(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028630
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】走行型作業機
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A01G13/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134457
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 明
(72)【発明者】
【氏名】西上 智大
(57)【要約】
【課題】 機体旋回時の作業負荷を軽減する。
【解決手段】 本発明の走行型作業機としての杭打機1は、前後の走行手段としての前輪36,36及び後輪37,37により圃場を走行自在に支持された走行機体4を備える。走行機体4には、それに搭載されている機械の動作を助勢するカウンターバランスウエート45が設けられている。前輪36,36は、走行機体4の旋回時に圃場に接地した状態にされる。後輪37,37は、走行機体4の旋回時に圃場から浮かせた状態にされるものとなっている。カウンターバランスウエート45は、走行機体4の左右方向の略中央の上部に設けられた滑車43を経由した吊り索44を介して昇降可能に吊り下げられるとともに、略前後方向にのみ揺動するようにガイド手段50によりガイドされている。ガイド手段50は、カウンターバランスウエート45の前後方向への揺動範囲を所定範囲内に制限する制限手段53を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の走行手段により支持面を走行自在に支持された機体を備え、
該機体には、それに搭載されている機械の動作を助勢するカウンターバランスウエートが設けられており、
前後いずれか一方の前記走行手段は、前記機体の旋回時に前記支持面に接地した状態にされる車輪となっており、
同他方の走行手段は、前記機体の旋回時に前記支持面から浮かせた状態にされるものとなっている走行型作業機において、
前記カウンターバランスウエートは、前記機体の左右方向の略中央の上部に設けられた回転体を経由した吊り索を介して昇降可能に吊り下げられるとともに、略前後方向にのみ揺動するようにガイド手段によりガイドされている走行型作業機。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記カウンターバランスウエートの前後方向への揺動範囲を所定範囲内に制限する制限手段を備えている請求項1記載の走行型作業機。
【請求項3】
前記回転体は、前記車輪の軸の略直上又はそれよりも前記他方の走行手段とは反対側に設けられている請求項1又は2記載の走行型作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後の走行手段により支持されるとともに、人力により旋回されるように構成された機体を備え、該機体には、それに搭載されている機械の動作を助勢するカウンターバランスウエートが設けられている走行型作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルハウスを設置する場合、圃場の土中に逆U字状に杭を人手で差し込んでいる(大半がこの作業形態)。杭を人手で差し込む場合は、細い(直径が8mm位)杭を手で握って保持し土中へ差し込む作業を連続して行う必要があり、しかもそれが腰を屈めての作業となるため、大変な重労働作業となっている。例えば、淡路島のレタス栽培では一反に1200本の杭を打つときに、杭一本につき左右2カ所の差し込みを行うため、2400回もの差し込みが必要となる。
【0003】
この作業負荷を軽減するための従来の装置として、特許文献1に記載されたトンネルマルチ用支柱打込装置101を例示する。この装置101は、
図5に示すように、杭(支柱)Pを保持可能な支柱保持部111、117及び杭Pを地面に打ち込む支柱打込部115を備えている。そして、支柱保持部111、117は、杭Pの長手方向一端側を受け止める受け部111と、該受け部111の上方に位置して、前記杭Pの長手方向他端部が前記一端側の斜め上方に位置するように杭Pの長手方向中途を支持する支持部117とからなる。支柱打込部115の下端には、杭Pの中央及び中央の両側方をそれぞれ押す押込部137が設けられ、前記三カ所で杭Pを押して杭Pを地面に押し込むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のトンネルマルチ用支柱打込装置101は4輪台車(自走式)にエンジン、モーター、走行駆動部、油圧シリンダー他を装備しての複雑な構成の機械となっているため、高価になっている。
