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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028685
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】軌道リレー試験装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 1/18 20060101AFI20230224BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B61L1/18 Z
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134542
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】591048830
【氏名又は名称】日本電設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】増形 文清
【テーマコード(参考)】
2G036
5H161
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036AA27
2G036BA10
2G036BA45
2G036BB07
2G036CA08
2G036CA10
5H161AA01
5H161BB01
5H161DD02
5H161FF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一般的な事務所等でも軌道リレーが、正常に動作するか、故障しているかを試験することが可能な軌道リレー試験装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る軌道リレー試験装置は、高圧交流電力の電路である高圧ライン対と、高圧ライン対の高圧交流電力が降圧され、位相調整回路によって位相がずらされた低圧交流電力の電路である低圧ライン対と、低圧ライン対の低圧交流電力を第1の位相で軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は第1の位相と反転した第2の位相で供給するか、又は供給しないか、を選択する切り替えスイッチと、高圧ライン対の高圧交流電力を軌道リレーに供給すると共に、切り替えスイッチからの出力を軌道リレーに供給する軌道リレー接続用コネクタと、軌道リレーの出力端子と電気接続し、軌道リレーの接点状況に応じて発光を行う発光表示部と、からなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧交流電力の電路である高圧ライン対と、
前記高圧ライン対の高圧交流電力が降圧され、さらに位相調整回路によって高圧交流電力から位相がずらされた低圧交流電力の電路である低圧ライン対と、
前記低圧ライン対の低圧交流電力を第1の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は、
前記低圧ライン対の低圧交流電力を前記第1の位相と反転した第2の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は、
前記低圧ライン対の低圧交流電力を軌道リレーの低圧端子対に供給しないか、を選択する切り替えスイッチと、
前記高圧ライン対の高圧交流電力を軌道リレーに供給すると共に、前記切り替えスイッチからの出力を軌道リレーに供給するコネクタと、
軌道リレーの出力端子と電気接続し、軌道リレーの接点状況に応じて発光を行う発光表示部と、からなることを特徴とする軌道リレー試験装置。
【請求項2】
前記高圧ライン対の高圧交流電力が商用電源から供給されることを特徴とする請求項1に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項3】
前記位相調整回路が抵抗とコンデンサの並列接続から構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項4】
前記位相調整回路が可変抵抗と可変コンデンサの並列接続から構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項5】
前記位相調整回路が抵抗とコイルの並列接続から構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項6】
前記切り替えスイッチで、前記低圧ライン対の低圧交流電力を第1の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するように選択すると、前記発光表示部で、緑色の発光表示が行われることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項7】
前記切り替えスイッチで、前記低圧ライン対の低圧交流電力を第2の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するように選択すると、前記発光表示部で、黄色の発光表示が行われることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項8】
