(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028705
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ワイヤソー
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20230224BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20230224BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20230224BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20230224BHJP
B24B 47/06 20060101ALI20230224BHJP
B23D 57/00 20060101ALI20230224BHJP
B23Q 1/38 20060101ALI20230224BHJP
B23Q 1/72 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B24B27/06 D
B24B41/06 L
B28D5/04 B
B28D7/04
B24B47/06
B23D57/00
B23Q1/38 A
B23Q1/72 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134572
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】漆山 正史
(72)【発明者】
【氏名】河津 知之
(72)【発明者】
【氏名】村井 史朗
【テーマコード(参考)】
3C034
3C040
3C048
3C069
3C158
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB07
3C034BB32
3C034BB75
3C034CB01
3C034DD08
3C034DD10
3C040AA19
3C048CC07
3C048DD01
3C069AA01
3C069BA06
3C069BB01
3C069CA04
3C069CB02
3C069EA02
3C158AA05
3C158AB01
3C158AB03
3C158CA01
3C158CB01
3C158DA03
3C158DA17
(57)【要約】
【課題】ワークの切断精度をさらに向上させることができるワイヤソーを提供することを課題とする。
【解決手段】ワイヤソー1は、上下方向に移動可能に配置されたサドル4と、ワーク送り機構7のワーク送りに対して切断方向に沿って設けられた案内面3a,3b,3c,3dを有するコラム3と、案内面3a~3dに対向して配置されたポケット4a,4b,4c,4dに流体を供給することでサドル4を切断方向と直交する方向に移動させる静圧案内機構9と、案内面3a~3dに供給する流体の圧力を可変させるためのコントロールバルブ91,92,93,94と、案内面3a~3dに供給する流体の圧力をワークWの切り込み位置に応じて任意に設定可能なコントローラ10と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動可能に配置されたサドルと、
ワーク送り機構のワーク送りに対して切断方向に沿って設けられた案内面を有するコラムと、
前記案内面に対向して配置されたポケットに流体を供給することで前記サドルを切断方向と直交する方向に移動させる静圧案内機構と、
前記案内面に供給する流体の圧力を可変させるためのコントロールバルブと、
前記案内面に供給する流体の圧力をワークの切り込み位置に応じて任意に設定可能なコントローラと、を備えている、
ことを特徴とするワイヤソー。
【請求項2】
上下方向移動可能なものの自重と、前記ワークを加工するときの加工抵抗と、を相殺するバランサを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【請求項3】
前記バランサは、シリンダ装置から成る
ことを特徴とする請求項2に記載のワイヤソー。
【請求項4】
前記サドルを上下方向に移動させるリニアモータを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク送り機構を備えたワイヤソーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体材料や磁性材料等のワークをワイヤで切断するワイヤソーは、ワイヤに対して、加工液を供給しながら、ワーク送り装置によってワークを切り込み送りすることで、ワークを切断している。
【0003】
切断されて形成されるワークは、薄い半導体ウエハとなるので、高精度に切断加工されることが要求される。半導体ウエハは、ワークとワイヤとの相対変位によってウエハの形状精度が決定される。その相対変位の補正は、一般に、各部の温度制御による熱変位で補正を行っている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載のワイヤソーでは、NC装置(80)による制御水の温度制御によりローラ支持軸(40)を前後方向に変位させることで、良好なウエハの表面を形成している。