【0006】
そこで、手動操作により杭を圃場に打ち込むように構成することが考えられ、その場合はカウンターバランスウエートを利用することにより、打込機構を昇降させるときの作業者の負担を軽減することが好ましいが、そうすると、機体の重量が増え、機体を旋回させるときの作業者の負担が増えるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の走行型作業機は、
前後の走行手段により支持面を走行自在に支持された機体を備え、
該機体には、それに搭載されている機械の動作を助勢するカウンターバランスウエートが設けられており、
前後いずれか一方の前記走行手段は、前記機体の旋回時に前記支持面に接地した状態にされる車輪となっており、
同他方の走行手段は、前記機体の旋回時に前記支持面から浮かせた状態にされるものとなっている走行型作業機において、
前記カウンターバランスウエートは、前記機体の左右方向の略中央の上部に設けられた回転体を経由した吊り索を介して昇降可能に吊り下げられるとともに、略前後方向にのみ揺動するようにガイド手段によりガイドされている。
【0008】
前記走行手段としては、特に限定されないが、車輪、無限軌道、ローラ等を例示する。また、前記回転体としては、特に限定されないが、滑車、スプロケット、ローラ等を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記旋回時に前記機体を人力により前後方向に傾動させ始めると、前記カウンターバランスウエートがその自重により該機体に対して相対的に傾くことにより、該傾動を助勢するように作用する。そのため、軽い力で前記機体を傾動させることができ、旋回作業の負荷を軽減することができる。
【0010】
前記走行型作業機としては、特に限定されないが、前記ガイド手段が次のように構成されている態様を例示する。
(1)前記ガイド手段は、前記回転体の中心又はその近傍に配設された左右方向に延びる軸を介して前後方向にのみ揺動可能に吊り下げ支持された筒体を備え、該筒体は、その筒長方向に移動可能に前記カウンターバランスウエートが筒内に挿入されるように構成されている態様。
(2)前記ガイド手段は、前記回転体の中心又はその近傍に配設された左右方向に延びる軸を介して前後方向にのみ揺動可能に吊り下げ支持されたレール体を備え、該レール体は、そのレール長方向に摺動可能に前記カウンターバランスウエートが設けられるように構成されている態様。
(2)前記ガイド手段は、前記カウンターバランスウエートの左右に設けられた一対の壁体を備え、該一対の壁体により前記カウンターバランスウエートが前後方向にのみ揺動するようにガイドする態様。
【0011】
前記走行型作業機としては、前記ガイド手段は、前記カウンターバランスウエートの前後方向への揺動範囲を所定範囲内に制限する制限手段を備えている態様を例示する。
【0012】
この構成によれば、前記制限手段により、前記カウンターバランスウエートが前記機体の傾動を助勢しすぎないようにすることができる。
【0013】
前記走行型作業機としては、前記回転体は、前記車輪の軸の略直上又はそれよりも前記他方の走行手段とは反対側に設けられている態様を例示する。
【0014】
この構成によれば、前記機体は、その旋回に際して、前記車輪の接地箇所を支点に傾動されるので、前記回転体を前述したように設けると、前記カウンターバランスウエートの重量を人力で支持することなく前記傾動をさせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る走行型作業機によれば、機体旋回時の作業負荷を軽減することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を具体化した一実施形態に係る走行型作業機としてのトンネルハウス用杭打機の側面図である。
【
図2】同トンネルハウス用杭打機の主な構成要素の位置関係を示す平面図である。
【
図3】同トンネルハウス用杭打機におけるカウンターバランスウエートのガイド手段に対する制限手段を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【
図4】同トンネルハウス用杭打機を旋回させているときの状態を示す側面図である。
【