前記切り替えスイッチで、前記低圧ライン対の低圧交流電力を軌道リレーの低圧端子対に供給しないように選択すると、前記発光表示部で、赤色の発光表示が行われることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項9】
電気回路が収納される本体部と、
前記本体部に対してヒンジを介して取り付けられる蓋体部と、
軌道リレーの試験時、前記本体部と前記蓋体部とでL字状の姿勢を維持するために用いられるバックルと、を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の軌道リレー試験装置。
【請求項10】
前記本体部における前記コネクタが設けられる面と、対向する面にはゴム足が設けられることを特徴とする請求項9に記載の軌道リレー試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で軌道リレーの試験を行うことができる軌道リレー試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道交通における軌道回路は、レールを電気回路の一部として用いて列車の在線の有無を検知する装置であり、レールの一端側から信号を送信し、列車の車軸でレール間が短絡されることによる受信信号の有無を、レールの他端側に設けた軌道リレーで検出するように構成されている。(例えば、特許文献1(特開2019-147434号公報)参照。)
図6は軌道回路における軌道リレー10の電気接続を説明する図である。軌道回路による列車の検知区間同士は、お互いに電気的に絶縁されており、図6は一つの検知区間を模式的に図示するものである。図6に図示しないが、レール3には他の検知区間に関する情報信号に係る電流も流されている。
【0003】
軌道リレーは、列車検知を行う上記のような軌道回路において、列車在線の有無等を判定し、赤色、黄色、緑色の各信号点灯のための接点動作を行うリレーである。略105Vの電源4の交流電流が、限流抵抗6や第1のトランス7を介してレール3に流される。軌道リレー10には、電源4の交流電流と、レール3から第2のトランス8を経た列車在線の有無等に係る情報信号が入力される。
【0004】
なお、本明細書では、電源4(或いは後述の「商用電源」)による電力を「高圧交流電力」と称し、トランス等を経て降圧されている情報信号の電力を「低圧交流電力」と称することがある。
【0005】
以上のような構成において、例えば、図6に示す検知区間に列車が在線し、それぞれのレール3の間が短絡されれば、軌道リレー10に対して供給される、情報信号に係る低圧交流電力は“0”となり、軌道リレー10における接点は不図示の信号機の赤色の信号を点灯させるように動作する。
【0006】
また、レール3から軌道リレー10に対して、ある位相の低圧交流電力が供給されるか、または、前記ある位相の低圧交流電力と反転した低圧交流電力が供給されるか、に応じて、軌道リレー10における接点は不図示の信号機の緑色の信号を点灯させるように動作したり、不図示の信号機の黄色の信号を点灯させるように動作したりする。
【特許文献1】特開2019-147434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
列車の電気設備更新のため、上記のような軌道リレーを新品のものに交換する、という作業を行うことがある。新品の軌道リレーは、その製造業者の工場出荷時における試験によって動作が正常である、と確認され出荷される訳であるが、その後、軌道リレーの輸送中の振動や衝撃などで軌道リレーが故障する可能性がある。このような故障は、現場において新品の軌道リレーに交換後、レール間を短絡するなどして信号機の動作確認を行う際に発覚する。
【0008】
軌道リレーの交換作業は、終電から始発までの限られた時間、という貴重なタイミングで実施されるため、交換作業を行う前に、可能であれば新品の軌道リレーに、既に何らかの故障などの異常があることを把握できることが望ましい。しかしながら、製造業者から納品された新品の軌道リレーを、現場に持ち込む前に、それが正常であるか否かを試験する装置が存在せず、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明に係る軌道リレー試験装置は、高圧交流電力の電路である高圧ライン対と、前記高圧ライン対の高圧交流電力が降圧され、さらに位相調整回路によって高圧交流電力から位相がずらされた低圧交流電力の電路である低圧ライン対と、前記低圧ライン対の低圧交流電力を第1の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は、前記低圧ライン対の低圧交流電力を前記第1の位相と反転した第2の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は、前記低圧ライン対の低圧交流電力を軌道リレーの低圧端子対に供給しないか、を選択する切り替えスイッチと、前記高圧ライン対の高圧交流電力を軌道リレーに供給すると共に、前記切り替えスイッチからの出力を軌道リレーに供給するコネクタと、軌道リレーの出力端子と電気接続し、軌道リレーの接点状況に応じて発光を行う発光表示部と、からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記高圧ライン対の高圧交流電力が商用電源から供給されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記位相調