【0005】
特許文献2に記載のワイヤソーでは、ワーク加工時に、支持フレームの適当な部位(20)を温度変化させて弾性変形させることで、ワーク(30)とガイドローラ(16A,16B)との相対位置をワイヤ群の並び方向に変化させてワークの切断形状を所望形状に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-196023号公報
【特許文献2】特開2004-114280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1,2に記載のワイヤソーでは、金属製の支持フレームやローラ支持軸を温調機によって熱膨張させたり、熱収縮させたりする構成である。このワイヤソーでは、ワークとワイヤとの相対変位をコントロールするのが難しく、ワークの切断精度をさらに向上させることが望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は、ワークの切断精度をさらに向上させることができるワイヤソーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係るワイヤソーは、上下方向に移動可能に配置されたサドルと、ワーク送り機構のワーク送りに対して切断方向に沿って設けられた案内面を有するコラムと、前記案内面に対向して配置されたポケットに流体を供給することで前記サドルを切断方向と直交する方向に移動させる静圧案内機構と、前記案内面に供給する流体の圧力を可変させるためのコントロールバルブと、前記案内面に供給する流体の圧力をワークの切り込み位置に応じて任意に設定可能なコントローラと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ワークの切断精度をさらに向上させることができるワイヤソーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るワイヤソーの一例を示す要部概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るワイヤソーを
図1~
図5を参照して説明する。
本実施形態において、
図1に示すクランプ装置6のワーク送りテーブル61がある方向を前、ワーク送りテーブル61の後方向を後、鉛直上方側を上、鉛直下方側を下、図面左方向を左、図面右方向を右として適宜説明する。
【0013】
まず、ワイヤソー1を説明する前に、ワイヤソー1に使用されるワークWについて説明する。また、
図2に示すように、ワイヤソー1の主要部は、略左右対称に形成されているため、適宜その一方を説明して他方の説明を省略する。
【0014】
<ワーク>
図1に示すように、ワークWは、半導体材料、磁性材料、セラミック等の硬脆材料から成る。ワークWは、クランプ装置6のワーク送りテーブル61に取り付けられて、ワイヤソー1に配置された加工装置5のワイヤ54に押し当てることで切削して切断される。
【0015】
<ワイヤソー>
ワイヤソー1は、加工装置5のワイヤ54によってワークWを切断する切断装置である。
図1または
図2に示すように、ワイヤソー1は、基台2と、コラム3と、サドル4と、加工装置5と、クランプ装置6と、ワーク送り機構7と、静圧案内機構9と、コントローラ10(
図5参照)と、を主に備えて構成されている。
【0016】
<基台>
図1に示す基台2は、コラム3と、加工装置5と、を下から保持するベースである。基台2は、ワイヤソー1の下端部全体に亘って配置されている。
【0017】
<コラム>
コラム3は、基台2上に立設されて、ワイヤソー1の機械本体を構成する柱状の部材である。
図2に示すように、コラム3内には、サドル4と、静圧案内機構9と、ワーク送り機構7と、バランサ8と、が設けられている。コラム3の内壁には、ワーク送り機構7のワーク送りに対して切断方向(上下方向)に沿って設けられた案内面3a,3b,3c,3dを有している。
【0018】
<サドル>
図2に示すように、サドル4は、コラム3に対して上下方向に移動可能に配置された縦送り台である。サドル4の前面には、ワークWを保持するクランプ装置6を支持している。
図4に示すように、サドル4は、静圧案内機構9の静圧用ポンプP1からの油をコントロールバルブ90を介在して供給されるポケット4a,4b,4c,4dを外周面に有している。
【0019】
ポケット4a~4dは、静圧用ポンプP1(
図5参照)から供給される油の圧力によって、サドル4を水平方向(前後左右方向)に移動させて位置調整するための静圧用ポケットである。ポケット4a~4dは、コラム3のコラム3の案内面3a~3dに対して、隙間S1を介して対向配置されている。凹部形状のポケット4a~4dに供給される油の圧力によって隙間S1を数μm~数十μmの間で可変でき、供給された油圧によってサドル4を動かすことができる。
