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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028707
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】ポリマー及び光制御素子
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20230224BHJP
   G02F 1/061 20060101ALN20230224BHJP
   G02F 1/361 20060101ALN20230224BHJP
【FI】
C08F20/36
G02F1/061 501
G02F1/361
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134575
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 明
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 千由美
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隼
(72)【発明者】
【氏名】上田 里永子
【テーマコード(参考)】
2K102
4J100
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA02
2K102BA07
2K102BA18
2K102BB01
2K102BB02
2K102BB04
2K102BC01
2K102BC04
2K102CA00
2K102CA28
2K102DA04
2K102DB04
2K102DD01
2K102EA02
2K102EA16
2K102EA21
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
4J100BA38P
4J100BA38Q
4J100BA40P
4J100BC09R
4J100BC12R
4J100BC43P
4J100BC53P
4J100BC65P
4J100CA05
4J100DA25
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】Cバンドよりも短波長帯において有用な光制御素子に好適に用いることができるポリマーを提供する。
【解決手段】式(1)で表されるポリマー。

[式(1)中、RA1及びRA2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基であり、前記アルキル基、前記アリール基、及び前記アルキルアリール基が有する水素原子はハロゲン原子に置換されていてもよく、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよい。Poは、ポリマー構造を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるポリマー。
【化1】

[式(1)中、
A1及びRA2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基を表し、前記アルキル基、前記アリール基、及び前記アルキルアリール基が有する水素原子はハロゲン原子に置換されていてもよく、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよい。
Xは、フェニレン基、エチレン基、又は、フェニレンビニレン基を表す。
D1は炭素数1~10のアルカンジイル基を表し、RD2は炭素数1~10のアルキル基を表し、RD1とRD2とは、これらに含まれるいずれかの炭素原子が互いに連結し、RD1及びRD2が結合している窒素原子とともに3~12員環の飽和複素環構造を形成していてもよい。
Yは、連結基を表す。
Poは、ポリマー構造を表す。]
【請求項2】
前記式(1)において、
A1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、
A2は、炭素数6~12のハロゲン化アリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている基を表し、
Xは、フェニレンビニレン基を表す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記式(1)において、
A1及びRA2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基を表し、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよく、
Xは、フェニレン基を表す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項4】
前記式(1)中のYは、ウレタン結合を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
前記式(1)中のPoは、(メタ)アクリルポリマー構造を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマーで形成された光導波路を有する光制御素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー及び光制御素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器、光スイッチ、光インターコネクト、光電子回路、波長変換器、電界センサー、THz波発生・検出器、光フェーズドアレイ等の光制御素子に適用できる電気光学材料(EO材料)として、ニオブ酸リチウム(LiNbO)等の無機強誘電体材料を用いることが知られている。無機強誘電体材料は、光制御素子の高速性、小型化、及び集積化において限界があり、小型化及び集積化に有利な半導体材料とのハイブリッドも難しいという問題があった。
【0003】
一方、有機電気光学ポリマー(有機EOポリマー)は、無機強誘電体材料に比較して大きな電気光学効果を示す。また、有機EOポリマーは、高速動作が可能であり、半導体、強誘電体、及びこれらの微細構造とのハイブリッド化が容易である。このように、有機EOポリマーは高速性及び省電力性に加えて、小型化及び集積化が可能であることから、次世代の光通信を担う材料として期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「非線形光学のための有機材料」、日本化学会編、季刊化学総説No.15(1992)
【非特許文献2】"Organic Nonlinear Optical Materials", Ch. Bosshard, et al., Gordon and Breach Publishers(1995)
【非特許文献3】「情報・通信用光有機材料の最新技術」、戒能俊邦監修、シーエムシー出版、2007年
【非特許文献4】"Organic Electro-Optics and Photonics", Larry R. Dalton, et. al., Cambridge University Press(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまでの有機EOポリマーの開発は、長距離通信波長帯であるCバンドでの使用を前提に行われてきた。近年、Cバンドよりも短波長帯において有用な(高効率な)光制御素子の開発が求められている。
【0006】
本発明は、電気光学材料として、Cバンドよりも短波長帯において有用な光制御素子に好適に用いることができる新規なポリマー及び光制御素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のポリマーを提供する。
〔1〕 式(1)で表されるポリマー。
【化1】

[式(1)中、
A1及びRA2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基であり、前記アルキル基、前記アリール基、及び前記アルキルアリール基が有する水素原子はハロゲン原子に置換されていてもよく、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよい。
Xは、フェニレン基、エチレン基、又は、フェニレンビニレン基を表す。
D1は炭素数1~10のアルカンジイル基を表し、RD2は炭素数1~10のアルキル基を表し、RD1とRD2とは、これらに含まれるいずれかの炭素原子が互いに連結し、RD1及びRD2が結合している窒素原子とともに3~12員環の飽和複素環構造を形成していてもよい。
Yは、連結基を表す。
Poは、ポリマー構造を表す。]
〔2〕 前記式(1)において、
A1は、炭素数1~10のアルキル基を表し、
A2は、炭素数6~12のハロゲン化アリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている基を表し、
Xは、フェニレンビニレン基を表す、〔1〕に記載のポリマー。
〔3〕 前記式(1)において、
A1及びRA2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基を表し、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよく、
Xは、フェニレン基を表す、〔1〕に記載のポリマー。
〔4〕 前記式(1)中のYは、ウレタン結合を表す、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリマー。
〔5〕 前記式(1)中のPoは、(メタ)アクリルポリマー構造を表す、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリマー。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のポリマーで形成された光導波路を有する光制御素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリマーは、電気光学材料として、Cバンドよりも短波長帯において有用な光制御素子に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光制御素子が備えることができるマッハツェンダー干渉計型の導波路の模式図である。
図2図1のx-x’断面の模式図である。
図3】比較例で得られた光変調器の光入射端面の断面を示す画像である。
図4】比較例で得られた光変調器の光変調の時間波形を示すグラフである。
図5】実施例で得られた光変調器の光入射端面の断面を示す画像である。
図6】実施例で得られた光変調器の光変調の時間波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<ポリマー>
本実施形態のポリマーは、式(1)で表されるポリマー(以下、「ポリマー(1)」ということがある。)である。
【化2】