整回路が抵抗とコンデンサの並列接続から構成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記位相調整回路が可変抵抗と可変コンデンサの並列接続から構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記位相調整回路が抵抗とコイルの並列接続から構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記切り替えスイッチで、前記低圧ライン対の低圧交流電力を第1の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するように選択すると、前記発光表示部で、緑色の発光表示が行われることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記切り替えスイッチで、前記低圧ライン対の低圧交流電力を第2の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するように選択すると、前記発光表示部で、黄色の発光表示が行われることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記切り替えスイッチで、前記低圧ライン対の低圧交流電力を軌道リレーの低圧端子対に供給しないように選択すると、前記発光表示部で、赤色の発光表示が行われることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、電気回路が収納される本体部と、前記本体部に対してヒンジを介して取り付けられる蓋体部と、軌道リレーの試験時、前記本体部と前記蓋体部とでL字状の姿勢を維持するために用いられるバックルと、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る軌道リレー試験装置は、前記本体部における前記コネクタが設けられる面と、対向する面にはゴム足が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る軌道リレー試験装置は、高圧交流電力の電路である高圧ライン対と、前記高圧ライン対の高圧交流電力が降圧され、さらに位相調整回路によって高圧交流電力から位相がずらされた低圧交流電力の電路である低圧ライン対と、前記低圧ライン対の低圧交流電力を第1の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は、前記低圧ライン対の低圧交流電力を前記第1の位相と反転した第2の位相で、軌道リレーの低圧端子対に供給するか、又は、前記低圧ライン対の低圧交流電力を軌道リレーの低圧端子対に供給しないか、を選択する切り替えスイッチと、前記高圧ライン対の高圧交流電力を軌道リレーに供給すると共に、前記切り替えスイッチからの出力を軌道リレーに供給するコネクタと、軌道リレーの出力端子と電気接続し、軌道リレーの接点状況に応じて発光を行う発光表示部と、からなる非常に簡易な構成を有するものである。
【0020】
そして、このような本発明に係る軌道リレー試験装置によれば、切り替えスイッチの操作に基づいた発光表示部の確認を行うことで、一般的な事務所等でも軌道リレーが、正常に動作するか、故障しているかを試験することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る軌道リレー試験装置100の概要を説明する模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る軌道リレー試験装置100の外観を説明する図である。
図3】位相調整回路150の一例を示す図である。
図4】切り替えスイッチ170の動作を説明する図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る軌道リレー試験装置100の位相調整回路150を示す図である。
図6】軌道回路における軌道リレー10の電気接続を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る軌道リレー試験装置100の概要を説明する模式図であり、軌道リレー試験装置100の主要な回路構成の一例が示されている。また、図2は本発明の実施形態に係る軌道リレー試験装置100の外観を撮影した写真である。
【0023】
まず、軌道リレー試験装置100に対する電源供給について説明する。本発明に係る軌道リレー試験装置100に対しては、一般家庭で用いられる商用電源である100Vの交流電源が供給される。このために、電源コード70が用いられる。電源コード70は、差込プラグ71と電源アウトレット75と、これらの間の電路となるコード73とを有している。壁面などに設けられている商用電源コンセント50には、電源コード70の差込プラグ71が差し込まれ、電源アウトレット75と接続される軌道リレー試験装置100側の電源インレット105から装置内へと給電される。
【0024】
電源インレット105からは、装置内の高圧ライン対120、120’に対し、商用電源からの高圧交流電力が供給される。高圧ライン120には、過電流などに対して装置を保護する目的でヒューズ106が設けられている。また、高圧ライン120には、装置の主電源のオンオフに用いられるメインスイッチ110が設けられる。
【0025】
