ずしも必要でなく、太陽光が当たる栽培ベッド4の上方の停止位置では、照射時間を短く(例えば2時間)構成し、太陽光が当たらない栽培ベッド4の上方の停止位置では、照射時間を長く(例えば8時間)構成してもよい。
【0220】
また、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、積算光量の起算は、操作パネル53の電源スイッチが操作され、照明装置9の移動と点灯の制御が開始されたときに開始されるように構成されているが、積算光量の起算のタイミングは、照明装置9が、各停止位置11、12、13、14または15に停止したときからとして構成してもよく、1日のうちの特定の時間または任意の時間から積算光量を起算するように構成してもよい。
【0221】
また、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、積算光量が35,000ルクスを超えたか否か(
図16のステップS5参照)によって、筐体22および照明装置9の移動を決定するように構成されているが、閾値となる積算光量は、特にこれに限定されるものではなく、イチゴ5の光飽和点である3万ルクスまたは4万ルクスでもよく、さらに、栽培される作物は、イチゴ5に限定されるものではない。
【0222】
さらに、
図12ないし
図16に示された実施態様においては、白色および赤色の発光素子46を備えたLED管10を有する照明装置9を用いており、
図17ないし
図19に示された実施態様においては、紫外線LED管17を有する照明装置9を用いているが、栽培施設2に、どちらか一方のみの照明装置9および移動手段を設ける必要はなく、白色および赤色の発光素子46を備えたLED管10を有する照明装置9と、紫外線LED管17を備えた照明装置9の両方をそれぞれ移動可能に、単一の栽培施設2に設けてもよい。
【符号の説明】
【0223】
以下は、本発明にかかる「遮光システム」についての符号の説明である。
1 遮光システム
2 栽培施設
3 ハウジング
4 作物
5 遮光カーテン
6 遮光カーテン
7 遮光カーテン
8 始端側巻取り軸
9 終端側巻取り軸
10 天窓
11 枠部
12 遮光部
13 透光部
14 開閉機構
15 始端側モータ
16 終端側モータ
17 センサユニット
18 ワイヤー
19 紐
20 計時部
21 入力スイッチ
22 ディスプレイ
23 処理部
24 記憶部
25 炭酸ガス濃度センサ
26 照度計
27 温度センサ
28 開閉センサ
29 開閉センサ
30 開閉センサ
31 炭酸ガス供給管
32 開スイッチ
33 開スイッチ
34 開スイッチ
35 閉スイッチ
36 閉スイッチ
37 閉スイッチ
38 制御開始スイッチ
39 ボンベ
40 液晶ディスプレイ
41 太陽電池モジュール
42 枠体
43 支持部材
44 連結部材
45 栽培ベッド
46 電磁弁