[式(1)中、
A1及びRA2は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基を表し、前記アルキル基、前記アリール基、及び前記アルキルアリール基が有する水素原子はハロゲン原子に置換されていてもよく、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよい。
Xは、フェニレン基、エチレン基、又は、フェニレンビニレン基を表す。
D1は炭素数1~10のアルカンジイル基を表し、RD2は炭素数1~10のアルキル基を表し、RD2はPoに結合していてもよく、RD1とRD2とは、これらに含まれるいずれかの炭素原子が互いに連結し、RD1及びRD2が結合している窒素原子とともに3~12員環の飽和複素環構造を形成していてもよい。
Yは、連結基を表す。
Poは、ポリマー構造を表す。]
【0012】
式(1)中のYよりも右側の構造は、電気光学分子が有する構造(以下、「EO分子構造」ということがある。)である。EO分子構造は、式(1)中のXよりも右側の構造(以下、「アクセプター構造」ということがある。)と、XとYとの間にある-RD1(RD2)N-で表される構造(以下、「ドナー構造」ということがある。)とが、Xにより連結している構造を有する。EO分子構造のドナー構造は、Yを介してポリマー構造に連結している。
【0013】
A1及びRA2で表される炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert-ブチル基、ノルマルペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルヘプチル基、及び2-エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。RA1及びRA2で表されるアルキル基としては、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、メチル基であることが好ましい。
A1及びRA2で表される炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、及びビフェニル基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。
A1及びRA2で表される炭素数7~15のアルキルアリール基としては、RA1及びRA2で表されるアリール基が有する少なくとも1つの水素原子がアルキル基に置換されたものが挙げられる。置換されたアルキル基としては、上記したアルキル基が挙げられ、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0014】
A1及びRA2で表される上記アルキル基、上記アリール基、及び上記アルキルアリール基が有する少なくとも1つの水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子に置換されていてもよい水素原子の数は1以上であればよく、2以上の水素原子がハロゲン原子に置換されている場合、ハロゲン原子は互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。上記アルキルアリール基が有する水素原子は、アルキルアリール基のアルキル基が有する水素原子であってもよく、芳香環が有する水素原子であってもよい。
上記アルキル基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、クロロメチル基、2-クロロエチル基、1,2-ジクロロエチル基、ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、1-ブロモプロピル基、2-ブロモプロピル基、3-ブロモプロピル基、及びヨードメチル基等が挙げられ、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
上記アリール基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたハロゲン化アリール基としては、ハロゲン化フェニル基であることが好ましい。ハロゲン化フェニル基としては、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、ブロモフェニル基、及びクロロフルオロフェニル基等が挙げられる。
上記アルキルアリール基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されたものとしては、トリフルオロメチルフェニル基及びクロロ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
【0015】
A1とRA2とは、互いに同じ構造であってもよいが、互いに異なる構造であってもよい。RA1とRA2とが互いに同じ構造である場合、RA1とRA2とは、炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。RA1とRA2とが互いに異なる構造である場合、下記[a1]又は[a2]を表すことが好ましい。
[a1]RA1が炭素数1~10のアルキル基を表し、RA2が炭素数6~12のハロゲン化アリール基又は炭素数7~15のアルキルアリール基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている基を表す。
[a2]RA1が炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を表し、RA2が炭素数6~12のアリール基を表す。
【0016】
A1とRA2とが互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに形成する3~12員環の飽和脂環構造としては、RA1の末端の炭素原子とRA2の末端の炭素原子とが連結していることが好ましい。上記飽和脂環構造としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、及びシクロデシル基等が挙げられ、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
【0017】
式(1)中のアクセプター構造としては、例えば下記に示す構造が挙げられる。下記式中、*1は、Xとの結合手を表す。
【化3】
【0018】
D1で表される炭素数1~10のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、及びデカン-1,10-ジイル基等が挙げられる。上記アルカンジイル基は、炭素数1~5のアルカンジイル基であることが好ましい。上記アルカンジイル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0019】
D2で表される炭素数1~10のアルキル基としては、RA1及びRA2で表される炭素数1~10のアルキル基として説明したアルキル基が挙げられる。上記アルキル基は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0020】
D1とRD2とが互いに連結して窒素原子とともに形成する3~12員環の飽和複素環構造は、RD1に含まれるいずれかの炭素原子とRD2に含まれるいずれかの炭素原子とが互いに連結して形成される3~12員環の飽和複素環構造であればよく、RD1に含まれるいずれかの炭素原子とRD2の末端の炭素原子と互いに連結されて形成される3~12員環の飽和複素環構造であることが好ましく、RD1に含まれるいずれかの炭素原子とRD2の末端の炭素原子と互いに連結されて形成される6員環の飽和複素環構造であることがより好ましい。上記飽和複素環構造には上記窒素原子以外のヘテロ原子が含まれていてもよいが、上記飽和複素環構造に含まれるヘテロ原子は1つであることが好ましい。上記飽和複素環構造としては、アジリジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、又はアゾカン基等の飽和複素環基の環構造部分から水素原子を1つ除いた基;アジリジン基、ピロリジン基、ピペリジン基、又はアゾカン基等の飽和複素環基の環骨格を形成する原子(好ましくは炭素原子)にアルカンジイル基を有する基等が挙げられる。該アルカンジイル基の炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であってもよい。
【0021】
式(1)中のドナー構造は、例えば下記に示す構造が挙げられる。下記式中、*2は、Yとの結合手を表す。
【化4】
【0022】
Xで表されるフェニレンビニレン基は、フェニレン基側が式(1)中の窒素原子に連結し、ポリマー(1)が-Y-RD1(RD2)N-C-(CH)-の構造を形成していることが好ましい。
【0023】
ポリマー(1)は、RD1が上記したアルカンジイル基を表し、RD2が上記したアルキル基を表し、RD1とRD2とが上記した飽和複素環構造を形成していてもよいものである場合、RA1、RA2、及びXは、下記[e1]~[e3]のいずれかであることが好ましい。
[e1]RA1は炭素数1~10のアルキル基を表し、RA2は炭素数6~12のハロゲン化アリール基、又は炭素数7~15のアルキルアリール基が有する少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子に置換されている基を表し、Xはフェニレンビニレン基を表す。
[e2]RA1及びRA2はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基を表し、RA1とRA2とは互いに連結してこれらが結合している炭素原子とともに3~12員環の飽和脂環構造を形成していてもよく、Xは、フェニレン基を表す。
[e3](i)RA1及びRA2はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基を表す、(ii)RA1が炭素数1~10のアルキル基を表し、RA2が炭素数6~12のハロゲン化アリール基を表す、又は(iii)RA1が炭素数1~10のハロゲン化アルキル基を表し、RA2が炭素数6~12のアリール基を表し、Xは、エチレン基を表す。
【0024】
ポリマー(1)のEO分子構造としては、表1に示す構造(1)~(9)に示す構造が挙げられる。表1において、構造(1)は、式(1)において、ドナー構造が上記式(d-1)~式(d-14)で表される構造のうちのいずれかであり、Xが*3-C-(CH)-で表される構造であり、アクセプター構造が上記式(a-19)又は式(a-20)で表される構造であることを表す。Xを表す式中の*3は、N原子との結合手を表す。
【表1】
【0025】
Yで表される連結基は、EO分子構造のドナー構造と、Poで表されるポリマー構造とを連結する基である。上記連結基としては、例えば(チオ)ウレタン結合、(チオ)ウレア結合、及び(チオ)アミド結合等が挙げられる。(チオ)ウレタンとは、ウレタン及びチオウレタンから選択される少なくとも一方を意味する。(チオ)ウレア及び(チオ)アミド等についても同様である。上記連結基は、ウレタン結合であることが好ましい。Yがウレタン結合を表す場合、式(1)のPo-Y-RD1-で表される構造は、Po-HNC(O)O-RD1-であることが好ましい。
【0026】
Poで表されるポリマー構造としては、PMMA等の(メタ)アクリルポリマー構造、ポリイミド構造、ポリカーボネート構造、オレフィンポリマー構造、シクロオレフィンポリマー構造、ビニルポリマー構造、ポリエステル構造、ポリアルキルシロキサン構造、エポキシ樹脂構造等の構造が挙げられる。ポリマー構造は、ホモポリマー構造であってもよく、2種以上のモノマーを重合して得られるコポリマー構造であってもよい。(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリレート等についても同様である。
【0027】
Poで表されるポリマー構造は、(メタ)アクリルポリマー構造を有することが好ましく、側鎖に(チオ)ウレタン結合、アルキル基、単環式又は多環式の飽和脂環式炭化水素基、及びイソ(チオ)シアナト基から選ばれる1種以上を有する(メタ)アクリルポリマー構造を有することがより好ましい。アルキル基としては、RA1及びRA2で表される炭素数1~10のアルキル基として説明したアルキル基が挙げられる。単環式又は多環式の飽和脂環式炭化水素基としては、炭素数が3~12の飽和脂環式炭化水素基が好ましく、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、及びジシクロペンタニル基等が挙げられる。(メタ)アクリルポリマー構造とは、(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとして重合することによって形成される繰返し単位をいう。(メタ)アクリルポリマー構造を形成するために用いられる(メタ)アクリル酸エステルは、1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0028】
(メタ)アクリルポリマー構造を得るために用いるモノマー成分としては、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2-(イソシアナトエチル)メタクリレート、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート)等のイソ(チオ)シアナト基を有する(メタ)アクリレート;アダマンチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等の多環式の飽和脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリルポリマー構造としては、例えば下記に示す構造が挙げられる。
【化5】

[式中、RP1はアルキル基、もしくは、単環式又は多環式の飽和脂環式炭化水素基を表し、k、p、及びrは1以上の整数を表し、*4は、Yとの結合手を表す。]
【0030】
ポリマー(1)は、2次非線形光学効果を発揮するポリマーである。ポリマー(1)は、Cバンドよりも短波長帯である波長1259nm以下において、性能指数FOM1が1.2(V・cm)-1以上である、及び/又は、性能指数FOM2が0.20(V・dB)-1以上であることが好ましい。性能指数FOM1及びFOM2はそれぞれ、下記式(I)及び(II)によって算出される値である。本明細書において、特定の光制御素子の性能指数FOM1及びFOM2は、後述する実施例で説明するように、不均一分散分析(ガウス型分散式)を用いて決定することができる。
【数1】
【0031】
ポリマー(1)の性能指数FOM1が1.2(V・cm)-1以上である、及び/又は、性能指数FOM2が0.20(V・dB)-1以上である波長は、1100nm以下であってもよく、1000nm以下であってもよく、900nm以下であってもよく、800nm以下であってもよく、680nm以下であってもよく、650nm以下であってもよく、通常200nm以上であり、300nm以上であってもよく、400nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。
【0032】
ポリマー(1)の性能指数FOM1は、上記したいずれかの波長範囲において、1.4(V・cm)-1以上であってもよく、1.5(V・cm)-1以上であってもよく、1.8(V・cm)-1以上であってもよく、通常48(V・cm)-1以下である。ポリマー(1)性能指数FOM2は、上記したいずれかの波長範囲において、0.25(V・dB)-1以上であってもよく、0.30(V・dB)-1以上であってもよく、通常8(V・dB)-1以下である。
【0033】
ポリマー(1)は、例えば、式(1)で表されるポリマーのポリマー構造及び反応性基を含むポリマー(Po1)と、式(1)で表されるポリマーのEO分子構造及び反応性基を含む化合物(EO1)とを反応させることによって得ることができる。
【化6】

[式中、RA1、RA2、X、RD1、RD2、及びYは、上記と同じ意味を表し、ZP1及びZD1は、それぞれ独立して反応性基を表す。]
【0034】
ポリマー(Po1)において反応性基を表すZP1と、化合物(EO1)において反応性基を表すZD1とは、これら2つの反応性基が反応することによって、式(1)中のYで表される連結基を形成することができる官能基である。ZP1及びZD1は、それぞれ独立して、イソ(チオ)シアナト基、水酸基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、及び酸無水物基からなる群より選択することができる。ZP1及びZD1のうちの一方がイソ(チオ)シアナト基であり、他方が水酸基であることが好ましく、ZP1がイソシアナト基であり、ZD1が水酸基であることがより好ましい。ポリマー(Po1)には通常、複数の反応性基ZP1が含まれる。ポリマー(1)において、ポリマー(Po1)に含まれる反応性基ZP1の一部に化合物(EO1)が結合しており、一部が反応性基ZP1として残存していてもよい。
【0035】
化合物(EO1)は、例えば、ドナー構造及びXの構造を含む化合物(DX1)とアクセプター構造を含む化合物(A1)とを反応させて得てもよく、Xの構造及びアクセプター構造を含む化合物(AX2)とドナ-構造を含む化合物(D2)とを反応させて得てもよい。
【化7】