メインスイッチ110の後段の高圧ライン対120、120’からは、A/D変換回路180への分岐が設けられている。A/D変換回路180は、高圧ライン対120、120’の高圧交流電力を、直流の電力に変換し、発光表示部190に供給するようになっている。発光表示部190には、複数の発光素子が用いられているが、本実施形態では、これらの発光素子としてLED(Light Emitting Diode)を用いることが想定されているために、A/D変換回路180が設けられている。なお、本発明では、発光素子として必ずしもLEDを用いる必要はないため、A/D変換回路180を必ず設けなければならないということはない。
【0026】
さて、高圧ライン対120、120’におけるA/D変換回路180への分岐点のさらに後段には、低圧ライン対130、130’への分岐が設けられている。低圧ライン対130、130’は、高圧ライン対120、120’の高圧交流電力が降圧され、さらに位相調整回路によって高圧交流電力から位相がずらされた低圧交流電力の電路である。低圧交流電力の電圧は、概ね1V程度である。
【0027】
高圧ライン対120、120’の高圧交流電力を低圧交流電力に変換するために、トランス140が設けられている。また、低圧ライン130には、位相調整回路150が設けられている。図3は位相調整回路150の一例を示す図である。位相調整回路150は、抵抗151とコンデンサ153とを並列に接続することにより構成することができる。位相調整回路150の構成はこれに限定されることはなく、他の受動素子を組み合わせて構成することもできる。
【0028】
位相調整回路150が低圧ライン対130、130’中に設けられているために、高圧交流電力と低圧交流電力の波形の位相はずれている。本発明に係る軌道リレー試験装置100においては、このような位相調整回路150が設けられているために、現場において軌道リレー10を実際に取り付けて行う試験を簡易に模擬することができるようになっている。
【0029】
低圧ライン対130、130’中には、さらに、切り替えスイッチ170が設けられている。ここで、図4に基づいて切り替えスイッチ170の動作を説明する。切り替えスイッチ170は2つの可動接点171、171’が連動するように動作する。また、切り替えスイッチ170の切り替えは人手で行うことが想定されている。
【0030】
図4(A)に示すように2つの可動接点171、171’がGの端子に接触している時は、低圧ライン対130、130’の低圧交流電力を、位相を変えることなく、軌道リレー10の低圧端子対13、13’に対して供給する。なお、このときの位相を第1の位相として表記することがある。
【0031】
図4(B)に示すように2つの可動接点171、171’がYの端子に接触している時は、低圧ライン対130、130’の低圧交流電力を、位相を反転して軌道リレー10の低圧端子対13、13’に対して供給する。なお、このときの位相を第2の位相として表記することがある。
【0032】
図4(C)に示すように2つの可動接点171、171’がG、Yのいずれの端子に接触していない時は、低圧ライン対130、130’の低圧交流電力を、軌道リレー10の低圧端子対13、13’に対して供給しない。
【0033】
本発明に係る軌道リレー試験装置100においては、上記のような切り替えスイッチ170に基づいて、実際のレール3から軌道リレー10が取得する情報信号が模擬される。
【0034】
切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’が図4(A)に示すポジションにある場合は、実際の信号機において緑色の信号を点灯するように軌道リレー10の接点が動作することが想定されている。
【0035】
また、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’が図4(B)に示すポジションにある場合は、実際の信号機において黄色の信号を点灯するように軌道リレー10の接点が動作することが想定されている。
【0036】
また、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’が図4(C)に示すポジションにある場合は、実際の信号機において赤色の信号を点灯するように軌道リレー10の接点が動作することが想定されている。
【0037】
切り替えスイッチ170の後段には、軌道リレー接続用コネクタ115が設けられている。軌道リレー接続用コネクタ115は、高圧ライン対120、120’と電気接続されると共に、切り替えスイッチ170からの出力とも電気接続されている。
【0038】
軌道リレー10は、接点などが収納されているリレー接点動作部11と、このリレー接点動作部11から外部に延出し電気接続に供される高圧端子対12、12’と、低圧端子対13、13’とを有している。なお、図示しないが、軌道リレー10は、これらの端子対のほかにも、複数の端子対を有しており、これらの端子と電気接続される信号機が、軌道リレー10の接点動作に基づき制御される。
【0039】
本発明に係る軌道リレー試験装置100により軌道リレー10の試験を行う際には、軌道リレー10を軌道リレー接続用コネクタ115に対して嵌合する。これにより、高圧ライン対120、120’から軌道リレー10の高圧端子対12、12’に対して給電が行われ、切り替えスイッチ170からの出力が軌道リレー10の低圧端子対13、13’に入力される。
【0040】
