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特開2023-28608構造物用線状部材の張力検出方法、構造物用線状部材及び線状部材用センサ設置治具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028608
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】構造物用線状部材の張力検出方法、構造物用線状部材及び線状部材用センサ設置治具
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/04 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
G01L5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134430
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】508061549
【氏名又は名称】阪神高速技術株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192626
【氏名又は名称】神鋼鋼線工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(71)【出願人】
【識別番号】500271030
【氏名又は名称】株式会社日本工業試験所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】野村 真介
(72)【発明者】
【氏名】榊 一平
(72)【発明者】
【氏名】白▲浜▼ 昭二
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】下田 英司
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山上 哲示
(72)【発明者】
【氏名】正木 英行
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 伯子ルイザ
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 秀敏
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB03
(57)【要約】
【課題】構造物用線状部材の張力を少ない手間で検出できる構造物用線状部材の張力検出方法、構造物用線状部材及び線状部材用センサ設置治具を提供する。
【解決手段】
構造物用線状部材の張力検出方法は、ひずみ変動測定工程で、光ファイバ式ひずみセンサ2により、橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定する。変動周波数分布検出工程で、ひずみの変動に基づいて、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動周波数の分布を検出する。固有振動数特定工程で、ひずみの変動周波数分布に基づいて、橋梁用ケーブル1の固有振動数を特定する。張力算出工程で、固有振動数に基づいて、橋梁用ケーブル1の張力を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に使用された線状部材に作用している張力を検出する張力検出方法であって、
光ファイバ式ひずみセンサにより、上記線状部材のひずみの変動を測定するひずみ変動測定工程と、
上記ひずみ変動測定工程で測定されたひずみの変動に基づいて、上記線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布を検出する変動周波数分布検出工程と、
上記変動周波数分布検出工程で検出されたひずみの変動周波数分布に基づいて、上記線状部材の固有振動数を特定する固有振動数特定工程と、
上記固有振動数特定工程で特定された固有振動数に基づいて、上記線状部材の張力を算出する張力算出工程と
を備えることを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物用線状部材の張力検出方法において、
上記ひずみ変動測定工程では、上記線状部材の周面の近傍に、断面において互いに90°又は180°の角度を置いて配置された複数の光ファイバ式ひずみセンサにより、ひずみの変動を測定することを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の構造物用線状部材の張力検出方法において、
上記変動周波数分布検出工程では、上記光ファイバ式ひずみセンサのうちの2つによる測定値の差分に基づいて、線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動を検出することを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の構造物用線状部材の張力検出方法において、
上記光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材に予め内蔵されていることを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項5】
請求項1に記載の構造物用線状部材の張力検出方法において、
上記光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材のひずみを増幅する治具を介して、上記線状部材の表面に後付けされたものであることを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項6】
請求項1に記載の構造物用線状部材の張力検出方法において、
上記光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材の表面に粘着テープで後付けされたものであることを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の構造物用線状部材の張力検出方法において、
上記光ファイバ式ひずみセンサが、FBGセンサであることを特徴とする構造物用線状部材の張力検出方法。
【請求項8】
張力を受け持つために構造物に使用される線状部材であって、
張力を伝達する芯材と、
上記芯材の表面の近傍に両端が固定された保護容器と、
上記保護容器内に収容され、上記保護容器の両端の固定部分の近傍で、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が上記保護容器に各々固定され、この線状部材のひずみの変動を検出するFBGセンサと、
上記芯材と、上記FBGセンサが収容された保護容器とを被覆する保護材と
を備えることを特徴とする構造物用線状部材。
【請求項9】
張力を受け持つために構造物に使用される線状部材であって、
張力を伝達する芯材と、
上記芯材の表面の近傍に両端が固定された固定部と、これらの固定部の間に設けられ、長手方向に伸縮可能に形成された伸縮部とを有する保護容器と、
上記保護容器内に収容され、上記保護容器の両端の固定部分よりも内側の位置で、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が上記保護容器に固定され、この線状部材のひずみの変動を検出するFBGセンサと、
上記芯材と、上記FBGセンサが収容された保護容器を被覆する保護材と
を備えることを特徴とする構造物用線状部材。
【請求項10】
張力を受け持つために構造物に使用される線状部材であって、
張力を伝達する芯材と、
上記芯材の表面部分に粘着テープで張り付けられたFBGセンサと、
上記芯材と、上記FBGセンサを張り付けた粘着テープを被覆する保護材と
を備えることを特徴とする構造物用線状部材。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれかに記載の構造物用線状部材において、
端部の近傍に、上記FBGセンサに接続するためのコネクタが設けられていることを特徴とする構造物用線状部材。
【請求項12】
張力が作用している構造物用の線状部材に、この線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動を検出するFBGセンサを設置するためのセンサ設置治具であって、
上記線状部材の表面に、この線状部材の軸方向に所定間隔をおいて固定される2つの固定部材と、
基端が上記2つの固定部材に各々固定され、上記線状部材と平行に延在すると共に、先端が互いに接近する方向に延びる2つの延在部材と、
上記2つの延在部材の先端に各々設けられ、FBGセンサのひずみ検出部の両側を固定する2つのセンサ固定体と
を備えることを特徴とする構造物用線状部材用センサ設置治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば橋梁等の構造物の線状部材に作用している張力を検出する張力検出方法と、構造物に用いられる構造物用線状部材、及び、線状部材にセンサを設置するための線状部材用センサ設置治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、斜張橋のケーブルの張力を測定する方法として、ケーブルに振動センサを設置し、このケーブルに衝撃を与えたときの振動センサの検出情報に基づいて、上記ケーブルの張力を算出するものが提案されている(特許文献1参照)。この方法では、振動センサで検出された振動の周波数分析を行い、ケーブルの曲げ剛性の影響が支配的となる周波数領域に存在する複数の固有振動数から、張力のかかっている状態でのケーブルの曲げ剛性を求める。これにより求めた曲げ剛性と固有振動数とに基づいて、ケーブルの張力を算出している。
【0003】
上記ケーブルの張力の測定方法に使用可能な振動センサとしては、振動子を内蔵し、上記振動子に作用する加速度を電気的に検出して振動数を出力する加速度式振動センサが普及している。
【0004】
一方、プレストレストコンクリート構造体を構成し、コンクリート部分に圧縮力を作用させて補強するために使用されるPC(Prestressed Concrete)鋼撚り線の張力を測定するため、ひずみ測定用光ファイバを内蔵したPC鋼撚り線が提案されている(特許文献2参照)。この光ファイバ付きPC鋼撚り線は、芯材を構成する鋼製の撚り線にひずみ測定用光ファイバが撚り合わされており、PC鋼撚り線に作用する張力によって生じるひずみを、上記ひずみ測定用光ファイバで直接測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3313028号公報