図5】従来のトンネルマルチ支柱打込装置の全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~
図4は本発明の走行型作業機をトンネルハウス用杭打機1として具体化した一実施形態を示している。本発明のトンネルハウス用杭打機1は、畝Uに沿って支持面としての圃場を走行可能に構成された走行機体4を備え、該走行機体4には、一直線状の杭(図示略)の両端部を保持するとともに、該杭を逆U字状に折曲するように構成されている保持部2と、該保持部2とともに該保持部2により保持された杭を下降させ、該杭の両端側を圃場に打ち込むように構成されている打込部3と、杭打ち込み後における保持部2及び打込部3の復帰動作を助勢する自重補償機構41とが搭載されており、エンジン、モーター等の動力源なしに手動操作で杭の打ち込みができるように構成されている。なお、各図において、矢印Fは走行機体4の前側を指し示している。
【0018】
走行機体4は、前後の走行手段により圃場を走行自在に支持された機体フレーム38を備えている。前方の走行手段は、走行機体4の旋回時に圃場に接地した状態にされる車輪としての左右一対の前輪36,36となっている。後方の走行手段は、走行機体4の旋回時に圃場から浮かせた状態にされるものとしての左右一対の後輪37,37となっている。そして、走行機体4は、一対の前輪36,36が圃場に接地し、一対の後輪37,37が圃場から浮くように傾けられた状態で人力により旋回されるように構成されている。機体フレーム38には、転倒防止部46及び打込間隔目印47が搭載されている。
【0019】
機体フレーム38は、左右一対の前輪36と、左右一対の後輪37とがそれぞれ設けられる横方向のフレーム38a、38bの両端部が伸縮可能に構成されている。それにより、左右一対の前輪36の間隔と、左右一対の後輪37の間隔が、畝Uの幅に応じて調節可能になっている。本例では、作業者が該走行機体4の左側において保持部2及び打込部3が操作可能に構成されており、左側の後輪37は、右側の後輪37に対し、相対的に、車軸が保持部2及び打込部3に近接させて設けられている。また、左側の後輪37は、右側の後輪37に対して相対的に小径かつ幅広に形成されている。
【0020】
転倒防止部46は、走行機体4の前方への転倒を防止するために設けられている。この転倒防止部46は、機体フレーム38の前方に延びる伸縮アーム46aと該伸縮アーム46aの先端に設けられた接地板46bとにより構成されている。伸縮アーム46aは前方への突出長さが調整可能になっている。そして、伸縮アーム46aの突出長を調整することにより、接地板46bを前輪36の前端位置よりも前方に突出させておくと、走行機体4が前方へ傾斜しても、接地板46bが接地することで、転倒を防止するように構成されている。転倒防止部46は、伸縮アーム46aの突出長が調整可能になっているので、転倒を防止するときの走行機体4の傾斜角度を調節したり、該走行機体4の運搬時や収納時に転倒防止部46の先端位置を後退させて走行機体4の占有スペースを小さくしたりすることができる。
【0021】
打込間隔目印47は、伸縮アーム46aの後端部に伸縮長さ調節可能に設けられている。この目印の長さを杭の打込間隔に合わせて調整しておくと、該目印を目安に打込間隔を安定的に定間隔にすることができる。
【0022】
保持部2は、樹脂製であって形状復元性を有する一直線状の杭の両端部における保持部位をそれぞれ保持し、互いに逆方向へ略90°それぞれ回動させて前記一直線状の杭を前記逆U字状に折曲させ、その回動状態をロックさせることができるように構成されている。
【0023】
打込部3は、該保持部2を手動操作での昇降移動可能に支持している。また、打込部3は、前記昇降移動における下死点近傍において保持部2による杭の保持を解除するとともに、前記回動状態のロックを解除するように構成されている。
【0024】
自重補償機構41は、保持部2と、打込部3において前記保持部2とともに昇降する部分とを含む昇降部位全体を、機体フレーム38に取り付けた回転体としての滑車43を介して吊り索44(チェン、ワイヤーなど)の一端側に吊り下げて、該昇降部位全体と釣り合う重量より少し重たい重量(例えば、+10~20%程度)のカウンターバランスウエート45を吊り索44の他端側に連結し、垂らしている。このように自重補償機構41は、前記昇降部位全体の上昇又は下降に連動して、カウンターバランスウエート45が反対方向へ下降又は上昇するようになっており、これにより前記昇降部位全体を上昇させるときに、それらの総重量により発生する力のモーメントを打ち消すように構成されている。
【0025】