なお、静圧案内機構9については、後で詳述する。また、便宜上、コントロールバルブ91,92,93,94,95をまとめていう場合は、「コントロールバルブ90」という。
【0020】
<加工装置>
図1に示すように、加工装置5は、クランプ装置6にクランプされた未加工のワークWを加工する切削機構である。加工装置5は、例えば、側面視して三角形を描くように適宜な間隔で配置された3つの加工用ローラ51,52,53と、加工用ローラ51,52,53に巻き掛けられたワイヤ54、加工用ローラ51,52を回転駆動させる駆動モータ(図示省略)と、ワークWを切断するワイヤ54と、ブラケット55と、を備えて成る。加工装置5は、コラム3の近傍において、基台2上にブラケット55を介在して設置されている。
【0021】
ワークWは、加工用ローラ51,52の軸線方向に沿って並設された複数のものから成る(添付図面では、省略して1つのみ記載している)。そして、ワイヤソー1の運転時には、走行されたワイヤ54が加工用ローラ51,52間で、クランプ装置6で保持されたワークWが、ワーク送り機構7(
図2参照)によって加工装置5に向かって下降されてワイヤ54に押し付けられることで切断される。
【0022】
加工用ローラ51,52,53は、その一例を挙げると、加工用ローラ51,52にそれぞれ備えられた駆動モータ(図示省略)によって回転されることで、プーリ及びベルト等を含む伝達機構(図示省略)を介して駆動されて、ワイヤ54を走行させるように構成されている。加工用ローラ51,52,53は、少なくとも一対であればよく、相互間隔をおいて平行に配置される構成であれば、3本以上でもよい。また、駆動モータ(図示省略)は、プーリ及びベルトを用いずに、加工用ローラ51,52に直結させて設けてもよい。
【0023】
ワイヤ54は、例えば、1本の線材によって構成された加工用ワイヤである。ワイヤ54は、加工用ローラ51,52によって、一定量前進及び一定量後退を繰り返して、全体として歩進的に前進し、または、一方向に連続して前進するように駆動される。
【0024】
<クランプ装置>
図1に示すように、クランプ装置6は、加工装置5でワークWを加工する際に、ワークWをクランプするための保持機構である。クランプ装置6は、未加工のワークWをクランプしてから、そのワークWを加工装置5のワイヤ54に押し当てて加工し、加工完了後のワークWをアンクランプさせるまで、ワークWを保持する。クランプ装置6は、ワークWを保持するワーク保持部(図示省略)と、ワーク保持部をクランプするクランプ部(図示省略)と、ワーク保持部(図示省略)及びクランプ部(図示省略)をワーク送り機構7によって昇降させるワーク送りテーブル61と、を備えて成る。
【0025】
<ワーク送り機構>
図3に示すように、ワーク送り機構7は、ワークWを、ワイヤ54によってワークWを切断する加工位置と、加工済のワークW(
図1参照)と未加工のワークWとの交換が行われるワーク交換位置と、の間を移動させるための移送装置である。また、ワーク送り機構7は、ワークWを加工する際に、ワークW(
図1参照)を昇降させる昇降装置の機能も果たす。ワーク送り機構7は、例えば、リニアモータ70や、ボールねじとサーボモータとを備えて成る昇降装置等から構成されている。以下その一例として、ワーク送り機構7は、リニアモータ70から成る場合を例に挙げて説明する。
【0026】
<リニアモータ>
図3に示すように、リニアモータ70は、サドル4を上下方向に移動させるための駆動源である。リニアモータ70は、ベース75と、ベース75に固定され、永久磁石73を有する固定子74と、固定子74に相対的に移動可能に設けられて電機子巻線71を有する可動子72と、を主に構成されている。リニアモータ70は、電機子巻線71に電力供給装置(図示省略)から交流電流が供給されると、可動子72が駆動するように構成されている。このとき、電機子巻線71は、熱を発するため、その熱を冷却するための冷却装置11(
図5参照)が電機子巻線71に当接して配置されている。永久磁石73は、サドル4の移動可能な領域の上端から下端まで設置されている。固定子74はベース75に固定され、可動子72は、サドル4に配置されている。ベース75は、コラム3に連結されている。リニアモータ70は、コントローラ10を介して不図示の電源に電気的に接続されている。
【0027】
<冷却装置>
図5に示すように、冷却装置11は、リニアモータ70を冷却して予め設定した所定温度に調整するための装置である。冷却装置11は、静圧用油圧ユニット11aと、静圧用ポンプP1と、オイルコン11bと、流量調整器11c,11dと、ポケット4a~4dに供給した静圧案内液体(油)を回収する静圧案内液体(油)受け11eと、を備えて構成されている。このほか、冷却装置11は、静圧案内機構9のポケット4a~4dにコントロールバルブ90、圧力スイッチPS1,PS2,PS3,PS4を介して油を供給する静圧用ポンプP1を備えている。
【0028】
<オイルコン>