【特許文献2】特開2019-70593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のケーブルの張力の測定方法は、張力の測定を行う度に、振動センサの設置と撤去を行うが、上記振動センサは、振動を正確に測定するためにケーブルに強固に固定する必要がある。したがって、振動センサの設置と撤去の作業に、手間と時間がかかる不都合がある。また、振動センサとして普及している加速度式振動センサは、可動部である振動子を内蔵するため、耐候性が比較的悪く、長期にわたる測定には向かない不都合がある。
【0007】
一方、上記従来の光ファイバ付きPC鋼撚り線は、張力によって生じるPC鋼撚り線の延在方向のひずみを、ひずみ測定用光ファイバで直接測定するものである。上記PC鋼撚り線の延在方向のひずみの値は微量であるから、上記ひずみ測定用光ファイバは、微量のひずみの値を検出するために、鋼撚り線に強固に固定される必要がある。このため、上記光ファイバ付きPC鋼撚り線は、光ファイバを、樹脂製のフィラーで包んだ状態で撚り線と撚り合わせて製造している。したがって、上記光ファイバ付きPC鋼撚り線は、製造に手間がかかる不都合がある。また、ひずみ測定用光ファイバで測定するPC鋼撚り線の軸方向のひずみの値は、測定位置の温度の影響を受けるので、ひずみの温度補正を行う必要がある。このため、上記光ファイバ付きPC鋼撚り線は、温度測定用の光ファイバを鋼撚り線と共に撚り合わせており、構造が複雑であると共に、張力を検出するための解析が複雑であるという不都合がある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、少ない手間で実行できる構造物用線状部材の張力検出方法を提供することにある。また、長期にわたって実行できる構造物用線状部材の張力検出方法を提供することにある。また、比較的簡易な構造で、張力の検出が可能な構造物用線状部材を提供することにある。また、比較的簡易な解析により、張力の検出が可能な構造物用線状部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の構造物用線状部材の張力検出方法は、構造物に使用された線状部材に作用している張力を検出する張力検出方法であって、
光ファイバ式ひずみセンサにより、上記線状部材のひずみの変動を測定するひずみ変動測定工程と、
上記ひずみ変動測定工程で測定されたひずみの変動に基づいて、上記線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布を検出する変動周波数分布検出工程と、
上記変動周波数分布検出工程で検出されたひずみの変動周波数分布に基づいて、上記線状部材の固有振動数を特定する固有振動数特定工程と、
上記固有振動数特定工程で特定された固有振動数に基づいて、上記線状部材の張力を算出する張力算出工程と
を備えることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、ひずみ変動測定工程で、光ファイバ式ひずみセンサにより、線状部材のひずみの変動が測定される。ここで、光ファイバ式ひずみセンサは、光ファイバ中に伝達される光の物理的特徴に基づいて、ひずみを測定するものを広く採用できる。また、測定の対象である線状部材のひずみの変動とは、時系列におけるひずみの変化であり、ひずみそのものの値は高精度に測定する必要がない。続いて、変動周波数分布検出工程で、上記ひずみ変動測定工程で測定されたひずみの変動に基づいて、上記線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布が検出される。ここで、ひずみの変動周波数の分布は、光ファイバ式ひずみセンサの測定値を、例えば高速フーリエ変換等を行うことにより、求めることができる。続いて、固有振動数特定工程で、上記変動周波数分布検出工程で検出されたひずみの変動周波数分布に基づいて、上記線状部材の固有振動数が特定される。この後、張力算出工程で、上記固有振動数特定工程で特定された固有振動数に基づいて、上記線状部材の張力が算出される。上記固有振動数に基づく線状部材の張力の算出方法は、公知の種々の算出式を利用できる。
【0011】
上記構成の構造物用線状部材の張力検出方法によれば、ひずみ変動測定工程で測定を行う対象が、線状部材のひずみの変動であるので、光ファイバ式ひずみセンサは、構造用線状部材に、ひずみの変動を測定可能な程度に設置すればよく、ひずみそのもの値を測定する場合のようにセンサを強固に固定する必要がない。したがって、光ファイバ式ひずみセンサの構造用線状部材への固定構造を簡易にできる。その結果、光ファイバ式ひずみセンサを構造用線状部材に後付けして測定する場合に、測定の手間を少なくできる。また、光ファイバ式ひずみセンサを構造用線状部材に予め内蔵する場合に、光ファイバ式ひずみセンサ付きの構造用線状部材を容易に製造できる。また、ひずみ変動測定工程で測定する対象が、線状部材のひずみの変動であり、ひずみそのもの値を高精度に測定する必要が無いので、光ファイバ式ひずみセンサの測定値は温度補正が不要である。したがって、ひずみ変動測定工程で温度を測定する必要が無いので、測定の手間を少なくできる。また、張力算出工程で張力を算出する際に温度を考慮する必要が無いので、少ない手間で解析を行うことができる。また、ひずみ変動測定工程で光ファイバ式ひずみセンサを用いるので、光ファイバ式ひずみセンサは耐久性が高いから、従来のように線状部材の振動を測定するために加速度式振動センサを用いるよりも、長期にわたって構造用線状部材の張力を検出できる。本発明において、構造物とは、橋梁、トンネル、ダム、水門、擁壁、堤防及びタンク等の土木構造物や、屋根と柱又は壁を有する建築物等が該当する。また、線状部材とは、素線を撚り合わせたワイヤロープ又はPC鋼撚り線や、素線を平行に束ねた平行線ケーブルや、丸棒や、角棒等が該当し、その材料は限定されない。また、線状部材は、芯材と、この芯材を被覆する保護材とを含むもの等のように、複数の材料で形成されてもよい。
【0012】
一実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、上記ひずみ変動測定工程では、上記線状部材の周面の近傍に、断面において互いに90°又は180°の角度を置いて配置された複数の光ファイバ式ひずみセンサにより、ひずみの変動を測定する。
【0013】
上記実施形態によれば、線状部材の周面の近傍に、断面において互いに90°又は180°の角度を置いて配置された複数の光ファイバ式ひずみセンサにより、ひずみの変動を測定する。これらのひずみの変動は、線状部材の軸方向に作用する荷重に起因するものは互いに同一である一方、線状部材の軸直角方向の振動に起因するものは互いに異なる。したがって、上記複数の光ファイバ式ひずみセンサの測定値に基づいて、振動に起因するひずみの変動を、良好な精度で検出することができる。
【0014】
一実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、上記変動周波数分布検出工程では、上記光ファイバ式ひずみセンサのうちの2つによる測定値の差分に基づいて、線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動を検出する。
【0015】
上記実施形態によれば、2つの光ファイバ式ひずみセンサによる測定値の差分を求めることにより、線状部材の軸方向に作用する荷重に起因するひずみ変動を消去し、線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみ変動のみを抽出することができる。
【0016】
一実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、上記光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材に予め内蔵されている。
【0017】
上記実施形態によれば、構造物の線状部材に予め内蔵された光ファイバ式ひずみセンサを用いることにより、少ない手間で線状部材の張力を検出できる。また、構造物の線状部材に予め内蔵された光ファイバ式ひずみセンサを用いることにより、線状部材の張力を、長期にわたって測定することができる。例えば、構造物の製造時の施工管理から、構造物が完成した後の保守管理まで、長期にわたる種々の目的で、線状部材の張力を検出することができる。
【0018】
一実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、上記光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材のひずみを増幅する治具を介して、上記線状部材の表面に後付けされたものである。
【0019】
上記実施形態によれば、構造物の線状部材の表面に、この線状部材のひずみを増幅する治具を介して光ファイバ式ひずみセンサを後付けすることにより、線状部材の張力を良好な精度で検出することができる。また、張力の検出機能が予め設けられていない構造物の線状部材に、治具で光ファイバ式ひずみセンサを後付けすることにより、上記線状部材の張力の検出を可能にできる。
【0020】
一実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、上記光ファイバ式ひずみセンサが、上記線状部材の表面に粘着テープで後付けされたものである。
【0021】
上記実施形態によれば、構造物の線状部材の表面に、粘着テープで光ファイバ式ひずみセンサを後付けすることにより、少ない手間で線状部材の張力を検出することができる。ここで、光ファイバ式ひずみセンサで測定を行う対象は、線状部材のひずみの変動であるので、粘着テープを用いた固定により、線状部材の張力の検出に十分な測定を行うことができる。
【0022】
一実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、上記光ファイバ式ひずみセンサが、FBGセンサである。
【0023】
上記実施形態によれば、光ファイバ式ひずみセンサとして、FBG(Fiber Bragg Grating)センサを用いることにより、構造物の線状部材のひずみの変動を、良好な精度で測定することができる。
【0024】