カウンターバランスウエート45は、前輪36の軸36aの略直上よりも前側に、かつ、走行機体4の左右方向の略中央の上部に設けられた回転体としての滑車43を経由した吊り索44を介して昇降可能に吊り下げられるとともに、略前後方向にのみ揺動するようにガイド手段50によりガイドされている。
【0026】
ガイド手段50は、滑車43の中心の近傍を通る左右方向に延びる軸51を介して前後方向にのみ揺動可能に吊り下げ支持された筒体52と、該筒体52の前後方向への揺動範囲を所定範囲内に制限することにより、カウンターバランスウエート45の揺動範囲を制限する制限手段53とを備えている。そして、該筒体52の筒内には、筒体52の筒長方向に移動可能にカウンターバランスウエート45が挿入されている。
【0027】
制限手段53は、
図3に示すように、筒体52が挿入可能に構成された環状体54と、該環状体54の外周縁部における一個所から該環状体54の略径方向に延びる腕部55とを備え、該腕部55がガイド部材56を介して走行機体4に支持されている。ガイド部材56は、腕部55をその長さ方向における一定範囲内(本例では腕部55の環状体54側からその反対側に設けられたストッパ部材57までの間)においてスライド可能にガイドするように構成されている。
【0028】
次に、本例のトンネルハウス用杭打機1の走行機体4の旋回方法の一例について説明する。
(1)走行機体4の後ろ側を手で持ち上げることにより、
図4に示すように、左右一対の後輪37を支持面としての圃場から浮かせる。そのとき、走行機体4が左右の前輪36の接地箇所を支点にして前方に傾動するとともに、その傾動角度に応じてガイド手段50にガイドされているカウンターバランスウエート45が重力により圃場面に対して垂直になるように前記軸51を中心にして前方に回動して行く。その回動角度が大きくなるにつれて、走行機体4の重心が、制限手段53により制限される揺動範囲内で前方に移動するので、軽い力で走行機体4を傾動させることができる。なお、走行機体4の傾動は、それが大きくなりすぎて前方へ転倒しないように、転倒防止部46によって制限される。
(2)左右の後輪37を浮かせた状態において、走行機体4の後ろ側を持って左右いずれかの所用の向きに走行機体4を動かすと、左右の前輪36が互いに反対方向に回転し、走行機体4を旋回させることができる。
【0029】
以上のように構成された本例のトンネルハウス用杭打機1によれば、前記旋回時に前記走行機体4を人力により前後方向に傾動させ始めると、カウンターバランスウエート45がその自重により該走行機体4に対して相対的に傾くことにより、該傾動を助勢するように作用する。そのため、軽い力で走行機体4を傾動させることができ、旋回作業の負荷を軽減することができる。
【0030】
また、ガイド手段50は、カウンターバランスウエート45の前後方向への揺動範囲を所定範囲内に制限する制限手段53を備えている。この構成によれば、制限手段53により、カウンターバランスウエート45が走行機体4の傾動を助勢しすぎないようにすることができる。
【0031】
さらに、回転体としての滑車43は、前輪36の軸36aの略直上よりも前側に設けられている。この構成によれば、走行機体4は、その旋回に際して、前輪36の接地箇所を支点に傾動されるので、滑車43を前述したように設けると、カウンターバランスウエート45の重量を人力で支持することなく前記傾動をさせることができる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)後輪37を左右対称に構成した上で、後輪37側にカウンターバランスウエート45を設け、前輪側を浮かせて走行機体4を旋回させるように構成すること。
(2)走行機体4の旋回時に浮かせる側の走行手段を、一輪のみ又は3輪以上の車輪にしたり、無限軌道にしたり、ローラにしたりすること。
(3)走行機体4の旋回時に浮かせない側(即ち、カウンターバランスウエート45が設けられる側)の走行手段としての車輪(前記実施形態では前輪36)を3輪以上にすること。
【符号の説明】
【0033】
1 走行型作業機としてのトンネルハウス用杭打機
2 保持部
3 打込部
4 走行機体
36 前輪
36a 軸
37 後輪
38 機体フレーム
38a フレーム
38b フレーム
41 自重補償機構
43 滑車
44 吊り索
45 カウンターバランスウエート
46 転倒防止部
46a 伸縮アーム
46b 接地板
47 打込間隔目印
50 ガイド手段
51 軸
52 筒体
53 制限手段
54 環状体
55 腕部
56 ガイド部材
57 ストッパ部材
F 走行機体の前側
U 畝