ここで、本発明に係る軌道リレー試験装置100の外観について図2を参照して説明する。図2(A)は本発明に係る軌道リレー試験装置100の収納時を天面から見た図であり、図2(B)は蓋体部300を開いた状態を示す斜視図である。
【0041】
本発明に係る軌道リレー試験装置100は、電気回路が収納されている本体部200とこの本体部200における軌道リレー接続用コネクタ115が設けられている面を、非使用時(収納時)、保護する蓋体部300とを有している。蓋体部300は、ヒンジ310を介して本体部200に取り付けられており、軌道リレー10の試験を行う際に、図2(B)に示す状態に展開される。
【0042】
また、本体部200には、メインスイッチ110、切り替えスイッチ170、発光表示部190が配されている操作表示部210が設けられている。この操作表示部210は、収納時は、操作表示部カバー215によって保護されるようになっている。
【0043】
蓋体部300と本体部200とには、軌道リレー試験装置100の収納時に締結される収納用バックル320と、軌道リレー試験装置100で軌道リレー10の試験を行う時に締結される試験用バックル330と、を有している。図2(A)は収納用バックル320が締結されている収納時を示しており、図2(B)は試験用バックル330が締結されている試験時を示している。
【0044】
試験用バックル330が締結されことで、軌道リレー試験装置100は、軌道リレー10の試験時、本体部200と蓋体部300とでL字状の姿勢が維持される。軌道リレー10の重量は、軌道リレー試験装置100の重量に比べて重い。仮に、試験用バックル330が存在しない場合、軌道リレー10を軌道リレー接続用コネクタ115に対して嵌合状態とすると、本体部200が蓋体部300の方に倒れる状態となってしまう。本発明に係る軌道リレー試験装置100においては、試験用バックル330の締結により、このようなことを防止し、安定的に軌道リレー10を水平状態に保持して試験を実施することが可能となる。
【0045】
本発明に係る軌道リレー試験装置100においては、軌道リレー10を軌道リレー接続用コネクタ115に対して嵌合する際には、図2における面S(軌道リレー接続用コネクタ115が設けられる面と、対向する面)を底面とした状態で、これを行うことが想定されている。鉛直上方から、軌道リレー10の各端子を下にして、軌道リレー接続用コネクタ115に対し各端子を挿入するようにして嵌合させる作業の方が、水平方向から各端子を軌道リレー接続用コネクタ115に挿入する作業より容易だからである。本発明に係る軌道リレー試験装置100においては、面Sの4隅にゴム足204を設けることで、軌道リレー10を軌道リレー接続用コネクタ115に対し嵌合させる作業の際、軌道リレー試験装置100を安定させるようにしている。
【0046】
さて、図1に戻り、A/D変換回路180から出力される直流電力は発光表示部190に供給されるが、この発光表示部190は、装置自体の稼働表示用緑色発光素子191を有している。この稼働表示用緑色発光素子191はメインスイッチ110がオンとなることで点灯し、オフとなることで消灯する。
【0047】
軌道リレー10の図示しない複数の端子対は、軌道リレー接続用コネクタ115を介して発光表示部190と電気接続されている。発光表示部190と接続されている図1中の一点鎖線で囲まれた箇所は、軌道リレー10内の接点の状況が反映されるものとなっている。緑色発光素子については193、193’、193’ ’の3系統、黄色発光素子については195、195’、195’ ’の3系統、赤色発光素子については197の1系統が、発光表示部190に設けられている。実際の信号機においては、軌道リレー10により制御される信号機の点灯は1機で、このために2系統使用し、3系統目は予備としている。
【0048】
このような発光表示部190において、正常に動作する軌道リレー10であれば、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’が、Gの端子に接触している時は、緑色発光素子193、193’、193’ ’の3系統の全てが点灯する。逆に、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’がGの端子に接触している時、緑色発光素子193、193’、193’ ’の1系統でも点灯しないものがあれば、軌道リレー10に異常があるものと判断できる。また、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’がGの端子に接触している時、緑色発光素子193、193’、193’ ’以外の点灯があれば、軌道リレー10に異常があるものと判断できる。
【0049】
また、正常に動作する軌道リレー10であれば、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’が、Yの端子に接触している時は、黄色発光素子195、195’、195’ ’の3系統の全てが点灯する。逆に、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’がYの端子に接触している時、黄色発光素子195、195’、195’ ’の1系統でも点灯しないものがあれば、軌道リレー10に異常があるものと判断できる。また、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’がYの端子に接触している時、黄色発光素子195、195’、195’ ’以外の点灯があれば、軌道リレー10に異常があるものと判断できる。