本発明の他の側面による構造物用線状部材は、張力を受け持つために構造物に使用される線状部材であって、
張力を伝達する芯材と、
上記芯材の表面の近傍に両端が固定された保護容器と、
上記保護容器内に収容され、上記保護容器の両端の固定部分の近傍で、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が上記保護容器に各々固定され、この線状部材のひずみの変動を検出するFBGセンサと、
上記芯材と、上記FBGセンサが収容された保護容器とを被覆する保護材と
を備えることを特徴としている。
【0025】
上記構成によれば、張力を受け持つために構造物に使用される線状部材は、張力を伝達する芯材を備え、この芯材の表面の近傍に、保護容器の両端が固定されている。この保護容器は、例えば、芯材に沿って延在する細長の円筒形状や、細長の直方体形状に形成することができる。上記保護容器内に、この線状部材のひずみの変動を検出するFBGセンサが収容されている。このFBGセンサは、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が、上記保護容器の両端の固定部分の近傍で、この保護容器に各々固定されている。上記芯材と、上記FBGセンサが収容された保護容器とが、保護材で被覆されている。このような構成により、FBGセンサにより、線状部材のひずみの変動を測定することができる。また、FBGセンサを使用すると共に、FBGセンサを保護容器と保護材で保護しているので、長期にわたって安定して張力を検出することができる。
【0026】
本発明の他の側面による構造物用線状部材は、張力を受け持つために構造物に使用される線状部材であって、
張力を伝達する芯材と、
上記芯材の表面の近傍に両端が固定された固定部と、これらの固定部の間に設けられ、長手方向に伸縮可能に形成された伸縮部とを有する保護容器と、
上記保護容器内に収容され、上記保護容器の両端の固定部分よりも内側の位置で、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が上記保護容器に固定され、この線状部材のひずみの変動を検出するFBGセンサと、
上記芯材と、上記FBGセンサが収容された保護容器を被覆する保護材と
を備えることを特徴としている。
【0027】
上記構成によれば、張力を受け持つために構造物に使用される線状部材は、張力を伝達する芯材を備え、この芯材の表面の近傍に、保護容器の両端が固定されている。この保護容器は、例えば、芯材に沿って延在する細長の円筒形状や、細長の直方体形状に形成することができる。上記保護容器内に、この線状部材のひずみの変動を検出するFBGセンサが収容されている。このFBGセンサは、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が、上記保護容器の両端の固定部分よりも内側の位置で、この保護容器に各々固定されている。この保護容器は、FBGセンサの両側部分が固定された位置の間に、伸縮部が形成される。伸縮部は、互いに摺動可能に重なり合って形成された複数の筒状の部材で構成されてもよく、あるいは、蛇腹状の部材で構成されてもよい。また、上記保護容器には、上記芯材の表面の近傍に固定された固定部分と、FBGセンサの両側部分が固定された位置との間の部分は伸縮部が形成されず、固定部分の変位を実質的に変化させずにFBGセンサの両側部分へ伝達させる。上記芯材と、上記FBGセンサが収容された保護容器とが、保護材で被覆されている。このような構成により、FBGセンサにより、線状部材のひずみの変動を測定することができる。また、FBGセンサは、ひずみの検出部を挟んだ両側部分が、上記保護容器の両端の固定部分よりも内側の位置で保護容器に各々固定されているので、上記保護容器の両端の固定部分の間の距離と、上記FBGセンサの両側部分の相互間の距離との比率に応じて、線状部材のひずみが増幅される。したがって、線状部材のひずみの変動を、良好な精度で測定することができる。また、FBGセンサを使用すると共に、FBGセンサを保護容器と保護材で保護しているので、長期にわたって安定して張力を検出することができる。
【0028】
本発明の他の側面による構造物用線状部材は、張力を受け持つために構造物に使用される線状部材であって、
張力を伝達する芯材と、
上記芯材の表面部分に粘着テープで張り付けられたFBGセンサと、
上記芯材と、上記FBGセンサを張り付けた粘着テープを被覆する保護材と
を備えることを特徴としている。
【0029】
上記構成によれば、張力を受け持つために構造物に使用される線状部材は、張力を伝達する芯材を備え、この芯材の表面部分に、FBGセンサが粘着テープで張り付けられている。上記芯材と、上記FBGセンサを張り付けた粘着テープが、保護材で被覆されている。このような構成により、FBGセンサにより、線状部材のひずみの変動を測定することができる。上記FBGセンサは、線状部材の張力を検出するためには、線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動を測定すればよい。したがって、FBGセンサを粘着テープで芯材に張り付けて保護材で保護するという比較的簡易な構造で、張力を検出可能な構造物用線状部材が得られる。
【0030】
一実施形態の構造物用線状部材は、端部の近傍に、上記FBGセンサに接続するためのコネクタが設けられている。
【0031】
上記実施形態によれば、構造物用線状部材の端部の近傍に設けられたコネクタに、FBGセンサの測定器を接続することにより、上記線状部材に内蔵されたFBGセンサによるひずみの変動の測定を、少ない手間で迅速に行うことができる。
【0032】
本発明の他の側面による構造物用線状部材用センサ設置治具は、張力が作用している構造物用の線状部材に、この線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動を検出するFBGセンサを設置するためのセンサ設置治具であって、
上記線状部材の表面に、この線状部材の軸方向に所定間隔をおいて固定される2つの固定部材と、
基端が上記2つの固定部材に各々固定され、上記線状部材と平行に延在すると共に、先端が互いに接近する方向に延びる2つの延在部材と、
上記2つの延在部材の先端に各々設けられ、FBGセンサのひずみ検出部の両側を固定する2つのセンサ固定体と
を備えることを特徴としている。
【0033】
上記構成によれば、張力が作用している構造物用の線状部材にFBGセンサを設置するためのセンサ設置治具は、上記FBGセンサで線状部材の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動を検出し、検出した情報に基づいて線状部材の張力を検出するために用いられる。このセンサ設置治具は、2つの固定部材が、上記線状部材の表面に、この線状部材の軸方向に所定間隔をおいて固定される。これらの固定部材に、上記線状部材と平行に延在すると共に、先端が互いに接近する方向に延びる2つの延在部材が、各々設置される。これらの2つの延在部材の先端に、FBGセンサのひずみ検出部の両側を固定するセンサ固定体が各々設けられる。このような構成により、上記2つの固定部材の間の距離と、上記2つのセンサ固定体の間の距離との比率に応じて、線状部材のひずみが増幅される。したがって、このセンサ設置治具で線状部材に後付けしたFBGセンサにより、線状部材のひずみの変動を良好な精度で測定することができ、その結果、線状部材に作用する張力を良好な精度で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法を、橋梁のケーブルに適用する様子を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法を示すフロー図である。
図3】本発明の第1実施形態の構造物用線状部材の端部を示す断面図である。
図4A】第1実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す横断面図である。
図4B】第1実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す縦断面図である。
図5A】第2実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す横断面図である。
図5B】第2実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す縦断面図である。
図6】第3実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す横断面図である。
図7】第4実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す横断面図である。
図8】第5実施形態の構造物用線状部材を模式的に示す縦断面図である。
図9】第6実施形態の構造物用線状部材が備える保護容器と光ファイバ式ひずみセンサを模式的に示す縦断面図である。
図10A】第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す平面図である。
図10B】第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す側面図である。
図10C】第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す断面図である。
図11A】第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す平面図である。
図11B】第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す側面図である。
図11C】第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す断面図である。
図12A】第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す平面図である。
図12B】第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す側面図である。
図12C】第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す断面図である。
図13A】第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す平面図である。