[式中、RA1、RA2、X、RD1、RD2、及びZD1は、上記と同じ意味を表し、ZD2、ZD3、ZA1、及びZA2は、それぞれ独立して反応性基を表す。]
【0036】
化合物(DX1)において反応性基を表すZD2と、化合物(A1)において反応性基を表すZA1とは、これら2つの反応性基が反応することによって、化合物(EO1)中のXで表される連結基を形成することができる官能基であれば特に限定されない。化合物(AX2)において反応性基を表すZA2と、化合物(D2)において反応性基を表すZD3とは、これら2つの反応性基が反応することによって、化合物(EO1)中のXで表される連結基を形成することができる官能基であれば特に限定されない。
【0037】
<光制御素子>
ポリマー(1)は、光制御素子に適用される電気光学材料として用いることができる。本実施形態の光制御素子は、例えば、ポリマー(1)で形成された光導波路を有することができる。光制御素子としては、例えば、光変調器、光スイッチ、光トランシーバー、光フェーズドアレイ、LiDAR、スマートグラス、光インターコネクト、光電子回路、波長変換器、電界センサー、THz波発生・検出器等が挙げられる。
【0038】
光制御素子は、Cバンドよりも短波長帯において好適に用いることができる。光制御素子を使用する波長帯域としては、通常1259nm以下であり、1100nm以下であってもよく、1000nm以下であってもよく、900nm以下であってもよく、800nm以下であってもよく、680nm以下であってもよく、650nm以下であってもよく、通常200nm以上であり、300nm以上であってもよく、400nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。例えば、上記表1に示す構造(1)~(9)のEO分子構造を有するポリマー(1)を用いた光制御素子のうち、ポリマー(1)が有するEO分子の構造が構造(1)である光制御素子が、上記した波長帯域において最も長波長側で好適に使用できると考えられる。これに続いて、構造(2)、構造(3)、構造(4)、構造(5)、構造(6)、構造(7)、構造(8)、構造(9)の順に好適に使用できる波長帯域が短波長側となり、ポリマー(1)が有するEO分子の構造が構造(9)である光制御素子が上記した波長帯域において最も短波長側で好適に使用できると考えられる。例えば、上記表1に示す構造(2)のEO分子構造を有するポリマー(1)を用いた光制御素子は、780nm以上1000nm以下の波長帯域で好適に使用できる。上記表1に示す構造(6)のEO分子構造を有するポリマー(1)を用いた光制御素子は、630nm以上700nm以下の波長帯域で好適に使用できる。上記表1に示す構造(9)のEO分子構造を有するポリマー(1)を用いた光制御素子は、530nm以上600nm以下の波長帯域で好適に使用できると考えられる。
【0039】
図1は、光制御素子が備えることができるMZ型導波路の模式図である。図2は、図1のx-x’断面の模式図である。光制御素子は、例えば図1に示すように、光制御素子が備える光導波路が片アーム駆動マッハツェンダー干渉計型の導波路(以下、「MZ型導波路」ということがある。)を有することができる。MZ型導波路では、図1中の左側から入力された光が光導波路内を伝搬する。図2に示すように、光導波路は一般に、光が主に伝搬するコア11とその周囲に設けられたクラッド12とによって構成されており、コア11がポリマー(1)によって形成されている。MZ型導波路の光導波路に入力された光は、図1に示すように2つに分岐した部分であるアーム部10a,10bを伝搬した後、再び合流することにより干渉されて出力される。2つのアーム部10a,10bのうちの一方には位相変調を行うための上部電極15がクラッド12上に配置されている。本明細書において位相変調とは、入力光の位相をシフトさせることをいう。MZ型導波路における位相変調では、アーム部10aの一方を伝搬する光の位相をシフトさせることをいい、位相のシフトは、アーム部10aに配置された上部電極15により電場を印加することによって行うことができる。
【0040】
光制御素子において、高速性を評価するための指数は、MZ型導波路における半波長電圧(出力光の強度がゼロになるときの電圧)をVπ[V]とし、MZ型導波路の位相変調領域の長さをL(図1)とするとき、半波長電圧Vπと長さLとの積として表される(式(i-1))。位相変調領域は上記した位相変調を行う領域であり、図1に示すMZ型導波路では一方のアーム部10aの上部電極15を配置した領域である。そのため、位相変調領域の長さLは上部電極15の長さ(光の進行方向の長さ)となる。また、光制御素子において、省電力性を評価するための指数は、半波長電圧をVπ[V]とし、位相変調領域の伝搬損失をLoss[dB]とするとき、半波長電圧Vπと伝搬損失Lossとの積として表される(式(ii-1))。
【数2】

[式中、λは波長であり、nは屈折率であり、rは電気光学係数であり、dは位相変調領域における電極間距離(上部電極15と接地面(下部電極)16との距離)であり、Γは光の電場と印加した電場との重なり積分であり、αは単位長さあたりの伝搬損失である。]
【0041】
式(i-1)におけるVπLの値、及び、式(ii-1)におけるVπLossの値が小さいほど、光制御素子が高速性及び省電力性に優れていることを示す。そのため、高速性に優れている光制御素子を得るためには、式(i-1)において距離dを小さくすることが好ましい。また、省電力性に優れている光制御素子を得るためには、式(ii-1)において距離d(図1図2)を小さくすることが好ましい。
【0042】
光導波路の形状(構造)は、図2に示すようにチャンネル型導波路であってもよく、リッジ型導波路、逆リッジ型導波路、フォトニック結晶導波路等であってもよい。
【0043】
クラッド12は、コア11の屈折率よりも低い屈折率を有する材料で形成されていれば特に限定されず、公知の材料を用いることができる。クラッド12を構成する材料としては、石英ガラス及び多成分ガラス等のガラス、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、有機シリカ(無機シリカに有機成分が結合したもの)、PMMA等の(メタ)アクリル系ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、オレフィン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー等が挙げられる。
【0044】
図1及び図2に示すように位相変調領域に上部電極15及び下部電極16を設ける場合、金属材料等の公知の導電性材料で上部電極15及び下部電極16を形成すればよい。
【0045】
光制御素子は、図1に示すように光導波路でマッハツェンダ(MZ)干渉計を構成したMZ型光変調器であってもよく、MZ干渉計の2つの分岐路上にさらにMZ干渉計が集積されたネスト型MZ型光変調器、分岐構造を有しない単独の位相変調器、複数の分岐と位相変調器で構成される光フェーズドアレイ等であってもよい。
【実施例0046】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0047】
〔比較例1〕
次の手順で式(E-1)で表される化合物(以下、「化合物(E-1)」ということがある。)がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-1)を得た。
【0048】
(化合物(E-1)の準備)
化合物(E-1)は、国際公開第2011/024774号の実施例57に記載の手順で準備した。
【化8】
【0049】
(ベースポリマー(A-1)の合成)
メチルメタクリレート(MMA)24.15g(241.2mmol)、2-(イソシアナトエチル)メタクリレート(MOI)10.65g(68.64mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.53g(9.32mmol)を脱水トルエン57mLに溶解し、アルゴンを封入した後、温度60℃の油浴中で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、脱水ジイソプロピルエーテル(IPE)1420mL中に滴下して、析出物をろ取した。脱水IPEで洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-1)を24.1g得た。
【0050】
(ベースポリマー(A-1)の誘導体化(メチルカルバメート誘導体))
Arガス下でベースポリマー(A-1)7.0gを脱水テトラヒドロフラン245mLに溶解し、脱水メタノール15mL及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)280μLを加えて温度60℃の油浴中で2時間撹拌した。反応液を冷却後ジイソプロピルエーテル(IPE)2.8L中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPEで洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-1)の誘導体を得た。
【0051】
得られた誘導体について、示差走査熱量測定装置(Rigaku Thermo plus DSC 8230、リガク社製)を使用し、測定試料10mg、基準試料をAl空容器、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定を行ったところ、ガラス転移温度Tgは97℃であった。また、Alliance e2695(日本ウォーターズ社製)を用いたGPCにより分子量を求めた(カラム:Shodex GPC KF-804L(8mmφ×300mm)、展開溶媒:THF、カラム温度:40℃)ところ、重量平均分子量Mwは76300であり、数平均分子量Mnは35500であった。
【0052】
(EOポリマー(EO-1)の製造)
脱水テトラヒドロフラン(THF)190mLに、上記で得たベースポリマー(A-1)4.70gを溶解した。これに、化合物(E-1)2.10g(3.04mmol)及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)150μLを加えて、温度60℃の油浴中で2時間撹拌した。次いで、脱水メタノール10mL及びDBTDL60μLを加えて、温度60℃で30分間撹拌した。反応液を冷却後、ジイソプロピルエーテル(IPE)1500mL中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE(1L)で洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥した。EOポリマー(EO-1)を黒色粉末として2.83g得た(ガラス転移温度Tg:131℃)。
【0053】
〔実施例1及び2〕
次の手順で下記式(E-4)及び式(E-5)で表される化合物(以下、「化合物(E-4)」等ということがある。)がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-4)及び(EO-5)を得た。
【0054】
(化合物(E-4)の準備)
次の手順で化合物(E-4)((E)-2-(4-(4-(ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ)スチリル)-3-シアノ-5-メチル-5-(パーフルオロフェニル)フラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル)を合成した。
【0055】
<4-t-ブチルジフェニルシリルオキシブチルブチルアミン(E4-1)の合成>
【化9】

Ar気流下、4-ブチルアミノブタノール(22.2g(0.156mol))、トリエチルアミン(37.3g(0.366mol))、及びDryDMF(230mL)を混合した溶液を水冷し、TBDPSCl(40.6g(0.153mol)を、温度4~10℃の条件下で10分間かけて滴下した後、室温まで昇温し、3時間撹拌した。反応液を水1.2L中に分散し、酢酸エチルにて2回抽出した。抽出によって得られた有機層を、水(2回)、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮し、式(E4-1)で表される化合物(以下、「化合物(E4-1)」ということがある。)55.3gを得た(収率:92.3%)。
【0056】
<N-ブチル-N-(4-(t-ブチルジフェニルシリル)オキシ)ブチルアニリン(E4-2)の合成>
【化10】

Ar気流下、上記で得た化合物(E4-1)(55.3g(0.14mol))、ブロモベンゼン(27.1g(0.17mol))、及びDryトルエン(470mL)の溶液に(TMS)2NK(29.5g(0.15mol))を添加し、温度90~97℃に加熱し、3時間撹拌した。これを冷却した後、水洗(5回)し、温度55℃にて濃縮し、残渣70.1gを得た。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(シリカゲル740g、n-Hex、n-Hex/AcOEt:25/1)にて精製し、式(E4-2)で表される化合物(以下、「化合物(E4-2)」ということがある。)54.7gを得た(収率:83%)。
【0057】
<4-(ブチル(フェニル)アミノ)ブタン-1-オール(E4-3)の合成>
【化11】

Ar気流下、化合物(E4-2)(54.7g(0.12mmol))及びTHF(500mL)を混合した溶液に、1.0M-TBAF-THF(151mL(0.15mol))を添加し、温度22~23℃にて1時間撹拌した。反応液を水(1L)に分散し、酢酸エチルにて抽出した。水(2回)、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮して、残渣56.5gを得た。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(シリカゲル600g、n-Hex/AcOEt:3/1、1/2)にて精製し、式(E4-3)で表される化合物(以下、「化合物(E4-3)」ということがある。)26.5gを得た(収率:100%)。
【0058】
<4-(ブチル(フェニル)アミノ)ブチルアセテート(E4-4)の合成>
【化12】

Ar気流下、化合物(E4-3)(26.5g(0.12mol))、トリエチルアミン(24.2g(0.24mol))、及びDry塩化メチレン(200mL)を混合した溶液を氷冷し、塩化アセチル(12.3g(0.16mol))を、温度3~8℃の条件下で25分間かけて滴下した。同温度にて1時間撹拌後、水(200mL)を滴下して反応液をクエンチした。分液後、水、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮して、残渣31gを得た。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(シリカゲル230g、n-Hex/AcOEt:10/1、9/1)にて精製し、式(E4-4)で表される化合物(以下、「化合物(E4-4)」ということがある。)28.2gを得た(収率:89%)。
【0059】
<(N,N-4-アセトキシブチルブチル)-4-ホルミルアミノベンゼン(E4-5)の合成>
【化13】