オイルコン11bは、リニアモータ70で使用する油の温度を適切に保つ装置である。オイルコン11bは、リニアモータ70の電機子巻線71で発生した熱によってベース75に熱変位が生じることで、加工精度に悪影響を及ぼすのを油の温度を冷やすことにより、熱変位を最小限に抑制して、安定した加工精度を実現している。
【0029】
<バランサ>
図5に示すように、バランサ8は、上下に移動する(昇降する)物体の重さをキャンセルする装置である。その重さは、例えば、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークWの自重と、が含まれる。バランサ8は、上下動する駆動源から成り、その構造及び種類等は特に限定されない。
バランサ8の一例を挙げるとバランサ8は、主にシリンダ装置80から成る。さらに、具体例を挙げると、バランサ8は、シリンダ装置80と、圧力スイッチPS5と、コントロールバルブ95と、シリンダ用油圧ユニット12のシリンダ用ポンプP2と、を備えて構成されている。バランサ8は、リニアモータ70に同期して動くようにコントローラ10によって制御されている。
【0030】
<シリンダ装置>
図3に示すように、シリンダ装置80は、上下に移動するものの自重をキャンセルさせるために支持する装置である。シリンダ装置80は、シリンダ81と、ピストン82と、ピストンロッド83と、サドル連結部材84と、ガイドレール85と、を備えて構成されている。
図5に示すように、シリンダ装置80は、シリンダ用油圧ユニット12からコントロールバルブ95、圧力スイッチPS5を介して送られて来る油によってシリンダ81を作動させることで、サドル4を保持する。
【0031】
図3に示すように、シリンダ81内には、ピストン82及びピストンロッド83と、シリンダ用油圧ユニット12からコントロールバルブ95、圧力スイッチPS5を介して供給される油と、が収容されている。シリンダ81は、ワークWを保持するクランプ装置6を支持するサドル4に取り付けられている。
図5に示すように、シリンダ81は、圧力スイッチPS5、コントロールバルブ95を介してシリンダ用油圧ユニット12のシリンダ用ポンプP2に接続されている。シリンダ81に供給される油の圧力は、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークW(
図1参照)を加工するときの加工抵抗と、に応じてコントローラ10によって任意に設定可能になっている。
【0032】
ピストン82と、ピストン82に固定されたピストンロッド83は、上昇、下降するシリンダ81を支持する固定体である。
ピストンロッド83は、下端部がピストン82に一体に固定され、上端部にサドル連結部材84が連結されている。
サドル連結部材84は、ピストンロッド83の上端部と、サドル4の上端部と、を連結して、シリンダ装置80によってサドル4を昇降可能にするための部材である。
シリンダ装置80は、シリンダ用油圧ユニット12から供給される油の油圧でシリンダ81を上昇、下降してサドル4を保持する。
【0033】
図5に示すように、圧力スイッチPS5は、油圧を予め設定した設定範囲内に保持する制御機能と、油圧が異常になったときに油圧システムを停止させる保護機能と、を有する油圧制御器である。圧力スイッチPS5は、コントロールバルブ95とシリンダ81との間に接続されている。
【0034】
コントロールバルブ95は、バランサ8のシリンダ81に供給する油の圧力を可変させるピストン82を駆動させるためのバルブである。
シリンダ用油圧ユニット12のシリンダ用ポンプP2は、シリンダ81を進退駆動させるための油圧を生成して、シリンダ81内に油の吐出を行うポンプである。
コントロールバルブ95及びシリンダ用ポンプP2は、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークW(
図1参照)を加工するときの加工抵抗と、に応じてコントローラ10によって駆動される。
【0035】
<静圧案内機構>
図5に示すように、静圧案内機構9は、静圧案内液体(油)に圧力をかけて供給してサドル4を浮上させ、油の低粘性を利用して案内する機構である。静圧案内機構9は、案内面3a~3dに対向して配置されたポケット4a,4b,4c,4dに流体を供給することで、サドル4を切断方向(上下方向)と直交する方向(水平方向)に移動させることによって、サドル4を高い精度で位置調整可能になっている。つまり、静圧案内機構9は、
図4に示すように、案内面3a~3dと、案内面3a~3dに対向するサドル4の対向面との間の隙間S1に、潤滑油が介在されているので、摩擦係数が極めて低く、サドル4を滑らかに移動させることができる。このため、案内面3a~3dとサドル4の対向面との間の隙間S1の加工誤差は、潤滑膜で平均化されているので、部品精度よりも高い精度でサドル4を移動させることが可能となっている。
【0036】
図5に示すように、静圧案内機構9は、案内面3a~3dを有するコラム3と、ポケット4a~4dを有するサドル4と、オイルコン11bと、圧力スイッチPS1~PS5と、コントロールバルブ90(コントロールバルブ91~95)と、コントローラ10と、流体整流器96と、静圧用ポンプP1と、を備えて構成されている。