図13B】第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す側面図である。
図13C】第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、構造物用線状部材に2つの光ファイバ式ひずみセンサを設置した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法を、橋梁用ケーブルに適用する様子を示す模式図である。本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、構造物としての橋梁に使用されている線状部材としてのケーブルに作用する張力を検出するものである。
【0037】
図1に示すように、本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、橋梁用のケーブル1に、光ファイバ式ひずみセンサ2を設置する。光ファイバ式ひずみセンサ2は、FBGセンサを用いるのが好ましい。この光ファイバ式ひずみセンサ2は、予め橋梁用ケーブル1に内蔵されていてもよく、あるいは、測定を行う際に橋梁用ケーブル1に後付けしてもよい。この光ファイバ式ひずみセンサ2により、矢印Aで示すように橋梁用ケーブル1の軸直角方向に変位する振動に起因するひずみの変動を測定する。光ファイバ式ひずみセンサ2としてFBGセンサを用いた場合、このFBGセンサは、光ファイバのコアの所定位置に回折格子が形成されてなるひずみ検出部2aを有し、このひずみ検出部2aの回折格子における光の反射波長の変化に基づいて、ひずみを検出する。光ファイバ式ひずみセンサ2は、FBG測定器3に接続されている。
【0038】
上記FBG測定器3は、光ファイバ式ひずみセンサ2に光信号を送出すると共にひずみ検出部2aからの反射光を受光し、これらの送出光と反射光の差に基づいて、ひずみ検出部2aで検出されたひずみに関する情報を出力する。FBG測定器3は、パーソナルコンピュータ4に接続されており、このパーソナルコンピュータ4は、FBG測定器3から受け取ったひずみに関する情報を記憶すると共に、ひずみに関する情報の解析を行って橋梁用ケーブル1の張力を検出する。
【0039】
図2は、本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法を示すフロー図である。図2のフロー図に示すように、本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法では、まず、光ファイバ式ひずみセンサ2としてのFBGセンサにより、橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定する(ステップS1)。橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定するとき、加振器等を用いて橋梁用ケーブル1に振動を与えてひずみの変動を生じさせてもよいが、風荷重や活荷重等の種々の荷重によって橋梁用ケーブル1に生じる常時微振動に起因するひずみの変動を測定してもよい。ここで、光ファイバ式ひずみセンサ2で測定されるひずみの変動には、橋梁用ケーブル1の軸方向に作用する荷重の変動に起因するひずみの変動と、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動とが重なっている。上記橋梁用ケーブル1の軸方向に作用する荷重としては、この橋梁用ケーブル1が支持する床版上を走行する車両の荷重が挙げられる。
【0040】
続いて、光ファイバ式ひずみセンサ2によるひずみの測定値にFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)処理を行い、ひずみの変動周波数の分布を検出する(ステップS2)。このFFT処理は、FBG測定器3とパーソナルコンピュータ4のいずれで行ってもよい。
【0041】
この後、ステップS2で検出したひずみの変動周波数の分布に基づいて、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因する固有振動数を特定する(ステップS3)。橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因する固有振動数は、ひずみの変動周波数分布のうち、周波数帯域に基づいて特定することができる。あるいは、橋梁用ケーブル1の複数の異なる周方向位置で同時に測定したひずみの変動の差分を取り、この差分にFFT処理を行って周波数分布を検出した結果に基づいて、固有振動数を特定してもよい。ここで、橋梁用ケーブル1には、軸方向に作用する荷重に起因するひずみの変動と、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動とが重なっており、これらのうち、軸方向の荷重に起因するひずみの変動は、橋梁用ケーブル1のいずれの位置においても互いに同一である。したがって、橋梁用ケーブル1の異なる周方向位置で同時に測定された複数のひずみの変動の差分を取ることにより、軸方向の荷重に起因するひずみの変動を相殺し、橋梁用ケーブル1の軸直角方向の振動Aに起因するひずみの変動のみを抽出することができる。
【0042】
この後、上記ステップS3で特定した橋梁用ケーブル1の固有振動数に基づいて、橋梁用ケーブル1に作用する張力を算出する(ステップS4)。固有振動数を用いた橋梁用ケーブル1の張力の算出は、次の関係式(1)を利用することができる。
【数1】
ここで、Tは橋梁用ケーブル1の張力、wは橋梁用ケーブル1の単位重量、gは重力加速度、fnはn次の固有振動数、Lは橋梁用ケーブル1の長さ、nは固有振動数の次数、Cは定数である。この定数Cは、次の関係式(2)によって求められる。
【数2】
ここで、E・Iは橋梁用ケーブル1の曲げ剛性である。
【0043】
上記式(1)及び(2)に基づく橋梁用ケーブル1の張力の算出は、パーソナルコンピューター4で行う。ここで、固有振動数を用いた橋梁用ケーブル1の張力の算出式は、上記式(1)及び(2)に限定されず、いわゆる振動法として提案される種々の式を用いることができる。
【0044】
このように、本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法によれば、光ファイバ式ひずみセンサ2により橋梁用ケーブル1のひずみの変動を測定し、このひずみの変動の測定結果から橋梁用ケーブル1の固有振動数を特定し、特定した固有振動数に基づいて橋梁用ケーブル1の張力を検出する。したがって、光ファイバ式ひずみセンサ2は、橋梁用ケーブル1のひずみの値を正確に測定する必要が無いので、橋梁用ケーブル1に、ひずみの変動を測定可能な程度の強度で固定されていればよい。すなわち、例えば従来の光ファイバ付きPC鋼撚り線のように、PC鋼撚り線の張力をPC鋼撚り線の軸方向のひずみの値から検出することを目的とし、ひずみ測定用光ファイバのひずみを鋼撚り線のひずみと一致させるために、ひずみ測定用光ファイバをフィラーで包むと共に鋼撚り線に撚り合わせて強固に固定する必要が無い。したがって、本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法では、橋梁用ケーブル1に簡易な固定構造で容易に取り付けた光ファイバ式ひずみセンサ2を用いることができ、その結果、張力の検出のための準備や作業を従来よりも簡易にできる。
【0045】
本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、橋梁用ケーブル1に光ファイバ式ひずみセンサ2を後付けしてひずみの変動を測定してもよいが、光ファイバ式ひずみセンサ2を予め内蔵したセンサ内蔵型橋梁用ケーブル1を用いるのが、測定作業を容易にできる点で好ましい。光ファイバ式ひずみセンサ2が予め内蔵されたセンサ内蔵型橋梁用ケーブル1としては、例えば、芯材の外周側に保護管を添えた状態で保護材を被覆し、上記保護管の内側に光ファイバ式ひずみセンサ2を挿入した後、上記保護管内に接着剤等の固定用樹脂を注入して形成することができる。このような簡易な構造で光ファイバ式ひずみセンサ2を内蔵した橋梁用ケーブル1を使用できるので、張力の検出が可能な橋梁用ケーブル1を低コストで製造することができる。
【0046】
図3は、本発明の構造物用線状部材の張力検出方法を適用可能な第1実施形態の構造物用線状部材としての橋梁用のケーブルの端部を示す断面図である。第1実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11は、光ファイバ式ひずみセンサ2が予め内蔵されている。このセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11は、斜張橋等の橋梁で桁等を吊り下げて支持するために用いられる。このセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11は、張力を伝達する芯材14を備え、この芯材14は、高張力鋼の亜鉛メッキ鋼で形成された複数の素線が平行に配列して形成されている。この芯材14の外側には、芯材14を保護する保護材としての保護膜15が被覆されている。保護膜15は、ポリエチレンで形成されるのが好ましいが、他の材料で形成されてもよい。センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の端部には、芯材14と保護膜15が内挿された外とう管16が設けられており、この外とう管16の先端側に、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の端部を桁等の他の部材に連結するためのソケット部12が設けられている。
【0047】
本実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11は、上記芯材14の外側面に沿うように、光ファイバ式ひずみセンサ2が配置されている。この光ファイバ式ひずみセンサ2は、FBGセンサであり、全長にわたって延びる光ファイバの先端側の部分に、回折格子が形成されてなるひずみ検出部2aを有する。このひずみ検出部2aが、芯材14の外側面に接すると共に保護膜15で被覆された位置に配置されている。光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aよりも基端側の部分は、芯材14の表面に沿ってソケット部12に向かって延在しており、ソケット部12の先端の近傍で、外部に引き出されている。光ファイバ式ひずみセンサ2の基端には、FBG測定器3に接続するためのコネクタ20が設けられている。