Ar気流下、DryDMF(160mL)を氷冷し、オキシ塩化リン(19.8g(128.8mol))を、温度5~7℃で15分間かけて滴下した後、室温まで昇温し、30分間撹拌した。続いて、化合物(E4-4)(28.2g(107.1mol)及びDryDMF(85mL)を温度18~30℃で15分間かけて滴下した後、温度85~90℃に加熱し2.5時間撹拌した。氷冷後、20%NaOAc水(240mL)を滴下した。これを室温で1時間撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出によって得られた有機層を水で2回、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮し、残渣(29.4g)を得た。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(シリカゲル250g、n-Hex/AcOEt:5/1、1/1)で精製し、式(E4-5)で表される化合物(以下、「化合物(E4-5)」ということがある。)26.4g(を得た(収率:85%)。
【0060】
<(N,N-4-ヒドロキシブチルブチル)-4-ホルミルアミノベンゼン(E4-6)の合成>
【化14】

Ar気流下、化合物(E4-5)(26.4g(90.6mmol))及びEtOH(165mL)を混合した溶液に、2N-NaOH水(152mL(304mmol))を、温度21~25℃の条件下で30分間かけて滴下した後、1時間撹拌した。反応液を水(1L)に分散し、酢酸エチルにて抽出した。抽出によって得られた有機層を、水で2回、飽和食塩水の順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮し、残渣(21.8g)を得た。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(シリカゲル220g、n-Hex/AcOEt:1/1→1/2)で精製し、式(E4-6)で表される化合物(以下、「化合物(E4-6)」ということがある。)20.8gを得た(収率:92%)。
【0061】
<2-[3-シアノ-4,5-ジメチル-5-(パーフルオロフェニル)フラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル(E4-7)の準備>
式(E4-7)で表される化合物(以下、「化合物(E4-7)」ということがある。)は、国際公開第2019/151318号のEO分子の合成例1に記載の手順で準備した。
【0062】
<化合物(E-4)の合成>
【化15】

Ar気流下、化合物(E4-6)(3.24g(13.0mmol))、化合物(E4-7)(3.51g(10.0mmol))、及びEtOH(100mL)を混合した溶液を温度37~45℃に加熱し、5時間撹拌した後、氷冷した。析出した結晶を濾別してIPEで洗浄した後、温度50℃にて減圧乾燥し、化合物(E-4)3.51gを得た(収率:93%)。
【0063】
化合物(E-4)のH-NMR解析及び13C-NMR解析を行った。
H-NMR DMSO-d6
0.97(t 3H)、1.34-1.42(m 3H)、1.57-1.65(m 4H)、1.70-1.77(m 2H)、2.19(s 3H)、3.36-3.43(m 2H)、3.43-3.49(m 2H)、3.71(d 2H)、6.65(d 2H)、6.68(d 1H)、7.25(d 1H)、7.41(d 2H)
13C-NMR解析 DMSO-d6
13.67、19.40、23.72、26.12、29.09、29.40、50.11、50.30、51.58、60.27、89.82、94.17、107.05、109.87、111.80、112.19、112.46、112.93、121.49、134.30、137.58、141.80、145.47、149.74、152.92、171.44、176.74
【0064】
(化合物(E-5)の準備)
次の手順で化合物(E-5)(4-〔4-(N、N-ブチル4-ヒドロキシブチル)アミノフェニル〕3-シアノ-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン]マロノニトリル)を合成した。
【0065】
<2-メチルートリメチルシリルオキシプロピオニトリル(E5-1)の合成>
【化16】

アセトン(100mL)に1,5,7-トリアザビシクロ〔4,4,0〕5-デセンポリスチレン(PS-TBD)(100mg(0.121mmol))を加え、室温撹拌下に、トリメチルシリルシアニド(10.0g(101mmol))を滴下した。3時間室温で撹拌した後、PS-TBDを濾別し、アセトンを減圧濃縮することにより式(E5-1)で表される化合物(以下、「化合物(E5-1)」ということがある。)14.4gを得た(収率:100%)。
【0066】
化合物(E5-1)のH-NMR解析及び13C-NMR解析を行った。
H-NMR CDCl:0.24(s 9H)、1.60(s 6H)
13C-NMR CDCl:1.32、30.89、66.17、122.79
【0067】
<1-(4-フルオロフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンー1-オン(E5-2)の合成>
【化17】

マグネシウム(3.22g(132mmol))にTHF(18mL)を加え、1,2-ジブロモエタン数滴を加えた後、4-ブロモフルオロベンゼン(20.1g(115mmol))をTHF(10mL)で希釈した溶液を水冷撹拌下に滴下した。室温で3時間撹拌を続けた後、水冷撹拌下で化合物(E5-1)(14.4g(101mmol))をTHF(20mLで希釈した溶液を滴下した。室温で16時間撹拌後、10℃以下まで冷却し、6mol/L塩酸水溶液(110mL)をゆっくり滴下した。室温で2.5時間撹拌後、炭酸水素ナトリウム(40g)を分散投入して中和した。酢酸エチル(300mL)及び10%食塩水(300mL)を加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を10%食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮し、式(E5-2)で表される化合物(以下、「化合物(E5-2)」ということがある。)の粗製化合物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:10/1)で精製して化合物(E5-2)10.6gを得た(収率:58%)。
【0068】
<3-シアノー2-ジシアノメチレン-4-(4-フルオロフェニル)-5,5-ジメチル―2,5-ジヒドロフラン(E5-3)の合成>
【化18】

化合物(E5-2)(10.6g(58.1mmol))及びマロノニトリル(11.5g(174mmol))をピリジン(45mL)に溶解し、酢酸(0.2g)を加えて室温で5日間撹拌した。反応液を水(900mL)に分散し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を水、次にメタノールで洗浄し、70℃で減圧乾燥して式(E5-3)で表される化合物(以下、「化合物(E5-3)」ということがある。)(12.0g(43.0mmol))を得た。
【0069】
化合物(E5-3)のH-NMR解析、13C-NMR解析、及び、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
H-NMR DMSO-d6:1.75(s 6H)、7.53(dd 2H)、7.91(dd 2H)
13C-NMR DMSO-d6
24.50、55.61、100.60、103.24、110.99、111.32、112.19、116.87、123.91、131.32、163.69、165.37、177.01
DSC:mp 273℃
【0070】
<(E-5)の合成>
【化19】