【0037】
<案内面及びポケット>
前記した案内面3a~3dは、コラム3の内壁面から成る。
前記したポケット4a~4dは、サドル4を前後左右方向に移動させるための油圧が供給される断面視して凹部形状の溝である。例えば、ポケット4a,4b(
図2参照)に供給される油の圧力が同じ圧力の場合、前後のポケット4a,4b内の油圧に圧力差がないため、サドル4は、前後方向の移動可能範囲内の中央部に配置されている。
ポケット4aに供給される油圧の方がポケット4bに供給される油圧よりも大きい場合、サドル4は、ポケット4bがある前側方向に移動する。ポケット4aに供給される油圧の方がポケット4bに供給される油圧よりも小さい場合、サドル4は、ポケット4aがある後側方向に移動する。
【0038】
ポケット4c,4d(
図2参照)に供給される油の圧力が同じ圧力の場合、左右のポケット4c,4d内の油圧に圧力差がないため、サドル4は、左右方向の移動可能範囲内の中央部に配置されている。ポケット4cに供給される油圧の方がポケット4dに供給される油圧よりも大きい場合、サドル4は、ポケット4dがある右側方向に移動する。ポケット4cに供給される油圧の方がポケット4dに供給される油圧よりも小さい場合、サドル4は、ポケット4cがある左側方向に移動する。
【0039】
<圧力スイッチ>
圧力スイッチPS1~PS5は、油圧を予め設定した設定範囲内に保持する制御機能と、油圧が異常になったときにワーク送り機構7によるワークWの移動を停止させる保護機能と、を有する油圧制御器である。圧力スイッチPS1~PS5は、油圧保護圧力スイッチから成る。圧力スイッチPS1は、コントロールバルブ91とポケット4aとの間に接続されている。圧力スイッチPS2は、コントロールバルブ92とポケット4bとの間に接続されている。圧力スイッチPS3は、コントロールバルブ93とポケット4cとの間に接続されている。圧力スイッチPS4は、コントロールバルブ94とポケット4dとの間に接続されている。
【0040】
<コントロールバルブ>
コントロールバルブ90(コントロールバルブ91~94)は、ポケット4a~4dに供給する油の圧力を可変させるためのバルブである。コントロールバルブ90(コントロールバルブ91~94)は、比例電磁減圧弁から成り、コントローラ10からの駆動信号を受けて作動し、ポケット4a,4b,4c,4dに供給する油の圧力をワークWの切り込み位置に応じて適宜調節する。
【0041】
<コントローラ>
コントローラ10は、ポケット4a~4dに供給する油の圧力をワークWの切り込み位置に応じて任意に設定可能な機能を有する制御装置である。また、コントローラ10は、前記したように、コントロールバルブ95及びシリンダ用ポンプP2を、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークW(
図1参照)を加工するときの加工抵抗と、に応じて駆動させる機能も有している。
【0042】
<流体整流器>
流体整流器96は、配管の曲げによる乱流や、流速分布の悪化により渦が発生するのを抑制して所定量の油が流れるように油の流れを整流化させる装置である。
【0043】
<静圧用ポンプ>
静圧用油圧ユニット11aの静圧用ポンプP1は、ポケット4a~4dに油を供給してサドル4を水平方向に移動させるための油圧を生成するポンプである。静圧用ポンプP1は、流体整流器96、コントロールバルブ91~94、圧力スイッチPS1~PS4を介してポケット4a~4dに連結されている。静圧用ポンプP1は、コントローラ10に電気的に接続されて、コントローラ10からの駆動信号によって駆動される。
【0044】
[作用]
次に、本発明の実施形態に係るワイヤソー1の作用を、
図1~
図5を参照して説明する。
【0045】
図1に示すように、まず、ワークWをワーク送りテーブル61に取り付ける。そのワークWを、リニアモータ70(
図3参照)を駆動させて下降させることによって、加工装置5のワイヤ54に押し当ててワークWを切削加工する。
【0046】
ワークWを切削加工する場合に、例えば、
図5に示すコントローラ10の操作部を操作して、サドル4のポケット4c,4dに供給する油の圧力を、ワークW(
図1参照)の切り込み位置に応じて設定する。このため、サドル4は、ポケット4c,4dに供給される油圧の大きさに応じて左右方向に移動させて、サドル4の位置を左右方向に移動させて調整することで、切削加工するワークW(
図1参照)のワイヤ54に対する位置を任意に調整することができる。
【0047】
また、コントローラ10は、操作部を操作して、サドル4のポケット4a,4bに供給する油の圧力を適宜調整することで、ポケット4c,4dに供給される油圧の大きさに応じて前後方向に移動させて、サドル4の位置を前後方向に調整することができる。このため、ワイヤソー1は、ワークWの切断精度を補正してさらに高精度にすることができる。
【0048】
また、バランサ8は、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークWを加工するときの加工抵抗と、をキャンセルして安定した状態に支持することができる。このため、バランサ8は、リニアモータ70によって引き上げる荷重を低減させることができるので、リニアモータ70を小型化させることができる。