【0048】
図4Aは、第1実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11の横断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aにおける断面を模式的に示す横断面図である。図4Bは、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の縦断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aの周辺部分を模式的に示す縦断面図である。図4A及び4Bにおいて、芯材14と保護膜15との間の隙間の形状と、保護膜15の形状は、模式的に示したものであり、実際の隙間と保護膜15の形状は異なる。図4A及び4Bに示すように、芯材14の外周面に接するように光ファイバ式ひずみセンサ2を配置し、これらの芯材14と光ファイバ式ひずみセンサ2の外側を保護膜15で被覆するという簡易な構造で、光ファイバ式ひずみセンサ2をセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11に内蔵させることができる。このような簡易な構造で内蔵された光ファイバ式ひずみセンサ2により、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11のひずみの変動を測定することで、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の軸直角方向の振動に起因する変動周波数の分布を検出して固有振動数を特定し、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の張力を検出することができる。ここで、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11は、軸直角方向の断面において、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aがセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11の上端に位置するように配置されるのが好ましい。センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の上端に位置する光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aにより、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11に卓越して発生する上下方向の振動に起因するひずみの変動を、効果的に測定することができる。また、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aは、軸直角方向の断面において、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の下端に位置するように配置されてもよい。また、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11に生じる振動に応じて、他の位置に光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aを配置してもよい。また、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11に配置される光ファイバ式ひずみセンサ2の数は、1個に限定されず、2個以上でもよい。また、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11に光ファイバ式ひずみセンサ2を2個以上配置する場合、センサ内蔵型橋梁用ケーブル11の軸直角断面において、互いに90°又は180°の角度を置いて配置するのが好ましい。
【0049】
また、第1実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11は、このセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11の端部のソケット部12に、光ファイバ式ひずみセンサ2のコネクタ20を備えるので、作業者は、コネクタ20にFBG測定器3を接続すれば、ひずみの測定作業を容易かつ迅速に行うことができる。ここで、光ファイバ式ひずみセンサ2は、ソケット部12の端面からケーブル11の外側に引き出されてもよく、あるいは、ソケット部12以外の位置からケーブル11の外側に引き出されてもよい。また、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aの位置は、ケーブル11の軸方向において、端部でも中央部でもよく、任意の位置に配置することができる。
【0050】
図5Aは、第2実施形態の構造物用線状部材としてのセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21の横断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aにおける断面を模式的に示す横断面図である。図5Bは、センサ内蔵型橋梁用ケーブル21の縦断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aの周辺部分を模式的に示す縦断面図である。図5A及び5Bにおいて、芯材14とテープ固定部23との間の隙間の形状と、テープ固定部23の形状と、テープ固定部23と外とう管22との間の隙間の形状は、模式的に示したものであり、実際の各々の隙間とテープ固定部23の形状は異なる。
【0051】
第2実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21は、光ファイバ式ひずみセンサ2が予め内蔵されている。図5A及び5Bに示すように、第2実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21は、芯材14が外とう管22内に収容されて形成されている。このセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21は、平行に配列された素線からなる芯材14と、この芯材14の外周面に接するように配置された光ファイバ式ひずみセンサ2と、この光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aの近傍部分と上記芯材14を取り巻くように配置されたテープ固定部23を備える。テープ固定部23は、樹脂製の粘着テープを巻回して形成されている。上記芯材14と光ファイバ式ひずみセンサ2とテープ固定部23が外とう管22内に収容されている。上記芯材14と光ファイバ式ひずみセンサ2とテープ固定部23と、外とう管22との間には、保護材として、防錆剤を注入してなる防錆層24が形成されている。このように、芯材14の外周面に、テープ固定部23で光ファイバ式ひずみセンサ2を固定するという簡易な構造で、光ファイバ式ひずみセンサ2を内蔵したセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21を構成できる。このような簡易な構造で内蔵された光ファイバ式ひずみセンサ2により、センサ内蔵型橋梁用ケーブル21のひずみの変動を測定し、ひずみ変動に基づいて固有振動数を特定し、センサ内蔵型橋梁用ケーブル21の張力を検出することができる。ここで、テープ固定部23は、粘着テープを芯材14の全周を巻回して形成されたものに限定されず、芯材14の周方向の一部に粘着テープを貼付して形成されてもよい。テープ固定部23は、粘着テープで光ファイバ式ひずみセンサ2を芯材14に張り付けたものであれば、その形状は特に限定されない。
【0052】
図6は、第3実施形態の構造物用線状部材としてのセンサ内蔵型橋梁用ケーブル31の横断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aにおける断面を模式的に示す横断面図である。第3実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル31は、光ファイバ式ひずみセンサ2の固定部材26を設けた点が、第1実施形態の橋梁用ケーブル11と異なる。第3実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル31において、第1実施形態の橋梁用ケーブル11と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0053】
第3実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル31は、光ファイバ式ひずみセンサ2が予め内蔵されており、この光ファイバ式ひずみセンサ2は、固定部材26を介して芯材14の表面に設置されている。固定部材26は、光ファイバ式ひずみセンサ2の直径よりも広い幅を有する帯状の板状体であり、樹脂や金属により形成することができる。芯材14と、固定部材26を介して芯材14に取り付けられた光ファイバ式ひずみセンサ2は、保護膜15によって被覆されている。第3実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル31は、固定部材26を介して芯材14に接する光ファイバ式ひずみセンサ2により、ひずみの変動を効果的に測定することができる。
【0054】
図7は、第4実施形態の構造物用線状部材としてのセンサ内蔵型橋梁用ケーブル41の横断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aにおける断面を模式的に示す横断面図である。第4実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル41は、光ファイバ式ひずみセンサ2の固定部材26を設けた点が、第2実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21と異なる。第4実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル41において、第2実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル21と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0055】