化合物(E5-3)(7.20g(25.8mmol))及びN,N-ブチル4-ヒドロキシブチルアミン(11.3g(77.8mmol))をピリジン(130mL)、アセトニトリル(90mL)の混合液に加え、油浴温度50℃で22時間加熱撹拌した。溶媒を50℃で減圧濃縮した。濃縮物にTHF(450mL)及び酢酸エチル(450mL)を加えて溶解した。これを炭酸カリウム(60g)を溶解した10%食塩水(600mL)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧濃縮して化合物(E-5)の粗製物を得た。粗製物をシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーを通して精製し赤色結晶を得た。これを酢酸エチル次にメタノールで洗浄した後、70℃で減圧加熱乾燥して化合物(E-5)(6.01g(14.8mmol))を得た(収率57%)。
【0071】
化合物(E-5)のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定、質量分析を行った。
H-NMR DMSO-d6
0.93(t 3H)、1.35(m 2H)、1.48(m 2H)、1.53-1.65(m 4H)、1.81(s 6H)、3.43-3.49(m 6H)、4.49(t 1H)、6.92(d 2H)、8.05(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
13.67、19.41、23.61、26.60、28.95、29.41、50.04、50.21、50.38、60.27、88.90、98.12、112.12、112.35、112.57、113.63、113.69、132.60、152.77、173.98、177.81
DSC:mp 249.8℃
ESI-MS:M+1=405.2
【0072】
(ベースポリマー(A-4)の合成)
メチルメタクリレート(MMA)7.50g(74.9mmol)、2-(イソシアナトエチル)メタクリレート(MOI)3.00g(19.3mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.464g(2.83mmol)を脱水トルエン15mLに溶解し、アルゴンを封入した後、温度60~61℃の油浴中で3時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、脱水ジイソプロピルエーテル(IPE)450mL中に滴下して、析出物をろ取した。脱水IPEで洗浄した後、温度50℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-4)を8.48g得た
【0073】
上記したベースポリマー(A-1)の誘導体化の手順と同様にして、ベースポリマー(A-4)の誘導体を得て分析したところ、ガラス転移温度Tgは99℃であり、重量平均分子量Mwは76900であり、数平均分子量Mnは32100であった。
【0074】
(ベースポリマー(A-5)の合成)
メチルメタクリレート(MMA)7.90g(78.9mmol)、2-(イソシアナトエチル)メタクリレート(MOI)3.32g(21.4mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.497g(3.03mmol)を脱水トルエン15mLに溶解し、アルゴンを封入した後、温度60℃の油浴中で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、脱水トルエン(8mL)で希釈したものを脱水ジイソプロピルエーテル(IPE)450mL中に滴下して、析出物をろ取した。脱水IPEで洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-5)を8.325g得た。
【0075】
上記したベースポリマー(A-1)の誘導体化の手順と同様にして、ベースポリマー(A-5)の誘導体を得て分析したところ、ガラス転移温度Tgは99℃であり、重量平均分子量Mwは83400であり、数平均分子量Mnは36900であった。
【0076】
(EOポリマー(EO-4)の製造)
脱水テトラヒドロフラン(THF)65mLに、上記で得たベースポリマー(A-4)1.05gを溶解した。これに、化合物(E-4)0.90g(0.77mmol)及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)30μLを加えて、温度60℃の油浴中で2時間撹拌した。次いで、脱水メタノール3mLを加えて、温度60℃で45分間撹拌した。反応液を冷却後、ジイソプロピルエーテル(IPE)650mL中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE(100mL)で2回洗浄した後、温度50℃の加熱下で減圧乾燥した。EOポリマー(EO-4)を黒色粉末として1.29g得た(ガラス転移温度Tg:146℃)。
【0077】
(EOポリマー(EO-5)の製造)
脱水テトラヒドロフラン(THF)105mLに、上記で得たベースポリマー(A-5)1.754g(3.35mmol)を溶解した。これに、化合物(E-5)0.754g(1.86mmol)及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)100μLを加えて、温度55℃の油浴中で2時間撹拌した。次いで、脱水メタノール5mLを加えて、温度60℃で120分間撹拌した。反応液を冷却後、ジイソプロピルエーテル(IPE)1050mL中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE(100mL)で3回洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥した。EOポリマー(EO-5)を燈赤色粉末として1.66g得た(ガラス転移温度Tg:120℃)。
【0078】
〔性能指数FOM1及びFOM2の決定〕
性能指数FOM1及びFOM2を算出するにあたり、次の手順でEOポリマーを成膜し、EOポリマー(EO-1)、(EO-4)及び(EO-5)の単位長さあたりの伝搬損失α、屈折率n、及び電気光学係数rを測定した。
【0079】
[EOポリマーの成膜方法]
各EOポリマー(EO-1)、(EO-4)及び(EO-5)をシクロヘキサノンに加えて、1~20重量%の濃度に調整した溶液を、ミカサ社製スピンコーター1H-DX2を使用し、500~6000回転/分の条件で、洗浄済みの基板(石英ガラス)に塗布した後、ガラス転移温度(Tg)近傍で1時間真空乾燥した。ポリマー溶液の濃度及びスピンコーターの回転速度の条件は、所望の膜厚となるように適宜選択した。
【0080】
[EOポリマーの薄膜の吸光度スペクトル]
石英ガラス上に上記の成膜方法で成膜した、膜厚が約0.15μmの各EOポリマー(EO-1)、(EO-4)及び(EO-5)の薄膜の吸光度スペクトルを、日立ハイテクサイエンス社製分光光度計UH-4150を使用し測定した。吸光度を膜厚で除することにより、単位長さあたりの吸収係数a(ω)を算出した。
【0081】
[EOポリマーの厚膜の吸光度スペクトル]
石英ガラス上に40~350μmの範囲で3種類の深さの凹みを形成し、EOポリマーを充填して表面を研磨することによって、各EOポリマー(EO-1)、(EO-4)及び(EO-5)について、3種類の膜厚のEOポリマーの厚膜を作製した。各膜厚のEOポリマーの厚膜の吸光度スペクトルを、日立ハイテクサイエンス社製分光光度計UH-4150を使用し測定した。それぞれの波長(周波数ω)において、各膜厚に対して吸光度をプロットしたグラフを1次関数で近似し、その傾きから周波数ωでの単位長さあたりの吸収係数a(ω)を算出した。
【0082】
[EOポリマーの単位長さあたりの伝搬損失α]
吸収係数a(ω)に、シミュレーションにより算出した光導波路の単位長さあたりの伝搬損失0.4dB/cmを加算し、単位長さあたりの伝搬損失α(ω)とした。吸収係数a(ω)について、薄膜の吸光度スペクトルの測定値のうち1×10-3未満の値は、測定器の限界で誤差が大きいことから、薄膜の吸光度が1×10-3以上の波長(周波数ω)では薄膜の吸光度から算出した吸収係数a(ω)の値を使用し、薄膜の吸光度が1×10-3未満の波長(周波数ω)では、厚膜の吸光度から算出した吸収係数a(ω)の値を使用した。
【0083】
[EOポリマーの屈折率]
各EOポリマー(EO-1)、(EO-4)及び(EO-5)の屈折率nの測定は、石英ガラス上に成膜した膜厚約3μmのEOポリマー膜について、Metricon社製プリズムカプラー2010/Mを使用して行った。
【0084】
[EOポリマーの電気光学係数r]
参考論文(“Transmission ellipsometric method without an aperture for simple and reliable evaluation of electro-optic properties”,Toshiki Yamada and Akira Otomo,Optics Express,vol.21,pages 29240-48(2013))に記載の方法と同様に行ってEO係数を測定した。レーザー光源は、アジレント・テクノロジー社製DFBレーザー81663A(波長1308nm及び1550nm)及びトプティカフォトニクス社製DFBproレーザー(波長976nm)、コヒーレント社製OBIS LXレーザー(波長640nm)を用いた。
【0085】
[不均一分散分析(ガウス型分散式)に基づく性能指数FOM1及びFOM2の算出]
不均一分散分析(ガウス型分散式)に基づいて、性能指数FOM1及びFOM2を算出するにあたり、線形感受率χ(1)(ω)、及び、二次非線形感受率χ(2)(ω,ω,0)のモデル式として、下記の式を用いた。式中、ωは周波数であり、mは共鳴の序数であり、ωm0は共鳴周波数であり、Γm0は均一分散幅であり、Δωm0は不均一分散幅であり、χ (1)は線形感受率の大きさであり、χ (2)は二次非線形感受率の大きさである。共鳴の序数mは、吸光度スペクトルの再現性(測定値と計算値との差)の度合いにより適宜選択することができるが、ここではm=4として分析した。
【数3】
【0086】
上記[EOポリマーの薄膜の吸光度スペクトル]で測定した値を、上記式(Q3)及び式(Q4)でフィッティングし、線形感受率の大きさχ (1)、共鳴周波数ωm0、均一分散幅Γm0、不均一分散幅Δωm0を決定した。
【数4】
【0087】
次に、上記[EOポリマーの屈折率]で測定した波長1308nm及び1532nmにおける値を上記式(Q5)でフィッティングし、線形感受率の背景項χ (1)を決定した。
【数5】
【0088】
吸収スペクトルのフィッティングと屈折率のフィッティングとをχ (1)の変化量が1×10-6以下になるまで繰り返し、χ (1)、ωm0、Γm0、Δωm0、χ (1)を最終決定した。
【0089】
続いて、EOポリマー(EO-1)については上記[EOポリマーの電気光学係数r]で測定した波長1308nm及び1550nmにおける値を、EOポリマー(EO-4)については波長976nm、1308nm、及び1550nmにおける値を、EOポリマー(EO-5)については波長640nm、976nm、1308nm、及び1550nmにおける値を、それぞれ上記式(Q6)でフィッティングし、二次非線形感受率の大きさχ (2)を決定した。フィッティングは、非線形最小二乗法(Levenberg-Marquardt法)を用いて行った。
【数6】
【0090】
上記で得たEOポリマー(EO-1)、(EO-4)及び(EO-5)について、上記で得た関係式から、屈折率n、電気光学係数rを決定し、単位長さあたりの伝搬損失αは測定値を用いて、性能指数FOM1及びFOM2を算出した。なお、性能指数FOM2の算出にあたっては、α≦αである場合にはαとしてαを用い、α>αである場合にはαを用いた。結果を表2に示す。表3は、上記で算出した性能指数FOM1が1.2(V・cm)-1以上となる波長の最大値(λmax)及び最小値(λmin)、並びに、性能指数FOM2が0.20(V・dB)-1以上となる波長の最大値(λmax)及び最小値(λmin)を示す。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
〔比較例2〕
光制御素子としての波長1550nm用の光変調器を次の手順で作製した。
(EOポリマー(E-1a)の準備)
下記式で表されるEOポリマー(E-1a)を、国際公開第2018/003842号の実施例2に記載の手順で準備した。不均一分散分析(ガウス型分散式)に基づいて算出したEOポリマー(E-1a)の波長1550nmにおける性能指数は、性能指数FOM1が1.33(V・cm)-1であり、性能指数FOM2が0.22(V・dB)-1であった。
【化20】

[式中、k、p、q、及びrは、1以上の整数を表す。]
【0094】
(クラッド材料組成物の調製)
3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業(株)製)0.67g、ジルコニウムプロポキシド(東京化成工業(株)製)0.06gを、エタノール0.41g及び0.1N塩酸水溶液0.05gの混合溶液に加えて撹拌した。この混合物を温度5℃以下で12時間以上保存したのち、Omnirad819(IGM Resins社製)0.071gを加えて30分間撹拌し、クラッド材料組成物とした。
【0095】
(下部電極の作製)
厚み2μmの熱酸化膜付きシリコン基板上にIZO(100nm)をスパッタリング法によって成膜し、下部電極を作製した。
【0096】
(下部クラッドの作製)
上記で調製したクラッド材料組成物を、下部電極上にスピンコーティング(3,500rpm×30秒間)し、温度95℃で30分間、温度120℃で15分間加熱し、温度100℃で波長365nmのLED光を照射したのちに、温度190℃で16時間加熱した。作製した下部クラッドの膜厚は2.21μmであった。
【0097】
(コア層の作製)
EOポリマー(E-1a)の15質量%シクロヘキサノン溶液を、上記で作製した下部クラッドの上にスピンコーティング(1,300rpm×30秒間)し、温度180℃の真空中で1時間加熱した。作製したコア層の膜厚は1.40μmであった。
【0098】
(ポーリング用電極の作製、及び、ポーリング処理)
上記で作製したコア層の上にIZO(100nm)をスパッタリング法によって成膜し、ポーリング用電極を作製し、ポーリング処理用の構造体を得た。この構造体を温度176℃に昇温した後、下部電極とポーリング用電極との間に420Vの電圧を3分間印加し、ポーリング処理を行った。電圧を印加したまま室温まで冷却した後、電圧をOFFとした。その後、ポーリング用電極をエッチング液(関東化学(株)製、ITO-06N)で除去した。
【0099】
(光導波路の形成)
ポーリング処理を行った構造体のコア層上に、加工用マスクとしてIZO(50nm)をスパッタリング法によって成膜した。その後、フォトリソグラフィーによってマスクパターンを作製し、反応性イオンエッチング装置を用いたドライエッチング法によって、コア層を矩形構造(1.32μm×1.40μm)に加工し、これを光導波路(コア)とした。光導波路は、マッハツェンダ(MZ)型光変調器構造を形成していた。
【0100】
(上部クラッドの作製)
上記で形成した光導波路上に、上記で調製したクラッド材料組成物をスピンコーティング(3,500rpm×30秒間)し、温度90℃で10分間加熱した後、温度100℃で波長365nmのLED光を5分間照射した。作製した上部クラッドの膜厚は光導波路(コア)の上面から1.65μmであった。
【0101】
(上部電極の作製)
上記で作製した上部クラッド層の上にIZO(100nm)をスパッタリング法によって成膜した。その後、フォトリソグラフィーによってマスクパターンを作製し、エッチング液(関東化学(株)製、ITO-06N)でパターニングすることにより、上部電極を形成した。上部電極の長さLは1cmとした。
【0102】
(光変調器の作製)
光導波路の両端面をダイシングソーで切断することで光入出射端面とし、図1に相当する構造の光変調器を完成させた。図3は、作製した光変調器の光入射端面の断面を示す画像である。図4は、作製した光変調器の光変調の時間波形を示すグラフである。図4に示すように、チャンネルCh2が印加電圧、チャンネルCh1がMZ光変調器の1550nmの出力光強度である。三角波形の電圧変化に対して典型的なMZ光変調器の光出力波形を示し、上記したVπは4.4V、上記したVπLは4.4V・cmであった。
【0103】
〔実施例3〕
光制御素子としての波長640nm用の光変調器を次の手順で作製した。
(EOポリマー(E-5a)の準備)
下記式で表されるEOポリマー(E-5a)を、次の手順で準備した。不均一分散分析(ガウス型分散式)に基づいて算出したEOポリマー(E-5a)の波長640nmにおける性能指数は、性能指数FOM1が3.61(V・cm)-1であり、性能指数FOM2が0.60(V・dB)-1であった。
【化21】