【0050】
また、正常に動作する軌道リレー10であれば、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’が、G、Yのいずれの端子にも接触していない時は、赤色発光素子197が点灯する。逆に、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’がG、Yのいずれの端子にも接触していない時、赤色発光素子197が点灯しなければ、軌道リレー10に異常があるものと判断できる。また、切り替えスイッチ170の2つの可動接点171、171’ が、G、Yのいずれの端子にも接触していない時、赤色発光素子197以外の点灯があれば、軌道リレー10に異常があるものと判断できる。
【0051】
以上のように、本発明に係る軌道リレー試験装置100は、高圧交流電力の電路である高圧ライン対120、120’と、前記高圧ライン対120、120’の高圧交流電力が降圧され、さらに位相調整回路150によって高圧交流電力から位相がずらされた低圧交流電力の電路である低圧ライン対130、130’と、前記低圧ライン対130、130’の低圧交流電力を第1の位相で、軌道リレーの低圧端子対13、13’に供給するか、又は、前記低圧ライン対130、130’の低圧交流電力を前記第1の位相と反転した第2の位相で、軌道リレー10の低圧端子対13、13’に供給するか、又は、前記低圧ライン対130、130’の低圧交流電力を軌道リレー10の低圧端子対13、13’に供給しないか、を選択する切り替えスイッチ170と、前記高圧ライン対120、120’の高圧交流電力を軌道リレー10に供給すると共に、前記切り替えスイッチ170からの出力を軌道リレー10に供給する軌道リレー接続用コネクタ115と、軌道リレー10の出力端子と電気接続し、軌道リレー10の接点状況に応じて発光を行う発光表示部190と、からなる非常に簡易な構成を有するものである。
【0052】
そして、このような本発明に係る軌道リレー試験装置100によれば、切り替えスイッチ170の操作に基づいた発光表示部190の確認を行うことで、一般的な事務所等でも軌道リレー10が、正常に動作するか、故障しているかを試験することが可能となる。
【0053】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本発明の他の実施形態は、軌道リレー試験装置100における位相調整回路150の構成のみが先の実施形態と相違しており、その他の構成は同様である。よって、同様の構成については説明を省略する。図5は本発明の他の実施形態に係る軌道リレー試験装置100の位相調整回路150を示す図である。
【0054】
図5(A)は、位相調整回路150が可変抵抗152と可変コンデンサ154との並列接続で構成されている例を示している。先の実施形態では、抵抗値が固定された抵抗151と、容量が固定されたコンデンサ153が用いられていた。ところで、抵抗151の抵抗値やコンデンサ153の容量は公差を有しているため、これらを用いた位相調整回路150は、場合によっては狙い通りの位相のずれを生じさせることができないことがある。これに対して、本実施形態では、位相調整回路150が可変抵抗152と可変コンデンサ154とから構成されているため、これらの抵抗値・容量を調整することで、位相調整回路150によって精度高く所望とする位相のずれを発生させることが可能となる。本実施形態によれば、先の実施形態の効果に加えて、位相調整回路150の精度を高めることができる、という効果が期待できる。
【0055】
図5(B)は、位相調整回路150が抵抗151とコイル155の並列接続で構成されている例を示している。このような実施形態によっても、位相調整回路150によって、高圧交流電力と低圧交流電力の波形の位相のずれを生じさせることが可能である。このような、本発明の他の実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0056】
2・・・枕木
3・・・レール
4・・・電源
6・・・限流抵抗
7・・・第1のトランス
8・・・第2のトランス
10・・・軌道リレー
11・・・リレー接点動作部
12、12’・・・高圧端子対
13、13’・・・低圧端子対
50・・・商用電源コンセント
70・・・電源コード
71・・・差込プラグ
73・・・コード
75・・・電源アウトレット
100・・・軌道リレー試験装置
105・・・電源インレット
106・・・ヒューズ
110・・・メインスイッチ
115・・・軌道リレー接続用コネクタ
120、120’・・・高圧ライン対
130、130’・・・低圧ライン対
140・・・トランス
150・・・位相調整回路
151・・・抵抗
152・・・可変抵抗
153・・・コンデンサ
154・・・可変コンデンサ
155・・・コイル
170・・・切り替えスイッチ
171、171’・・・可動接点
180・・・A/D変換回路
190・・・発光表示部
191・・・稼働表示用緑色発光素子
193、193’、193’ ’・・・緑色発光素子
195、195’、195’ ’・・・黄色発光素子
197・・・赤色発光素子
200・・・本体部
204・・・ゴム足
210・・・操作表示部
215・・・操作表示部カバー
300・・・蓋体部
310・・・ヒンジ
320・・・収納用バックル
330・・・試験用バックル
図1
図2
図3
図4
図5
図6