第4実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル41は、光ファイバ式ひずみセンサ2が予め内蔵されており、芯材14の表面に、固定部材26を介して光ファイバ式ひずみセンサ2が設置されている。固定部材26は、光ファイバ式ひずみセンサ2の直径よりも広い幅を有する帯状の板状体であり、樹脂や金属により形成することができる。芯材14と、固定部材26を介して芯材14に取り付けられた光ファイバ式ひずみセンサ2は、ひずみ検出部2aの近傍部分が、テープ固定部23で被覆されている。第4実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル41は、固定部材26を介して芯材14に接する光ファイバ式ひずみセンサ2により、ひずみの変動を効果的に測定することができる。
【0056】
図8は、第5実施形態の構造物用線状部材としてのセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51の縦断面図であって、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aの周辺部分を模式的に示す縦断面図である。第5実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51は、光ファイバ式ひずみセンサ2を内蔵したセンサ内蔵型のケーブルである。このセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51は、光ファイバ式ひずみセンサ2が保護容器に収容され、この光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した保護容器が、芯材14を被覆する保護材の中に埋設されている点が、第1実施形態の橋梁用ケーブル11と異なる。第5実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51において、第1実施形態の橋梁用ケーブル11と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0057】
図8に示すように、第5実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51は、芯材14と、芯材14の表面の近傍に配置されて光ファイバ式ひずみセンサ2を収容した保護容器36と、上記芯材14と保護容器36とを被覆する保護材としての保護層35を備える。ここで、図8は、芯材14の寸法を、保護容器36と保護層35の寸法に対して過小に表した模式図である。保護容器36は、ステンレス鋼で形成された円筒管であり、光ファイバ式ひずみセンサ2を略同軸に収容している。保護容器36は、芯材14の表面の近傍に、芯材14と平行に配置された状態で、保護層35内に埋没されている。保護容器36の外側面には、保護層35に固定される2つの固定部37A,37Bが設けられている。これらの固定部37A,37Bは、保護容器36の径方向外側に突出した突起で形成され、保護層35と噛み合うことで、保護層35に対して軸方向に移動不可に固定される。保護容器36の内側面には、上記固定部37A,37Bが設けられた軸方向位置と略同一の軸方向位置に、光ファイバ式ひずみセンサ2を固定する光ファイバ固定体38A,38Bが各々設けられている。これらの2つの光ファイバ固定体38A,38Bは、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aを挟んだ両側に各々配置されており、光ファイバ式ひずみセンサ2の固定部分を、軸方向に移動不可に各々固定している。保護層35は、ポリエチレンで形成されている。このセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51は、芯材14の表面側に保護容器36が配置された状態で、溶融したポリエチレン材料が塗布されることにより、芯材14と保護容器36を被覆して保護容器36を内部に埋没させた保護層35が作製されている。ここで、保護層35は、芯材14と保護容器36を被覆して保護する機能を有していれば、他の材料で形成されてもよい。
【0058】
第5実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51は、軸方向の荷重や、軸直角方向の振動に起因するひずみの変動が、光ファイバ式ひずみセンサ2の検出部2aによって測定される。ここで、検出部2aで測定されるひずみεは、図8に示す2つの光ファイバ固定体38A,38Bの相互間の距離Lに対してΔLの変位が生じた場合、ε=ΔL/Lと表すことができる。本実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51は、光ファイバ式ひずみセンサ2が、固定部37A,37Bで保護層35に固定された保護容器36内に収容されると共に、保護容器36に固定された光ファイバ固定体38A,38Bで固定されているので、センサ内蔵型橋梁用ケーブル51に生じるひずみの変動を、安定して良好な精度で測定することができる。
【0059】
図9は、第6実施形態の構造物用線状部材としてのセンサ内蔵型橋梁用ケーブルが備える保護容器43と光ファイバ式ひずみセンサ2を模式的に示す縦断面図である。第6実施形態の橋梁用ケーブルは、光ファイバ式ひずみセンサ2を収容する保護容器が伸縮可能に形成される点と、光ファイバ式ひずみセンサ2の光ファイバ固定体38A,38Bの設置位置が、第5実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51と異なる。第6実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブルにおいて、第5実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブル51と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0060】
第6実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブルは、光ファイバ式ひずみセンサ2が予め内蔵されたセンサ内蔵型のケーブルである。図9に示すように、第6実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブルの保護容器43は、円筒管で形成された2つの固定容器43a,43aが、端面を互いに対向させると共に所定の間隔をおいて配置されている。これらの2つの固定容器43a,43aの端部の外側面を覆うように、円筒管で形成されて固定容器43aの外径よりも多少大きな内径を有する摺動管43bが嵌合している。この固定容器43a,43aの間であって摺動管43bに外嵌された部分が、保護容器の伸縮部に該当する。保護容器の固定容器43a,43aの内側面には、互いに対向する端面の近傍に、光ファイバ式ひずみセンサ2のひずみ検出部2aを挟んだ両側を固定する光ファイバ固定体38A,38Bが、各々設けられている。また、保護容器の固定容器43a,43aの外側面には、光ファイバ固定体38A,38Bよりも互いに遠い軸方向位置に、固定容器43a,43aを保護層35に固定するための固定部44A,44Bが設けられている。この保護容器43は、第5実施形態と同様に、芯材14の表面側に配置され、保護層35によって芯材14と共に被覆されている。
【0061】
第6実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブルは、軸方向の荷重や、軸直角方向の振動に起因するひずみの変動が、光ファイバ式ひずみセンサ2の検出部2aによって測定される。ここで、検出部2aで測定されるひずみεは、図9に示す2つの光ファイバ固定体38A,38Bの相互間の距離Lに対してΔLの変位が生じた場合、ε=ΔL/Lと表すことができる。ここで、この変位ΔLは、固定容器の固定部44A,44Bの相互間の距離Lに対して生じる変位と同一であるため、これらの固定部44A,44Bの間で生じるひずみεは、ε=ΔL/Lと表すことができる。これらより、検出部2aで測定されるひずみεと、固定部44A,44Bの間に生じるひずみであって、センサ内蔵型橋梁用ケーブルに実際に生じるひずみεとの間には、ε=ε・(L/L)の関係が成立する。このように、第6実施形態のセンサ内蔵型橋梁用ケーブルは、伸縮可能な保護容器43の内側に、保護容器の固定部44A,44Bの相互間よりも小さい距離で配置された光ファイバ固定体38A,38Bを設けて光ファイバ式ひずみセンサ2を固定することにより、ひずみを増幅して測定することができる。すなわち、保護容器の固定部44A,44Bの相互間の変位を、固定容器43aの固定部44A,44Bよりも互いに近い側の部分を変位伝達手段として機能させて伝達し、光ファイバ固定体38A,38Bの間の検出部2aで測定することにより、光ファイバ式ひずみセンサ2で測定するひずみを増幅することができる。その結果、センサ内蔵型橋梁用ケーブルに生じるひずみの変動を、安定して良好な精度で測定することができる。
【0062】
第6実施形態において、保護容器43は、2つの固定容器43aの端面の間に、この固定容器43aの端部に外嵌する摺動管43bによって伸縮部を形成したが、伸縮部は他の構造でもよい。例えば、固定容器43aの互いの端面の間に連結された蛇腹状部材や、柔軟な筒状体等によって伸縮部を形成してもよい。
【0063】
図10Aは、第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、橋梁用ケーブル61に光ファイバ式ひずみセンサ2Aを後付けした様子を示す平面図である。図10Bは、橋梁用ケーブル61に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けした様子を示す側面図であり、図10Cは、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bが後付けされた橋梁用ケーブル61の断面図である。本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、橋梁用ケーブル61の表面に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けする点が、第1実施形態の橋梁用ケーブル11を用いた張力検出方法と異なる。第7実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0064】