[式中、k、p、及びrは、1以上の整数を表す。]
【0104】
(ベースポリマー(A-5a)の合成)
アダマンチルメタクリレート(AdMA)7.00g(31.8mmol)、2-(イソシアナトエチル)メタクリレート(MOI)2.60g(16.8mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.266g(1.62mmol)を脱水トルエン18mLに溶解し、アルゴンを封入した後、温度70℃の油浴中で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、脱水トルエン15mLで希釈したものを、脱水ジイソプロピルエーテル(IPE)450mL及び脱水トルエン15mLの混合液中に滴下し、析出物をろ取した。脱水IPE、脱水ヘキサンで順次洗浄した後、温度45℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-5a)を8.70g得た。
【0105】
(ベースポリマー(A-5a)の誘導体化(メチルカルバメート誘導体))
Arガス下でベースポリマー(A-5a)1.0gを脱水テトラヒドロフラン35mLに溶解し、脱水メタノール3mL及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)40μLを加えて温度55℃の油浴中で2時間撹拌した。反応液を冷却後、ジイソプロピルエーテル(IPE)350mL中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE100mL及びヘキサン100mLで洗浄した後、温度65℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-5a)の誘導体を得た。
【0106】
上記したベースポリマー(A-1)の誘導体の分析と同様にして、ベースポリマー(A-5a)の誘導体を分析したところ、ガラス転移温度Tgは155℃であり、重量平均分子量Mwは78600であり、数平均分子量Mnは31300であった。
【0107】
(EOポリマー(EO-5a)の製造)
脱水テトラヒドロフラン(THF)300mLに、上記で得たベースポリマー(A-5a)6.842g(11.2mmol)を溶解した。これに、化合物(E-5)3.430g(8.48mmol)及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)100μLを加えて、温度55℃の油浴中で2時間撹拌した。次いで、脱水メタノール40mLを加えて、温度55℃で1時間撹拌した。反応液を冷却後、ジイソプロピルエーテル(IPE)3.6L中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE(100mL)で2回洗浄、メタノール(100mL)で2回洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥した。EOポリマー(EO-5a)を燈赤色粉末として9.10g得た(ガラス転移温度Tg:164℃)。
【0108】
(下部クラッドの作製)
比較例2で説明した手順で作製した下部電極上に、比較例2で説明した手順で調製したクラッド材料組成物を、スピンコーティング(3,000rpm×30秒間)し、95℃で30分間、120℃で15分間加熱し、190℃で16時間加熱したのちに、100℃で365nmのLED光を照射した。作製した下部クラッドの膜厚は1.27μmであった。
【0109】
(コア層の作製)
EOポリマー(E-5a)の12質量%シクロヘキサノン溶液を、上記で作製した下部クラッドの上にスピンコーティング(3,200rpm×30秒間)し、温度170℃真空中で1時間加熱した。作製したコア層の膜厚は0.52μmであった。
【0110】
(ポーリング用電極の作製、及び、ポーリング処理)
上記で作製したコア層の上にIZO(100nm)をスパッタリング法によって成膜し、ポーリング用電極を作製し、ポーリング処理用の構造体を得た。この構造体を温度164℃に昇温した後、下部電極とポーリング用電極との間に240Vの電圧を1分間印加し、ポーリング処理を行った。電圧を印加したまま室温まで冷却した後、電圧をOFFとした。その後、ポーリング用電極をエッチング液(関東化学(株)製、ITO-06N)で除去した。
【0111】
(光導波路の形成)
ポーリング処理を行った構造体のコア層上に、加工用マスクとしてIZO(50nm)をスパッタリング法によって成膜した。その後、フォトリソグラフィーによってマスクパターンを作製し、反応性イオンエッチング装置を用いたドライエッチング法によって、コア層をリッジ構造(凸部分の幅0.99μm×高さ0.27μm)に加工し、これを光導波路(コア)とした。光導波路は、マッハツェンダ(MZ)型光変調器構造を形成していた。
【0112】
(上部クラッドの作製)
上記で形成した光導波路上に、比較例2で説明した手順で調製したクラッド材料組成物をスピンコーティング(2,000rpm×30秒間)し、温度90℃で10分間加熱した後、温度100℃で波長365nmのLED光を5分間照射した。作製した上部クラッドの膜厚は光導波路(コア)の上面から1.55μmであった。
【0113】
上記で作製した上部クラッド層の上にIZO(100nm)をスパッタリング法によって成膜した。その後、フォトリソグラフィーによってマスクパターンを作製し、エッチング液(関東化学(株)製、ITO-06N)でパターニングすることにより、上部電極を形成した。上部電極の長さLは0.5cmとした。
【0114】
(光変調器の作製)
導波路の両端面をダイシングソーで切断することで光入出射端面とし、図1に相当する構造の光変調器を完成させた。図5は、作製した光変調器の光入射端面の断面画像である。図6は、作製した光変調器の光変調の時間波形を示すグラフである。図6においてチャンネルCh1がMZ光変調器の640nmの出力光強度、チャンネルCh2が印加電圧である。三角波形の電圧変化に対して典型的なMZ光変調器の光出力波形を示し、上記したVπは2.48V、上記したVπLは1.24V・cmであった。
【0115】
比較例2で算出したVπLの値よりも、実施例3で算出したVπLの値の方が小さいことから、実施例3で作製した光変調器は、640nm付近の波長帯域において、高速性に優れ、当該波長帯域において有用(高効率)であることがわかる。
【0116】
〔実施例4~14〕
次の手順で下記式(E-5(4))~式(E-5(14))で表される化合物(以下、「化合物(E-5(4))」等ということがある。)がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-5(4))~(EO-5(14))を得た。
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

[式中、k、p、及びrは、1以上の整数を表す。]
【0117】
(化合物(E-5(4))~(E-5(14))の合成)
化合物(E5-3)及び表4に示す化合物をそれぞれ使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(4))~(E-5(14))を得た。収率は、表4に示すとおりである。
【表4】
【0118】
化合物(E-5(4))~(E-5(14))のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
<化合物(E-5(4)):2-(3-シアノ-4-(4-(エチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデンマロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.58(t 3H)、1.48(m 2H)、1.63(m 2H)、1.81(s 6H)、3.43(m 2H)、3.49(m 2H)、3.55(m 2H)、4.48(t 1H)、6.92(d 2H)、8.05(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
12.20、23.76、26.60、29.45、44.78、49.69、50.40、60.27、88.94、98.12、112.05、112.35、112.57、113.62、113.69、132.63、152.58、174.02、177.81
DSC:mp 221℃
【0119】
<化合物(E-5(5)):2-(3-シアノ-4-(4-((4-ヒドロキシブチル)(メチル)アミノ)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデンマロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.45(m 2H)、1.60(m 2H)、1.81(s 6H)、3.13(s 3H)、3.43 (t 2H)、3.55(t 2H)、4.47 (t 1H)、6.94 (d 2H)、8.06(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
23.26、26.57、29.44、38.18、50.56、51.46、60.30、89.29、98.20、112.12、112.53、112.53、113.60、113.64、132.43、153.52、174.21、177.80
DSC:mp 221℃
【0120】
<化合物(E-5(6)):2-(4-(4-(ブチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)フェニル)-3-シアノ-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
0.93(t 3H)、1.35(m 2H)、1.56(m 2H)、1.73(m 2H)、1.81(s 6H)、3.49(m 4H)、3.55(m 2H)、4.66(t 1H)、6.94(d 2H)、8.05(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
13.67、19.42、26.59、28.91、29.94、47.44、50.03、50.41、57.82、88.96、98.14、112.10、112.38、112.57、113.62、113.69、132.57、152.82、174.03、177.81
DSC:mp 265℃
【0121】
<化合物(E-5(7)):2-(3-シアノ-4-(4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.73(m 2H)、1.81(s 6H)、3.14(s 3H)、3.46(dd 2H)、3.60(t 2H)、4.64(t 1H)、6.94(d 2H)、8.06(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
26.56、29.62、38.22、48.74、50.56、57.78、89.31、98.22、112.10、112.53、112.56、113.59、113.64、132.40、153.58、174.25、177.80
DSC:mp 237℃
【0122】
<化合物(E-5(8)):2-(4-(4-(ブチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ)フェニル)-3-シアノ-5,5-ジメチルフランー2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
0.92(t 3H)、1.35(m 2H)、1.56(m 2H)、1.81(s 6H)、3.52(m 2H)、3.60(m 4H)、4.88(t 1H)、6.95(d 2H)、 8.04(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
13.68、19.38、26.58、28.62、50.45、50.58、52.42、58.23、88.05、98.14、112.28、112.45、112.55、113.61、113.67、132.44、153.25、174.05、177.80
DSC:mp 219℃
【0123】
<化合物(E-5(9)):2-(3-シアノ-4-(4-((2-ヒドロキシエチル)(プロピル)アミノ)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
0.91(t 3H)、1.60(m 2H)、1.81(s 6H)、3.48(t 2H)、3.60(m 4H)、4.88(t 1H)、6.96(d 2H)、8.03(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
10.86、19.78、26.58、50.46、52.34、52.44、58.22、89.06、98.14、112.31、112.46、112.55、113.61、113.67、132.47、153.31、174.05、177.81
DSC:mp 234℃
【0124】
<化合物(E-5(10)):2-(3-シアノ-4-(4-(エチル(2-ヒドロキシエチル)アミノ)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.17(t 3H)、1.81(s 6H)、3.60(m 6H)、4.89(t 1H)、6.96(d 2H)、8.04(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
11.86、26.58、45.34、50.47、51.99、58.33、89.08、98.15、112.24、112.46、112.55、113.61、113.67、132.47、153.09、174.10、177.81
DSC:mp 216℃
【0125】
<化合物(E-5(11)):2-(3-シアノ-4-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)フェニル-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR Acetone-d6
1.91(s 6H)、3.27 (s 3H)、3.75(t 2H)、3.85(t 2H)、7.00 (d 2H)、8.13(d 2H)
13C-NMR Acetone-d6
29.72、 39.59、 53.24、 55.18、 60.07、 91.63、 98.91、112.98 、113.14、113.94、114.18、114.29、133.23、155.31、175.53、178.55
DSC:mp 258℃
【0126】
<化合物(E-5(12)):2-(3-シアノ-4-(4-(4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.42(m 2H)、1.81(s 6H)、1.83(m 2H)、3.35(m 2H)、3.80(m 1H)、3.90(m 2H)、4.82(d 1H)、7.13(d 2H)、8.03(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
26.47、33.62、43.97、50.97、65.08、90.22、98.35、112.43、113.08、113.17、113.48、113,48、132.53、153.68、174.17、177.78
DSC:mp 280℃(分解点)
【0127】
<化合物(E-5(13)):2-(3-シアノ-4-(4-(3-ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.32(m 1H)、1.47(m 1H)、1.67(m 1H)、1.73(m 2H)、1.807(s 3H)、1.814(s 3H)、2.96(dd 1H)、3.15(t 1H)、3.30(m 1H)、3.35(m 1H)、4.04(d 1H)、4.09(d 1H)、4.66(t 1H)、7.10(d 2H)、8.04(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
24.10、26.48、26.51、26.67、38.50、47.34、49.82、50.78、63.11、 89.82、98.29、112.48、112.93、113.54、132.62 、153.77、174.03、177.78
DSC:mp 275℃
【0128】
<化合物(E-5(14)):2-(3-シアノ-4-(2-ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)フェニル)-5,5-ジメチルフラン-2(5H)-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.43-1.68(m 4H)、1.69-1.79(m 1H、1.81(s 6H)、1.83-1.92(m 1H)、3.13(td 1H)、3.61(t 2H)、3.98(d 1H)、4.26(d 1H)、4.85(t 1H )、7.11(d 2H)、8.02(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
18.27、24.71(24.83)、26.50(26.56)、39.93、41.59、50.60、55.04、58.77、89.45、98.21、112.52、112.80、113.10、113.59、113.61、132.42、154.84、173.92、177.80
DSC:mp 238℃
【0129】
(EOポリマー(EO-5(4))~(EO-5(14))の製造)
ベースポリマー(A-5a)及び上記で得た化合物(E-5(4))~化合物(E-5(14))をそれぞれ使用して上記したEOポリマー(EO-5a)の製造で説明した手順と同様に反応処理して、化合物(E-5(4))~(E-5(14))のそれぞれがベースポリマ-に結合したEOポリマー(EO-5(4))~(EO-5(14))を得た。表5に各EOポリマーのガラス転移温度Tgを示す。
【表5】
【0130】
〔実施例15〕
次の手順で下記式(E-5(15))で表される化合物(以下、「化合物(E-5(15))」ということがある。)がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-5(15))を得た。
【化33】