【0049】
このように、本発明の実施形態に係るワイヤソー1は、
図2または
図5に示すように、上下方向に移動可能に配置されたサドル4と、ワーク送り機構7のワーク送りに対して切断方向に沿って設けられた案内面3a,3b,3c,3dを有するコラム3と、案内面3a~3dに対向して配置されたポケット4a,4b,4c,4dに流体を供給することでサドル4を切断方向と直交する方向に移動させる静圧案内機構9と、案内面3a~3dに供給する流体の圧力を可変させるためのコントロールバルブ91,92,93,94と、案内面3a~3dに供給する流体の圧力をワークW(
図1参照)の切り込み位置に応じて任意に設定可能なコントローラ10と、を備えている。
【0050】
かかる構成によれば、ワイヤソー1は、ワークW(
図1参照)の切断方向に沿って設けられた案内面3a~3dに対向するポケット4a~4dに流体を供給することでサドル4を移動させる静圧案内機構9を備えている。静圧案内機構9は、案内面3a~3dに対向して配置されたポケット4a~4dに供給する流体の圧力を、ワークW(
図1参照)の切り込み位置の誤差に応じて適宜調整して位置調整することで、ワークWの切断精度をさらに向上させることができる。
また、静圧案内機構9の案内面3a~3dの静圧案内は、サドル4のポケット4a~4d内に加圧させた流体供給することで、案内面3a~3dを浮上させて、ワークWを前後左右方向に移動させて、ワークWとワイヤ54の相対位置をずらして、位置を微調整することができる。このため、案内面3a~3dと、ポケット4a~4dは、完全に非接触であるので、案内面3a~3dの形状誤差を流体が緩和する平均化効果が働くため、運動精度が高い。
また、案内面3a~3dと、ポケット4a~4dは、転がり案内よりも摩擦抵抗が小さく(応答性が高く)、流体の粘性により減衰性も高いので、外乱による影響がないため、動きがよく、かつ、高精度な位置調整が可能となる。また、ワイヤソー1は、ポケット4a~4dに供給する流体の圧力を調整することで、前後左右方向に移動させて、任意の曲面形状に加工することも可能となる。
【0051】
また、ワイヤソー1は、上下方向移動可能なものの自重と、ワークWを加工するときの加工抵抗と、を相殺するバランサ8を備えている。
【0052】
かかる構成によれば、バランサ8は、上下方向移動可能なものの自重(例えば、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークWを加工するときの加工抵抗と、をキャンセルして安定した状態に支持することができる。このため、バランサ8は、リニアモータ70によって引き上げる荷重を低減させることができるので、リニアモータ70を小型化させて、コラム3全体の小型化を図ることができる。
【0053】
また、バランサ8は、シリンダ装置80から成る。
【0054】
かかる構成によれば、バランサ8は、シリンダ装置80のシリンダ81に供給する油圧によって、サドル4の自重と、リニアモータ70の可動子72の自重と、ワークWを加工するときの加工抵抗と、をサポートして、安定した状態に保持することができる。
【0055】
また、
図2及び
図3に示すように、ワイヤソー1は、サドル4を上下方向(ワークWの切り込み方向)に移動させるリニアモータ70を備えている。
【0056】
かかる構成によれば、リニアモータ70は、移動側の電機子巻線71が、固定側の永久磁石73に対して、非接触状態で移動するので、摩耗して劣化することがないので、切削加工時の動きを滑らかにすることができる。また、ワイヤソー1は、リニアモータ70の部品をメンテナンスする作業を解消することができ、メンテナンス性に向上させることができる。
【0057】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0058】
前記実施形態では、静圧案内機構9の一例として、
図2に示すように、サドル4の外周面の前後左右にポケット4a~4dを設けた場合を例に挙げて説明したがこれに限定されるものではない。
油が供給されるポケット4a~4dは、少なくともサドル4の外周面の左右に設けたポケット4c,4dを有していればよい。このようにサドル4の位置を左右方向にのみ調整可能にしても、加工するワークWの厚さを調整することができるため、ワークW(
図1参照)を高精度に切削加工することができる。
また、ワーク送り機構7は、リニアモータ70に限定されず、ボールねじとサーボモータとから成る昇降装置であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ワイヤソー
3 コラム
3a,3b,3c,3d 案内面
4 サドル
4a,4b,4c,4d ポケット
7 ワーク送り機構
8 バランサ
9 静圧案内機構
10 コントローラ
70 リニアモータ
80 シリンダ装置
90,91,92,93,94,95 コントロールバルブ
W ワーク