第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、芯材14が保護膜15で被覆されてなる既存の橋梁用ケーブル61の表面に、2つの光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを粘着テープ53で取り付けて後付けする。これらの第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2BはFBGセンサであり、ひずみ検出部2aを含んだ軸方向の所定範囲が粘着テープ53で被覆されて、橋梁用ケーブル61の表面に張り付けられている。図10B及び10Cに示すように、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bは、橋梁用ケーブル61の軸直角断面において、上端と下端に180°の角度を置いて配置されている。
【0065】
この第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法では、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを橋梁用ケーブル61に取り付けた後に、上記第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bによって橋梁用ケーブル61の振動を測定してひずみ変動測定工程を行う。この後、変動周波数分布検出工程を行い、上記ひずみ変動測定工程で第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bによって測定されたひずみの変動に基づいて、橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布を検出する。ここで、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bによる測定値の差分を取ることにより、橋梁用ケーブル61の軸方向に作用する荷重に起因するひずみの変動を相殺する。これにより、橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動のみを抽出する。こうして抽出した橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動についてFFT処理を行うことにより、橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布を検出することができる。この後、固有振動数特定工程を行い、上記橋梁用ケーブル61のひずみの変動周波数分布に基づいて、この橋梁用ケーブル61の固有振動数を特定する。特定された固有振動数に基づいて、張力算出工程により、橋梁用ケーブル61の張力を算出する。
【0066】
このように、第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、2つの光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを粘着テープ53で橋梁用ケーブル61に取り付けるという簡単な作業により、橋梁用ケーブル61の張力を検出することができる。また、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを、橋梁用ケーブル61の上端と下端に、軸直角断面において180°の角度を置いて配置し、これらの第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bの測定値の差分を取るので、橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動のみを抽出できる。したがって、橋梁用ケーブル61の固有振動数を良好な精度で特定することができて、橋梁用ケーブル61の張力を良好な精度で容易に検出することができる。
【0067】
図11Aは、第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、橋梁用ケーブル61に光ファイバ式ひずみセンサ2Aを後付けした様子を示す平面図である。図11Bは、橋梁用ケーブル61に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けした様子を示す側面図であり、図11Cは、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bが後付けされた橋梁用ケーブル61の断面図である。本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、橋梁用ケーブル61の表面に、光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを、取付治具を用いて後付けする点が、第7実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法と異なる。第8実施形態において、第7実施形態と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0068】
第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、既存の橋梁用ケーブル61の表面に、2つの光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを、取付治具54A,54Bを用いて、橋梁用ケーブル61の上端と下端に後付けする。橋梁用ケーブル61の上端に取り付けられる第1の光ファイバ式ひずみセンサ2Aは、第1の取付治具54Aで取り付けられる。この第1の取付治具54Aは、ひずみ検出部2aの両側に配置され、橋梁用ケーブル61の表面に接する第1及び第2のケーブル固定部材55A,55Bを有する。これらのケーブル固定部材55A,55Bの橋梁用ケーブル61から遠い側の面には、第1の光ファイバ式ひずみセンサ2Aの光ファイバの部分を固定して支持する第1及び第2の光ファイバ固定体56A,56Bが、各々配置されている。橋梁用ケーブル61の下端に第2の光ファイバ式ひずみセンサ2Bを取り付ける第2の取付治具54Bは、第1の取付治具54Aと同様の第1及び第2のケーブル固定部材55A,55Bと、第1及び第2の光ファイバ固定体56A,56Bを有する。上記第1の取付治具54Aの第1のケーブル固定部材55Aと、上記第2の取付治具54Bの第1のケーブル固定部材55Aが、固定バンド57で互いに緊結されて、橋梁用ケーブル61の表面に固定されている。また、上記第1の取付治具54Aの第2のケーブル固定部材55Bと、上記第2の取付治具54Bの第2のケーブル固定部材55Bが、固定バンド57で互いに緊結されて、橋梁用ケーブル61の表面に固定されている。固定バンド57は、樹脂製の荷締めベルトや結束ベルトや結束バンド等で形成できるが、金属で形成された帯状体を用いてもよい。
【0069】
この第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法では、第6実施形態と同様に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを橋梁用ケーブル61に取り付けた後に、上記光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bによって橋梁用ケーブル61の振動を測定してひずみ変動測定工程を行う。この後、変動周波数分布検出工程を行い、上記ひずみ変動測定工程で第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bによって測定されたひずみの変動の差分に基づいて、橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動周波数の分布を検出する。この橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみの変動についてFFT処理を行い、ひずみの変動周波数の分布を検出する。この後、固有振動数特定工程を行って橋梁用ケーブル61の固有振動数を特定し、特定された固有振動数に基づいて、張力算出工程により、橋梁用ケーブル61の張力を算出する。
【0070】
このように、第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを、第1及び第2の取付治具54A,54Bを用いて、橋梁用ケーブル61に容易に固定して、橋梁用ケーブル61のひずみ変動を測定し、橋梁用ケーブル61の軸直角方向の振動に起因するひずみ変動を検出することができる。その結果、橋梁用ケーブル61の張力を、良好な精度で容易に検出することができる。
【0071】
図12Aは、第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、橋梁用ケーブル61に光ファイバ式ひずみセンサ2Aを後付けした様子を示す平面図である。図12Bは、橋梁用ケーブル61に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けした様子を示す側面図であり、図12Cは、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bが後付けされた橋梁用ケーブル61の断面図である。本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、橋梁用ケーブル61の表面に光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けする取付治具の構造が異なる点が、第8実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法と異なる。第9実施形態において、第8実施形態と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0072】