[式中、k、p、及びrは、1以上の整数を表す。]
【0131】
<1-((トリメチルシリル)オキシ)シクロヘキサン-1-カルボニトリル(E5-1(3))の合成>
【化34】

脱水アセトニトリル30mLに1,5,7-トリアザビシクロ〔4,4,0〕5-デセンポリスチレン(PS-TBD)103mg(0.125mmol)を加え、シクロヘキサノン9.00g(91.7mmol)及びトリメチルシリルシアニド9.80g(98.8mmol)を加えた。2.5時間室温で撹拌した後、PS-TBDを濾別し、溶媒を減圧濃縮することにより18.0gの式(E5-1(3))で表される化合物を得た(収率:99%)。
【0132】
式(E5-1(3))で表される化合物のH-NMR解析及び13C-NMR解析を行った。
H-NMR CDCl
0.24(s 9H)、1.20-1.30(m 1H)、1.52-1.68(m 5H)、1.69-1.80(m 2H)、2.02-2.10(m 2H)
13C-NMR CDCl
1.46、22.67、24.54、39.37、70.67、122.01
【0133】
<(4-フルオロフェニル)(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル)メタノン(E5-2(3))の合成>
【化35】

マグネシウム2.93g(123mmol)にTHF18mLを加え、1,2-ジブロモエタン数滴を加えた後、4-ブロモフルオロベンゼン18.3g(105mmol)をTHF9mLで希釈した溶液を水冷撹拌下に滴下した。室温で3時間撹拌を続けた後、水冷撹拌下、式(E5-1(3))で表される化合物18.0g(91.2mmol)をTHF20mLで希釈した溶液を滴下した。室温で16時間撹拌後、10℃以下まで冷却し、6mol/L塩酸水溶液100mLをゆっくり滴下した。室温で2.5時間撹拌後、炭酸水素ナトリウム37gを分散投入して中和した。酢酸エチル270mL及び10%食塩水130mLを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を10%食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮し、式(E5-2(3))で表される化合物(以下、「化合物(E5-2(3))」ということがある。)の粗製物を得た。この組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:10/1)で精製して4.12g(18.5mmol)の化合物(E5-2(3))を得た(収率:20%、純度:70%程度(NMR))。
【0134】
<2-(3-シアノ-4-(4-フルオロフェニル)-1-オキサスピロ〔4,5〕デカ-3-エン-2-イリデン)マロノニトリル(E5-3(3))の合成>
【化36】

上記で精製した化合物(E5-2(3))10.2g(45.9mmol)及びマロノニトリル14.0g(212mmol)をピリジン58mLに溶解し、酢酸約0.1gを加えて室温で91時間撹拌した。反応液を水1150mLに分散し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を水、次にメタノールで洗浄し、70℃で減圧乾燥して8.53g(26.7mmol)の式(E5-3(3))で表される化合物を得た(収率:58%)。
【0135】
式(E5-3(3))で表される化合物のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
H-NMR CDCl
1.96-2.05(m 2H)、2.13-2.21(m 2H)、2.22-2.28(m 2H)、2.28-2.37(m H)、7.31(dd 2H)、7.83(dd 2H)
13C-NMR CDCl
25.86、39.58、58.79、102.00、108.85、(110.48、110.50)、111.35、(117.48、117.63)、(123.62、123.60)、(131.08、131.15)、164.82、166.54、174.09、175.08
DSC:mp 195℃
【0136】
<化合物(E-5(15))(2-(3-シアノ-4-(4-((3-ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)フェニル)-1-オキサスピロ〔4,5]デカ-3-エン-2-イリデン)マロノニトリル)の合成>
式(E5-3(3))で表される化合物及びピぺリジン-3-イルメタノールを使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(15))を得た(収率:76%)。
【0137】
化合物(E-5(15))のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
H-NMR DMSO-d6
1.33(m 1H)、1.41-1.84(m 10H)、1.92(d 2H)、2.16(m 2H)、2.97(dd 1H)、3.15(dd 1H)、3.29(m 1H)、3.35(m 1H)、4.03(d 1H)、4.08(d 1H)、4.65(t 1H)、7.09(d 2H)、8.08(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
21.76、23.05、24.06、26.67、34.37、38.47、47.35、49.84、51.02、63.11、90.43、99.74、112.52、112.88、113.18、113.37、113.56、132.59、153.70、173.98、177.82
DSC:mp 268℃
【0138】
(EOポリマー(EO-5(15))の製造)
ベースポリマー(A-5a)及び上記で得た化合物(E-5(15))を使用して、上記したEOポリマー(EO-5a)の製造で説明した手順と同様に反応処理して、化合物(E-5(15))がベースポリマ-に結合したEOポリマー(EO-5(15))を得た(ガラス転移温度Tg:202℃)。
【0139】
〔実施例16及び17〕
次の手順で下記式(E-5(16))及び式(E-5(17))で表される化合物(以下、「化合物(E-5(16))」等ということがある。)がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-5(16))及び(EO-5(17))を得た。
【化37】

【化38】

[式中、k、p、及びrは、1以上の整数を表す。]
【0140】
(化合物(E-5(16))及び(E-5(17))の合成)
化合物(E5-3(2))及びピぺリジン-2-イルメタノールを使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(16))を得た(収率:10%)。また、化合物(E5-3(2))及びピぺリジン-4-イルメタノールを使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(17))を得た(収率:79%)。
【0141】
化合物(E-5(16))及び(E-5(17))のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
<化合物(E-5(16)):2-(3-シアノ-4-(4-((2-ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)フェニル)-1-オキサスピロ〔4,5]デカ-3-エン-2-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.42-1.69(m 7H)、1.70-1.83(m 4H)、1.83-1.96(m 3H)、2.12-2.23(m 2H)、3.12(td 1H)、3.61(t 2H)、3.97(d 1H)、4.24(m 1H)、4.83(t 1H)、7.11(d 2H)、8.06(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
18.26、21.76、23.07、24.71、24.81、34.37、34.42、39.95、41.60、50.86、55.06、58.77、90.08、99.66、112.54、113.03、113.07、113.41、113.63、132.38、154.75、173.87、177.84
DSC:mp 229℃
【0142】
<化合物(E-5(17)):2-(3-シアノ-4-(4-((4-ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-イル)フェニル)-1-オキサスピロ〔4,5]デカ-3-エン-2-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.12-1.30(m 2H)、1.45-1.56(m 1H)、1.56-1.68(m 2H)、1.69-1.83(m 6H)、1.92(d 2H)、2.16(td 2H)、3.06(td 2H )、3.27(t 2H)、4.16(d 2H)、4.52(t 1H )、7.11(d 2H)、8.06(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
21.75、23.08、28.12、34.35、38.09、46.42、51.08、65.20、90.62、99.77、112.49、113.00、113.30、113.36、113.54、132.52、153.66、174.06、177.83
DSC:mp 264℃
【0143】
(EOポリマー(EO-5(16))及び(EO-5(17))の製造)
ベースポリマー(A-5a)及び上記で得た化合物(E-5(16))及び化合物(E-5(17))をそれぞれ使用して、上記したEOポリマー(EO-5a)の製造で説明した手順と同様に反応処理して、化合物(E-5(16))及び(E-5(17))のそれぞれがベースポリマ-に結合したEOポリマー(EO-5(16))及び(EO-5(17))を得た(ガラス転移温度Tgは、それぞれ207℃及び209℃)。
【0144】
〔実施例18〕
次の手順で化合物(E-5(17))がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-5(18))を得た。
【化39】

[式中、k、p、及びrは、1以上の整数を表す。]
【0145】
(ベースポリマー(A-5b)の合成)
ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)7.00g(31.8mmol)、2-(イソシアナトエチル)メタクリレート(MOI)2.60g(16.8mmol)及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.266g(1.62mmol)を脱水トルエン18mLに溶解し、アルゴンを封入した後、温度74℃油浴中で2時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、脱水トルエン10mLで希釈したものを脱水ジイソプロピルエーテル(IPE)450mL中に滴下して析出物をろ取した。脱水IPE、脱水ヘキサンで順次洗浄した後、温度45℃で加熱下減圧乾燥してベースポリマー(A-5b)を7.14g得た。
【0146】
(ベースポリマー(A-5b)の誘導体化(メチルカルバメート誘導体))
Arガス下でベースポリマー(A-5b)1.0gを脱水テトラヒドロフラン50mLに溶解し、脱水メタノール4mL及びジブチル錫ジラウレート(DBTDL)40μLを加えて、温度55℃油浴中2時間撹拌した。反応液を冷却後、ジイソプロピルエーテル(IPE)950mL中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE200mL及びヘキサン100mLで洗浄した後、温度65℃の加熱下で減圧乾燥してベースポリマー(A-5b)の誘導体を得た。
【0147】
上記したベースポリマー(A-1)の誘導体の分析と同様にして、ベースポリマー(A-5b)の誘導体を分析したところ、ガラス転移温度Tgは155℃であり、重量平均分子量Mwは64700であり、数平均分子量Mnは26900であった。
【0148】
(EOポリマー(EO-5(18))の製造)
テトラヒドロフラン(THF)50mLに、化合物(E-5(17))0.354g(0.854mmol)及びベースポリマー(A-5b)0.700g(1.23mmol)を溶解した。ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)100μLを加えて、温度55℃油浴中2時間撹拌した。次いで脱水メタノール4mLを加えて、同温度で1時間撹拌した。反応液を冷却後ジイソプロピルエーテル(IPE)600mL中に注いで撹拌した。析出した粉末をろ取し、IPE:THF=10:1混合液100mLで2回、次にIPE50mLで2回、さらにn-ヘキサン50mLで洗浄した後、温度70℃の加熱下で減圧乾燥した。EOポリマー(EO-5(18))を燈赤色粉末として0.753g得た(ガラス転移温度Tg:179℃)。
【0149】
〔実施例19〕
次の手順で下記式(E-5(19))で表される化合物(以下、「化合物(E-5(19))」ということがある。)がベースポリマーに結合したEOポリマー(EO-5(19))を得た。
【化40】
【0150】
化合物(E5-3(2))及び2-(ピぺリジン-4-イル)エタン-1-オールを使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(19))を得た(収率:42%)。
【0151】
化合物(E-5(19))のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
<化合物(E-5(19)):2-(3-シアノ-4-(4-(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-イル)フェニル)-1-オキサスピロ〔4,5]デカ-3-エン-2-イリデン)マロノニトリル>
H-NMR DMSO-d6
1.10-1.20(m 2H)、1.35-1.42(m 2H)、1.43-1.68(m 3H)、1.72-1.81(m 6H)、1.92(d 2H)、2.16(td 2H)、3.06(t 2H)、3.45(t 2H)、4.14(d 2H)、4.40(t 1H)、7.11(d 2H)、8.06(d 2H)
13C-NMR DMSO-d6
21.75、23.08、31.48、31.95、34.35、38.71、46.68、51.09、58.00、90.62、99.76、112.49、112.99、113.30、113.36、113.54、132.52、153.66、174.05、177.82
DSC:mp 236℃
【0152】
(EOポリマー(EO-5(19))の製造)
ベースポリマー(A-5b)及び上記で得た化合物(E-5(19))を使用して上記したEOポリマー(EO-5(18))の製造で説明した手順と同様に反応処理して、化合物(E-5(19))がベースポリマ-に結合したEOポリマー(EO-5(19))を得た(ガラス転移温度Tg:176℃)。
【0153】
〔合成例1〕
次の手順で下記式(E-5(20))で表される化合物(以下、「化合物(E-5(20))」ということがある。)を得た。
【化41】
【0154】
<1-((トリメチルシリル)オキシ)シクロペンタン-1-カルボニトリル(E5-1(2))の合成>
【化42】

脱水アセトニトリル50mLに1,5,7-トリアザビシクロ〔4,4,0〕5-デセンポリスチレン(PS-TBD)41mg(0.050mmol)を加え、シクロペンタノン3.58g(42.6mmol)及びトリメチルシリルシアニド3.50g(35.3mmol)を加えた。3時間室温で撹拌した後、PS-TBDを濾別し、溶媒を減圧濃縮することにより6.05gの式(E5-1(2))で表される化合物を得た(収率:94%)。
【0155】
式(E5-1(2))で表される化合物のH-NMR解析及び13C-NMR解析を行った。
H-NMR CDCl
0.24(s 9H)、1.73-1.88(m 4H)、1.94-2.03(m 2H)、2.05-2.19(m 2H)
13C-NMR CDCl
1.11、22.62、41.72、74.47、122.65
【0156】
<(4-フルオロフェニル)(1-ヒドロキシ-シクロペンチル)メタノン(E5-2(2))の合成>
【化43】

マグネシウム1.05g(43.2mmol)にTHF10mLを加え、1,2-ジブロモエタン2滴を加えた後、4-ブロモフルオロベンゼン7.88g(45.0mmol)をTHF2mLで希釈した溶液を水冷撹拌下に滴下した。室温で90分撹拌を続けた後、水冷撹拌下、式(E5-1(2))で表される化合物6.05g(33.0mmol)をTHF3mLで希釈した溶液を滴下した。室温で18時間撹拌後、温度10℃以下まで冷却し、6mol/L塩酸水溶液20mLをゆっくり滴下した。室温で2.5時間撹拌後、炭酸水素ナトリウム40gを分散投入して中和した。酢酸エチル150mL及び10%食塩水100mLを加えて抽出した。酢酸エチル抽出液を10%食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮し、式(E5-2(2))で表される化合物(以下、「化合物(E5-2(2))」ということがある。)の粗製物を得た。この組成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル:10/1)で精製して2.48g(58.1mmol)の化合物(E5-2(2))を得た(収率:36%)。
【0157】
<2-(3-シアノ-4-(4-フルオロフェニル)-1-オキサスピロ〔4,4〕ノナ-3-エン-2-イリデン)マロノニトリル(E5-3(2))の合成>
【化44】

化合物(E5-2(2))1.57g(7.54mmol)及びマロノニトリル1.50g(22.7mmol)をピリジン12mLに溶解し、酢酸約0.05gを加えて室温で65時間撹拌した。反応液を水240mLに分散し、析出した結晶を濾取した。得られた結晶を水、次にメタノールで洗浄し、温度70℃で減圧乾燥して1.79g(5.86mmol)の式(E5-3(2))で表される化合物を得た(収率:78%)。
【0158】
式(E5-3(2))で表される化合物のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
H-NMR CDCl
1.96-2.05(m 2H)、2.13-2.21(m 2H)、2.22-2.28(m 2H)、2.28-2.37(m 2H)、7.31(dd 2H)、7.83(dd 2H)
13C-NMR CDCl
25.86、39.58、58.79、102.00、108.85、(110.48、110.50)、111.35、(117.48、117.63)、(123.62、123.60)、(131.08、131.15)、164.82、166.54、174.09、175.08
DSC:mp 205℃
【0159】
<化合物(E-5(20))(2-(3-シアノー4-(4-((2-ヒドロキシエチル)(メチル)アミノ)フェニル)-1-オキサスピロ〔4,4]ノナ-3-エン-2-イリデンマロノニトリル)の合成>
化合物(E5-3(2))及びメチル-2-ヒドロキシエチルアミンを使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(20))を得た(収率:25%)。
【0160】
化合物(E-5(20))のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
H-NMR Acetone-d6
2.07-2.21(m 4H)、2.27-2.33(m 2H)、2.47-2.54(m 2H)、3.27(s 3H)、3.75(t 2H)、3.82(t 2H)、7.02(d 2H)、8.05(d 2H))
13C-NMR Acetone-d6
29.59、39.59、41.84、53.05、55.17、59.94、60.06、91.78、108.64、113.05、113.16、113.95、114.53、132.93、155.27、173.18、178.41
DSC:mp 265℃
【0161】
〔合成例2〕
次の手順で下記式(E-5(21))で表される化合物(以下、「化合物(E-5(21))」ということがある。)を得た。
【化45】
【0162】
<化合物(E-5(21))(2-(4-(4-(ブチル(4-ヒドロキシブチル)アミノ)フェニル)-3-シアノ-1-オキサスピロ〔4,4]ノナ-3-エンー2-イリデンマロノニトリル)の合成>
化合物(E5-3(2))及びブチル-4-ヒドロキシブチルアミンを使用して、上記した(E-5)の合成で説明した手順と同様に反応処理して化合物(E-5(21))を得た(収率:43%)。
【0163】
化合物(E-5(21))のH-NMR解析、13C-NMR解析、示差走査熱量計による融点の測定を行った。
H-NMR Acetone-d6
0.99(t 3H)、1.41(td 2H)、1.45(t 1H)、1.64(m 4H)、1.75(m 2H)、2.06(m 2H)、2.16(m 2H)、2.23(m 2H)、2.37(m 2H)、3.42(t 2H)、3.47(t 2H)、3.74(t 2H)、6.71(d 2H)、7.93(d 2H)
13C-NMR Acetone-d6
13.88、20.22、23.94、26.29、29.40、29.66、41.46、51.10、51.12、53.65、62.30、91.09、107.18、111.92、112.18、113.13、113.28、113.58、132.28、152.67、171.59、177.10
DSC:mp 217℃
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明のポリマーは、光変調器、光スイッチ、光トランシーバー、光フェーズドアレイ、LiDAR、スマートグラス、光インターコネクト、光電子回路、波長変換器、電界センサー、THz波発生・検出器等の光制御素子に適用される電気光学材料として用いることができる。本発明のポリマーは、Cバンドよりも短波長帯域において高効率な光制御素子に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0165】
10a,10b アーム部、11 コア、12 クラッド、15 上部電極、16 下部電極。
図1
図2
図3
図4
図5
図6