第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、既存の橋梁用ケーブル61の表面に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを、第1及び第2の取付治具62A,62Bで各々後付けする。これらの取付治具62A,62Bは、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bのひずみの測定値を増幅する増幅型取付治具である。第1の増幅型取付治具62Aは、第1の光ファイバ式ひずみセンサ2Aを、橋梁用ケーブル61の上端に取り付ける。この第1の増幅型取付治具62Aは、ひずみ検出部2aの両側に配置され、橋梁用ケーブル61の表面に接するケーブル固定部材63A,63Bを有する。これらのケーブル固定部材63A,63Bに、橋梁用ケーブル61と平行に延在すると共に、互いに接近する方向に延びる2つの延在部材64A,64Bの基端が固定されている。延在部材64A,64Bは、棒状の材料で形成するのが好ましいが、断面形状は特に限定されない。この2つの延在部材64A,64Bの先端には、第1の光ファイバ式ひずみセンサ2Aのひずみ検出部2aの両側を固定する光ファイバ固定体65A,65Bが夫々設けられている。橋梁用ケーブル61の下端に第2の光ファイバ式ひずみセンサ2Bを取り付ける第2の増幅型取付治具62Bは、第1の増幅型取付治具62Aと同様のケーブル固定部材63A,63Bと、延在部材64A,64Bと、光ファイバ固定体65A,65Bを有する。上記第1の増幅型取付治具62Aの第1のケーブル固定部材63Aと、上記第2の増幅型取付治具62Bの第1のケーブル固定部材63Aが、固定バンド57で互いに緊結されて、橋梁用ケーブル61の表面に固定されている。また、上記第1の増幅型取付治具62Aの第2のケーブル固定部材63Bと、上記第2の増幅型取付治具62Bの第2のケーブル固定部材63Bが、固定バンド57で互いに緊結されて、橋梁用ケーブル61の表面に固定されている。
【0073】
第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法で使用される増幅型取付治具62Aは、光ファイバ式ひずみセンサ2の検出部2aによって測定する橋梁用ケーブル61のひずみを、増幅することができる。検出部2aで測定されるひずみε10は、図12Bに示す2つの光ファイバ固定体65A,65Bの相互間の距離Lに対してΔLの変位が生じた場合、ε10=ΔL/Lと表すことができる。ここで、この変位ΔLは、2つのケーブル固定部材63A,63Bの相互間の距離Lに対して生じる変位と同一であるため、これらのケーブル固定部材63A,63Bの間で生じるひずみε20は、ε20=ΔL/Lと表すことができる。これらより、検出部2aで測定されるひずみε10と、ケーブル固定部材63A,63Bの間に生じるひずみであって、橋梁用ケーブル61に実際に生じるひずみε20との間には、ε10=ε20・(L/L)の関係が成立する。
【0074】
このように、第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法で用いる増幅型取付治具62Aは、橋梁用ケーブル61の表面に接するケーブル固定部材63A,63Bに、2つの延在部材64A,64Bの基端が固定され、これらの延在部材64A,64Bの先端に設けられた光ファイバ固定体65A,65Bで光ファイバ式ひずみセンサ2Aのひずみ検出部2aの両側を固定するので、橋梁用ケーブル61のひずみを増幅して測定することができる。すなわち、ケーブル固定部材63A,63Bの間の変位を、変位伝達手段として機能する延在部材64A,64Bによって伝達し、光ファイバ固定体65A,65Bの間の検出部2aで測定することにより、光ファイバ式ひずみセンサ2で測定するひずみを増幅することができる。このようなひずみの増幅効果は、第1の増幅型取付治具62Aと第2の増幅型取付治具62Bのいずれも同様に発揮できる。その結果、橋梁用ケーブル61に生じるひずみの変動を、安定して良好な精度で測定することができる。
【0075】
図13Aは、第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、橋梁用ケーブル61に光ファイバ式ひずみセンサ2Aを後付けした様子を示す平面図である。図13Bは、橋梁用ケーブル61に、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けした様子を示す側面図であり、図13Cは、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bが後付けされた橋梁用ケーブル61の断面図である。本実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法は、橋梁用ケーブル61の表面に光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けする取付治具の固定構造が異なる点が、第9実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法と異なる。第10実施形態において、第9実施形態と同様の構成部分には同一の符号を用いて、詳細な説明を省略する。
【0076】
第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法では、既存の橋梁用ケーブル61に第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを後付けするため、第9実施形態と同様の第1及び第2の増幅型取付治具62A,62Bを用いる。すなわち、第1及び第2の増幅型取付治具62A,62Bは、橋梁用ケーブル61の表面に接するケーブル固定部材63A,63Bと、このケーブル固定部材63A,63Bに基端が固定された2つの延在部材64A,64Bと、これらの延在部材64A,64Bの先端に設けられて光ファイバ式ひずみセンサ2Aのひずみ検出部2aの両側を固定する2つの光ファイバ固定体65A,65Bを備える。第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法では、上記第1及び第2の増幅型取付治具62A,62Bを、固定バンド57に替えて、金属製の固定リング73,73によって互いに固定している。この固定リング73,73は、ケーブル固定部材63A,63Bが中央に各々挿通された2つの半円弧状の金属製のベルトを、橋梁用ケーブル61の表面を取り囲むように配置し、これらのボルトの端部に形成されたフランジをボルト74で互いに固定して橋梁用ケーブル61に装着されている。この固定リング73,73により、第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを橋梁用ケーブル61の表面に強固に固定することができる。その結果、橋梁用ケーブル61に生じるひずみの変動を、後付けした第1及び第2の光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bにより、安定して良好な精度で測定することができる。
【0077】
上記第7乃至第10実施形態の構造物用線状部材の張力検出方法において、光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bを、橋梁用ケーブル61の上端と下端に配置したが、鉛直方向において互いに異なる位置であれば、他の位置に配置してもよい。また、光ファイバ式ひずみセンサ2A,2Bは、橋梁用ケーブル61の軸直角断面において180°の角度を置いて配置したが、他の角度でもよく、例えば90°の角度を置いて配置してもよい。また、橋梁用ケーブル61に配置する光ファイバセンサ2の数は、1個でもよい。
【0078】
また、上記各実施形態において、光ファイバ式ひずみセンサ2はFBGセンサを用いたが、ブリルアン散乱式光ファイバセンサ等の他のひずみ測定原理を応用した光ファイバ式ひずみセンサを用いてもよい。
【0079】
また、上記各実施形態において、橋梁用ケーブル1,61及びセンサ内蔵型橋梁用ケーブル11,21,31,41,51は、複数の素線を平行に配列して形成された芯材14を有したが、張力を伝達するものであれば、ケーブルの芯材の形態はこれに限定されない。例えば、本発明は、亜鉛メッキPC鋼撚り線等のように、鋼撚り線で形成された芯材を有するケーブルにも適用できる。この場合、光ファイバ式ひずみセンサ2は鋼撚り線に撚り込む必要が無く、芯材の延在方向と平行に、芯材の表面又は表面の近傍に配置すればよい。
【0080】
また、上記各実施形態では、構造物としての橋梁に使用されている線状部材としてのケーブルの張力を検出したが、橋梁は、斜張橋やニールセンローゼ橋等の種々の形態のものが該当する。また、線状部材は、桁等を介して床版を吊るために使用されるもののほか、プレストレストコンクリートに関して張力を受け持つために使用されるPC鋼線やPC鋼撚り線やPC鋼棒も該当する。特に、外装型の外ケーブル補強構造を有するプレストレストコンクリートのPC鋼線やPC鋼棒の張力を測定する場合に、本発明は有効である。また、構造物は橋梁に限定されず、種々の土木構造物や建築構造物等が該当する。また、線状部材は、ケーブルに限定されず、例えば鋼線や鋼棒等、張力を受け持つために使用される線状の部材が広く該当する。
【0081】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,61 橋梁用ケーブル
11,21,31,41,51 センサ内蔵型橋梁用ケーブル
2,2A,2B 光ファイバ式ひずみセンサ
2a 光ファイバ式ひずみセンサのひずみ検出部
3 FBG測定器
4 パーソナルコンピュータ
12 ソケット部
14 芯材
15 保護膜
16,22 外とう管
20 コネクタ
23 テープ固定部
24 防錆層
26 固定部材
35 保護層
36,43 保護容器
37A,37B,44A,44B 保護容器の固定部
38A,38B,56A,56B,65A,65B 光ファイバ固定体
43a 固定容器
43b 摺動管
53 粘着テープ
54A,54B 光ファイバ式ひずみセンサの取付治具
55A,55B,63A,63B ケーブル固定部材
57 固定バンド
62A,62B 光ファイバ式ひずみセンサの増幅型取付治具
64A,64B 延在部材
73 固定リング
74 ボルト
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C